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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】検査装置及び検査装置を用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20240820BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240820BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240820BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60M7/00 X
H02J50/10
B60L5/00 B
B60M1/28 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022036474
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131614
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 敦司
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭司
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-67747(JP,A)
【文献】特許第7344480(JP,B2)
【文献】特開2007-209064(JP,A)
【文献】特開2021-3946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/28
B60M 7/00
B60L 5/00-5/42
H02J 50/10-50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って互いに平行状に配置された第1給電線及び第2給電線と、前記第1給電線及び前記第2給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備えて、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により前記受電装置の受電コイルに誘導起電力を生じさせる非接触給電設備を対象とする検査装置であって、
検査のために前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置され、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により誘導起電力を生じる検査用コイルと、
前記検査用コイルが巻回されるコアと、
前記検査用コイルの両端のそれぞれに接続された一対の出力線と、
電気的絶縁性を有する絶縁材により前記検査用コイル及び前記コアを覆うように形成されたカバーと、を備え、
前記検査用コイルの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記軸方向に直交する方向を径方向とし、前記径方向に沿う各方向の内の特定の方向を特定径方向として、
前記カバーは、前記検査用コイルを覆うように形成されたコイルカバー部と、前記コイルカバー部に対して前記軸方向第1側に配置されていると共に前記コイルカバー部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された突出部と、を備え、
前記第1給電線と前記第2給電線との設計上の間隔を設計間隔として、
前記コイルカバー部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より小さく、
前記突出部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より大きい、検査装置。
【請求項2】
前記コアは、前記軸方向に沿って配置されて周囲に前記検査用コイルが巻回される巻回部と、前記巻回部に対して前記軸方向第1側に配置されていると共に前記巻回部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された突出コア部と、を備え、
前記突出コア部は、前記カバーの前記突出部の内部に配置されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記突出コア部を第1突出コア部として、
前記コアは、前記巻回部に対して前記軸方向第2側に配置されていると共に前記巻回部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された第2突出コア部をさらに備え、
前記カバーは、前記コイルカバー部と前記第1突出コア部を覆う前記突出部としての第1突出部とに加えて、前記第2突出コア部を覆う第2突出部をさらに備え、
前記軸方向及び前記特定径方向の双方に直交する方向を第2特定径方向として、
前記第2突出部の前記第2特定径方向の寸法は前記設計間隔より小さく、前記第2突出部の前記特定径方向の寸法は前記設計間隔より大きい、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1給電線は第1支持部材により支持され、前記第2給電線は第2支持部材により支持されており、
前記検査用コイル、前記コア、及び前記カバーを支持する支持体をさらに備え、
前記第1支持部材の下面に当接する第1当接面を備えた第1当接部材と、前記第2支持部材の下面に当接する第2当接面を備えた第2当接部材とが、前記支持体に支持されている、請求項1から3の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1当接部材と前記第2当接部材とが、それぞれ前記支持体に対して着脱自在に支持されている、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査用コイル、前記コア、及び前記カバーを支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、前記検査用コイル及び前記コアに対して前記軸方向第1側に配置されていると共に、延長部材が着脱自在に連結される連結部を備え、
前記延長部材は、前記連結部に連結された状態で、前記軸方向に沿って前記支持体から前記軸方向第1側に延在するように形成されている、請求項1から5の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記カバーと当該カバーにより覆われた前記検査用コイル及び前記コアと、一対の前記出力線とを第1検査ユニットとして、
前記第1検査ユニットと同じ構成の第2検査ユニットをさらに備え、
前記第1検査ユニットの一対の前記出力線をそれぞれ第1出力線及び第2出力線とし、前記第2検査ユニットの一対の前記出力線をそれぞれ第3出力線及び第4出力線として、
前記第1検査ユニットの前記検査用コイルと前記第2検査ユニットの前記検査用コイルとが同じ巻回方向で直列に接続されるように、前記第1検査ユニットの前記第2出力線と前記第2検査ユニットの前記第3出力線とが接続されている、請求項1から6の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記第1検査ユニットと前記第2検査ユニットとを連結する連結体を備え、
前記第1検査ユニットは、前記連結体に対して前記軸方向に沿う軸心周りに回転自在に支持され、
前記第2検査ユニットは、前記連結体に対して前記軸方向に沿う軸心周りに回転自在に支持されている、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の検査装置を用いて前記非接触給電設備を検査する検査方法であって、
前記非接触給電設備において、前記第1給電線と前記第2給電線との組である給電線組が前記移動経路に沿って複数並ぶように配置され、第1の前記給電線組である第1給電線組と第2の前記給電線組である第2給電線組とが隣接して配置されている場合に、
前記第1検査ユニットの前記検査用コイルを前記第1給電線組の前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置し、前記第2検査ユニットの前記検査用コイルを前記第2給電線組の前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置した状態とする検査ユニット配置工程と、
前記検査ユニット配置工程の後、前記第1検査ユニットの前記第1出力線と前記第2検査ユニットの前記第4出力線との間の電圧を計測する電圧計測工程と、
を実行する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1給電線及び第2給電線が発生させる磁界により移動体の受電装置の受電コイルに誘導起電力を生じさせる非接触給電設備を対象とする検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002-67747号公報には、交流電流が流れる第1給電線及び第2給電線を備えた誘導線路(47)が、移動体(V)の移動経路に沿って複数配置された電源設備(非接触給電設備)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。移動経路を移動する移動体(V)は、複数の誘導線路(47)を乗り継ぎながら電力の供給を受けて走行する。移動体(V)が円滑に走行するためには、誘導経路(47)のそれぞれに安定して交流電流が流れている必要がある。また、移動体(V)は、隣接する誘導線路(47)を乗り継いで移動するため、乗り継ぎ区間においても安定した給電を受けるためには、隣接する誘導線路(V)同士の交流電流が同期していることも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-67747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それぞれの誘導線路に流れる交流電流が適切であるか否かを検査する方法として、例えば移動体の受電装置に給電される電力に基づいて判定することが考えられる。しかし、検査のために移動体を走行させなくてはならず、また、通常動作では必要のない測定装置なども移動体に搭載しなければならず、検査を行うことが容易ではない。非接触給電設備は、移動体を動かすための重要な設備であり、適切に検査やメンテナンスされることが好ましい。また、この検査は、安全、且つ日常的に効率良く実施可能であることが好ましい。
【0005】
上記背景に鑑みて、非接触給電設備を検査対象とした、作業性及び安全性に優れた検査装置の提供、並びに検査装置を用いた検査方法の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みた検査装置は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って互いに平行状に配置された第1給電線及び第2給電線と、前記第1給電線及び前記第2給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備えて、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により前記受電装置の受電コイルに誘導起電力を生じさせる非接触給電設備を対象とする検査装置であって、検査のために前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置され、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により誘導起電力を生じる検査用コイルと、前記検査用コイルが巻回されるコアと、前記検査用コイルの両端のそれぞれに接続された一対の出力線と、電気的絶縁性を有する絶縁材により前記検査用コイル及び前記コアを覆うように形成されたカバーと、を備え、前記検査用コイルの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記軸方向に直交する方向を径方向とし、前記径方向に沿う各方向の内の特定の方向を特定径方向として、前記カバーは、前記検査用コイルを覆うように形成されたコイルカバー部と、前記コイルカバー部に対して前記軸方向第1側に配置されていると共に前記コイルカバー部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された突出部と、を備え、前記第1給電線と前記第2給電線との設計上の間隔を設計間隔として、前記コイルカバー部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より小さく、前記突出部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より大きい。
【0007】
コイルカバー部に覆われた検査用コイルが、検査のために第1給電線と第2給電線との間に配置されると、第1給電線及び第2給電線が発生させる磁界により検査用コイルに誘導起電力が生じる。この誘導起電力により生じる電圧は一対の出力線に出力される。よって、一対の出力線間の電圧を検出することにより、第1給電線及び第2給電線が発生させる磁界の大きさや、第1給電線及び第2給電線に適切に交流電流が流れているか否か、を検査することができる。また、コイルカバー部の特定径方向の寸法が設計間隔より小さく、突出部の特定径方向の寸法が設計間隔より大きいため、検査の際に、例えばコイルカバー部が突出部よりも上側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。当然ながら、コイルカバー部が突出部よりも下側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して上側から対向する位置に配置することでも、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。また、カバーが絶縁材により検査用コイル及びコアを覆うように形成されているため、検査装置が第1給電線又は第2給電線に接触するようなことがあっても、第1給電線又は第2給電線を短絡させることが回避される。つまり、安全な検査を実現することができる。このように、本構成によれば、非接触給電設備を検査対象とした、作業性及び安全性に優れた検査装置を提供することができる。そして、そのような検査装置を用いることで、作業性及び安全性に優れた検査方法も提供することができる。
【0008】
検査装置、並びに検査装置を用いた検査方法のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非接触給電設備を備えた物品搬送設備の平面図
図2】物品搬送車の正面図
図3】非接触給電設備のシステム構成を示す模式的なブロック図
図4】隣接する給電線組の交流電流の位相(ほぼ同期している状態)と、乗り継ぎ部に位置するピックアップコイルに誘導される電流との関係を示す波形図
図5】隣接する給電線組の交流電流の位相(同期していない状態)と、乗り継ぎ部に位置するピックアップコイルに誘導される電流との関係を示す波形図
図6】検査ユニット(検査装置)の一例を示す斜視図
図7】検査時における設置状態での検査ユニット(検査装置)の断面図
図8】検査ユニット(検査装置)の他の例を示す斜視図
図9】乗り継ぎ部において検査を行う場合の検査ユニットの接続例を示す図
図10】乗り継ぎ部における検査作業の一例を示す図
図11】2つの検査ユニットを連結した検査装置の一例を示す図
図12】検査における判定の一例を示すフローチャート
図13】給電線の接続例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、物品搬送設備における非接触給電設備に利用される形態を例として、検査装置、並びに検査装置を用いた検査方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、物品搬送設備200は、移動体30と、移動体30の移動経路10に沿って配置された走行レール20とを備えている。本実施形態において、移動体30は、走行レール20に案内されて移動経路10に沿って走行する物品搬送車である。例えば、移動経路10は、1つの環状の主経路10aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路10bと、これら主経路10aと副経路10bとを接続する接続経路10cとを備えている。本実施形態では、移動体30は、矢印で示す方向に一方通行で移動経路10を走行する。また、本実施形態では、物品搬送車としての移動体30による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。移動体30は、半導体基板に各種処理を施す物品処理部Pを搬送先及び搬送元としてFOUPを搬送する。
【0011】
図2に示すように、本実施形態では、移動体30は、天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール20に案内されて走行する走行部12と、走行レール20の下方に位置して走行部12に吊り下げ支持された搬送車本体13と、走行レール20に沿って配設された給電線(給電線組3(第1給電線1、第2給電線2による組))から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4とを備えている。搬送車本体13には、搬送車本体13に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部(不図示)が備えられている。
【0012】
走行部12には、図2に示すように、電動式の駆動モータ14にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、走行レール20のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部12には、上下方向Vに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対の走行レール20における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部12は、走行用の駆動モータ14やその駆動回路等を備えて構成されており、移動体30を走行レール20に沿って走行させる。搬送車本体13には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0013】
これらの駆動モータ14や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線(給電線組3(第1給電線1、第2給電線2))から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、受電装置4を介して移動体30に駆動用電力を供給する給電線は、走行レール20に沿って、つまり移動経路10に沿って配設されている。本実施形態では、給電線は、受電装置4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。具体的には、受電装置4を備えた移動体30の移動経路10に沿って互いに平行状に配置された第1給電線1及び第2給電線2が備えられている。尚、共通の電源装置5(図3を参照して後述する)に接続されている第1給電線1及び第2給電線2を総称して給電線組3と称する。
【0014】
本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、移動体30に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である第1給電線1及び第2給電線2に高周波電流を流し、第1給電線1及び第2給電線2の周囲に磁界を発生させる。受電装置4は、ピックアップコイル40及び磁性体コア(ピックアップコイル40等に隠れているため符号無し)を備えて構成されており、ピックアップコイル40は磁界からの電磁誘導によって誘起される。誘起された交流の電力は、全波整流回路などの整流回路や、平滑コンデンサ等を備えた受電回路(不図示)により直流に変換され、アクチュエータや駆動回路に供給される。
【0015】
本実施形態の非接触給電設備100は、このようなワイヤレス給電技術を用いて、移動体30に非接触で電力を供給する設備である。図3に示すように、非接触給電設備100には、給電線組3に接続され、給電線組3に交流電流を供給する電源装置5が備えらており、受電装置4に非接触で電力を供給する。図1を参照して例示したように、物品搬送設備200は、1つの大きな環状の主経路10aと、主経路10aよりも小さな環状の複数の副経路10bとを備えている。このように、比較的大きな規模の物品搬送設備200では、送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止することなどを抑制するために、給電線組3及び電源装置5により構成される電力供給系統が1系統だけではなく、複数系統設けられる。図3のブロック図には、第1給電線組3A及び第1電源装置5Aで構成される第1系統、第2給電線組3B及び第2電源装置5Bで構成される第2系統、第3給電線組3C及び第3電源装置5Cで構成される第3系統、・・・などの複数の電力供給系統を備える形態を例示している。
【0016】
電源装置5には、例えばインバータ回路を備えたスイッチング電源回路を中核として構成された電源回路(不図示)、及び電源回路を制御する電源制御部(不図示)が搭載されている。電源制御部は、指令値に基づいてインバータ回路を構成するスイッチング素子のスイッチング制御信号のデューティーを制御する。例えば、電源制御部は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により電源回路に交流電流を出力させる。ここで、指令値は、例えば、電流値(実効値、振幅、波高値(ピーク・トゥ・ピーク値)など)や、PWM制御におけるデューティーである。
【0017】
また、非接触給電設備100は、複数の電力供給系統間における交流電流の位相を同期させるための同期システム(不図示)も備えている。例えば、非接触給電設備100には、複数の電源装置5を統括する制御装置50が備えられており、制御装置50から同期信号がそれぞれの電源装置5に供給される。それぞれの電源装置5には、同期回路(不図示)が備えられており、同期信号に基づいて同期回路が交流電流の位相を調整する。これにより、異なる電力供給系統であっても、給電線組3にはほぼ同じ位相の交流電流が流れ、移動体30は何れの電力供給系統からも同様に電力を供給されることが可能である。
【0018】
移動経路10を移動する移動体30は、複数の電力供給系統を乗り継ぎながら電力の供給を受けて走行する。例えば、第1給電線組3A及び第1電源装置5Aで構成される第1系統からは、乗り継ぎ部TSを経由して、第2給電線組3B及び第2電源装置5Bで構成される第2系統へと、電力供給系統を乗り継ぐ。図3において第3系統上に位置している第1の移動体31のように、移動体30が1つの電力供給系統上に位置している場合には、移動体30は1つの電力供給系統から電力の供給を受ける。しかし、図3において第1系統と第2系統との間の乗り継ぎ部TSに位置している第2の移動体32のように、移動体30が隣接する2つの電力供給系統の間に位置している場合には、移動体30はこれら2系統の電力供給系統から電力の供給を受ける。
【0019】
ここで、第1系統と第2系統との同期の状態と、第2の移動体32が受ける電力とについて考える。図4に示すように、第1系統における第1給電線組3Aを流れる交流電流(I31)と、第2系統における第2給電線組3Bを流れる交流電流(I32)との位相とがほぼ同期している場合には、ピックアップコイル40に振幅が「A1」の交流電流(誘導電流I40)が誘導される。しかし、図5に示すように、第1給電線組3Aを流れる交流電流(I31)と、第2給電線組3Bを流れる交流電流(I32)との位相とが同期していないと、ピックアップコイル40に流れる交流電流(誘導電流I40)の振幅は、同期している場合の振幅「A1」よりも小さい「A2」となる。その結果、乗り継ぎ部TSにおいて、移動体30の移動速度が低下したり、移動体30が停止してしまったりするおそれがある。
【0020】
上述したように、それぞれの電力供給系統は、制御装置50と、それぞれの電源装置5における同期回路との協働によって、交流電流が同期するように制御されている。同期制御は、制御装置50とそれぞれの電源装置5との物理的な位置関係や、それぞれの電源装置5が電力を供給する電力供給系統(給電線組3)における負荷等に応じて設定されたパラメータに応じて実行されている。しかし、物品搬送設備200及び非接触給電設備100の経年変化や、負荷の変動等によって当該パラメータが適切ではなくなる場合もある。また、設定ミスや意図しない変更等によって当該パラメータが適切ではなくなったり、同期回路に故障等が発生したり、給電線の配線にトラブルが生じたりする場合もある。そのような場合に、電力供給系統の間の同期が損なわれると乗り継ぎ部TSにおいて移動体30に適切に電力を供給できなくなることがある。また、乗り継ぎ部TSに限らず、電源装置5の故障や、給電線のトラブル等によって、単一の電力供給系統における電力供給が損なわれる場合もある。
【0021】
非接触給電設備100は、移動体30を動かすための重要な設備であり、適切に検査やメンテナンスされることが好ましい。以下に詳細を説明する本実施形態の検査装置70は、作業性及び安全性に優れ、適切に非接触給電設備100を検査することができる。
【0022】
図6の斜視図は、そのような検査装置70の一例としての検査ユニット7を示している。また、図7は、検査時における設置状態での検査ユニット7の断面図を示している。検査装置70は、1つの検査ユニット7により構成されてもよいし、複数の検査ユニット7を組み合わせて構成されてもよいし(例えば図9図10等)、検査装置70が複数の検査ユニット7を含む場合、複数の検査ユニット7が連結されて一体化されていてもよい(例えば図11)。
【0023】
図6及び図7に示すように、検査ユニット7は、検査用コイル71と、コア72と、カバー73と、一対の出力線8とを備えている。検査用コイル71は、移動体30の受電装置4におけるピックアップコイル40に対応するものであり、検査のために第1給電線1と第2給電線2との間に配置され、第1給電線1及び第2給電線2が発生させる磁界により誘導起電力を生じる。コア72は、移動体30の受電装置4における磁性体コアに対応するものであり、検査用コイル71が巻回される。カバー73は、検査用コイル71及びコア72を絶縁するためのカバー部材であり、電気的絶縁性を有する絶縁材により検査用コイル71及びコア72を覆うように形成されている。一対の出力線8は、検査用コイル71の両端のそれぞれに接続されており、検査用コイル71に誘導電流を流す電圧は一対の出力線8を介して検出可能である。
【0024】
ここで、検査用コイル71の軸心に沿う方向を軸方向Yとし、軸方向Yの一方側を軸方向第1側Y1とし、前記軸方向Yの他方側を軸方向第2側Y2とする。また、軸方向Yに直交する方向を径方向Rとし、径方向Rに沿う各方向の内の特定の方向を特定径方向Xとする。また、径方向Rの内、特定径方向Xに直交する方向を第2特定径方向Zとする。つまり、第2特定径方向Zは、軸方向Y及び特定径方向Xの双方に直交する方向である。尚、特定径方向Xは、「第1特定径方向」と称してもよい。
【0025】
図6に示すように、カバー73は、コイルカバー部74と突出部75とを備えている。コイルカバー部74は、検査用コイル71を覆うように形成されている、そして、突出部75は、コイルカバー部74に対して軸方向第1側Y1に配置されていると共にコイルカバー部74に対して少なくとも特定径方向Xの両側に突出するように形成されている。ここで、図7に示すように、第1給電線1と第2給電線2との設計上の間隔を設計間隔Gとする。コイルカバー部74の特定径方向Xの寸法(第1寸法D1)は、この設計間隔Gより小さく、突出部75の特定径方向Xの寸法(第2寸法D2)は、設計間隔Gより大きい。
【0026】
図7に示すように、コイルカバー部74に覆われた検査用コイル71が、検査のために第1給電線1と第2給電線2との間に配置されると、第1給電線1及び第2給電線2が発生させる磁界により検査用コイル71に誘導起電力が生じる。この誘導起電力により生じる電圧は一対の出力線8に出力される。従って、一対の出力線8の間の電圧を検出することにより、第1給電線1及び第2給電線2が発生させる磁界の大きさや、第1給電線1及び第2給電線2に適切に交流電流が流れているか否かを検査することができる。
【0027】
また、第1寸法D1が設計間隔Gより小さく、第2寸法D2が設計間隔Gより大きいため、検査の際に、コイルカバー部74が突出部75よりも上側となる向きで、突出部75を第1給電線1及び第2給電線2に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部74に覆われた検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間の適切な位置に配置することができる(例えば図10参照)。当然ながら、コイルカバー部74が突出部75よりも下側となる向きで、突出部75を第1給電線1及び第2給電線2に対して上側から対向する位置に配置することでも、コイルカバー部74に覆われた検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間の適切な位置に配置することができる。
【0028】
また、上述したように、カバー73が絶縁材により検査用コイル71及びコア72を覆うように形成されているため、検査ユニット7が第1給電線1又は第2給電線2に接触するようなことがあっても、第1給電線1又は第2給電線2を短絡させることが回避され、安全な検査を実現することができる。
【0029】
図6及び図7に示す形態では、コア72は、軸方向Yに沿って配置されて周囲に検査用コイル71が巻回される巻回部72aと、巻回部72aに対して軸方向第1側Y1に配置されていると共に巻回部72aに対して少なくとも特定径方向Xの両側に突出するように形成された突出コア部72bとを備えている。検査用コイル71が巻回される巻回部72aは検査用コイル71と共にカバー73のコイルカバー部74の内部に配置されている。また、突出コア部72bは、カバー73の突出部75の内部に配置されている。
【0030】
上述したように、検査の際に、例えばコイルカバー部74が突出部75よりも上側となる向きで、突出部75を第1給電線1及び第2給電線2に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部74に覆われた検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間の適切な位置に配置することができる。この場合、検査の際に、第1給電線1及び第2給電線2に対して下側から対向する位置にコア72の突出コア部72bが配置される。逆の場合も同様に、検査の際に、第1給電線1及び第2給電線2に対して上側から対向する位置にコア72の突出コア部72bが配置される。何れの場合においても、突出コア部72bが第1給電線1及び第2給電線2に近接して配置できるため、検査の際に検査用コイル71に生じる誘導起電力を大きくし易く、検査の精度を高め易い。
【0031】
尚、この形態に限らず、例えば図8に示すように、コア72は、巻回部72aに対して軸方向第1側Y1に配置されている突出コア部72b(第1突出コア部)に加えて、巻回部72aに対して軸方向第2側Y2に配置されている突出コア部(第2突出コア部72c)を備えていてもよい。即ち、コア72は、巻回部72aに対して軸方向第2側Y2に配置されていると共に巻回部72aに対して少なくとも特定径方向Xの両側に突出するように形成された第2突出コア部72cをさらに備えていてもよい。この場合、図8に示すように、コア72の形状に応じて、カバー73は、コイルカバー部74と、第1突出コア部(突出コア部72b)を覆う突出部75(第1突出部)とに加えて、第2突出コア部72cを覆う突出部(第2突出部76)をさらに備えていると好適である。この形態では、検査の際に、検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間に配置した状態で、第1突出コア部(突出コア部72b)と第2突出コア部72cとが、給電線組3を軸方向Yの両側から挟むように配置されることになる。従って、検査の際に検査用コイル71に生じる誘導起電力をさらに大きくし易く、検査の精度をより高め易い。
【0032】
この形態では、給電線組3を上下両方向からコア72で挟むことになる。このため、例えば、下方から検査ユニット7を配置する場合には、第2突出部76が第1給電線1と第2給電線2との間を通過した後、第2突出部76を軸方向に沿う軸回りに90°回転させることで、給電線組3を上下両方向から第1突出部(突出部75)と第2突出部76とで挟むとよい。上方から検査ユニット7を配置する場合も同様である。何れにしても、第2突出部76が第1給電線1及び第2給電線2との間を通過できるように、この形態では、第2突出部76の第2特定径方向Zの寸法(第3寸法D3)は設計間隔Gより小さい。本例では、コイルカバー部74の第2特定径方向Zの寸法も設計間隔Gより小さい。より好ましくは、コイルカバー部74の径方向Rにおける最大の寸法が設計間隔Gよりも小さい。また、第2突出部76が第1給電線1及び第2給電線2との間を通過し、軸方向に沿う軸回りに90°回転した後は、第1給電線1及び第2給電線2と第2突出部76とが軸方向Y視で重複することが好ましいから、第2突出部76の特定径方向Xの寸法(第4寸法D4)は設計間隔Gより大きい。尚、コア72の形状が対称である場合には、第2寸法D2と第4寸法D4とが同一であると好適である。
【0033】
ところで、上述したように、検査の際に、コイルカバー部74が突出部75よりも上側となる向きで、突出部75を第1給電線1及び第2給電線2に対して下側から対向する位置に配置する場合(例えば図10参照)、検査ユニット7は作業者の目の高さよりも高い場所に位置する。コイルカバー部74が突出部75よりも下側となる向きで、突出部75を第1給電線1及び第2給電線2に対して上側から対向する位置に配置する場合も同様に、検査ユニット7は作業者の目の高さよりも低い場所に位置する場合が多い。つまり、検査ユニット7と、給電線組3と、作業者の目の高さとが、ほぼ水平に並ぶような状態で検査を行うことは少ない。従って、検査ユニット7は、作業者が検査ユニット7と給電線組3との位置関係を目視以外の方法で作業者が把握できるように構成されていることが好ましい。
【0034】
図2及び図7に示すように、第1給電線1及び第2給電線2は、走行レール20に支持されたブラケット25に支持されている。具体的には、第1給電線1は、第1走行レール27に支持された第1ブラケット23により支持され、第2給電線2は、第2走行レール28に支持された第2ブラケット24により支持されている。第1ブラケット23及び第1走行レール27は、第1給電線1を支持する第1支持部材21に相当し、第2ブラケット24及び第2走行レール28は、第2給電線2を支持する第2支持部材22に相当する。そして、第1支持部材21及び第2支持部材22は、給電線組3を支持する支持部材29に相当する。検査ユニット7は、この支持部材29に案内されて給電線組3に対して適切な位置に配置できるように構成されている。
【0035】
図6から図8に示すように、検査ユニット7は、検査用コイル71、コア72、及びカバー73を支持する支持体6をさらに備えている。この支持体6は、さらに、支持部材29に当接して給電線組3に対して検査ユニット7を適切な位置に配置するための当接部材63として、第1当接部材61及び第2当接部材62を支持している。第1当接部材61は、第1支持部材21の下面21a(ここでは第1走行レール27の下面27a)に当接する第1当接面61aを備えている。また、第2当接部材62は、第2支持部材22の下面22a(ここでは第2走行レール28の下面28a)に当接する第2当接面62aを備えている。これにより、第1当接部材61の第1当接面61aを第1支持部材21の下面21aに当接させ、第2当接部材62の第2当接面62aを第2支持部材22の下面22aに当接させるだけで、容易に、コイルカバー部74に覆われた検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間の適切な位置に配置することができる。
【0036】
尚、ここでは、第1走行レール27の下面27aが第1支持部材21の下面21aに相当し、第2走行レール28の下面28aが第2支持部材22の下面22aに相当する形態を例示したが、走行レール20の下面に限らずブラケット25の下面25aを支持部材29の下面としてもよい。具体的には、第1ブラケット23の下面23aが第1支持部材21の下面21aに相当し、第2ブラケット24の下面24aが第2支持部材22の下面22aに相当するものであってもよい。また、図2図7に示すように、走行レール20の上面や、ブラケット25の上面が平面状の場合には、給電線組3に対して上方から検査ユニット7が配置される際に、これらの支持部材29の上面が、第1当接面61a及び第2当接面62aに当接して検査用コイル71が適切な位置に配置されてもよい。
【0037】
尚、このような第1当接部材61及び第2当接部材62は、支持体6に固定的に設けられていてもよいが、それぞれ支持体6に対して着脱自在に支持されていてもよい。本実施形態では、当接部材63を把持して保持することが可能な保持部65が支持体6に形成されている。第1当接部材61及び第2当接部材62が、支持体6に対して着脱自在な場合、第1当接部材61及び第2当接部材62をそれぞれ異なる形状のものに交換したり、取り外したりすることが容易である。例えば、非接触給電設備100の構造や検査場所等によっては、第1当接部材61及び第2当接部材62の少なくとも一方が邪魔になる場合も考えられる。このような場合には、邪魔になる少なくとも一方の第1当接部材61及び第2当接部材62を取り外すことで柔軟に検査を実施することができる。即ち、非接触給電設備100の構造や検査場所等によって適切な形状の第1当接部材61及び第2当接部材62を用いることができるので、検査ユニット7(検査装置70)を共通化することができる。
【0038】
尚、本実施形態では、第1当接部材61及び第2当接部材62が、それぞれ支持体6に対して着脱自在に支持されている形態も含めて、検査ユニット7が第1当接部材61及び第2当接部材62を備えている形態を例示した。しかし、作業者が給電線組3と検査ユニット7との位置関係を目視等によって容易に確認可能な場合では、検査ユニット7が第1当接部材61及び第2当接部材62を備えずに構成されていてもよい。
【0039】
ところで、移動体30が本実施形態のような天井搬送車の場合などでは、一般的に走行レール20や給電線組3は、天井側に配置されており、作業者の背よりも高い場所に位置していることも多い。このため、検査ユニット7には、図6から図8に示すように、延長部材60が着脱自在に備えられていると好適である。支持体6は、検査用コイル71及びコア72に対して軸方向第1側Y1に、軸方向Yに沿って延在するハンドル部67を備えている。作業者は、このハンドル部67を握ることよって検査ユニット7を給電線組3に対して配置する。延長部材60は、このハンドル部67の軸方向第1側Y1の先端部に着脱可能である。即ち、支持体6は、検査用コイル71及びコア72に対して軸方向第1側Y1に配置されていると共に、延長部材60が着脱自在に連結される連結部66を備えている。本実施形態では、上述したように、ハンドル部67の軸方向第1側Y1に連結部66が設けられている。延長部材60は、連結部66に連結された状態で、軸方向Yに沿って支持体6から軸方向第1側Y1に延在するように形成されている。尚、延長部材60は固定長のものに限らず、軸方向Yに伸縮する部材であってもよい。
【0040】
連結部66には例えば雌ネジが形成されており、延長部材60の先端には連結部66と螺合する雄ネジが形成されている。これらの雌ネジと雄ネジとが螺合することによって、連結部66に延長部材60が連結される。延長部材60は、例えばカメラに接続される一脚を用いることができる。延長部材60として汎用的な部材を利用可能とすることによって、部材の調達コストを低減すると共に利便性を向上させることができる。当然ながら、検査ユニット7は、このような延長部材60を備えることなく構成されていてもよい。
【0041】
ところで、乗り継ぎ部TSにおいて隣接する電力供給系統間の同期状態を検査する場合には、図9に示すように、2つの検査ユニット7を用いて検査装置70が構成される。区別のため、一方の検査ユニット7を第1検査ユニット7Aと称し、他方の検査ユニット7を第2検査ユニット7Bと称する。第1検査ユニット7Aと第2検査ユニット7Bとは、同一の構成である。即ち、これらの検査ユニット7は、検査用コイル71(第1検査用コイル71A、第2検査用コイル71B)と、コア72(第1コア72A、第2コア72B)とを備えている。第1検査用コイル71Aは、第1系統の第1給電線1(1A)と第2給電線2(2A)との間、第2検査用コイル71Bは、第2系統の第1給電線1(1A)と第2給電線2(2A)との間に配置され、それぞれ第1給電線1及び第2給電線2が発生させる磁界により誘導起電力を生じる。
【0042】
また、第1検査ユニット7Aの一対の出力線8をそれぞれ第1出力線81及び第2出力線82とし、第2検査ユニット7Bの一対の出力線8をそれぞれ第3出力線83及び第4出力線84とする。そして、第1検査ユニット7Aの第2出力線82と、第2検査ユニット7Bの第3出力線83とは、第1検査ユニット7Aの検査用コイル71(第1検査用コイル71A)と第2検査ユニット7Bの検査用コイル71(第2検査用コイル71B)とが同じ巻回方向で直列に接続されるように接続されている。また、第1検査ユニット7Aの第1出力線81及び第2検査ユニット7Bの第4出力線84は、少なくとも電圧計の機能を備えるテスタ90に接続される。
【0043】
図9に示すように、各検査ユニット7の一対の出力線8は出力コネクタ80に接続されている。また、テスタ90に接続される接続ケーブル86には、それぞれ第1検査ユニット7Aの一対の出力線8及び第2検査ユニット7Bの一対の出力線8に接続される接続コネクタ85が備えられている。それぞれの検査ユニット7の出力コネクタ80と、接続ケーブル86のそれぞれの接続コネクタ85とが接続されることによって、接続ケーブル86を介して第2出力線82と第3出力線83とが電気的に接続される。また、第1出力線81及び第4出力線84は、接続ケーブル86を介してテスタ90に接続される。つまり、第1検査ユニット7Aの第1出力線81と、第2検査ユニット7Bの第4出力線84との間には、少なくとも電圧計が接続される。
【0044】
図3を参照して上述したように、非接触給電設備100には、第1給電線1と第2給電線2との組である給電線組3が移動経路10に沿って複数並ぶように配置されている。そして、図3及び図10に示すように、第1給電線組3Aと第2給電線組3Bとは隣接して配置されている。ここで、それぞれの検査ユニット7の当接部材63を支持部材29に下方から当接させて、それぞれの検査ユニット7の検査用コイル71を第1給電線1と第2給電線2との間に配置する。そして、第1検査ユニット7Aの第1出力線81と第2検査ユニット7Bの第4出力線84との間の電圧を計測することで、乗り継ぎ部TSにおいて隣接する電力供給系統間の同期状態を検査することができる。
【0045】
ここで、検査を行う際において、第1検査ユニット7Aの検査用コイル71(第1検査用コイル71A)を第1給電線組3Aの第1給電線1と第2給電線2との間に配置し、第2検査ユニット7Bの検査用コイル71(第2検査用コイル71B)を第2給電線組3Bの第1給電線1と第2給電線2との間に配置した状態とする工程を、検査ユニット配置工程と称する。また、検査ユニット配置工程の後、第1検査ユニット7Aの第1出力線81と第2検査ユニット7Bの第4出力線84との間の電圧を計測する工程を、電圧計測工程と称する。即ち、検査装置70を用いて非接触給電設備100を検査する検査方法では、検査ユニット配置工程と、電圧計測工程とが実行される。
【0046】
図10に示すように、例えば移動経路10に沿う方向における異なる2箇所に第1検査ユニット7Aと第2検査ユニット7Bとをそれぞれ配置することにより、当該2箇所において検査用コイル71に生じる誘導起電力の関係を検査することができる。図3から図5を参照して上述したように、例えば第1電源装置5Aからの交流電流が供給される第1給電線組3Aと、第2電源装置5Bからの交流電流が供給される第2給電線組3Bとが、移動体30の移動経路10に沿って並んで配置されている場合に、第1給電線組3Aと第2給電線組3Bとの交流電流の位相が大きくずれていると、第1出力線81と第4出力線84との間の電圧が低くなる。従って、受電装置4による受電量不足が生じ得る状況の有無を適切に検査することができる。
【0047】
ところで、図10に例示したように、このような検査を行うに際しては、第1検査ユニット7Aを保持する作業者と、第2検査ユニット7Bを保持する作業者との2名以上の作業者が必要となる。また、テスタ90の出力が自動的に記録されるように構成されていない場合には、テスタ90の出力を記録するための作業者も必要となる場合がある。そこで、例えば、図11に示すように、第1検査ユニット7Aと第2検査ユニット7Bとを連結する連結体9を備えて、第1検査ユニット7Aと第2検査ユニット7Bとが連結されて1つの検査装置70が構成されていてもよい。第1検査ユニット7Aと第2検査ユニット7Bとが連結体9により連結されることで、一人の作業者が両検査ユニットを保持することも可能となる。従って、検査における作業者の人数を少なく抑えやすい。
【0048】
また、図11に例示する形態では、第1検査ユニット7Aが、連結体9に対して軸方向Yに沿う軸心周りに回転自在に支持されていると共に、第2検査ユニット7Bが、連結体9に対して軸方向Yに沿う軸心周りに回転自在に支持されている。それぞれの検査ユニット7による検査対象となる箇所は、図10に示すように、直線上に並んでいるとは限らない。つまり、移動経路10は、直線ばかりではなく、図1に示すように曲線の経路も含む。第1検査ユニット7A及び第2検査ユニット7Bが連結体9に対して回転自在であることで、移動経路10がカーブしている箇所においても2か所に適切に検査ユニット7を配置することができる。
【0049】
図12のフローチャートは、検査における判定の一例を示している。はじめにテスタ90により計測された電圧(実効値)が判定条件を満たすか否かが判定される(#1)。図4及び図5には、電流波形を例示したが、電圧も同様に2つの給電線組3の間での同期がとれていない場合には、同期が取れている場合に比べて電圧が低くなる。例えば、測定された電圧が、実験やシミュレーションによって予め規定された判定電圧(第1判定電圧)以上である場合には、同期が取れており正常と判定され検査が終了される。
【0050】
測定された電圧が、判定電圧未満である場合には、次に交流電圧の周波数(交流電流の周波数も同じ)が判定条件を満たしているか否かが判定される(#2)。同期が取れているか否かの他、例えば、電源装置5に何らかの不具合がある場合には、交流電圧の周波数が予め規定された設定周波数からずれている場合がある。本実施形態のテスタ90は、周波数も測定可能であり、テスタ90により計測された周波数が設定周波数から規定以内のずれの範囲内(予め規定された許容周波数範囲内)であるか否かが判定される。周波数がずれていると判定された場合には、作業者は、電源装置5の設定を確認すると共に、誤りがあった場合には正しい設定に修正する(#3)。また、故障が発見された場合には作業者は修理を行う。周波数がずれていないと判定された場合には、別の要因が検証される。
【0051】
ステップ#2において、周波数がずれていないと判定された場合には、各給電線組3における検査ユニット7の出力電圧が判定条件を満たすか否かが判定される(#4)。この場合には、図9から図11に示したような形態ではなく、1つの検査ユニット7の一対の出力線8をテスタ90に接続し、第1検査ユニット7A及び第2検査ユニット7Bからの出力電圧が判定される。図9を参照して上述したように、各検査ユニット7の一対の出力線8は出力コネクタ80に接続されている。そして、出力コネクタ80と接続コネクタ85とが接続されることによって、第2出力線82と第3出力線83とが電気的に接続されている。従って、接続ケーブル86を出力コネクタ80から外すことで、それぞれの検査ユニット7の一対の出力線8の間の電圧を測定することができる。尚、接続ケーブル86に代えて、それぞれの検査ユニット7の出力コネクタ80に計測ケーブル(不図示)を接続し、計測ケーブルを介してテスタ90に接続される形態であってもよい。
【0052】
それぞれの検査ユニット7からの出力電圧を判定することで、2つの系統のそれぞれの電源装置5が正常に動作しているか否かを判定することができる。例えば、測定された電圧が、実験やシミュレーションによって予め規定された判定電圧(第2判定電圧)以上である場合には、正常と判定される。何れかの電源装置5が正常ではないと判定された場合には、作業者は、当該電源装置5の設定を確認すると共に、誤りがあった場合には正しい設定に修正する。(#5)。また、故障が発見された場合には作業者は修理を行う。どちらの出力電圧も正常であると判定された場合には、さらに別の要因が検証される。
【0053】
ステップ#4において出力電圧が正常であると判定された場合には、給電線組3の接続方向が正しいか否かが判定される(#6)。図13は、電源装置5に対する給電線組3の接続形態を例示している。図13に示すように、隣接する系統において同じ方向に電流が流れるようにするためには、電源装置5に対して給電線を互いに逆の極性で接続しなければいけない場合がある。例えば、給電線には、電流の流れる方向が矢印等によって表示されており、作業者は給電線の接続方向が正しいか否かを確認する。接続方向に誤りがあった場合には、作業者は、給電線の接続を修正する(#7)。
【0054】
ステップ#6において、給電線の接続方向が正しいと確認された場合には、次に電源装置5における同期回路が正常であるか否かが判定される(#8)。同期回路の設定に誤りがある場合には、作業者は同期回路の設定を修正する(#9)。また、故障等が生じていた場合には、作業者はその修理を行う。ステップ#8において同期回路が正常であると判定された場合には、検査装置70を用いた検査を終了し、移動体30を用いた動作確認が実行される(#10)。
【0055】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0056】
(1)上記においては、検査装置70が2つの検査ユニット7を備えており、隣接する給電線組3を流れる電流の同期を判定する形態を例示した。しかし、検査装置70は、このように同期を判定する用途に限らず、それぞれの電源装置5及び給電線組3を個別に検査する検査装置70として用いられるものであってもよい。そして、そのような場合には、1つの検査ユニット7によって1つの検査装置70が構成されていてもよい。
【0057】
(2)上記においては、図6等に例示したように、突出コア部72b(第1突出コア部)を備えており、当該突出コア部72bがカバー73の突出部75の内部に配置されている形態を例示した。しかし、コア72は、突出コア部72bを備えていなくてもよい。例えば、検査用コイル71が巻回される部位にのみコア72が配置されていてもよい。この場合、例えばカバー73の突出部75の内部には、コア72は配置されない。従って、突出部75の内部には、コア72が収容されていてもよいし、コア72が収容されていなくてもよい。
【0058】
(3)上記においては、図6等に例示したように、突出コア部72b(第1突出コア部)が特定径方向Xに突出している形態を例示した。しかし、突出コア部72bは、巻回部72aに対して少なくても特定径方向Xに突出していればよく、径方向Rの他の方向にも突出してよい。例えば、突出コア部72bは、特定径方向X及び第2特定径方向Zの双方に突出した十字形状であってもよい。また、突出コア部72bは、径方向Rの全周に突出したフランジ状(軸方向Yに沿った方向から見て例えば円状)に形成されていてもよい。尚、カバー73の突出部75も、コイルカバー部74に対して少なくとも特定径方向Xに突出していればよく、径方向Rの他の方向にも突出してよい。カバー73の突出部75も特定径方向X及び第2特定径方向Zの双方に突出した十字形状や、径方向Rの全周に突出したフランジ状に形成されていてもよい。好ましくは、突出部75は、突出コア部72bを内部に配置可能な形状である。
【0059】
(4)上記においては、カバー73が検査用コイル71及びコア72の全体を覆う形態を例示した。しかし、カバー73は検査を行う際の配置姿勢において、少なくとも給電線組3に対向する部位を覆うものであってもよい。
【0060】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した検査装置及び検査装置を用いた検査方法の概要について簡単に説明する。
【0061】
1つの好適な態様として、検査装置は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って互いに平行状に配置された第1給電線及び第2給電線と、前記第1給電線及び前記第2給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備えて、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により前記受電装置の受電コイルに誘導起電力を生じさせる非接触給電設備を対象とする検査装置であって、検査のために前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置され、前記第1給電線及び前記第2給電線が発生させる磁界により誘導起電力を生じる検査用コイルと、前記検査用コイルが巻回されるコアと、前記検査用コイルの両端のそれぞれに接続された一対の出力線と、電気的絶縁性を有する絶縁材により前記検査用コイル及び前記コアを覆うように形成されたカバーと、を備え、前記検査用コイルの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記軸方向に直交する方向を径方向とし、前記径方向に沿う各方向の内の特定の方向を特定径方向として、前記カバーは、前記検査用コイルを覆うように形成されたコイルカバー部と、前記コイルカバー部に対して前記軸方向第1側に配置されていると共に前記コイルカバー部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された突出部と、を備え、前記第1給電線と前記第2給電線との設計上の間隔を設計間隔として、前記コイルカバー部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より小さく、前記突出部の前記特定径方向の寸法は、前記設計間隔より大きい。
【0062】
コイルカバー部に覆われた検査用コイルが、検査のために第1給電線と第2給電線との間に配置されると、第1給電線及び第2給電線が発生させる磁界により検査用コイルに誘導起電力が生じる。この誘導起電力により生じる電圧は一対の出力線に出力される。よって、一対の出力線間の電圧を検出することにより、第1給電線及び第2給電線が発生させる磁界の大きさや、第1給電線及び第2給電線に適切に交流電流が流れているか否か、を検査することができる。また、コイルカバー部の特定径方向の寸法が設計間隔より小さく、突出部の特定径方向の寸法が設計間隔より大きいため、検査の際に、例えばコイルカバー部が突出部よりも上側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。当然ながら、コイルカバー部が突出部よりも下側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して上側から対向する位置に配置することでも、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。また、カバーが絶縁材により検査用コイル及びコアを覆うように形成されているため、検査装置が第1給電線又は第2給電線に接触するようなことがあっても、第1給電線又は第2給電線を短絡させることが回避される。つまり、安全な検査を実現することができる。このように、本構成によれば、非接触給電設備を検査対象とした、作業性及び安全性に優れた検査装置を提供することができる。そして、そのような検査装置を用いることで、作業性及び安全性に優れた検査方法も提供することができる。
【0063】
また、前記コアは、前記軸方向に沿って配置されて周囲に前記検査用コイルが巻回される巻回部と、前記巻回部に対して前記軸方向第1側に配置されていると共に前記巻回部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された突出コア部と、を備え、前記突出コア部は、前記カバーの前記突出部の内部に配置されていると好適である。
【0064】
上述したように、検査の際に、例えばコイルカバー部が突出部よりも上側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。本構成によれば、検査の際に、第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置にコアの突出コア部が配置されることになる。同様に、コイルカバー部が突出部よりも下側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して上側から対向する位置に配置することでも、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。本構成によれば、検査の際に、第1給電線及び第2給電線に対して上側から対向する位置にコアの突出コア部が配置されることになる。何れの場合においても、突出コア部が第1給電線及び第2給電線に近接して配置できるため、検査の際に検査用コイルに生じる誘導起電力を大きくし易く、検査の精度を高め易い。
【0065】
また、前記突出コア部を第1突出コア部として、前記コアは、前記巻回部に対して前記軸方向第2側に配置されていると共に前記巻回部に対して少なくとも前記特定径方向の両側に突出するように形成された第2突出コア部をさらに備え、前記カバーは、前記コイルカバー部と前記第1突出コア部を覆う前記突出部としての第1突出部とに加えて、前記第2突出コア部を覆う第2突出部をさらに備え、前記軸方向及び前記特定径方向の双方に直交する方向を第2特定径方向として、前記第2突出部の前記第2特定径方向の寸法は前記設計間隔より小さく、前記第2突出部の前記特定径方向の寸法は前記設計間隔より大きいと好適である。
【0066】
この構成によれば、第2突出部の第2特定径方向の寸法が設計間隔より小さいため、第2突出部の第2特定径方向を第1給電線及び第2給電線に直交する方向とすることで、第2突出部は上下方向(軸方向)に沿って第1給電線及び第2給電線との間を通過することができる。そして、第2突出部が第1給電線及び第2給電線との間を通過した後、第2突出部を軸方向に沿う軸回りに90°回転させることで、第2突出部の特定径方向は第1給電線及び第2給電線に直交する方向となる。従って、検査の際に、検査用コイルを第1給電線及び第2給電線との間に配置した状態で、第1突出コア部と第2突出コア部とが、第1給電線及び第2給電線を軸方向の両側から挟むように配置されることになる。従って、検査の際に検査用コイルに生じる誘導起電力をさらに大きくし易く、検査の精度をより高め易い。
【0067】
また、前記第1給電線は第1支持部材により支持され、前記第2給電線は第2支持部材により支持されており、検査装置は、前記検査用コイル、前記コア、及び前記カバーを支持する支持体をさらに備え、前記第1支持部材の下面に当接する第1当接面を備えた第1当接部材と、前記第2支持部材の下面に当接する第2当接面を備えた第2当接部材とが、前記支持体に支持されていると好適である。
【0068】
上述したように、検査の際に、例えばコイルカバー部が突出部よりも上側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。この際、本構成によれば、第1当接部材の第1当接面を第1支持部材の下面に当接させ、第2当接部材の第2当接面を第2支持部材の下面に当接させるだけで、容易に、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。
【0069】
ここで、前記第1当接部材と前記第2当接部材とが、それぞれ前記支持体に対して着脱自在に支持されていると好適である。
【0070】
この構成によれば、第1当接部材及び第2当接部材をそれぞれ異なる形状のものに交換したり、取り外したりすることが容易である。非接触給電設備の構造や検査場所等によって適切な形状の第1当接部材及び第2当接部材を用いることができるので、検査装置を共通化することができる。また、非接触給電設備の構造や検査場所等によっては、第1当接部材及び第2当接部材の少なくとも一方が邪魔になる場合も考えられる。このような場合には、第1当接部材及び第2当接部材を取り外すことで柔軟に試験を実施することができる。このように、本構成によれば、非接触給電設備の構造や検査場所等に応じて適切に第1当接部材及び第2当接部材を選択し(無い場合も含む)、検査をより簡便に行うことが可能となる。
【0071】
また、検査装置は、前記検査用コイル、前記コア、及び前記カバーを支持する支持体をさらに備え、前記支持体は、前記検査用コイル及び前記コアに対して前記軸方向第1側に配置されていると共に、延長部材が着脱自在に連結される連結部を備え、前記延長部材が、前記連結部に連結された状態で、前記軸方向に沿って前記支持体から前記軸方向第1側に延在するように形成されていると好適である。
【0072】
上述したように、検査の際に、例えばコイルカバー部が突出部よりも上側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して下側から対向する位置に配置することで、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。この際、第1給電線及び第2給電線が高所に配置されている場合等であっても、延長部材を連結することで、容易に、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。当然ながら、コイルカバー部が突出部よりも下側となる向きで、突出部を第1給電線及び第2給電線に対して上側から対向する位置に配置させる場合においても、第1給電線及び第2給電線が作業者の位置から離れている場合に、延長部材を連結することで、容易に、コイルカバー部に覆われた検査用コイルを第1給電線と第2給電線との間の適切な位置に配置することができる。
【0073】
また、検査装置は、前記カバーと当該カバーにより覆われた前記検査用コイル及び前記コアと、一対の前記出力線とを第1検査ユニットとして、前記第1検査ユニットと同じ構成の第2検査ユニットをさらに備え、前記第1検査ユニットの一対の前記出力線をそれぞれ第1出力線及び第2出力線とし、前記第2検査ユニットの一対の前記出力線をそれぞれ第3出力線及び第4出力線として、前記第1検査ユニットの前記検査用コイルと前記第2検査ユニットの前記検査用コイルとが同じ巻回方向で直列に接続されるように、前記第1検査ユニットの前記第2出力線と前記第2検査ユニットの前記第3出力線とが接続されていると好適である。
【0074】
移動経路に沿う方向における異なる2箇所に第1検査ユニットと第2検査ユニットとをそれぞれ配置することにより、当該2箇所において検査用コイルに生じる誘導起電力の関係を検査することができる。例えば、第1の電源装置からの交流電流が供給される第1給電線及び第2給電線の第1の組である第1給電線組と、第2の電源装置からの交流電流が供給される第1給電線及び第2給電線の第2の組である第2給電線組とが、移動体の移動経路に沿って並んで配置されている場合に、第1給電線組と第2給電線組との交流電流の位相が大きくずれていると、第1給電線組と第2給電線組との継ぎ目部分に位置する移動体では受電装置による受電量が不足する場合があり得る。本構成によれば、第1給電線組と第2給電線組との交流電流の位相がずれている場合、第1検査ユニットの第1出力線と第2検査ユニットの第4出力線との間の電圧が低くなる。従って、このような受電装置による受電量不足が生じ得る状況の有無を適切に検査することができる。
【0075】
また、検査装置が前記第1検査ユニットと前記第2検査ユニットとを備えている場合、前記第1検査ユニットと前記第2検査ユニットとを連結する連結体を備え、前記第1検査ユニットが、前記連結体に対して前記軸方向に沿う軸心周りに回転自在に支持され、前記第2検査ユニットが、前記連結体に対して前記軸方向に沿う軸心周りに回転自在に支持されていると好適である。
【0076】
第1検査ユニットと第2検査ユニットとが連結されていない場合、検査の際に第1検査ユニットを保持する作業者と、第2検査ユニットを保持する作業者との二人の作業者が少なくとも必要となる。しかし、第1検査ユニットと第2検査ユニットとを連結体により連結することで、一人の作業者が両検査ユニットを保持することも可能となる。従って、検査における作業者の人数を少なく抑えやすい。また、第1検査ユニット及び第2検査ユニットが連結体に対して回転自在であるから、移動経路がカーブしている箇所においても2か所に適切に検査ユニットを配置することができる。
【0077】
前記第1検査ユニットと前記第2検査ユニットとを備えた検査装置を用いて前記非接触給電設備を検査する検査方法は、1つの態様として、前記非接触給電設備において、前記第1給電線と前記第2給電線との組である給電線組が前記移動経路に沿って複数並ぶように配置され、第1の前記給電線組である第1給電線組と第2の前記給電線組である第2給電線組とが隣接して配置されている場合に、前記第1検査ユニットの前記検査用コイルを前記第1給電線組の前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置し、前記第2検査ユニットの前記検査用コイルを前記第2給電線組の前記第1給電線と前記第2給電線との間に配置した状態とする検査ユニット配置工程と、前記検査ユニット配置工程の後、前記第1検査ユニットの前記第1出力線と前記第2検査ユニットの前記第4出力線との間の電圧を計測する電圧計測工程とを実行すると好適である。
【0078】
第1の電源装置からの交流電流が供給される第1給電線及び第2給電線の第1の組である第1給電線組と、第2の電源装置からの交流電流が供給される第1給電線及び第2給電線の第2の組である第2給電線組とが、移動体の移動経路に沿って並んで配置されている場合に、第1給電線組と第2給電線組との交流電流の位相が大きくずれていると、第1給電線組と第2給電線組との継ぎ目部分に位置する移動体では受電装置による受電量が不足する場合があり得る。この方法によれば、第1給電線組と第2給電線組との交流電流の位相がずれている場合、第1検査ユニットの第1出力線と第2検査ユニットの第4出力線との間の電圧が低くなる。従って、このような受電装置による受電量不足が生じ得る状況の有無を適切に検査することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :第1給電線
2 :第2給電線
3 :給電線組
3A :第1給電線組
3B :第2給電線組
4 :受電装置
5 :電源装置
6 :支持体
7 :検査ユニット
7A :第1検査ユニット
7B :第2検査ユニット
8 :出力線
9 :連結体
10 :移動経路
21 :第1支持部材
21a :第1支持部材の下面
22 :第2支持部材
22a :第2支持部材の下面
29 :支持部材
30 :移動体
60 :延長部材
61 :第1当接部材
61a :第1当接面
62 :第2当接部材
62a :第2当接面
63 :当接部材
66 :連結部
70 :検査装置
71 :検査用コイル
72 :コア
72a :巻回部
72b :突出コア部、第1突出コア部
72c :第2突出コア部
73 :カバー
74 :コイルカバー部
75 :突出部、第1突出部
76 :第2突出部
81 :第1出力線
82 :第2出力線
83 :第3出力線
84 :第4出力線
100 :非接触給電設備
D1 :第1寸法(コイルカバー部の特定径方向の寸法)
D2 :第2寸法(突出部の特定径方向の寸法)
D3 :第3寸法(第2突出部の第2特定径方向の寸法)
D4 :第4寸法(第2突出部の特定径方向の寸法)
G :設計間隔
R :径方向
X :特定径方向
Y :軸方向
Y1 :軸方向第1側
Y2 :軸方向第2側
Z :第2特定径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13