IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

特許7540444ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置
<>
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図1
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図2
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図3
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図4
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図5
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G02B27/01
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021553484
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039507
(87)【国際公開番号】W WO2021085261
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019197595
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】水落 正彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 文吉
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072136(WO,A1)
【文献】特開2017-003897(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014214510(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00-37/06
B60R 11/02
G09F 9/00
H04N 5/64-5/74
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を射出口から被投射部材に向けて射出するヘッドアップディスプレイ装置に設けられ、前記射出口を覆うとともに前記被投射部材に向けて前記表示光を透過させる透過領域を有するヘッドアップディスプレイ装置用のカバーであって、
透光性を有する板状部と、
前記板状部の上面側又は下面側に設けられた層状部と、を備え、
前記層状部は、
開口が形成されたマスク層と、前記マスク層の下面側に設けられ、前記マスク層よりも吸光度が低い低吸光層と、を備え、
前記板状部における前記開口の内側の領域が前記透過領域であり、
前記低吸光層は、前記開口の周囲の少なくとも一部に設けられ、下面側からの光を受ける受光部を有する、
ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項2】
前記マスク層は、遮光性印刷層からなり、
前記低吸光層は、前記マスク層よりも吸光度が低い色の印刷層からなる、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項3】
前記受光部には、下面側から入射した光を部分的に前記マスク層へ通過させる光通過部が形成されている、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項4】
前記受光部の前記透過領域側の端は、前記マスク層の前記透過領域側の端よりも外側に位置する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項5】
前記受光部は、間欠的に設けられる
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項6】
前記受光部は、前記開口の周囲の全周に亘って設けられる
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項7】
表示光を射出口から被投射部材に向けて射出するヘッドアップディスプレイ装置に設けられ、前記射出口を覆うとともに前記被投射部材に向けて前記表示光を透過させる透過領域を有するヘッドアップディスプレイ装置用のカバーであって、
透光性を有する板状部と、
前記板状部の上面側又は下面側に設けられ、開口が形成された層状部と、を備え、
前記板状部における前記開口の内側の領域が前記透過領域であり、
前記層状部は、前記開口の周囲における少なくとも一部に位置するとともに、下面側からの光を受ける受光部を有し、
前記受光部には、前記射出口を介して下面側から入射した光を部分的に上面側へ通過させる光通過部が形成されている、
ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項8】
前記層状部は、遮光性印刷層からなり、
前記光通過部は、前記遮光性印刷層が形成されていない部分からなる、
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項9】
前記層状部は、黒よりも吸光度が低い色を有する低吸光性印刷層からなり、
前記光通過部は、前記低吸光性印刷層において透光性を有する部分、又は、前記低吸光性印刷層が形成されていない部分からなる、
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項10】
前記光通過部は、前記開口の周囲に間欠的に設けられる
請求項7乃至9のいずか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項11】
前記光通過部は、前記開口の周囲の全周に亘って設けられる
請求項7乃至10のいずか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項12】
前記層状部は、前記板状部の下面側に設けられている、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバー。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバーと、
前記射出口、及び、前記射出口の周囲に位置して前記カバーが載置される載置部を有するケースと、
前記ケース内で生成された前記表示光を前記射出口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記受光部は、前記載置部よりも前記射出口側に位置し、前記反射部で反射した光を受ける、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項14】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバーと、
前記射出口、及び、前記射出口の周囲に位置して前記カバーが載置される載置部を有するケースと、
前記ケース内で生成された前記表示光を前記射出口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記受光部は、前記載置部よりも前記射出口側に位置し、前記反射部で反射した光を受け、
前記受光部は、前記反射部で反射した光が集まり易い部分に設けられる、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項15】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置用のカバーと、
前記射出口、及び、前記射出口の周囲に位置して前記カバーが載置される載置部を有するケースと、
前記ケース内で生成された前記表示光を前記射出口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記受光部は、前記載置部よりも前記射出口側に位置し、前記反射部で反射した光を受け、
前記光通過部は、前記反射部で反射した光が集まり易い部分に設けられる、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示光を射出口から外部の被投射部材(例えば、車両のフロントガラス等)に向けて射出し、表示光が表す画像を虚像として表示するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、表示器によって生成され、凹面鏡で反射した表示光を、ケースに設けられた射出口から射出するHUD装置であって、射出口を覆うカバーを備えるHUD装置が開示されている。特許文献1に開示されたカバーは、透光性を有する板状部(カバーガラス)と、板状部の背面に設けられた遮光性印刷層と、を備える。遮光性印刷層は、カバーにおける表示光の透過領域を規定する開口部を有するとともに、カバーの背面側の不要部分を覆い隠すために設けられている(同文献の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-120029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のカバーの構造では、射出口からケース内部へと入り込み、凹面鏡などで反射した外光が遮光性印刷層の開口部近傍の部分に吸収されることで熱が生じる場合がある。特に、外光が凹面鏡によって集光されて遮光性印刷層に到達した場合は、吸光熱によってカバー(主に、透光性を有する板状部)が変形してしまう可能性もある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、吸光によるカバーの熱変形を抑制することができるヘッドアップディスプレイ装置用のカバー及びヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置用のカバーは、
表示光を射出口から被投射部材に向けて射出するヘッドアップディスプレイ装置に設けられ、前記射出口を覆うとともに前記被投射部材に向けて前記表示光を透過させる透過領域を有するヘッドアップディスプレイ装置用のカバーであって、
透光性を有する板状部と、
前記板状部の上面側又は下面側に設けられた層状部と、を備え、
前記層状部は、
開口が形成されたマスク層と、前記マスク層の下面側に設けられ、前記マスク層よりも吸光度が低い低吸光層と、を備え、
前記板状部における前記開口の内側の領域が前記透過領域であり、
前記低吸光層は、前記開口の周囲の少なくとも一部に設けられ、下面側からの光を受ける受光部を有する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置用のカバーは、
表示光を射出口から被投射部材に向けて射出するヘッドアップディスプレイ装置に設けられ、前記射出口を覆うとともに前記被投射部材に向けて前記表示光を透過させる透過領域を有するヘッドアップディスプレイ装置用のカバーであって、
透光性を有する板状部と、
前記板状部の上面側又は下面側に設けられ、開口が形成された層状部と、を備え、
前記板状部における前記開口の内側の領域が前記透過領域であり、
前記層状部は、前記開口の周囲における少なくとも一部に位置するとともに、下面側からの光を受ける受光部を有し、
前記受光部には、前記射出口を介して下面側から入射した光を部分的に上面側へ通過させる光通過部が形成されている。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
前記ヘッドアップディスプレイ装置用のカバーと、
前記射出口、及び、前記射出口の周囲に位置して前記カバーが載置される載置部を有するケースと、
前記ケース内で生成された前記表示光を前記射出口に向けて反射させる反射部と、を備え、
前記受光部は、前記載置部よりも前記射出口側に位置し、前記反射部で反射した光を受ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸光によるカバーの熱変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の虚像表示の態様を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係るHUD装置の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る上ケースとカバーの関係を示す概略斜視図である。
図4】第1実施形態に係る上ケース、低反射シート、固定部、及びカバーの分解斜視図である。
図5】(a)は、第1実施形態に係るカバーの図3に示すA-A線に沿った概略断面図であり、(b)は、第1実施形態の変形例に係るカバーの概略断面図である。
図6】(a)は、第2実施形態に係るカバーの概略断面図であり、(b)は、第2実施形態の変形例に係るカバーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD:Head-Up Display)装置100は、例えば、車両1のダッシュボード2内に配設される。HUD装置100は、表示光Lを射出口31から被投射部材の一例であるフロントガラス3に向けて射出する。フロントガラス3で反射した表示光Lは、ユーザ4(主に車両1の運転者)に表示光Lが表す画像を虚像Vとして視認させる。虚像Vは、フロントガラス3を介して車両1の前方に表示される。これにより、ユーザ4は、前方風景に重畳して表示される虚像Vを視認することができる。虚像Vは、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う。)を表示する。なお、車両情報は、車両1自体の情報のみならず、車両1の外部情報も含む。
【0014】
以下では、車両1にHUD装置100が設置された場合における、車両1の上下方向及び前後方向を用いて各構成を説明する。適宜の図において、上方を「U」、下方を「D」、前方を「F」、後方を「B」と表している。
【0015】
図2に示すように、HUD装置100は、表示部10と、反射部20と、ケース30と、低反射シート40と、固定部50と、カバー60と、を備える。
【0016】
表示部10は、図示しない制御部の制御により、車両情報を示す画像を表す表示光Lを生成し、反射部20に向けて射出する。表示部10は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型のLCD(Liquid Crystal Display)と、LCDを背後から照明するバックライトとを有する。バックライトは、例えば、LED(Light Emitting Diode)や導光部材などから構成されている。
【0017】
反射部20は、表示部10が射出した表示光Lをフロントガラス3へと導くための構成であり、平面鏡21と、凹面鏡22と、を備える。平面鏡21は、表示部10が射出した表示光Lを凹面鏡22に向けて反射させる。凹面鏡22は、平面鏡21からの表示光Lを拡大するとともに、フロントガラス3に向けて反射させる。
【0018】
ケース30は、合成樹脂や金属により遮光性を有して箱状に形成され、表示部10及び反射部20の各々を上記の機能を満たす位置に収容する。ケース30は、上方に向かった開口する箱状をなす下ケース30bと、下ケース30bの開口端に連結される上ケース30aと、を備える。下ケース30b内には反射部20が収容され、下ケース30bの外底面には表示部10が装着される。
【0019】
図3及び図4に示すように、上ケース30aは、枠状に形成され、射出口31と、載置部32と、を備える。なお、図3は、上ケース30aとカバー60の位置関係を説明するための概略斜視図である。図3では、上ケース30aのうち、カバー60の下方に位置する部分を破線で示すとともに、低反射シート40及び固定部50を省略している。
【0020】
射出口31は、HUD装置100が表示光Lをフロントガラス3に向けて射出する際の開口部分である。射出口31は、表示部10から射出され、反射部20の凹面鏡22で反射した表示光Lを通過させる。射出口31は、矩形の開口形状をなし、その内周面を構成する壁部として、内周壁部31a~31dを有する。内周壁部31aと内周壁部31bとは、前後方向において概ね対向する。内周壁部31cと内周壁部31dとは、図3及び図4における左右方向において対向する。内周壁部31aよりも後方に位置する内周壁部31bには、低反射シート40が設けられる。内周壁部31bは、射出口31の下端から車両1の後方に向かって、その高さが高くなるように傾斜している。
【0021】
低反射シート40は、太陽光等の外光の反射を抑制するシートであり、内周壁部31bの上面に固定される。低反射シート40は、例えば、発泡ウレタンが表面に塗布された黒色のシートからなる。低反射シート40は、外光の反射を抑制することができれば、その構成は任意であるが、耐熱性に優れ、発揮ガスの発生が少ないものであることが好ましい。低反射シート40は、図示しない両面テープや接着剤等により内周壁部31bの上面に固定される。
【0022】
上ケース30aの載置部32は、カバー60の外周端部が載置される部分であり、射出口31を取り囲む枠状に形成されている。カバー60は、載置部32に固定部50を介して固定される。
【0023】
固定部50は、カバー60を上ケース30aに固定するための構成であり、載置部32とカバー60との間に位置する。固定部50は、例えば、弾性変形可能な両面テープからなり、図4に示すように、載置部32の上面形状に対応して枠状に配置されている。なお、両面テープは、複数に分割された部分を有していてもよい。両面テープは弾性変形可能に形成されているため、カバー60と上ケース30aの線膨張係数差によって発生する応力を吸収する機能を有する。なお、固定部50は、接着剤であってもよい。また、カバー60と上ケース30aとを互いに嵌め合わせる嵌合部を、固定部50に代えて、又は、固定部50と併せて設けてもよい。
【0024】
カバー60は、図5(a)に示すように、透光性を有する板状部61と、板状部61の下面側に設けられた層状部62と、を備える。
【0025】
図5(a)は、図3に示すA-A線に沿うカバー60の概略断面図である。なお、図5(a)では、カバー60以外の構成を破線で表している。なお、以下では、カバー60の層状部62を説明するにあたり、内周壁部31cに対応する箇所について代表して説明し、他の内周壁部31a,31b,31dの各々に対応する箇所についての説明を省略する。カバー60における層状部62の内周壁部31a~31dの各々に対応する箇所の態様は同様のためである。後に、図5(b)、図6(a)、(b)を参照して説明を行う際も同様である。
【0026】
カバー60は、上ケース30aの載置部32に固定部50を介して固定されることで、射出口31を上方から覆う。また、カバー60は、被投射部材の一例であるフロントガラス3に向けて表示光Lを透過させる透過領域60aを有する。
【0027】
板状部61は、平面視で概ね矩形に形成されるとともに、湾曲した板状をなす。板状部61は、アクリル等の透光性樹脂からなる有機ガラスや、無機ガラスから構成されている。
【0028】
層状部62は、マスク層70と、マスク層70の下面側に設けられた低吸光層80と、を備える。
【0029】
マスク層70は、板状部61の下面に形成された遮光性を有する層である。例えば、マスク層70は、スクリーン印刷により形成された、黒色の遮光性印刷層からなる。マスク層70には、カバー60における表示光Lの透過領域60aを規定する矩形の開口70aが形成されている。カバー60における開口70a内(つまり、マスク層70が形成されていない部分)が透過領域60aとなる。例えば、マスク層70は、板状部61の透過領域60a以外の領域に、ベタ状に設けられている。
【0030】
マスク層70の開口70a側の端は、載置部32よりも射出口31側に迫り出している。これにより、カバー60よりも下方の部材の不要部分を覆い隠すことができるとともに、射出口31の内周面を構成する内周壁部31cなどの像が、虚像V内に映り込んでしまうことを抑制することができる。
【0031】
低吸光層80は、マスク層70の下面に形成され、マスク層70よりも吸光度が低い層(つまり、マスク層70よりも光の反射率が高い層)である。例えば、低吸光層80は、スクリーン印刷により形成された白色の印刷層からなる。
【0032】
低吸光層80は、下面側からの光を受ける受光部81を有する。ここで言う「下面側からの光」とは、凹面鏡22や内周壁部31cで反射して低吸光層80に向かう表示光Lの一部のみならず、上方から射出口31に入り込み、凹面鏡22や内周壁部31cで反射して低吸光層80に向かう太陽光等の外光も含む。
【0033】
受光部81は、マスク層70へ下面側から到達する光を低減するとともに、自身に到達した光を吸収することによる発熱を抑制する。受光部81は、マスク層70のうち、載置部32よりも射出口31側に迫り出した部分の下面に位置する。受光部81は、マスク層70の開口70aの周囲に設けられ、例えば、開口70aの全周に亘って設けられている。なお、受光部81は、開口70aの周囲の少なくとも一部に設けられていればよい。受光部81を設ける位置は、凹面鏡22で反射した光が集まり易い部分などを実験やシミュレーションにより求めることで、当該部分に応じて定めればよい。
【0034】
また、受光部81における透過領域60a側の端(図5(a)での左端)は、マスク層70の透過領域60a側の端(図5(a)で左端)よりも外側(図5(a)での右側)に位置する。これにより、受光部81における透過領域60a側の端で反射した光による像が、虚像V内に映り込んでしまうことを抑制することができる。
【0035】
以上に説明した、第1実施形態に係るHUD装置100用のカバー60において、板状部61の下面側に設けられた層状部62は、開口70aが形成されたマスク層70と、マスク層70よりも吸光度が低い低吸光層80と、を備える。低吸光層80は、開口70aの周囲の少なくとも一部に設けられ、下面側からの光を受ける受光部81を有する。一例として、マスク層70は、遮光性印刷層からなり、低吸光層80は、マスク層70よりも吸光度が低い色の印刷層からなる。
また、HUD装置100は、カバー60と、射出口31、及び、射出口31の周囲に位置してカバー60が載置される載置部32を有するケース30(具体的には上ケース30a)と、ケース30内で生成された表示光Lを射出口31に向けて反射させる反射部20(具体的には凹面鏡22)と、を備える。受光部81は、載置部32よりも射出口31側に位置し、反射部20で反射した光(入り込んだ外光のみならず、表示光Lの一部を含む。)を受ける。
この構成により、マスク層70へ下面側から到達する光を低減するとともに、低吸光層80の受光部81に吸収される光による発熱を抑制することができる。したがって、吸光によるカバー60の熱変形を抑制することができる。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
図5(b)に示すように、低吸光層80の受光部81には、下面側から入射した光を部分的にマスク層70へ通過させる光通過部81aが形成されていてもよい。この変形例では、例えば、受光部81がドット状(点状)の白色印刷群により構成され、光通過部81aは、ドット状の印刷の隙間(つまり、白色印刷が形成されていない部分)によって実現される。なお、受光部81は、ドット状の印刷群に限られず、縞状の印刷群など間欠的な任意の模様の印刷群により構成されていてもよい。この場合も同様に、光通過部81aは、これら印刷の隙間によって実現されればよい。
【0037】
以上に説明した、第1実施形態の変形例に係るHUD装置100用のカバー60において、低吸光層80の受光部81には、下面側から入射した光を部分的にマスク層70へ通過させる光通過部81aが形成されている。
この構成により、受光部81で反射して、虚像Vの表示品位を低下させる虞のある光を低減しつつも、マスク層70へ下面側から到達する光を低減し、且つ、低吸光層80の受光部81に吸収される光による発熱を抑制することができる。したがって、吸光によるカバー60の熱変形を抑制することができる。
【0038】
(第2実施形態)
ここからは、以上の第1実施形態とは態様が異なる層状部262を有する、第2実施形態に係るカバー260について説明する。以下では、第1実施形態と同様な構成については説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0039】
第2実施形態に係るカバー260は、図6(a)に示すように、透光性を有する板状部61と、板状部61の下面側に設けられた層状部262と、を備える。層状部262は、マスク層70から構成されている。つまり、第2実施形態に係る層状部262は、第1実施形態のように低吸光層80を備えていない。
【0040】
マスク層70は、板状部61の下面に形成された遮光性を有する層である。例えば、マスク層70は、スクリーン印刷により形成された、黒色の遮光性印刷層からなる。マスク層70の開口70a側の端は、載置部32よりも射出口31側に迫り出している。
【0041】
第2実施形態に係るマスク層70は、下面側からの光を受ける受光部71を有する。受光部71は、マスク層70のうち、載置部32よりも射出口31側に迫り出した部分により構成される。受光部71には、下面側から入射した光を部分的に上面側へ通過させる光通過部71aが形成されている。例えば、受光部71がドット状(点状)の遮光性印刷群により構成され、光通過部71aは、ドット状の印刷の隙間(つまり、遮光性印刷が形成されていない部分)によって実現される。なお、受光部71は、ドット状の印刷群に限られず、縞状の印刷群など間欠的な任意の模様の印刷群により構成されていてもよい。この場合も同様に、光通過部71aは、これら印刷の隙間によって実現されればよい。
【0042】
受光部71は、マスク層70の開口70aの周囲に設けられ、例えば、開口70aの全周に亘って設けられている。なお、受光部71は、開口70aの周囲の少なくとも一部に設けられていればよい。受光部71を設ける位置は、凹面鏡22で反射した光が集まり易い部分などを実験やシミュレーションにより求めることで、当該部分に応じて定めればよい。
【0043】
以上に説明した、第2実施形態に係るHUD装置100用のカバー260において、層状部262(マスク層70)は受光部71を有し、受光部71には、下面側から入射した光を部分的に上面側へ通過させる光通過部71aが形成されている。一例として、層状部262は、遮光性印刷層からなり、光通過部71aは、遮光性印刷層が形成されていない部分からなる。
また、HUD装置100は、カバー260と、射出口31、及び、射出口31の周囲に位置してカバー260が載置される載置部32を有するケース30(具体的には上ケース30a)と、ケース30内で生成された表示光Lを射出口31に向けて反射させる反射部20(具体的には凹面鏡22)と、を備える。受光部71は、載置部32よりも射出口31側に位置し、反射部20で反射した光(入り込んだ外光のみならず、表示光Lの一部を含む。)を受ける。
このように、受光部71に光通過部71aが形成されていることにより、遮光性印刷層を板状部61の背面にベタ状に(一様に)形成した場合に比べ、マスク層70に吸収される光を抑制できるため、吸光による発熱を抑制することができる。したがって、吸光によるカバー260の熱変形を抑制することができる。
【0044】
(第2実施形態の変形例)
図6(b)に示すように、層状部262における受光部71は、変形例に係る光通過部271aを有していてもよい。この変形例では、層状部262を構成するマスク層70が、黒よりも吸光度が低い色(例えばグレー)を有する低吸光性印刷層であって、下面側から到達した光を部分的に上面側へ透過(通過)させる印刷層から構成されている。このように、透光性を有する印刷層は、例えば、印刷層自体を非常に薄膜に形成したり、スモーク状に形成したりすることで実現される。なお、この場合であっても、板状部61の下面側をマスク層70で覆い隠せるように、黒色に近いグレー等の色でマスク層70を構成することが好ましい。変形例に係る光通過部271aは、低吸光性印刷層において透光性を有する部分により実現される。なお、前述と同様に、受光部71がドット状(点状)の印刷群により構成され、光通過部271aは、ドット状の印刷の隙間(つまり、低吸光性印刷層が形成されていない部分)によって実現されてもよい。また、受光部271は、ドット状の印刷群に限られず、縞状の印刷群など間欠的な任意の模様の印刷群により構成されていてもよい。この場合も同様に、光通過部271aは、これら印刷の隙間によって実現されればよい。
【0045】
以上に説明した、第2実施形態の変形例に係るHUD装置100用のカバー260において、層状部262(マスク層70)の受光部71には、下面側から入射した光を部分的に上面側へ通過させる光通過部271aが形成されている。層状部262は、黒よりも吸光度が低い色を有する低吸光性印刷層からなり、光通過部271aは、低吸光性印刷層において透光性を有する部分、又は、低吸光性印刷層が形成されていない部分からなる。
このように、受光部71に光通過部271aが形成されていることにより、遮光性印刷層を板状部61の背面にベタ状に(一様に)形成した場合に比べ、マスク層70に吸収される光を抑制できるため、吸光による発熱を抑制することができる。したがって、吸光によるカバー260の熱変形を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0047】
(他の変形例)
以上の説明では、層状部62,262を板状部61の下面側に設ける例を説明したが、層状部62,262を板状部61の上面側に設けてもよい。このようにしても、前述と同様の理由により、吸光によるカバー260の熱変形を抑制することができる。但し、板状部61の上面は、ユーザ4等に触れられる可能性があるため、層状部62,262の剥がれ等を考慮すれば、層状部62,262を板状部61の下面側に設けたほうが好ましい。
【0048】
以上の説明では、層状部62,262を構成する印刷層は、スクリーン印刷以外の公知の印刷手法(例えば、グラビア印刷やフレキソ印刷など)で形成されていてもよい。また、層状部62,262を構成する層は、印刷層に限られず、シート状の部材から構成されていてもよい。さらに、両面テープからなる固定部50を射出口31側に延長し、当該延長された部分の背面を、白色印刷層等の代わりに、低吸光層80の受光部81として機能させることもできる。
【0049】
遮光性を有するマスク層70の色は、黒色に限られず任意であり、濃紺などであってもよい。また、低吸光層80の色は、白色に限られず任意であり、黄色やメタリック色などであってもよい。また、黒よりも吸光度が低い色を有する低吸光性印刷層からなる第2実施形態の変形例に係る層状部262の色も任意である。
【0050】
表示部10は、LCDを用いたものに限られず、OLED(Organic Light-Emitting Diode)を用いたものを採用してもよい。また、表示部10は、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示デバイスを用いたものであってもよい。
【0051】
反射部20は、表示部10からの表示光Lを1又は複数回反射させ、結果的に、射出口31を経て、フロントガラス3へと向かわせることができれば、その構成や鏡の枚数は任意である。
【0052】
表示光Lの投射対象である被投射部材は、車両1のフロントガラス3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0053】
HUD装置100が搭載される車両1の種類は限定されず、自動四輪車や、自動二輪車など様々な車両に適用可能である。また、HUD装置100は、航空機、船舶、スノーモービル等、車両1以外の乗り物に搭載されてもよい。
【0054】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0055】
100…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置
10…表示部
20…反射部、21…平面鏡、22…凹面鏡
30…ケース、30a…上ケース、30b…下ケース
31…射出口、31a~31d…内周壁部
32…載置部
40…低反射シート
50…固定部
60,260…カバー、60a…透過領域
61…板状部
62,262…層状部
70…マスク層、70a…開口
80…低吸光層
81…受光部、81a…光通過部
71…受光部、71a,271a…光通過部
1…車両、2…ダッシュボード、3…フロントガラス、4…ユーザ
L…表示光、V…虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6