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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】非接触給電設備
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20240820BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240820BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20240820BHJP
   B60M 7/00 20060101ALN20240820BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
B60L53/122
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022009477
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108381
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭司
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313884(JP,A)
【文献】特開2001-211501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/10
B60L 53/122
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第1調整後信号を演算し、当該第1調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、当該スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブユニットの内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第2調整後信号を演算し、当該第2調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する、非接触給電設備。
【請求項2】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間と、前記マスタ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第3調整後信号を演算し、当該第3調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、
前記スレーブ下流機器が他の前記スレーブユニットである場合には、前記スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第4調整後信号を演算し、当該第4調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信し、
前記スレーブ下流機器が前記電源装置である場合には、前記第2所要時間に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第5調整後信号を演算し、当該第5調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する、非接触給電設備。
【請求項3】
前記マスタユニットは、前記マスタ下流機器に対して第1検査信号を発信するように構成され、
前記マスタ下流機器は、前記第1検査信号を受信した場合に、第1応答信号を前記マスタユニットに対して発信するように構成され、
前記マスタユニットは、前記第1検査信号の発信から前記第1応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、前記第1所要時間とする、請求項1又は2に記載の非接触給電設備。
【請求項4】
前記スレーブユニットは、前記スレーブ下流機器に対して第2検査信号を発信するように構成され、
前記スレーブ下流機器は、前記第2検査信号を受信した場合に、第2応答信号を前記スレーブユニットに対して発信するように構成され、
前記スレーブユニットは、前記第2検査信号の発信から前記第2応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、前記第2所要時間とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触給電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような非接触給電設備の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の非接触給電設備では、マスタユニット(51(A))が複数のスレーブユニット(51)に同期信号を発信する。そして、複数のスレーブユニット(51)のそれぞれに接続された電源装置(M)が、当該スレーブユニット(51)により受信した同期信号に基づいて、対応する給電線(47)に交流電流を供給する。こうして、複数の給電線(47)のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-67747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような非接触給電設備では、マスタユニットから電源装置までの同期信号の伝送所要時間は、マスタユニットに対する電源装置の接続態様に依存する。そのため、マスタユニットから電源装置までの同期信号の伝送所要時間が、電源装置ごとに異なる場合がある。しかし、特許文献1の非接触給電設備では、そのような伝送所要時間の差異について考慮されておらず、その点で複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることに限界があった。
【0006】
そこで、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることが可能な非接触給電設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、非接触給電設備の特徴構成は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第1調整後信号を演算し、当該第1調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、当該スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブユニットの内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第2調整後信号を演算し、当該第2調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、マスタユニットは、当該マスタユニットからマスタ下流機器までの同期信号の伝送所要時間に応じた遅延を考慮して、第1調整後信号を演算する。これにより、マスタ下流機器が受信したマスタユニットからの同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。
また、本特徴構成によれば、スレーブユニットは、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、スレーブユニットの内部における同期信号の処理時間とに応じた遅延を考慮して、第2調整後信号を演算する。これにより、スレーブ下流機器が受信したスレーブユニットからの同期信号の位相を、スレーブユニットがスレーブ上流機器から受信した同期信号の位相に極めて近いものとすることができる。
以上のように、本特徴構成によれば、複数の電源装置及びスレーブユニットが受信する同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。そのため、マスタユニットから複数の電源装置までの同期信号の伝送所要時間が異なる場合であっても、複数の電源装置のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【0009】
上記に鑑みた、非接触給電設備の特徴構成は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間と、前記マスタ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第3調整後信号を演算し、当該第3調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、
前記スレーブ下流機器が他の前記スレーブユニットである場合には、前記スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第4調整後信号を演算し、当該第4調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信し、
前記スレーブ下流機器が前記電源装置である場合には、前記第2所要時間に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第5調整後信号を演算し、当該第5調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、マスタユニットは、当該マスタユニットからマスタ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、マスタ下流機器の内部における同期信号の処理時間に応じた遅延を考慮して、第3調整後信号を演算する。これにより、マスタ下流機器が受信したマスタユニットからの同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。
また、本特徴構成によれば、スレーブユニットは、スレーブ下流機器が他のスレーブユニットである場合には、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、スレーブ下流機器の内部における同期信号の処理時間とに応じた遅延を考慮して、第4調整後信号を演算する。また、スレーブユニットは、スレーブ下流機器が電源装置である場合には、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間に応じた遅延を考慮して、第5調整後信号を演算する。これにより、スレーブ下流機器が受信したスレーブユニットからの同期信号の位相を、スレーブユニットがスレーブ上流機器から受信した同期信号の位相に極めて近いものとすることができる。
以上のように、本特徴構成によれば、複数の電源装置及びスレーブユニットが受信する同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。そのため、マスタユニットから複数の電源装置までの同期信号の伝送所要時間が異なる場合であっても、複数の電源装置のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る非接触給電設備を備えた物品搬送設備の平面図
図2】物品搬送設備が備える物品搬送車の正面図
図3】第1の実施形態に係る非接触給電設備の構成を示す模式図
図4】同期システムの構成の一例を示す図
図5】マスタユニットとマスタ下流機器との関係を示す図
図6】スレーブユニットとスレーブ上流機器とスレーブ下流機器との関係を示す図
図7】第1の実施形態に係る、マスタユニットからマスタ下流機器に対して発信される同期信号の各時点での位相、及び当該同期信号に応じて給電線に供給される交流電流の位相を示す図
図8】第1の実施形態に係る、スレーブユニットからスレーブ下流機器に対して発信される同期信号の各時点での位相、及び当該同期信号に応じて給電線に供給される交流電流の位相を示す図
図9】第2の実施形態に係る、マスタユニットからマスタ下流機器に対して発信される同期信号の各時点での位相を示す図
図10】第2の実施形態に係る、スレーブユニットからスレーブ下流機器としての他のスレーブユニットに対して発信される同期信号の各時点での位相を示す図
図11】第2の実施形態に係る、スレーブユニットからスレーブ下流機器としての電源装置に対して発信される同期信号の各時点での位相、及び当該同期信号に応じて給電線に供給される交流電流の位相を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る非接触給電設備100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、非接触給電設備100は、物品搬送設備200に設けられている。
【0013】
図1及び図2に示すように、物品搬送設備200は、走行レール2と、移動体3とを備えている。走行レール2は、移動体3の移動経路1に沿って配置されている。本実施形態では、一対の走行レール2が、鉛直方向である上下方向Zに沿う上下方向視で、移動経路1に直交する方向である経路幅方向Hに互いに一定の間隔を空けた状態で、天井から吊り下げ支持されている(図2参照)。本実施形態では、移動体3は、走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する物品搬送車である。物品搬送車としての移動体3の搬送対象である物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、移動経路1は、環状に形成された1つの主経路1aと、それぞれが複数の物品処理部Pを経由する環状に形成された複数の副経路1bと、主経路1aと複数の副経路1bとを接続する複数の接続経路1cと、を備えている。
【0015】
図2に示すように、移動体3は、移動経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4を備えている。本実施形態では、移動体3は、一対の走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、を更に備えている。
【0016】
走行部9は、駆動モータ14と、一対の走行輪15と、を備えている。駆動モータ14は、一対の走行輪15の駆動力源である。一対の走行輪15は、駆動モータ14により回転駆動される。走行輪15は、走行レール2の上面にて形成される走行面を転動する。本実施形態では、走行部9は、一対の案内輪16を更に備えている。一対の案内輪16は、上下方向Zに沿う軸心周りに回転自在に支持されている。一対の案内輪16は、一対の走行レール2における経路幅方向Hに対向する一対の内側面に当接するように配置されている。
【0017】
搬送車本体10は、走行部9に対して昇降自在に支持されて物品を吊り下げ支持する物品支持部と、当該物品支持部を昇降させるアクチュエータと、を備えている(図示を省略)。
【0018】
上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等への電力は、給電線11から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、移動体3の駆動用電力を受電装置4に供給する給電線11は、移動経路1に沿って配設されている。本実施形態では、給電線11は、受電装置4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。
【0019】
本実施形態では、受電装置4は、ピックアップコイル40を備えている。ピックアップコイル40には、交流電流が供給された給電線11の周囲に生じた磁界により、交流の電力が誘起される。この交流の電力は、整流回路、平滑コンデンサ等を備えた受電回路により直流に変換され、上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等に供給される。
【0020】
非接触給電設備100は、受電装置4に非接触で電力を供給するように構成されている。図3に示すように、非接触給電設備100は、受電装置4を備えた移動体3の移動経路1に沿って並ぶように配置された複数の給電線11と、当該複数の給電線11のそれぞれに接続され、給電線11に交流電流を供給する電源装置5とを備えている。このように、非接触給電設備100では、給電線11と電源装置5との組が複数組設けられている。これは、本実施形態のように、1つの大きな環状の主経路1aと、当該主経路1aよりも小さな環状の複数の副経路1bとを備えた比較的大きな規模の物品搬送設備200(図1参照)では、給電線11における送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止すること等を抑制するためである。
【0021】
図示は省略するが、複数の電源装置5のそれぞれは、当該電源装置5に接続された給電線11に交流電流を供給する電源回路と、当該電源回路を制御する電源制御部と、を備えている。電源回路は、例えばインバータ回路を備えたスイッチング電源回路を中核として構成されている。電源制御部は、指令値に基づいて、インバータ回路を構成するスイッチング素子をスイッチングするスイッチング制御信号のデューティーを制御する。例えば、電源制御部は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により電源回路に交流電流を出力させる。ここで、指令値は、例えば、電流値(実効値でも波高値(ピーク・トゥ・ピーク値)でも良い)や、PWM制御におけるデューティーである。
【0022】
図4に示すように、非接触給電設備100は、複数の電源装置5の交流電流の位相を同期させる同期システム6を更に備えている。同期システム6は、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニット7と、当該マスタユニット7に対して下流側に接続されてマスタユニット7からの同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニット8と、を備えている。
【0023】
スレーブユニット8は、直接的にマスタユニット7に接続され、又は、他のスレーブユニット8を介して間接的にマスタユニット7に接続されている。更に、スレーブユニット8は、少なくとも1つの電源装置5に接続されている。本実施形態では、マスタユニット7も、少なくとも1つの電源装置5に接続されている。スレーブユニット8に接続された電源装置5は、スレーブユニット8からの同期信号を受信し、当該同期信号に応じて給電線11に交流電流を供給する。また、マスタユニット7に接続された電源装置5は、マスタユニット7からの同期信号を受信し、当該同期信号に応じて給電線11に交流電流を供給する。
【0024】
図4に示す例では、2つのスレーブユニット8が同期システム6に設けられている。以下の説明では、2つのスレーブユニット8を、それぞれ、「第1スレーブユニット8A」、「第2スレーブユニット8B」とする。第1スレーブユニット8Aは、直接的にマスタユニット7に接続されている。第2スレーブユニット8Bは、第1スレーブユニット8Aを介して間接的にマスタユニット7に接続されている。
【0025】
また、図4に示す例では、2つの電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続されている。そして、1つの電源装置5が第1スレーブユニット8Aに直接的に接続されている。また、2つの電源装置5が第2スレーブユニット8Bに直接的に接続されている。以下の説明では、マスタユニット7に直接的に接続された2つの電源装置5を、それぞれ、「第1電源装置5A」、「第2電源装置5B」とする。そして、第1スレーブユニット8Aに直接的に接続された電源装置5を、「第3電源装置5C」とする。また、第2スレーブユニット8Bに直接的に接続された2つの電源装置5を、それぞれ、「第4電源装置5D」、「第5電源装置5E」とする。
【0026】
図5に示すように、以下の説明では、マスタユニット7に対して下流側に直接的に接続されたスレーブユニット8を「マスタ下流機器MD」とする。また、図6に示すように、スレーブユニット8に対して上流側に直接的に接続されたマスタユニット7又はスレーブユニット8を「スレーブ上流機器SU」とする。そして、スレーブユニット8に対して下流側に直接的に接続された電源装置5及び他のスレーブユニット8のそれぞれを「スレーブ下流機器SD」とする。
【0027】
図4に示す例では、第1スレーブユニット8Aが、マスタ下流機器MDに相当する。また、上述したように、本例では、第1電源装置5A及び第2電源装置5Bがマスタユニット7に直接的に接続されている。そこで、マスタユニット7に対して下流側に直接的に接続された電源装置5も「マスタ下流機器MD」とする。そのため、本例では、第1電源装置5A及び第2電源装置5Bのそれぞれも、マスタ下流機器MDに相当する。
【0028】
また、図4に示す例では、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、マスタユニット7がスレーブ上流機器SUに相当し、第2スレーブユニット8B及び第3電源装置5Cのそれぞれがスレーブ下流機器SDに相当する。また、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、第1スレーブユニット8Aがスレーブ上流機器SUに相当し、第4電源装置5D及び第5電源装置5Eのそれぞれがスレーブ下流機器SDに相当する。
【0029】
図7に示すように、本実施形態では、マスタユニット7は、当該マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの同期信号の伝送所要時間である第1所要時間Δt1に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた同期信号である第1調整後信号を演算する。ここで、基準位相の同期信号を「基準信号」とすると、基準信号から第1所要時間Δt1に応じた時間分位相を進めたものが第1調整後信号である。ここでは、「第1所要時間Δt1に応じた時間」は、第1所要時間Δt1に一致する。なお、本実施形態では、基準信号は、マスタユニット7の内部で生成される同期信号である。
【0030】
マスタユニット7は、演算した第1調整後信号をマスタ下流機器MDに対して発信する。そして、マスタ下流機器MDは、マスタユニット7により発信された第1調整後信号を受信する。以下では、説明の便宜上、「第1調整後信号」は、マスタユニット7により算出された時点の第1調整後信号を指すものとする。また、第1調整後信号としてマスタユニット7により発信されて、マスタ下流機器MDにより受信された時点の同期信号を「第1受信信号」とする。
【0031】
本実施形態では、マスタユニット7により演算された同期信号(第1調整後信号)は、マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの伝送に伴い、第1所要時間Δt1分位相が遅れる。つまり、マスタ下流機器MDにより受信された同期信号(第1受信信号)は、マスタユニット7により演算された同期信号(第1調整後信号)に対して、第1所要時間Δt1分位相が遅れている。このように、マスタユニット7は、当該マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの同期信号の伝送所要時間である第1所要時間Δt1に応じた遅延を考慮して、第1調整後信号を演算している。これにより、第1受信信号の位相を、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとすることができる。したがって、マスタ下流機器MDが電源装置5(ここでは、第1電源装置5A及び第2電源装置5B)である場合、当該電源装置5が第1受信信号に応じて給電線11に供給する交流電流の位相を、基準信号に応じた交流電流の位相に極めて近いものとすることができる。
【0032】
図8に示すように、本実施形態では、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDまでの同期信号の伝送所要時間である第2所要時間Δt2と、スレーブユニット8の内部における同期信号の処理時間Δt3との合計に応じた時間分、スレーブ上流機器SUから受信した同期信号の位相に対して位相を進めた第2調整後信号を演算する。ここで、スレーブユニット8がスレーブ上流機器SUから受信した時点の同期信号を「第2受信信号」とすると、第2受信信号から第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に応じた時間分位相を進めたものが第2調整後信号である。ここでは、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に応じた時間」は、第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に一致する。また、スレーブユニット8における同期信号の処理時間(ここでは、処理時間Δt3)は、スレーブユニット8が同期信号を上流側から受信してから下流側に発信するまでに要する時間(同期信号の中継に要する時間)である。つまり、スレーブユニット8が上流側から受信した同期信号をそのまま(位相の調整を行わずに)下流側に発信する場合に生じる位相の遅れに相当する時間が、同期信号の処理時間である。
【0033】
スレーブユニット8は、演算した第2調整後信号をスレーブ下流機器SDに対して発信する。そして、スレーブ下流機器SDは、スレーブユニット8により発信された第2調整後信号を受信する。以下では、説明の便宜上、「第2調整後信号」は、スレーブユニット8により算出された時点の第2調整後信号を指すものとする。また、第2調整後信号としてスレーブユニット8により発信されて、スレーブ下流機器SDにより受信された時点の同期信号を「第3受信信号」とする。
【0034】
本実施形態では、スレーブユニット8により演算された同期信号(第2調整後信号)は、スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDまでの伝送に伴って第2所要時間Δt2分位相が遅れると共に、スレーブユニット8の内部における同期信号の処理に伴って処理時間Δt3分位相が遅れる。つまり、スレーブ下流機器SDにより受信された同期信号(第3受信信号)は、スレーブユニット8により演算された同期信号(第2調整後信号)に対して、第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計分位相が遅れている。このように、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDまでの同期信号の伝送所要時間である第2所要時間Δt2と、スレーブユニット8の内部における同期信号の処理時間Δt3とに応じた遅延を考慮して、第2調整後信号を演算している。これにより、第3受信信号の位相を、スレーブユニット8がスレーブ上流機器SUから受信した同期信号である第2受信信号の位相に極めて近いものとすることができる。
【0035】
図4に示す例では、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、第2受信信号は、第1スレーブユニット8Aがマスタユニット7から受信した同期信号である。この場合、第1スレーブユニット8Aがマスタ下流機器MDにも相当するため、第2受信信号は、マスタ下流機器MDにより受信された同期信号である第1受信信号に一致する。上述したように、第1受信信号の位相は基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。そのため、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第2受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。また、上述したように、第2受信信号の位相と第3受信信号の位相とは極めて近いものとなる。そのため、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第3受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。したがって、スレーブ下流機器SDが電源装置5(ここでは、第3電源装置5C)である場合、当該電源装置5が第3受信信号に応じて給電線11に供給する交流電流の位相を、基準信号に応じた交流電流の位相に極めて近いものとすることができる。
【0036】
また、図4に示す例では、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、第2受信信号は、第2スレーブユニット8Bが第1スレーブユニット8Aから受信した同期信号である。この場合、第2スレーブユニット8Bが、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合におけるスレーブ下流機器SDにも相当するため、第2受信信号は、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合における第3受信信号に一致する。上述したように、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合における第3受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。そのため、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第3受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。したがって、スレーブ下流機器SDが電源装置5(ここでは、第4電源装置5D及び第5電源装置5E)である場合、当該電源装置5が第3受信信号に応じて給電線11に供給する交流電流の位相を、基準信号に応じた交流電流の位相に極めて近いものとすることができる。
【0037】
本実施形態では、マスタユニット7は、マスタ下流機器MDに対して第1検査信号を発信するように構成されている(図5におけるマスタユニット7からマスタ下流機器MDに向かう実線矢印参照)。マスタ下流機器MDは、第1検査信号を受信した場合に、第1応答信号をマスタユニット7に対して発信するように構成されている(図5におけるマスタ下流機器MDからマスタユニット7に向かう破線矢印参照)。マスタユニット7は、第1検査信号の発信から第1応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、第1所要時間Δt1とする。
【0038】
また、本実施形態では、スレーブユニット8は、スレーブ下流機器SDに対して第2検査信号を発信するように構成されている(図6におけるスレーブユニット8からスレーブ下流機器SDに向かう実線矢印参照)。スレーブ下流機器SDは、第2検査信号を受信した場合に、第2応答信号をスレーブユニット8に対して発信するように構成されている(図6におけるスレーブ下流機器SDからスレーブユニット8に向かう破線矢印参照)。スレーブユニット8は、第2検査信号の発信から第2応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、第2所要時間Δt2とする。
【0039】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る非接触給電設備100について、図9及び図10を参照して説明する。本実施形態では、マスタユニット7及びスレーブユニット8による同期信号に対する演算が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0040】
図9に示すように、本実施形態では、マスタユニット7は、当該マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの同期信号の伝送所要時間である第1所要時間Δt1と、マスタ下流機器MDの内部における同期信号の処理時間Δt4との合計に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた同期信号である第3調整後信号を演算する。ここでは、「第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に応じた時間」は、第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に一致する。
【0041】
マスタユニット7は、演算した第3調整後信号をマスタ下流機器MDに対して発信する。そして、マスタ下流機器MDは、マスタユニット7により発信された第3調整後信号を受信する。以下では、説明の便宜上、「第3調整後信号」は、マスタユニット7により算出された時点の第3調整後信号を指すものとする。また、第3調整後信号としてマスタユニット7により発信されて、マスタ下流機器MDにより受信されると共に、当該マスタ下流機器MDの内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した時点の同期信号を「第4受信信号」とする。つまり、第4受信信号の位相は、仮にマスタ下流機器MDが上流側から受信した同期信号をそのまま下流側に発信するとした場合における、当該マスタ下流機器MDから下流側に発信される同期信号の位相と一致する。
【0042】
ここで、電源装置5は、スレーブユニット8とは異なり、受信した同期信号を下流側の機器に対して発信せず、当該同期信号に応じて給電線11に交流電流を供給する。したがって、本実施形態では、マスタ下流機器MDが電源装置5である場合には、マスタユニット7は、処理時間Δt4に基づいて第3調整後信号を演算することなく、上記第1の実施形態と同様に、第1調整後信号を演算し、当該第1調整後信号をマスタ下流機器MDとしての電源装置5に対して発信する。
【0043】
本実施形態では、マスタユニット7により演算された同期信号(第3調整後信号)は、マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの伝送に伴って第1所要時間Δt1分位相が遅れると共に、マスタ下流機器MDとしてのスレーブユニット8の内部における同期信号の処理に伴って処理時間Δt4分位相が遅れる。つまり、マスタ下流機器MDにより受信されて当該マスタ下流機器MDの内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した同期信号(第4受信信号)は、マスタユニット7により演算された同期信号(第3調整後信号)に対して、第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計分位相が遅れている。このように、マスタユニット7は、当該マスタユニット7からマスタ下流機器MDまでの同期信号の伝送所要時間である第1所要時間Δt1と、マスタ下流機器MDとしてのスレーブユニット8の内部における同期信号の処理時間Δt4とに応じた遅延を考慮して、第3調整後信号を演算している。これにより、第4受信信号の位相を、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとすることができる。
【0044】
図10に示すように、本実施形態では、スレーブユニット8は、スレーブ下流機器SDが他のスレーブユニット8である場合には、自身からスレーブ下流機器SDまでの同期信号の伝送所要時間である第2所要時間Δt2と、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8の内部における同期信号の処理時間Δt5との合計に応じた時間分、スレーブ上流機器SUから受信した同期信号の位相に対して位相を進めた第4調整後信号を演算する。ここで、スレーブユニット8がスレーブ上流機器SUから受信して、当該スレーブユニット8の内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した時点の同期信号を「第5受信信号」とすると、第5受信信号から第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に応じた時間分位相を進めたものが第4調整後信号である。ここでは、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に応じた時間」は、第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に一致する。
【0045】
スレーブユニット8は、演算した第4調整後信号を、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8に対して発信する。そして、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8は、スレーブユニット8により発信された第4調整後信号を受信する。以下では、説明の便宜上、「第4調整後信号」は、スレーブユニット8により算出された時点の第4調整後信号を指すものとする。また、第4調整後信号としてスレーブユニット8により発信されて、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8により受信されると共に、当該スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8の内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した時点の同期信号を「第6受信信号」とする。つまり、第6受信信号の位相は、仮にスレーブ下流機器SDが上流側から受信した同期信号をそのまま下流側に発信するとした場合における、当該スレーブ下流機器SDから下流側に発信される同期信号の位相と一致する。
【0046】
本実施形態では、スレーブユニット8により演算された同期信号(第4調整後信号)は、スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDまでの伝送に伴って第2所要時間Δt2分位相が遅れると共に、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8の内部における同期信号の処理に伴って処理時間Δt5分位相が遅れる。つまり、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8により受信されて当該スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8の内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した同期信号(第6受信信号)は、スレーブユニット8により演算された同期信号(第4調整後信号)に対して、第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計分位相が遅れている。このように、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDまでの同期信号の伝送所要時間である第2所要時間Δt2と、スレーブ下流機器SDとしての他のスレーブユニット8の内部における同期信号の処理時間Δt5とに応じた遅延を考慮して、第4調整後信号を演算している。これにより、第6受信信号の位相を、スレーブユニット8がスレーブ上流機器SUから受信して、当該スレーブユニット8の内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した時点の同期信号である第5受信信号の位相に極めて近いものとすることができる。
【0047】
図11に示すように、本実施形態では、スレーブユニット8は、スレーブ下流機器SDが電源装置5である場合には、上記の第2所要時間Δt2に応じた時間分、スレーブ上流機器SUから受信した同期信号(第5受信信号)の位相に対して位相を進めた第5調整後信号を演算する。ここでは、「第2所要時間Δt2に応じた時間」は、第2所要時間Δt2に一致する。
【0048】
スレーブユニット8は、演算した第5調整後信号を、スレーブ下流機器SDとしての電源装置5に対して発信する。そして、スレーブ下流機器SDとしての電源装置5は、スレーブユニット8により発信された第5調整後信号を受信する。以下では、説明の便宜上、「第5調整後信号」は、スレーブユニット8により算出された時点の第5調整後信号を指すものとする。また、第5調整後信号としてスレーブユニット8により発信されて、スレーブ下流機器SDとしての電源装置5により受信された時点の同期信号を「第7受信信号」とする。
【0049】
本実施形態では、スレーブユニット8により演算された同期信号(第5調整後信号)は、スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDとしての電源装置5までの伝送に伴って第2所要時間Δt2分位相が遅れる。つまり、スレーブ下流機器SDとしての電源装置5により受信された同期信号(第7受信信号)は、スレーブユニット8により演算された同期信号(第5調整後信号)に対して、第2所要時間Δt2分位相が遅れている。このように、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8からスレーブ下流機器SDとしての電源装置5までの同期信号の伝送所要時間である第2所要時間Δt2に応じた遅延を考慮して、第5調整後信号を演算している。これにより、第7受信信号の位相を、スレーブユニット8がスレーブ上流機器SUから受信して、当該スレーブユニット8の内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した時点の同期信号である第5受信信号の位相に極めて近いものとすることができる。
【0050】
図4に示す例では、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、第5受信信号は、第1スレーブユニット8Aがマスタユニット7から受信した同期信号である。この場合、第1スレーブユニット8Aがマスタ下流機器MDにも相当するため、第5受信信号は、マスタ下流機器MDにより受信されて当該マスタ下流機器MDの内部における処理(同期信号の中継処理)が完了した同期信号である第4受信信号に一致する。上述したように、第4受信信号の位相は基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。そのため、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第5受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。また、上述したように、第5受信信号の位相と、第6受信信号及び第7受信信号のそれぞれの位相とは極めて近いものとなる。そのため、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第6受信信号及び第7受信信号のそれぞれの位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。したがって、スレーブ下流機器SDが電源装置5(ここでは、第3電源装置5C)である場合、当該電源装置5が第7受信信号に応じて給電線11に供給する交流電流の位相を、基準信号に応じた交流電流の位相に極めて近いものとすることができる(図11参照)。
【0051】
また、図4に示す例では、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合、第5受信信号は、第2スレーブユニット8Bが第1スレーブユニット8Aから受信した同期信号である。この場合、第2スレーブユニット8Bが、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合におけるスレーブ下流機器SDにも相当するため、第5受信信号は、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合における第6受信信号に一致する。上述したように、第1スレーブユニット8Aを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合における第6受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。そのため、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第6受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。
【0052】
また、上述したように、第5受信信号の位相と第7受信信号の位相とは極めて近いものとなる。そのため、第2スレーブユニット8Bを基準としてスレーブ上流機器SU及びスレーブ下流機器SDを定義する場合において、第7受信信号の位相は、基準信号の位相(基準位相)に極めて近いものとなる。したがって、スレーブ下流機器SDが電源装置5(ここでは、第4電源装置5D及び第5電源装置5E)である場合、当該電源装置5が第7受信信号に応じて給電線11に供給する交流電流の位相を、基準信号に応じた交流電流の位相に極めて近いものとすることができる(図11参照)。
【0053】
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、2つのスレーブユニット8(第1スレーブユニット8A、第2スレーブユニット8B)が同期システム6に設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1つのスレーブユニット8が同期システム6に設けられた構成であっても良いし、3つ以上のスレーブユニット8が同期システム6に設けられた構成であっても良い。
【0054】
(2)上記の実施形態では、第1スレーブユニット8Aに1つの電源装置5(第3電源装置5C)が接続されていると共に、第2スレーブユニット8Bに2つの電源装置5(第4電源装置5D及び第5電源装置5E)が接続された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、スレーブユニット8に3つ以上の電源装置5が接続された構成であっても良い。
【0055】
(3)上記の実施形態では、2つの電源装置5(第1電源装置5A、第2電源装置5B)がマスタユニット7に直接的に接続された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1つの電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続された構成であっても良いし、3つ以上の電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続された構成であっても良い。或いは、電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続されていない構成であっても良い。
【0056】
(4)上記第1の実施形態では、「第1所要時間Δt1に応じた時間」が第1所要時間Δt1に一致する構成を例として説明した。また、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に応じた時間」が、第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に一致する構成を例として説明した。しかし、それらの構成に限定されることなく、例えば、「第1所要時間Δt1に応じた時間」は、第1所要時間Δt1に対して所定の演算を行うことにより算出した値であっても良い。また、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に応じた時間」についても、第2所要時間Δt2と処理時間Δt3との合計に対して所定の演算を行うことにより算出した値であっても良い。
【0057】
(5)上記第2の実施形態では、「第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に応じた時間」が第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に一致する構成を例として説明した。また、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に応じた時間」が、第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に一致する構成を例として説明した。また、「第2所要時間Δt2に応じた時間」が、第2所要時間Δt2に一致する構成を例として説明した。しかし、それらの構成に限定されることなく、例えば、「第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に応じた時間」は、第1所要時間Δt1と処理時間Δt4との合計に対して所定の演算を行うことにより算出した値であっても良い。また、「第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に応じた時間」は、第2所要時間Δt2と処理時間Δt5との合計に対して所定の演算を行うことにより算出した値であっても良い。また、「第2所要時間Δt2に応じた時間」についても、第2所要時間Δt2に対して所定の演算を行うことにより算出した値であっても良い。
【0058】
(6)上記の実施形態では、マスタユニット7が、第1検査信号の発信から第1応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、第1所要時間Δt1とする構成を例として説明した。また、スレーブユニット8は、第2検査信号の発信から第2応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、第2所要時間Δt2とする構成を例として説明した。しかし、それらの構成に限定されることなく、例えば、同期信号の伝送経路の長さを被除数とし、同期信号の伝送速度を除数とした除算を行うことにより、第1所要時間Δt1及び第2所要時間Δt2のそれぞれを算出する構成としても良い。
【0059】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0060】
4.上記実施形態の概要
以下では、上記において説明した非接触給電設備の概要について説明する。
【0061】
非接触給電設備は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第1調整後信号を演算し、当該第1調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、当該スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブユニットの内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第2調整後信号を演算し、当該第2調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する。
【0062】
この構成によれば、マスタユニットは、当該マスタユニットからマスタ下流機器までの同期信号の伝送所要時間に応じた遅延を考慮して、第1調整後信号を演算する。これにより、マスタ下流機器が受信したマスタユニットからの同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。
また、本構成によれば、スレーブユニットは、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、スレーブユニットの内部における同期信号の処理時間とに応じた遅延を考慮して、第2調整後信号を演算する。これにより、スレーブ下流機器が受信したスレーブユニットからの同期信号の位相を、スレーブユニットがスレーブ上流機器から受信した同期信号の位相に極めて近いものとすることができる。
以上のように、本構成によれば、複数の電源装置及びスレーブユニットが受信する同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。そのため、マスタユニットから複数の電源装置までの同期信号の伝送所要時間が異なる場合であっても、複数の電源装置のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【0063】
また、非接触給電設備は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニットと、前記マスタユニットに対して下流側に接続されて前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットと、を備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続されており、更に少なくとも1つの前記電源装置に接続され、
前記マスタユニットに対して下流側に直接的に接続された前記スレーブユニットをマスタ下流機器とし、前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットをスレーブ上流機器とし、前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された前記電源装置及び他の前記スレーブユニットのそれぞれをスレーブ下流機器として、
前記マスタユニットは、当該マスタユニットから前記マスタ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第1所要時間と、前記マスタ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、基準位相に対して位相を進めた前記同期信号である第3調整後信号を演算し、当該第3調整後信号を前記マスタ下流機器に対して発信し、
前記スレーブユニットは、
前記スレーブ下流機器が他の前記スレーブユニットである場合には、前記スレーブユニットから前記スレーブ下流機器までの前記同期信号の伝送所要時間である第2所要時間と、前記スレーブ下流機器の内部における前記同期信号の処理時間との合計に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第4調整後信号を演算し、当該第4調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信し、
前記スレーブ下流機器が前記電源装置である場合には、前記第2所要時間に応じた時間分、前記スレーブ上流機器から受信した前記同期信号の位相に対して位相を進めた第5調整後信号を演算し、当該第5調整後信号を前記スレーブ下流機器に対して発信する。
【0064】
この構成によれば、マスタユニットは、当該マスタユニットからマスタ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、マスタ下流機器の内部における同期信号の処理時間に応じた遅延を考慮して、第3調整後信号を演算する。これにより、マスタ下流機器が受信したマスタユニットからの同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。
また、本構成によれば、スレーブユニットは、スレーブ下流機器が他のスレーブユニットである場合には、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間と、スレーブ下流機器の内部における同期信号の処理時間とに応じた遅延を考慮して、第4調整後信号を演算する。また、スレーブユニットは、スレーブ下流機器が電源装置である場合には、当該スレーブユニットからスレーブ下流機器までの同期信号の伝送所要時間に応じた遅延を考慮して、第5調整後信号を演算する。これにより、スレーブ下流機器が受信したスレーブユニットからの同期信号の位相を、スレーブユニットがスレーブ上流機器から受信した同期信号の位相に極めて近いものとすることができる。
以上のように、本構成によれば、複数の電源装置及びスレーブユニットが受信する同期信号の位相を、基準位相に極めて近いものとすることができる。そのため、マスタユニットから複数の電源装置までの同期信号の伝送所要時間が異なる場合であっても、複数の電源装置のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【0065】
ここで、前記マスタユニットは、前記マスタ下流機器に対して第1検査信号を発信するように構成され、
前記マスタ下流機器は、前記第1検査信号を受信した場合に、第1応答信号を前記マスタユニットに対して発信するように構成され、
前記マスタユニットは、前記第1検査信号の発信から前記第1応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、前記第1所要時間とすると好適である。
【0066】
この構成によれば、マスタユニットからマスタ下流機器までの伝送所要時間である第1所要時間を高精度に決定することができる。
【0067】
また、前記スレーブユニットは、前記スレーブ下流機器に対して第2検査信号を発信するように構成され、
前記スレーブ下流機器は、前記第2検査信号を受信した場合に、第2応答信号を前記スレーブユニットに対して発信するように構成され、
前記スレーブユニットは、前記第2検査信号の発信から前記第2応答信号の受信までの所要時間の半分の時間を、前記第2所要時間とすると好適である。
【0068】
この構成によれば、スレーブユニットからスレーブ下流機器までの伝送所要時間である第2所要時間を高精度に決定することができる
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示に係る技術は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 :非接触給電設備
1 :移動経路
3 :移動体
4 :受電装置
5 :電源装置
6 :同期システム
7 :マスタユニット
8 :スレーブユニット
11 :給電線
MD :マスタ下流機器
SU :スレーブ上流機器
SD :スレーブ下流機器
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