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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240820BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022553512
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2021029050
(87)【国際公開番号】W WO2022070605
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020163515
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 一成
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 俊二
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0273333(US,A1)
【文献】特開2010-126648(JP,A)
【文献】特開2010-130761(JP,A)
【文献】特開平08-048146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
テープ部材により形成された外装部材と、を有し、
前記テープ部材は、前記テープ部材の幅方向の一部が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されており、
前記テープ部材は、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち一方の端部に設けられた粘着部と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち他方の端部に設けられた非粘着部とを有し、
前記テープ部材は、螺旋状に巻く際の進行方向の始端に前記粘着部が配置されており、
前記外装部材は第1外装部材であり、
前記第1外装部材の外周を包囲する第2外装部材を更に有し、
前記テープ部材は、前記第2外装部材の内部において、複数の前記電線の外周に螺旋状に巻き回されており、
前記第1外装部材の外面と前記第2外装部材の内面との間に設けられた摩擦係数低減部を更に有するワイヤハーネス。
【請求項2】
前記摩擦係数低減部は、前記基材の前記第2面の幅方向の一部に設けられており、
前記摩擦係数低減部は、前記基材の厚み方向において、前記粘着部と重なる部分に設けられている請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記テープ部材は、前記電線の外周に先に巻かれた前記テープ部材に対して、前記電線の外周に後に巻かれた前記テープ部材の前記粘着部の全体が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されている請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記テープ部材は、前記電線の外周に先に巻かれた前記テープ部材の幅方向のうち前記粘着部の形成された部分に対して、前記電線の外周に後に巻かれた前記テープ部材の前記粘着部が重ならないように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記粘着部の幅は、前記非粘着部の幅よりも短い請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記粘着部の幅は、前記非粘着部の幅よりも長い請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記基材の前記第2面は、前記粘着部の形成領域を示すマークを有している請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記粘着部は、第1粘着部であり、
前記テープ部材は、前記非粘着部の幅方向の中間部に設けられた第2粘着部を有している請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記粘着部は、前記基材の長さ方向に沿って連続的又は断続的に延びるように形成されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記第2外装部材は、
車両の開閉体が有する開閉体パネルに固定される第1固定部と、
前記車両のボディが有するボディパネルに固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する連結部と、を有し、
前記連結部が蛇腹構造を有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内部に配索されるワイヤハーネスでは、テープで荒巻した状態の電線束をコルゲートチューブ等の外装部材で外装することにより、電線束が他部材と干渉して損傷を受けることを抑制している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のワイヤハーネスでは、コルゲートチューブに軸方向に延びるスリット(割溝)が設けられているため、コルゲートチューブを電線束に取り付けやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-248137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のワイヤハーネスでは、外装部材であるコルゲートチューブにスリットが設けられているため、例えばスリットから電線がはみ出して損傷を受けないようにコルゲートチューブの外周にテープを巻き付ける作業が必要となっている。このため、ワイヤハーネスの組立作業性の面で改善の余地が残されている。
【0006】
本開示の目的は、組立作業性を向上できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、テープ部材により形成された外装部材と、を有し、前記テープ部材は、前記テープ部材の幅方向の一部が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されており、前記テープ部材は、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち一方の端部に設けられた粘着部と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち他方の端部に設けられた非粘着部とを有し、前記テープ部材は、螺旋状に巻く際の進行方向の始端に前記粘着部が配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のワイヤハーネスによれば、組立作業性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の車両を示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図4図4は、第1実施形態のテープ部材を示す概略斜視図である。
図5図5は、第1実施形態のテープ部材を示す概略横断面図である。
図6図6は、第1実施形態のテープ部材の巻き方を示す概略斜視図である。
図7図7は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図8図8は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図9図9は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図10図10は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図11図11は、変更例のテープ部材を示す概略横断面図である。
図12図12は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図13図13は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図14図14は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図15図15は、変更例のテープ部材を示す概略斜視図である。
図16図16は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図17図17は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図18図18は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図19図19は、変更例のテープ部材を示す概略平面図である。
図20図20は、変更例のテープ部材を示す概略横断面図である。
図21図21は、変更例のテープ部材を示す概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0011】
[1]本開示のワイヤハーネスは、電線と、テープ部材により形成された外装部材と、を有し、前記テープ部材は、前記テープ部材の幅方向の一部が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されており、前記テープ部材は、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち一方の端部に設けられた粘着部と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち他方の端部に設けられた非粘着部とを有し、前記テープ部材は、螺旋状に巻く際の進行方向の始端に前記粘着部が配置されている。
【0012】
この構成によれば、基材の第1面の幅方向両端部のうち一方の端部に粘着部が設けられ、他方の端部に非粘着部が設けられている。また、テープ部材の進行方向の始端に粘着部が配置された状態で、テープ部材の幅方向の一部が重なるように、電線の外周にテープ部材が螺旋状に巻き回される。このため、テープ部材が螺旋状に巻き回された場合に、先に巻かれたテープ部材に対して、後に巻かれたテープ部材の粘着部を好適に重ねることができる。これにより、後に巻かれたテープ部材の粘着部によって先に巻かれたテープ部材の幅方向の一部と後に巻かれたテープ部材の幅方向の一部とが接着され、電線の外周を包囲する筒体が形成される。このテープ部材により形成された筒体によって電線を保護することができる。このため、電線の外周に対してテープ部材を螺旋状に巻き回すことによって、電線の外周を保護する筒状の外装部材を形成することができる。この結果、例えばスリットを有するコルゲートチューブを電線の外周に装着した後に、そのコルゲートチューブの外周にテープを巻き付ける場合に比べて、作業工程を減らすことができ、組立作業性を向上させることができる。
【0013】
また、基材の第1面に粘着部と非粘着部とが設けられており、粘着部が幅方向の一部のみに設けられている。このため、電線の外周にテープ部材を螺旋状に巻き回した場合に、テープ部材が電線の外周に接着する領域を、基材の第1面全面に粘着部を有する場合に比べて小さくすることができる。これにより、テープ部材の巻き回しに起因してワイヤハーネスの剛性が高くなることを抑制できる。
【0014】
[2]前記テープ部材は、前記電線の外周に先に巻かれた前記テープ部材に対して、前記電線の外周に後に巻かれた前記テープ部材の前記粘着部の全体が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されていることが好ましい。この構成によれば、後に巻かれたテープ部材の粘着部の全体が先に巻かれたテープ部材に重ねられる。このため、後に巻かれたテープ部材の粘着部は、先に巻かれたテープ部材のみに接着され、電線の外周面には接着されない。したがって、外装部材の長さ方向の中間部では、テープ部材が電線の外周面に接着されない。これにより、テープ部材の巻き回しに起因してワイヤハーネスの剛性が高くなることを好適に抑制できる。
【0015】
[3]前記テープ部材は、前記電線の外周に先に巻かれた前記テープ部材の幅方向のうち前記粘着部の形成された部分に対して、前記電線の外周に後に巻かれた前記テープ部材の前記粘着部が重ならないように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されていることが好ましい。この構成によれば、先に巻かれたテープ部材の粘着部と後に巻かれたテープ部材の粘着部とが電線の径方向において重なることを好適に抑制できる。このため、電線の径方向において、接着部分が2重になることを抑制できる。これにより、テープ部材の巻き回しに起因してワイヤハーネスの剛性が高くなることを好適に抑制できる。
【0016】
[4]前記粘着部の幅は、前記非粘着部の幅よりも短くてもよい。この構成によれば、基材の第1面の幅方向における非粘着部の割合が大きくなり、基材の第1面の幅方向における粘着部の割合が小さくなる。このため、テープ部材の所定長さ当たりの粘着部の量を減らすことができる。これにより、テープ部材の重量を軽くすることができ、外装部材の重量を軽くすることができる。
【0017】
[5]前記粘着部の幅は、前記非粘着部の幅よりも長くてもよい。この構成によれば、基材の第1面の幅方向における非粘着部の割合が小さくなり、基材の第1面の幅方向における粘着部の割合が大きくなる。これにより、例えば先に巻かれたテープ部材に対して、後から巻かれたテープ部材の粘着部が重なる幅を大きくできる。このため、後から巻かれたテープ部材の粘着部によってテープ部材同士が接着されて2枚重ねになった部分を大きくでき、その2枚重ねのテープ部材によって電線の外周が保護される領域を大きくすることができる。この結果、外装部材による保護性能を向上させることができる。
【0018】
[6]前記基材の前記第2面は、前記粘着部の形成領域を示すマークを有していることが好ましい。この構成によれば、粘着部の形成された第1面とは反対側の基材の第2面に形成されたマークを視認することにより、基材の第2面側から粘着部の形成領域を認識することができる。このため、基材の第1面を電線の外周面に向けた状態でテープ部材を電線の外周に巻き回す際に、表面側に位置する基材の第2面のマークを視認することにより、テープ部材の重なり幅を好適に調整することができる。例えば、後に巻かれるテープ部材の粘着部が電線の外周面に接触しないように、テープ部材の重なり幅を好適に調整することができる。
【0019】
[7]前記粘着部は、第1粘着部であり、前記テープ部材は、前記非粘着部の幅方向の中間部に設けられた第2粘着部を有していることが好ましい。この構成によれば、例えばテープ部材の巻き終わり部分において、第2粘着部を電線の外周面に接着させることができる。これにより、テープ部材の進行方向の終端、つまり外装部材の長さ方向の一端部において、テープ部材がめくれ上がることを抑制できる。
【0020】
[8]前記粘着部は、前記基材の長さ方向に沿って連続的又は断続的に延びるように形成されていることが好ましい。この構成によれば、基材の長さ方向に沿って延びる粘着部により、先に巻かれたテープ部材と後に巻かれたテープ部材とを好適に接着させることができる。これにより、外装部材の筒状態を好適に維持することができる。
【0021】
[9]前記外装部材は第1外装部材であり、前記第1外装部材の外周を包囲する第2外装部材を更に有し、前記テープ部材は、前記第2外装部材の内部において、複数の前記電線の外周に螺旋状に巻き回されていることが好ましい。この構成によれば、第2外装部材の内部において、複数の電線の外周にテープ部材が螺旋状に巻き回される。このテープ部材によって、複数の電線が1つにまとめられる。これにより、第2外装部材の内部において、複数の電線がばらけることを抑制できる。この結果、電線のばらけに起因して電線と第2外装部材の内面とが干渉することを抑制でき、その干渉に起因して第2外装部材が損傷することを抑制できる。
【0022】
[10]前記第2外装部材は、車両の開閉体が有する開閉体パネルに固定される第1固定部と、前記車両のボディが有するボディパネルに固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する連結部と、を有し、前記連結部が蛇腹構造を有することが好ましい。この構成では、開閉体の開閉動作に対応して、開閉体パネルがボディパネルに近づく方向又はボディパネルから離れる方向に移動する。この開閉体パネルの移動に対応して第2外装部材が屈曲、伸縮するように変形する。このとき、連結部が可撓性に優れた蛇腹構造を有するため、開閉体パネルの移動に対応して第2外装部材を好適に変形させることができる。ここで、開閉体の開閉動作に伴って開閉体パネルが移動すると、第2外装部材の内部に収容された複数の電線は、第2外装部材の変形に追従して屈曲、伸縮するように変形する。このとき、第2外装部材の内部では、基材の第1面に部分的に粘着部を有するテープ部材が、複数の電線の外周に螺旋状に巻き回される。このため、基材の第1面全面に粘着部を有するテープ部材が巻き回される場合に比べて、テープ部材の巻き回しに起因して複数の電線の剛性が高くなることを抑制できる。これにより、第2外装部材の変形に追従して複数の電線を好適に変形させることができる。この結果、複数の電線が第2外装部材の内面に強く干渉することを抑制でき、第2外装部材が損傷することを好適に抑制できる。
【0023】
[11]前記第1外装部材の外面と前記第2外装部材の内面との間に設けられた摩擦係数低減部を更に有することが好ましい。この構成によれば、摩擦係数低減部を設けることにより、第1外装部材と第2外装部材との間における摩擦係数を低減できる。このため、第1外装部材との接触に起因して第2外装部材が摩耗することを好適に抑制でき、第2外装部材に破れ等の損傷が発生することを好適に抑制できる。
【0024】
[12]前記摩擦係数低減部は、前記基材の前記第2面の幅方向の一部に設けられており、前記摩擦係数低減部は、前記基材の厚み方向において、前記粘着部と重なる部分に設けられていることが好ましい。この構成によれば、摩擦係数低減部が基材の第2面の幅方向の一部に設けられ、摩擦係数低減部が基材の厚み方向において粘着部と重なるように設けられる。このため、複数の電線の外周にテープ部材を螺旋状に巻き回す際に、後に巻かれたテープ部材の粘着部が先に巻かれたテープ部材の摩擦係数低減部に重なることを抑制できる。これにより、粘着部による接着性能が摩擦係数低減部によって阻害されることを抑制できる。換言すると、テープ部材の第2面に摩擦係数低減部を設ける場合であっても、後に巻かれたテープ部材の粘着部によって、後に巻かれたテープ部材を先に巻かれたテープ部材に好適に接着させることができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖った又は丸い角を有する多角形が含まれる。また、本明細書の説明で使用される「環状」という用語は、ループを形成する任意の構造、または端部のない連続形状、並びに、C字状のようなギャップを有する、一般的にループ形状の構造を指すことがある。なお、「環状」の形状には、円形、楕円形、及び、尖った又は丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
(第1実施形態)
以下、ワイヤハーネスの第1実施形態について、図面に従って説明する。
【0028】
(車両1の構成)
図1に示すように、車両1は、複数の電気機器2,3と、複数の電気機器2,3を電気的に接続するワイヤハーネス10とを有している。電気機器2,3としては、例えば、バッテリ、インバータ、モータ、エアーコンディショナー装置、ウィンカー装置、エアバッグ装置等を挙げることができる。
【0029】
(ワイヤハーネス10の構成)
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の電線20を有する電線群(電線束)30と、電線群30の外周を包囲する外装部材40とを有している。電線群30(各電線20)は、長尺状に形成されている。電線群30は、例えば、ワイヤハーネス10の配索経路に応じて、二次元状又は三次元状に曲げられるように形成されている。なお、電線群30は、例えば、ワイヤハーネス10の長手方向の途中で分岐していてもよい。
【0030】
(電線20の構成)
各電線20は、例えば、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する被覆電線である。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。柱状導体としては、例えば、単芯線やバスバなどを挙げることができる。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0031】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂を用いることができる。絶縁被覆22の材料としては、1種の材料を単独で、又は2種以上の材料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
(外装部材40の構成)
外装部材40は、例えば、電線群30の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材40は、例えば、電線群30を他部材、飛翔物や水滴から保護する。外装部材40は、例えば、電線群30(各電線20)の長手方向の少なくとも一部に設けられている。外装部材40は、例えば、電線群30の外周を周方向全周にわたって覆うように設けられている。
【0033】
図2及び図3に示すように、外装部材40は、例えば、1本のテープ部材50が螺旋状に巻き回されて形成されている。テープ部材50は、例えば、電線群30の長手方向に沿って電線群30の外周に螺旋状に巻き回されている。テープ部材50は、テープ部材50の幅方向の一部が重なるように、電線群30の外周に螺旋状に巻き回されている。
【0034】
(テープ部材50の構成)
次に、電線群30の外周に巻き回される前のテープ部材50について説明する。
【0035】
図4及び図5に示すように、テープ部材50は、基材51を有している。基材51は、第1面51Aと第2面51Bとを有している。基材51は、長尺の帯状に形成されている。基材51は、基材51の長さ方向と直交する幅方向(図5の左右方向)に延びる幅D1を有している。基材51の幅D1は、例えば、25mm~100mm程度とすることができる。基材51は、基材51の長さ方向及び幅方向の双方に直交する厚み方向に延びる所定の厚みを有している。基材51の厚みは、例えば、0.1mm~0.3mm程度とすることができる。基材51の材料としては、例えば、樹脂材料や紙を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂又はポリ塩化ビニルなどを用いることができる。
【0036】
テープ部材50は、基材51の第1面51Aに形成された粘着部52と、基材51の第1面51Aに形成された非粘着部53とを有している。
【0037】
(粘着部52の構成)
粘着部52は、基材51の第1面51Aの幅方向の一部に設けられている。本実施形態の粘着部52は、第1面51Aの幅方向両端部のうちの片方の端部に設けられている。粘着部52は、基材51の幅方向に延びる幅D2を有している。粘着部52の幅D2は、例えば、基材51の幅D1の20%~80%程度の幅を有している。本実施形態の粘着部52の幅D2は、基材51の幅D1の半分の幅を有している。粘着部52は、例えば、第1面51Aの幅方向の片方の端部から第1面51Aの幅方向の中心まで延びる幅D2を有している。粘着部52は、例えば、基材51の長さ方向に沿って延びるように形成されている。粘着部52は、例えば、基材51の長さ方向に沿って連続して延びている。粘着部52は、所定の厚みを有している。粘着部52の厚みは、例えば、0.01mm~0.1mm程度とすることができる。粘着部52は、基材51の第1面51Aに接着されている。粘着部52は、例えば、基材51の第1面51Aに粘着剤が塗布されて形成されている。粘着部52としては、例えば、アクリル樹脂系粘着剤やブチルゴム系粘着剤などを用いることができる。
【0038】
(非粘着部53の構成)
非粘着部53は、第1面51Aの幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部に設けられている。本実施形態の非粘着部53は、第1面51Aの幅方向両端部のうち、粘着部52の形成されていない方の端部に形成されている。すなわち、本実施形態のテープ部材50では、第1面51Aの幅方向両端部のうち一方の端部に粘着部52が設けられ、第1面51Aの幅方向両端部のうち他方の端部に非粘着部53が設けられている。非粘着部53は、基材51の幅方向に延びる幅D3を有している。非粘着部53の幅D3は、例えば、基材51の幅D1の20%~80%程度の幅を有している。本実施形態の非粘着部53の幅D3は、基材51の幅D1の半分の幅を有している。非粘着部53の幅は、例えば、第1面51Aの幅方向の片方の端部から第1面51Aの幅方向の中心まで延びる幅D3を有している。すなわち、本実施形態のテープ部材50では、基材51の第1面51Aの幅方向において、その幅方向の半分に粘着部52が設けられ、残り半分に非粘着部53が設けられている。非粘着部53は、例えば、基材51の長さ方向に沿って延びるように形成されている。非粘着部53は、例えば、基材51の長さ方向に沿って連続して延びている。非粘着部53は、例えば、基材51の第1面51Aに粘着部52を形成せずに、基材51の第1面51Aを粘着部52から露出させることで形成されている。本実施形態のテープ部材50では、基材51を例えば押出成形工程で形成した後、その基材51の第1面51Aに対して塗布ローラで粘着剤を塗布する際に、第1面51Aのうち粘着部52が形成される部分のみに粘着剤を塗布することにより、第1面51Aに粘着部52及び非粘着部53が形成されている。
【0039】
図4に示すように、テープ部材50は、例えば、円筒状をなす芯部材60の外周に対して、粘着部52の形成された第1面51Aが内側を向くように幾重にも巻き回されて構成されている。これにより、テープ部材50は、芯部材60の外周面に沿って渦巻状(コイル状)の構造体に形成されている。このとき、粘着部52は、例えば、芯部材60の外周に巻回された後にその形状を維持可能であり、且つ、電線群30(図2参照)に巻き回す際に、基材51を内側の基材51から剥離させて巻き出し可能な粘着力を有している。
【0040】
図6に示すように、電線群30の外周面にテープ部材50を巻き回す際には、渦巻状の構造体からテープ部材50が引き出され、その引き出されたテープ部材50が電線群30の外周に螺旋状に巻き回される。テープ部材50は、電線群30の外周面に対して、電線群30の長手方向に沿う進行方向P1(図中矢印参照)に沿って螺旋状に巻き回される。すなわち、テープ部材50は、電線群30の外周面に対して、進行方向P1の始端側(図中左側)から進行方向P1の終端側(図中右側)に向かって進むように螺旋状に巻き回される。このとき、テープ部材50は、粘着部52の形成された第1面51Aを電線群30の外周面に向けた状態、つまり第1面51Aを電線群30の径方向内側に向けた状態で、電線群30の外周に対して巻き回される。ここで、テープ部材50は、テープ部材50の幅方向の一部が重なるように、複数の電線20の外周に螺旋状に巻き回されている。すなわち、テープ部材50は、オーバーラップ巻きの構造を有している。ここで、オーバーラップ巻きの構造とは、テープ部材50の幅方向における所定部分同士が重なるようにテープ部材50を螺旋状に巻き回した構造である。オーバーラップ巻きの構造としては、例えば、ハーフラップ巻きの構造を採用することができる。ここで、ハーフラップ巻きの構造とは、テープ部材50の幅方向において略半分となる部分同士が重なるようにテープ部材50を螺旋状に巻き回した構造である。本実施形態のテープ部材50は、ハーフラップ巻きの構造を有している。以下に、テープ部材50のハーフラップ巻きの構造について詳述する。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のテープ部材50は、先に巻かれたテープ部材50の第2面51Bの幅方向の半分に対して、後に巻かれるテープ部材50の幅方向の半分を重ねて巻き回される。ここで、テープ部材50は、基材51の第1面51Aを電線群30の外周面に向けつつ、粘着部52がテープ部材50を螺旋状に巻く際の進行方向P1の始端側(図中左側)に位置し、非粘着部53が進行方向P1の終端側(図中右側)に位置するようにした状態で、電線群30の外周に巻き回される。詳述すると、巻き始め部分のテープ部材50、つまり電線群30の外周に最初に巻き回される一巻き目のテープ部材50は、そのテープ部材50の幅方向において、粘着部52が進行方向P1の始端(図中左端)に位置するように、電線群30の外周面に巻き付けられている。換言すると、一巻き目のテープ部材50は、そのテープ部材50の幅方向において、非粘着部53が進行方向P1の終端側(図中右側)に位置するようにした状態で、電線群30の外周面に巻き付けられている。このとき、一巻き目のテープ部材50のうち粘着部52を有する部分のみが電線群30の外周面に接着されており、非粘着部53を有する部分は電線群30の外周面に接着されていない。ここで、本実施形態の粘着部52は、テープ部材50の幅方向の半分の幅D2を有している。このため、電線群30の外周面に巻き付けられる一巻き目のテープ部材50において、その幅方向のうちの半分のみが電線群30の外周面に接着されている。
【0042】
巻き始め部分のテープ部材50に続いて巻き回されるテープ部材50、つまり二巻き目のテープ部材50は、幅方向のうち進行方向P1の始端側(図中左側)の半分を、一巻き目のテープ部材50の幅方向のうち進行方向P1の終端側(図中右側)の半分に重ねて巻き回されている。すなわち、テープ部材50は、二巻き目のテープ部材50における粘着部52が一巻き目のテープ部材50における非粘着部53に対応する第2面51Bに重なるように巻き回されている。換言すると、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、一巻き目のテープ部材50における非粘着部53と電線群30の径方向において重なっている。また、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、例えば、電線群30の外周面に直接接触しないように巻き回されている。すなわち、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、一巻き目のテープ部材50のみと重なっている。換言すると、テープ部材50は、一巻き目のテープ部材50に対して、二巻き目のテープ部材50における粘着部52の全体が重なるように、電線群30の外周に螺旋状に巻き回されている。また、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、例えば、一巻き目のテープ部材50における粘着部52と電線群30の径方向において重ならないように巻き回されている。換言すると、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、一巻き目のテープ部材50の幅方向のうち非粘着部53のみと電線群30の径方向において重なっている。すなわち、二巻き目のテープ部材50における粘着部52は、一巻き目のテープ部材50の幅方向のうち非粘着部53の形成された部分の第2面51Bのみに接着されている。一方、二巻き目のテープ部材50における非粘着部53は、電線群30の外周面に対して巻き回されている。二巻き目のテープ部材50における非粘着部53は、例えば、一巻き目のテープ部材50に重ならないように巻き回されている。換言すると、二巻き目のテープ部材50における非粘着部53は、一巻き目のテープ部材50から露出された電線群30の外周面のみを被覆するように巻き回されている。但し、二巻き目のテープ部材50における非粘着部53は、電線群30の外周面に接着されていない。このように、二巻き目のテープ部材50は、一巻き目のテープ部材50の第2面51Bのみと接着されており、電線群30の外周面に接着されていない。
【0043】
本実施形態の二巻き目のテープ部材50は、先に巻かれた一巻き目のテープ部材50の幅方向のうち非粘着部53の形成された部分の第2面51Bに対して、二巻き目の粘着部52の全体が重なるように巻き付けられている。なお、三巻き目以降のテープ部材50も同様に、先に巻かれたテープ部材50の幅方向のうち非粘着部53の形成された部分の第2面51Bに対して、後に巻かれる粘着部52の全体が重なるように巻き付けられている。このため、三巻き目以降のテープ部材50は、二巻き目のテープ部材50と同様に、先に巻かれたテープ部材50の第2面51Bのみと接着されており、電線群30の外周面に接着されていない。ここで、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52により、先に巻かれたテープ部材50と後に巻かれたテープ部材50とが接着されることによって、螺旋状に巻き回されたテープ部材50が筒状態に維持される。これにより、電線群30の外周を包囲する筒状の外装部材40が形成される。
【0044】
巻き終わり部分のテープ部材50は、例えば、粘着部52の一部が電線群30の外周面に接着されるように巻き付けられている。例えば、巻き終わり部分のテープ部材50は、先に巻かれたテープ部材50に対して巻き終わり部分の粘着部52の一部が重なるように、且つ、先に巻かれたテープ部材50から露出された電線群30の外周面に対して巻き終わり部分の粘着部52の残りの部分が接着されるように、巻き付けられている。これにより、巻き終わり部分のテープ部材50を電線群30に接着させることができ、外装部材40を電線群30に固定することができる。なお、テープ部材50の巻き終わり部分、つまり外装部材40の長さ方向の端部を電線群30の外周面に固定する固定部材を設けるようにしてもよい。同様に、テープ部材50の巻き始め部分、つまり外装部材40の長さ方向の端部を電線群30の外周面に固定する固定部材を設けるようにしてもよい。固定部材としては、例えば、テープ部材50とは別のテープ部材や結束バンドなどを挙げることができる。
【0045】
以上説明したテープ部材50により形成された外装部材40は、電線群30の外周面を周方向全周にわたって被覆している。但し、本実施形態の外装部材40の長さ方向の中間部では、テープ部材50が電線群30の外周面に接着されていない。
【0046】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0047】
(1-1)ワイヤハーネス10は、電線20と、テープ部材50により形成された外装部材40とを有する。テープ部材50は、テープ部材50の幅方向の一部が重なるように、電線20の外周に螺旋状に巻き回されている。テープ部材50は、第1面51Aと第2面51Bとを有する基材51と、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち一方の端部に設けられた粘着部52と、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち他方の端部に設けられた非粘着部53とを有する。テープ部材50は、螺旋状に巻く際の進行方向P1の始端に粘着部52が配置されている。
【0048】
この構成によれば、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち一方の端部に粘着部52が設けられ、他方の端部に非粘着部53が設けられている。また、テープ部材50の進行方向P1の始端に粘着部52が配置された状態で、テープ部材50の幅方向の一部が重なるように、電線20の外周にテープ部材50が螺旋状に巻き回される。このため、テープ部材50が螺旋状に巻き回された場合に、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52を好適に重ねることができる。これにより、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52によって先に巻かれたテープ部材50の幅方向の一部と後に巻かれたテープ部材50の幅方向の一部とが接着され、電線20の外周を包囲する筒体が形成される。このテープ部材50により形成された筒体によって電線20を保護することができる。このため、電線20の外周に対してテープ部材50を螺旋状に巻き回すことによって、電線20の外周を保護する筒状の外装部材40を形成することができる。この結果、例えばスリットを有するコルゲートチューブを電線20の外周に装着した後に、そのコルゲートチューブの外周にテープを巻き付ける場合に比べて、作業工程を減らすことができ、組立作業性を向上させることができる。また、電線20の外周に対してテープ部材50を螺旋状に巻き回すことにより外装部材40を形成できるため、電線20にコネクタ等の大型部品を取り付けた後であっても、電線20に対して外装部材40を容易に取り付けることができる。
【0049】
(1-2)基材51の第1面51Aに粘着部52と非粘着部53とが設けられており、粘着部52が幅方向の一部のみに設けられている。このため、電線20の外周にテープ部材50を螺旋状に巻き回した場合に、テープ部材50が電線20の外周に接着する領域を、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有する場合に比べて小さくすることができる。これにより、テープ部材50の巻き回しに起因してワイヤハーネス10の剛性が高くなることを抑制できるため、ワイヤハーネス10の柔軟性を向上させることができる。
【0050】
(1-3)また、粘着部52が基材51の幅方向の一部のみに設けられるため、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有する場合に比べて、テープ部材50の重量を軽くでき、テープ部材50の材料費を低減できる。これにより、ワイヤハーネス10の重量を軽くでき、ワイヤハーネス10の製造コストを低減できる。
【0051】
(1-4)テープ部材50の進行方向P1の始端に粘着部52を配置したため、その粘着部52を対象物(本実施形態では、電線20)に接着させることができる。これにより、テープ部材50の進行方向P1の始端、つまり外装部材40の一端部において、テープ部材50がめくれ上がることを抑制できる。
【0052】
(1-5)後に巻かれたテープ部材50の粘着部52により、先に巻かれたテープ部材50と後に巻かれたテープ部材50とが接着される。このため、先に巻かれたテープ部材50と後に巻かれたテープ部材50の粘着部52との重なり部分において、テープ部材50同士が接着した状態でテープ部材50を2枚重ねにできる。これら2枚重ねになったテープ部材50によって電線20を好適に保護することができる。例えば、2枚重ねのテープ部材50により、電線20に他の部材が接触することを抑制できるため、他の部材との擦れ合い等によって電線20が摩耗することを抑制できる。
【0053】
(1-6)さらに、テープ部材50の基材51の厚みを調整することにより、外装部材40における電線20の保護性能を調整することができる。
【0054】
(1-7)テープ部材50は、電線20の外周に先に巻かれたテープ部材50に対して、電線20の外周に後に巻かれたテープ部材50の粘着部52の全体が重なるように、電線20の外周に螺旋状に巻き回されている。この構成によれば、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52が先に巻かれたテープ部材50のみに重なる。すなわち、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52は、先に巻かれたテープ部材50のみに接着されるため、電線20の外周面には接着されない。このため、外装部材40の長さ方向の中間部では、テープ部材50が電線20の外周面に接着されない。これにより、テープ部材50の巻き回しに起因してワイヤハーネス10の剛性が高くなることを好適に抑制できる。
【0055】
(1-8)テープ部材50は、先に巻かれたテープ部材50の幅方向のうち粘着部52の形成された部分に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52が重ならないように、電線20の外周に螺旋状に巻き回されている。この構成によれば、先に巻かれたテープ部材50の粘着部52と後に巻かれたテープ部材50の粘着部52とが電線20の径方向において重なることを好適に抑制できる。このため、電線20の径方向において、接着部分が2重に形成されることを抑制できる。これにより、テープ部材50の巻き回しに起因してワイヤハーネス10の剛性が高くなることを好適に抑制できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、図7図9に従って、ワイヤハーネスの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して、説明の一部又は全部を割愛する場合がある。
【0057】
(ワイヤハーネス10Aの構成)
図7及び図8に示すように、ワイヤハーネス10Aは、複数の電線20を有する電線群30と、電線群30の外周を包囲する外装部材40と、外装部材40の外周を包囲する筒状の外装部材80とを有している。
【0058】
ワイヤハーネス10Aは、例えば、車両1の開閉体90と、車両1のボディ100との間に配索されている。開閉体90としては、例えば、車両1のドアやバックドアなどを挙げることができる。開閉体90は、貫通孔92を有する開閉体パネル91を有している。開閉体パネル91としては、例えば、ドアパネルを挙げることができる。貫通孔92は、開閉体パネル91を厚み方向に貫通するように形成されており、電線群30が貫通可能に形成されている。ボディ100は、貫通孔102を有するボディパネル101を有している。ボディパネル101は、例えば、防水の必要がある防水領域(例えば、車室外)と防水の必要が無い非防水領域(例えば、車室内)との間に位置するものである。すなわち、ボディパネル101は、防水領域と非防水領域とを仕切るように設けられている。貫通孔102は、ボディパネル101を厚み方向に貫通するように形成されており、電線群30が貫通可能に形成されている。
【0059】
例えば、ボディパネル101は車両1の本体に対して不動の部分であるのに対し、開閉体パネル91はボディパネル101に近づく方向又はボディパネル101から離れる方向に移動可能な部分である。本実施形態では、開閉体パネル91がボディパネル101に最も近づくことで開閉体90(例えば、車両1のドア)が閉じた状態を閉状態(図7参照)と称する。また、開閉体パネル91がボディパネル101から離れることで開閉体90が開いた状態を開状態(図8参照)と称する。開閉体パネル91がボディパネル101に対して開閉されると、ワイヤハーネス10Aはその開閉動作に伴って屈曲、伸縮するように変形する。
【0060】
(外装部材80の構成)
外装部材80は、電線群30を包囲する外装部材40の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状に形成されている。外装部材80は、例えば、長尺の筒状に形成されている。本実施形態の外装部材80は、円筒状に形成されている。外装部材80は、開閉体パネル91に固定される固定部81と、ボディパネル101に固定される固定部82と、固定部81と固定部82とを連結する連結部83とを有している。外装部材80は、外装部材80の軸方向(長さ方向)に沿って固定部81と連結部83と固定部82とが連続して一体に形成された単一部品である。外装部材80の軸方向は、外装部材80の中心軸が延びる方向である。固定部81,82は、例えば、連結部83の外周よりも外装部材80の径方向外側に張り出して形成されている。固定部81,82は、例えば、連結部83の周方向全周にわたって連結部83の外周よりも径方向外側に突出するように形成されている。固定部81,82の外径は、例えば、連結部83の外径よりも大きく形成されている。
【0061】
外装部材80の材料としては、例えば、比較的硬度の高い弾性材料を用いることができる。弾性材料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴムやエラストマを用いることができる。本実施形態の外装部材80は、ゴム製のグロメットである。外装部材80は、例えば、防水領域から非防水領域に水が浸入しないように貫通孔102において防水する機能を有している。
【0062】
(固定部81の構成)
固定部81は、開閉体パネル91の貫通孔92に固定される。固定部81は、例えば、貫通孔92の内側に嵌合される。固定部81は、例えば、貫通孔92の内側に嵌合された状態において、開閉体パネル91に弾性的に密着する構成になっている。
【0063】
固定部81は、固定部81の外面に設けられた溝81Xと、溝81Xと連結部83との間に設けられたフランジ部81Aと、固定部81の軸方向においてフランジ部81Aとは反対側に設けられたフランジ部81Bとを有している。溝81Xは、例えば、外装部材80の中心軸を中心とする環状に形成されている。溝81Xは、例えば、固定部81の周方向全周にわたって連続して形成されている。溝81Xの外径は、例えば、貫通孔92の内径と同一である。ここで、本明細書において「同一」とは、完全に同一の場合の他、製造公差や組み付け公差の範囲内において比較対象同士に多少の相違がある場合も含む。
【0064】
フランジ部81Bの外面は、溝81X側からその溝81Xから離れるに連れて外径が小さくなるように傾斜した傾斜面81Cを有している。この傾斜面81Cを設けたことにより、貫通孔92に固定部81を嵌め込みやすくなっている。
【0065】
溝81Xには、貫通孔92の縁部を構成する開閉体パネル91が嵌め込まれる。このとき、ボディパネル101に向く開閉体パネル91の面にフランジ部81Aが密着するとともに、ボディパネル101とは反対側に向く開閉体パネル91の面にフランジ部81Bが密着する。これにより、フランジ部81Aとフランジ部81Bとの間に開閉体パネル91が弾性的に挟持される。この結果、固定部81が開閉体パネル91に固定される。
【0066】
(固定部82の構成)
固定部82は、ボディパネル101の貫通孔102に固定される。固定部82は、例えば、貫通孔102の内側に嵌合される。固定部82は、例えば、貫通孔102の内側に嵌合された状態において、ボディパネル101に弾性的に密着する構成になっている。
【0067】
固定部82は、固定部82の外面に設けられた溝82Xと、溝82Xと連結部83との間に設けられたフランジ部82Aと、固定部82の軸方向においてフランジ部82Aとは反対側に設けられたフランジ部82Bとを有している。溝82Xは、例えば、外装部材80の中心軸を中心とする環状に形成されている。溝82Xは、例えば、固定部82の周方向全周にわたって連続して形成されている。溝82Xの外径は、例えば、貫通孔102の内径と同一である。
【0068】
フランジ部82Aの外面は、溝82X側から連結部83に近づくに連れて外径が小さくなるように傾斜した傾斜面82Cを有している。この傾斜面82Cを設けたことにより、貫通孔102に固定部82を嵌め込みやすくなっている。
【0069】
溝82Xには、貫通孔102の縁部を構成するボディパネル101が嵌め込まれる。このとき、開閉体パネル91に向くボディパネル101の面にフランジ部82Aが密着するとともに、開閉体パネル91とは反対側に向くボディパネル101の面にフランジ部82Bが密着する。これにより、フランジ部82Aとフランジ部82Bとの間にボディパネル101が弾性的に挟持される。この結果、固定部82がボディパネル101に固定される。
【0070】
(連結部83の構成)
連結部83は、外装部材80の軸方向において、固定部81と固定部82との間に設けられている。連結部83の軸方向の一端部が固定部81に接続されており、連結部83の軸方向の他端部が固定部82に接続されている。連結部83は、例えば、連結部83の軸方向に沿って環状凸部85と環状凹部86とが交互に連続して設けられた蛇腹構造84を有している。蛇腹構造84は、例えば、連結部83の軸方向の全長にわたって設けられている。なお、蛇腹構造84は、連結部83の軸方向の一部のみに設けられていてもよい。連結部83は、例えば、電線群30よりも可撓性に優れている。連結部83は、例えば、開閉体パネル91の開閉動作に対応して屈曲、伸縮するように変形する。図7に示すように、開閉体パネル91が閉状態である場合の連結部83は、例えば、2つの屈曲部を有するクランク状に屈曲した形状になる。図8に示すように、開閉体パネル91が開状態である場合の連結部83は、例えば、開閉体パネル91とボディパネル101との間で真っ直ぐに伸長した形状になる。
【0071】
(電線群30の構成)
電線群30は、外装部材80を貫通している。電線群30の長手方向の一部は、その外周が外装部材40により被覆された状態で、外装部材80の内部に収容されている。
【0072】
(外装部材40の構成)
図9に示すように、外装部材40は、粘着部52及び非粘着部53を有するテープ部材50を複数の電線20の外周に螺旋状に巻き回すことにより形成されている。外装部材40は、外装部材80の内部に収容された部分における電線群30の外周を包囲するように設けられている。外装部材40は、例えば、外装部材80の内部のみに設けられている。例えば、テープ部材50の進行方向P1の始端が外装部材80の内部に設けられるとともに、テープ部材50の進行方向P1の終端が外装部材80の内部に設けられている。テープ部材50では、螺旋状に巻く際の進行方向P1の始端に粘着部52が配置されている。そして、進行方向P1の始端では、粘着部52が電線群30の外周面に接着されている。また、二巻き目以降のテープ部材50は、例えば、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52を重ねるように螺旋状に巻かれている。例えば、二巻き目以降のテープ部材50は、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52が、電線群30の外周面に接着しないように、つまり先に巻かれたテープ部材50のみに接着するように螺旋状に巻かれている。
【0073】
次に、ワイヤハーネス10Aの作用について説明する。
【0074】
開閉体90がボディ100に対して開閉されると、開閉体パネル91がボディパネル101に近づく方向又はボディパネル101から離れる方向に移動する。この開閉体パネル91の移動に対応して外装部材80が変形する。例えば図7に示すように、開閉体パネル91が閉状態になると、外装部材80は、連結部83がクランク状に屈曲した形状になる。例えば図8に示すように、開閉体パネル91が開状態になると、外装部材80は、連結部83が真っ直ぐに伸長した形状になる。このため、開閉体パネル91の開閉動作が繰り返し行われると、外装部材80が繰り返し変形する。ここで、外装部材80の内部に収容された電線群30は、開閉体パネル91の開閉動作に伴って外装部材80が変形すると、その外装部材80の変形に追従して屈曲、伸縮するように変形する。このとき、外装部材80の内部において、電線群30の外周には、テープ部材50が螺旋状に巻き回されている。このテープ部材50によって、電線群30を構成する複数の電線20が1つにまとめられている。これにより、外装部材80の内部において、複数の電線20がばらけることを抑制できる。また、外装部材80の内部において、電線20の余長の発生を抑制でき、その余長に起因した電線20の弛みの発生を抑制できる。この結果、電線20のばらけや弛みに起因して電線20と外装部材80の内面とが干渉することを抑制でき、その干渉に起因して外装部材80が損傷することを抑制できる。
【0075】
ところで、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有するテープ部材が電線群30の外周に螺旋状に巻き回された場合には、電線群30の剛性が高くなる。電線群30の剛性が高くなると、外装部材80の変形に追従して電線群30を変形させることが困難になる。すると、電線群30が外装部材80の内面に強く干渉し、外装部材80が損傷するという問題が発生する。
【0076】
これに対し、ワイヤハーネス10Aでは、基材51の第1面51Aに部分的に粘着部52を有するテープ部材50を、電線群30の外周に螺旋状に巻き回すことにより、テープ部材50の巻き回しに起因して電線群30の剛性が高くなることを抑制している。詳述すると、テープ部材50は、進行方向P1の始端に粘着部52が配置された状態で、テープ部材50の幅方向の一部が重なるように、複数の電線20の外周に螺旋状に巻き回されている。このため、テープ部材50が螺旋状に巻き回された場合に、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52を好適に重ねることができる。これにより、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52によって先に巻かれたテープ部材50の幅方向の一部と後に巻かれたテープ部材50の幅方向の一部とが接着され、複数の電線20の外周を包囲する筒体が形成される。このテープ部材50により形成された筒体では、テープ部材50が電線20の外周に接着する領域を、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有する場合に比べて小さくすることができる。これにより、テープ部材50の巻き回しに起因して電線群30の剛性が高くなることを抑制できるため、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有する場合に比べて電線群30の柔軟性を向上できる。このため、開閉体パネル91の開閉動作に対応して外装部材80が変形した場合に、その外装部材80の変形に追従して電線群30を好適に変形させることができる。この結果、電線群30が外装部材80の内面に強く干渉することを抑制でき、外装部材80が損傷することを好適に抑制できる。
【0077】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)~(1-8)の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0078】
(2-1)外装部材80の内部において、複数の電線20の外周にテープ部材50が螺旋状に巻き回される。このテープ部材50によって、複数の電線20が1つにまとめられている。これにより、外装部材80の内部において、複数の電線20がばらけることを抑制できる。この結果、電線20のばらけに起因して電線20と外装部材80の内面とが干渉することを抑制でき、その干渉に起因して外装部材80が損傷することを抑制できる。
【0079】
(2-2)開閉体パネル91の移動に対応して外装部材80が屈曲、伸縮するように変形する。このとき、外装部材80の内部では、基材51の第1面51Aに部分的に粘着部52を有するテープ部材50が、複数の電線20の外周に螺旋状に巻き回される。このため、基材51の第1面51A全面に粘着部52を有するテープ部材が巻き回される場合に比べて、テープ部材50の巻き回しに起因して複数の電線20の剛性が高くなることを抑制できる。これにより、外装部材80の変形に追従して複数の電線20を好適に変形させることができる。この結果、複数の電線20が外装部材80の内面に強く干渉することを抑制でき、外装部材80が損傷することを好適に抑制できる。
【0080】
(第2実施形態の変更例)
上記第2実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0081】
図10に示すように、外装部材40の外面と外装部材80の内面との間に、摩擦係数低減部110を設けるようにしてもよい。摩擦係数低減部110の材料としては、外装部材40と外装部材80との間における摩擦係数を低減することが可能な材料を用いることができる。摩擦係数低減部110としては、例えば、潤滑剤を用いることができる。潤滑剤としては、例えば、液体の潤滑油、グリースや固体潤滑剤を用いることができる。
【0082】
本変更例の摩擦係数低減部110は、外装部材40の外面に設けられている。摩擦係数低減部110は、例えば、テープ部材50の基材51の第2面51Bに設けられている。摩擦係数低減部110は、例えば、基材51の第2面51Bのうち、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52に被覆されていない部分、つまり後に巻かれたテープ部材50の粘着部52から露出する部分に設けられている。
【0083】
この構成によれば、摩擦係数低減部110を設けたことにより、外装部材40と外装部材80との間における摩擦係数を低減できる。このため、外装部材40との接触に起因して外装部材80が摩耗することを好適に抑制でき、外装部材80に破れ等の損傷が発生することを好適に抑制できる。
【0084】
・例えば図11に示すように、電線20の外周に螺旋状に巻き回す前段階におけるテープ部材50の第2面51Bに摩擦係数低減部110を設けるようにしてもよい。摩擦係数低減部110は、例えば、基材51の第2面51Bの幅方向の一部に設けられている。摩擦係数低減部110は、例えば、第2面51Bの幅方向両端部のうちの片方の端部に設けられている。摩擦係数低減部110は、例えば、基材51の厚み方向において、粘着部52と重なるように設けられている。摩擦係数低減部110は、例えば、基材51の厚み方向において、非粘着部53と重ならないように設けられている。摩擦係数低減部110は、基材51の幅方向に延びる幅D4を有している。摩擦係数低減部110の幅D4は、例えば、基材51の幅D1の20%~80%程度の幅を有している。本変更例の摩擦係数低減部110の幅D4は、基材51の幅D1の半分の幅を有し、粘着部52の幅D2と同一の幅を有している。摩擦係数低減部110は、例えば、基材51の長さ方向に沿って連続して延びている。摩擦係数低減部110は、所定の厚みを有している。摩擦係数低減部110の厚みは、例えば、0.01mm~0.1mm程度とすることができる。
【0085】
この構成では、摩擦係数低減部110が基材51の第2面51Bの幅方向の一部に設けられ、摩擦係数低減部110が基材51の厚み方向において粘着部52と重なるように設けられる。このため、図10に示すように、電線20の外周にテープ部材50を螺旋状に巻き回す際に、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52が先に巻かれたテープ部材50の摩擦係数低減部110に重なることを抑制できる。これにより、粘着部52による接着性能が摩擦係数低減部110によって阻害されることを抑制できる。換言すると、テープ部材50の第2面51Bに摩擦係数低減部110を設けた場合であっても、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52によって、後に巻かれたテープ部材50を先に巻かれたテープ部材50に好適に接着させることができる。
【0086】
図11に示した変更例において、摩擦係数低減部110の幅D4を、粘着部52の幅D2よりも長くしてもよいし、粘着部52の幅D2よりも短くしてもよい。
【0087】
図11に示した変更例において、摩擦係数低減部110を、基材51の厚み方向において、非粘着部53と重なるように設けてもよい。
【0088】
図11に示した変更例において、摩擦係数低減部110を、基材51の第2面51Bの全面に設けてもよい。
【0089】
図10に示した変更例において、電線20の外周にテープ部材50を螺旋状に巻き回した後に、そのテープ部材50により形成される外装部材40の外面に対して塗布等により摩擦係数低減部110を設けるようにしてもよい。この場合には、例えば、外装部材40の外面全面を被覆するように摩擦係数低減部110を設けてもよい。
【0090】
図10に示した変更例において、外装部材80の内面に摩擦係数低減部110を設けるようにしてもよい。この場合には、外装部材40の外面に設けられた摩擦係数低減部110を省略してもよい。
【0091】
・上記第2実施形態の外装部材80の形状は特に限定されない。例えば、連結部83の曲げ形状等は特に限定されない。例えば、固定部81,82のうち一方の固定部を省略してもよい。
【0092】
・上記第2実施形態では、外装部材40の外周を包囲する第2外装部材として、開閉体パネル91とボディパネル101との間に設けられる外装部材80に具体化したが、これに限定されない。第2外装部材を、屈曲及び伸縮等の変形を繰り返す外装部材80以外の外装部材、例えば変形がほとんど発生しない外装部材に具体化してもよい。
【0093】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0094】
・上記各実施形態では、粘着部52の幅D2を基材51の幅D1の50%の長さに設定し、非粘着部53の幅D3を基材51の幅D1の50%の長さに設定したが、幅D2,D3はこれに限定されない。
【0095】
・例えば図12に示すように、粘着部52の幅D2を、非粘着部53の幅D3よりも長く形成してもよい。例えば、粘着部52の幅D2を基材51の幅D1の70%程度の長さに設定し、非粘着部53の幅D3を基材51の幅D1の30%程度の長さに設定してもよい。
【0096】
この構成では、基材51の第1面51Aの幅方向における粘着部52の割合が大きくなり、基材51の第1面51Aの幅方向における非粘着部53の割合が小さくなる。これにより、例えば先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52が重なる幅を大きくできる。このため、後から巻かれたテープ部材50の粘着部52によってテープ部材50同士が接着されて2枚重ねになった部分を大きくでき、その2枚重ねになったテープ部材50によって電線群30の外周が保護される領域を大きくすることができる。この結果、外装部材40による保護性能を向上させることができる。例えば、他の部材との擦れ合い等によって電線20が摩耗することを好適に抑制できる。
【0097】
・例えば図13に示すように、粘着部52の幅D2を、非粘着部53の幅D3よりも短く形成してもよい。例えば、粘着部52の幅D2を基材51の幅D1の30%程度の長さに設定し、非粘着部53の幅D3を基材51の幅D1の70%程度の長さに設定してもよい。
【0098】
この構成では、基材51の第1面51Aの幅方向における非粘着部53の割合が大きくなり、基材51の第1面51Aの幅方向における粘着部52の割合が小さくなる。このため、テープ部材50の所定長さ当たりの粘着部52の量を減らすことができる。これにより、テープ部材50の重量を軽くすることができ、外装部材40の重量を軽くすることができる。また、テープ部材50の材料費を低減でき、ワイヤハーネス10,10Aの製造コストを低減できる。
【0099】
・上記各実施形態では、先に巻かれたテープ部材50の粘着部52と後に巻かれたテープ部材50の粘着部52とが電線群30の径方向において重ならないように、テープ部材50を電線群30の外周に螺旋状に巻き回すようにした。しかし、これに限定されない。例えば、先に巻かれたテープ部材50の幅方向のうち粘着部52の形成された部分に対して、後に巻かれたテープ部材50の粘着部52の一部が重なるように、テープ部材50を電線群30の外周に螺旋状に巻き回すようにしてもよい。
【0100】
・上記各実施形態では、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の非粘着部53が重ならないように、テープ部材50を電線群30の外周に螺旋状に巻き回すようにした。しかし、これに限定されない。
【0101】
例えば図14に示すように、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれたテープ部材50の非粘着部53の一部が重なるように、テープ部材50を電線群30の外周に螺旋状に巻き回すようにしてもよい。この場合には、先に巻かれたテープ部材50と後に巻かれたテープ部材50との重なり幅を大きくできるため、外装部材40による保護性能を向上させることができる。
【0102】
・例えば図15に示すように、基材51の第2面51Bに、基材51の第1面51Aに形成された粘着部52の形成領域を示すマーク70を形成するようにしてもよい。マーク70は、例えば、粘着部52の幅を示すように形成されている。マーク70は、例えば、粘着部52と非粘着部53との境界を示す境界線71を有している。境界線71は、基材51の長さ方向に沿って延びている。マーク70は、例えば、基材51の幅方向において、境界線71から粘着部52の形成領域に向かって延びる補助線72を有している。マーク70は、例えば、基材51の色と異なる色に形成されている。
【0103】
この構成によれば、基材51の第2面51Bに形成されたマーク70を視認することにより、基材51の第2面51B側から粘着部52の形成領域を認識することができる。このため、基材51の第1面51Aを電線群30の外周面に向けた状態でテープ部材50を電線群30の外周面に巻き回す際に、表面側に位置する基材51の第2面51Bのマーク70を視認することにより、テープ部材50の重なり幅を好適に調整することができる。例えば、マーク70を視認しながらテープ部材50を巻き回すことにより、先に巻かれたテープ部材50に対して、後に巻かれるテープ部材50の粘着部52の全体が重なるように、テープ部材50の重なり幅を好適に調整することができる。換言すると、マーク70を視認しながらテープ部材50を巻き回すことにより、二巻き目以降のテープ部材50の粘着部52を電線20の外周面に接触させないように、テープ部材50の重なり幅を好適に調整することができる。
【0104】
・例えば図16に示すように、非粘着部53の幅方向の一部に、粘着部52(第1粘着部)とは別の粘着部54(第2粘着部)を設けるようにしてもよい。粘着部54は、非粘着部53の幅方向の中間部に設けられている。粘着部54は、例えば、非粘着部53の幅方向の中央部に設けられている。粘着部54は、基材51の第1面51Aに設けられている。粘着部54は、例えば、基材51の第1面51Aに接着されている。粘着部54は、例えば、基材51の第1面51Aに粘着剤が塗布されて形成されている。粘着部54としては、例えば、アクリル樹脂系粘着剤やブチルゴム系粘着剤などを用いることができる。
【0105】
粘着部54の幅は、例えば、粘着部52の幅よりも短い。粘着部54は、例えば、基材51の長さ方向に沿って延びるように形成されている。粘着部54は、例えば、基材51の長さ方向に沿って連続して延びている。
【0106】
この構成によれば、例えばテープ部材50の巻き終わり部分において、粘着部54を電線20の外周面に接着させることができる。これにより、テープ部材50の進行方向P1の終端、つまり外装部材40の長さ方向の端部において、テープ部材50がめくれ上がることを抑制できる。
【0107】
図16に示した変更例では、粘着部54を、基材51の長さ方向に沿って連続して延びるように形成したが、これに限定されない。
【0108】
例えば図17に示すように、粘着部54を、基材51の長さ方向において所定の間隔を空けて部分的に設けるようにしてもよい。すなわち、粘着部54を、基材51の長さ方向に沿って断続的に延びるように設けてもよい。本変更例の粘着部54は、複数の部分粘着部54Aを有している。複数の部分粘着部54Aは、基材51の長さ方向において互いに離れて設けられている。複数の部分粘着部54Aは、例えば、基材51の長さ方向に沿って一列に並んで設けられている。各部分粘着部54Aの平面形状は、任意の形状とすることができる。例えば、各部分粘着部54Aの平面形状は、円形状、楕円形状又は多角形状に形成することができる。本変更例の各部分粘着部54Aの平面形状は、円形状に形成されている。
【0109】
・上記各実施形態では、粘着部52を、基材51の長さ方向に沿って連続して延びるように形成したが、これに限定されない。
【0110】
例えば図18に示すように、粘着部52を、基材51の長さ方向において所定の間隔を空けて部分的に設けるようにしてもよい。すなわち、粘着部52を、基材51の長さ方向に沿って断続的に延びるように設けてもよい。本変更例の粘着部52は、複数の部分粘着部52Aを有している。複数の部分粘着部52Aは、基材51の長さ方向において互いに離れて設けられている。複数の部分粘着部52Aは、例えば、基材51の長さ方向に沿って一列に並んで設けられている。各部分粘着部52Aの平面形状は、任意の形状とすることができる。例えば、各部分粘着部52Aの平面形状は、円形状、楕円形状又は多角形状に形成することができる。本変更例の各部分粘着部52Aの平面形状は、矩形状に形成されている。
【0111】
・上記各実施形態では、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち一方の端部に粘着部52を設け、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち他方の端部に非粘着部53を設けるようにしたが、これに限定されない。粘着部52は、例えば、基材51の第1面51Aの幅方向の一部に設けられていればよい。また、非粘着部53は、例えば、基材51の第1面51Aの幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部に設けられていればよい。
【0112】
例えば図19に示すように、基材51の第1面51Aの幅方向両端部に非粘着部53を設け、基材51の第1面51Aの幅方向の中央部に粘着部52を設けるようにしてもよい。すなわち、基材51の第1面51Aに一対の非粘着部53を設け、それら一対の非粘着部53の間に粘着部52を設けるようにしてもよい。本変更例の粘着部52は、基材51の幅方向において、一対の非粘着部53に挟まれるように設けられている。
【0113】
・上記各実施形態では、基材51の第1面51Aに粘着部52を設けるようにしたが、これに限定されない。
【0114】
例えば図20に示すように、基材51の第1面51Aに、第2面51Bに向かって凹む凹部51Xを形成し、その凹部51Xの底面に粘着部52を設けるようにしてもよい。このとき、粘着部52の第1面(図中下面)が基材51の第1面51Aと面一になるように、凹部51X内に粘着部52を設けるようにしてもよい。この構成によれば、基材51の第1面51Aと粘着部52との段差を無くすことができる。
【0115】
・上記各実施形態では、基材51の第1面51Aの幅方向の一部に粘着部52を形成せずに、基材51の第1面51Aを粘着部52から露出させることにより、非粘着部53を形成するようにした。しかし、非粘着部53の構造はこれに限定されない。
【0116】
例えば図21に示すように、基材51の第1面51Aに、所定の厚みを有する非粘着部55を形成するようにしてもよい。非粘着部55の材料としては、例えば、樹脂材料や紙を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂又はポリ塩化ビニルなどを用いることができる。非粘着部55の厚みは、例えば、粘着部52と同じ厚みに形成されている。例えば、非粘着部55の第1面(図中下面)は、粘着部52の第1面(図中下面)と面一になるように形成されている。
【0117】
・上記各実施形態において、電線群30を構成する電線20の数は特に限定されない。
【0118】
・上記第1実施形態では、電線群30の外周面にテープ部材50を巻き回すようにしたが、これに限定されない。例えば、1本の電線20の外周面にテープ部材50を巻き回すようにしてもよい。この場合の外装部材40は、1本の電線20の外周を包囲するように形成される。
【0119】
・上記各実施形態では、テープ部材50を、電線20の外周面のみに巻き回すようにしたが、これに限定されない。例えば、テープ部材50を、電線20を内部に収容する保護管の外周面と電線20の外周面とに巻き回すようにしてもよい。例えば、テープ部材50の進行方向P1の始端を、保護管の外周面に巻き回すようにしてもよい。この場合には、例えば、テープ部材50の進行方向P1の始端に配置された粘着部52が保護管の外周面に接着される。なお、保護管としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバーなどを用いることができる。
【0120】
図4及び図5に示すように、基材51の幅D1はテープ部材50の全幅であってよい。粘着部52の幅D2は、テープ部材50の全長にわたって一定であってよい。
【0121】
図6から図8に示すように、テープ部材50は螺旋ピッチをもって螺旋状に巻き回されることができる。テープ部材50の螺旋ピッチは一定であってよく、ワイヤハーネス10の複数の長さ部分で異なってもよい。例えば、テープ部材50の螺旋ピッチはワイヤハーネス10の直線部分において一定であってよい。例えば、テープ部材50の螺旋ピッチはワイヤハーネス10の直線部分とワイヤハーネス10の曲げ部分とで異なってよい。例えば、テープ部材50の螺旋ピッチはワイヤハーネス10の曲げ部分の曲げ角度に応じて異なってよい。図6から図8に示す例では、テープ部材50の螺旋ピッチはテープ部材50の重なり幅に対応する。
【0122】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0123】
以上の様々な実施の形態をまとめると、以下のようになる。
(付記1)
電線と、
前記電線に巻き回されたテープ部材と、を有し、
前記テープ部材は、前記テープ部材の幅方向の一部が重なるように、前記電線の外周に螺旋状に巻き回されており、
前記テープ部材は、第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有する基材と、前記基材の前記第1面の幅方向の一部に設けられた粘着部と、前記基材の前記第1面の幅方向両端部のうち少なくとも一方の端部に設けられた非粘着部と、を有するワイヤハーネス。
(付記2)
前記テープ部材は、前記第1面の幅方向両端部のうち一方の端部に前記粘着部を有し、他方の端部に前記非粘着部を有する付記1に記載のワイヤハーネス。
【符号の説明】
【0124】
1 車両
2,3 電気機器
10,10A ワイヤハーネス
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30 電線群
40 外装部材(第1外装部材)
50 テープ部材
51 基材
51A 第1面
51B 第2面
51X 凹部
52 粘着部(第1粘着部)
52A 部分粘着部
53 非粘着部
54 粘着部(第2粘着部)
54A 部分粘着部
55 非粘着部
60 芯部材
70 マーク
71 境界線
72 補助線
80 外装部材(第2外装部材)
81 固定部(第1固定部)
81A,81B フランジ部
81C 傾斜面
81X 溝
82 固定部(第2固定部)
82A,82B フランジ部
82C 傾斜面
82X 溝
83 連結部
84 蛇腹構造
85 環状凸部
86 環状凹部
90 開閉体
91 開閉体パネル
92 貫通孔
100 ボディ
101 ボディパネル
102 貫通孔
110 摩擦係数低減部
D1,D2,D3,D4 幅
P1 進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21