(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】高電圧ケーブル接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/713 20060101AFI20240820BHJP
H01R 13/44 20060101ALI20240820BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
H01R13/713
H01R13/44 G
B60R16/02 621Z
(21)【出願番号】P 2022027564
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 学
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 佳介
(72)【発明者】
【氏名】林 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃
(72)【発明者】
【氏名】渕上 翔太
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111982(JP,A)
【文献】特開平07-094240(JP,A)
【文献】特開2013-123285(JP,A)
【文献】特開2012-240477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/713
H01R 13/44
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧バッテリの複数の端子にそれぞれ接続される複数の第1高電圧ケーブルが接続された第1コネクタと、
車室外に配置される高電圧制御ユニットに設けられたコネクタ受部と、を備え、
前記コネクタ受部への前記第1コネクタの差し込みと、前記コネクタ受部からの前記第1コネクタの引き抜きとによって、複数の前記第1高電圧ケーブルと前記高電圧制御ユニットとの接続と、遮断と、が可能
であり、
前記高電圧制御ユニットには前記高電圧制御ユニットの外に配置された高電圧装置との間を接続する複数の第2高電圧ケーブルが接続された第2コネクタが接続され、
前記第2コネクタは、各前記第2高電圧ケーブルの一端にそれぞれ接続された複数の端子板を備え、
前記高電圧制御ユニットは、前記第2コネクタの各端子板が接続される端子台を内部に収容し、各前記端子板を前記端子台に取り付ける際に前記端子台にアクセスするための穴が設けられたユニットケーシングと、前記穴を覆うサービスカバーと、を備え、
前記第1コネクタは、前記サービスカバーを前記ユニットケーシングに固定する締結部材を覆うように前記締結部材の上部に延びて、前記締結部材へのアクセスを防止するアームを有すること、
を特徴とする高電圧ケーブル接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の高電圧ケーブル接続構造であって、
前記第1コネクタは、各前記第1高電圧ケーブルの一端にそれぞれ接続された複数のコネクタ側嵌合端子と各前記第1高電圧ケーブルの各端部とが内部に固定されるケーシングを備え、
前記コネクタ受部は、前記高電圧制御ユニットの内部に設けられた高電圧機器の複数の端子にそれぞれ接続された複数の機器側嵌合端子を備え、
各前記コネクタ側嵌合端子は各機器側嵌合端子にそれぞれ嵌合して各前記第1高電圧ケーブルと前記高電圧機器の各端子とを電気的に接続し、
前記第1コネクタは、前記ケーシングを前記高電圧制御ユニットに対して進退させることにより各前記コネクタ側嵌合端子の各前記機器側嵌合端子への嵌合と各前記コネクタ側嵌合端子の各前記機器側嵌合端子からの取り外しが可能であること、
を特徴とする高電圧ケーブル接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の高電圧ケーブル接続構造であって、
前記第1コネクタは、各前記コネクタ側嵌合端子の外周と前記ケーシングとの間にそれぞれ配置される絶縁チューブを備え、
各前記絶縁チューブの各先端が前記ケーシングの端面よりも突出していること、
を特徴とする高電圧ケーブル接続構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の高電圧ケーブル接続構造であって、
前記第1コネクタを前記コネクタ受部に差し込んだ状態で前記第1コネクタを前記高電圧制御ユニットに固定するボルトと、
前記高電圧制御ユニットに設けられ、前記高電圧バッテリの複数の端子と前記各第1高電圧ケーブルとの間にそれぞれ配置される各システムメインリレーを遮断する信号を出力するインターロック装置と、
前記高電圧制御ユニットに設けられ、前記インターロック装置に接続されるインターロックプラグ受部と、
前記インターロックプラグ受部に差し込まれるインターロックプラグと、を備え、
前記インターロックプラグは、前記インターロックプラグ受部に差し込まれた際に、前記ボルトと係合すること、
を特徴とする高電圧ケーブル接続構
造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧ケーブルと高電圧制御ユニットとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車両には、車両駆動用のモータに電力を供給する高電圧バッテリを収容したバッテリパックが搭載されている。バッテリパックには、バッテリパックに対して抜き差し可能となっており、バッテリパックから抜き取ることで高電圧バッテリの高電圧回路を遮断するサービスプラグが取り付けられている。サービスプラグは、車室の近傍に配置されて車室内に向かって引き出すように構成されているものが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電気自動車やハイブリッド車両には、モータに供給する電力を制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)が取り付けられている。PCUとモータとを接続する高電圧ケーブル、或いはPCUとバッテリとを接続する高電圧ケーブルは、高電圧ケーブルに接続したバスバーをボルトでPCUの端子に接続することによってPCUに接続される場合が多い(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載されたように、PCUと高電圧ケーブルとをボルトで接続している場合、PCUやモータの高電圧回路のメンテナンスを行う場合には、特許文献1に記載されているようなサービスプラグを取りはずして高電圧回路を遮断した後、PCUやモータ等の高電圧回路のメンテナンスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-52302号公報
【文献】特開2012-161122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、サービスプラグが車室の近傍に配置される場合には、サービスプラグを介して車室内に電磁波が伝播される可能性がある。このため、電磁波の車室内への伝播を低減するための部品を取り付ける必要があり、構造が複雑になりコストが掛かってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡便な構造で高電圧回路から車室内に伝播される電磁波を低減すると共に、メンテナンス時に高電圧回路を遮断可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高電圧ケーブル接続構造は、高電圧バッテリの複数の端子にそれぞれ接続される複数の第1高電圧ケーブルが接続された第1コネクタと、車室外に配置される高電圧制御ユニットに設けられたコネクタ受部と、を備え、前記コネクタ受部への前記第1コネクタの差し込みと、前記コネクタ受部からの前記第1コネクタの引き抜きとによって、複数の前記第1高電圧ケーブルと前記高電圧制御ユニットとの接続と、遮断と、が可能であり、前記高電圧制御ユニットには前記高電圧制御ユニットの外に配置された高電圧装置との間を接続する複数の第2高電圧ケーブルが接続された第2コネクタが接続され、前記第2コネクタは、各前記第2高電圧ケーブルの一端にそれぞれ接続された複数の端子板を備え、前記高電圧制御ユニットは、前記第2コネクタの各端子板が接続される端子台を内部に収容し、各前記端子板を前記端子台に取り付ける際に前記端子台にアクセスするための穴が設けられたユニットケーシングと、前記穴を覆うサービスカバーと、を備え、前記第1コネクタは、前記サービスカバーを前記ユニットケーシングに固定する締結部材を覆うように前記締結部材の上部に延びて、前記締結部材へのアクセスを防止するアームを有すること、を特徴とする。
【0009】
このように、車室外に配置された高電圧制御ユニットから第1コネクタを引き抜くことにより第1高電圧ケーブルと高電圧制御ユニットとを遮断が可能なので、従来技術のように、車室の近傍にサービスプラグを配置する必要がなくなる。このため、電磁波の車室内への伝播を低減するための部品を取り付ける必要がなくなり、簡便な構成で車室内に伝播する電磁波を低減することができる。また、これにより、第1コネクタを高電圧制御ユニットから取り外して高電圧回路を遮断した後でないと第2コネクタの締結部材にアクセスできないので、メンテナンス時の安全性を向上させることができる。
【0010】
本発明の高電圧ケーブル接続構造において、前記第1コネクタは、各前記第1高電圧ケーブルの一端にそれぞれ接続された複数のコネクタ側嵌合端子と各前記第1高電圧ケーブルの各端部とが内部に固定されるケーシングを備え、前記コネクタ受部は、前記高電圧制御ユニットの内部に設けられた高電圧機器の複数の端子にそれぞれ接続された複数の機器側嵌合端子を備え、各前記コネクタ側嵌合端子は各機器側嵌合端子にそれぞれ嵌合して各前記第1高電圧ケーブルと前記高電圧機器の各端子とを電気的に接続し、前記第1コネクタは、前記ケーシングを前記高電圧制御ユニットに対して進退させることにより各前記コネクタ側嵌合端子の各前記機器側嵌合端子への嵌合と各前記コネクタ側嵌合端子の各前記機器側嵌合端子からの取り外しが可能としてもよい。
【0011】
このように、ケーシングにコネクタ側嵌合端子を取り付けることによって、ケーシングを高電圧制御ユニットに対して退出させることにより、コネクタ側嵌合端子を機器側嵌合端子からの取り外し、高電圧回路を遮断することができる。
【0012】
本発明の高電圧ケーブル接続構造において、前記第1コネクタは、各前記コネクタ側嵌合端子の外周と前記ケーシングとの間にそれぞれ配置される絶縁チューブを備え、各前記絶縁チューブの各先端が前記ケーシングの端面よりも突出していること、を特徴とする高電圧ケーブル接続構造。
【0013】
これにより、第1コネクタを高電圧制御ユニットから引き抜いた状態で、作業員がコネクタ側嵌合端子に接触することを抑制できる。
【0014】
本発明の高電圧ケーブル接続構造において、前記第1コネクタを前記コネクタ受部に差し込んだ状態で前記第1コネクタを前記高電圧制御ユニットに固定するボルトと、前記高電圧制御ユニットに設けられ、前記高電圧バッテリの複数の端子と前記各第1高電圧ケーブルとの間にそれぞれ配置される各システムメインリレーを遮断する信号を出力するインターロック装置と、前記高電圧制御ユニットに設けられ、前記インターロック装置に接続されるインターロックプラグ受部と、前記インターロックプラグ受部に差し込まれるインターロックプラグと、を備え、前記インターロックプラグは、前記インターロックプラグ受部に差し込まれた際に、前記ボルトと係合してもよい。
【0015】
これにより、インターロックプラグを取り外し、インターロック装置がシステムメインリレーを遮断にした後でなければ、ボルトにアクセスできなくなるので、メンテナンス時の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、簡便な構造で高電圧回路から車室内に伝播される電磁波を低減すると共に、メンテナンス時に高電圧回路を遮断可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
参考例の高電圧ケーブル接続構造を備える車両を示す側断面図である。
【
図2】
参考例の高電圧ケーブル接続構造によって接続された高電圧制御ユニットと第1コネクタとを示す斜視図である。
【
図3】
参考例の高電圧ケーブル接続構造を示す断面図であり、
図2に示すA-A断面である。
【
図4】
参考例の高電圧ケーブル接続構造を示す一部断面図であり、
図3に示すB-B断面である。
【
図5】第1コネクタの高電圧ケーブルと、コネクタ側嵌合端子と、絶縁チューブとを示す斜視図である。
【
図6】
参考例の高電圧ケーブル接続構造を示す断面図であり、
図3に示すC部詳細である。
【
図8】
参考例の高電圧ケーブル接続構造の変形例を示す図であって、第1コネクタを高電圧制御ユニットに接続するボルトとインターロックプラグとの断面図である。
【
図9】実施形態の高電圧ケーブル接続構造によって接続された高電圧制御ユニットと第1コネクタと第2コネクタとを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して
参考例の高電圧ケーブル接続構造100について説明する。最初に
図1を参照しながら、
参考例の高電圧ケーブル接続構造100を備える車両10について説明する。尚、各図に示す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両10の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0021】
図1に示すように、車両10は、車室11と、車両10の前方のフロントコンパートメント14とを備えている。車室11とフロントコンパートメント14とはダッシュパネル13で仕切られている。フロントコンパートメント14の中には車両10を駆動するモータ等の駆動装置16と、駆動装置16に供給される高電圧の電力の制御を行う高電圧制御ユニット20とが収容されている。車室11のフロアパネル12の下側には、駆動装置16に高電圧の電力を供給する高電圧バッテリ15が搭載されている。第1高電圧ケーブル30の一端は第1コネクタ40によって高電圧制御ユニット20に接続されており、第1高電圧ケーブル30の他端は高電圧バッテリ15に接続されている。
【0022】
図2に示すように、高電圧制御ユニット20は略直方体のユニットケーシング25の内部に高電圧機器を収容したものである。高電圧制御ユニット20の車両後方の面には、第1コネクタ40がボルト54で固定されている。
【0023】
第1コネクタ40は、高電圧バッテリ15のプラス端子とマイナス端子にそれぞれ接続される2本の第1高電圧ケーブル30が接続されており、高電圧制御ユニット20のコネクタ受部21(
図1、
図3参照)に差し込まれることにより、高電圧バッテリ15と高電圧制御ユニット20に収容された高電圧機器とを接続する。第1コネクタ40とコネクタ受部21とは
参考例の高電圧ケーブル接続構造100を構成する。
【0024】
高電圧制御ユニット20は、高電圧を制御する装置であればよいが、一例を示すと、高電圧バッテリ15から供給された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するPCUでもよい。この場合、PCUの内部には、高電圧機器として電力変換器とインバータとが収容されていてもよい。
【0025】
次に
図3~5を参照しながら第1コネクタ40の詳細構造について説明する。
図3に示すように、第1コネクタ40は、ケーシング44と、コネクタ側嵌合端子35と、絶縁チューブ39とを備えている。
【0026】
図3、4に示すように、ケーシング44は、ケーシング本体41と、ケーシング蓋42と、絶縁ブッシュ43とで構成される。
【0027】
図3、4、6に示すように、ケーシング本体41は、内部に第1高電圧ケーブル30の一端部を収容する内部空間41aを備える開放箱型の部材である。ケーシング本体41の底板47の車両前方側には、底板47から車両前方側に突出した環状の突部49が設けられている。突部49の内側49aは、底板47の車両前方側の中央部に設けられた凹部47aにつながっており凹部47aの中央には孔46が設けられている。絶縁ブッシュ43は、車両前方側から突部49の上に被せられる角が丸い四角形状の絶縁部材である。絶縁ブッシュ43は、ケーシング本体41の底板47の車両前方に突出して、高電圧制御ユニット20に設けられたコネクタ受部21の内面に嵌合する。
図4、6、7に示すように、絶縁ブッシュ43には前後方向に貫通する2つの貫通孔43aが設けられており、貫通孔43aの中には絶縁チューブ39が嵌め込まれている。絶縁チューブ39については、後で
図5~7を参照して詳細に説明する。
【0028】
ケーシング本体41の底板47の前方面47cには、絶縁ブッシュ43がコネクタ受部21の内面に嵌合した際に、高電圧制御ユニット20のユニットケーシング25との間をシールするOリング50が取付けられている。
【0029】
ケーシング本体41の下部には、上下方向に延びてケーシング本体41の下端部と内部空間41aとを繋ぐ溝部51が設けられている。溝部51の中には第1高電圧ケーブル30が収容されている。また、溝部51の中には横溝52が設けられており、第1高電圧ケーブル30の外面に設けられた突起32aが横溝52に嵌まり込むことにより、第1高電圧ケーブル30のケーシング本体41に対する位置が規定される。
【0030】
図5に示すように、第1高電圧ケーブル30は、内部の導電体31と導電体31の外側を覆う絶縁被覆32とで構成されている。第1高電圧ケーブル30のケーシング本体41の内部空間41aに収容される先端部分31aは絶縁被覆32が取り外されている。先端部分31aは、ケーシング本体41の内部空間41aで車両前方に向かうように屈曲し、先端31bにはコネクタ側嵌合端子35が取付けられている。
【0031】
コネクタ側嵌合端子35は、第1高電圧ケーブル30の導電体31の先端31bに圧着されて導電体31に固定される圧着部33と、圧着部33から車両前方に向かって突出した円環状で
図3に示す高電圧制御ユニット20のコネクタ受部21に取り付けられた機器側嵌合端子22の先端部が嵌まり込んで嵌合する嵌合部34とを備えている。ここで、機器側嵌合端子22は、高電圧制御ユニット20の内部に設けられた高電圧機器(図示せず)に接続されている。
【0032】
絶縁チューブ39は、本体部36と、本体部36の後方側に設けられたフランジ38と、本体部36の前方側に設けられた先端部37とを含んでいる。本体部36は内径がコネクタ側嵌合端子35の嵌合部34の外径と同一で嵌合部34の外周が嵌まり込む部分である。先端部37は内径が嵌合部34の内径と略同一で、嵌合部34の軸方向端面34aが内部端面37aに当接する部分である。
【0033】
図7の矢印92に示すように、各絶縁チューブ39は絶縁ブッシュ43に設けられた2つの貫通孔43aに後方からそれぞれ差し込まれる。各絶縁チューブ39が差し込まれた絶縁ブッシュ43は、
図7中の矢印93に示すように車両前方側からケーシング本体41の突部49の上に被せられてケーシング本体41に取り付けられる。これにより、各絶縁チューブ39の各フランジ38は絶縁ブッシュ43の後端面43bと底板47の凹部47aの前方面47bとの間に挟み込まれて前後方向の位置が固定される。これにより、
図6に示すように、各絶縁チューブ39は、各先端部37が絶縁ブッシュ43の前端面43cより突出するようにケーシング本体41に固定される。
【0034】
図5中の矢印91、
図7中の矢印94のように、ケーシング本体41に固定された各絶縁チューブ39の本体部36の内面に、各コネクタ側嵌合端子35の各嵌合部34を後方側から差し込むと、各嵌合部34の各軸方向端面34aは各先端部37の各内部端面37aに当接し、各絶縁チューブ39に対する各コネクタ側嵌合端子35の位置が規定される。これにより、各絶縁チューブ39は、
図6に示すように各コネクタ側嵌合端子35の外周とケーシング本体41に固定された絶縁ブッシュ43との間に配置され、各絶縁チューブ39の各先端部37が絶縁ブッシュ43の前端面43cよりも突出する。
【0035】
図3に戻って、ケーシング蓋42は、ケーシング本体41の車両後方側の開放部と溝部51とを覆う部材である。ケーシング蓋42のケーシング本体41の側に絶縁板45が取り付けられている。ケーシング蓋42をケーシング本体41の後方に組み付けると、絶縁板45は、第1高電圧ケーブル30の導電体31の先端部分31aを後方から支持する。
【0036】
先端31bにそれぞれコネクタ側嵌合端子35が取り付けられている各第1高電圧ケーブル30は、各コネクタ側嵌合端子35の各嵌合部34の各軸方向端面34aがケーシング本体41に固定された各絶縁チューブ39の各先端部37の各内部端面37aに当接し、各導電体31の先端部分31aの後方がケーシング本体41に組付けられたケーシング蓋42の絶縁板45に当接することにより、ケーシング本体41に対して車両前後方向に固定される。
【0037】
ケーシング本体41とケーシング蓋42の下部には、各第1高電圧ケーブル30を下方向に延出させるケーブルカバー48が取り付けられている。
【0038】
第1コネクタ40は、以上のように構成されているので、ケーシング44を高電圧制御ユニット20に対して進出させることにより、高電圧制御ユニット20のコネクタ受部21に絶縁ブッシュ43を差し込み、第1コネクタ40の内部に固定されている2つのコネクタ側嵌合端子35と高電圧制御ユニット20に固定されている2つの機器側嵌合端子22とを接続することができる。また、ケーシング44を高電圧制御ユニット20に対して退出させることにより、第1コネクタ40の絶縁ブッシュ43をコネクタ受部21から引き抜き、2つのコネクタ側嵌合端子35と2つの機器側嵌合端子22とを遮断して、高電圧回路を遮断することができる。そして、高電圧制御ユニット20と第1コネクタ40は、ダッシュパネル13で車室11と仕切られたフロントコンパートメント14の中に収容されているので、高電圧ケーブル接続構造100からの電磁波が車室11の中に伝播することを抑制できる。
【0039】
このため、特許文献1に記載された従来技術のように、車室11の近傍にサービスプラグを配置する必要がなくなり、電磁波の車室内への伝播を低減するための部品を取り付けない簡便な構成で車室内に伝播する電磁波を低減することができる。
【0040】
また、第1コネクタ40は、各コネクタ側嵌合端子35の外周とケーシング本体41に固定された絶縁ブッシュ43の間に配置される各絶縁チューブ39の各先端部37が各コネクタ側嵌合端子35の各嵌合部34の各軸方向端面34aを覆うように配置され、絶縁ブッシュ43の前端面43cよりも前方に突出しているので、メンテナンスの際に作業者が各コネクタ側嵌合端子35に接触することを防止できる。これにより、メンテナンス時の安全性を向上させることができる。
【0041】
次に
図8を参照しながら高電圧ケーブル接続構造100の高電圧制御ユニット20のユニットケーシング25に第1コネクタ40のブラケット53を固定するボルト54の変形例について説明する。
【0042】
図1に示すように、第1コネクタ40は、高電圧制御ユニット20のコネクタ受部21に絶縁ブッシュ43を差し込んでコネクタ側嵌合端子35と機器側嵌合端子22とを接続した状態でボルト54によって高電圧制御ユニット20のユニットケーシング25に固定される。
【0043】
図8に示すように、ボルト54の頭部には、突起55が設けられている。突起55にはインターロックプラグ56のキー部56aが嵌まり込んでいる。このように、ボルト54は、インターロックプラグ56を引き抜かないと取り外すことができないように構成されている。高電圧制御ユニット20には、インターロック装置59と、インターロックプラグ56の先端57が差し込まれるインターロックプラグ受部58が取り付けられている。
【0044】
インターロックプラグ受部58はインターロックプラグ56が引き抜かれるとインターロック信号をインターロック装置59に出力する。インターロック装置59は、インターロック信号が入力されたら、高電圧バッテリ15のプラス端子とマイナス端と第1高電圧ケーブル30との間にそれぞれ配置される各システムメインリレー(図示せず)を遮断する信号を出力する。
【0045】
ボルト54は以上のように構成されているので、メンテナンスの際にインターロックプラグ56を取り外し、インターロック装置59がシステムメインリレーを遮断にした後でなければ、ボルト54にアクセスできなくなる。このため、メンテナンス時の安全性を向上させることができる。
【0046】
次の
図9を参照しなが
ら実施形態の高電圧ケーブル接続構造200について説明する。先に
図1~8を参照して説明した高電圧ケーブル接続構造100と同一の部位には同一の符号を付して説明は省略する。
【0047】
図9に示すように
、実施形態の高電圧ケーブル接続構造200は、第1コネクタ140と高電圧制御ユニット120に設けられたコネクタ受部21で構成される。コネクタ受部21の構成は、先に
図1~8を参照して説明した高電圧ケーブル接続構造100と同一構造である。
【0048】
図9に示すように、高電圧制御ユニット120は略直方体のユニットケーシング125の内部に高電圧機器を収容したものであり、高電圧制御ユニット120の車両後方の面には、第1コネクタ140、2つの第2コネクタ60A、60Bがそれぞれボルト54、62A、62Bで固定されている。
【0049】
第2コネクタ60Aは、高電圧制御ユニット120と高電圧装置(図示せず)とを接続する2本の第2高電圧ケーブル70Aが接続されており、高電圧制御ユニット120のコネクタ受部(図示せず)に差し込まれることにより、高電圧装置と高電圧制御ユニット120に収容された高電圧機器とを接続する。第2コネクタ60Bも第2コネクタ60Aと同様の構成で2本の第2高電圧ケーブル70Bが接続されて他の高電圧装置と高電圧制御ユニット120に収容された高電圧機器とを接続する。
【0050】
第2コネクタ60A、60Bは、内部に設けられた端子板(図示せず)を高電圧制御ユニット120の内部に設けられた端子台(図示せず)に締結ボルト(図示せず)で締結するボルト締結式コネクタである。ここで、端子板と端子台と締結ボルトは、通常の使用時に通電することを目的とした導電性の部分である活電部である。高電圧制御ユニット120の上面には、締結ボルトにアクセスするための穴(図示せず)が設けられている。この穴は、ユニットケーシング125に締結部材である固定ボルト64A、64Bで固定されたサービスカバー63A,63Bで塞がれている。
【0051】
高電圧制御ユニット120、高電圧装置は、高電圧を制御する装置であればよいが、一例を示すと、高電圧制御ユニット120は、高電圧バッテリ15から供給される高電圧の電力を2つの高電圧装置に分配して供給する電力供給ユニット(ESU)であり、高電圧装置は、モータへの駆動電力を制御するPCUでもよい。
【0052】
図9に示すように、第1コネクタ140は、ケーシング144を構成するケーシング蓋142の上面にアーム80が設けられている。それ以外の構成は、先に
図1~
図8を参照して説明した第1コネクタ40と同一の構成である。
【0053】
図9に示すように、アーム80は、高電圧制御ユニット120のユニットケーシング125の上面に沿って、サービスカバー63A、63Bをユニットケーシング125に固定する固定ボルト64A、64Bの上部を覆うように延びている。このため、メンテナンスの際には、ボルト54を外して第1コネクタ140を高電圧制御ユニット120から抜き取らないと固定ボルト64A、64Bにアクセスできず、サービスカバー63A、63Bを外すことができない。このため、第1コネクタ140を高電圧制御ユニット120から抜き取って高電圧回路を遮断した後でなければ第2コネクタ60A、60Bの活電部を締結している締結ボルトの取り外しを行うことができず、メンテナンスの際の安全性を向上させることができる。
【0054】
また、高電圧ケーブル接続構造200は、高電圧ケーブル接続構造100と同様、第1コネクタ140を引き抜くことによって高電圧回路を遮断可能にできる。
【0055】
更に、高電圧ケーブル接続構造200は、高電圧制御ユニット120と第1コネクタ140がフロントコンパートメント14の中に収容されているので、高電圧ケーブル接続構造200からの電磁波が車室11の中に伝播することを抑制できる。このため、特許文献1に記載された従来技術のように、車室11の近傍にサービスプラグを配置する必要がなくなり、電磁波の車室内への伝播を低減するための部品を取り付けない簡便な構成で車室内に伝播する電磁波を低減することができる。
【0056】
以上説明した各参考例及び実施形態では、高電圧ケーブル接続構造100、200を構成する高電圧制御ユニット20、120と第1コネクタ40、140は、車両10のフロントコンパートメント14の中に配置されていることとして説明したが車室11の外に配置されていればこれに限らない。例えば、車両後方のリアコンパートメント(図示せず)の中に配置してもよい。この場合でも、高電圧ケーブル接続構造100、200から車室11の中への電磁波の伝播を抑制できる。
【0057】
以上の説明では、第1コネクタ40は、高電圧バッテリ15のプラス端子とマイナス端子にそれぞれ接続される2本の第1高電圧ケーブル30が接続されるとして説明したが、これに限らず、3本以上の複数の第1高電圧ケーブル30が接続されてもよい。その場合には、高電圧制御ユニット20に固定されている機器側嵌合端子22も3つ以上の複数でもよい。同様に、第2コネクタ60A、60Bには3つ以上の複数の第2高電圧ケーブル70A、70Bが接続されてもよい。
【0058】
また、以上の説明では、サービスカバー63A、63Bは、固定ボルト64A、64Bでユニットケーシング125に固定されることとして説明したがこれに限らず、ユニットケーシング125に埋込ボルトを設定し、ナットをねじ込むことで固定してもよい。この場合、ナットは締結部材を構成する。
【符号の説明】
【0059】
10 車両、11 車室、12 フロアパネル、13 ダッシュパネル、14 フロントコンパートメント、15 高電圧バッテリ、16 駆動装置、20、120 高電圧制御ユニット、21 コネクタ受部、22 機器側嵌合端子、25、125 ユニットケーシング、30 第1高電圧ケーブル、31 導電体、31a 先端部分、31b 先端、32 絶縁被覆、32a 突起、33 圧着部、34 嵌合部、34a 軸方向端面、35 コネクタ側嵌合端子、36 本体部、37 先端部、37a 内部端面、38 フランジ、39 絶縁チューブ、40 第1コネクタ、41 ケーシング本体、41a 内部空間、42、142 ケーシング蓋、43 絶縁ブッシュ、43a 貫通孔、43b 後端面、43c 前端面、44、144 ケーシング、45 絶縁板、46 孔、47 底板、47a 凹部、47b、47c 前方面、48 ケーブルカバー、49 突部、50 Oリング、51 溝部、52 横溝、53 ブラケット、54、62A ボルト、55 突起、56 インターロックプラグ、56a キー部、57 先端、58 インターロックプラグ受部、59 インターロック装置、60A、60B 第2コネクタ、63A、63B サービスカバー、64A、64B 固定ボルト、70A、70B 第2高電圧ケーブル、80 アーム、100、200 高電圧ケーブル接続構造。