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特許7540459ポリマー型導電性ペースト、導電膜、及び、固体電解コンデンサ素子
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  • 特許-ポリマー型導電性ペースト、導電膜、及び、固体電解コンデンサ素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ポリマー型導電性ペースト、導電膜、及び、固体電解コンデンサ素子
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/055 20060101AFI20240820BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01G9/055 103
H01B1/22 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022076885
(22)【出願日】2022-05-09
(65)【公開番号】P2023166098
(43)【公開日】2023-11-21
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】河原 恵
(72)【発明者】
【氏名】荒木 将平
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/111438(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0137988(US,A1)
【文献】特表2020-500427(JP,A)
【文献】特開平10-162646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/055
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粉末、バインダ樹脂、有機溶剤、及び、特定添加剤を含むポリマー型導電性ペーストであって、
前記バインダ樹脂がポリビニルブチラール樹脂であり、
前記特定添加剤が、ステアリン酸、ラウリン酸、オクタデシルブタン二酸、安息香酸、アセトアミドフェノール、アミノフェノール、カテコール、及び、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヤシアルキルアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
前記特定添加剤が、前記導電性金属粉末100質量部に対して0.01質量部以上3.0質量部以下の範囲で含まれる
ことを特徴とするポリマー型導電性ペースト。
【請求項2】
前記特定添加剤が、オクタデシルブタン二酸である、請求項1に記載のポリマー型導電性ペースト。
【請求項3】
前記ポリビニルブチラール樹脂に含まれる水酸基の含有量が30モル%以下である、請求項1に記載のポリマー型導電性ペースト。
【請求項4】
前記ポリビニルブチラール樹脂に含まれる水酸基の含有量が25モル%以下である、請求項3に記載のポリマー型導電性ペースト。
【請求項5】
前記導電性金属粉末が銀系粉末である、請求項1に記載のポリマー型導電性ペースト。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマー型導電性ペーストから形成されたことを特徴とする導電膜。
【請求項7】
陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、カーボン層と、導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子であって、
前記導電体層が、請求項6に記載の導電膜からなることを特徴とする固体電解コンデンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタルコンデンサ等の固体電解コンデンサ素子における導電体層や、積層セラミック電子部品の電極の形成に好適に用いることができるポリマー型導電性ペースト、導電膜、及び、固体電解コンデンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のポリマー型導電性ペーストは例えば、固体電解質コンデンサ素子の製造方法において使用される。
固体電解コンデンサ素子は、一般に、弁作用を有する金属からなる陽極体の表面を化成処理して誘電体層を形成し、その表面に導電性高分子等からなる電解質層、カーボン層、及び導電性ペーストからなる陰極層を順に形成した構造を有する。そして、陰極層を陰極リード端子に導電性接着剤を用いて接着し、陽極体を陽極リード端子に溶接により接合するとともに、これらの外側にモールド樹脂を施すことによって、コンデンサ部品とされる。
【0003】
図1に固体電解コンデンサ素子の構造の一例を示す。
固体電解コンデンサ素子1は、タンタル、ニオブ、チタン、アルミニウム等の弁作用金属を焼結させた弁作用金属焼結体11と、焼結体11の表面に形成された酸化被膜層12と、その上に形成された固体電解質層13、カーボン層14、及び、導電体層15を含む構造を備えている。ここで、焼結体11は陽極体として、酸化被膜層12は誘電体層としてそれぞれ用いられ、また固体電解質層13上のカーボン層14及び導電体層15は陰極体として用いられる。
酸化被膜層12は、焼結体自体が酸化されたものが好ましく用いられるが、他の酸化物であっても良い。
また固体電解質層13としては、二酸化マンガンや導電性高分子等が広く用いられている。
【0004】
通常、カーボン層14は有機ビヒクル中にカーボン粉末を分散させたカーボンペーストを塗布、乾燥させることによって形成される。このカーボン層14は、固体電解質層13と導電体層15との間の接触抵抗を下げ、ESR(等価直列抵抗)を低下させることができると考えられている。
【0005】
また導電体層15は、通常、有機ビヒクル中に銀等の金属粉末を分散させた導電性ペーストを塗布、乾燥及び/又は硬化させることによって形成される。
このような固体電解コンデンサ素子は、特許文献1や特許文献2に記載されているように、従来から広く知られている。
【0006】
これらの固体電解コンデンサ素子は、近年、高湿環境下で使用される場合も多く、銀粉末を含む導電体層において銀がイオン化して所謂マイグレーションが発生し、短絡等、素子の信頼性を損なう一因となっている。
【0007】
特許文献1には、陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、第1の樹脂成分を含むカーボン層と、第2の樹脂成分を含む導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子において、カーボン層表面の水素結合性成分値と導電体層表面の水素結合性成分値との差を特定の範囲内にすることによってESRの劣化が小さく、製品毎の経時的なESR変化のばらつきも抑制された固体電解コンデンサ素子とすることが記載されている。
【0008】
特許文献2は、固体電解質層中に導電性ポリマー粒子を分散させるとともに、導電体層中の樹脂成分として含水率を制御したポリマーを使用することで、上記問題の解決を図っている。具体的にはチオフェンポリマー粒子を固体電解質層中に分散させることで銀イオンの移動を妨げるとともに、導電体層の樹脂成分として、ポリマー中の水酸基の残留量が少ないビニルアセタールポリマーを用いることで、導電体層の含水率を下げることができるとされている。なお、特許文献2において水酸基の残留量としては35モル%以下であり、好ましくは10モル%以上25モル%以下とされており、そのようなポリマーの例として、積水化学工業株式会社製の「BH-S」(ポリビニルブチラール樹脂)が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/111438号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2018/0137988号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、固体電解質層中への導電性ポリマー粒子の分散は、固体電解質層中の銀イオンの移動を抑制するのみで、マイグレーションの発生自体を抑制することはできない。また、本出願人による特許文献1においても、導電体層中に水酸基の残留量が35モル%以下の「BH-S」や「KS-5」といったポリビニルブチラール樹脂を使用しているが、高湿環境下に長時間置かれた場合の信頼性は十分とは言えない。本発明者等による研究/検討によれば、水酸基の残留量が少ないポリビニルブチラール樹脂を使用することによって、マイグレーション発生の抑制効果を或る程度期待できるが、その効果は限定的であって十分とは言えず、素子の信頼性の向上には、必ずしもつながっていない。
【0011】
ポリビニルブチラール樹脂に代えて、例えば、緻密な硬化膜が得られるエポキシ樹脂等を使用すれば、耐湿性は改善される。しかしながらエポキシ樹脂の硬化膜は非常に硬いため、用途によっては使用に適さず、それ故、ポリビニルブチラール樹脂を用いたペーストの耐湿性向上を望む声は多い。
【0012】
本発明者等の研究/検討によれば、ポリビニルブチラール樹脂を用いた導電性ペースト中に5-アミノ-2ヒドロキシ安息香酸、ナフトール、クレゾール、サリチル酸といった化合物を添加することによっても或る程度耐湿性を改善することはできたが、必ずしも十分ではなかった。
【0013】
以上のような背景から、本発明者等は、ポリビニルブチラール樹脂を用いたポリマー型導電性ペーストについて鋭意検討を行い、その結果、ペースト中に特定の化合物を配合することでポリマー型導電性ペーストにおける耐湿性が格段に向上することを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は高湿環境下においても信頼性の高い導電体層を得ることができるポリマー型導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決する本発明は、以下のポリマー型導電性ペースト、導電膜、及び、固体電解コンデンサ素子に係るものである。
(1)導電性金属粉末、バインダ樹脂、有機溶剤、及び、特定添加剤を含むポリマー型導電性ペーストであって、
前記バインダ樹脂がポリビニルブチラール樹脂であり、
前記特定添加剤が、ステアリン酸、ラウリン酸、オクタデシルブタン二酸、安息香酸、アセトアミドフェノール、アミノフェノール、カテコール、及び、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヤシアルキルアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
前記特定添加剤が、前記導電性金属粉末100質量部に対して0.01質量部以上3.0質量部以下の範囲で含まれる
ことを特徴とするポリマー型導電性ペースト。
(2)前記特定添加剤が、オクタデシルブタン二酸である、上記(1)に記載のポリマー型導電性ペースト。
(3)前記ポリビニルブチラール樹脂に含まれる水酸基の含有量が30モル%以下である、上記(1)に記載のポリマー型導電性ペースト。
(4)前記ポリビニルブチラール樹脂に含まれる水酸基の含有量が25モル%以下である、上記(3)に記載のポリマー型導電性ペースト。
(5)前記導電性金属粉末が銀系粉末である、上記(1)に記載のポリマー型導電性ペースト。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリマー型導電性ペーストから形成されたことを特徴とする導電膜。
(7)陽極体表面に、少なくとも誘電体層と、固体電解質層と、カーボン層と、導電体層とを備える固体電解コンデンサ素子であって、
前記導電体層が、上記(6)に記載の導電膜からなることを特徴とする固体電解コンデンサ素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリマー型導電性ペーストにより形成される導電体層は、高湿環境下においても透湿性が低く、それ故、導電体層中の銀のイオン化が抑制され、信頼性の高い導電体層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、固体電解コンデンサ素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
また、本明細書において「ポリマー型導電性ペースト」とは、焼成によって塗膜中の有機成分が飛散し、得られた導電膜中に無機成分のみが残る「焼成型導電性ペースト」と対を成す文言であり、塗膜を乾燥及び/又は硬化させて得られた導電膜中に、バインダ樹脂を含む有機成分が残存するタイプのペーストを言う。
【0018】
本発明のポリマー型導電性ペーストの用途には限定がなく、一般的な電気回路の配線や電子部品、例えば積層セラミック電子部品等の電極形成にも使用できるが、タンタルコンデンサ等の固体電解コンデンサ素子における導電体層の形成に用いた場合に本発明の作用効果を十分に享受でき、特に好ましい。以下では、本発明のポリマー型導電性ペーストを図1に示した固体電解コンデンサ素子に対して適用した例で説明する。
【0019】
導電体層15は主として導電性金属粉末とポリビニルブチラール樹脂とからなり、本発明のポリマー型導電性ペーストをカーボン層14の上に塗布後、120℃以上220℃以下程度に加熱し、有機溶剤を除去して乾燥することによって得られる。
【0020】
本発明のポリマー型導電性ペーストには、少なくとも導電性金属粉末と、バインダ樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂と、バインダ樹脂を溶解できる有機溶剤と、特定添加剤が含まれる。
ポリマー型導電性ペーストに含まれる導電性金属粉末としては特に限定はないが銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム等といった導電性ペーストにおいて一般的に用いられる金属粉末を使用することができる。
【0021】
中でも銀粉末が特に好ましく、純銀の粉末の他、銀以外の金属粉末の表面が銀で被覆された銀コート粉末、銀粉末の表面が無機物及び/又は有機物で被覆された複合銀粉末、更には銀と銀以外の金属とを合金化させた銀合金粉末であっても良い。以下、本明細書中では、これらを併せて「銀系粉末」と称する。銀系粉末を用いることにより、本発明の効果を一層享受することができ、また導電性やコスト面の観点からも有利である。更にはこれらの銀系粉末とパラジウムや白金、銅、金属酸化物等の他の導電性金属粉末と混合した混合粉末を用いても良い。何れの場合においても、導電性金属粉末全体に対する銀成分の含有率は、10質量%以上であることが好ましい。
【0022】
また導電性金属粉末の形状としては、球状、フレーク状、樹枝状等、従来用いられているものを使用することができ、平均粒径、粒度分布、形状等の性状の何れか1以上が異なる2種以上を混合して用いても良い。本発明においては、球状の銀系粉末とフレーク状の銀系粉末を混合して用いた場合に、導電性や耐湿性等の制御が容易になるため特に好ましい。
【0023】
本発明のポリマー型導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂を用いる。ポリビニルブチラール樹脂としては積水化学工業株式会社製の「BH-S」(水酸基量=22モル%),同「KS-5」(水酸基量=25モル%)、同「BM-5」(水酸基量=34モル%)、同「KS-1」(水酸基量=25モル%)、同「KS-10」(水酸基量=25モル%)、同「SV-02」(水酸基量=22モル%)、同「SV-06」(水酸基量=22モル%)、同「SV-22」(水酸基量=22モル%)等を使用することができる。
【0024】
本発明のポリマー型導電性ペーストにおいて、ポリビニルブチラール樹脂の含有量に特に限定はなく、ペーストとして要求される特性に応じて適宜決定すれば良いが、一例としては導電性金属粉末100質量部に対し、ポリビニルブチラール樹脂の固形成分が1.0質量部以上20質量部以下の範囲である。
また本発明の作用効果を阻害しない限りバインダ樹脂としてポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂を含んでいても良く、その一例としてはセルロース系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジンアクリル樹脂等が挙げられる。
【0025】
なお、本発明において使用するポリビニルブチラール樹脂中の水酸基の残留量は特に限定されないが、耐湿性が高まることから35モル%以下が好ましい。更に好ましい水酸基の残留量は30モル%以下であり、特に25モル%以下であることが好ましい。
【0026】
有機溶剤としては、使用するバインダ樹脂に対する溶解性を示すものであればよく、例えばアルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤を使用することができ、必要に応じて二種以上の有機溶剤や、水との混合溶剤を使用することもできる。
【0027】
本発明のポリマー型導電性ペーストは特定添加剤としてステアリン酸、ラウリン酸、オクタデシルブタン二酸、安息香酸、アセトアミドフェノール、アミノフェノール、カテコール、及び、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヤシアルキルアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする。
これらの特定添加剤は本発明のペーストにおいては透湿性の調整剤として機能するため、本明細書中においては透湿性調整剤と称することもある。
【0028】
本発明者等の研究によれば、ポリビニルブチラール樹脂をバインダとするペーストにこれらの透湿性調整剤を所定量配合した場合、導電性や印刷性(チクソ性)等への悪影響は殆ど無い状態で、ペーストを塗布・乾燥させて得られる膜への水分透過率(透湿性)が著しく下がり、その結果、膜の耐湿性を改善することができる。
上記透湿性調整剤の中でも膜密度を上げることができるとともにESRを下げる効果をも期待できることからオクタデシルブタン二酸が特に好ましい。
【0029】
導電性金属粉末100質量部に対するこれらの透湿性調整剤の含有量は0.01質量部以上3.0質量部以下の範囲内である。透湿性調整剤の含有量が当該範囲外であると耐湿性が悪くなる他、他の特性(一例として導電性等)に悪影響が出る場合がある。透湿性調整剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上1.5質量部以下の範囲内である。
【0030】
本発明のポリマー型導電性ペーストには、その他、必要に応じて適宜に配合される一般的な界面活性剤、消泡剤、可塑剤、分散剤等の添加剤や、有機又は無機フィラー等が添加されても良い。
【実施例
【0031】
(1)実験1
<導電性ペーストの調製>
〔試料1〕
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製「BM-5」;水酸基含有量=35モル%)8.6質量部をベンジルアルコールで溶解して57.2質量部としたワニスAと、フレーク状銀粉末(昭栄化学工業株式会社製「Ag-531」)80質量部と、球状銀粉末(昭栄化学工業株式会社製「Ag-202」)20質量部とを混合し、三本ロールミルを用いて混練攪拌したのち、酢酸ブチルで希釈することによりBrookfield社製粘度計 HA型で25℃のずり速度9.3s-1で測定した粘度が1Pa・sとなるように調製した銀ペーストを試料1とした。
【0032】
〔試料2〕
ポリビニルブチラール樹脂を「KS-5」(積水化学工業株式会社製;水酸基含有量=25モル%)に変更してワニスBとした以外は試料1と同様にして得られた銀ペーストを試料2とした。
【0033】
〔試料3〕
試料2の組成に、更にp-アセトアミドフェノール(東京化成工業株式会社製「3-ヒドロキシアセトアニリド」)を銀粉末100質量部に対して0.5質量部を添加した以外は試料2と同様にして得られた銀ペーストを試料3とした。
【0034】
〔試料4〕
アセトアミドフェノールに換えてステアリン酸(ミヨシ油脂株式会社製「ステアリン酸90」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料4とした。
【0035】
〔試料5〕
アセトアミドフェノールに換えてラウリン酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製「ラウリン酸」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料5とした。
【0036】
〔試料6〕
アセトアミドフェノールに換えてオクタデシルブタン二酸(クローダジャパン製ジカルボン酸「Hypermer KD-16」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料6とした。
【0037】
〔試料7〕
アセトアミドフェノールに換えて安息香酸(富士フイルム和光純薬株式会社製「安息香酸」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料7とした。
【0038】
〔試料8〕
アセトアミドフェノールに換えてアミノフェノール(富士フイルム和光純薬株式会社製「p-アミノフェノール」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料8とした。
〔試料9〕
アセトアミドフェノールに換えてカテコール(富士フイルム和光純薬株式会社製「ピロカテコール」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料9とした。
【0039】
〔試料10〕
アセトアミドフェノールに換えてN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヤシアルキルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製エソミン「リポノールC/12」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料10とした。
【0040】
〔試料11〕
アセトアミドフェノールに換えてステアリルアミン(花王株式会社製「ファーミン80」)を用いた以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料11とした。
【0041】
(2)実験2
<導電性ペーストの調製>
〔試料12~21〕
導電性金属粉末、ポリビニルブチラール樹脂、アセトアミドフェノールの配合量をそれぞれ表2に記載した量とした以外は試料3と同様にして得られた銀ペーストを試料12~21とした。
【0042】
(3)実験3
<導電性ペーストの調製>
〔試料22~25〕
導電性金属粉末、ポリビニルブチラール樹脂、オクタデシルブタン二酸の配合量をそれぞれ表3に記載した量とした以外は試料6と同様にして得られた銀ペーストを試料22~25とした。
【0043】
上記で得た導電性ペーストの試料1~25のそれぞれについて、以下に示す透湿性試験を行って各試料の透湿量を評価した。
試料1~11についての評価結果を表1に、試料12~21についての評価結果を表2に、試料22~25についての評価結果を表3にそれぞれ示した。
なお表1~3において符号*を付した試料は比較例である。
【0044】
<透湿性試験>
試料の銀ペーストを、それぞれPETフィルム上に塗布し、150℃で60分間加熱した後にPETフィルムから剥がして、厚さが20±2μmの試料の乾燥膜を作製した。
シリカゲル2gを入れたガラス容器Aを試料の数だけ準備し、それぞれの開口部に瞬間接着剤を用いて試料の乾燥膜で蓋をし、完全に密封した後、ガラス容器Aの総質量を計量した。
次にガラス容器Aが入る大きさのプラスチック容器Bを準備し、プラスチック容器Bの開口部から適量の精製水を入れた後、ガラス容器A内に前出の精製水が入らないようにしながらガラス容器Aをプラスチック容器B内に入れた後、プラスチック容器Bの開口部を完全に密封した。その後、ガラス容器Aが入ったプラスチック容器Bを加熱し、室温から65℃まで昇温させた後、そのまま15時間保持した。
保持時間が経過後、徐冷したプラスチック容器Bを開封し、中のガラス容器Aを取り出してガラス容器Aの総質量を再度計量し、増加分を透湿量(mg)とした。本実施例においては透湿量が20mg未満の試料を合格とした。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
(評価結果について)
表1に示された結果から、ポリビニルブチラール樹脂中の水酸基量によっても透湿量は変化するが、本発明における透湿性調整剤を含む場合、透湿量が更に著しく下がることが分かる。
また、表2、3に示された結果から、導電性ペースト中の透湿性調整剤の含有量は多すぎても、少なすぎても透湿量を低減させる効果が低下することがわかる。
その他、実施例で用いた透湿性調整剤の内、構造異性体があるものについては同様に実験を行ったが、構造異性体であっても透湿性を低減させる効果があることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、固体電解コンデンサ素子や積層セラミック電子部品に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 固体電解コンデンサ素子
11 弁作用金属焼結体(陽極体)
12 酸化被膜層(誘電体層)
13 固体電解質層
14 カーボン層
15 導電体層
図1