(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ボタン装置及び電子鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/04 20060101AFI20240820BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20240820BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01H13/04 Z
H01H13/52 F
H01H9/02 A
(21)【出願番号】P 2022089479
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 先勝
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-058579(JP,A)
【文献】特開2012-128123(JP,A)
【文献】実開昭57-097328(JP,U)
【文献】特開2006-066157(JP,A)
【文献】中国実用新案第211555738(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00 - 9/28
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を有する基板と、
前記基板の前記孔に対応して配置されたキーと、
前記基板の前記孔を介して前記キーに向けて突出されている突出部と、
前記基板と前記キーとの間に配置され、前記キーを支持する弾性変形可能な支持部材と、
を有
し、
前記支持部材は、筒状の支持本体部と、前記支持本体部の内周面に囲まれた内部に設けられ前記キーが載置されるキー載置部と、前記キー載置部の外周と前記支持本体部の前記内周面とを接続する弾性ヒンジ部と、を有している、
ボタン装置。
【請求項2】
前記キーの表面の少なくとも一部を露出するキー露出孔を有するパネルを備え、
前記キーは、前記パネルにおける前記キー露出孔の内側縁部と当接可能な抜け止め部が設けられている、
請求項1に記載のボタン装置。
【請求項3】
前記キーの表面の少なくとも一部を露出するキー露出孔を有するパネルを備え、
前記突出部は、前記キーの押下に伴って前記支持部材が弾性変形した場合、前記キーの表面が前記パネルの前記キー露出孔の内側縁部の下に潜り込まないよう前記支持部材を介して前記キーを支えることが可能である、
請求項
1に記載のボタン装置。
【請求項4】
前記基板に設けられたスイッチ素子を備え、
前記突出部は、前記スイッチ素子を挟んで対向して板状に設けられ、
前記基板には、前記スイッチ素子における前記突出部が設けられていない面側に前記スイッチ素子に接続された配線が設けられている、
請求項1に記載のボタン装置。
【請求項5】
前記基板の孔は、複数設けられ、
前記突出部は、複数設けられ、
前記キーは、キー本体と、前記キー本体の一部において外側に突出する規制突起部と、を有し、
前記規制突起部は、前記キー本体を挟んで互いに対向する位置に配置されるよう複数設けられ、
互いに対向する位置の前記規制突起部のそれぞれの略中央部を通る軸線は、複数の前記突出部のそれぞれの略中央部を通る軸線に対して傾斜して配置される、
請求項1に記載のボタン装置。
【請求項6】
前記規制突起部は、第一の幅の長さの第1規制突起部と、前記第一の幅の長さより長い第二の幅の長さの第2規制突起部と、有する、請求項
5に記載のボタン装置。
【請求項7】
前記基板に設けられたスイッチ素子を備え、
前記キーは、前記スイッチ素子と対向する面が平坦に設けられる、請求項1に記載のボタン装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7の何れか記載のボタン装置を備える電子鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン装置及び電子鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子鍵盤楽器等には、電源キースイッチ等のボタン装置が設けられている。例えば、特許文献1に示すようなボタン装置においては、キーを、キーの表面の法線方向に対して斜めに押してしまうと、キーが周囲の筐体の内側に潜り込んでしまうことがあり、場合によってはキーが元の位置に戻りにくくなる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、操作し易く、確実にキーの潜り込みを低減したボタン装置及びこのボタン装置を備える電子鍵盤楽器を提供することを利点の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボタン装置は、孔を有する基板と、前記基板の前記孔に対応して配置されたキーと、前記基板の前記孔を介して前記キーに向けて突出されている突出部と、前記基板と前記キーとの間に配置され、前記キーを支持する弾性変形可能な支持部材と、を有し、前記支持部材は、筒状の支持本体部と、前記支持本体部の内周面に囲まれた内部に設けられ前記キーが載置されるキー載置部と、前記キー載置部の外周と前記支持本体部の前記内周面とを接続する弾性ヒンジ部と、を有している。
【0006】
本発明に係る電子鍵盤楽器は、上述のボタン装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作し易く、確実にキーの潜り込みを低減したボタン装置及びこのボタン装置を備える電子鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の上面パネルにおけるキーの周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の
図2のIII-III断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の
図2のIV-IV断面斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るボタン装置の分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るボタン装置の受部材の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るボタン装置の上面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るボタン装置においてキーが押された状態を示す、
図2のIII-III断面に相当する断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るボタン装置においてキーが斜めに押された状態を示す、
図2のIII-III断面に相当する断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るボタン装置においてキーが斜めに押された状態を示す、
図2のIV-IV断面に相当する、キー周辺を拡大して示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す電子鍵盤楽器10は、複数の鍵としての複数の白鍵3と複数の黒鍵4を備えるフルサイズ(88鍵)の鍵盤5と、ケース200とを備える。なお、以下の説明では、電子鍵盤楽器10において、鍵盤5を手前側に配置した状態で、鍵盤5の鍵の前後方向FBにおける前側(手前側)を前側F、鍵の前後方向FBの後側(奥側)を後側Bとし、鍵盤5に向かって左側を左側L、右側を右側Rとし、鍵盤5の複数の鍵の配列方向を左右方向LRとし、また、電子鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。
【0010】
図1に示すように、ケース200は、上側ケース210と、下側ケース220と、左側面ケース230及び右側面ケース240と、板状の前側ケース250と、背面パネル(不図示)を有する。上側ケース210、下側ケース220及び前側ケース250は、左右方向LRに長尺に設けられている。前側ケース250は、鍵盤5の前側Fにおける左側面ケース230と右側面ケース240との間に設けられている。上側ケース210は、下方に垂下するように設けられる接続板212(
図4参照)により図示しない背面パネルと接続される。
【0011】
上側ケース210の上面側には、板状の上面パネル211が設けられている。前後方向FBに長く、上方から見て略矩形状の左側面ケース230は、上側ケース210の左の端部及び前側ケース250の左の端部にそれぞれ隣接して配置され、左側面ケース230と同様、略矩形状の右側面ケース240は、上側ケース210の右の端部及び前側ケース250の右の端部にそれぞれ隣接して配置されている。下側ケース220は、鍵盤5の下方で且つ左側面ケース230、右側面ケース240、前側ケース250の下側Loに配置されている。
【0012】
左側面ケース230には、上面にピッチベンダーや押しボタン等を備えた操作部14が設けられている。左側面ケース230の前面には、イヤホンジャック18が設けられている。また、
図1及び
図2にも示すように、上側ケース210の上面パネル211には、ボリュームを調整する回転式の回転ノブ12が設けられている。回転ノブ12の左側には、電源を入・切するためのボタン装置100のキー110が設けられている。
【0013】
図3及び
図4に示すように、電子鍵盤楽器10に設けられるボタン装置100は、後述するスイッチ素子121の押圧部としてのボタン121aに対向して上側ケース210内に配置され、押しボタンとされるキー110の表面(上面)の少なくとも一部が上面パネル211に設けられた孔部(キー露出孔)211aから露出している。ボタン装置100には、スイッチ素子121を備える基板120が設けられている。
図4に示すように、基板120は、2本のねじ部材80が上側ケース210の上面から垂下して設けられるボス213(一部不図示)に、後述の受部材150と共締めして螺合することで、上側ケース210に固定されている。
【0014】
基板120の上面に設けられるスイッチ素子121として、本実施形態においては、タクトスイッチが用いられている。
図3、
図4及び
図5にも示すように、スイッチ素子121には、押圧部としてのボタン121aが設けられ、ボタン121aの押下により電源が入・切される。基板120において、スイッチ素子121が設けられている面と反対側の面(すなわち、基板120の下面)には、受部材150が設けられている。
【0015】
図6に示すように、受部材150は、表面が略左右方向LR及び略前後方向FBに広がった平面状の平坦部152と、平坦部152上に起立した2つの板状の突出部151を有している。受部材150は、平坦部152が基板120の下方に配置されている状態で、2つの突出部151がそれぞれ基板120に設けられた2つの長孔部(孔)123を介して基板120の上方に向けて(キー110に向けて)突出しているように配置されている。ここで、キー110は、基板120の孔である長孔部123に対応して配置されている。基板120上では、2つの突出部151がスイッチ素子121を挟んで対向して設けられている。スイッチ素子121を挟んだ2つの突出部151の組は、後述する1つのキー110の規制突起部114,115に対応して設けられている。
【0016】
図5に示すように、突出部151は、前後方向FBにスイッチ素子121を挟んで対向して2つ設けられているのに対して、スイッチ素子121の左右方向LRの側方には、突出部が設けられていないためにスペースが設けられている。すなわち、基板120において、スイッチ素子121の左右方向LRの側方に対応する位置には、突出部151を突き出すための長孔部123のような孔が不要なので、当該スペースを利用することで、スイッチ素子121に接続された配線126を基板120に容易に引き回して配置することができる。本実施形態においては、スイッチ素子121の右側Rに配線126が設けられている。配線126は、突出部151が設けられていない基板120の面側(すなわち基板120の上面側)に設けられている。
【0017】
図6に戻り、平坦部152は、基板120の下面に当接している(
図3参照)。受部材150は、2箇所のねじ孔部154aを含む、略三角形状のベース部154を備える。ねじ孔部154aは、ねじが挿入される部位に、上下方向ULに貫通したねじ孔が設けられている。突出部151及び平坦部152は、ベース部154の上面に設けられている。また、ベース部154の上面には、平坦部152が設けられる部位を介してねじ孔部154a間に亘って2本のリブ154bが設けられている。また、ベース部154の下面にも、複数のリブ154c(
図3参照)が設けられている。
【0018】
受部材150は、リブ154b,154cによりベース部154が補強され、キー110によるスイッチ素子121(ボタン121a)の押下に対する基板120の撓みを低減するよう基板120を補強している。突出部151は、押下されたキー110が上面パネル211の孔部211aの周縁下面へ潜り込んでしまうことを抑制するために、キー110に掛かる力に対して突出部151自らが変形することを抑えて反発できるよう、ある程度の剛性の高い部材を有している。このような突出部151を柔軟性のある基板120上に直接設けることが難しいため、剛性の高い受部材150に突出部151を設けて、基板120の長孔部123を介してキー110に向けて突出させている。
【0019】
また、受部材150の回転ノブ12側(
図4参照)には、ベース部154と接続して下方に向けて膨出するドーム状のコネクタカバー部155が設けられている。コネクタカバー部155における回転ノブ12側の外側には、略棒状のノブ規制部156が設けられている。ノブ規制部156は、上方に延設され、上端には鉤状部156aが設けられている。一方、
図4に示すように、回転ノブ12は、上側ケース210の内部に設けられるボリューム素子12aの回転軸(不図示)に設けられている。回転ノブ12には、上側ケース210の内部に、ボリューム素子12aの回転軸と同軸にリング部12bが設けられている。ノブ規制部156の鉤状部156aは、リング部12bに係合し、回転ノブ12の抜け止めがされている。
【0020】
なお、受部材150のコネクタカバー部155は、一方端がボリューム素子12aが設けられる基板12cと接続し、他方端が基板120に接続している電線90の当該他方端の接続部分をカバーしている。
【0021】
また、
図3及び
図5に示すように、基板120とキー110との間には、キー110を弾性的に支持するよう弾性変形可能な支持部材140が設けられている。支持部材140は、弾性材であるゴム材料により一体的に成形されている。支持部材140は、略筒状の支持本体部141と、支持本体部141の内周面に囲まれた内部に設けられてキー110が載置されるキー載置部142と、キー載置部142の外周と支持本体部141の内周面とを接続する弾性ヒンジ部143と、を有する。弾性ヒンジ部143は、キー載置部142より薄肉とされることで弾性的に伸縮可能に設けられている。
【0022】
支持部材140の支持本体部141は、外周に第1側壁面141aと第2側壁面141bとを有し、第1側壁面141aの一方端と第2側壁面141bの一方端は略直交するように互いに接している。第1側壁面141aの他方端と第2側壁面141bの他方端は、それぞれ凸円弧状に設けられる第3側壁面141cの一方端及び他方端に接している。支持本体部141の外周をなす第1側壁面141a、第2側壁面141b及び第3側壁面141cは、何れも基板120に対して壁面が略垂直に設けられている。このように、平面視直線状の第1側壁面141a、第2側壁面141bと、凸円弧状の第3側壁面141cとを有する支持本体部141とすることで、コンパクトに基板120に支持部材140を配置することができる。
【0023】
支持本体部141の内部(第1側壁面141a、第2側壁面141b及び第3側壁面141cにより囲まれる内部)は、円筒状に設けられている。よって、支持本体部141は、厚肉に設けられる。また、第1側壁面141a、第2側壁面141b及び第3側壁面141cがそれぞれ接続する部位の下面には、嵌合ピン部141dが設けられている。嵌合ピン部141dは、3本設けられている。嵌合ピン部141dは、根本側の大径部と先端側の小径部とを有して、基板120に設けられる3つの嵌合孔125に圧入されて嵌合する。嵌合ピン部141dと嵌合孔125との嵌合により、支持部材140は基板120に固定される。
【0024】
支持本体部141は、支持本体部141の上面から略環状に突出するガイド環141eが設けられている。ガイド環141eの内周には、長矩形の凹状に4つのガイド部144,145が設けられている。4つのガイド部144,145は、放射状に配置されている。4つのガイド部144,145のうち、一のガイド部144(第2ガイド部)は、他のガイド部145よりも幅広に設けられている。3つの他のガイド部145(第1ガイド部)は、略同一形状且つ略同一寸法とされている。ガイド部144は、後述する規制突起部114(第2規制突起部)が収容可能となるよう規制突起部114より一回り大きい凹部であり、ガイド部145は、後述する規制突起部115(第1規制突起部)が収容可能となるよう規制突起部115より一回り大きい凹部であるとともに、組付ける際に誤って規制突起部114が収容できないように規制突起部114より一回り小さい凹部である。このような構造とすることによってキー110に設けられたアイコンである電源マーク部112を正しい向きに配置することができる。
【0025】
キー載置部142は、略円板状に設けられている。キー載置部142の上面には、キー110の下面と当接する4つの小突起142aが設けられている。小突起142aは、ガイド部144,145に対応して、ガイド部144,145の近傍に配置されている。
図3に示すように、キー載置部142の下面には、中央にスイッチ素子121のボタン121aと対向して、薄い略円柱状に突出する押圧部142bが設けられている。キー載置部142の下面外周近傍には、下方に向けて突出するように環状リブ142cが設けられている。環状リブ142cは、平面視において一部が受部材150の突出部151と重なるように配置されている。
【0026】
キー110は、薄い略円柱状とされたキー本体と、キー本体の外周部に設けられ、キー本体の下面と連続する面を備えるフランジ状の環状リブ111と、を有している。環状リブ111は、略円環状に設けられている。キー110には、環状リブ111の一部においてさらに外側に向けて突出するように(具体的には、環状リブ111の一部が、キー110の径方向更に突出するように、或いはキー110の押下によりキー110が移動する方向と異なる方向に向けてさらに突出するように)、所定幅の長矩形横板状(舌片状)の4つの規制突起部114,115が設けられている。規制突起部114,115は、キー本体を挟んで互いに対向する位置に配置されるよう複数設けられる。
【0027】
キー110は、全体が透明材料からなり、キー110及び環状リブ111の下面(換言すれば、スイッチ素子121と対向する面)は、平坦面とされている。キー110の下面には、印刷による加飾処理がなされている。具体的には、電源マーク部112が白抜きされた暗色(例えば黒地)の印刷が施されている。また、規制突起部114及び規制突起部114に隣接する一方の規制突起部115との間の環状リブ111の外周は直線状部111aが設けられている。直線状部111aと対向する環状リブ111の外周(他の2つの規制突起部115間の環状リブ111の外周)も同様に直線状部111bが設けられている。
【0028】
図7は、上面パネル211と上側ケース210を省略して、支持部材140のキー載置部142にキー110が載置されているボタン装置100の様子を示す。キー110における幅広な規制突起部114(第二の幅の長さの第2規制突起部)は、支持部材140の幅広なガイド部144(第2ガイド部)に配置される。キー110における他の規制突起部115(第一の幅の長さの第1規制突起部)は、支持部材140の他のガイド部145(第1ガイド部)に配置される。すなわち、幅広な規制突起部114(第一の幅の長さより長い第二の幅の長さの第2規制突起部)は、ボタン装置100の組立に際して、キー110をキー載置部142に載置する際の方向性を持たせて、正確にキー載置部142にキー110を載置することができるものである。このように正確にキー110を載置することができるので、電源マーク部112(
図5参照)の方向を間違うことなくキー110を組み付けることができる。
【0029】
また、軸線CL1は、
図7において破線で示す2枚の突出部151の幅方向(左右方向)の略中央部を通り、基板120に平行な線である。そして、軸線CL2は、対向して2組設けられる規制突起部114,115のうちの幅広な規制突起部114と、該規制突起部114に対向する規制突起部115の幅方向の略中央部を通り基板120に平行な線である。同様に、軸線CL3は、他の対向する2つの規制突起部115の幅方向の略中央部を通り基板120に平行な線である。規制突起部114,115は、軸線CL2,CL3が軸線CL1に対して傾斜する(或いは軸線CL1と交差する交差点を中心に軸線CL1に対して所定角度で回転する)ように、突出部151に対して配置されている。換言すれば、対向して2組配置される4つの規制突起部114,115は、対向して配置される1組の突出部151に対してキー110(スイッチ素子121)の軸回りに回転して配置されている。本実施形態においては、軸線CL2,CL3は、それぞれ軸線CL1に対して―45度、45度傾斜するよう設定されている。
【0030】
このように構成されるボタン装置100では、
図3の定常状態においては、支持部材140のキー載置部142の小突起142a(
図5参照)が圧縮されると共に弾性ヒンジ部143の弾発力によりキー110を上方に付勢し、キー110の環状リブ111が、上面パネル211の孔部211aにおける内側面(下面)の周縁(内側縁部)と当接して押し付けられる。従って、環状リブ111は、キー110の表面を露出させる孔部211aの内側縁部と当接可能な抜け止め部とされると共に、環状リブ111が孔部211aの内側縁部に対して付勢され当接されることで振動を抑制し、電子鍵盤楽器10の演奏中であっても、ボタン装置100からの異音(ビビリ音)が低減されている。また、上側ケース210の内部に光源を設けて透明なキー110が光るよう構成した場合には、下面が黒地に施されている環状リブ111により、キー110の外周と孔部211aとの隙間から光が漏れてしまうことが低減されている。
【0031】
そして、キー110を押下した場合には、
図8に示すように、支持部材140のキー載置部142がキー110と共に下降して、キー載置部142の押圧部142bがスイッチ素子121のボタン121aを押下する。このとき、弾性ヒンジ部143は伸長される。また、このとき、キー載置部142の環状リブ142cは突出部151に当接し、所定の弾発力をキー110に付与してユーザに抵抗感(クリック感)を感じさせ、既にスイッチ素子121が作動していることを感知させることができる。そして、キー110を押下した指を離すと、弾性ヒンジ部143の復元力にてキー110が上昇し、
図3の定常状態に復帰する。
【0032】
ここで、
図9に示すように、ユーザがキー110の周縁の一部を押してしまい、或いは上下方向ULに対して著しく傾斜する方向に向けてキー110に力を加えてしまったために、キー110が斜めに押下された場合には、キー110の規制突起部114,115と突出部151により、キー110が上面パネル211の孔部211aの周縁下面へ潜り込んでしまうことが規制される。例えば、キー110が前方に傾斜して押下された場合には、
図9、
図10に示すように、キー110が偏って沈み始めた際に、押し具合に応じて、キー110の直下に位置する環状リブ142cを含むキー載置部142が突出部151と当接し、当接された突出部151の反発力によってキー110に上向きの力が生じ押し戻される。したがって、上面パネル211の下面における孔部211aの周縁部にキー110の頭頂部が引っ掛かることによる潜り込みを抑制できる。
【0033】
一方、反対側の突出部151に対応する側では、沈む込みの反動或いは上記反発力による反動でキー110に上向きに力が加わるが、横方向に突出した規制突起部114,115が真っ先に上面パネル211の下面に当接するので、キー110が、孔部211aより上側に外れてしまうことを抑制できる。このように、傾いて押し込まれたキー110に対して接触しやすいように長尺に配置された2つの突出部151を配置することで、キー110周りの何れにおいてもキー110の潜り込みが低減されている。また、突出部151が配置されていない部位に対応する位置でキー110が押し込まれても、横方向に突出した規制突起部114,115のいずれかの直下に位置する支持部材140が、一方の突出部151に当接しやすいため、同様にキー110の潜り込みを低減できる。なお、キー110の下方に支持部材140を配置させたので、キー110が直接突出部151に当接することはないが、代わりに、支持部材140の一部に貫通孔を設けることにより、貫通孔を介してキー110を突出部151に当接させるようにしてもよい。
【0034】
このようにして、突出部151は、キー110の押下に伴って支持部材140が弾性変形した場合、キー110の表面が上面パネル211の孔部211aの内側縁部の下に潜り込まないよう支持部材140を介してキー110を支えることが可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態によれば、キー110が斜めに押下された場合であっても、突出部151がキー110の下降を規制できるので、キー110が孔部211aの周縁内部に潜り込んでしまうことを低減することができる。そして、突出部151は、キー110のスイッチング動作を阻害しないので、操作し易いキー110とすることができる。
【0036】
また、基板120には、キー110を弾性的に支持する支持部材140が設けられ、キー110は、キー110の表面が露出する孔部211aの内側縁部と当接可能な抜け止め部である環状リブ111及び規制突起部114,115が設けられる。これにより、確実にキー110の抜け止めがなされる。なお、環状リブ111は、フランジ状の他、複数の突起等として設けることもできる。
【0037】
また、抜け止め部は、光が透過されにくいよう下面が暗色となるよう施されたフランジ状の環状リブ111とされる。これにより、下面の一部が透明なキー110に対してケース200の内部から光を当てても孔部211aとキー110との隙間からの光漏れを低減することができるので、意匠性の高いボタン装置100とすることができる。
【0038】
また、支持部材140は、筒状の支持本体部141と、支持本体部141の内周部に設けられキー110が載置されるキー載置部142と、キー載置部142の外周と支持本体部141の内周面とを接続する弾性ヒンジ部143と、を有して弾性材であるゴム材料により一体に設けられる。これにより、構造簡単で組み立て易いボタン装置100とすることができる。
【0039】
また、突出部151は、スイッチ素子121を挟んで対向して板状に設けられ、規制突起部114,115は、対向して2組設けられている。
図7に示すように、ボタン装置100を平面視した場合、基板120に平行な規制突起部114,115の軸線CL2,CL3は、基板120に平行な突出部151の軸線CL1に対して傾斜して配置される。これにより、キー110及び受部材150を簡単な構造として、組立て易いボタン装置100とすることができる。
【0040】
また、規制突起部114,115は、所定幅の板状に設けられ、第一の幅の長さの第1規制突起部としての規制突起部115と、第一の幅の長さより長い第二の幅の長さの第2規制突起部としての規制突起部114とを有する。これにより、方向性のあるキー110であっても間違いなくボタン装置100を組み立てることができる。
【0041】
また、キー110は、スイッチ素子121と対向する面が平坦に設けられる。これにより、キー110の潜り込みを低減しつつ、キー110の下面に印刷等の加飾を施すことができる。
【0042】
そして、ボタン装置100を備えた電子鍵盤楽器10とすることで、電源ボタンの操作がし易く、潜り込みも生じ難いキー110として電子鍵盤楽器10を提供することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0044】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]孔を有する基板と、
前記基板の前記孔に対応して配置されたキーと、
前記基板の前記孔を介して前記キーに向けて突出されている突出部と、
を有するボタン装置。
[2]前記キーの表面の少なくとも一部を露出するキー露出孔を有するパネルを備え、
前記キーは、前記パネルにおける前記キー露出孔の内側縁部と当接可能な抜け止め部が設けられている、
前記[1]に記載のボタン装置。
[3]前記基板と前記キーとの間に配置され、前記キーを支持する弾性変形可能な支持部材を備え、
前記突出部は、前記キーの押下に伴って前記支持部材が弾性変形した場合、前記キーの表面が前記パネルの前記キー露出孔の内側縁部の下に潜り込まないよう前記支持部材を介して前記キーを支えることが可能である、
前記[2]に記載のボタン装置。
[4]前記支持部材は、筒状の支持本体部と、前記支持本体部の内周面に囲まれた内部に設けられ前記キーが載置されるキー載置部と、前記キー載置部の外周と前記支持本体部の前記内周面とを接続する弾性ヒンジ部と、を有している、前記[3]に記載のボタン装置。
[5]前記基板に設けられたスイッチ素子を備え、
前記突出部は、前記スイッチ素子を挟んで対向して板状に設けられ、
前記基板には、前記スイッチ素子における前記突出部が設けられていない面側に前記スイッチ素子に接続された配線が設けられている、
前記[1]に記載のボタン装置。
[6]前記基板の孔は、複数設けられ、
前記突出部は、複数設けられ、
前記キーは、キー本体と、前記キー本体の一部において外側に突出する規制突起部と、を有し、
前記規制突起部は、前記キー本体を挟んで互いに対向する位置に配置されるよう複数設けられ、
互いに対向する位置の前記規制突起部のそれぞれの略中央部を通る軸線は、複数の前記突出部のそれぞれの略中央部を通る軸線に対して傾斜して配置される、
前記[1]に記載のボタン装置。
[7]前記規制突起部は、第一の幅の長さの第1規制突起部と、前記第一の幅の長さより長い第二の幅の長さの第2規制突起部と、有する、前記[6に記載のボタン装置。
[8]前記キーは、前記スイッチ素子と対向する面が平坦に設けられる、前記[1]に記載のボタン装置。
[9]前記[1]乃至前記[8]の何れか記載のボタン装置を備える電子鍵盤楽器。
【符号の説明】
【0045】
3 白鍵 4 黒鍵
5 鍵盤 10 電子鍵盤楽器
12 回転ノブ 12a ボリューム素子
12b リング部 12c 基板
14 操作部 18 イヤホンジャック
80 ねじ部材 90 電線
100 ボタン装置 110 キー
111 環状リブ 111a 直線状部
111b 直線状部 112 電源マーク部
114 規制突起部 115 規制突起部
120 基板 121 スイッチ素子
121a ボタン 123 長孔部
125 嵌合孔 126 配線
140 支持部材
141 支持本体部 141a 第1側壁面
141b 第2側壁面 141c 第3側壁面
141d 嵌合ピン部 141e ガイド環
142 キー載置部 142a 小突起
142b 押圧部 142c 環状リブ
143 弾性ヒンジ部 144 ガイド部
145 ガイド部 150 受部材
151 突出部 152 平坦部
154 ベース部 154a ねじ孔部
154b リブ 154c リブ
155 コネクタカバー部 156 ノブ規制部
156a 鉤状部 200 ケース
210 上側ケース 211 上面パネル
211a 孔部 212 接続板
213 ボス 220 下側ケース
230 左側面ケース 240 右側面ケース
250 前側ケース