(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240820BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240820BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20240820BHJP
B23D 49/16 20060101ALI20240820BHJP
B23D 49/14 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 G
B25F5/02
B23Q11/12 A
B23D49/16
B23D49/14
(21)【出願番号】P 2022553711
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032424
(87)【国際公開番号】W WO2022070765
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2020164694
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】仲野 領祐
(72)【発明者】
【氏名】伊縫 賢
(72)【発明者】
【氏名】曹 智翔
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103318(JP,A)
【文献】特開2016-124049(JP,A)
【文献】特開2016-068205(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067810(WO,A1)
【文献】特表2007-515147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B23Q 11/12
B23D 49/14
B23D 49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び排気口を有するハウジングと、
前記ハウジングに収容されたモータと、
前記ハウジングに収容され、前記モータの駆動によって回転して前記ハウジングの内部において冷却風を発生させるファンと、
前記モータを制御し、前記冷却風によって冷却される制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記モータの側方に位置するように前記ハウジングに収容されて前記モータが収容される空間を区画し、
前記冷却風は、前記吸気口から前記ハウジングの内部に吸い込まれ且つ前記ファンに流入される上流側冷却風と、前記ファンから流出され且つ前記排気口から前記ハウジングの外部へ排気される下流側冷却風と、を含んでおり、
前記制御部が、前記上流側冷却風及び前記下流側冷却風によって冷却される作業機。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記上流側冷却風が通過する第1空間と、前記下流側冷却風が通過する第2空間と、を有しており、
前記制御部が前記第1空間及び前記第2空間に露出されている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記ハウジングは、複数の分割ハウジングによって構成されており、
前記分割ハウジングには、前記制御部を挟持する挟持部が形成されている請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記第1空間と前記第2空間とを区画し且つ前記上流側冷却風を整流して前記第2空間側へガイドする整流部が設けられ、
前記整流部には、前記制御部の一部を前記第2空間に露出させるための露出部が形成されている請求項2又は請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記第2空間には、前記ファンが配置されており、
前記整流部には、前記第1空間と前記第2空間とを連通するガイド孔が形成され、前記ファンの軸方向において前記ファン及び前記ガイド孔が対向して配置されている請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記モータに接続された制御基板と、
前記制御基板を収容し、厚み方向一方側が開口された箱状のケースと、
を含んで構成されており、
前記冷却風によって前記ケースの底壁を冷却する請求項2に記載の作業機。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1空間に配置されており、
前記吸気口が、前記ケースの底壁に対して前記ケースの厚み方向他方側に配置されている請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記制御部が、前記第1空間と前記第2空間とを区画している請求項6に記載の作業機。
【請求項9】
前記ケースの底壁が、前記第1空間に露出され、前記ケースの開口部が、前記第2空間側へ開口されている請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御部の一部が、前記ファンの径方向外側に配置されており、
前記ファンが遠心ファンとして構成されている請求項1~請求項9の何れか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の携帯用電気切断機(作業機)では、モータの駆動によって回転するファンが設けられており、ファンの側方には、モータの駆動を制御するための制御部が配置されている。これにより、モータの駆動時には、ファンの回転により生成された冷却風が制御部に流れて、モータや制御部に搭載されたFET等の発熱部材(被冷却部)を冷却風によって冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、依然として発熱部品に対する冷却性能の向上は求められている状況である。また、特に近年では、例えば、モータの高出力化や高負荷の作業に対応するため、発熱部品がより高温化する傾向にある。このため、作業機では、発熱部材をより好適に冷却することができる構造にすることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、被冷却部(発熱部材)に対する冷却性能を向上させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、吸気口及び排気口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容されたモータと、前記ハウジングに収容され、前記モータの駆動によって回転して前記ハウジングの内部において冷却風を発生させるファンと、前記モータを制御し、前記冷却風によって冷却される制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータの側方に位置するように前記ハウジングに収容されて前記モータが収容される空間を区画し、前記冷却風は、前記吸気口から前記ハウジングの内部に吸い込まれ且つ前記ファンに流入される上流側冷却風と、前記ファンから流出され且つ前記排気口から前記ハウジングの外部へ排気される下流側冷却風と、を含んでおり、前記制御部が、前記上流側冷却風及び前記下流側冷却風によって冷却される作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ハウジングは、前記上流側冷却風が通過する第1空間と、前記下流側冷却風が通過する第2空間と、を有しており、前記制御部が前記第1空間及び前記第2空間に露出されている作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ハウジングは、複数の分割ハウジングによって構成されており、前記分割ハウジングには、前記制御部を挟持する挟持部が形成されている作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ハウジングには、前記第1空間と前記第2空間とを区画し且つ前記上流側冷却風を整流して前記第2空間側へガイドする整流部が設けられ、前記整流部には、前記制御部の一部を前記第2空間に露出させるための露出部が形成されている作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第2空間には、前記ファンが配置されており、前記整流部には、前記第1空間と前記第2空間とを連通するガイド孔が形成され、前記ファンの軸方向において前記ファン及び前記ガイド孔が対向して配置されている作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記モータに接続された制御基板と、前記制御基板を収容し、厚み方向一方側が開口された箱状のケースと、を含んで構成されており、前記冷却風によって前記ケースの底壁を冷却する作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記第1空間に配置されており、前記吸気口が、前記ケースの底壁に対して前記ケースの厚み方向他方側に配置されている作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記制御部が、前記第1空間と前記第2空間とを区画している作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ケースの底壁が、前記第1空間に露出され、前記ケースの開口部が、前記第2空間側へ開口されている作業機である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記制御部の一部が、前記ファンの径方向外側に配置されており、前記ファンが遠心ファンとして構成されている作業機である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、被冷却部に対する冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態に係るセーバソーを示す右側から見た側面図である。
【
図2】
図1に示されるセーバソーの内部を示す側断面図である。
【
図3】
図1に示されるリヤハウジングによって制御部を挟み込んだ状態を示す左斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示されるリヤハウジング及び制御部の分解斜視図である。
【
図5】
図1に示されるリヤハウジングにおけるモータハウジング部を示す後側から見た後面図である。
【
図6】
図5に示される左側の分割ハウジングと制御部との組付状態を示す左側から見た断面図(
図5の6-6線断面図)である。
【
図7】
図1に示されるリヤハウジングのモータハウジング部の内部を示す前側から見た断面図(
図1の7-7線断面図)である。
【
図8】
図2に示される制御部を示す下側から見た斜視図である。
【
図9】
図2に示されるモータハウジング部の内部における冷却風の流れを説明するための側断面図である。
【
図10】
図9に示される冷却構造の変形例における冷却風の流れを説明するための側断面図である。
【
図11】
図9に示される冷却構造の他の変形例における冷却風の流れを説明するための側断面図である。
【
図12】
図11に示される他の変形例における冷却風の流れを説明するための前側から見た断面図である。
【
図13】冷却構造を丸鋸に適用した例を示す一部破断した平面図である。
【
図14】冷却構造をハンマドリルに適用した例を示す一部破断した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としてのセーバソー10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれセーバソー10の上側、前側、及び右側を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、セーバソー10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0023】
セーバソー10は、パイプ等の被加工材に切断加工を施す工具として構成されている。
図1及び
図2に示されるように、セーバソー10は、セーバソー10の外郭を構成するハウジング12と、ハウジング12の内部に収容されたモータ40及び駆動機構50と、を含んで構成されている。また、セーバソー10は、モータ40を制御するための被冷却部としての制御部60を有している。さらに、セーバソー10では、制御部60の周辺において冷却構造Sが適用されており、冷却構造Sにより制御部60を冷却するようになっている。以下、セーバソー10の各構成について説明する。
【0024】
(ハウジング12について) ハウジング12は、中空状に形成されると共に側面視で横向きの略P字形状に形成されている。ハウジング12は、ハウジング12の後部を構成するリヤハウジング13と、ハウジング12の前部を構成するフロントハウジング14と、を含んで構成されている。リヤハウジング13は、後述するモータ40を収容するハウジング部として構成され、フロントハウジング14は、後述する駆動機構50を収容するハウジング部として構成されている。フロントハウジング14は、樹脂製のフロントカバー14Aと、フロントカバー14Aの内部に位置する金属製のアッパーカバー14B及びアンダーカバー14Cとを有する。アッパーカバー14Bとアンダーカバー14Cとが上下方向で組み付けられることによって、駆動機構50を収容する空間が画定される。作業者はフロントカバー14Aの前方部分(径が小さい領域)を把持しながら作業を行うことができる。
【0025】
リヤハウジング13は、左右方向に2分割された一対の分割ハウジング15によって構成されており、一対の分割ハウジング15を互いに組付けることで、リヤハウジング13が形成されている(
図4参照)。リヤハウジング13の後端部は、ハンドル部13Aとして構成されており、ハンドル部13Aは、上下方向に延在されている。ハンドル部13Aの上端部には、トリガ30が引き操作可能に設けられており、トリガ30の後側には、スイッチ機構部31が設けられている。スイッチ機構部31は、トリガ30によって操作されるスイッチ(図示省略)を有しており、当該スイッチは、後述する制御部60に電気的に接続されている。
【0026】
リヤハウジング13の後端部における下端部には、バッテリパック32が着脱可能に取付けられている。バッテリパック32は、後述する制御部60に電気的に接続されて、後述するモータ40に電力を供給するようになっている。
【0027】
図3~
図7にも示されるように、リヤハウジング13の前部における上端部を除く部分は、後述するモータ40を収容するためのモータハウジング部16として構成されている。モータハウジング部16は、前側へ開放された略有底筒状に形成されている。モータハウジング部16の内部には、前端側の部分において、整流部としてのファンガイド17が設けられている。ファンガイド17は、前後方向を板厚方向とする板状に形成されて、分割ハウジング15の外周壁からセーバソー10の左右方向中央側へ延出されている。そして、分割ハウジング15に形成されたファンガイド17の先端部が、モータハウジング部16の左右方向中央部で互いに突き合わされている。これにより、ファンガイド17によって、モータハウジング部16の内部が前後に区画されている。具体的には、モータハウジング部16の内部が、モータハウジング部16の後部を構成する第1空間16Aと、モータハウジング部16の前端部を構成する第2空間16Bと、に区画されている(
図6参照)。
【0028】
ファンガイド17の略中央部には、円形状のガイド孔17Aが貫通形成されている。これにより、第1空間16Aと第2空間16Bとがガイド孔17Aによって連通されている。また、ファンガイド17の下端部には、後述する制御部60を固定するための前側固定部17Bが形成されている。前側固定部17Bは、側面視で前側へ突出し且つ後側へ開放された略凹状に形成されている。前側固定部17Bの上壁は、側面視で前側へ向かうに従い下側へ傾斜した傾斜壁17Cとして構成されている。傾斜壁17Cには、左右方向中央部において、露出部としての露出孔17Dが貫通形成されており、露出孔17Dは、傾斜壁17Cの板厚方向から見て、左右方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。
【0029】
また、モータハウジング部16の右側後端部における下端部には、後述する制御部60を固定するための第1後側固定部18(
図4参照)が形成されている。第1後側固定部18は、側面視で前側へ開放された略U字形板状に形成されて、モータハウジング部16の右壁から左右方向中央側へ延出している。さらに、モータハウジング部16の左側後端部における下端部には、後述する制御部60を固定するための第2後側固定部19(
図6及び
図7参照)が形成されている。第2後側固定部19は、側面視で前側及び上側へ開放された略L字形板状に形成されて、モータハウジング部16の左壁から左右方向中央側へ延出している。また、モータハウジング部16の左壁の下端部には、後述する制御部60を固定するための固定片20(
図6及び
図7参照)が形成されている。固定片20は、上下方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されて、モータハウジング部16の左壁からモータハウジング部16の左右方向中央側へ延出している。さらに、モータハウジング部16の左右の側壁の下端部には、第1空間16A内において、前後一対の挟持部21(
図4及び
図7)が形成されており、挟持部21は、モータハウジング部16の左右の側壁からモータハウジング部16の左右方向中央側へ突出している(
図4及び
図7では、後側の挟持部21のみが図示されている)。
【0030】
モータハウジング部16の後壁には、複数(本実施の形態では、8箇所)の吸気口22(
図5参照)が貫通形成されている。吸気口22は、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されている。これにより、吸気口22によって、第1空間16Aの内部とモータハウジング部16の外部とが連通されている。そして、吸気口22では、上下方向に並ぶ吸気口22が対を成しており、対を成す吸気口22がモータハウジング部16の後壁の右部及び左部の上端部及び下端部にそれぞれ配置されている。また、吸気口22は、後述する制御部60よりも上側に配置されている。吸気口22の下側縁部には、前側へ突出した異物混入防止リブ22A(
図6参照)が形成されている。異物混入防止リブ22Aは、左右方向に延在されると共に、異物混入防止リブ22Aの前端部が側面視で上側へ屈曲している。
【0031】
モータハウジング部16の前端部には、複数(本実施の形態では、12箇所)の排気口23(
図3参照)が貫通形成されている。排気口23は、モータハウジング部16の周方向を長手方向とする長孔状に形成されている。これにより、排気口23によって、第2空間16Bの内部とモータハウジング部16の外部とが連通されている。また、排気口23では、前後方向に並ぶ排気口23が対を成しており、対を成す吸気口22がモータハウジング部16の下壁に左右方向に並んで配置されている。さらに、対を成す排気口23が、モータハウジング部16の左右の側壁に上下方向に並んで配置されている。
【0032】
(モータ40について)
図2及び
図9に示されるように、モータ40は、ハウジング12のモータハウジング部16の第1空間16A内に収容されている。モータ40は、駆動軸41と、ロータ42と、ステータ43と、モータ基板45と、を含んで構成されている。駆動軸41は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されると共に、ガイド孔17Aと同軸状に配置されている。そして、駆動軸41の後端部が、モータハウジング部16に固定された第1軸受33に回転可能に支持されている。駆動軸41は、ファンガイド17のガイド孔17Aを挿通しており、駆動軸41の前端部がフロントハウジング14内に配置されている。そして、駆動軸41の前端側部分がフロントハウジング14内に設けられた第2軸受34に回転可能に支持されている。また、駆動軸41の前端部における外周部には、ピニオンギヤ41Aが形成されている。
【0033】
ロータ42は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、駆動軸41の径方向外側において駆動軸41と一体回転可能に構成されている。ステータ43は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、ロータ42の径方向外側に配置されている。そして、ステータ43のステータホルダ44が、モータハウジング部16の左右の側壁に形成されたモータ保持リブ24(
図4、
図6、及び
図7参照)によって左右方向に挟み込まれて保持されている。
【0034】
モータ基板45は、前後方向を板厚方向とする略円環板状に形成されると共に、ロータ42及びステータ43の後側において、ステータホルダ44に固定されている。モータ基板45には、ステータホルダ44に巻回されたコイルの一端部が接続されている。
【0035】
(駆動機構50について)
図2に示されるように、駆動機構50は、フロントハウジング14内(アッパーカバー14Bとアンダーカバー14Cとで画定される領域)に収容されている。駆動機構50は、ベベルギヤ51と、運動変換ピン52と、プランジャ53と、を含んで構成されている。ベベルギヤ51は、モータ40の駆動軸41の前側において、上下方向を軸方向として回転可能に設けられると共に、モータ40のピニオンギヤ41Aに噛合されている。運動変換ピン52は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成されると共に、ベベルギヤ51の回転軸線に対して偏心した位置において、ベベルギヤ51に固定されている。そして、運動変換ピン52の上端部が、ベベルギヤ51から上側へ突出している。
【0036】
プランジャ53は、前後方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。プランジャ53は、ベベルギヤ51の上側において、前後方向に往復移動可能にフロントハウジング14に支持されている。プランジャ53の後端側の部分には、連結部54が形成されており、連結部54は、下側へ開放され且つ左右方向に延在された溝状に形成されている。そして、運動変換ピン52の上端部が連結部54内に挿入されて、ベベルギヤ51とプランジャ53とが連結されている。これにより、モータ40が駆動して、ベベルギヤ51が回転することで、プランジャ53が前後方向に往復移動するように構成されている。
【0037】
プランジャ53の前端部には、ブレードホルダ55が設けられており、ブレードホルダ55には、ブレード56が取付けられている。ブレード56は、前後方向を長手方向とし且つ左右方向を板厚方向とする略長尺板状に形成されている。そして、ブレード56の後端部がブレードホルダ55に取付けられて、ブレード56が、フロントハウジング14の前側に配置されている。ブレード56の下端部には、刃部56Aが形成されている。これにより、ブレード56が前後方向に往復移動することで、被加工材がブレード56によって切断されるようになっている。
【0038】
(制御部60について)
図2、
図4、
図6、及び
図8に示されるように、制御部60は、モータハウジング部16の第1空間16Aの下端部内に収容されている。制御部60は、制御基板62と、制御基板62を収容するケース61と、を含んで構成されている。ケース61は、上下方向を厚み方向とした比較的底の浅い矩形箱状に形成されている。また、ケース61は、厚み方向一方(下側)へ開放されている。これにより、ケース61は、ケース61の上端を構成する底壁61Aと、底壁61Aの外周部から下側へ延出された側壁61Bと、を含んで構成されている。側壁61Bの上端部は、ケース傾斜部61Cが形成されている。ケース傾斜部61Cは、上側へ向かうに従いケース61の内側に傾斜されて底壁61Aに接続されている。
【0039】
そして、ケース61が、リヤハウジング13の分割ハウジング15によって左右方向に挟み込まれて、モータハウジング部16に固定されている。具体的には、ケース61の左右の側壁61Bが、モータハウジング部16の左右の挟持部21によって左右方向に挟み込まれている。これにより、ケース61の左右方向の移動が挟持部21によって制限されている。また、ケース61の前端部が、モータハウジング部16の前側固定部17Bの内部に配置されており、ケース61の後端部が、第1後側固定部18の内部に配置されると共に、第2後側固定部19の下壁の上側に配置されている。また、モータハウジング部16の固定片20が、ケース61の底壁61Aの左端部の上側に配置されている。これにより、前側固定部17B、第1後側固定部18、第2後側固定部19、及び固定片20によってケース61の上下方向の移動が制限されている。
【0040】
また、ケース61は、モータ40のステータ43の下側に離間して配置されると共に、モータハウジング部16の吸気口22よりも下側に配置されている。これにより、モータ40とケース61との間には、冷却風通路70(
図7及び
図9参照)が形成されている。すなわち、ケース61の底壁61Aが、冷却風通路70の壁部の一部を構成するように、モータハウジング部16の第1空間16A内に収容されている。また、ケース61の開口部61Dが、底壁61Aに対して冷却風通路70、吸気口22、及びガイド孔17Aとは反対側に開口している。さらに、冷却風通路70の後端部が吸気口22と連通しており、冷却風通路70の前端部がガイド孔17Aと連通している。
【0041】
また、ケース61のモータハウジング部16への固定状態では、ケース61のケース傾斜部61Cの一部が、モータハウジング部16におけるファンガイド17の露出孔17Dから第2空間16B内に露出している。
【0042】
制御基板62は、上下方向を板厚方向とする略矩形板状に形成されている。制御基板62は、ケース61内に収容されて、ケース61に固定されている。制御基板62の下面には、複数(本実施の形態では、6個)のスイッチング素子(FET)63(広義には、発熱部品として把握される要素である)が設けられている。
【0043】
(ファン72について) セーバソー10は、制御部60を冷却する冷却風ARを生成するファン72を有している。ファン72は、モータ40の駆動軸41の前端側部分に一体回転可能に固定されると共に、ファンガイド17の前側で且つモータハウジング部16の第2空間16B内に配置されている。すなわち、モータハウジング部16の吸気口22とファン72との間に、制御部60の大半が配置されており、ファン72とモータハウジング部16の排気口23との間に制御部60の一部(前端部)が配置されている。
【0044】
ファン72は、遠心ファンとして構成されて、ファン72の後側の空気をファン72の径方向外側へ流す空気流を生成するようになっている。これにより、モータハウジング部16に内部には、吸気口22からモータハウジング部16内に吸い込まれ、排気口23からモータハウジング部16の外部へ吐き出される冷却風ARが生成される。具体的には、冷却風ARは、吸気口22から第1空間16A内に吸い込まれ且つ第2空間16B内に吸い込まれてファン72に流入される上流側冷却風AR1と、第2空間16B内においてファン72から径方向外側へ流出され且つ排気口23からモータハウジング部16の外部へ排気される下流側冷却風AR2と、を含んでいる。すなわち、吸気口22からファン72に至る空気の流れ(吸い込み風)が上流側冷却風AR1であり、ファン72から排気口23に至る空気の流れ(吐き出し風)が下流側冷却風AR2である。
【0045】
そして、詳細については後述するが、吸気口22から第1空間16A内に吸い込まれた上流側冷却風AR1が、冷却風通路70を通過し、ファンガイド17の後面に沿ってガイド孔17A側へ流れるようになっている。すなわち、ファンガイド17は、第1空間16A内を流れる上流側冷却風AR1をファン72に導くガイド部をして機能するように構成されている。
【0046】
(作用効果) 次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0047】
上記のように構成されたセーバソー10では、トリガ30が引き操作されることで、モータ40が駆動する。モータ40が駆動すると、モータ40の駆動力が駆動機構50のプランジャ53に伝達されて、プランジャ53が前後方向に往復移動する。これにより、プランジャ53に取付けられたブレード56が、プランジャ53と共に前後方向に往復移動する。したがって、往復移動するブレード56によって、パイプ等の被加工材に対して切断加工を行うことができる。
【0048】
また、モータ40の駆動時には、ファン72がモータ40の駆動軸41と共に駆動軸41の軸回りに回転して、ファン72の後側(モータ40側)の空気をファン72の径方向外側へ流す空気流が発生する。これにより、
図9に示されるように、上流側冷却風AR1が、モータハウジング部16の吸気口22から第1空間16A内に吸い込まれる。また、吸気口22は、冷却風通路70の後端部と連通している。このため、第1空間16Aの上部内に吸い込まれた上流側冷却風AR1が、モータ40のモータ基板45に当たって、モータ基板45の後面に沿って下側(冷却風通路70側)に流れると共に、冷却風通路70の後端側に流入される。また、第1空間16Aの下部内に吸い込まれた上流側冷却風AR1が、冷却風通路70の後端側に直接的に流入される。
【0049】
冷却風通路70の後端部に流入された上流側冷却風AR1は、制御部60のケース61における底壁61Aの上面に沿って冷却風通路70内を前側へ流れる。すなわち、上流側冷却風AR1が、ケース61を冷却しつつ、冷却風通路70内を流れる。上流側冷却風AR1が、冷却風通路70の前端部に到達すると、ファンガイド17の下端部に当たってファンガイド17の後面に沿って上側へ流れる。ファンガイド17に沿って上側へ流れた上流側冷却風AR1は、ガイド孔17Aから第2空間16Bへ吸い込まれると共に、ファン72に流入される。
【0050】
ファン72に吸い込まれた上流側冷却風AR1は、下流側冷却風AR2としてファン72から径方向外側へ流出される。そして、ファン72から流出された下流側冷却風AR2が排気口23からモータハウジング部16の外部へ排気される。このとき、ファン72から下側へ流出される下流側冷却風AR2は、ファンガイド17の前面に沿って下側へ流される。そして、ファンガイド17の下端部に到達した下流側冷却風AR2は、ファンガイド17の傾斜壁17C及び露出孔17Dから露出されたケース傾斜部61Cに沿って下斜め前側へ流れて、下側の排気口23からモータハウジング部16の外部へ排気される。すなわち、下流側冷却風AR2が、ケース61の前端部を冷却しつつ、排気口23側へ流れる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態のセーバソー10では、モータ40、ファン72、及び制御部60が、ハウジング12のモータハウジング部16に収容されており、モータハウジング部16には、吸気口22及び排気口23が形成されている。これにより、モータハウジング部16内には、吸気口22から吸い込まれ且つ排気口23から排気される冷却風ARが発生する。詳しくは、吸気口22からモータハウジング部16内に流入され且つファン72に流入される上流側冷却風AR1と、ファン72から流出され且つ排気口23からモータハウジング部16の外部に排気される下流側冷却風AR2と、が発生する。そして、本実施の形態では、作動時に発熱するスイッチング素子63を有する制御部60が、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2によって冷却される。これにより、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2の一方によって、制御部60を冷却する構成と比べて、制御部60を効率よく冷却することができる。したがって、制御部60に対する冷却性能を向上させることができる。吸気口22からモータハウジング部16内に入ったばかりの空気は温度が低いために冷却効果が高く、制御部60の後端部分は上流側冷却風AR1の上流部分(モータ40を冷却する前の空気)で冷却されるため、冷却効果が高い。さらに、下流側冷却風AR2は空気の流れが速くなりやすく、高い風速となる吐き出し風(モータ40の冷却した後の空気)を制御部60に当てることによっても好適に制御部60を冷却可能となる。すなわち、本願発明は、比較的温度の低い吸い込み風を制御部60に当て、かつ風速の高い吐き出し風も制御部60に当てるといった、吸い込み風と吐き出し風のそれぞれが持つ優位性を利用した冷却構成が特徴となっている。また、上流側冷却風AR1又は下流側冷却風AR2の一方のみで制御部60を冷却する場合、十分な流路を形成するため必要以上にハウジングが大型化したり、構造が複雑化したりする恐れがあるが、本実施の形態のように上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2の両方で冷却するようにすることで、設計的な自由度を得ることができ、ハウジングを大型化または複雑化せずとも制御部60を好適に冷却可能となる。
【0052】
また、モータハウジング部16は、上流側冷却風AR1が通過する第1空間16Aと、下流側冷却風AR2が通過する第2空間16Bと、を有しており、制御部60が、第1空間16A及び第2空間16Bに露出されている。具体的には、制御部60が、吸気口22とファン72との間に配置されている。また、ファンガイド17の露出孔17Dによって、制御部60の一部(前端部)が、第2空間16Bに露出されると共に、ファン72と排気口23との間に配置されている。これにより、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2によって制御部60を冷却することができる。
【0053】
また、モータハウジング部16には、第1空間16Aと第2空間16Bとを区画するファンガイド17が設けられており、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2がファンガイド17によって整流される。具体的には、冷却風通路70を流れる上流側冷却風AR1の向きが、ファンガイド17によって上側に変更されて、上流側冷却風AR1が、ファンガイド17の後面に沿って上側へ流れて、ガイド孔17Aから第2空間16Bに吸い込まれる。これにより、上流側冷却風AR1を効率よく第2空間16B側に流すことができる。また、ファン72から流出された下流側冷却風AR2が、ファンガイド17の前面に沿って下側へ流れる。したがって、下流側冷却風AR2の第1空間16A側への逆流をファンガイド17によって抑制しつつ、下流側冷却風AR2によって制御部60の前端部を冷却することができる。
【0054】
また、ファン72が、第2空間16B内において、ガイド孔17Aの前側に配置されている。これにより、ファン72によって生成される空気流によって、上流側冷却風AR1をガイド孔17Aから第2空間16B側へ効率よく吐出させて、ファン72に流入させることができる。
【0055】
また、第1空間16Aには、モータ40及び制御部60が収容されており、制御部60がモータ40の径方向外側(下側)に離間して配置されている。これにより、モータ40と制御部60との間に上流側冷却風AR1を通過させるための冷却風通路70を形成することができると共に、冷却風通路70の壁部の一部を制御部60のケース61によって構成することができる。したがって、冷却風通路70を通過する上流側冷却風AR1によって、制御部60及びモータ40を効率よく冷却することができる。
【0056】
また、制御部60のケース61は、下側へ開放された略箱形状に形成されており、冷却風通路70の壁部が、ケース61の底壁61Aによって構成されている。具体的には、吸気口22が、ケース61の上側(開口部61Dとは反対側)に配置されている。これにより、冷却風通路70を通過する上流側冷却風AR1が、底壁61Aの上面に沿って前側へ移動して制御部60を冷却すると共に、上流側冷却風AR1がケース61内の制御基板62や制御基板62に搭載されたスイッチング素子63又は配線等の電子素子に直接的に当たることを抑制できる。このため、例えば、セーバソー10の作業時に生じる切粉が、仮に上流側冷却風AR1と共に第1空間16A内に流入した場合でも、当該切粉が制御基板62や電子素子に当たることを抑制できる。したがって、制御基板62に対する保護性能を向上しつつ、制御部60に対する冷却性能を向上させることができる。特に、被加工材が金属である場合には、制御基板62に対する保護性能を効果的に向上させることができる。
【0057】
また、上流側冷却風AR1が制御部60の底壁61Aの上面に沿って前側に流れるため、冷却風通路70内において、上流側冷却風AR1をスムースに流すことができる。また、制御部60によってモータハウジング部16の内部を一部区画することで、制御部60の上方空間と下方空間とを区画し、第1空間16Aを容易に形成することができる。すなわち、制御部60を取り付けることで、上流側冷却風AR1の風路を容易に形成可能であり、モータハウジング部16に風路形成のための構造(リブ等)を必要以上に設ける必要がなくなる。また、遠心ファンであるファン72を利用した冷却風路形成の場合、通常はモータ40の軸方向に移動する吸い込み風と径方向外方に移動する吐き出し風が形成される。本実施の形態では、制御部60を、第1空間16Aを区画する壁として機能させ、また第2空間16Bを区画する壁としても機能させた。こうすることで、軸方向に向かう上流側冷却風AR1と径方向外方に向かう下流側冷却風AR2によって制御部60を冷却可能となり、冷却風をUターンさせたりせず、シンプルな構成で制御部60の好適な冷却構成を実現できる。
【0058】
また、制御部60のケース61が、モータハウジング部16の挟持部21によって左右方向外側から挟み込まれている。具体的には、左右の挟持部21が、吸気口22の左右方向外側に配置されて、ケース61を左右方向に挟み込んでいる。これにより、冷却風通路70内における上流側冷却風AR1の流れを阻害することなく、挟持部21によってケース61を固定することができる。
【0059】
(冷却構造Sの変形例1) 次に、
図10を用いて、セーバソー10における冷却構造Sの変形例1について説明する。変形例1の冷却構造Sでは、以下に示す点を除いて、本実施の形態と同様に構成されている。すなわち、変形例1の冷却構造Sでは、ファンガイド17の前側固定部17Bの下側に、連通孔17Eが貫通形成されている。これにより、制御部60の下側空間と第2空間16Bとが、連通孔17Eによって連通している。すなわち、変形例1では、第2空間16Bが、制御部60の下側空間まで拡大している。そして、第2空間16Bの上流側の空間と第1空間16Aとがファンガイド17によって区画されており、第2空間16Bの下流側の空間と第1空間16Aとが制御部60によって区画されている。また、モータハウジング部16の下壁に形成された排気口23が、本実施の形態と比べて後側へ移動している。具体的には、当該排気口23が、制御部60の後端部の下側に配置されている。これにより、第2空間16Bの後端部とモータハウジング部16の外部とが排気口23によって連通されている。
【0060】
このため、冷却構造Sの変形例1では、ファン72から下側へ流出された下流側冷却風AR2が、ファンガイド17の前面に沿って下側へ流れると共に、ファンガイド17の連通孔17Eから制御部60の下側の空間に流入される。そして、制御部60の下側に流入された下流側冷却風AR2が、制御部60の下側を冷却しながら後側へ流れて、制御部60の下側の排気口23からモータハウジング部16の外部へ流出される。したがって、冷却構造Sの変形例1においても、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2によって制御部60を冷却することができる。したがって、冷却構造Sの変形例1においても、冷却性能を向上させることができる。
【0061】
また、冷却構造Sの変形例1では、下流側冷却風AR2の流路を拡大させるためハウジングが若干大型化するものの、下流側冷却風AR2によって制御部60をケース61の開口部61D側から冷却することができる。すなわち、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2によって制御部60を上下方向(制御部60の厚み方向)両側から冷却することができる。したがって、制御部60に対する冷却性能を効果的に向上させることができる。
【0062】
(冷却構造Sの変形例2) 次に、
図11及び
図12を用いて、冷却構造Sの変形例2について説明する。変形例2の冷却構造Sでは、以下に示す点を除いて、本実施の形態と同様に構成されている。すなわち、変形例2の冷却構造Sでは、排気口23が、モータハウジング部16の左右の側壁に形成されている。具体的には、排気口23が、側面視でモータ40のステータ43の後端部と重なるように、モータハウジング部16の上部及び下部に、それぞれ6箇所形成されている。なお、図示しているのは左側面部分のみであり、実際には同様の排気口構造が右側面にもあるため、本実施の形態において排気口23は計12箇所形成される。
【0063】
また、モータハウジング部16の内部には、排気口23の後側において、仕切壁25が形成されており、仕切壁25によって、モータ40の径方向外側の空間が前後に仕切られている。すなわち、変形例2では、冷却風通路70が、仕切壁25によって遮蔽されている。
【0064】
また、変形例2では、ファンガイド17の前側固定部17Bを除く部分が省略されており、モータ40とファン72との間には、流路変更部26が形成されている。流路変更部26は、側面視で、後側へ開放された断面が略U字形板状(リブ状)に形成された構成である。また、流路変更部26の略中央部には、前後方向に貫通した挿通孔26Aが形成されており、モータ40の駆動軸41が、挿通孔26A内を挿通している。すなわち、流路変更部26は底部分が開口した椀形状の部品であり、後側の縁部分がステータ43の前側端部に当接または近接するように設けられている。なお、流路変更部26は半分が一対の分割ハウジング15のうち一方に設けられ、もう半分が他方に設けられており、分割ハウジング15同士を組み付けることで形成される。
【0065】
そして、変形例2では、吸気口22からモータハウジング部16内に流入された上流側冷却風AR1が、モータ基板45の径方向内側及び径方向外側からモータ40の内部に流入し、モータ40の内部を前側へ流れる。具体的には、上流側冷却風AR1が、ステータ43の内部及びロータ42とステータ43との間の部分を前側へ流れる。そして、モータ40の内部を流れた上流側冷却風AR1が、流路変更部26に当たって、流路変更部26の後面に沿って駆動軸41側へ流れる。これにより、上流側冷却風AR1が挿通孔26Aからファン72に流入される。
【0066】
そして、ファン72に流入された上流側冷却風AR1が、下流側冷却風AR2としてファン72の径方向外側へ流出される。このとき、下流側冷却風AR2は、排気口23側へ流れる。このため、下流側冷却風AR2は、流路変更部26の前面に沿って後側へ流れると共に、モータ40の上側及び下側を後側へ流れる。そして、モータ40の上側及び下側を後側へ流れた下流側冷却風AR2は、排気口23からモータハウジング部16の外部に排気される。以上により、変形例2では、上流側冷却風AR1及び下流側冷却風AR2によって、モータ40(ステータ43)を冷却することができる。したがって、変形例2では、モータ40が本発明の被冷却部に対応し、モータ40に対する冷却性能を向上させることができる。
【0067】
また、変形例2では、モータ40の下側へ流れる下流側冷却風AR2が、モータ40と制御部60との間を流れて、排気口23からモータハウジング部16の外部に排気される。したがって、下流側冷却風AR2によって、制御部60及びモータ40を冷却することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、冷却構造Sをセーバソー10に適用して、セーバソー10の制御部60やモータ40を冷却することについて説明したが、冷却構造Sを他の作業機に適用してもよい。以下、冷却構造Sを他の作業機に適用した例を、作業機のバリエーションとして説明する。
【0069】
(作業機のバリエーション1)
図13を用いて、作業機としての丸鋸100に冷却構造Sを適用した例について説明する。丸鋸100は、被加工材に切断加工を施す工具である。なお、
図13は、丸鋸100を上側から見た一部破断した平面図である。そして、
図13に示される矢印FR及び矢印RHは、丸鋸100の前側及び右側を示している。
【0070】
丸鋸100は、ベース102と、丸鋸本体104と、を含んで構成されている。ベース102は、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成されている。丸鋸本体104は、ベース102の上側に配置されて、ベース102に連結されている。丸鋸本体104は、丸鋸本体104の外郭を構成するハウジング110と、ハウジング110内に配置されたモータ120と、モータ120を制御する制御部140と、を含んで構成されている。また、丸鋸本体104は、図示しない丸鋸刃を有しており、丸鋸刃がソーカバー152によって上側から覆われている。そして、モータ120の回転力が丸鋸刃に伝達されて、丸鋸刃が回転することで、被加工材に切断加工を施すようになっている。
【0071】
ハウジング110は、モータ120を収容するモータハウジング部111と、モータハウジング部111の後側に配置され且つ制御部140を収容するコントローラハウジング部112と、含んで構成されている。モータハウジング部111及びコントローラハウジング部112は、右側へ開放された凹状に形成されており、モータハウジング部111の左部とコントローラハウジング部112の左部とが、仕切壁113によって仕切られている。コントローラハウジング部112の左壁の前部には、複数の吸気口114が貫通形成されており、コントローラハウジング部112の左壁の後部には、複数の排気口115が貫通形成されている。
【0072】
モータ120は、モータハウジング部111内に収容されている。モータ120は、左右方向を軸方向とする駆動軸121と、駆動軸121の径方向外側に配置されたロータ122と、ロータ122の径方向外側に配置されたステータ123と、を含んで構成されている。また、ロータ122及びステータ123の右側には、円環板状のモータ基板125が設けられており、モータ基板125がステータ123のステータホルダ124に固定されている。
【0073】
駆動軸121の右端部には、モータ基板125の右側において、ファン130が一体回転可能に設けられており、ファン130は、遠心ファンとして構成されている。これにより、ファン130によって生成された下流側冷却風AR4が、後側へ流れて、コントローラハウジング部112の右端部内に流入される構成になっている。
【0074】
制御部140は、コントローラハウジング部112内に収容されている。制御部140は、制御部140の外郭を構成するケース142を有している。ケース142には、制御基板(図示省略)が収容されており、モータ120が、制御基板に接続されている。ケース142は、前後方向を厚み方向とし、前側へ開放された略箱形状に形成されて、コントローラハウジング部112に固定されている。具体的には、ケース142の右端部が、コントローラハウジング部112の固定リブ112Aに固定され、ケース142の底壁が、コントローラハウジング部112の固定リブ112Bに固定され、ケース142の左端部が、コントローラハウジング部112の固定リブ112C及び固定リブ112Dに固定されている。
【0075】
ケース142は、コントローラハウジング部112内を左右方向に延在されている。具体的には、ケース142の左端部が、コントローラハウジング部112の左壁の右側に隣接配置され、ケース142の右端部は、ファン130の後側に離間して配置されている。これにより、コントローラハウジング部112の内部が、制御部140のケース142によって前後方向に区画されている。そして、コントローラハウジング部112における制御部140の前側空間が第1空間116として構成され、第1空間116とハウジング110の外部とが吸気口114によって連通されている。一方、コントローラハウジング部112における制御部140の後側空間が第2空間117として構成され、第2空間117とハウジング110の外部とが排気口115によって連通されている。また、第2空間117の右端部は、前側へ開放されて、ファン130の後側に配置されている。
【0076】
そして、丸鋸100の作動時には、ファン130が、モータ120の駆動軸121と共に駆動軸121の軸回りに回転する。これにより、上流側冷却風AR3が、吸気口114からコントローラハウジング部112の第1空間116内に流入される。第1空間116内に流入された上流側冷却風AR3は、制御部140におけるケース142の開口側を冷却しながら、右側へ流れて固定リブ112Aに当たる。固定リブ112Aに当たった上流側冷却風AR3は、前側(ファン130側)へ流れる。そして、上流側冷却風AR3が、モータ基板125の板厚方向両側を流れて、ファン130に左側から流入される。
【0077】
ファン130に流入された上流側冷却風AR3は、下流側冷却風AR4としてファン130から後側へ流出されて、下流側冷却風AR4が、コントローラハウジング部112の第2空間117の右端部内に流れる。第2空間117の右端部内に流れた下流側冷却風AR4は、コントローラハウジング部112の後壁に当たって、排気口115側へ流れる。すなわち、下流側冷却風AR4が、制御部140のケース142の底壁を冷却しながら、第2空間117内を左側へ流れる。そして、下流側冷却風AR4が、排気口115からコントローラハウジング部112の外部に排気される。
【0078】
以上により、丸鋸100においても、ファン130の回転によって、ファン130に流入される上流側冷却風AR3と、ファン130から流出される下流側冷却風AR4と、ハウジング110内において生成し、上流側冷却風AR3(吸い込み風)及び下流側冷却風AR4(吐き出し風)によって制御部140を冷却する。したがって、丸鋸100においても、制御部140に対する冷却性能を向上させることができる。なお、図示はしていないが、下流側冷却風AR4にモータ120を冷却した後の空気が含まれていてもよい。
【0079】
また、丸鋸100においても、上流側冷却風AR3及び下流側冷却風AR4によって、制御部140を厚み方向両側から冷却する。これにより、制御部140に対する冷却性能を効果的に向上させることができる。本実施の形態においては、ケース142の開口側を上流側冷却風AR3が通る空間に位置させている。これは、丸鋸100が主として木材を加工する工具であり、木材の加工片が金属に比べて電子素子等に与える影響が小さいことと、ケース142から露出した電子素子を直接上流側冷却風AR3に晒して優先的に冷却することを考慮した結果である。
【0080】
(作業機のバリエーション2)
図14を用いて、作業機としてのハンマドリル200に冷却構造Sを適用した例について説明する。ハンマドリル200は、被加工材に穴あけ加工等を施す工具である。なお、
図14は、ハンマドリル200を右側から見た断面図である。そして、
図14に示される矢印UP及び矢印FRは、ハンマドリル200の上側及び前側を示している。
【0081】
ハンマドリル200は、ハンマドリル200の外郭を構成するハウジング210と、ハウジング210内に収容されたモータ220と、モータ220の駆動力によって駆動し且つ先端工具が取付けられた駆動機構250と、モータ220を制御する制御部240と、を含んで構成されている。そして、モータ220の駆動時には、モータ220から駆動機構250に伝達された駆動力によって、先端工具から被加工材に回転力や打撃力を付与するようになっている。
【0082】
ハウジング210は、中空状に形成されると共に、横向きの略P字形状に形成されている。ハウジング210は、ハウジング210における下部の前端部を構成するモータハウジング部211と、モータハウジング部211の後側に配置されたコントローラハウジング部212と、を含んで構成されており、仕切壁213によって、モータハウジング部211の下部とコントローラハウジング部212の下部との間が仕切られている。
【0083】
コントローラハウジング部212の下壁の前部には、複数の吸気口214が貫通形成されており、コントローラハウジング部212の下壁の後部には、複数の排気口215が形成されている。
【0084】
モータ220は、上下方向を軸方向とする駆動軸221と、駆動軸221の径方向外側に配置されたロータ222と、ロータ222の径方向外側に配置されたステータ223と、を含んで構成されている。また、ロータ222及びステータ223の上側には、円環板状のモータ基板225が設けられており、モータ基板225がステータ223のステータホルダ224に固定されている。
【0085】
駆動軸221の上端部には、モータ基板225の上側において、ファン230が一体回転可能に設けられており、ファン230は、遠心ファンとして構成されている。これにより、ファン230によって生成された下流側冷却風AR6が、ファン230から後側へ流れてコントローラハウジング部212の上端部内に流入される構成になっている。
【0086】
制御部240は、コントローラハウジング部212内に収容されている。制御部240は、制御部240の外郭を構成するケース242を有している。ケース242には、制御基板(図示省略)が収容されており、モータ220が、当該制御基板に接続されている。ケース242は、前後方向を厚み方向とし、後側へ開放された略箱形状に形成されて、コントローラハウジング部212に固定されている。
【0087】
ケース242は、コントローラハウジング部212内を上下方向に延在されている。具体的には、ケース242の下端部が、コントローラハウジング部212の下壁の上側に近接配置され、ケース242の上端部は、仕切壁213よりも上側に突出している。これにより、コントローラハウジング部212の内部が、制御部240のケース242によって前後方向に区画されている。そして、コントローラハウジング部212における制御部240の前側空間が第1空間216として構成され、第1空間216とコントローラハウジング部212の外部とが吸気口214によって連通されている。一方、コントローラハウジング部212における制御部240の後側空間が第2空間217として構成され、第2空間217とコントローラハウジング部212の外部とが排気口215によって連通されている。
【0088】
そして、ハンマドリル200の作動時には、ファン230が、モータ220の駆動軸221と共に駆動軸221の軸回りに回転する。これにより、上流側冷却風AR5が、吸気口214からコントローラハウジング部212の第1空間216内に流入される。第1空間216内に流入された上流側冷却風AR5は、制御部240のケース242の底壁を冷却しながら上側へ流れて、仕切壁213の上側からモータハウジング部211内に流入される。モータハウジング部211内に流入された上流側冷却風AR5は、モータ基板225と駆動軸221との間を上側に流れて、ファン230に流入される。
【0089】
ファン230に流入された上流側冷却風AR5は、下流側冷却風AR6としてファン230から後側へ流出されて、下流側冷却風AR6が、コントローラハウジング部212の第2空間217の上端部内に流れる。第2空間217の上端部に流れた下流側冷却風AR6は、コントローラハウジング部212の後壁に当たって、制御部240をケース242の開口側から冷却しながら、第2空間217内を下側へ流れる。そして、下流側冷却風AR6が、排気口215からコントローラハウジング部212の外部に排気される。
【0090】
以上により、ハンマドリル200においても、ファン230の回転によって、ファン230に流入される上流側冷却風AR5と、ファン230から流出される下流側冷却風AR6と、ハウジング210内において生成し、上流側冷却風AR5及び下流側冷却風AR6によって制御部240を冷却する。したがって、ハンマドリル200においても、制御部240に対する冷却性能を向上させることができる。
【0091】
また、ハンマドリル200においても、上流側冷却風AR5及び下流側冷却風AR6によって、制御部240を厚み方向両側から冷却する。これにより、制御部240に対する冷却性能を効果的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0092】
10…セーバソー(作業機)、12…ハウジング、15…分割ハウジング、16A…第1空間、16B…第2空間、17…ファンガイド(整流部)、17A…ガイド孔、17D…露出孔(露出部)、21…挟持部、22…吸気口、23…排気口、40…モータ、60…制御部(被冷却部)、61…ケース、61A…底壁、61D…開口部、62…制御基板、72…ファン、100…丸鋸(作業機)、110…ハウジング、114…吸気口、115…排気口、116…第1空間、117…第2空間、120…モータ、130…ファン、140…制御部(被冷却部)、142…ケース、200…ハンマドリル(作業機)、210…ハウジング、214…吸気口、215…排気口、216…第1空間、217…第2空間、220…モータ、230…ファン、240…制御部(被冷却部)、242…ケース、AR…冷却風、AR1…上流側冷却風、AR2…下流側冷却風、AR3…上流側冷却風、AR4…下流側冷却風、AR5…上流側冷却風、AR6…下流側冷却風