(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】包装材料及び包装製品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240820BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240820BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 C
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2022164250
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2018026429の分割
【原出願日】2018-02-16
【審査請求日】2022-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】多久島 和弘
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 紘基
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062642(JP,A)
【文献】特開2014-004799(JP,A)
【文献】特開2017-081175(JP,A)
【文献】特開2014-046674(JP,A)
【文献】特開2017-114495(JP,A)
【文献】特開2015-036162(JP,A)
【文献】特開2011-225863(JP,A)
【文献】特開2012-096411(JP,A)
【文献】特開2017-035894(JP,A)
【文献】特開2017-177800(JP,A)
【文献】特表2013-503089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
C09D
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、印刷層、アンカーコート層、接着樹脂層及びシーラント層をこの順に含む包装材料であって、
前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来であり、
前記基材層の厚みは、6μm以上80μm以下であ
り、
前記接着樹脂層の厚みは、20μm以上50μm以下である、包装材料。
【請求項2】
前記印刷層の前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含む、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有する、請求項1または2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記基材フィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステルを含む、請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項6】
前記シーラント層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含む、請求項5に記載の包装材料。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来成分を含む包装材料及び包装材料を備えた包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、医薬品、化学品、化粧品、衛生用品、日用品その他等の種々の物品を充填包装する包装製品を構成するための包装材料として、種々の包装材料が開発され、提案されている。包装材料は、延伸プラスチックなどを含む基材層と、包装材料同士を溶着させるためのシーラント層とが少なくとも積層された積層体から構成される。通常、積層体は、印刷模様を形成するための印刷層、および、積層体の各層を接合するための接着樹脂層を更に含む。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料を構成する積層体の分野においても、エネルギーの分野と同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0004】
バイオマス由来の樹脂としては、乳酸発酵を経由して製造されるポリ乳酸(PLA)が先行して商業生産が始まったが、生分解性であることをはじめ、プラスチックとしての性能が現在の汎用プラスチックとは大きく異なるため、製品用途や製品製造方法に限界があり広く普及するには至っていない。また、PLAに対しては、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価が行われており、PLA製造時の消費エネルギーおよび汎用プラスチック代替時の等価性等について議論がなされている。
【0005】
ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(特許文献1参照)。
【0006】
また、ポリエステルは、その機械的特性、化学的安定性、耐熱性、透明性などに優れ、かつ安価であることから、各種産業用途に広く使用されている。ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合して得られ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す場合がある)は、エチレングリコールとテレフタル酸とを原料として、これらをエステル化反応させた後に重縮合反応させて製造されている。これらの原料は化石資源である石油から生産され、例えば、エチレングリコールはエチレンから、テレフタル酸はキシレンから工業的に生産されている。
【0007】
昨今、ポリエステルをバイオマス原料から製造する試みも行われている。例えば、モノマー成分であるエチレングリコールとしてバイオマス由来のものを用いたものが実用化されている。このようなバイオマス由来原料を含むポリエステル樹脂を、包装材料に適用することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2011-506628号公報
【文献】特開2012-96410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の包装材料において、積層体の印刷層は化石燃料由来の材料により形成されており、包装材料全体のバイオマス度を低下させる原因であった。そのため、基材層、印刷層、接着樹脂層、およびシーラント層を含む積層体から構成された包装材料において、包装材料全体のバイオマス度をより高めることが求められている。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、バイオマス度が高められた包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも、基材層、印刷層、アンカーコート層、接着樹脂層及びシーラント層をこの順に含む包装材料であって、前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来である、包装材料である。
【0012】
本発明による包装材料において、前記印刷層の前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0013】
本発明による包装材料において、前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有していてもよい。
【0014】
本発明による包装材料において、前記基材フィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0015】
本発明による包装材料において、前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0016】
本発明による包装材料において、前記シーラント層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0017】
本発明は、上記記載の包装材料を備える包装製品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、包装材料のバイオマス度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による包装材料の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明による包装材料の一例を示す模式断面図である。
【
図3】本発明による包装材料の一例を示す模式断面図である。
【
図4】本発明による包装材料の一例を示す模式断面図である。
【
図5】本発明による包装製品の一例を示す模式正面図である。
【
図6】本発明による包装製品の一例を示す模式正面図である。
【
図7】実施例1A~1Jの包装材料の層構成を示す図である。
【
図8】実施例2A~2Eの包装材料の層構成を示す図である。
【
図9】実施例3A~3Gの包装材料の層構成を示す図である。
【
図10】実施例4A~4Bの包装材料の層構成を示す図である。
【
図11】実施例1A~1J、2A~2E、3A~3G及び4A~4Bの包装容器のタイプの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<包装材料>
本発明による包装材料を構成する積層体は、少なくとも、基材層、印刷層、接着樹脂層及びシーラント層を含む。本発明においては、少なくとも印刷層を、バイオマス由来成分を含む材料により形成することで、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0021】
本発明においては、包装材料を構成する積層体全体で、下記で説明するバイオマス度が、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上60%以下である。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0022】
包装材料を構成する積層体は、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは30μm以上200μm以下の厚さを有するものである。
【0023】
本発明による包装材料は、上記の層以外に、金属箔、蒸着層、ガスバリア性塗布膜などのバリア層や、樹脂層等の他の層を少なくとも1層さらに有してもよい。その他の層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0024】
本発明による包装材料を構成する積層体について、図面を参照しながら説明する。本発明による包装材料10の模式断面図の例を
図1~
図4に示す。
図1~
図4において、符号10yは、包装材料10の外面を表し、符号10xは、包装材料10の内面を表す。内面10xとは、包装材料10から形成される袋などの包装製品において、包装製品に収容される内容物の側に位置する面である。また、外面10yは、内面10xの反対側に位置する面である。本願において、「この順に備える」や「順に積層された」などの記載における「順」という用語は、特に断らない限り、外面10y側から内面10x側に向かう方向における順序を表している。
【0025】
図1に示した包装材料10は、基材層20と、印刷層50と、アンカーコート層28と、接着樹脂層26と、シーラント層40とをこの順に備える。基材層20は、基材フィルム22を含む。シーラント層40は、シーラントフィルム42を含む。
【0026】
図2に示した包装材料10は、
図1の包装材料10のうち、シーラント層40の構成が異なるものである。具体的には、
図2の包装材料10は、基材層20と、印刷層50と、アンカーコート層28と、接着樹脂層26と、シーラント層40とをこの順に備える。基材層20は、基材フィルム22を含む。
【0027】
図3に示した包装材料10は、
図1の包装材料10のうち、基材層20の構成が異なるものである。具体的には、
図3の包装材料10は、基材層20と、印刷層50と、アンカーコート層28と、接着樹脂層26と、シーラント層40とをこの順に備える。基材層20は、基材フィルム22と、バリア層60とをこの順に含む。シーラント層40は、シーラントフィルム42を含む。
【0028】
図4に示した包装材料10は、
図2の包装材料10のうち、基材層20の構成が異なるものである。具体的には、
図4の包装材料10は、基材層20と、印刷層50と、アンカーコート層28と、接着樹脂層26と、シーラント層40とをこの順に備える。基材層20は、基材フィルム22と、バリア層60とをこの順に含む。
【0029】
なお、
図3及び
図4に示した包装材料10は、バリア層60を備えるものであるが、バリア層は、金属箔や蒸着層等の単層構成であってもよく、蒸着層上にガスバリア性塗布膜が形成された積層構成であってもよい。
【0030】
なお、上述した
図1乃至
図4に示す包装材料10の複数の層構成を適宜組み合わせることも可能である。
【0031】
以下、包装材料10を構成する各層について説明する。
【0032】
(基材フィルム)
基材層20の基材フィルム22は、プラスチックフィルムである。基材フィルム22は、バイオマス由来成分を含んでいてもよく、バイオマス由来成分を含んでいなくてもよい。
【0033】
基材フィルム22がバイオマス由来成分を含む場合、基材フィルム22は、下記のバイオマスポリエステルを用いて形成することができる。
【0034】
バイオマスポリエステルは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするものである。基材層は、バイオマスポリエステルに加えて、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とする化石燃料由来のポリエステルをさらに含んでもよい。基材層全体として、下記のバイオマス度を実現できればよい。本発明においては、基材層がバイオマスポリエステルを含むことで、従来に比べて化石燃料由来のポリエステルの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0035】
本発明において、「バイオマス度」とは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値で示してもよく、また、バイオマス由来成分の重量比率で示してもよい。
【0036】
放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値を「バイオマス度」として示す場合、以下のように「バイオマス度」を求めることができる。即ち、大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0037】
代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエチレンテレフタレート中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。一方、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のポリエチレンテレフタレート中のバイオマス由来の炭素の含有量は0%であり、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートのバイオマス度は0%となる。
【0038】
また、バイオマス由来成分の重量比率で「バイオマス度」を表す場合、以下のように「バイオマス度」を求めることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、上記したように、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は約30%であるため、バイオマス度は約30%となる。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。以下、特に断りのない限り、「バイオマス度」とはバイオマス由来成分の重量比率を示したものとする。
【0039】
基材フィルム22がバイオマス由来成分を含む場合、基材フィルム22中のバイオマス度は、5%以上であり、好ましくは10%以上30%以下であり、より好ましくは15%以上25%以下である。基材フィルム22中のバイオマス度が5%以上であれば、従来に比べて化石燃料由来のポリエステルの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0040】
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0041】
バイオマスポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0042】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、又はこれらの混合物がより好ましい。これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0043】
バイオマスポリエステルは、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので最も好ましい。
【0044】
バイオマスポリエステルは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができる。バイオマスポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1モル%以上20モル%以下の量を過剰に用いることが好ましい。
【0045】
バイオマスポリエステルの樹脂組成物、または、バイオマスポリエステルと化石燃料由来のポリエステルを含む樹脂組成物を用いて、例えば、Tダイ法によってフィルム化することにより基材フィルム22を形成することができる。具体的には、上記した樹脂組成物を乾燥させた後、樹脂組成物の融点Tm以上の温度~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することにより基材フィルム22を成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0046】
基材フィルム22がバイオマス由来成分を含まない材料により形成される場合、基材フィルム22として、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルムやナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルム等のポリアミドフィルム、またはポリプロピレン/エチレン-ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム、またはこれらの2以上のフィルムを積層した複合フィルムなどのプラスチックフィルムを用いることができる。なお、プラスチックフィルムには、ポリビニルアルコールなどがコーティングされていてもよい。
【0047】
基材フィルム22は、所定の方向において延伸されている延伸プラスチックフィルムであってもよい。この場合、基材フィルム22は、所定の一方向において延伸された一軸延伸フィルムであってもよく、所定の二方向において延伸された二軸延伸フィルムであってもよい。延伸プラスチックフィルムは、例えば、冷却ドラム上に押し出されたプラスチックフィルムを、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸することによって得られる。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、フィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
【0048】
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。
【0049】
基材フィルム22のフィルムの破断強度は、例えば、MD方向で5kg/mm2以上40kg/mm2以下、TD方向で5kg/mm2以上35kg/mm2以下であり、また、破断伸度は、例えば、MD方向で50%以上350%以下、TD方向で50%以上300%以下である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、例えば0.1%以上5%以下である。
【0050】
基材フィルム22がバイオマスポリエステルフィルムまたはポリエステルフィルムである場合、基材フィルム22の厚みは、好ましくは6μm以上20μm以下、より好ましくは12μm以上16μm以下である。
基材フィルム22がポリアミドフィルムである場合、基材フィルム22の厚みは、好ましくは10μm以上30μm以下、より好ましくは15μm以上25μm以下である。
基材フィルム22がポリプロピレンフィルムである場合、基材フィルム22の厚みは、好ましくは15μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下である。
基材フィルム22がバイオマスポリエチレンフィルムまたはポリエチレンフィルムである場合、基材フィルム22の厚みは、好ましくは10μm以上80μm以下、より好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0051】
基材フィルム22は、単層フィルムであってもよいし、2層以上の共押しフィルムであってもよい。
【0052】
(バリア層)
基材層と印刷層との間、および/または接着剤層とシーラント層との間には、バリア層等の上記した以外の層が設けられていてもよい。バリア層としては、金属箔、又は無機若しくは無機酸化物の蒸着層を好適に使用することができる。
【0053】
(金属箔)
バリア層60を構成する金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔が好ましい。
【0054】
(蒸着層)
バリア層60を構成する蒸着層は、無機物および/または無機酸化物からなる蒸着膜である。蒸着膜は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。包装材料10は、蒸着層を2層以上有してもよい。蒸着層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0055】
蒸着層しては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物または無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。
【0056】
ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物などの無機酸化物の蒸着膜は、透明性を有する。蒸着層が印刷層50よりも外面10y側に位置する場合、透明性を有する無機酸化物の蒸着膜が蒸着層として用いられる。
【0057】
無機酸化物の表記は、例えば、SiOX、AlOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1、5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~1、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装材料10の蒸着層としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0058】
上記のような無機物または無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する無機物または無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50Å以上2000Å以下、好ましくは、100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上600Å以下、更に、好ましくは、100Å以上450Å以下が望ましく、また、酸化アルミニウムあるいは酸化珪素の蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上500Å以下、更に、好ましくは、100Å以上300Å以下が望ましいものである。
【0059】
蒸着層は、基材フィルム22などに以下の形成方法を用いて形成することができる。蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0060】
(ガスバリア性塗布膜)
ガスバリア性塗布膜は、必要に応じて蒸着層の上に設けられる膜である。ガスバリア性塗布膜は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する。ガスバリア性塗布膜は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
【0061】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用することができる。また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用される。
【0062】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他などを使用することができる。本実施形態において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタンなどを挙げることができる。また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0063】
また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他などのアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他などを挙げることができる。なお、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0064】
上記のガスバリア性組成物を調製する際、例えば、シランカップリング剤などを添加してもよい。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。本実施形態においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、または、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、一種または二種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
(印刷層)
印刷層50は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、印刷によって形成される層である。印刷層50は、例えば、絵、写真、文字、数字、図形、記号、模様などの所望の任意の絵柄を形成する絵柄層を含むである。印刷層は、絵柄層の絵柄を際立たせるよう印刷により形成された地色層を更に含んでいてもよい。印刷層50は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含む。印刷層50は、バイオマス由来成分を含む。具体的には、印刷層50は、主剤としてのポリオールと硬化剤としてのイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む硬化物を用いて形成することができる。ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、または、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオールを用いることができる。
【0066】
〔ポリエステルポリオール〕
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコールおよび多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
【0067】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、およびサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0068】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0069】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0070】
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0071】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、およびダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0072】
〔ポリエーテルポリオール〕
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコールおよび多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
【0073】
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0074】
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0075】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミンまたはその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミンまたはその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
【0076】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0077】
〔着色剤〕
着色剤としては、特に限定されず、従来公知の顔料や染料を用いることができる。
【0078】
印刷層50がバイオマス由来成分を含む場合、印刷層50は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0079】
印刷層50の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは1g/m2以上3g/m2以下である。
【0080】
印刷層50は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有する。
【0081】
[接着樹脂層]
接着樹脂層は、任意の2層を接着する場合に設けられる層であり、例えば、基材層と中間層との間や、中間層とシーラント層との間に設けることができる。
【0082】
接着樹脂層26などの接着樹脂層は、従来公知の方法、例えば溶融押出しラミネート法やサンドラミネート法により形成することができる。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。なお、上記したポリエチレン系樹脂としては、上記したバイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用して、バイオマス度をさらに向上させることができる。
【0083】
溶融押出しラミネート法により接着樹脂層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層28を設けてもよい。アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン等からなるアンカーコート剤が挙げられるが、特に、構造中に2以上のヒドロキシル基を有するポリアクリル系又はポリメタクリル系樹脂(ポリオール)と、硬化剤としてのイソシアネート化合物との硬化物であるアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、また、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0084】
乾燥後のアンカーコート層は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.3μm以上0.5μm以下の厚さを有するものである。乾燥後の接着樹脂層は、1μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上5μm以下の厚さを有するものである。接着樹脂層は好ましくは5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下の厚さを有するものである。
【0085】
(シーラント層)
シーラント層40は、包装材料10の内面10xを構成する。シーラント層40は、バイオマス由来成分を含んでいてもよく、バイオマス由来成分を含んでいなくてもよい。バイオマス由来成分を含む材料によりシーラント層40を形成する場合、シーラント層40は、下記のバイオマスポリオレフィンを用いて形成することができる。また、バイオマス由来成分を含まない材料によりシーラント層40を形成する場合、シーラント層40は、従来公知の化石燃料由来の熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。
【0086】
バイオマスポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレン等のオレフィンを含むモノマーの重合体である。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のオレフィンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のオレフィンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0087】
例えば、バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0088】
バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0089】
バイオマスポリオレフィンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンのモノマーおよび/または化石燃料由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよいし、バイオマス由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよい。
【0090】
上記のα-オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3~20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα-オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0091】
バイオマスポリオレフィンとしては、ポリエチレンや、エチレンとα-オレフィンの共重合体を単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。特に、バイオマスポリオレフィンはポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来成分により製造することが可能となるからである。
【0092】
バイオマスポリオレフィンは、異なるバイオマス度のバイオマスポリオレフィンを2種以上含むものであってもよく、ポリオレフィン樹脂層全体として、バイオマス度が、後述する範囲内であればよい。
【0093】
バイオマスポリオレフィンは、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3以下、さらに好ましくは0.915g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。バイオマスポリオレフィンの密度が0.91g/cm3以上あれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。また、バイオマスポリオレフィンの密度が0.93g/cm3以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。
【0094】
バイオマスポリオレフィンは、0.1g/10分以上10g/10分以下、好ましくは0.2g/10分以上9g/10分以下、より好ましくは1g/10分以上8.5g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有するものである。メルトフローレートとは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。バイオマスポリオレフィンのMFRが0.1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、バイオマスポリオレフィンのMFRが10g/10分以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の機械的強度を高めることができる。
【0095】
好適に使用されるバイオマスポリオレフィンとしては、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)、Braskem社製のバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL118、密度:0.916g/cm3、MFR:1.0g/10分、バイオマス度87%)等が挙げられる。
【0096】
上記の化石燃料由来の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等が挙げられる。
【0097】
シーラント層40は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上60%以下のバイオマス度を有するものである。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0098】
シーラント層40は、単層であってもよく、多層であってもよい。シーラント層に上記したようなバイオマスポリオレフィンを使用する場合は、内層、中間層、および外層の3層を備えたシーラント層としてもよい。その場合、中間層をバイオマスポリオレフィンまたはバイオマスポリオレフィンと従来公知の化石燃料由来のポリオレフィンとし、内層および外層は、従来公知の化石燃料由来のポリオレフィンとすることが好ましい。
【0099】
シーラント層40は、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは30μm以上150μm以下の厚さを有する。
【0100】
包装材料10は、その他の層として、熱可塑性樹脂層をさらに備えていてもよい。熱可塑性樹脂層としては、シーラント層と同じ材料を用いることができる。
【0101】
<包装材料の製造方法>
次に、包装材料10を構成する積層体の製造方法の一例について説明する。
【0102】
本発明による包装材料10を構成する積層体の製造方法は特に限定されず、ドライラミネート法、溶融押出しラミネート法、サンドラミネート法等の従来公知の方法を用いてにより製造することができる。本発明においては、サンドラミネート法を用いて、溶融押出ししたポリエチレン樹脂層を介して、他の層を積層することが好ましい。また、ポリエチレン樹脂層を、溶融押出しラミネート法により、他の層上に積層してもよい。
【0103】
包装材料10には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、本発明による包装材料に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0104】
<包装製品>
包装材料10を用いることによって形成される包装製品の例としては、包装袋、蓋材、シート成形品、ラベル材料等が挙げられる。
【0105】
包装材料10を備える包装製品は、例えば、薬剤、飲食品、果汁、ジュ-ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、鍋用スープなどの液体ス-プや乾燥スープ、調味料等の各種の飲食料品、液体洗剤、シャンプー、リンス、コンディショナーなどの化粧品、衛生用品、日用品および化成品等の包装として好適に使用することができる。飲食品の具体例としては、コーヒー、コーヒー豆、コーヒー粉末、アイスクリーム、グミ、惣菜、パスタソース、カレー、ゼリー、ベーコン、チョコレート、チョコレートペーストなどを挙げることができる。日用品の具体例としては、脱脂綿、マスク、入浴剤、粉ミルクなどを挙げることができる。また、後述する実施例において例示するように、耐熱性を有するよう構成された包装材料10を備える包装製品は、レトルト処理及びボイル処理などの加熱殺菌処理が施される内容物を収容する用途において使用することができる。なお、レトルト処理とは、内容物を包装製品に充填して包装製品を密封した後、蒸気又は加熱温水を利用して包装製品を加圧状態で加熱する処理である。レトルト処理の温度は、例えば120℃以上である。ボイル処理とは、内容物を包装製品に充填して包装製品を密封した後、包装製品を大気圧下で湯煎する処理である。ボイル処理の温度は、例えば90℃以上且つ100℃以下である。
【0106】
包装製品の包装袋は、包装材料10を二つ折にするか、又は包装材料10を2枚用意し、表側の包装材料10のシーラント層40と裏側の包装材料10のシーラント層40とを対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋を製造することができる。また、表側の包装材料10と裏側の包装材料10との間に、折り返された状態の包装材料10を挿入した状態でヒートシールを行い、ガセット型の包装袋を製造することもできる。なお、包装袋を構成する包装材料10の全てが、本発明による包装材料10でなくてもよい。すなわち、包装袋を構成する包装材料10の少なくとも一部の印刷層が、バイオマス由来成分を含んでいればよく、包装袋を構成する包装材料10のその他の部分の印刷層が、化石燃料由来成分を含む包装材料であってもよい。
【0107】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0108】
図5は、包装材料10を備える包装袋70の一例を示す図である。袋70は、表面を構成する表面フィルム74、及び、裏面を構成する裏面フィルム75を備える。
【0109】
表面フィルム74及び裏面フィルム75は、内面同士がシール部によって接合されている。
図5などの包装袋70の正面図においは、シール部にハッチングが施されている。
図5に示すように、シール部は、上部71に広がる上部シール部71aと、下部72に広がる下部シール部72aと、一対の側部73の間、例えば一対の側部73のほぼ中間に配置され、上部71から下部72に向かって延びる合掌シール部77とを有している。合掌シール部77は、背シール部とも称される部分である。このように、
図5に示す包装袋70は、上部71、下部72及び合掌部において接合されるピローパウチである。
【0110】
また、
図5に示すように、包装袋70は、表面フィルム74と裏面フィルム75との間に折り込まれた包装材料を含み、上部71から下部72まで延びるとともに、互いに対向する一対のサイドガセット部78を更に備えていている。表面フィルム74と裏面フィルム75との間の包装材料は、
図5に示すように、折り返し部78aが内側に位置するように折り返されている。このような包装袋70は、包装袋70の上部がバンド等により結わえられた巾着袋として使用されてもよい。
【0111】
なお、上述の「表面フィルム」及び「裏面フィルム」という用語は、位置関係に応じて各フィルムを区画したものに過ぎず、包装袋70を製造する際の包装材料10の提供方法が、上述の用語によって限定されることはない。例えば、包装袋70は、表面フィルム74と裏面フィルム75とが連設された1枚の包装材料10を用いて製造されてもよく、1枚の表面フィルム74及び1枚の裏面フィルム75の計2枚の包装材料10を用いて製造されてもよい。
【0112】
表面フィルム74及び裏面フィルム75のうちの少なくとも1つは、バイオマス由来成分を含む印刷層を有する包装材料10によって構成されている。これにより、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0113】
図6は、包装材料10を備える包装袋70のその他の例を示す図である。
図6に示す包装袋70は、表面フィルム74と裏面フィルム75とを外縁に沿って4辺で接合することによって形成される四方シールパウチである。
【0114】
図6に示すように、シール部は、包装袋70の外縁に沿って延びる外縁シール部を有する。外縁シール部は、下部72に広がる下部シール部72a、及び、一対の側部73に沿って延びる一対の側部シール部73aを含む。なお、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)の包装袋70においては、
図6に示すように、袋70の上部71は開口部71bになっている。包装袋70に内容物を収容した後、表面フィルム74の内面と裏面フィルム75の内面とを上部71において接合することにより、上部シール部が形成されて包装袋70が封止される。
【実施例】
【0115】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0116】
[実施例1A]
基材層20の基材フィルム22として、化石燃料由来の二軸延伸されたナイロンフィルム(厚さ15μm)を準備した。続いて、PETフィルムの内面側の面に、バイオマス由来成分を含むインキを用いて印刷層50を形成した。印刷層50を形成する工程においては、まず、主剤として、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールを準備した。また、硬化剤として、化石燃料由来のイソシアネート化合物を準備した。続いて、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物との硬化物に着色剤を添加し、インキを得た。続いて、PETフィルムの内面側の面に所定のパターンでインキを塗布して、印刷層50を形成した。
【0117】
また、シーラント層40のシーラントフィルム42として、下記のように作製されるポリエチレンフィルム1を用いた。まず、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度:0%)90質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:0%)10質量部とを溶融混練して、樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して、シーラント層用の単層のポリエチレンフィルム(バイオマス度:0%)を得た。ポリエチレンフィルム1の厚みは、20μm以上70μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは30μmとした。続いて、基材フィルム22に設けられた印刷層50上に、サンドラミネート法を用いて、接着樹脂層26としてポリエチレン1を、アンカーコート剤を介して290℃の樹脂温で押し出し、シーラントフィルム42を接着樹脂層26の上に積層して、包装材料10を得た。ポリエチレン1としては、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:0%)を用いた。ポリエチレン1の厚みは、10μm以上30μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは20μmとした。
【0118】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
ONY15/印/アンカー/接PE(1)20/PE(1)30
「/」は層と層の境界を表している。左端の層が、包装材料10の外面を構成する層であり、右端の層が、包装材料10の内面を構成する層である。
「ONY」は、化石燃料由来の二軸延伸されたナイロンフィルムを意味する。「印」は、バイオマス由来の印刷層を意味する。「アンカー」は、アンカーコート層を意味する。「接PE(1)」は、上述のポリエチレン1を含む接着樹脂層を意味する。「PE(1)」は、上述のポリエチレンフィルム1を意味する。数字は、層の厚み(単位はμm)を意味する。
【0119】
続いて、包装材料10を用いて、
図5に示すピローパウチ型の包装袋70を作製した。
【0120】
[実施例1B]
印刷層50の主剤であるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能カルボン酸との反応物を用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0121】
[実施例1C]
印刷層50の主剤であるポリエステルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物を用い、印刷層50の硬化剤であるイソシアネート化合物として、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物を用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0122】
実施例1A~1Cの包装材料10の層構成などをまとめて
図7に示す。
図7の「印刷層のタイプ」の欄において、「エステル系」という記載は、印刷層において用いられた主剤がポリエステルポリオールであることを意味する。
また、「印刷層中のバイオマス由来成分」の欄において、「多官能アルコール」という記載は、印刷層において用いられた主剤及び硬化剤の成分のうち少なくとも主剤の多官能アルコールがバイオマス由来であることを意味する。同様に、「多官能カルボン酸」という記載は、印刷層において用いられた主剤及び硬化剤の成分のうち少なくとも主剤の多官能カルボン酸がバイオマス由来であることを意味する。同様に、「イソシアネート化合物」という記載は、印刷層において用いられた主剤及び硬化剤の成分のうち少なくとも硬化剤のイソシアネート化合物がバイオマス由来であることを意味する。
【0123】
なお、実施例1A~1Cにおいては、印刷層において、主剤のポリエステルポリオールで用いられる多官能アルコール又は多官能カルボン酸、若しくは硬化剤で用いられるイソシアネート化合物という3つの構成要素のうちの1つが、バイオマス由来成分である例を示したが、これに限られることはない。例えば、3つの構成要素のうちの2つがバイオマス由来成分を含んでいてもよく、3つの構成要素の全てがバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0124】
[実施例1D]
印刷層50の主剤としてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。具体的には、主剤のポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
【0125】
[実施例1E]
印刷層50の主剤であるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来成分を含む多官能イソシアネートとの反応物を用いたこと以外は、実施例1Dの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0126】
[実施例1F]
印刷層50の主剤であるポリエーテルポリオールとして、化石燃料由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用い、印刷層50の硬化剤であるイソシアネート化合物として、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物を用いたこと以外は、実施例1Dの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0127】
実施例1D~1Fの包装材料10の層構成などをまとめて
図7に示す。
図7の「印刷層のタイプ」の欄において、「エーテル系」という記載は、印刷層において用いられた主剤がポリエーテルポリオールであることを意味する。また、「印刷層中のバイオマス由来成分」の欄において、「多官能イソシアネート」という記載は、印刷層において用いられた主剤及び硬化剤の成分のうち少なくとも主剤の多官能イソシアネートがバイオマス由来であることを意味する。
【0128】
なお、実施例1D~1Fにおいては、印刷層において、主剤のポリエーテルポリオールで用いられる多官能アルコール又は多官能イソシアネート、若しくは硬化剤で用いられるイソシアネート化合物という3つの構成要素のうちの1つが、バイオマス由来成分である例を示したが、これに限られることはない。例えば、3つの構成要素のうちの2つがバイオマス由来成分を含んでいてもよく、3つの構成要素の全てがバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0129】
[実施例1G]
基材層20の基材フィルム22として、化石燃料由来の二軸延伸されたナイロンフィルムの表面に、無機酸化物の蒸着層と、蒸着層上に位置するガスバリア性塗布膜とが設けられたナイロンフィルムを用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0130】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バリアONY15/印/アンカー/接PE(1)20/PE(1)30
「バリアONY15」は、化石燃料由来の二軸延伸されたナイロンフィルムに無機酸化物の蒸着層とガスバリア性塗布膜とが設けられたナイロンフィルムを意味する。
【0131】
[実施例1H]
接着樹脂層26として、以下に説明するポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0132】
この場合、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:0%)50質量部と、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)50質量部とを溶融混練して、樹組成物(ポリエチレン2)を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、アンカーコート剤を介して290℃の樹脂温で押し出し、シーラントフィルム42を接着樹脂層26の上に積層した。
【0133】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
ONY15/印/アンカー/接PE(2)20/PE(1)30
「接PE(2)」は、上述のポリエチレン2を含む接着樹脂層を意味する。
【0134】
[実施例1I]
シーラント層40のシーラントフィルム42として、下記のように作製されるポリエチレンフィルム2を用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
ポリエチレンフィルム2の作製方法について説明する。まず、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度:0%)60質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:0%)20質量部と、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、ブラスケム社製、商品名:SLL118、密度:0.916g/cm3、MFR:1.0g/10分、バイオマス度87%)20質量部とを溶融混練して、樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して、シーラント層用の単層のポリエチレンフィルム2(バイオマス度:16%)を得た。ポリエチレンフィルム2の厚みは、実施例1Aのポリエチレンフィルム1の場合と同様に30μmとした。
【0135】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
ONY15/印/アンカー/接PE(1)20/PE(2)30
「PE(2)」は、上述のポリエチレンフィルム2を意味する。
【0136】
[実施例1J]
接着樹脂層26として、上述のポリエチレン2を用い、シーラント層40のシーラントフィルム42として、上述のポリエチレンフィルム2を用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0137】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
ONY15/印/アンカー/接PE(2)20/PE(2)30
【0138】
なお、実施例1H~1Jにおいては、基材層として、実施例1Gに示す基材層を用いてもよい。
【0139】
また、実施例1G~1Jにおいては、印刷層として、実施例1Aに示す印刷層以外にも、実施例1B~1Fに示す印刷層を用いてもよい。
【0140】
[実施例2A]
基材層20の基材フィルム22として、化石燃料由来の二軸延伸されたポリプロピレンフィルムを準備した。ポリプロピレンフィルムの厚みは、15μm以上40μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは30μmとした。続いて、ポリプロピレンフィルムの内面側の面に、バイオマス由来成分を含むインキを用いて印刷層50を形成した。印刷層50は、実施例1Aの印刷層50と同様に、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールを含むポリエステルポリオールと化石燃料由来のイソシアネート化合物との硬化物を有する。
【0141】
続いて、基材フィルム22に設けられた印刷層50上に、溶融共押出しラミネート法を用いて、接着樹脂層26としての上述のポリエチレン1と、シーラント層40としての、上述のポリエチレン1とを、アンカーコート剤を介して290℃の樹脂温で押し出し、基材フィルム22の上に、基材フィルム22側から順に、接着樹脂層26と、シーラント層40とをこの順に積層して、包装材料10を得た。接着樹脂層26及びシーラント層40としてのポリエチレン1の厚みは、それぞれ10μm以上30μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは15μmとした。
【0142】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
OPP30/印/アンカー/接PE(1)15/押出PE(1)15
「OPP」は、化石燃料由来の二軸延伸されたポリプロピレンフィルムを意味する。「押出PE(1)」は、上述のポリエチレン1を意味する。
【0143】
続いて、包装材料10を用いて、
図6に示す四方シール型の包装袋70を作製した。
【0144】
[実施例2B]
印刷層50の主剤としてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は、実施例2Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。具体的には、主剤のポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
【0145】
[実施例2C]
基材層20の基材フィルム22として、化石燃料由来の二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの表面に、無機酸化物の蒸着層と、蒸着層上に位置するガスバリア性塗布膜とが設けられたポリプロピレンフィルムを用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0146】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バリアOPP30/印/アンカー/接PE(1)15/押出PE(1)15
「バリアOPP」は、化石燃料由来の二軸延伸されたポリプロピレンフィルムに無機酸化物の蒸着層とガスバリア性塗布膜とが設けられたポリプロピレンフィルムを意味する。
【0147】
[実施例2D]
シーラント層40として、上述のポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例2Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0148】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
OPP30/印/アンカー/接PE(1)15/押出PE(2)15
「押出PE(2)」は、上述のポリエチレン2を意味する。
【0149】
[実施例2E]
接着樹脂層26として、上述のポリエチレン2を用い、シーラント層40として、上述のポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例2Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0150】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
OPP30/印/アンカー/接PE(2)15/押出PE(2)15
【0151】
なお、実施例2D~2Eにおいては、基材層として、実施例2Cに示す基材層を用いてもよい。
【0152】
また、実施例2C~2Eにおいては、印刷層として、実施例1Aに示す印刷層以外にも、実施例1B~1Fに示す印刷層を用いてもよい。
【0153】
図8に、実施例2A~2Eの包装材料10の層構成をまとめて示す。
【0154】
[実施例3A]
実施例2A~2Gの場合と同様にして、基材フィルム22、印刷層50、アンカーコート層28、接着樹脂層26及びシーラント層40が順に積層された包装材料10を作製した。基材フィルム22としては、化石燃料由来の二軸延伸されたPETフィルム(厚さ12μm)を用いた。接着樹脂層26としては、上述のポリエチレン1を用いた。接着樹脂層26に用いられるポリエチレン1の厚みは、10μm以上30μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは20μmとした。シーラント層40としては、上述のポリエチレン1を用いた。シーラント層40に用いられるポリエチレン1の厚みは、20μm以上30μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは20μmとした。印刷層50としては、実施例2Aの場合と同一のものを用いた。
【0155】
続いて、包装材料10を用いて、
図6に示す四方シール型の包装袋70を作製した。
【0156】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
PET12/印/アンカー/接PE(1)20/押出PE(1)20
「PET」は、化石燃料由来の二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを意味する。
【0157】
[実施例3B]
印刷層50の主剤としてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は、実施例4Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。具体的には、主剤のポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
【0158】
[実施例3C]
基材層20の基材フィルム22として、化石燃料由来の二軸延伸されたPETフィルムの表面に、無機酸化物の蒸着層と、蒸着層上に位置するガスバリア性塗布膜とが設けられたPETフィルムを用いたこと以外は、実施例1Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0159】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バリアPET12/印/アンカー/接PE(1)20/押出PE(1)20
「バリアPET」は、化石燃料由来の二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムに無機酸化物の蒸着層とガスバリア性塗布膜とが設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを意味する。
【0160】
[実施例3D]
基材層20の基材フィルム22として、バイオマス由来の二軸延伸されたPETフィルムを用いたこと以外は、実施例3Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0161】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET12/印/アンカー/接PE(1)20/押出PE(1)20
「バイオPET」は、バイオマス由来の二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを意味する。
【0162】
[実施例3E]
基材層20の基材フィルム22として、バイオマス由来の二軸延伸されたPETフィルムを用い、接着樹脂層26として、上述のポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例4Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0163】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET12/印/アンカー/接PE(2)20/押出PE(1)20
【0164】
[実施例3F]
基材層20の基材フィルム22として、バイオマス由来の二軸延伸されたPETフィルムを用い、シーラント層40として、上述のポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例4Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0165】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET12/印/アンカー/接PE(1)20/押出PE(2)20
【0166】
[実施例3G]
基材層20の基材フィルム22として、バイオマス由来の二軸延伸されたPETフィルムを用い、接着樹脂層26として、上述のポリエチレン2を用い、シーラント層40として、上述のポリエチレン2を用いたこと以外は、実施例4Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。
【0167】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET12/印/アンカー/接PE(2)20/押出PE(2)20
【0168】
なお、本実施例においても、実施例1B~1J及び実施例2B~2Eの場合と同様のバリエーションを採用し得る。例えば、印刷層として、実施例1Aに示す印刷層以外にも、実施例1B~1Fに示す印刷層を用いてもよい。
【0169】
図9に、実施例3A~3Gの包装材料10の層構成例をまとめて示す。
【0170】
[実施例4A]
実施例1A~1Jの場合と同様にして、基材フィルム22、印刷層50、アンカーコート層28、接着樹脂層26及びシーラントフィルム42が順に積層された包装材料10を作製した。基材フィルム22としては、化石燃料由来の二軸延伸されたポリプロピレンフィルムを用いた。ポリプロピレンフィルムの厚みは、15μm以上40μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは20μmとした。シーラント層40のシーラントフィルム42としては、化石燃料由来の無延伸のポリプロピレンフィルムを用いた。ポリプロピレンフィルムの厚みは、20μm以上50μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは25μmとした。印刷層50及び接着樹脂層26としては、実施例1Aの場合と同一のものを用いた。接着樹脂層26に用いられるポリエチレン1の厚みは、10μm以上30μm以下の範囲内で選択可能であるが、ここでは15μmとした。
【0171】
続いて、包装材料10を用いて、
図5に示すピローパウチ型の包装袋70を作製した。
【0172】
本実施例の包装材料10の層構成は、以下のように表現される。
OPP20/印/アンカー/接PE(1)15/CPP25
「CPP」は、化石燃料由来の無延伸のポリプロピレンフィルムを意味する。
【0173】
[実施例4B]
印刷層50の主剤としてポリエーテルポリオールを用いたこと以外は、実施例4Aの場合と同様にして、包装材料10を作製した。具体的には、主剤のポリエーテルポリオールとして、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物を用いた。
【0174】
なお、本実施例においても、実施例1B~1J及び実施例2B~2Eの場合と同様のバリエーションを採用し得る。例えば、印刷層として、実施例1Aに示す印刷層以外にも、実施例1B~1Fに示す印刷層を用いてもよい。
【0175】
図10に、実施例4A~4Bの包装材料10の層構成例をまとめて示す。
【0176】
また、
図11に、実施例1A~1J、2A~2E、3A~3G及び4A~4Bの包装容器のタイプの例をまとめて示す。
【0177】
(他の態様)
本発明の他の態様は、少なくとも、基材層、印刷層、接着樹脂層及びシーラント層を含む包装材料であって、前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む、包装材料である。
【0178】
本発明の他の態様による包装材料において、前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであってもよい。
【0179】
本発明の他の態様による包装材料において、前記印刷層の前記多官能アルコールまたは前記多官能カルボン酸の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0180】
本発明の他の態様による包装材料において、前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物のポリエーテルポリオールであってもよい。
【0181】
本発明の他の態様による包装材料において、前記印刷層の前記多官能アルコールまたは前記多官能イソシアネートの少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0182】
本発明の他の態様による包装材料において、前記印刷層の前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0183】
本発明の他の態様による包装材料において、前記基材層は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリオレフィンを含む基材フィルムを有していてもよい。
【0184】
本発明の他の態様による包装材料において、前記基材フィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0185】
本発明の他の態様による包装材料において、前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0186】
本発明の他の態様による包装材料において、前記シーラント層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0187】
本発明の他の態様は、上記記載の包装材料を備える包装製品である。
【符号の説明】
【0188】
10 包装材料
20 基材層
22 基材フィルム
24 印刷層
26 接着樹脂層
28 アンカーコート層
40 シーラント層
42 シーラントフィルム
50 印刷層
60 バリア層