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特許7540455車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240820BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
B60W50/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022040593
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023135409
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 剛広
(72)【発明者】
【氏名】橋本 竜太
(72)【発明者】
【氏名】原田 晃汰
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聡一
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-196690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/10
B60W 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、他の機器から受信した工事情報において、前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において、現時刻を含む所定期間内に道路工事が実施されることが示されている場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項2】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記地図の最終更新日時が現時刻よりも所定期間以上前である場合、あるいは、前記地図とナビゲーション装置が前記車両の走行ルートの探索に用いたルート探索用地図とで前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において道路の構造が異なる場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項3】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記車両の現在位置から所定距離先までの区間における他の車両の走行軌跡が、前記地図において前記車両が走行可能でないエリアを通る場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項4】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記自車線の検出部が開始されてから一定時間を経過する前、あるいは前記自車線の検出が開始されてから一定距離を前記車両が走行するまでの間、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項5】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記車両の現在位置において前記地図または前記センサ信号に示される車線の数が所定数以上であり、かつ、前記検出された自車線が前記車両の現在位置における道路に設けられた複数の車線の中心から所定範囲内に位置する場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項6】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記センサ信号から検出された所定の地物の位置が、前記検出された自車線の位置を基準とする前記地図上の対応する地物の位置と異なる場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項7】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記センサ信号から検出された所定の地物の確からしさが所定の確信度閾値以下である場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項8】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記検出された自車線の位置を基準とする、前記地図上で前記車両が走行可能なエリアに相当する前記センサ信号に示される範囲内を走行する他の車両を一定期間にわたって検出できない場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項9】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出する検出部と、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定する特定部と、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する制御部と、
を有し、
前記誤検出判定部は、前記車両の現在位置が前記地図において予め指定された誤検出危険地点から所定範囲内に含まれる場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する、車両制御装置。
【請求項10】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを含み、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、他の機器から受信した工事情報において、前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において、現時刻を含む所定期間内に道路工事が実施されることが示されている場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御方法。
【請求項11】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを含み、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、前記地図の最終更新日時が現時刻よりも所定期間以上前である場合、あるいは、前記地図とナビゲーション装置が前記車両の走行ルートの探索に用いたルート探索用地図とで前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において道路の構造が異なる場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御方法。
【請求項12】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを含み、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、前記車両の現在位置において前記地図または前記センサ信号に示される車線の数が所定数以上であり、かつ、前記検出された自車線が前記車両の現在位置における道路に設けられた複数の車線の中心から所定範囲内に位置する場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御方法。
【請求項13】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させ
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、他の機器から受信した工事情報において、前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において、現時刻を含む所定期間内に道路工事が実施されることが示されている場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御用コンピュータプログラム。
【請求項14】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させ、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、前記地図の最終更新日時が現時刻よりも所定期間以上前である場合、あるいは、前記地図とナビゲーション装置が前記車両の走行ルートの探索に用いたルート探索用地図とで前記車両の現在位置から所定距離先までの区間において道路の構造が異なる場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御用コンピュータプログラム。
【請求項15】
車両に搭載されたセンサにより得られた前記車両の周囲を表すセンサ信号と、前記車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、前記複数の車線のうち、前記車両が走行している自車線を検出し、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、
前記センサ信号または前記地図に基づいて、前記検出された自車線において実行することが要求される前記車両の第1の制御と、前記検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される前記車両の第2の制御とを特定し、
前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記隣接車線において前記第1の制御が禁止される場合、前記第1の制御を実行せず、一方、前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、前記第2の制御が存在する場合、前記第2の制御を実行する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させ、
前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定することは、前記車両の現在位置において前記地図または前記センサ信号に示される車線の数が所定数以上であり、かつ、前記検出された自車線が前記車両の現在位置における道路に設けられた複数の車線の中心から所定範囲内に位置する場合、前記道路の一端に対する前記検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することを含む
車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転制御する場合、車両の制御装置は、車両が走行中の車線(以下、自車線と呼ぶことがある)を検出するローカライズ処理を実行し、ローカライズ処理の結果に基づいて、必要に応じて車線変更などの車両制御を実行する。そこで、車両を適切に自動運転制御するために、自車線を精度良く検出するための技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車両制御装置は、走路を区画する区画線を認識し、認識された区画線に基づいて、走路を特定する複数の走路パラメータとして、複数の第1パラメータを推定する。また、この車両制御装置は、自車両の前方に存在する先行車両を認識し、認識された先行車両の位置の履歴に基づいて、先行車両の走行軌跡を推定し、推定された走行軌跡に基づいて、複数の走路パラメータとして、複数の第2パラメータを推定する。さらに、この車両制御装置は、推定された各第1パラメータの第1信頼度をそれぞれ算出するとともに、推定された各第2パラメータの第2信頼度をそれぞれ算出する。さらにまた、この車両制御装置は、走路パラメータのそれぞれについて、第1信頼度及び第2信頼度に応じて第1パラメータと第2パラメータとを統合して、統合パラメータを算出する。そしてこの車両制御装置は、算出された統合パラメータに基づいて走路を推定する。さらに、この車両制御装置は、統合パラメータに基づいて、自車両の運転支援を実施する。その際、この車両制御装置は、統合信頼度に応じて運転支援の度合を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-45356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
場合によっては、上記の特許文献1に開示された技術でも車両制御装置が自車線を正確に検出することが困難なことがある。例えば、車線区画線が不明りょうな場合には、自車線を正確に検出することが困難となる。このように、自車線を検出することが困難な状況では、必要な制御が行われないといった不都合が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、自車線の検出結果が正確でなくても、要求される制御を車両に実行させることが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両に搭載されたセンサにより得られた車両の周囲を表すセンサ信号と、車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、複数の車線のうち、車両が走行している自車線を検出する検出部と、道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する誤検出判定部と、センサ信号または地図に基づいて、検出された自車線において実行することが要求される車両の第1の制御と、検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両の第2の制御とを特定する特定部と、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、隣接車線において第1の制御が禁止される場合、第1の制御を実行せず、一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なっている可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、第2の制御を実行する制御部とを有する。
【0008】
この車両制御装置において、誤検出判定部は、他の機器から受信した工事情報において、車両の現在位置から所定距離先までの区間において、現時刻を含む所定期間内に道路工事が実施されることが示されている場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0009】
あるいは、誤検出判定部は、地図の最終更新日時が現時刻よりも所定期間以上前である場合、あるいは、地図とナビゲーション装置が車両の走行ルートの探索に用いたルート探索用地図とで車両の現在位置から所定距離先までの区間において道路の構造が異なる場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0010】
あるいはまた、誤検出判定部は、車両の現在位置から所定距離先までの区間における他の車両の走行軌跡が、地図において車両が走行可能でないエリアを通る場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0011】
あるいはまた、誤検出判定部は、自車線の検出が開始されてから一定時間を経過する前、あるいは自車線の検出が開始されてから一定距離を車両が走行するまでの間、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0012】
さらに、誤検出判定部は、車両の現在位置において地図またはセンサ信号に示される車線の数が所定数以上であり、かつ、検出された自車線が現在位置における複数の車線の中心から所定範囲内に位置する場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0013】
さらにまた、誤検出判定部は、所定時間前における車両の位置における車線の数に対して現在位置における車線の数が所定数以上変化している場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0014】
さらにまた、誤検出判定部は、センサ信号から検出された所定の地物の位置が、検出された自車線の位置を基準とする地図上の対応する地物の位置と異なる場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0015】
さらにまた、誤検出判定部は、センサ信号から検出された所定の地物の確からしさが所定の確信度閾値以下である場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0016】
さらにまた、誤検出判定部は、検出された自車線の位置を基準とする、地図上で車両が走行可能なエリアに相当するセンサ信号に示される範囲内を走行する他の車両を一定期間にわたって検出できない場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0017】
さらにまた、誤検出判定部は、車両の現在位置が地図において予め指定された誤検出危険地点から所定範囲内に含まれる場合、車両が走行している道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定することが好ましい。
【0018】
他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両に搭載されたセンサにより得られた車両の周囲を表すセンサ信号と、車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、複数の車線のうち、車両が走行している自車線を検出し、道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、センサ信号または地図に基づいて、検出された自車線において実行することが要求される車両の第1の制御と、検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両の第2の制御とを特定し、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、隣接車線において第1の制御が禁止される場合、第1の制御を実行せず、一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なっている可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、第2の制御を実行する、ことを含む。
【0019】
さらに他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両に搭載されたセンサにより得られた車両の周囲を表すセンサ信号と、車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、複数の車線のうち、車両が走行している自車線を検出し、道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定し、センサ信号または地図に基づいて、検出された自車線において実行することが要求される車両の第1の制御と、検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両の第2の制御とを特定し、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、隣接車線において第1の制御が禁止される場合、第1の制御を実行せず、一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なっている可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、第2の制御を実行する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両制御装置は、自車線の検出結果が正確でなくても、要求される制御を車両に実行させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)及び(b)は、それぞれ、車線に応じて要求され、あるいは禁止される制御の一例を示す図である。
図2】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図3】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図4】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図5】(a)及び(b)は、それぞれ、道路の一端に対する、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる例を示す図である。
図6】車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置及び車両制御装置上で実行される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、車両に搭載されたセンサにより得られた車両の周囲を表すセンサ信号と、車両が走行している道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図とを照合することで、複数の車線のうち車両が走行中の自車線を検出する。そしてこの車両制御装置は、車両が走行中の道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なっている可能性が有るか否か判定する。また、この車両制御装置は、検出された自車線において実行することが要求される車両の第1の制御と、自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両の第2の制御とを特定する。そしてこの車両制御装置は、検出された自車線が実際の位置と異なる可能性が無いと判定されるか、隣接車線において第1の制御が禁止されない場合に限り、第1の制御を実行する。すなわち、この車両制御装置は、検出された自車線が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、隣接車線において第1の制御が禁止される場合、第1の制御を実行しない。一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、この車両制御装置は、第2の制御を実行する。これにより、この車両制御装置は、検出された自車線の位置が正確でなくても、車両に対して要求される制御を実行し、あるいは、車両に対して禁止される制御を実行しないようにすることができる。
【0023】
図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、車線に応じて要求され、あるいは禁止される制御の一例を示す図である。図1(a)に示される例では、車両10は、6車線が設けられた道路100のうち、車両10の進行方向において右から2番目の車線112を走行している。この道路100では、一番右の車線111及び右から2番目の車線112では、ドライバに対してステアリングを保持することが要求される(以下では、ステアリングを保持する要求を、HandsOn要求と呼ぶことがある)。しかし、車線112の左側に隣接する車線113が、誤って自車線として検出されたとする。その誤検出の結果として、ドライバに対してHandsOn要求が通知されないと、ドライバはステアリングの保持が要求されていることに気が付かず、ステアリングの保持が実行されないおそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態では、車線113が自車線として検出された場合、車線113だけでなく、車線113の右側の隣接車線112及び左側の隣接車線114のそれぞれについて要求される制御が特定される。そして隣接車線112及び隣接車線114において実行されることが要求される制御があると、その制御が実行される。すなわち、この例では、隣接車線112においてステアリングの保持が要求されているので、HandsOn要求がドライバに対して通知される。
【0025】
図1(b)に示される例では、車両10は、6車線が設けられた道路150のうち、車両10の進行方向において左から3番目の車線163を走行している。この道路150では、一番左の車線161及び左から2番目の車線162は、規定人数以上の人員が乗車している車両のみが走行可能なHigh-Occupancy Vehicles(HOV)レーンとなっている。そのため、車両10に乗車している人員の数が規定人数未満であれば、車両10が車線161及び車線162に進入することは禁止される。したがって、車両10に乗車している人員の数が規定人数未満であれば、車線163を走行している車両10が左側に隣接する車線162へ車線変更することは禁止される。しかし、車線163の右側に隣接する車線164が、誤って自車線として検出されたとする。その誤検出の結果として、車両10に対して左側に隣接する車線への車線変更が実施されると、進入が許可されていない車線162へ車両10が進入してしまうことになる。
【0026】
そこで、本実施形態では、車線164が自車線として検出されており、かつ、車両10に対して左側に隣接する車線への車線変更が要求されている場合、車線164の左側に隣接する車線163においてその車線変更が禁止されているか否かが判定される。そして車線163において左側に隣接する車線162への車線変更が禁止されているため、その車線変更は実施されない。これにより、検出された自車線の位置が実際の位置と異なっていても、車両10がHOVレーンへ誤って侵入することが防止される。
【0027】
図2は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図3は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、カメラ2と、GPS受信機3と、ナビゲーション装置4と、無線通信器5と、ストレージ装置6と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)7とを有する。カメラ2、GPS受信機3、ナビゲーション装置4、無線通信器5及びストレージ装置6とECU7とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。
【0028】
カメラ2は、車両10の周囲を表すセンサ信号を生成するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ2は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ2により得られた画像は、センサ信号の一例である。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0029】
カメラ2は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0030】
GPS受信機3は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機3は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してナビゲーション装置4及びECU7へ出力する。なお、車両10は、GPS受信機の代わりに、他の衛星測位システムによる衛星からの測位信号を受信して車両10の自己位置を測位する受信機を有していてもよい。
【0031】
ナビゲーション装置4は、自装置上で動作するナビゲーションプログラムに従って、車両10に対するナビゲーション処理を実行する。例えば、ナビゲーション装置4は、ドライバの操作により、ナビゲーションプログラムの起動が指示され、かつ、車両10の目的地が入力されると、車両10の現在位置から目的地までの車両10の走行ルートを探索する。その際、ナビゲーション装置4は、自装置が記憶する個々の道路区間及びその接続関係が表されたルート探索用地図(以下、道路地図と呼ぶことがある)を参照して、ダイクストラ法といった所定の経路探索手法に従って走行ルートを探索すればよい。走行ルートには、例えば、目的地までに経由する道路、走行ルート上に位置する分岐点における進行方向、右折または左折する交差点の位置などを表す情報が含まれる。なお、ナビゲーション装置4は、車両10の現在位置として、例えば、GPS受信機3から受信した、最新の測位結果による車両10の自己位置を利用することができる。
ナビゲーション装置4は、車両10の走行ルートを求めると、その走行ルートを表す情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0032】
無線通信器5は、所定の移動通信規格に準拠して、無線基地局との間で無線通信する。無線通信器5は、他の装置から無線基地局を介して、車両10が走行中の道路またはその周囲における交通状況を表す交通情報または工事の実施状況を表す工事情報(例えば、Vehicle Information and Communication Systemによる情報)を受信する。そして無線通信器5は、受信した交通情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。なお、工事情報には、例えば、道路工事が実施されている場所及び時間帯に関する情報が含まれる。また、無線通信器5は、車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての、自動運転制御に利用される高精度地図を、無線基地局を介して地図サーバから受信し、受信した高精度地図をストレージ装置6へ出力してもよい。
【0033】
ストレージ装置6は、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置6は、高精度地図を記憶する。なお、高精度地図は、道路に設けられた複数の車線に関する情報を含む地図の一例である。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての車線の数、車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報及び道路標識を表す情報が含まれる。さらに、高精度地図には、各道路について、その道路の車線ごとにその車線を走行する車両に対して要求される制御を表す情報が含まれてもよい。さらにまた、高精度地図には、各道路について、その道路の車線ごとにその車線を走行する車両に対して禁止される制御を表す情報が含まれてもよい。
【0034】
さらに、ストレージ装置6は、高精度地図の更新処理、及び、ECU7からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置6は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信器5を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信してもよい。また、ストレージ装置6は、地図サーバから無線通信器5を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置6は、ECU7からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0035】
ECU7は、車両10を自動運転制御する。本実施形態では、ECU7は、カメラ2により得られた画像と高精度地図とを照合して車両10が走行中の自車線を検出するとともに、車両10が走行中の道路の一端に対する、検出した自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する。そしてECU7は、検出した自車線について要求される制御及びその自車線に隣接する車線について要求される制御にしたがって、実際に実行する制御を決定し、決定した制御を実行する。
【0036】
図3に示されるように、ECU7は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0037】
通信インターフェース21は、ECU7を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、カメラ2から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機3から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ナビゲーション装置4から走行ルートを受信するとその走行ルートをプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、交通情報など、無線通信器5が他の機器から受信した情報を受け取ると、その情報をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ストレージ装置6から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。
【0038】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、カメラ2の焦点距離、撮影方向及び取り付け位置などのパラメータ、及び、地物などの検出に利用される、物体検出用の識別器を特定するための各種パラメータを記憶する。また、メモリ22は、道路標示または道路標識の種別と、その種別に対応する制御との関係を表す参照テーブルを記憶する。さらに、メモリ22は、走行ルート、車両10の測位情報、車両10の周囲の画像、高精度地図を記憶する。さらにまた、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0039】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、所定の周期ごとに、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0040】
図4は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、自車線検出部31と、誤検出判定部32と、特定部33と、制御部34とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0041】
自車線検出部31は、検出部の一例であり、カメラ2により生成された、車両10の周囲を表す画像(以下、単に画像と呼ぶことが有る)と高精度地図とを照合することで、車両10が走行中の自車線を検出する。例えば、自車線検出部31は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された道路上または道路周囲の地物を高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図に表された車両10の周囲の道路上または道路周囲の地物を画像上に投影する。なお、道路上または道路周囲の地物は、例えば、車線区画線あるいは停止線といった道路標示、あるいは縁石とすることができる。そして自車線検出部31は、画像から検出された地物と高精度地図上に表された地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の自己位置として推定する。
【0042】
自車線検出部31は、仮定される車両10の位置及び姿勢の初期値と、焦点距離、設置高さ、及び、撮影方向といった、カメラ2のパラメータとを用いて、高精度地図上または画像上で地物が投影される位置を決定すればよい。なお、車両10の位置及び姿勢の初期値として、GPS受信機3により測位された車両10の位置、あるいは、前回の自車線検出時に推定された車両10の位置及び姿勢を、オドメトリ情報を用いて補正した位置が利用される。そして自車線検出部31は、画像から検出された道路上または道路周囲の地物と高精度地図上に表された対応する地物との一致度合(例えば、対応する地物同士の距離の2乗和の逆数)を算出する。
【0043】
自車線検出部31は、仮定される車両10の位置及び姿勢を変更しながら上記の処理を繰り返す。そして自車線検出部31は、一致度合が最大となるときの仮定された位置及び姿勢を、車両10の実際の自己位置として推定すればよい。そして自車線検出部31は、高精度地図を参照して、車両10の自己位置が含まれる車線を、車両10が走行中の自車線として特定すればよい。
【0044】
なお、自車線検出部31は、例えば、検出対象となる地物を画像から検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、その地物を検出すればよい。自車線検出部31は、そのような識別器として、Single Shot MultiBox Detector、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、自車線検出部31は、そのような識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。これらの識別器は、検出された地物ごとに、その地物の確からしさを表す確信度を出力してもよい。そして識別器は、所定の地物について算出された確信度が所定の検出閾値よりも高くなる画像上の領域を、その所定の地物が表された物体領域として検出する。
【0045】
自車線検出部31は、検出した自車線を表す情報を、誤検出判定部32、特定部33及び制御部34へ通知する。
【0046】
誤検出判定部32は、車両10が走行中の道路の一端に対する、自車線検出部31により検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する。
【0047】
図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる例を示す図である。図5(a)に示される例では、車両10は、道路500に設けられた複数の車線のうち、車両10の進行方向に対して右から2番目の車線501を走行している。しかし、車線501に隣接する車線502が、自車線として誤って検出されている。そのため、検出された自車線の位置と、実際の自車線の位置とが異なっている。このような自車線の誤検出は、例えば、車両10が走行中の道路に設けられた車線の数が多い場合、あるいは、道路に設けられた車線区画線などの地物が掠れているためにその地物の判別が困難になっている場合などに生じ得る。また、車両10が、高精度地図でカバーされているエリアに進入して間もないときのように、自車線の検出が開始されてからの経過時間が比較的短い場合にも、自車線の誤検出が生じ得る。
【0048】
図5(b)に示される例では、車両10は、道路510に設けられた複数の車線のうち、車両10の進行方向に対して一番右の車線511を走行している。そしてこの例では、車線511自体が自車線として検出されている。しかしながら、道路510の左端の車線512は、車両10が自車線の検出に利用した高精度地図が生成された後に増設されており、そのため、高精度地図上では、道路510には、車線512は含まれていない。その結果、自車線検出部31が認識する、自車線511から道路510の左端までの間に存在する車線の数と、自車線511から道路510の実際の左端までの間に存在する実際の車線の数とは異なっている。このことから、道路510の左端に対する、検出された自車線の位置は、実際の位置と異なっている。このような、高精度地図と実際の環境とにおける、検出された自車線の左右の車線数の不一致は、高精度地図が最新の道路の情報を反映していない場合、あるいは、道路上で工事が行われている場合などに生じ得る。
【0049】
そこで、誤検出判定部32は、車両10が走行中の道路の構造、走行環境、高精度地図の生成または更新のタイミングなどに基づいて、車両10が走行中の道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する。具体的に、誤検出判定部32は、後述する判定処理のうちの何れかに基づいて、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否かを判定すればよい。後述する判定処理を実行することで、誤検出判定部32は、車両10が走行中の道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否かを正確に判定することができる。なお、誤検出判定部32は、後述する判定処理の全てについて実行する必要は無く、それら判定処理のうちの少なくとも一つについて実行すればよい。また、以下では、車両10が走行中の道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なることを、単に検出された自車線の位置が実際の位置と異なると表現することがある。
【0050】
例えば、誤検出判定部32は、無線通信器5を介して他の機器から受信した工事情報を参照する。そして誤検出判定部32は、その工事情報において、車両10の現在位置から所定距離先までの区間において、現時刻を含む所定期間内に道路工事が実施されることが示されている場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。これは、道路工事により通行可能な車線の数が変化しているために、検出された自車線の位置が実際の位置と異なっている可能性が有るためである。
【0051】
また、誤検出判定部32は、高精度地図の最終更新日時が現時刻よりも所定期間以上前である場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。あるいは、誤検出判定部32は、高精度地図と道路地図とで、車両10の現在位置から所定距離先までの区間における道路の構造が異なる場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定してもよい。これは、高精度地図が車両10の現在位置周辺の道路の構造を正確に表していないため、検出された自車線の位置が誤っている可能性が有るためである。
【0052】
さらに、誤検出判定部32は、車両10の現在位置から所定距離先までの区間における、車両10の前方を走行する他の車両の走行軌跡が高精度地図上で車両が走行可能でないエリアを通る場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定してもよい。これは、他の車両が走行可能でないエリアを実際に走行していることは考えられないことから、検出された自車線の位置が誤っている可能性が高いと考えられるためである。
【0053】
この場合、誤検出判定部32は、カメラ2により得られた時系列の一連の画像から車両10の周囲を走行する他車両を検出する。その際、誤検出判定部32は、画像から検出対象となる物体を検出するように予め学習された識別器に一連の画像を入力することで、その一連の画像のそれぞれから車両10の周囲に存在する他車両を検出すればよい。制御部34は、そのような識別器として、例えば、自車線検出部31が利用する識別器と同様に、CNN型あるいはSAN型のアーキテクチャを有するDNNを用いることができる。
【0054】
誤検出判定部32は、時系列の一連の画像から検出された他車両を追跡することで、他車両の走行軌跡を求める。その際、誤検出判定部32は、Lucas-Kanade法といった、オプティカルフローに基づく追跡処理を、カメラ2により得られた最新の画像における、着目する他車両が表された物体領域及び過去の画像における物体領域に対して適用する。これにより、誤検出判定部32は、その物体領域に表された他車両を追跡する。そのため、誤検出判定部32は、例えば、着目する物体領域に対してSIFTあるいはHarrisオペレータといった特徴点抽出用のフィルタを適用することで、その物体領域から複数の特徴点を抽出する。そして誤検出判定部32は、複数の特徴点のそれぞれについて、過去の画像における物体領域における対応する点を、適用される追跡手法に従って特定することで、オプティカルフローを算出すればよい。あるいは、誤検出判定部32は、画像から検出された移動物体の追跡に適用される他の追跡手法を、最新の画像における、着目する物体領域及び過去の画像における物体領域に対して適用することで、その物体領域に表された他車両を追跡してもよい。
【0055】
誤検出判定部32は、追跡中の他車両のそれぞれについて、カメラ2についての車両10への取り付け位置などの情報を用いて視点変換処理を実行することで、その他車両の画像内座標を鳥瞰画像上の座標(鳥瞰座標)に変換する。その際、誤検出判定部32は、各画像の取得時における、車両10の位置及び姿勢と、検出された他車両までの推定距離と、車両10から他車両へ向かう方向とにより、各画像の取得時における、検出された他車両の位置を推定できる。なお、誤検出判定部32は、車両10の位置及び姿勢を、自車線検出部31から取得すればよい。また、誤検出判定部32は、画像上での検出された他車両を含む物体領域の位置及びカメラ2の光軸方向に基づいて、車両10からその他車両へ向かう方向を特定することができる。さらに、車両10から検出された他車両までの推定距離は、画像上での他車両が表された領域のサイズと、他車両までの距離が基準距離である場合における、他車両の画像上での基準サイズとの比、及び、他車両の実空間のサイズとに基づいて求められる。なお、基準距離、検出された他車両の画像上での基準サイズ及び実空間のサイズは、例えば、メモリ22に予め記憶されていればよい。また、物体領域の下端の位置は、その物体領域に表される他車両の路面に接する位置を表すと想定される。そこで誤検出判定部32は、物体領域の下端に対応する、カメラ2からの方位と、カメラ2の設置高さとに基づいて、その物体領域に表された他車両までの距離を推定してもよい。
【0056】
誤検出判定部32は、上記のようにして求めた他車両の走行軌跡を高精度地図と重ねることで、その走行軌跡が、車両が走行可能でないエリアを通るか否かを判定する。そして誤検出判定部32は、何れかの他車両について求めた走行軌跡の少なくとも一部が、車両が走行可能でないエリアと重なる場合、検出された自車線の位置が実際の位置とが異なる可能性が有ると判定する。
【0057】
さらに、誤検出判定部32は、自車線の検出を開始してから一定時間が経過する前、あるいは自車線の検出を開始してから一定距離を車両10が走行するまでの間、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定してもよい。これは、自車線の検出処理が開始された直後では、自車線の検出精度が十分でないことがあるためである。
【0058】
さらに、誤検出判定部32は、車両10の現在位置において高精度地図またはカメラ2により生成された画像に示される車線の数が所定数以上であるか否か判定する。なお、所定数は、例えば、3以上の任意の数、例えば、3~5に設定される。車線の数が所定数以上であり、かつ、検出された自車線が車両10の現在位置における複数の車線の中心から所定範囲内に位置する場合、誤検出判定部32は、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。これは、車線数が多い道路で、かつ、車両10が道路の中央付近を走行している場合には、検出された自車線の位置がずれ易いことによる。
【0059】
さらにまた、誤検出判定部32は、所定時間前における車両10の位置における車線の数に対して車両10の現在の位置における車線の数が所定数以上変化している場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。車両10が走行中の道路に設けられた車線の数が急激に変化する地点では、検出された自車線の位置がずれ易いことによる。
【0060】
さらにまた、誤検出判定部32は、カメラ2により生成された画像から検出された所定の地物の位置が、検出された自車線の位置を基準とする高精度地図上の対応する地物の位置と異なる場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。このように画像上の地物の位置と高精度地図上の対応する地物の位置とが一致しない原因として、推定された車両10の位置が不正確であることが想定され、その結果として、推定された自車線の位置が誤っている可能性が有るためである。なお、誤検出判定部32は、自車線検出部31において説明した自車位置の推定と同様の手法により、画像から検出された地物を高精度地図上に投影することで、画像上の地物の位置と高精度地図上の対応する地物の位置とを比較すればよい。
【0061】
さらにまた、誤検出判定部32は、カメラ2により生成された画像から検出された所定の地物の確信度が所定の確信度閾値以下である場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。この場合、確信度は、自車線検出部31が利用する識別器が出力する確信度とすることができる。また、所定の確信度閾値は、画像から地物を検出するために自車線検出部31で利用される検出閾値よりも高い値に設定されることが好ましい。これは、車両10の周囲の地物の検出精度が不十分であるために、推定された自車線の位置が誤っている可能性が有るためである。
【0062】
さらにまた、誤検出判定部32は、検出された自車線の位置を基準とする、高精度地図上で車両10が走行可能なエリアに相当する、カメラ2により生成された画像に示される範囲内を走行する他の車両を検出する。そして誤検出判定部32は、そのような他の車両を一定期間にわたって検出できない場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。高精度地図上で車両10が走行可能なエリアには、通常、他の車両が走行していることが想定される。そのため、そのエリアに対応する画像上の範囲内で他の車両が検出されない場合、車両10の位置の推定が誤っており、その結果として、自車線の位置が誤っている可能性が有るためである。なお、誤検出判定部32は、自車線検出部31において説明した自車位置の推定と同様の手法により、高精度地図上の車両10が走行可能なエリアを画像に投影することで、そのエリアに対応する画像上の範囲をもとめればよい。
【0063】
さらにまた、高精度地図において、自車線の検出に失敗し易い地点(以下、誤検出危険地点と呼ぶ)を表す情報が予め含まれていてもよい。この場合、誤検出判定部32は、車両10の現在位置が高精度地図において予め指定された誤検出危険地点から所定範囲内に含まれる場合、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ると判定する。
【0064】
誤検出判定部32は、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否かの判定結果を制御部34へ通知する。
【0065】
特定部33は、車両10の現在位置またはカメラ2により生成された画像に基づいて、検出された自車線において実行することが要求される車両10の制御(以下、第1の制御と呼ぶことがある)を特定する。さらに、特定部33は、検出された自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両10の制御(以下、第2の制御と呼ぶことがある)を特定する。なお、第1の制御及び第2の制御には、例えば、車速制限に応じた車速の維持、進入禁止車線への車線変更の抑制、走行中の車線の維持、指定された車線への車線変更、ステアリングの保持及びそのためのHandsOn通知、及び、手動運転及びそのための運転交代要求の通知の少なくとも一つが含まれる。
【0066】
特定部33は、高精度地図に含まれる、検出された自車線に設定された制御を表す情報を参照することで、その情報で示される制御を第1の制御として特定する。同様に、特定部33は、高精度地図に含まれる、隣接車線に設定された制御を表す情報を参照することで、その情報で示される制御を第2の制御として特定する。なお、自車線の左側に隣接する隣接車線と、自車線の右側に隣接する隣接車線とで、個別に第2の制御が設定されてもよい。さらに、特定部33は、高精度地図に表される、隣接車線にさらに隣接する車線についての車両制御に関する情報を参照することで、隣接車線において実行することが制限される制御を特定してもよい。例えば、隣接車線にさらに隣接する車線がHOVレーンといった、車両10の進入が禁止される車線である場合、特定部33は、隣接車線にさらに隣接する車線への車線変更を、隣接車線において制限される制御として特定する。
【0067】
あるいは、特定部33は、カメラ2により生成された画像から、検出された自車線または隣接車線の制御を表す道路標示または道路標識を検出することで、第1の制御または第2の制御を特定してもよい。この場合、特定部33は、道路標示または道路標識を検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、道路標示または道路標識を検出する。特定部33は、そのような識別器として、自車線検出部31の地物検出に関して説明したのと同様の識別器を利用することができる。したがって、識別器は、検出した道路標示または道路標識の種別を表す識別情報及びその道路標示または道路標識を含む物体領域を表す情報を出力する。あるいは、自車線検出部31が利用する識別器が検出する地物に、道路標示または道路標識が含まれてもよい。この場合には、特定部33は、自車線検出部31から、検出された道路標示または道路標識の識別情報及び画像上での検出された道路標示または道路標識を含む物体領域を表す情報を受け取ればよい。
【0068】
特定部33は、検出された道路標示または道路標識を含む物体領域の画像上での位置と、画像上での車線区画線との位置関係に基づいて、検出された道路標示または道路標識が、第1の制御及び第2の制御の何れを表すかを判定すればよい。そのために、特定部33は、自車線検出部31において説明した自車位置の推定と同様の手法により、高精度地図上の自車線及び隣接車線を画像に投影することで、画像上での自車線が表された範囲及び隣接車線が表された範囲を特定する。そして特定部33は、検出された道路標示を含む物体領域が自車線を表す範囲に含まれ、あるいは自車線を表す範囲との重複度合いが所定の閾値以上となる場合、その道路標示は自車線に設けられたものであると判定する。そして特定部33は、道路標示の種別と、その道路標示が規定する制御との関係を表す参照テーブルを参照することで、自車線に設けられた道路標示に対応する制御を特定し、特定した制御を第1の制御とすればよい。同様に、特定部33は、検出された道路標示を含む物体領域が隣接車線を表す範囲に含まれ、あるいは隣接車線を表す範囲との重複度合いが所定の閾値以上となる場合、その道路標示は隣接車線に設けられたものであると判定する。そして特定部33は、道路標示の種別と、その道路標示が規定する制御との関係を表す参照テーブルを参照することで、隣接車線に設けられた道路標示に対応する制御を特定し、特定した制御を第2の制御とすればよい。また、特定部33は、検出された道路標識に示される個々の車線についての標識のうち、車両10が走行中の道路における各車線のうちの検出された自車線の位置関係と同じ位置関係の標識を、自車線についての標識として特定すればよい。例えば、検出された自車線が右から2番目の車線である場合、特定部33は、検出された道路標識に示される個々の標識のうち、右から2番目の標識を自車線についての標識として特定する。同様に、特定部33は、検出された道路標識に示される個々の車線についての標識のうち、車両10が走行中の道路における各車線のうちの隣接車線の位置関係と同じ位置関係の標識を、隣接車線についての標識として特定すればよい。特定部33は、道路標示に基づいて第1及び第2の制御を特定するときと同様に、道路標識の種別と、その道路標識が規定する制御との関係を表す参照テーブルを参照することで、自車線または隣接車線に設けられた道路標識に対応する制御を特定すればよい。そして特定部33は、特定した制御を第1の制御または第2の制御とすればよい。
【0069】
さらに、特定部33は、画像に表される車両10の周囲の状況に基づいて、自車線について要求される第1の制御を特定してもよい。例えば、特定部33は、誤検出判定部32について説明したのと同様の手法により、一連の画像から車両10の周囲を走行する他車両を検出し、検出した他車両を追跡する。そして特定部33は、追跡中の他車両が自車線において車両10の前方を走行し、かつ、他車両と車両10間の距離が時間経過とともに短くなり、かつ、ある時点でその距離が所定の距離閾値以下になると、隣接車線への車線変更を第1の制御として特定してもよい。
【0070】
特定部33は、特定した第1の制御及び第2の制御を制御部34へ通知する。さらに、特定部33は、隣接車線において実行することが制限される制御を制御部34へ通知する。なお、車両10の現在位置において、第1の制御、第2の制御及び隣接車線において実行することが制限される制御の何れかが検出されない場合には、特定部33は、それらの制御のうち、検出されない制御を制御部34へ通知すればよい。
【0071】
制御部34は、検出された自車線が実際の位置と異なる可能性が無いと判定されるか、隣接車線において第1の制御が禁止されない場合に限り、第1の制御を実行する。すなわち、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、検出された自車線に隣接する車線において第1の制御が禁止される場合、制御部34は、その第1の制御を実行しない。また、制御部34は、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、その第2の制御を実行する。
【0072】
誤検出判定部32から、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることが通知されると、制御部34は、特定部33から通知された、第1の制御、第2の制御及び隣接車線において実行することが制限される制御を参照する。そして制御部34は、第1の制御が隣接車線において要求される第2の制御に反する場合、あるいは、隣接車線において実行することが制限される制御である場合、その第1の制御を実行しない。具体的に、第1の制御が車線変更であり、隣接車線における第2の制御が車線維持となっているか、あるいは、隣接車線にさらに隣接する車線への車線変更が制限されている場合、制御部34は、隣接車線への車線変更を実施せず、自車線の走行を維持する。一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有る場合でも、第1の制御が隣接車線において要求される第2の制御に反せず、かつ、隣接車線において実行することが制限される制御と異なる場合、制御部34は、第1の制御を実行する。また、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が無いと判定された場合についても、制御部34は、第1の制御を実行する。特定された第1の制御が存在するにもかかわらず、制御部34が第1の制御を実行しない場合、制御部34は、第1の制御の内容及び第1の制御を実行しないことを、車両10の車室内に設けられた通知機器(図示せず)を介してドライバに通知してもよい。なお、通知機器は、例えば、表示装置、スピーカあるいは振動子とすることができる。
【0073】
さらに、誤検出判定部32から、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることが通知されると、制御部34は、特定部33から通知された第2の制御が有るか否か判定する。そして特定部33から通知された第2の制御が有る場合、制御部34は、その第2の制御を実行する。例えば、第2の制御がドライバによるステアリングの保持である場合、制御部34は、車両10の車室内に設けられた通知機器(図示せず)を介して、ドライバに対してHandsOn要求を通知する。また、第2の制御が車速制限に応じた車速の維持である場合、制御部34は、高精度地図を参照して、車両10が走行中の道路についての制限速度を特定し、車両10の車速を、特定した制限速度以下で維持するように車両10を制御する。すなわち、制御部34は、車両10の車速が制限速度以下となるように、アクセル開度を設定する。そして制御部34は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部34は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。
【0074】
図6は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。
【0075】
プロセッサ23の自車線検出部31は、車両10が走行中の自車線を検出する(ステップS101)。また、プロセッサ23の誤検出判定部32は、車両10が走行中の道路の一端に対する検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する(ステップS102)。
【0076】
さらに、プロセッサ23の特定部33は、自車線において実行することが要求される第1の制御と、隣接車線において実行することが要求される第2の制御とを特定する(ステップS103)。
【0077】
プロセッサ23の制御部34は、特定された第1の制御が存在するか否か判定する(ステップS104)。特定された第1の制御が存在する場合(ステップS104-Yes)、制御部34は、誤検出判定部32から通知された判定結果が、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることを示しているか否か判定する(ステップS105)。その判定結果が、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が無いことを示している場合(ステップS105-No)、制御部34は、特定された第1の制御を実行する(ステップS106)。
【0078】
一方、その判定結果が、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることを示している場合(ステップS105-Yes)、制御部34は、第1の制御が隣接車線において禁止されているか否か判定する(ステップS107)。第1の制御が隣接車線において禁止されていない場合(ステップS107-No)、制御部34は、特定された第1の制御を実行する(ステップS106)。一方、第1の制御が隣接車線において禁止されている場合(ステップS107-Yes)、制御部34は、第1の制御の実行を抑制する(ステップS108)。
【0079】
ステップS106またはステップS108の後、あるいは、ステップS104にて特定された第1の制御が存在しない場合(ステップS104-No)、制御部34は、誤検出判定部32から通知された判定結果及び特定された第2の制御を参照する。そしてその判定結果が検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることを示し、かつ、特定された第2の制御が存在するか否か判定する(ステップS109)。判定結果が、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有ることを示しており、かつ、特定された第2の制御が存在する場合(ステップS109-Yes)、制御部34は、第2の制御を実行する(ステップS110)。そしてプロセッサ23は、車両制御処理を終了する。一方、判定結果が、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が無いことを示しているか、特定された第2の制御が存在しない場合(ステップS109-No)も、プロセッサ23は車両制御処理を終了する。
【0080】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、車両が走行中の道路の一端に対する検出した自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有るか否か判定する。また、この車両制御装置は、検出された自車線において実行することが要求される車両の第1の制御と、自車線に隣接する隣接車線において実行することが要求される車両の第2の制御とを特定する。そしてこの車両制御装置は、検出された自車線が実際の位置と異なる可能性が無いと判定されるか、隣接車線において第1の制御が禁止されない場合に限り、第1の制御を実行する。すなわち、この車両制御装置は、検出された自車線が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、隣接車線において第1の制御が禁止される場合、第1の制御を実行しない。一方、検出された自車線の位置が実際の位置と異なる可能性が有り、かつ、第2の制御が存在する場合、この車両制御装置は、第2の制御を実行する。これにより、この車両制御装置は、検出された自車線の位置が正確でなくても、車両に対して要求される制御を実行し、あるいは、車両に対して禁止される制御を実行しないようにすることができる。
【0081】
上記の実施形態または変形例による、ECU7のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0082】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 車両制御システム
10 車両
2 カメラ
3 GPS受信機
4 ナビゲーション装置
5 無線通信器
6 ストレージ装置
7 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 自車線検出部
32 誤検出判定部
33 特定部
34 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6