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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】支持体付き樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20240820BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240820BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240820BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20240820BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240820BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240820BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B6/12 371
B32B7/023
B32B27/16 101
B32B27/38
C08G59/18
G02B6/13
G03F7/004 512
G03F7/027 502
G03F7/027 515
G03F7/032 501
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022100669
(22)【出願日】2022-06-22
(65)【公開番号】P2024001786
(43)【公開日】2024-01-10
【審査請求日】2023-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真治
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-071880(JP,A)
【文献】特開2019-066841(JP,A)
【文献】特開2021-195480(JP,A)
【文献】特開2019-143132(JP,A)
【文献】特開2019-211540(JP,A)
【文献】特開2005-208563(JP,A)
【文献】特開2006-028419(JP,A)
【文献】特開2012-133237(JP,A)
【文献】特開2015-146000(JP,A)
【文献】特開2021-055078(JP,A)
【文献】国際公開第2021/172316(WO,A1)
【文献】特開2021-154725(JP,A)
【文献】特開2021-163192(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0018891(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G03C 3/00
G03F 7/004 - 7/04
G03F 7/06
G03F 7/075 - 7/115
G03F 7/16 - 7/18
C08G 59/00 - 59/72
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する支持体付き樹脂シートであって、
前記樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)反応性希釈剤を含む樹脂組成物で形成された樹脂組成物層であり、
前記樹脂組成物層を形成する前記樹脂組成物中の前記(D)反応性希釈剤に対する前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の質量比((B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の含有量/(D)反応性希釈剤の含有量)が、0.1~3であり、
条件(1)及び(2)の両方を満たす、光導波路のコアを形成するための支持体付き樹脂シート。
条件(1):JIS K6714に準拠して測定される前記支持体のヘーズが10%以下である。
条件(2):前記支持体の前記樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である。
【請求項2】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項3】
前記支持体の厚さが、10μm~50μmの範囲である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物層の厚さが、3μm~30μmの範囲である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂が、ナフトールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項6】
前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂が、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する光重合性樹脂を含む、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項7】
前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂が、ナフトールアラルキル骨格を有する光重合性樹脂を含む、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項8】
前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂が、カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項9】
前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、18,000以下である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項10】
前記(C)光重合開始剤の分子量が、400以上である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項11】
前記(C)光重合開始剤が、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を含む、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項12】
前記樹脂組成物層を形成する前記樹脂組成物中の前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂に対する前記(A)エポキシ樹脂の質量比((A)エポキシ樹脂の含有量/(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の含有量)が、0.1~3である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項13】
前記樹脂組成物層を形成する前記樹脂組成物中の前記(C)光重合開始剤に対する前記(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の質量比((B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の含有量/(C)光重合開始剤の含有量)が、1~50である、請求項1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項14】
前記(D)反応性希釈剤が、カルボキシル基を含有しない二官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項15】
前記(D)反応性希釈剤の分子量が、1,000以下である、請求項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項16】
(III)請求項1~15の何れか1項に記載の支持体付き樹脂シートを該支持体付き樹脂シートが有する樹脂組成物層が下層クラッド層に接するように下層クラッド層にラミネートして前記支持体付き樹脂シートが有する樹脂組成物層を下層クラッド層上に形成する工程と、
(IV)前記支持体付き樹脂シートが有する支持体上にマスクを設置してマスク及び支持体を介して前記下層クラッド層上に形成した樹脂組成物層の一部に露光処理を施す工程と、
(V)前記マスク及び前記支持体付き樹脂シートが有する支持体を除去する工程と、
(VI)前記下層クラッド層上に形成した樹脂組成物層に現像処理を施して樹脂組成物パターンを形成する工程と、
(VII)前記樹脂組成物パターンを硬化させて光導波路のコアを前記下層クラッド層上に形成する工程と、
をこの順で含む、光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性樹脂を含む樹脂組成物層を有する支持体付き樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
5G通信、自動運転、IoT、人工知能、ビッグデータ等の技術進歩により通信の超高速化及び大容量化の要求が高まっている。その根幹を支える半導体パッケージは、従来、高周波電流を流すことにより高速通信に対応をしてきた。しかし、近年では、高速通信によるノイズの発生、通信の損失、及び発熱の課題が顕在化している。これらの課題を解決するために、電気配線基板に光回路を実装し、省エネルギーと低遅延かつ高速通信を実現する取り組みが近年盛んに行われている(特許文献1及び2)。
【0003】
特に高速伝送が求められるデータセンターでは、シリコンフォトニクスの導入に関する研究が活発になされている。シリコンフォトニクスは、従来のLSI製造プロセスと整合性が高い。したがって、シリコンフォトニクスを活用することにより、電子回路集積技術で培われた技術をもとに、ナノメートルサイズの細線導波路の形成が低コストで可能になると期待されている。
【0004】
例えば、シリコンフォトニクスによれば、細線導波路によってチップに光集積回路を形成することが期待される。このチップを搭載した光電気混載基板を製造する場合、チップ内の細線導波路から信号光をチップ外に取り出してチップ間の配線へと接続するために、光電気混載基板に微細な光導波路を設けることが求められる。しかし、形成する光導波路が微細であればあるほど、現像液で溶解しやすくなる傾向があるが、一方で光導波路のコアの表面の凹凸が大きくなり、伝送損失が増大するという課題があった。したがって、より優れたコア形成性に伴う高い微細配線形成性を備える一方で、光伝送損失が抑えられた光導波路を形成できる支持体付き樹脂シートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-211540号公報
【文献】特許第5771978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能である支持体付き樹脂シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、支持体のヘーズが10%以下であるか、或いは支持体の樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である支持体を有する支持体付き樹脂シートを用いることにより、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する支持体付き樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、及び(C)光重合開始剤を含む樹脂組成物で形成された樹脂組成物層であり、
条件(1)及び(2)のうち少なくとも1つの条件を満たす、光導波路のコアを形成するための支持体付き樹脂シート。
条件(1):JIS K6714に準拠して測定される支持体のヘーズが10%以下である。
条件(2):支持体の樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である。
[2] 条件(1)を満たす、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[3] 条件(1)及び(2)の両方を満たす、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[4] 支持体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[5] 支持体の厚さが、10μm~50μmの範囲である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[6] 樹脂組成物層の厚さが、3μm~30μmの範囲である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[7] (A)成分が、ナフトールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂を含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[8] (B)成分が、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する光重合性樹脂を含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[9] (B)成分が、ナフトールアラルキル骨格を有する光重合性樹脂を含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[10] (B)成分が、カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[11] (B)成分の重量平均分子量(Mw)が、18,000以下である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[12] (C)成分の分子量が、400以上である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[13] (C)成分が、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[14] 樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)成分/(B)成分)が、0.1~3である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[15] 樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(C)成分に対する(B)成分の質量比((B)成分/(C)成分)が、1~50である、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[16] 樹脂組成物層を形成する樹脂組成物が、(D)反応性希釈剤をさらに含む、上記[1]に記載の支持体付き樹脂シート。
[17] (D)成分が、カルボキシル基を含有しない二官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む、上記[16]に記載の支持体付き樹脂シート。
[18] (D)成分の分子量が、1,000以下である、上記[16]に記載の支持体付き樹脂シート。
[19] (III)上記[1]~[18]の何れかに記載の支持体付き樹脂シートを樹脂組成物層が下層クラッド層に接するように下層クラッド層にラミネートして樹脂組成物層を下層クラッド層上に形成する工程と、
(IV)支持体上にマスクを設置してマスク及び支持体を介して樹脂組成物層の一部に露光処理を施す工程と、
(V)マスク及び支持体を除去する工程と、
(VI)樹脂組成物層に現像処理を施して樹脂組成物パターンを形成する工程と、
(VII)樹脂組成物パターンを硬化させてコアを下層クラッド層上に形成する工程と、
をこの順で含む、光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態における光導波路を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(I)を説明するための模式的な断面図である。
図3図3は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(II)を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(III)を説明するための模式的な断面図である。
図5図5は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。
図6図6は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。
図7図7は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。
図8図8は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。
図9図9は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(IX)を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
<支持体付き樹脂シート>
本発明の支持体付き樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する支持体付き樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、及び(C)光重合開始剤を含む樹脂組成物で形成された樹脂組成物層であり、
条件(1)及び(2)のうち少なくとも1つの条件を満たすものである。
条件(1):JIS K6714に準拠して測定される支持体のヘーズが10%以下である。
条件(2):支持体の樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である。
【0013】
本発明の支持体付き樹脂シートは、光導波路の製造において、光導波路のコアを形成するために用いられる。
【0014】
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能である。
【0015】
条件(1)において、JIS K6714に準拠して測定される支持体のヘーズは、10%以下であり、より優れたコア形成性を達成する観点から、好ましくは9%以下、より好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下である。支持体のヘーズの下限は、特に限定されるものではないが、例えば0.1%であり得る。
【0016】
条件(2)において、支持体の樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)は、50nm以下であり、より優れたコア形成性を達成する観点から、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特に好ましくは15nm以下である。
【0017】
本発明の支持体付き樹脂シートは、条件(1)を満たすことが好ましく、条件(1)及び(2)の両方を満たすことが特に好ましい。
【0018】
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を達成する観点から、条件(3)をさらに満たすことが好ましい。
条件(3):JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは87%以上である。
【0019】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0020】
市販の支持体としては、例えば、東レ社製「ルミラーFB-40」、「QS63」、ユニチカ社製「S-25」、「S-38」、「PET-12」等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。
【0021】
支持体の厚さは、5μm~100μmの範囲であることが好ましく、10μm~50μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを100μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。
【0022】
また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0023】
さらに樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることがさらに好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0024】
支持体付き樹脂シートは、例えば、下記で説明する樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に溶解してワニス状としたものを、支持体上に塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより支持体付き樹脂シートを製造することができる。
【0025】
具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性や樹脂組成物中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物においては、80℃~120℃で3分間~13分間乾燥し、下記で説明する(H)有機溶剤の好適な含有量範囲内とすることが好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0026】
樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、1μm~500μmの範囲であることが好ましく、1μm~100μmの範囲であることがより好ましく、1μm~50μmの範囲であることがさらに好ましく、1μm~40μmの範囲であることがなお一層好ましく、1μm~30μmの範囲であることが特に好ましい。
【0027】
樹脂組成物の塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0028】
樹脂組成物は、支持体上に、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0029】
樹脂組成物層は、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、及び(C)光重合開始剤を含む樹脂組成物で形成された樹脂組成物層である。樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、及び(C)光重合開始剤の他に、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)反応性希釈剤、(E)光増感剤、(F)無機充填材、(G)その他の添加剤、及び(H)有機溶剤が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0030】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂である。
【0031】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0033】
(A)エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいてもよいが、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいるか、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいることが特に好ましい。
【0034】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0035】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0036】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製の「EX-992L」、三菱ケミカル社製の「YX7400」、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「828EL」、「825」、「エピコート828EL」、DIC社製の「850」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0037】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0039】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(A)エポキシ樹脂は、一実施形態において、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格から選ばれる骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましく、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を含むことがより好ましく、ナフトールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが特に特に好ましい。
【0041】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0042】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0043】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、機械強度及び絶縁信頼性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。その上限は、アルカリ現像性の向上という観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
【0044】
<(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂を含有する。(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂を含む樹脂組成物は、アルカリ性現像液(例えば、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液)に対し溶解性を示し得る。(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の1分子当たりのカルボキシル基の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
【0045】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する光重合性樹脂を含むことが好ましい。エチレン性不飽和基は、光重合性官能基であり、炭素-炭素二重結合を有し、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の1分子当たりのエチレン性不飽和基の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。また、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基の両方を有し、光ラジカル重合を可能とするとともにアルカリ現像を可能とする樹脂であることが好ましい。
【0047】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂は、一実施形態において、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格から選ばれる骨格を有する光重合性樹脂を含むことが好ましく、ナフタレン骨格を有する光重合性樹脂を含むことがより好ましく、ナフトールアラルキル骨格を有する光重合性樹脂を含むことが特に特に好ましい。
【0048】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂は、一実施形態において、(A)エポキシ樹脂と同一の骨格を有することが特に好ましい。
【0049】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂は、カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及びカルボン酸含有(メタ)アクリル(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる樹脂を含むことが好ましく、カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むことがより好ましい。
【0050】
カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いて製造することができる。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることにより製造することができる。
【0051】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造のためのエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて3官能以上に変性した変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型等のビフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂);ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0052】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造のためのエポキシ樹脂は、平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族骨格とは、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む概念である。なかでも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びナフトールアラルキル型エポキシ樹脂のいずれかが好ましい。
【0053】
カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を、多価カルボン酸無水物と反応させることにより、製造することができる。
【0054】
多価カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が好ましく、無水テトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0055】
カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、一実施形態において、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格から選ばれる骨格を有するカルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましく、ナフタレン骨格を有するカルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むことがより好ましく、ナフトールアラルキル骨格を有するカルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むことが特に好ましい。
【0056】
カルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、公知の方法で合成することができるが、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、日本化薬社製の「CCR-1373H」(クレゾールノボラック骨格含有酸変性エポキシアクリレート)、「ZCR-8001H」(ビフェニル骨格含有酸変性エポキシアクリレート)、「ZCR-1569H」(ビフェニル骨格含有酸変性エポキシアクリレート)、「CCR-1171H」(クレゾールノボラック骨格含有酸変性エポキシアクリレート)、「ZCR-1797H」(ビフェニル骨格含有酸変性エポキシアクリレート)、日本化薬社製の「ZAR-2000」(ビスフェノールA骨格含有酸変性エポキシアクリレート樹脂)、「ZFR-1491H」、「ZFR-1533H」(ビスフェノールF骨格含有酸変性エポキシアクリレート樹脂)、昭和電工社製の「PR-300CP」(クレゾールノボラック型酸変性エポキシアクリレート樹脂)、日本化薬社製の「CCR-1179」(クレゾールノボラック骨格含有エポキシアクリレート樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の酸価は、樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させるという観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは、0.5mgKOH/g以上、さらに好ましくは、1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、さらにより好ましくは、20mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、特に好ましくは、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上である。(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の酸価の上限は、絶縁信頼性を向上させるという観点から、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下、特に好ましくは100mgKOH/g以下である。
【0058】
(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下、さらに好ましくは15,000以下である。(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の重量平均分子量の下限は、好ましくは1000以上、より好ましくは1,500以上である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0059】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、アルカリ現像性の向上という観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。その上限は、耐熱性の向上という観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以下である。
【0060】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂に対する(A)エポキシ樹脂の質量比((A)成分/(B)成分)は、0.03以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。その上限は、10以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。
【0061】
<(C)光重合開始剤>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。
【0062】
(C)光重合開始剤としては、例えば、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤等が挙げられる。(C)光重合開始剤は、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を含むことが好ましく、α-アミノケトン系光重合開始剤を含むことが特に好ましい。(C)光重合開始剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
α-アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-ヘキシルフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニルメチル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(Omnirad 379EG)、ポリエチレングリコールジ(β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピぺラジン)プロピオネート(Omnipol 910)等が挙げられる。光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ポリオキシエチレングリセリンエーテルトリス[フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート](Polymeric TPO-L)(Omnipol TP)等が挙げられる。
【0065】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(OXE01)、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート(OXE02)等が挙げられる。
【0066】
α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0067】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
【0068】
ベンジルケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
【0069】
(C)光重合開始剤は、ポリブチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、及びポリエチレングリコール構造から選ばれる構造を含むことが好ましく、ポリエチレングリコール構造を含むことが特に好ましい。
【0070】
(C)光重合開始剤の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは400以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは800以上である。(C)光重合開始剤の分子量の上限は特に限定されないが、好ましくは4,000以下、より好ましくは2,000以下である。
【0071】
(C)光重合開始剤は、200nm~450nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、250nm~400nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物がより好ましく、275nm~375nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が特に好ましい。
【0072】
(C)光重合開始剤は、(C)光重合開始剤を100質量%とした場合、α-アミノケトン系光重合開始剤を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上含む。
【0073】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(C)光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。その上限は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0074】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(C)光重合開始剤に対する(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の質量比((B)成分/(C)成分)は、0.3以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。その上限は、200以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
【0075】
<(D)反応性希釈剤>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、任意成分として(D)反応性希釈剤を含有してもよい。(D)反応性希釈剤は、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂に該当しない成分である。(D)反応性希釈剤は、カルボキシル基を含有しない。
【0076】
(D)反応性希釈剤は、エチレン性不飽和基を有する化合物を含むことが好ましい。(D)反応性希釈剤は、好ましくはエチレン性不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物を含むことが好ましい。エチレン性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基(-CO-CH=CH)、メタクリロイル基(-CO-C(CH)=CH)等が挙げられる。(D)反応性希釈剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(D)反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の二官能の(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能の(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の四官能以上の(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0078】
(D)反応性希釈剤は、カルボキシル基を含有しない二官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、カルボキシル基を含有しない三官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましく、カルボキシル基を含有しない四官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
【0079】
(D)反応性希釈剤の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下である。(D)反応性希釈剤の分子量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば150以上であり得る。
【0080】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(D)反応性希釈剤の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、光硬化性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。その上限は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
【0081】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(D)反応性希釈剤に対する(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の質量比((B)成分/(D)成分)は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。その上限は、30以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
【0082】
<(E)光増感剤>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、任意成分として(E)光増感剤を含有してもよい。(E)光増感剤を含有させることにより、光硬化性を向上させることができる。
【0083】
(E)光増感剤としては、例えば、チオキサントン類、ベンゾフェノン類等が挙げられる。
【0084】
チオキサントン類の具体例としては、2-イソプロピルチオキサントン、1-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン(DETX-S)、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ポリブチレングリコールビス(9-オキソ-9H-チオキサンテニルオキシ)アセテート(Omnipol TX)等が挙げられる。
【0085】
ベンゾフェノン類の具体例としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0086】
(E)光増感剤は、一実施形態において、ポリブチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、及びポリエチレングリコール構造から選ばれる構造を含むことが好ましく、ポリブチレングリコール構造を含むことが特に好ましい。
【0087】
(E)光増感剤の分子量は、好ましくは200以上である。(E)光増感剤の分子量の上限は特に限定されないが、好ましくは4,000以下、より好ましくは2,000以下である。
【0088】
(E)光増感剤は、200nm~450nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、300nm~400nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物がより好ましく、325nm~375nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が特に好ましい。
【0089】
(E)光増感剤の最低励起三重項エネルギー準位は、(C)光重合開始剤へエネルギーを効率よく伝搬させる観点から、(C)光重合開始剤の励起三重項エネルギー準位よりも高いことが好ましい。(E)光増感剤の最低励起三重項エネルギー準位は、(C)光重合開始剤の励起三重項エネルギー準位よりも好ましくは0.1kcal/mol~20kcal/mol高く、より好ましくは0.1kcal/mol~15kcal/mol高く、特に好ましくは0.1kcal/mol~10kcal/mol高いことが望ましい。
【0090】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(E)光増感剤の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。その下限は、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上であり、光硬化性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
【0091】
<(F)無機充填材>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、任意成分として(F)無機充填材を含有してもよい。(F)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0092】
(F)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(F)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(F)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0093】
(F)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2300-SVJ」、「SC2050-SXF」、「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「Y50SZ-AM1」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0094】
(F)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらにより好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。(F)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.03μm以上である。(F)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0095】
(F)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは1m/g以上、より好ましくは10m/g以上、さらに好ましくは20m/g以上、特に好ましくは40m/g以上である。(F)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは160m/g以下、より好ましくは130m/g以下、さらに好ましくは100m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0096】
(F)無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(F)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル系シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等の等のウレイド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤が挙げられる。また、表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0097】
(F)無機充填材は、ビニル系シランカップリング剤、及びアミノ系シランカップリング剤から選ばれる表面処理剤で表面処理された無機充填材を含むことがより好ましく、アミノ系シランカップリング剤で表面処理された無機充填材を含むことが特に好ましい。
【0098】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM-1003」、「KBE-1003」(ビニル系シランカップリング剤);「KBM-303」、「KBM-402」、「KBM-403」、「KBE-402」、「KBE-403」(エポキシ系シランカップリング剤);「KBM-1403」(スチリル系シランカップリング剤);「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」(メタクリル系シランカップリング剤);「KBM-5103」(アクリル系シランカップリング剤);「KBM-602」、「KBM-603」、「KBM-903」、「KBE-903」、「KBE-9103P」、「KBM-573」、「KBM5783」、「KBM-575」(アミノ系シランカップリング剤);「KBM-9659」(イソシアヌレート系シランカップリング剤);「KBE-585」(ウレイド系シランカップリング剤);「KBM-802」、「KBM-803」(メルカプト系シランカップリング剤);「KBE-9007N」(イソシアネート系シランカップリング剤);「X-12-967C」(酸無水物系シランカップリング剤);「KBM-13」、「KBM-22」、「KBM-103」、「KBE-13」、「KBE-22」、「KBE-103」、「KBM-3033」、「KBE-3033」、「KBM-3063」、「KBE-3063」、「KBE-3083」、「KBM-3103C」、「KBM-3066」、「KBM-7103」(アルキルアルコキシシラン化合物)等が挙げられる。
【0099】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0100】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0101】
(F)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0102】
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の(F)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、現像性をより向上させる観点から、例えば、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。その下限は、例えば、0質量%以上、0.1質量%以上、平均線熱膨張率をより低く抑える観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0103】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(G)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(G)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0104】
<(H)有機溶剤>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、任意成分としてさらに(H)有機溶剤を含有し得る。(H)成分を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(H)有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤を用いる場合の含有量は、樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0105】
(H)有機溶剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、好ましく5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0106】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物層を形成する樹脂組成物は、各成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、高速回転ミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより、製造することができる。
【0107】
<支持体付き樹脂シートの特徴>
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能であるという特徴を有する。
【0108】
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を有するため、一実施形態において、本発明の支持体付き樹脂シートを用いて支持体側から露光を行った場合に形成可能なコアの最小細線形成幅がより小さいという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例1のように評価した場合の最小細線形成幅が、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、特に好ましくは5μm以下であり得る。
【0109】
本発明の支持体付き樹脂シートは、より優れたコア形成性を有するため、一実施形態において、本発明の支持体付き樹脂シートを用いて支持体側から露光を行った場合に形成されるコアのレジスト欠損を少なく抑えられるという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例2のようにコアのレジスト欠損を評価した場合の1mmあたりのレジスト欠損の数が、好ましくは5個未満であり得る。
【0110】
本発明の支持体付き樹脂シートは、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能であるという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例3のように試験した場合の光伝送損失が、好ましくは2.0dB/cm未満、より好ましくは1.0dB/cm未満、特に好ましくは0.5dB/cm未満となり得る。
【0111】
本発明の支持体付き樹脂シートにおける樹脂組成物層は、通常、光を照射されていない非露光部を現像液によって除去されることができ、とりわけ、アルカリ現像液としての炭酸ナトリウムによって良好に除去されることができる。したがって、本発明の支持体付き樹脂シートは、炭酸ナトリウム現像用として特に好適に用いることができる。
【0112】
<光導波路>
本発明の支持体付き樹脂シートは、光導波路の製造において、光導波路のコアを形成するために用いることができる。光導波路のコアは光伝送可能な構成であって、クラッド層に覆われている。以下、その光導波路の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0113】
図1は、一実施形態の光導波路10を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、光導波路10は、コア100及びクラッド層200を備える。コア100は、本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物であり得る。また、クラッド層200は、クラッド用組成物の硬化物であり得る。クラッド用組成物としては、本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物よりも低い屈折率を有する硬化物を得られる樹脂組成物を用いることができる。クラッド用組成物としては、光硬化性樹脂組成物を用いてもよく、熱硬化性樹脂組成物を用いてもよい。
【0114】
コア100は、クラッド層200中に設けられる。コア100は、クラッド層200に覆われる。通常は、コア100の全周面が、クラッド層200に覆われる。コア100とクラッド層200とは、間に他の層を介することなく直接に接しており、コア100とクラッド層200との間には界面100Iが形成されうる。光(図示せず。)は、コア100の一端(入射側の端)100Aから他端(出射側の端)100Bまでコア100内を伝送される。
【0115】
光導波路10が伝送可能な光の波長は、さまざまに選択しうる。例を挙げると、伝送される光の好ましい波長の範囲は、840nm~860nm(例えば、850nm)、1300nm~1320nm(例えば、1310nm)、1540nm~1560nm(例えば、1550nm)などでありうる。中でも、光伝送路10を伝送される光の波長の範囲は、1300nm~1320nmが好ましい。
【0116】
光導波路10は、シングルモードの光導波路であってもよく、マルチモードの光導波路であってもよいが、シングルモードの光導波路であることが好ましい。中でも、光導波路10は、前記の好ましい波長の範囲の光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。例えば、光導波路10は、1310nmの光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。
【0117】
コア100の幅Lは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア100の幅Lの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下又は5μm以下であってもよい。コア100の幅Lは、厚み方向から見た場合のコア100の線幅(ライン)に相当する。
【0118】
コア100の間隔Sは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア100の間隔Sの範囲は、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。コア100の間隔Sは、厚み方向から見たコアの間隔(スペース)に相当する。
【0119】
コア100の厚みTは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア100の厚みTの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下であってもよい。
【0120】
クラッド層200の厚みは、コア100の厚みよりも大きい。クラッド層200の具体的な厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0121】
光導波路10は、必要に応じて、コア100及びクラッド層200以外の任意の要素を備えていてもよい。例えば、光導波路10は、基材300を備えていてもよい。基材300を備える光導波路10では、通常、基材300上にクラッド層200が設けられ、そのクラッド層200内にコア100が設けられている。
【0122】
基材300としては、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板、ウエハ、回路基板等の硬質の基板を用いてもよい。ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、インジウムリン(InP)ウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムナイトライド(GaN)ウエハ、ガリウムテルル(GaTe)ウエハ、亜鉛セレン(ZnSe)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ等の半導体ウエハを用いてもよく、疑似ウエハを用いてもよい。疑似ウエハとしては、例えば、モールド樹脂と、そのモールド樹脂に埋め込まれた電子部品とを備える板状部材を用いうる。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。さらに、基板300としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル等のプラスチック材料で形成されたフィルムを用いてもよい。さらに、フレキシブル回路基板を基板300として採用してもよい。
【0123】
また、光導波路10は、任意の要素として、コア100及びクラッド層200を保護する保護層(図示せず。)を備えていてもよい。保護層は、例えば、クラッド層200の基材300とは反対側の面を覆うように設けてもよい。
【0124】
光導波路10は、上述したように、小さい伝送損失を有することができる。また、光導波路10は、優れたコア形成性を有する樹脂組成物を用いて形成できるので、コアの微細配線化が可能であり、前記のように小さい線幅Lで形成することが可能である。
【0125】
光導波路10は、本発明の支持体付き樹脂シートを用いて製造できる。例えば、光導波路10は、
(I)クラッド用組成物で形成された第一クラッド用組成物層を基材上に形成する工程と、
(II)第一クラッド用組成物層を硬化させて下層クラッド層を基材上に形成する工程と、
(III)本発明の支持体付き樹脂シートを樹脂組成物層が下層クラッド層に接するように下層クラッド層にラミネートして樹脂組成物層を下層クラッド層上に形成する工程と、
(IV)支持体上にマスクを設置してマスク及び支持体を介して樹脂組成物層の一部に露光処理を施す工程と、
(V)マスク及び支持体を除去する工程と、
(VI)樹脂組成物層に現像処理を施して樹脂組成物パターンを形成する工程と、
(VII)樹脂組成物パターンを硬化させてコアを下層クラッド層上に形成する工程と、
(VIII)下層クラッド層上にコアを覆うようにクラッド用組成物で形成された第二クラッド用組成物層を形成する工程と、
(IX)第二クラッド用組成物層を硬化させて上層クラッド層を下層クラッド層上にコアを覆うように形成する工程と、
をこの順で含む方法によって、製造できる。
【0126】
図2は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(I)を説明するための模式的な断面図である。図2に示すように、光導波路の製造方法は、一実施形態において、(I)クラッド用組成物で形成された第一クラッド用組成物層210を基材300上に形成する工程を含む。
【0127】
第一クラッド用組成物層210の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用組成物を基材300上に塗布することにより、第一クラッド用組成物層210を形成してもよい。塗布を円滑に行う観点から、ワニス状のクラッド用組成物を用意し、ワニス状のクラッド用組成物を塗布してもよい。
【0128】
塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スピンコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式、ディップコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、オフセット印刷方式、刷毛塗り方式、スクリーン印刷方式などが挙げられる。
【0129】
クラッド用組成物は、1回で塗布してもよく、複数回に分けて塗布してもよい。また、異なる塗布方式を組み合わせて実施してもよい。異物混入を避けるために、塗布は、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で実施することが好ましい。
【0130】
クラッド用組成物の塗布の後、必要に応じて、第一クラッド用組成物層210の乾燥を行ってもよい。乾燥は、熱風炉、遠赤外線炉等の乾燥装置によって行いうる。乾燥条件は、クラッド用組成物の組成に応じて適切に設定することが好ましい。具体例を挙げると、乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。また、乾燥時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは120秒以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは20分以下、特に好ましくは5分以下である。
【0131】
第一クラッド用組成物層210の形成は、例えば、支持体と該支持体上に設けられたクラッド用組成物で形成されたクラッド用組成物層を含むクラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートのクラッド用組成物層を基材300にラミネートすることにより、基材300上に第一クラッド用組成物層210を形成できる。ラミネートは、クラッド用樹脂シートのクラッド用組成物層を加熱しながら基材300に圧着することによって行われる。このラミネートは、真空ラミネート法により、減圧下で行うことが好ましい。また、ラミネートの前に、必要に応じて、クラッド用樹脂シート及び基材を加熱するプレヒート処理を行ってもよい。
【0132】
ラミネートの条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)70℃~140℃、圧着圧力1kgf/cm~11kgf/cm(9.8×10N/m~107.9×10N/m)、圧着時間5秒間~300秒間の条件で行うことができる。また、ラミネートは、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とした減圧下で行うことが好ましい。ラミネートは、バッチ式で行ってもよく、ロールを用いて連続式で行ってもよい。
【0133】
真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0134】
支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第一クラッド用組成物層210を形成した場合、通常は、工程(III)より前の適切な時期にクラッド用樹脂シートの支持体を剥離する。
【0135】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(I)後に、(II)第一クラッド用組成物層210を硬化させて下層クラッド層220を基材300上に形成する工程を含む。この工程(II)は、例えば、第一クラッド用組成物層210を熱処理することにより硬化させてもよい。熱処理の条件は、クラッド用組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよく、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲でありうる。熱処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0136】
また、第一クラッド用組成物層210の硬化は、露光処理によって行ってもよい。一例において、具体的な露光量の範囲は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上、特に好ましくは200mJ/cm以上であり、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは8,000mJ/cm以下、更に好ましくは4,000mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。また、露光処理と熱処理とを組み合わせて、第一クラッド用組成物層210を硬化させてもよい。
【0137】
図3は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(II)を説明するための模式的な断面図である。工程(II)で第一クラッド用組成物層210を硬化させることにより、図3に示すように、下層クラッド層220が基材300上に形成される。下層クラッド層220は、クラッド層200の一部を形成するものである。
【0138】
図4は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(III)を説明するための模式的な断面図である。光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(II)後に、図4に示すように、(III)本発明の支持体付き樹脂シートを樹脂組成物層が下層クラッド層220に接するように下層クラッド層220にラミネートして樹脂組成物層110を下層クラッド層220上に形成する工程を含む。
【0139】
樹脂組成物層110の形成は、本発明の支持体付き樹脂シートを用いて実施する。本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層を下層クラッド層220に接触させて、ラミネートすることにより、下層クラッド層220上に樹脂組成物層110を形成できる。本発明の支持体付き樹脂シートのラミネートは、クラッド用樹脂シートのラミネートと同様の条件を用いることができる。
【0140】
図5は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。光導波路の製造方法は、一実施形態において、図5に示すように、工程(III)後に、(IV)支持体120上にマスク400を設置してマスク400及び支持体120を介して樹脂組成物層110の一部に露光処理を施す工程を含む。
【0141】
工程(IV)では、樹脂組成物層110の一部に露光処理を施すことにより、樹脂組成物層110に潜像を形成する。工程(IV)における露光処理は、支持体120上に、透光部410及び遮光部420を備えるマスク400を設置した上、マスク400及び支持体120を介して、光Pを樹脂組成物層110に照射して行われる。光Pは、透光部410を透過して露光部111へ入射するが、遮光部420を透過できないので非露光部112へは入射できない。透光硬化部410及び遮光部420に対応した露光部111及び非露光部112を樹脂組成物層110に設けることができる。
【0142】
マスク400の透光部410は、光導波路のコアのパターンに対応した平面形状を有するように形成される。マスク400の遮光部420は、光導波路のコアが無い部分に対応した平面形状を有するように形成される。「平面形状」とは、別に断らない限り、厚み方向から見た形状を表す。コアに対応した平面形状に形成された透光部410を、以下「マスクパターン」ということがある。
【0143】
工程(IV)での露光処理において用いる光Pとしては、樹脂組成物の組成に応じた適切な活性光線を用いることが好ましい。活性光線の波長は、通常190nm~1000nm、好ましくは240nm~550nmであるが、これ以外の波長の光線を用いてもよい。活性光源の具体例としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。光Pの露光量は、工程(VIII)での硬化後に所望のコアを形成できるように設定することが好ましい。一例において、工程(VI)での具体的な露光量の範囲は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上、特に好ましくは200mJ/cm以上であり、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは8,000mJ/cm以下、更に好ましくは4,000mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。
【0144】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(IV)後に、(V)マスク400及び支持体120を除去する工程を含む。
【0145】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(IV)又は工程(V)後、工程(VI)前に、(X)樹脂組成物層110を予備加熱する工程を含んでいてもよい。工程(X)により、現像液に対する露光部111の溶解性をより低下させることができる。工程(X)での加熱は、ホットプレートで行ってもよいし、オーブンで行ってもよい。加熱温度は、例えば、40℃以上110℃以下でありうる。また、加熱時間は、例えば、30秒以上60分以下でありうる。
【0146】
図6は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(V)後に、(VI)樹脂組成物層110に現像処理を施して樹脂組成物パターン110’を形成する工程を含む。現像処理によれば、工程(IV)で形成された潜像を現像することができる。樹脂組成物層110はネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、図6に示すように、現像処理によって樹脂組成物層110の露光部111(図5参照)は除去されずに樹脂組成物パターン110’として残存する一方で、樹脂組成物層110の非露光部112(図5参照)は除去される。現像後に残る樹脂組成物層110の露光部111は、工程(IV)で用いたマスク400の透光部410(図5参照)のマスクパターンと同じ平面形状の樹脂組成物パターン110’となる。
【0147】
現像方法は、樹脂組成物層110と現像液とを接触させるウエット現像法を用いて実施する。現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることができる。アルカリ性水溶液としては、無機塩基水溶液、有機塩基水溶液を使用することができる。
【0148】
無機塩基水溶液としては、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属の水酸化物水溶液;炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ金属の炭酸塩水溶液;炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ金属の炭酸水素塩水溶液;リン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液等のアルカリ金属リン酸塩水溶液;ピロリン酸ナトリウム水溶液、ピロリン酸カリウム水溶液等のアルカリ金属ピロリン酸塩水溶液などが挙げられる。有機塩基水溶液としては、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液等が挙げられる。中でも、アルカリ金属の炭酸塩水溶液が好ましく、炭酸ナトリウム水溶液がより好ましい。アルカリ性水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合したものを用いてもよい。
【0149】
現像液には、現像作用の向上のために、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤等の添加剤を混合させてもよい。
【0150】
現像時間は、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0151】
現像方式としては、例えば、パドル法、スプレー法、浸漬法、ブラッシング法、スラッピング法、超音波法等が挙げられる。中でも、スプレー法が解像度向上のためには好適である。スプレー法を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0152】
現像液を用いた現像後、更に、樹脂組成物層110のリンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、樹脂組成物に含まれるのと同じ種類の溶剤又は水を用いて、リンスしてもよい。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0153】
現像液を用いた現像後、現像により除去しきれない非露光部を除去するためにデスミア処理を行ってもよい。デスミア処理はプリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0154】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(VI)後、(VII)樹脂組成物パターン110’を硬化させてコア100を下層クラッド層220上に形成する工程を含む。この工程(VII)は、例えば、樹脂組成物パターン110’を熱処理することにより硬化させてもよい。熱処理の条件は、クラッド用組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよく、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲でありうる。熱処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0155】
図7は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。工程(VII)で樹脂組成物パターン110’を硬化させることにより、図7に示すように、下層クラッド層220上に、コア100が形成される。
【0156】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(VII)後、(VIII)下層クラッド層220上にコア100を覆うようにクラッド用組成物で形成された第二クラッド用組成物層230を形成する工程を含む。
【0157】
図8は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。第二クラッド用組成物層230は、コア100の周面のうち下層クラッド層220に接していない面の全体を覆うように、下層クラッド層220上に形成される。
【0158】
第二クラッド用組成物層230の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用組成物を、コア100を覆うように下層クラッド層220上に塗布することにより、第二クラッド用組成物層230を形成してもよい。第二クラッド用組成物層230を形成するためのクラッド用組成物の塗布は、第一クラッド用組成物層210を形成するためのクラッド用組成物の塗布と同様に行いうる。また、クラッド用組成物の塗布の後、必要に応じて、第二クラッド用組成物層230の乾燥を行ってもよい。第二クラッド用組成物層230の乾燥は、第一クラッド用組成物層210の乾燥と同じ方法及び条件を採用しうる。
【0159】
第二クラッド用組成物層230の形成は、例えば、クラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートのクラッド用組成物層をコア100(及び下層クラッド層220)にラミネートすることにより、コア100上に第二クラッド用組成物層230を形成できる。第二クラッド用組成物層230を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートは、第一クラッド用組成物層210を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートと同様に行いうる。支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第二クラッド用組成物層230を形成した場合、支持体は、任意の工程で剥離してもよい。
【0160】
光導波路の製造方法は、一実施形態において、工程(VIII)後に、(IX)第二クラッド用組成物層230を硬化させて上層クラッド層240を下層クラッド層220上にコア100を覆うように形成する工程を含む。この工程(IX)における第二クラッド用組成物層230の硬化は、第一クラッド用組成物層210の硬化と同様に行いうる。
【0161】
図9は、光導波路の製造方法の一実施形態における工程(IX)を説明するための模式的な断面図である。工程(IX)で第二クラッド用組成物層230を硬化させることにより、図9に示すように、下層クラッド層220上にコア100を覆うように上層クラッド層240が形成される。上層クラッド層240は、クラッド層200の一部を形成するものであり、この上層クラッド層240と下層クラッド層220とから、クラッド層200が形成される。
【0162】
上記で説明した第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230は、光導波路の機能を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(F)無機充填材を含むクラッド用組成物で形成された組成物層である。第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230は同一組成物からなる組成物層であることが好ましい。
【0163】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、クラッド用組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。その上限は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0164】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物中の(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂の含有量は、クラッド用組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。その上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0165】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物中の(C)光重合開始剤の含有量は、クラッド用組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。その上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0166】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物中の(F)無機充填材の含有量は、クラッド用組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。その下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
【0167】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)カルボキシル基を含有する光重合性樹脂、(C)光重合開始剤、及び(F)無機充填材の他に、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)反応性希釈剤、(E)光増感剤、(G)その他の添加剤、及び(H)有機溶剤が挙げられる。
【0168】
第一クラッド用組成物層210及び第二クラッド用組成物層230を形成するクラッド用組成物中の(D)反応性希釈剤の含有量は、クラッド用組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、光硬化性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。その上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0169】
光導波路10は、下層クラッド層220及び上層クラッド層240からなるクラッド層200と、このクラッド層200内に設けられたコア100とを備える。光導波路10の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0170】
光導波路10の製造方法は、例えば、保護層を形成する工程を含んでいてもよい。また、光導波路10の製造方法は、例えば、製造した光導波路10をダイシングする工程を含んでいてもよい。
【0171】
光導波路10の製造方法は、上述した工程を繰り返し行ってもよい。例えば、工程(I)~(XI)を繰り返し行って、基材300上に、厚み方向においてコアとクラッド層とを交互に備える多層構造の光導波路を製造してもよい。
【0172】
<光電気混載基板>
光電気混載基板は、上述した光導波路を備える。光電気混載基板は、光導波路と、電気回路基板とを備える。電気回路基板は、電子部品と、当該電子部品に接続された配線とを備えうる。電子部品としては、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品;半導体チップ等の能動部品;等が挙げられる。光導波路と電気回路基板の配線とは、光電変換素子を介して接続されうる。光電変換素子は、電気を光に変換可能な発光素子(例えば、面発光型発光ダイオード)、及び、光を電気に変換可能な受光素子(例えば、フォトダイオード)を組み合わせて含みうる。さらに、光電気混載基板は、光路調整のためにミラー等の光学素子を備えていてもよい。
【0173】
好ましい光電気混載基板の例としては、シリコンウエハに光集積回路を形成したチップを備えるものが挙げられる。このチップは、シリコンフォトニクスを用いた早期の実用化が期待されており、例えば半導体パッケージへの実装が予想される。このチップを備える光電気混載基板は、例えば、電気回路基板と、当該電気回路基板に実装されたチップと、光導波路とを備える。光導波路は、電気回路基板の配線とチップとを接続したり、複数のチップ間を接続したりするために用いうる。
【0174】
シリコンフォトニクスで製造されるチップでは、一般に、1310nm及び1550nmの波長の光が使用されることが多く、特に1310nmが主流である(吉田翔、菅沼大輔、石榑崇明、「Mosquito法によるシングルモードポリマー導波路の作製と低損失化」、第28回エレクトロニクス実装学会春季講演大会、2014年)。光導波路は、1310nm及び1550nm又はそれに近い波長の光の伝送が可能であることが好ましく、例えば波長1300nm~1320nmの光を伝送可能であることが好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、これらの波長の光の伝送が可能である。
【0175】
一般に、シングルモードとマルチモードとでは、シングルモードの方が速い伝送を達成できる。高速伝送の観点からは、光電気混載回路に適用する光導波路として、シングルモードの光導波路が好ましい。シングルモードの光導波路では、コアの幅は小さいことが好ましい。例えば、10μm以下、又は5μm以下の幅のコアを形成することが好ましい。また、このように幅が小さいコアを備える光導波路は、光導波路を半導体パッケージに適用する場合に、パッケージのデザインの自由度を高める観点からも、好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、コアの幅を前記のように小さくすることが可能である。
【0176】
他方、複数の光電気混載基板を接続する場合、それらの基板は、光ファイバーを介して接続されることがありうる。例えば、ラックに複数の光電気混載基板を設置し、それら光電気混載基板同士を光ファイバーで接続することがありうる。このように基板間を接続する光ファイバーは、マルチモードが主流である。そこで、その光ファイバーとの接続を可能にする観点では、光電気混載基板に設ける光導波路として、マルチモードの光導波路を採用してもよい。
【0177】
汎用性を高める観点では、光導波路は、シングルモード及びマルチモードのいずれにも適用可能であることが望ましい。更には、それら光導波路のコアの最小幅を小さくして、コアの線幅の自由度を高めることが望ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、樹脂組成物がコア形成性に優れ、高い微細配線形成能力を達成できるので、コアの最小幅を小さくできる。また、上述した実施形態に係る光導波路によれば、シングルモード及びマルチモードのいずれの光導波路も得ることができる。上述した実施形態に係る光導波路は、広範な範囲に適用が可能である。そのように広範な範囲に適用可能でありながら、光の伝送損失を抑制できるので、上述した実施形態に係る光導波路は、光電気混載基板に適用するのに好適である。
【実施例
【0178】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件は、室温(23℃)下であり、特に圧力の指定が無い場合の圧力条件は、大気圧(1atm)下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0179】
<合成例1:ナフトールアラルキル骨格を有するカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂>
ナフトールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量325)325部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。溶剤量を調整し、固形物の酸価が60mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%)を得た。重量平均分子量は1000であった。
【0180】
<合成例2:メチレンジナフトール骨格を有するカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂>
1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン(大日本インキ化学工業社製「EXA-4700」、エポキシ当量162)162部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価が90mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%)を得た。重量平均分子量は2500であった。
【0181】
<実施例1:支持体付き樹脂シート1の製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ナフトールアラルキル骨格含有、不揮発分率70%)25部、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量330g/eq.)10部、α-アミノケトン系光重合開始剤(IGM社製「Omnipol 910」、ポリエチレングリコールジ(β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピぺラジン)プロピオネート)1.3部、反応性希釈剤(日本化薬社製「DPHA」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)10部、メチルエチルケトン10部を混合し、高速回転ミキサーを用いてワニス状の樹脂組成物を調製した。
【0182】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)上に離型剤(リンテック社製「AL-5」)の厚みが1μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布したものを支持体として用意した。JIS K6714に準拠して用意した支持体のヘーズを測定したところ6%であった。非接触型干渉顕微鏡(WYKO Bruker AXS社製)を用いて支持体のワニス状の樹脂組成物を塗布する側の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ10nmであった。JIS K 7361-1に準拠して支持体の全光線透過率を測定したところ87%であった。
【0183】
用意した支持体の離型剤を塗布した面に、ワニス状の樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で6分間乾燥して、樹脂組成物層を形成した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「MA-411」)を樹脂組成物層の表面に配置し、80℃でラミネートすることにより、支持体/樹脂組成物層/カバーフィルムの三層構成の支持体付き樹脂シートを製造した。
【0184】
<実施例2:支持体付き樹脂シート2の製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ナフトールアラルキル骨格含有、不揮発分率70%)25部の代わりに合成例2で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(メチレンジナフトール骨格含有、不揮発分率70%)25部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0185】
<実施例3:支持体付き樹脂シート3の製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ナフトールアラルキル骨格含有、不揮発分率70%)25部の代わりにカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製「CCR-1373H」、クレゾールノボラック骨格含有、酸価99mgKOH/g、不揮発分率60%、溶剤PGMEA、分子量2800)25部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0186】
<実施例4:支持体付き樹脂シート4の製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ナフトールアラルキル骨格含有、不揮発分率70%)25部の代わりにカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製「CCR-1171H」、クレゾールノボラック骨格含有、酸価99mgKOH/g、不揮発分率60%、溶剤PGMEA、分子量7500)25部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0187】
<実施例5:支持体付き樹脂シート5の製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ナフトールアラルキル骨格含有、不揮発分率70%)25部の代わりにカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製「ZCR-8001H」、ビフェニル骨格含有、酸価109mgKOH/g、不揮発分率60%、溶剤PGMEA、分子量3700)25部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0188】
<実施例6:支持体付き樹脂シート6の製造>
さらにα-アミノケトン系光重合開始剤(IGM社製「Omnirad 379EG」、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニルメチル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、分子量380.5)0.3部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0189】
<実施例7:支持体付き樹脂シート7の製造>
さらにオキシムエステル系光重合開始剤(BASF社製「Irgacure OXE-02」、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート、分子量412.5)0.01部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0190】
<実施例8:支持体付き樹脂シート8の製造>
さらにアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(IGM社製「Omnipol TP」、ポリオキシエチレングリセリンエーテルトリス[フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート]、分子量900以上)2.6部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0191】
<実施例9:支持体付き樹脂シート9の製造>
さらにチオキサントン類(IGM社製「Omnipol TX」、ポリブチレングリコールビス(9-オキソ-9H-チオキサンテニルオキシ)アセテート、分子量790)0.1部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0192】
<実施例10:支持体付き樹脂シート10の製造>
さらにベンゾフェノン類(東京化成工業社製「EAB」、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、分子量343)0.3部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0193】
<実施例11:支持体付き樹脂シート11の製造>
さらにアミノ系シランカップリング剤で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「Y50SZ-AM1」、比表面積60m/g、平均粒径0.05μm、固形分率50%)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。
【0194】
<実施例12:支持体付き樹脂シート12の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「PET-12」、厚み12μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ3%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ30nm、全光線透過率を測定したところ88%であった。
【0195】
<実施例13:支持体付き樹脂シート13の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-38」、厚み38μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ3%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ35nm、全光線透過率を測定したところ88%であった。
【0196】
<実施例14:支持体付き樹脂シート14の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーFB-40」、厚み16μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ1%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ8nm、全光線透過率を測定したところ89%であった。
【0197】
<実施例15:支持体付き樹脂シート15の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「QS63」、厚み25μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ0.5%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ7nm、全光線透過率を測定したところ90%であった。
【0198】
<比較例1:支持体付き樹脂シート16の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりに充填材練込みポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「PTH-25」、厚み25μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ25%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ260nm、全光線透過率を測定したところ85%であった。
【0199】
<比較例2:支持体付き樹脂シート17の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりにサンドブラスト処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「T60」、厚み25μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ70%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ300nm、全光線透過率を測定したところ86%であった。
【0200】
<比較例3:支持体付き樹脂シート18の製造>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)に離型剤を塗布した支持体の代わりに粗化処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)を支持体として使用した以外は、実施例1と同様にして、支持体付き樹脂シートを製造した。実施例1と同様に支持体のヘーズを測定したところ60%、算術平均粗さ(Ra)を測定したところ560nm、全光線透過率を測定したところ87%であった。
【0201】
<製造例1:クラッド用樹脂シートの製造>
合成例1で得られたカルボン酸変性エポキシアクリレート樹脂(ビスナフトールメタン骨格含有、不揮発分率70%)25部、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量330g/eq.)10部、α-アミノケトン系光重合開始剤(IGM社製「Omnipol 910」、ポリエチレングリコールジ(β-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピぺラジン)プロピオネート)1.3部、反応性希釈剤(日本化薬社製「DPHA」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)10部、アミノ系シランカップリング剤で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「180nmSX-C1」、比表面積20m/g、平均粒径0.2μm、固形分率100%)30部、メチルエチルケトン10部を混合し、高速回転ミキサーを用いてワニス状のクラッド用組成物を調製した。
【0202】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「S-25」、厚み25μm)上に離型剤(リンテック社製「AL-5」)の厚みが1μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布したものを支持体として用意した。
【0203】
用意した支持体の離型剤を塗布した面に、ワニス状のクラッド用組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で6分間乾燥して、クラッド用組成物層を形成した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「MA-411」)を樹脂組成物層の表面に配置し、80℃でラミネートすることにより、支持体/樹脂組成物層/カバーフィルムの三層構成のクラッド用樹脂シートを製造した。
【0204】
<試験例1:コアの最小細線形成幅の評価>
厚さ18μmの銅層を備えるガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して、有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による粗化処理を行って、基板を用意した。用意した基板に製造例1で製造した厚み10μmのクラッド用組成物層を備えるクラッド用樹脂シートをクラッド用組成物層が基板に接触するように80℃でラミネートし、基板上に第一クラッド用組成物層を形成した。その後、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、41段ステップタブレットの光沢残存ステップ段数が8段となる露光エネルギーで紫外線露光を行った。石英ガラスマスクは露光パターンの無いものを使用した。室温にて30分間静置した後、支持体を剥がし取った。第一クラッド用組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて1分間スプレー現像を行った。スプレー現像後、2J/cmの紫外線照射を行い、さらに170℃、1時間の加熱処理を窒素雰囲気で行うことにより、銅張積層板に下層クラッド層を形成した。
【0205】
実施例及び比較例で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える支持体付き樹脂シート1~14から、カバーフィルムを剥離した。支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、下層クラッド層上に支持体付き樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層して、下層クラッド層上に樹脂組成物層を形成した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。これにより、銅張積層板と下層クラッド層と樹脂シートをこの順に備える積層体を得た。
【0206】
樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、41段ステップタブレットの光沢残存ステップ段数が8段となる露光エネルギーで紫外線露光を行った。露光は、L/S(ライン/スペース)10μm/10μm、9μm/9μm、8μm/8μm、7μm/7μm、6μm/6μm、5μm/5μm、4μm/4μm、3μm/3μmで直線を描画させるマスクパターンを有する石英ガラスマスクを使用して行った。露光後、室温にて30分間静置した後、支持体を剥がし取った。樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて1分間スプレー現像を行った。スプレー現像後、2J/cmの紫外線照射を行い、さらに170℃、1時間の加熱処理を窒素雰囲気で行うことにより、銅張積層板と下層クラッド層とコア(樹脂組成物パターンの硬化物)とを備えるサンプルを得た。
【0207】
得られたサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し(倍率2000倍)、最小細線形成幅(形成できたコアのうち、幅が最も小さいコアの幅)を測定した。
【0208】
<試験例2:コアのレジスト欠損の評価>
試験例1で得たサンプルのコアを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、サンプル1mmあたりのレジスト欠損の数を、下記の評価基準に基づき評価した。
「〇」:レジスト欠損5個未満
「×」:レジスト欠損5個以上
【0209】
<試験例3:光伝送損失の測定>
製造例1で製造した厚み10μmのクラッド用組成物層を備えるクラッド用樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。クラッド用組成物層とシリコンウエハとが接するように、4インチのシリコンウェハ上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ及び第一クラッド用組成物層を備える中間積層体Iを得た。
【0210】
得られた中間積層体Iの第一クラッド用組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、41段ステップタブレットの光沢残存ステップ段数が8段となる露光エネルギーで紫外線露光を行った。露光後、2J/cmの紫外線照射を行った。中間積層体Iをクリーンオーブンに投入し、室温から170℃に昇温させ、170℃に到達した後に60分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、第一クラッド用組成物層を硬化させた。第一クラッド用組成物層の硬化により下層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを得た。
【0211】
実施例及び比較例で製造された厚み10μmの樹脂組成物層を備える支持体付き樹脂シート1~14から、カバーフィルムを剥離した。樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、中間積層体IIの下層クラッド層の表面に支持体付き樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。シリコンウエハ、下層クラッド層及び樹脂組成物層をこの順で備える中間積層体IIIを得た。
【0212】
中間積層体IIIの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、41段ステップタブレットの光沢残存ステップ段数が8段となる露光エネルギーで紫外線露光を行った。露光は、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクを使用して行った。この石英ガラスマスクのL/Sにおいて、ラインがコアの幅に相当し、スペースがコア間の間隔に相当する。露光後、室温にて30分間静置した後、支持体を剥がし取った。樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて1分間スプレー現像を行い、樹脂組成物パターンを形成した。スプレー現像後、2J/cmの紫外線照射を行った。その後中間積層体IIIをクリーンオーブンに投入し、室温から170℃に昇温させ、170℃に到達した後に60分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物パターンを硬化させた。
【0213】
樹脂組成物パターンの硬化によりコアが形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコアをこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0214】
製造例1で製造した厚み10μmのクラッド用組成物層を備えるクラッド用樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。クラッド用組成物層とコアとが接するように、中間積層体IVのコア上にクラッド用樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア及び第二クラッド用組成物層をこの順に備える中間積層体Vを得た。
【0215】
中間積層体Vの第二クラッド用組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、41段ステップタブレットの光沢残存ステップ段数が8段となる露光エネルギーで紫外線露光を行った。露光後、2J/cmの紫外線照射を行った。中間積層体Vをクリーンオーブンに投入し、室温から170℃に昇温させ、170℃に到達した後に60分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、第二クラッド用組成物層を硬化させた。第二クラッド用組成物層の硬化により上層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア及び上層クラッド層を備える試料積層体を得た。
【0216】
得られた試料積層体において、下層クラッド層と上層クラッド層との組み合わせがクラッド層を構成する。クラッド層と、当該クラッド層中にあるコアとを含む光導波路が得られた。また、この試料積層体において、コアは、石英ガラスマスクが有していたマスクパターンに対応して長さ1cm、2cm及び3cmの直線状のパターンを有しており、それらのパターンに含まれるコアの幅(ライン幅)及び間隔(スペース)はマスクパターンの幅(ライン幅)及び間隔(スペース)に一致していた。
【0217】
得られた試料積層体から、コアが形成された部分でコア及びその周囲のクラッド層を切り取って、光伝送路を備える試験用基板を得た。
【0218】
暗幕で覆われた除振台上に、得られた試験用基板を設置した。試験用基板の光導波路の一端(入射端)に、集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(入射ファイバ)を介して光源(1310nm光源、THORLABS社製「LPSC-1310-FC」)を接続した。また、試験用基板の光導波路の他端(出射端)に、別の集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(出射ファイバ)を介して受光器(キーサイト社製の光パワーメータ「N7742」)を接続した。以上の操作により、光源から発せられた光が光ファイバ(入射ファイバ)、集光モジュール、光導波路、集光モジュール、及び光ファイバ(出射ファイバ)をこの順に透過した後、受光器に進入する光学系を得た。以下、この光学系を試料光学系と呼ぶことがある。光源を発光させて、受光器に進入した光の強度を当該受光器で測定して、試料光学系の損失を測定した。
【0219】
試料光学系の損失から、校正用の光学系の損失を引き算して、試験用基板に含まれる光導波路の損失を求めた。
【0220】
前記の光導波路の損失の測定を、長さ1cmの光導波路、長さ2cmの光導波路、及び、長さ3cmの光導波路のそれぞれについて行った。そして、測定結果を、光導波路の長さを横軸、光導波路の損失を縦軸とした座標系にプロットして、測定結果を表す3点の座量を得た。これら3点の近似直線を最小二乗法で計算し、その近似直線の傾きとして、光導波路の単位距離当たりの光伝送損失(dB/cm)を求め、下記の評価基準に基づき評価した。
【0221】
「◎」:光伝送損失0.5dB/cm未満
「〇」:光伝送損失0.5dB/cm以上1.0dB/cm未満
「△」:光伝送損失1.0dB/cm以上2.0dB/cm未満
「×」:光伝送損失2.0dB/cm以上
【0222】
受光器を取り外し、代わりに赤外カメラ(InGaAsカメラ、100倍の対物レンズ付き)をセットした。光源を発光させて、光ファイバ(出射ファイバ)の端部から発せられる光を赤外カメラで撮影した。真円状の光の縁が一つのみ観察された場合、シングルモード「S」と判定した。また、複数の縁が観察された場合、マルチモード「M」と判定した。
【0223】
実施例及び比較例の支持体付き樹脂シートの製造に使用した原料使用量、支持体の測定結果、及び試験例の評価結果を下記表1にまとめる。
【0224】
【表1】
【0225】
上記表1に示される結果から、支持体のヘーズが10%以下であるか、或いは支持体の樹脂組成物層との接触面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下である支持体を有する支持体付き樹脂シートを用いることにより、より優れたコア形成性を有すると共に、光伝送損失が抑えられた光導波路の形成が可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0226】
10 光導波路
100 コア
110 樹脂組成物層
110’樹脂組成物パターン
111 露光部
112 非露光部
120 支持体
200 クラッド層
210 第一クラッド用組成物層
220 下層クラッド層
230 第二クラッド用組成物層
240 上層クラッド層
300 基材
400 マスク
410 透光部
420 遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9