(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240820BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240820BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20240820BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
(21)【出願番号】P 2022063549
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 健太
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177976(JP,A)
【文献】特開2010-052717(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136456(WO,A1)
【文献】特開2021-006429(JP,A)
【文献】特開2012-224238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60K 6/48
B60K 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び電動機を有する車両の車両制御装置であって、
運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが前記車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ前記車両を移動させようとしているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によってドライバが前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させようとしていると判定され、且つ、前記エンジンを停止していて前記電動機を用いて駆動力が得られている場合には、前記エンジンを始動させ
且つ前記エンジンの駆動力を入力してタイヤへ伝達する変速機を制御して現在よりも低速用の変速比又は変速段に変更する制御部と、
を有し、
前記制御部は、ドライバにより前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させることが要求された場合、前記エンジンを始動している時には、前記エンジンの駆動力
及び変更された低速用の変速比又は変速段を用いて、前記車両を加速させる、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記監視画像に基づいて、ドライバの顔の向きを判定し、所定の判定周期内においてドライバの顔が前記隣接車線側に向いている時間を積算した積算時間が、第1の基準時間に到達した場合、ドライバが前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させようとしていると判定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記隣接車線を走行する他の車両の平均速度と前記車両の速度との差、又は、前記走行車線の制限速度と前記車両の速度との差が、所定の基準速度差以上であり、且つ、前記判定部によってドライバが前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させようとしていると判定され、且つ、前記エンジンを停止していて
前記電動機を用いて駆動力が得られている場合に、前記エンジンを始動させる請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
エンジン及び電動機を有する車両を制御する車両制御用コンピュータプログラムであって、
運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが前記車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ前記車両を移動させようとしているか否かを判定し、
ドライバが前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させようとしていると判定され、且つ、前記エンジンを停止していて前記電動機を用いて駆動力が得られている場合には、前記エンジンを始動させ
且つ前記エンジンの駆動力を入力してタイヤへ伝達する変速機を制御して現在よりも低速用の変速比又は変速段に変更し、
ドライバにより前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させることが要求された場合、前記エンジンが始動している時には、前記エンジンの駆動力
及び変更された低速用の変速比又は変速段を用いて、前記車両を加速する、
ことを含む処理をプロセッサに実行させる、ことを特徴とする車両制御用コンピュータプログラム。
【請求項5】
エンジン及び電動機を有する車両を制御する車両制御装置によって実行される車両制御方法であって、
運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが前記車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ前記車両を移動させようとしているか否かを判定し、
ドライバが前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させようとしていると判定され、且つ、前記エンジンを停止していて前記電動機を用いて駆動力が得られている場合には、前記エンジンを始動させ
且つ前記エンジンの駆動力を入力してタイヤへ伝達する変速機を制御して現在よりも低速用の変速比又は変速段に変更し、
ドライバにより前記走行車線から前記隣接車線へ前記車両を移動させることが要求された場合、前記エンジンを始動している時には、前記エンジンの駆動力
及び変更された低速用の変速比又は変速段を用いて、前記車両を加速する、
ることを含む、ことを特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動制御システムは、車両の現在位置と、車両の目的位置と、ナビゲーション用地図とに基づいて、車両のナビルートを生成する。自動制御システムは、地図情報を用いて車両の現在位置を推定し、車両をナビルートに沿って走行するように制御する。
【0003】
ハイブリッド車両の駆動装置は、エンジン及び電動機を有する。自動制御システムは、車両の走行状態に応じて、エンジン及び電動機の動作を制御して車両を適宜加速する(例えば、特許文献1参照)。自動制御システムは、例えば車両の定常走行時には、エンジンを停止して電動機により駆動力を発生するように、駆動装置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライバは、車両が走行車線を定常走行している時に、走行車線の前方の他の車両を追い越したいと考えることがある。ドライバは、走行車線から隣接する追い越し車線へ移動するように車線間を移動することを、車両の自動制御システムへ要求する。
【0006】
車両の自動制御システムは、ドライバの要求に応じて、走行車線から隣接する追い越し車線へ移動する運転計画を生成し、この運転計画に基づいて車線間の移動を実行する。ドライバにより走行車線から隣接する追い越し車線へ移動する要求を受けると、自動制御システムは、エンジンを停止していた場合、追い越し車線へ移動するためにエンジンを始動し、エンジンの駆動力を用いて加速する。そのため、車両がエンジンの駆動力を用いて加速されるのに遅れが生じるという問題があった。
【0007】
本開示は、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしている場合、適切なタイミングで車両を加速できる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一の実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、エンジン及び電動機を有する車両の車両制御装置であって、運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両を移動させようとしているか否かを判定する判定部と、判定部によってドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定され、且つ、エンジンを停止していて電動機を用いて駆動力が得られている場合には、エンジンを始動させる制御部と、を有し、制御部は、ドライバにより走行車線から隣接車線へ車両を移動させることが要求された場合、エンジンを始動している時には、エンジンの駆動力を用いて車両を加速させる、ことを特徴とする。
【0009】
また、この車両制御装置において、判定部は、監視画像に基づいて、ドライバの顔の向きを判定し、所定の判定周期内においてドライバの顔が隣接車線側に向いている時間を積算した積算時間が、第1の基準時間に到達した場合、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定することが好ましい。
【0010】
また、この車両制御装置において、制御部は、隣接車線を走行する他の車両の平均速度と車両の速度との差、又は、走行道路の制限速度と車両の速度との差が、所定の基準速度差以上であり、且つ、判定部によってドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定され、且つ、エンジンを停止していて電動機を用いて駆動力が得られている場合に、エンジンを始動させることが好ましい。
【0011】
他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、エンジン及び電動機を有する車両を制御する車両制御用コンピュータプログラムであって、運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両を移動させようとしているか否かを判定し、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定され、且つ、エンジンを停止していて電動機を用いて駆動力が得られている場合には、エンジンを始動させ、ドライバにより走行車線から隣接車線へ車両を移動させることが要求された場合、エンジンが始動している時には、エンジンの駆動力を用いて車両を加速する、ことを含む処理をプロセッサに実行させる、ことを特徴とする。
【0012】
更に他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、エンジン及び電動機を有する車両を制御する車両制御装置によって実行される車両制御方法であって、運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが車両の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両を移動させようとしているか否かを判定し、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定され、且つ、エンジンを停止していて電動機を用いて駆動力が得られている場合には、エンジンを始動させ、ドライバにより走行車線から隣接車線へ車両を移動させることが要求された場合、エンジンを始動している時には、エンジンの駆動力を用いて車両を加速する、ことを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る車両制御装置は、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしている場合、停止していたエンジンを始動することにより、適切なタイミングで車両を加速できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の車両制御装置の動作の概要を説明する図であり、(A)は、道路を走行する車両を示す図であり、(B)は、車両制御装置及び駆動装置を示す図である。
【
図2】本実施形態の車両制御システムが実装される車両の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の車両制御装置の車両制御処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図4】(A)は、アクセル制御信号と時間との関係を示す図であり、(B)は、加速度と時間との関係を示す図である。
【
図5】本実施形態の車両制御装置のドライバ判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図6】本実施形態の車両制御装置の第1変型例の動作例を説明する図である。
【
図7】本実施形態の車両制御装置の第1変型例のドライバ判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【
図8】本実施形態の車両制御装置の第2変型例の車両制御処理に関する動作フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)及び
図1(B)は、本実施形態の車両制御装置16の動作の概要を説明する図であり、
図1(A)は、道路を走行する車両を示す図であり、
図1(B)は、車両制御装置及び駆動装置を示す図である。以下、
図1(A)及び
図1(B)を参照しながら、本明細書に開示する車両制御装置16の車両制御処理に関する動作の概要を説明する。
【0016】
車両10は、車両制御装置16及び駆動装置17を有する。車両制御装置16は、所定の運転計画に基づいて、駆動装置17等を制御する。駆動装置17は、エンジン171、電動機172及び自動変速機173を有する。駆動装置17は、車両制御装置16によって制御され、エンジン171及び電動機172の出力を調節する。また、駆動装置17は、車両制御装置16によって制御され、自動変速機173の変速段又は変速比を調節する。エンジン171及び電動機172の出力は、自動変速機173で所定の回転数の回転力に変換され、出力軸19を介してタイヤ20へ伝達される。
【0017】
図1に示すように、車両10は道路50を走行している。道路50は2つの車線51、52を有する。車線51と車線52とは車線区画線54により区画される。車両10は車線51走行しており、車両10の前方には他の車両60が走行している。
【0018】
車両10は道路50の車線51を定常走行している。定常走行では、車両10は、比較的低い負荷で、一定の速度で走行している。車両10は定常走行しているので、車両制御装置16は、エンジン171を停止して、電動機172を用いて駆動力を得ている。
【0019】
ドライバは、車線51の前方の他の車両60を追い越したいと考えたので、隣接する追い越し車線52の様子を調べるために、顔を何度も車線52に向けた。
【0020】
車両制御装置16は、監視カメラ3により車両10の運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが車両10の走行する車線51から隣接する車線52へ車両10を移動させようとしていると判定した。
【0021】
駆動装置17はエンジン171を停止し電動機172を用いて駆動力を得ていたので、車両制御装置16は、エンジン171を始動させる。これにより、駆動装置17は、エンジン171及び電動機172を用いて、車両10を加速可能となる。
【0022】
そして、ドライバは、車線51から隣接する追い越し車線52へ移動することを、車両10の車両制御装置16へ要求する。
【0023】
車両制御装置16は、ドライバにより車線51から隣接する車線52へ車両10を移動させることが要求されたので、エンジン171及び電動機172の駆動力を用いて車両10を加速させる。
【0024】
車両10は、ドライバの車線変更の要求に応じて車両10を速やかに加速して車線間を移動する。その後、車両10は、他の車両60を追い抜いた後、車線52から車線51へ移動した。
【0025】
以上説明したように、車両制御装置16は、ドライバが走行車線51から隣接する車線52へ車両10を移動させようとしている場合、あらかじめエンジン171を始動しているので、エンジン171及び電動機172の駆動力を用いて、適切なタイミングで車両10を加速できる。
【0026】
図2は、本実施形態の車両制御システム1が実装される車両10の概略構成図である。車両10は、前方カメラ2と、監視カメラ3と、方向指示器4と、測位情報受信機5と、ナビゲーション装置6と、ユーザインターフェース(UI)7と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16及び駆動装置17等とを有する。更に、車両10は、LiDARセンサといった、車両10の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)を有してもよい。
【0027】
前方カメラ2、監視カメラ3と、方向指示器4と、測位情報受信機5と、ナビゲーション装置6と、UI7と、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16、駆動装置17とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク18を介して通信可能に接続される。
【0028】
前方カメラ2は、車両10に設けられる撮像部の一例である。前方カメラ2は、車両10の前方を向くように、車両10に取り付けられる。前方カメラ2は、例えば所定の周期で、車両10の前方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。カメラ画像には、車両10の前方の所定の領域内に含まれる道路と、その路面上の車線区画線等の道路特徴物が表わされ得る。前方カメラ2は、CCDあるいはC-MOS等、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。
【0029】
前方カメラ2は、カメラ画像を撮影する度に、カメラ画像及びカメラ画像が撮影されたカメラ画像撮影時刻を、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12及び物体検出装置13等へ出力する。カメラ画像は、位置推定装置12において、車両10の位置を推定する処理に使用される。また、カメラ画像は、物体検出装置13において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0030】
監視カメラ3は、運転席の近傍を含む監視画像を撮影可能に車室内に配置される。監視画像には、車両10を運転するドライバの顔が含まれ得る。監視カメラ3は、ドライバの顔を含む監視画像を撮影する撮影装置の一例である。監視カメラ3は、例えば、図示しない、ステアリングコラム、ルームミラー、メータパネル、メータフード等に配置され得る。
【0031】
監視カメラ3は、例えば所定の周期で監視画像を撮影する。監視カメラ3は、CCDあるいはC-MOS等、赤外線に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。監視カメラ3は、監視画像を撮影する度に、監視画像及び監視画像が撮影された監視画像撮影時刻を、車内ネットワーク18を介して、車両制御装置16等へ出力する。
【0032】
方向指示器4は、ドライバによって操作可能にステアリングホイール(図示せず)の近傍に配置される。車両制御システム1が主体となって車両10を運転している場合、車両10の車線間の移動を要求するドライバは、車両10を移動させたい車線側に方向指示器4を操作する。方向指示器4は、ドライバによる操作に応じた操作信号を生成する。方向指示器4は、操作信号を、車内ネットワーク18を介して、走行車線計画装置14及び車両制御装置16等へ出力する。また、ドライバが主体となって車両10を運転している場合、車両10の右折、左折又は車線間の移動を行う時に、ドライバは、車両10を移動する側に方向指示器4を操作する。方向指示器4が出力する操作信号に基づいて、図示しない方向指示灯が点滅する。
【0033】
測位情報受信機5は、車両10の現在位置を表す測位情報を出力する。例えば、測位情報受信機5は、GNSS受信機とすることができる。測位情報受信機5は、所定の受信周期で測位情報を取得する度に、測位情報及び測位情報を取得した測位情報取得時刻を、ナビゲーション装置6及び地図情報記憶装置11等へ出力する。
【0034】
ナビゲーション装置6は、ナビゲーション用地図情報と、UI7から入力された車両10の目的位置と、測位情報受信機5から入力された車両10の現在位置を表す測位情報とに基づいて、車両10の現在位置から目的位置までのナビルートを生成する。ナビルートは、右折、左折、合流、分岐等の位置に関する情報を含む。ナビゲーション装置6は、目的位置が新しく設定された場合、又は、車両10の現在位置がナビルートから外れた場合等に、車両10のナビルートを新たに生成する。ナビゲーション装置6は、ナビルートを生成する度に、そのナビルートを、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12及び走行車線計画装置14等へ出力する。
【0035】
UI7は、通知部の一例である。UI7は、ナビゲーション装置6、運転計画装置15及び車両制御装置16等に制御されて、車両10の走行情報等をドライバへ通知する。車両10の走行情報は、車両の現在位置、車線変更を行うこと、ナビルート等の車両の現在及び将来の経路に関する情報等を含む。UI7は、走行情報等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置7aを有する。また、UI7は、走行情報等をドライバへ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI7は、ドライバから車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両の速度及びその他の制御情報等が挙げられる。UI7は、ドライバから車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。UI7は、入力された操作情報を、車内ネットワーク18を介して、ナビゲーション装置6、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0036】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置を含む相対的に広い範囲(例えば10~30km四方の範囲)の広域の地図情報を記憶する。この地図情報は、路面の3次元情報と、道路の制限速度、道路の曲率、道路上の車線区画線等の道路特徴物、構造物の種類及び位置を表す情報等を含む高精度地図情報を有する。
【0037】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置に応じて、車両10に搭載される無線通信装置(図示せず)を介した無線通信により、基地局を介して外部のサーバから広域の地図情報を受信して記憶装置に記憶する。地図情報記憶装置11は、測位情報受信機5から測位情報を入力する度に、記憶している広域の地図情報を参照して、測位情報により表される現在位置を含む相対的に狭い領域(例えば、100m四方~10km四方の範囲)の地図情報を、車内ネットワーク18を介して、位置推定装置12、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0038】
位置推定装置12は、前方カメラ2により撮影されたカメラ画像内に表された車両10の周囲の道路特徴物に基づいて、カメラ画像撮影時刻における車両10の位置を推定する。例えば、位置推定装置12は、カメラ画像内に識別した車線区画線と、地図情報記憶装置11から入力された地図情報に表された車線区画線とを対比して、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置及び推定方位角を求める。また、位置推定装置12は、地図情報に表された車線区画線と、車両10の推定位置及び推定方位角とに基づいて、車両10が位置する道路上の走行車線を推定する。位置推定装置12は、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置、推定方位角及び走行車線を求める度に、これらの情報を、物体検出装置13、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0039】
物体検出装置13は、カメラ画像及び反射波情報に基づいて、車両10の周囲の他の物体及びその種類(例えば、車両)を検出する。他の物体には、車両10の周囲を走行する他の車両が含まれる。物体検出装置13は、検出された他の物体を追跡して、他の物体の軌跡及び速度を求める。物体検出装置13は、地図情報に表された車線区画線と、他の物体位置とに基づいて、他の物体が走行している走行車線を特定する。また、物体検出装置13は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その位置及び速度を示す情報及び走行車線を示す情報を含む物体検出情報を、走行車線計画装置14、運転計画装置15及び車両制御装置16等へ出力する。
【0040】
走行車線計画装置14は、所定の周期で設定される走行車線計画生成時刻において、ナビルートから選択された直近の運転区間(例えば、10km)において、地図情報と、ナビルート及び周辺環境情報と、車両10の現在位置とに基づいて、車両10が走行する道路内の車線を選択して、車両10が走行する予定走行車線を表す走行車線計画を生成する。周辺環境情報は、車両の10の周囲を走行する他の車両の位置及び速度等を含む。走行車線計画装置14は、例えば、車両10が追い越し車線以外の車線を走行するように、走行車線計画を生成する。走行車線計画装置14は、走行車線計画を生成する度に、その走行車線計画を運転計画装置15へ出力する。
【0041】
運転計画装置15は、所定の周期で設定される運転計画生成時刻において、走行車線計画と、地図情報と、車両10の現在位置と、周辺環境情報と、車両状態情報とに基づいて、所定の時間(例えば、5秒)先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する運転計画処理を実行する。車両状態情報は、車両10の現在位置、車両速度、加速度及び進行方向等を含む。運転計画は、現時刻から所定時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。運転計画が生成される周期は、走行車線計画が生成される周期よりも短いことが好ましい。運転計画装置15は、車両10と他の物体(車両等)との間に所定の距離以上の間隔を維持できるように運転計画を生成する。運転計画装置15は、運転計画を生成する度に、その運転計画を車両制御装置16へ出力する。
【0042】
車両制御装置16は、制御処理と、判定処理とを実行する。そのために、車両制御装置16は、通信インターフェース(IF)21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とは、信号線24を介して接続されている。通信インターフェース21は、車両制御装置16を車内ネットワーク18に接続するためのインターフェース回路を有する。
【0043】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0044】
車両制御装置16が有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。プロセッサ23は、制御部231と、判定部232とを有する。あるいは、プロセッサ23が有する機能モジュールは、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサ23は、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。
【0045】
制御部231は、車両10の現在位置と、車両速度及びヨーレートと、運転計画装置15によって生成された運転計画とに基づいて、車両10の各部を制御する。例えば、制御部231は、運転計画、車両10の車両速度及びヨーレートに従って、車両10の操舵角、加速度及び角加速度を求め、その操舵角、加速度及び角加速度となるように、操舵量、アクセル開度又はブレーキ量を設定する。そして制御部231は、設定された操舵量に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ車内ネットワーク18を介して出力する。また、車両制御装置16は、設定されたアクセル開度に応じた制御信号を車両10の駆動装置17へ車内ネットワーク18を介して出力する。あるいは、車両制御装置16は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキ(図示せず)へ車内ネットワーク18を介して出力する。車両制御装置16の他の動作については、後述する。
【0046】
駆動装置17は、エンジン171、電動機172及び自動変速機173を有する。エンジン171及び電動機172の回転数等の動作は、車両制御装置16により制御される。また、自動変速機173の変速段又は変速比は、車両制御装置16により制御される。自動変速機173の変速段又は変速比は、車両10の速度及び必要とされる回転力に応じて決定され得る。例えば、車両10の速度及び変速段が決定されると、電動機172から自動変速機173へ出力される回転数が決定されて、この回転数に基づいてエンジン171から電動機172へ出力される回転数が適宜決定される。車両10が低負荷で一定の速度で走行している場合、エンジン171は停止して、電動機172で駆動力を得る場合がある。なお、電動機172は、複数のモータを有していてもよい。
【0047】
地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16は、例えば、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)である。
図2では、地図情報記憶装置11と、位置推定装置12と、物体検出装置13と、走行車線計画装置14と、運転計画装置15と、車両制御装置16は、別々の装置として説明されているが、これらの装置の全て又は一部は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0048】
図3は、本実施形態の車両制御装置16の車両制御処理に関する動作フローチャートの一例である。
図3を参照しながら、車両制御装置16の車両制御処理について、以下に説明する。車両制御装置16は、所定の周期を有する車両制御時刻に、
図3に示される動作フローチャートに従って車両制御処理を実行する。
【0049】
まず、判定部232は、監視カメラ3から監視画像を取得する(ステップS101)。監視画像には、運転席の近傍が表されおり、ドライバの顔が含まれていると考えられる。
【0050】
次に、判定部232は、監視画像に基づいて、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしているか否かを判定する(ステップS102)。この処理の詳細については後述する。
【0051】
ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしている場合(ステップS102-Yes)、制御部231は、エンジン171を停止しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0052】
エンジンが停止している場合(ステップS103-Yes)、制御部231は、エンジン171を始動する(ステップS104)。これにより、駆動装置17は、エンジン171及び電動機172を用いて、車両10を加速可能となる。
【0053】
次に、制御部231は、運転計画に基づいて、車線間の移動が計画されているか否かを判定する(ステップS105)。運転計画装置15は、ドライバにより車線間の移動の移動要求に応じて、車線間の移動を含む運転計画を生成して、車両制御装置16へ出力する。
【0054】
車線間の移動が計画されている場合(ステップS104-Yes)、駆動装置17は、制御部231により制御されて、エンジン171及び電動機172を用いて、車両10を加速し車線間を移動して(ステップS106)、一連の処理を終了する。
【0055】
一方、車線間の移動が計画されていない場合(ステップS104-No)、一連の処理を終了する。
【0056】
また、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしていない場合(ステップS102-No)、又は、エンジンが停止していない場合(ステップS103-No)にも、制御部231は、運転計画に基づいて、車線間の移動が計画されているか否かを判定する(ステップS105)。
【0057】
車線間の移動が計画されている場合(ステップS104-Yes)、エンジン171が始動している時には、駆動装置17は、制御部231により制御されて、エンジン171及び電動機172を用いて、車両10を加速し車線間を移動して(ステップS106)、一連の処理を終了する。一方、エンジン171が始動していない時には、駆動装置17は、エンジン171を始動した後、エンジン171及び電動機172を用いて、車両10を加速し車線間を移動して(ステップS106)、一連の処理を終了する。
【0058】
図4(A)は、アクセル制御信号と時間との関係を示す図であり、
図4(B)は、加速度と時間との関係を示す図である。駆動装置17は、車両制御装置16からアクセル制御信号を入力すると、エンジン171又は/及び電動機172の出力を増大させる。車両制御システム1が主体となって車両10を運転している場合、車両制御装置16は、運転計画に基づいて、アクセル制御信号を生成する。一方、ドライバが主体となって車両10を運転している場合、車両制御装置16は、ドライバによるアクセルペダル(図示せず)の操作量に基づいて、アクセル制御信号を生成する。
【0059】
図1(A)に示すように、ドライバが、車線51から隣接する追い越し車線52へ移動することを、車両10の自動制御システム1へ要求した場合、車両制御装置16は、運転計画に基づいて、加速度が増大するようにアクセル制御信号を生成する。
【0060】
図4(A)に示すように、アクセル制御信号は、時刻T1に増大するように変化した。エンジン171が始動している場合には、駆動装置17は、アクセル制御信号の増大に応じて、エンジン171及び電動機172の出力を増大させて、車両10を加速する。
【0061】
一方、エンジン171が停止していた場合には、駆動装置17は、アクセル制御信号の増大に応じて、エンジン171が始動した後は、エンジン171及び電動機172のshつ力を増大させて、車両10を加速する。従って、
図4(B)に示すように、車両10の加速度の増加の程度は、エンジン171が始動している場合には、エンジン171が停止していた場合よりも速くなる。これにより、駆動装置17は、ドライバの車線変更の要求に応じて、車両10を速やかに加速することができる。
【0062】
次に、上述したステップS102において、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしているか否かを判定するドライバ判定処理について、
図5を参照しながら、以下に説明する。
【0063】
まず、判定部232は、ドライバの顔が隣接車線を向いているか否かを判定する(ステップS201)。ドライバの顔の向きは、例えば、車両10の進行方向とドライバが顔を向けている方向との間の水平方向の角度により表される。判定部232は、画像から目尻、目頭、口角点といった顔の所定部位を検出するよう学習した識別器を有する。判定部232は、監視画像をこの識別器に入力することにより、監視画像に含まれる所定部位の位置を特定する。そして、判定部232は、監視画像から検出された所定部位の位置を、標準的な顔の3次元モデルと照合する。そして、各部位の位置が監視画像から検出された部位の位置と最も適合する際の3次元モデルにおける顔の向きの角度を、監視画像における顔の向きの角度として検出する。
【0064】
識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。予め顔の所定部位を含む顔画像を教師データとして用いてCNNに入力し、学習を行うことにより、CNNは顔の所定部位の位置を特定する識別器として動作する。
【0065】
判定部232は、ドライバの顔の向きの角度が、車両10の進行方向に対して、右又は左の方向に向かって所定の角度(例えば、30度)以上に向いている場合、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する右又は左の隣接車線へ車両10を移動させようとしている判定する。
【0066】
なお、監視画像に基づいて、ドライバの顔の向きを判定する技術として、公知技術を用いてもよい。例えば、特開2019-87150号公報に開示されている技術を用いることができる。
【0067】
ドライバの顔が隣接車線を向いている場合(ステップS201-Yes)、判定部232は、ドライバの顔が隣接車線側に向いている時間を積算した積算時間が基準時間に到達したか否かを判定する(ステップS202)。また、最初にドライバの顔が隣接車線を向いていると判定された時点から、判定周期を確認するための判定時間のカウントが開始される。ドライバ判定処理では、判定周期内に積算時間が基準時間に到達した場合、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしていると判定される。
【0068】
積算時間が基準時間に到達した場合(ステップS202-Yes)、判定部232は、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしていると判定する(ステップS203)。
【0069】
次に、判定部232は、判定時間をリセットして(ステップS204)、一連の処理を終了する。
【0070】
積算時間が基準時間に到達していない場合(ステップS202-No)、判定部232は、最初にドライバの顔が隣接車線を向いていると判定された時点から判定時間が判定周期を経過しているか否かを判定する(ステップS205)。判定周期は、基準時間よりも長い。
【0071】
判定時間が判定周期を経過していない場合(ステップS205-No)、処理は、ステップS201の前へ戻る。判定周期内では、判定部232は、2回目以降のステップS201において、ドライバの顔が前と同じ隣接車線の方向(右又は左)を向いているか否かを判定する。ドライバの顔が前と同じ隣接車線の方向を向いている場合、ステップS202へ進む。一方、ドライバの顔が前と同じ隣接車線を向いていない場合、ステップS206へ進む。
【0072】
ドライバの顔が隣接車線を向いていない場合(ステップS201-No)、又は、判定時間が判定周期を経過している場合(ステップS205-Yes)、判定部232は、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしていないと判定する(ステップS206)。
【0073】
次に、判定部232は、判定時間をリセットして(ステップS204)、一連の処理を終了する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の車両制御装置は、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしている場合、停止していたエンジンを始動することにより、適切なタイミングで車両を加速できる。
【0075】
次に、上述した本実施形態の車両制御装置の第1変型例及び第2変型例を、
図6~
図8を参照しながら、以下に説明する。
図6は、本実施形態の車両制御装置の第1変型例の動作例を説明する図であり、
図7は、第1変型例のドライバ判定処理に関する動作フローチャートの一例である。
【0076】
図6に示すように、車両10は道路50を走行している。道路50は3つの車線51、52、53を有する。車線51と車線52とは車線区画線54により区画され、車線52と車線53とは車線区画線55により区画される。車両10は車線51走行しており、車両10の前方には他の車両60が走行している。
【0077】
ドライバは、車線51の前方の他の車両60を追い越したいと考えたので、隣接する追い越し車線52の様子を調べるために、顔を何度も車線52に向けた。
【0078】
車両制御装置16は、監視カメラ3により車両10の運転席の近傍が撮影された監視画像に基づいて、ドライバが車両10の走行する車線51から隣接する車線52へ車両10を移動させようとしていると判定した。
【0079】
駆動装置17はエンジン171を停止し電動機172を用いて駆動力を得ていたので、車両制御装置16は、エンジンを始動させる。
【0080】
そして、ドライバは、車線51から隣接する追い越し車線52へ移動することを、方向指示器4を操作して、車両制御システム1へ要求する。
【0081】
車両制御装置16は、ドライバにより車51から隣接する車線52へ車両10を移動させることが要求されたので、エンジン171及び電動機172の駆動力を用いて車両10を加速させる。車両10は、ドライバの車線変更の要求に速やかに応じて車両10を加速して車線間を移動する。
【0082】
車両制御装置16は、エンジン171を始動させて車線52から車線51へ移動した後、所定の時間の間は、所定の周期を有するドライバ判定時刻に、
図7に示すドライバ判定処理を実行する。以下、
図7を参照して、本変型例のドライバ判定処理について説明する。
【0083】
まず、判定部232は、監視カメラ3から監視画像を取得する(ステップS301)。監視画像には、運転席の近傍が表されおり、ドライバの顔が含まれていると考えられる。
【0084】
次に、判定部232は、監視画像に基づいて、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしているか否かを判定する(ステップS302)。
【0085】
ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしている場合(ステップS302-Yes)、制御部231は、駆動装置17の自動変速機173を制御して、現在よりも低速用の変速比又は変速段に変更して(ステップS303)、一連の処理を終了する。
【0086】
一方、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしていない場合(ステップS102-No)、一連の処理を終了する。
【0087】
そして、ドライバは、車線52から隣接する追い越し車線53へ移動することを、方向指示器4を操作して、車両10の車両制御システム1へ要求する。
【0088】
車両制御装置16は、ドライバにより車線52から隣接する車線53へ車両10を移動させることが要求されたので、エンジン171及び電動機172の駆動力を用いて、且つ、前よりも低速用の変速比又は変速段を用いて、車両10を加速させる。
【0089】
車両10は、ドライバの車線変更の要求に速やかに応じて車両10を加速して車線間の移動を実行する。
【0090】
車両制御装置16は、ドライバが車線間の移動をしようと判定した場合、前よりも低速用の変速比又は変速段に変更することにより、エンジン171及び電動機172の駆動力を用いて、適切なタイミングで車両10を加速できる。
【0091】
図8は、本実施形態の車両制御装置の第2変型例の車両制御処理に関する動作フローチャートの一例である。
【0092】
図8に示す車両制御処理では、上述した
図3に示す車両制御処理のステップS103とステップS104との間に、ステップS404が配置されている点が、
図3に示す車両制御処理とは異なっている。ステップS401~S403及びS405~S407の処理は、上述した
図3に示す車両制御処理のステップS101~S106と同様である。
【0093】
エンジンが停止している場合(ステップS403-Yes)、制御部231は、車両10の速度が所定の関係を満足するか否かを判定する(ステップS404)。所定の関係は、隣接車線を走行する他の車両の平均速度と車両10の速度との差、又は、走行車線の制限速度と車両10の速度との差が、所定の基準速度差以上であることである。ここで、隣接車線は、ドライバが車両10の走行する走行車線から隣接する隣接車線へ車両10を移動させようとしている車線を意味する。基準速度差として、例えば、15km/hとすることができる。制御部231は、隣接車線を走行する他の車両を、物体検出情報に基づいて取得する。また、制御部231は、走行車線の制限速度を、地図情報に基づいて取得する。
【0094】
車両10の速度が所定の関係を満足する場合(ステップS404-Yes)、制御部231は、エンジン171を始動する(ステップS405)。
【0095】
一方、車両10の速度が所定の関係を満足しない場合(ステップS403-No)ステップS406へ進む。
【0096】
隣接車線を走行する他の車両の平均速度と車両10の速度との差が小さい場合、又は、走行道路の制限速度と車両10の速度との差が小さい場合には、車両10の速度が、移動先の車線を走行する他の車両の速度と近いとので、エンジン171を始動させなくても駆動力は足りると考えられる。そこで、車両制御装置16は、このような場合には、エンジン171を始動しないこととする。
【0097】
本開示では、上述した実施形態の車両制御装置、車両制御用コンピュータプログラム及び車両制御方法は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本開示の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0098】
例えば、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしていると判定する方法は、上述した実施形態で記載された方法には限定されない。監視画像に基づいて、ドライバの視線の向きを判定して、この視線の向きに基づいて、ドライバが走行車線から隣接車線へ車両を移動させようとしているか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 車両制御システム
2 前方カメラ
3 監視カメラ
4 方向指示器
5 測位情報受信機
6 ナビゲーション装置
7 ユーザインターフェース
7a 表示装置
10 車両
11 地図情報記憶装置
12 位置推定装置
13 物体検出装置
14 走行車線計画装置
15 運転計画装置
16 車両制御装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
231 制御部
232 判定部
17 駆動装置
18 車内ネットワーク