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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/30 20060101AFI20240820BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240820BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240820BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C09D123/30
C09D7/65
C09D7/20
C09D5/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021546566
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032245
(87)【国際公開番号】W WO2021054068
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019170662
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 北斗
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健二
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080297(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221331(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/068385(WO,A1)
【文献】特開2016-11417(JP,A)
【文献】特開平8-318558(JP,A)
【文献】国際公開第2013/141167(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138399(WO,A1)
【文献】特開2012-136705(JP,A)
【文献】特開2012-132015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00ー 7/26
C09D 1/00ー 10/00
C09D101/00ー201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン(A)およびタッキファイヤー(B)を含有し、下記(a)~(e)のすべてを満たす塗料組成物。
(a)前記酸変性ポリオレフィン(A)が結晶性を有する
(b)前記タッキファイヤー(B)は、式:二重結合当量=重量平均分子量/分子中の二重結合の数、によって定義される二重結合当量が40以上であるか、または二重結合を含有しない
(c)前記酸変性ポリオレフィン(A)は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものである
(d)前記酸変性ポリオレフィン(A)の酸価は、5~40mgKOH/g-resinである
(e)前記タッキファイヤー(B)の含有量は、前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、60質量部~400質量部である。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、前記タッキファイヤー(B)の含有量100質量部~400質量部である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
炭化水素系溶剤(C)を含有し、前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、前記炭化水素溶剤(C)を200~3000質量部含有する請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
エステル系溶剤(D1)またはケトン系溶剤(D2)の少なくとも一方を含む請求項1~3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量が10,000~200,000である請求項1~のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらにアルコール系溶剤(E)を含む請求項1~のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の塗料組成物を含有するポリオレフィン基材用プライマー塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料貯蔵安定性やポリオレフィン基材に対する密着性、耐薬品性、耐候性が良好な塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、自動車バンパー等に塗膜を形成するために使用されるプライマー塗料の耐薬品性への要求が高まっている。その要求を満たすために、従来から種々の提案が行われてきた。また、屋外をはじめとする過酷な環境で長時間使用する際は、耐候性において高い信頼性が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸変性塩素化ポリオレフィンと分散樹脂を用いたプライマー塗料組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、酸変性ポリオレフィンとクマロン樹脂、またはインデン樹脂を用いた水性の塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-10248号公報
【文献】特開2006-225551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のプライマー塗料組成物では、プライマー用樹脂成分として酸変性塩素化ポリオレフィンを用いるため環境上問題がある上、十分な耐薬品性を有しているとは言えなかった。また、特許文献2に記載されているのは水性分散体であり、十分な耐水性および耐薬品性を有しているとはいえなかった。また、クマロン樹脂、あるいはインデン樹脂などの二重結合を多く有するタッキファイヤーは十分な耐候性を有しているとは言えなかった。
【0007】
本発明の目的は、自動車バンパー等に使用されるポリプロピレン基材のプライマーとして用いられ、従来のバンパープライマーに比べて優れた密着性および、耐水性や耐ガソホール性、耐燃料性等の耐薬品性を有し、かつ塗料の貯蔵安定性、耐候性が良好な塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、上記した課題について鋭意検討した結果、結晶性を有する酸変性ポリオレフィンと共に、特定のタッキファイヤーを配合することで、密着性および耐薬品性に優れ、塗料の貯蔵安定性および耐候性が良好な塗膜が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、以下の構成からなる。
【0010】
酸変性ポリオレフィン(A)およびタッキファイヤー(B)を含有し、下記(a)および(b)を満たす塗料組成物。
(a)酸変性ポリオレフィン(A)が結晶性を有する
(b)タッキファイヤー(B)は、式:二重結合当量=重量平均分子量/分子中の二重結合の数、によって定義される二重結合当量が40以上であるか、または二重結合を含有しない。
【0011】
酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、タッキファイヤー(B)が25~400質量部であることが好ましい。
【0012】
炭化水素系溶剤(C)を含有し、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、炭化水素溶剤(C)を200~3000質量部含有することが好ましく、エステル系溶剤(D1)またはケトン系溶剤(D2)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0013】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価は5~40 mgKOH/g-resinであることが好ましく、重量平均分子量は20,000~180,000であることが好ましい。
【0014】
さらにアルコール系溶剤(E)を含むことが好ましい。
【0015】
前記のいずれかに記載の塗料組成物を含有するポリオレフィン基材用プライマー塗料。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐水性や耐ガソホール性、耐燃料性等の耐薬品性および密着性に優れる塗膜を形成することが可能であり、貯蔵安定性や耐候性良好な塗料組成物を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
<酸変性ポリオレフィン(A)>
本発明において酸変性ポリオレフィン(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0019】
α-オレフィンはその炭素数2以上であるものが挙げられ、具体的には例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンが挙げられ、前記α-オレフィンを1種または2種以上を重合させることでα-オレフィンの重合体または共重合体とすることができる。
【0020】
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニル等を1種又は数種用いることができ、中でも、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のエチレン成分含有量が50モル%以下であっても、本発明の塗料組成物は密着性、耐薬品性および塗料の貯蔵安定性が良好である。さらに、エチレン成分含有量が30モル%以下であっても本発明の塗料組成物は密着性、耐薬品性および塗料の貯蔵安定性を充分に示し、エチレン成分含有量が9モル%以下であってもさしつかえない。
【0021】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸変性としては、酸官能基を重合されていることが好ましい。酸官能基としては、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体の少なくとも1種以上を用いることができ、α,β-不飽和カルボン酸の誘導体としては酸無水物が好ましい。α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。具体的には、酸変性ポリプロピレン、酸変性プロピレン-エチレン共重合体、酸変性プロピレン-ブテン共重合体、酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これら酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000の範囲であることが好ましい。20,000~180,000の範囲であることがより好ましい。さらに好ましくは40,000~160,000の範囲である。10,000以上であれば、耐薬品性が良好となる。一方、200,000以下であれば、塗料貯蔵安定性が良好となる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価は、ポリオレフィン樹脂基材との接着性の観点から、5~40mgKOH/g―resinの範囲であることが好ましい。より好ましくは10~30mgKOH/g―resinの範囲である。5mgKOH/g-resin以上であれば塗料の貯蔵安定性が良好となる。一方、40mgKOH/g-resin以下であると、耐薬品性に優れる。
【0024】
本発明の酸変性ポリオレフィン(A)は結晶性である。結晶性であることで非晶性に比べ、密着性や耐薬品性に優れる。結晶性であるとは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-100℃~250℃まで20℃/分で昇温し、該昇温過程に明確な融解ピークを示すものを指す。
【0025】
酸変性ポリオレフィン(A)の融点(Tm)は、40℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。40℃以上であることで、密着性や耐薬品性が良好となる。また、120℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。120℃以下であれば、塗料貯蔵安定性が良好となる。
【0026】
酸変性ポリオレフィン(A)の融解熱(△H)は、5J/g以上であることが好ましく、より好ましくは10J/g以上である。5J/g以上であれば、密着性や耐薬品性が良好となる。また、60J/g以下であることが好ましく、より好ましくは50J/g以下である。60J/g以下であれば、塗料貯蔵安定性が良好となる。
【0027】
酸変性ポリオレフィン(A)は、実質的に塩素化されていないものであることが好ましい。実質的に塩素化されたものである場合、環境上問題であるだけでなく、耐薬品性が低下することがある。実質的に塩素化されていないとは、塩素含有量として、5wt%以下であるか、より好ましくは3wt%以下であり、さらに好ましくは1wt%以下であり、特に好ましくは0wt%である。
【0028】
酸変性ポリオレフィン(A)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、等が挙げられる。
【0029】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないがジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ
-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。なかでも有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0030】
<タッキファイヤー(B)>
タッキファイヤーは、粘着付与剤とも呼ばれ、粘着力向上を目的として添加される添加剤である。一般的には、重量平均分子量が数百~数千の無定型オリゴマーで、常温で液状又は固形の熱可塑性樹脂である。例えば、石油樹脂系タッキファイヤー、炭化水素樹脂系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー等を含むものが挙げられる。耐候性の点から、上記したタッキファイヤーに水素添加したものが好ましいものとして挙げられる。
【0031】
タッキファイヤーの二重結合当量は、式:二重結合当量=重量平均分子量/分子中の二重結合の数、によって定義される。二重結合とは、不飽和炭素結合を指す。芳香環中の不飽和炭素結合は二重結合として数え、例えばベンゼンの二重結合の数は3である。耐候性を考慮すると、本発明のタッキファイヤー(B)は二重結合当量が40以上であるか、または二重結合を含有しない。二重結合当量はより好ましくは、60以上であり、さらに好ましくは、80以上、特に好ましくは100以上である。100以上であることで、本発明の組成物を塗料として基材に塗布し塗膜として長時間の屋外で光や雨に曝された場合であっても、塗膜が変色しにくい傾向にあり耐侯性が特に良好である。また上限は特に限定されないが、貯蔵安定性の点から2000以下であることが好ましい。なお、二重結合を含んでいないタッキファイヤーは、耐侯性の点で特に好ましく用いることができる。分子中の二重結合当量は、例えば、水素添加反応により制御することが可能である。タッキファイヤー(B)には、水酸基あるいはカルボン酸基が含まれていてもよい。このときの分子量は、重量平均分子量を用い、分子中の二重結合数は、核磁気共鳴スペクトル法によって測定される。
【0032】
また、タッキファイヤー(B)の軟化点に関しては、特に限定されることはないが、所望される応用用途への適用性、良好な配合特性、塗工性、密着性の点から60℃以上であるのが好ましく、より好ましくは70~170℃である。
【0033】
タッキファイヤー(B)の重量平均分子量(Mw)としては、100以上であることが好ましく、より好ましくは500以上、さらに好ましくは700以上である。また、2000以下であることが好ましく、1500以下がより好ましく、さらに好ましくは1200以下、特に好ましくは1000以下である。100以上であることで、塗料の密着性が良好となる。一方、2000以下では塗料の貯蔵安定性が良好となる傾向にある。タッキファイヤー(B)が二重結合を含有しない場合も上記の範囲が好ましい。
【0034】
タッキファイヤー(B)の酸価としては、特に限定されることはないが、30mgKOH/g-resin以下であることが好ましく、20mgKOH/g-resin以下であることがより好ましい。前記値を超えると、塗料の貯蔵安定性に問題が生じる場合がある。また、特に限定されることはないが、密着性の観点から1mgKOH/g-resin以上が好ましく、3mgKOH/g-resin以上であることがより好ましい。
【0035】
タッキファイヤー(B)の水酸基価は、特に限定されず、5mgKOH/g-resin以上であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g-resin、さらに好ましくは15mgKOH/g-resin以上である。前記値以上であると塗料の密着性が良好となる。また、200mgKOH/g-resin以下であることが好ましく、より好ましくは150mgKOH/g-resin以下、さらに好ましくは100mgKOH/g-resin以下である。前記値以下であると塗料の貯蔵安定性が良好となる。
【0036】
本発明の塗料組成物におけるタッキファイヤー(B)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対し、25質量部以上であることが好ましい。30質量部以上であることが好ましく、より好ましくは60質量部以上であり、さらに好ましくは100質量部以上である。25質量部以上であれば、塗料貯蔵安定性が良好となる。また、450質量部以下であることが好ましく、350質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは300質量部以下であり、特に好ましくは200質量部以下である。400質量部以下であることで、密着性や耐薬品性が良好に発揮される。
【0037】
本発明の塗料組成物には、顔料を含むことができる。顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カーボンブラック等が挙げられる。これらを1種または2種以上併用することができる。顔料の合計量は、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、50~500質量部含まれていることが好ましく、75~350質量部含まれていることがより好ましい。
【0038】
本発明において、塗料組成物は炭化水素系溶剤(C)を含み、さらにエステル系溶剤(D1)またはケトン系溶剤(D2)の少なくとも一方を含むことができる。酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、炭化水素系溶剤(C)を200質量部以上含むことが好ましく、300質量部以上含むことがより好ましく、さらに好ましくは400質量部以上である。また、3000質量部以下であることが好ましく、2500質量部以下であることがより好ましい。さらに好ましくは1800質量部以下である。上記範囲内にすることで優れた塗料貯蔵安定性を発現することができる。
【0039】
炭化水素系溶剤(C)としては、トルエン、キシレン、Solvesso(登録商標) 100等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤が挙げられ、これら1種以上を好ましく用いることができる。なかでもキシレンまたは、シクロヘキサンが好ましい。特に、キシレン、Solvesso(登録商標)100およびシクロヘキサンの組み合わせが好ましい。
【0040】
エステル系溶剤(D1)およびケトン系溶剤(D2)の合計量は、酸変性ポリオレフィン (A)100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。また500質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは200質量部以下である。上記範囲内にすることで優れた塗料貯蔵安定性を発現することができる。
【0041】
エステル系溶剤(D1)としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル等が挙げられる。なかでも酢酸エチルが好ましい。ケトン系溶剤(D2)としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンが挙げられ、なかでもメチルエチルケトンが好ましい。エステル系溶剤(D1)およびケトン系溶剤(D2)の中から2種類以上を組み合わせることも可能である。
【0042】
塗料組成物には、さらにアルコール系溶剤(E)を添加することも可能である。アルコール系溶剤(E)を添加することで、塗料貯蔵安定性をさらに向上させることができる。アルコール系溶剤(E)を配合する場合、酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上である。また、70質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下である。上記範囲内にすることで極めて優れた塗料貯蔵安定性を発現することができる。アルコール系溶剤(E)としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。
【0043】
<溶剤系塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、酸変性ポリオレフィン(A)、タッキファイヤー(B)により構成され、必要に応じて希釈することにより、本発明の塗料組成物を提供することができる。
【0044】
本発明の塗料組成物は、実質的に溶剤系の塗料組成物であることが好ましい。すなわち、塗料組成物に含まれる全溶剤を100質量%としたとき、前記炭化水素系溶剤(C)、エステル系溶剤(D1)、ケトン系溶剤(D2)およびアルコール系溶剤(E)の合計が90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。実質的に溶剤系塗料組成物であることで、優れた耐水性や耐薬品性を発現することができる。
【0045】
上記塗料組成物の塗装時の粘度としては、特に制限されるものではないが、10~300mPa・sec、より好ましくは、15~200mPa・secの範囲以内にあることで塗装作業性が良好であり、仕上がり外観の点から適している。
【0046】
本発明で提案する塗料組成物には、本発明の効果を損ねない範囲でアクリル樹脂やアルキド樹脂、ウレタン樹脂等を含有してもよい。
【0047】
本発明の塗料組成物はポリオレフィン基材用プライマーとして有用である。ポリオレフィン基材としてはポリプロピレン基材が好ましい。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施のみに限定されるものではない。なお、実施例9は参考例である。
【0049】
<酸変性ポリオレフィン(A)の製造例>
製造例1
1Lオートクレーブに、メタロセン触媒により重合されたプロピレン-ブテン共重合体(プロピレン成分76モル%および、1-ブテン成分24モル%)を100質量部、トルエン150質量部及び無水マレイン酸9質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド4質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性プロピレン-ブテン共重合体(酸価14mgKOH/g-resin、重量平均分子量90,000、Tm70℃)を得た。この製造例により作製した酸変性ポリオレフィンをA-1とした。
【0050】
製造例2
無水マレイン酸の仕込み量を30質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドを3質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性プロピレン-ブテン共重合体(酸価40mgKOH/g-resin、重量平均分子量90,000、Tm70℃)を得た。この製造例により作製した酸変性ポリオレフィンをA-2とした。
【0051】
製造例3
無水マレイン酸の仕込み量を3質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドを7質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性プロピレン-ブテン共重合体(酸価5mgKOH/g-resin、重量平均分子量90,000、Tm70℃)を得た。この製造例により作製した酸変性ポリオレフィンをA-3とした。
【0052】
製造例4
無水マレイン酸の仕込み量を12質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドを3質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性プロピレン-ブテン共重合体(酸価14mgKOH/g-resin、重量平均分子量180,000、Tm70℃)を得た。この製造例により作製した酸変性ポリオレフィンをA-4とした。
【0053】
製造例5
無水マレイン酸の仕込み量を5質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイドを10質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、酸変性プロピレン-ブテン共重合体(酸価14mgKOH/g-resin、重量平均分子量20,000、Tm70℃)を得た。この製造例により作製した酸変性ポリオレフィンをA-5とした。
【0054】
<酸変性ポリオレフィン(A)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、A-1を100質量部に対してシクロヘキサンを280質量部、キシレンを120質量部仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温し、1時間撹拌することでA-1溶液を得た。
【0055】
A-1溶液と同様にA-2~A~5を溶解することで、A-2~A-5溶液を得た。
【0056】
<塩素化ポリオレフィン>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量70,000、塩素含有率30wt%であり、非晶性の塩素化ポリオレフィン(A-6)を100質量部、シクロヘキサンを280質量部および酢酸ブチルを120質量部仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温し、撹拌を1時間続けることでA-6溶液を得た。
【0057】
<ロジン系タッキファイヤー(B 1-1)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量850、軟化点100℃、水酸基価23mgKOH/g-resin、酸価10mgKOH/g-resin以下、二重結合当量142のロジン系タッキファイヤー(B1-1)を100質量部、Solvesso(登録商標) 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB 1-1溶液を得た。
【0058】
<ロジン系タッキファイヤー(B 1-2)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量980、軟化点120℃、水酸基価31mgKOH/g-resin、酸価12mgKOH/g-resin以下、二重結合当量327のロジン系タッキファイヤー(B1-2)を100質量部、Solvesso 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB 1-2溶液を得た。
【0059】
<テルペン系タッキファイヤー(B 1-3)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量910、軟化点115℃、水酸基価37mgKOH/g-resin、酸価12mgKOH/g-resin以下、二重結合当量910のテルペン系タッキファイヤー(B1-3)を100質量部、Solvesso 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB 1-3溶液を得た。
【0060】
<ロジン系タッキファイヤー(B 1-4)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量850、軟化点100℃、水酸基価40mgKOH/g-resin、酸価13mgKOH/g-resin以下、二重結合を有さないロジン系タッキファイヤー(B1-4)を100質量部、Solvesso 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB 1-4溶液を得た。
【0061】
<ロジン系タッキファイヤー(B 2-1)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量950、軟化点120℃、水酸基価30mgKOH/g―resin、酸価1.0mgKOH/g-resin以下、二重結合当量が35のロジン系タッキファイヤー(B2-1)を100質量部、Solvesso 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB2-1溶液を得た。
【0062】
<テルペン系タッキファイヤー(B 2-2)溶液の調製例>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた500mlの四つ口フラスコに、重量平均分子量620、軟化点90℃、水酸基価26mgKOH/g―resin、酸価3mgKOH/g-resin以下、二重結合当量が30のテルペン系タッキファイヤー(B2-2)を100質量部、Solvesso 100を50質量部、シクロヘキサンを50質量部仕込み、室温で2時間撹拌することでB2-2溶液を得た。
【0063】
上記のようにして得られた各酸変性ポリオレフィンに対して下記方法に基づき分析測定および評価を行った。
【0064】
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価の測定
本発明における酸変性ポリオレフィン(A)の酸価(mgKOH/g-resin)は、FT-IR(島津製作所社製、FT-IR8200PC)を使用して、無水マレイン酸(東京化成製)のクロロホルム溶液によって作成した検量線から得られる係数(f)、酸変性ポリオレフィン溶液における無水コハク酸のカルボニル(C=O)結合の伸縮ピーク(1780cm-1)の吸光度(I)を用いて下記式により算出した値である。
酸価(mgKOH/g-resin)=[吸光度(I)×(f)×2×水酸化カリウムの分子量×1000(mg)/無水コハク酸の分子量]
無水コハク酸の分子量:100.07 水酸化カリウムの分子量:56.11
【0065】
タッキファイヤー(B)の酸価の測定
タッキファイヤー(B)の酸価は、JIS K 5601-2-1:1999(ISO 3682:1993)に従い測定した。
【0066】
酸変性ポリオレフィン(A)重量平均分子量(Mw)の測定
本発明における酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量は日本ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance e2695(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF―806 + KF―803、カラム温度:40℃、流速:1.0ml/分、検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長254nm=紫外線))によって測定した値である。
【0067】
タッキファイヤー(B)重量平均分子量(Mw)の測定
本発明におけるタッキファイヤー(B)の重量平均分子量は、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。そして、市販の単分散標準ポリスチレンを用いた検量線から、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。装置として、GPC HLC-8320(東ソー株式会社製)、溶剤としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(すべて東ソー社製)、流速1.0ml/分、試料:20mg/mL テトラヒドロフラン溶液で室温にて、検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長254nm=紫外線)を用いて測定した値である。
【0068】
融点の測定
本発明における酸変性ポリオレフィン(A)の融点は示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温融解、冷却樹脂化して、再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度から測定した値である。
【0069】
軟化点の測定
本発明におけるタッキファイヤー(B)の軟化点は、JIS K 2207(1996)に従い測定した。
【0070】
<塗料組成物>
実施例1
実施例1に示す塗料組成物は、以下の通りに作製した。A-1溶液500質量部(A-1、100質量部)に対して、キシレン40質量部、さらに表1に示す質量比の顔料を添加し、グラインドメーターによる評価が10μm以下になるまで、ビーズミルで分散することで顔料分散液を得た。顔料分散液(A-1、100質量部)に、B-1が100質量部になるようB-1溶液を加え、次いでシクロヘキサン110質量部、メチルエチルケトン105質量部を混合することで、実施例1に示す塗料組成物を得た。
【0071】
実施例2~10
酸変性ポリオレフィン(A)、タッキファイヤー(B)、炭化水素系溶剤(C)、エステル系溶剤(D1)、ケトン系溶剤(D2)、およびアルコール系溶剤(E)を表1に示す割合で混合し、それ以外は実施例1と同様の手順で混合することにより、実施例2~10に示す塗料組成物を作製した。エステル系溶剤(D1)、ケトン系溶剤(D2)、アルコール系溶剤(E)は、顔料分散液に添加した。
【0072】
比較例1~
酸変性ポリオレフィン(A)、タッキファイヤー(B)、炭化水素系溶剤(C)、エステル系溶剤(D1)、ケトン系溶剤(D2)、およびアルコール系溶剤(E)を表2に示す割合で混合し、それ以外は実施例1と同様の手順で混合することにより、比較例1~に示す塗料組成物を作製した。エステル系溶剤(D1)、ケトン系溶剤(D2)、アルコール系溶剤(E)は、顔料分散液に添加した。
【0073】
塗料安定性
実施例または比較例で作製した塗料組成物の塗料安定性に関し、以下の項目について評価した。結果を表1と表2に示す。
【0074】
実施例または比較例で作製した塗料組成物の粘度(流出時間)をフォードカップにて測定し、塗料組成物を-5℃、50℃で10日間静置し、塗料組成物の外観や粘度を評価した。粘度は、フォードカップ(No.4、25℃)により測定した。
評価基準
◎:ツブやゲル化がなく、10日間静置する前と比べて流出時間の増加(増粘)が5秒以内であった。
○:ツブやゲル化がなく、増粘が5秒を超え10秒以内であった。
△:ツブやゲル化はないが、増粘が10秒超であった。
×:ツブやゲル化が生じた。
【0075】
試験塗板の作製
実施例または比較例で得られた塗料組成物100質量部に対して、30質量部のSolvesso 100と30質量部のトルエンを配合することで、塗装時の溶剤組成に調整した。以下、調整後の塗料組成物を希釈塗料組成物と記載する。
【0076】
ポリプロピレン基材をイソプロピルアルコールで脱脂し、試験板とした。試験板に上記で作製した希釈塗料組成物を乾燥膜厚10μmとなるようにスプレー塗装した。前記試験板の希釈塗料組成物面に、着色ベース塗料として、レタン(登録商標)PGホワイト(商品名、関西ペイント社製)を乾燥膜厚50μmとなるようスプレー塗装した。その後80℃のオーブンで30分間加熱して積層塗膜が形成された試験塗板を得た。その試験塗板にて、以下に示す各種塗膜性能試験を行った。
【0077】
塗膜性能試験
上記通り作成した試験塗板に関し、以下の各項目について評価試験を行った。結果を表1と表2に示す。
【0078】
(1)初期密着性
各試験塗板の素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmの碁盤目を100個作った。その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後の碁盤目塗膜の残存数を調べた。
評価基準
◎:100個残存
○:99~90個残存
△:89~41個残存
×:40個以下残存
【0079】
(2)耐水性
各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬後、塗膜表面を観察した。
評価基準
◎:外観に全く変化がなく、非常に良好である。
○:外観にほぼ変化がなく、良好である。
×:塗膜が膨潤し、フクレ等の異常が確認される。
【0080】
(3)耐ガソホール性
各試験塗板を、ガソリン/エタノール=90/10重量比の試験液中に20℃で浸し、120分経過時のふくれ、剥がれの塗面状態を観察し、下記の基準で評価した。
直径3mm未満のふくれとは、塗面においてふくれの最大の直径が3mm未満ということである。
評価基準
◎:全く異常がない。
○:ふくれはなく3mm未満の剥がれが生じている、
直径3mm未満のふくれかつ3mm未満の剥がれが生じている、又は
剥がれはなく直径3mm未満のふくれが生じている。
×:直径3mm以上のふくれ、又は直径3mm以上の剥がれが生じている。
【0081】
(4)耐燃料性
ISO1817に指定される試験用アルコール添加燃料液にもとづき、試験液を調製した。試験液は、2,2,4-トリメチルペンタンを25.35質量%、トルエンを42.25質量%、ジイソブチレンを12.68質量%、メタノールを15.0質量%、エタノールを4.22質量%、水を0.5質量%、ギ酸を20ppm含有する。試験塗板をこの試験液中に25℃で120分浸した。その後、80℃のオーブンで30分間加熱して試験塗板を乾燥させ、各試験塗板に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmの碁盤目を100個作った。その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後の碁盤目塗膜の残存数を調べた。
評価基準
◎:100個残存
〇:99~90個残存
△:89~41個残存
×:40個以下残存
【0082】
(5)耐候性試験
作製した試験塗板の塗膜を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機)を用い、促進耐候性試験を行った。照射温度は63℃±3℃、湿度は50±5%、試料面放射照度は78.5W/m、光波長範囲300~400nm、照射時間200時間、降雨条件は60分周期12分降雨として試験を行った。
評価基準は以下の通りである。
◎:塗膜に変色が認められない。
○:塗膜の変色が僅かに認められる。
△:塗膜の変色が中程度認められる。
×:塗膜が著しく変色している。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明にかかる塗料組成物は、酸変性ポリオレフィンと特定のタッキファイヤーを含有することで、耐水性やガソホール性、耐燃料性等の耐薬品性に優れる塗膜を形成することが可能である。そのため自動車バンパー等に使用されるポリプロピレン基材のプライマーとして有用である。