(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】二次電池、電子機器及び電動工具
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240820BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240820BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240820BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240820BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M4/02 Z
H01M50/533
H01M50/538
(21)【出願番号】P 2022578056
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2021040362
(87)【国際公開番号】W WO2022163049
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2021010375
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彬
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-166030(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001639(WO,A1)
【文献】特開2001-313079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0587
H01M 4/02
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層された電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
前記正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
前記負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と、少なくとも前記負極箔の長手方向に延在する負極活物質非被覆部とを有し、
前記正極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端部の一方において、前記正極集電板と接合され、
前記負極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端部の他方において、前記負極集電板と接合され、
前記電極巻回体は、前記正極活物質非被覆部及び前記負極活物質非被覆部の何れか一方又は両方が、前記巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、前記平坦面に形成された溝とを有し、
前記中心軸を通る平面で切断した断面で断面視した場合に、
前記曲折された箇所に形成される孔部は、前記積層方向と略平行である第1の径及び第2の径を有し、
前記第1の径は、前記第2の径よりも前記電極巻回体内部側に位置し、
前記第1の径から前記第2の径にかけて径が略連続的に大きくなる
二次電池。
【請求項2】
前記断面視において、前記曲折された箇所に対して接合される集電板の底面を結ぶ直線を基準線とした場合に、
前記第1の径は、前記基準線から前記電極巻回体の内側に向かう0.5~1.5mmの範囲において最も小さい径の大きさであり、
前記第2の径は、前記基準線から前記電極巻回体の内側に向かう0~0.2mmの範囲において最も小さい径の大きさである
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記基準線における前記集電板が有する孔に対応する箇所の大きさが、前記第1の径及び前記第2の径より大きい
請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記断面視において、前記集電板の内側周縁部と隣接する領域に位置する活物質非被覆部の密集度が、前記集電板の外側周縁部と隣接する領域に位置する前記活物質非被覆部の密集度より大きい
請求項2又は3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極は、更に、長手方向の巻回開始側及び巻回終止側のそれぞれの端部に、負極活物質非被覆部を有する
請求項1から4までの何れかに記載の二次電池。
【請求項6】
請求項1から5までの何れかに記載の二次電池を有する電子機器。
【請求項7】
請求項1から5までの何れかに記載の二次電池を有する電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電子機器及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電動工具や自動車といった高出力を要する用途に向けても開発されるようになってきている。高出力を行う一つの方法としては、電池から比較的大電流を流すハイレート放電が挙げられる。ハイレート放電では、大電流を流すことから、電池の内部抵抗を低くすることが望まれる。
【0003】
また、巻回型の電極構造を有するリチウムイオン電池は、電極巻回体の中心に貫通孔を有する構造が一般的である。例えば、特許文献1には、中央の貫通孔を拡径させた非水系二次電池が記載されている。また、特許文献2には、集電体の露出部が中央の貫通孔に向かって折り曲げられた電気化学素子(電池)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、拡径されるものがセパレータである。セパレータを拡径させる際にセパレータが剥がれる虞がある。また、特許文献2に記載の技術では、折り曲げられた集電板露出部によって貫通孔が塞がれる、若しくは、中央の貫通孔の径が不必要に小さくなってしまい、溶接棒を貫通孔に挿入できない虞がある。
【0007】
従って、本発明は、上述した不都合を解決する新規且つ有用な二次電池、当該二次電池を用いた電子機器及び電動工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層された電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と、少なくとも負極箔の長手方向に延在する負極活物質非被覆部とを有し、
正極活物質非被覆部は、電極巻回体の端部の一方において、正極集電板と接合され、
負極活物質非被覆部は、電極巻回体の端部の他方において、負極集電板と接合され、
電極巻回体は、正極活物質非被覆部及び負極活物質非被覆部の何れか一方又は両方が、巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、平坦面に形成された溝とを有し、
中心軸を通る平面で切断した断面で断面視した場合に、
曲折された箇所に形成される孔部は、積層方向と略平行である第1の径及び第2の径を有し、
第1の径は、第2の径よりも電極巻回体内部側に位置し、
第1の径から第2の径にかけて径が略連続的に大きくなる
二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも実施形態によれば、電極巻回体の貫通孔の周面に位置するセパレータ等が剥がれたり、溶接棒を貫通孔に挿入できない等の不良が発生してしまうことを防止できる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン電池の断面図である。
【
図4】
図4は、巻回前の正極、負極、及び、セパレータを示す図である。
【
図5】
図5Aは一実施形態に係る正極集電板の平面図であり、
図5Bは一実施形態に係る負極集電板の平面図である。
【
図6】
図6Aから
図6Fは、一実施形態に係るリチウムイオン電池の組み立て工程を説明する図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、一実施形態に係る溝形成用治具の構成例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る溝形成用治具の部分拡大図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、一実施形態に係る平坦面形成用治具の構成例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係るリチウムイオン電池の一部拡大断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
【
図15】
図15は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
【
図16】
図16は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
<応用例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。なお、説明の理解を容易とするために、各図における一部の構成を拡大、強調したり、若しくは縮小したり、一部の図示を簡略化する場合もある。
【0012】
<一実施形態>
[リチウムイオン電池の構成例]
本発明の一実施形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。
図1~
図5を参照しつつ、一実施形態に係るリチウムイオン電池(リチウムイオン電池1)の構成例に関して説明する。
図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、例えば、
図1に示すように、電池缶11の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。なお、以下の説明において、特に断らない限り、
図1の紙面に向かって水平方向をX軸方向、奥行方向をY軸方向、垂直方向(リチウムイオン電池1の中心軸(巻回軸とも適宜、称し、
図1において一点鎖線で示される軸))の延在方向)をZ軸方向と適宜、称する。
【0013】
リチウムイオン電池1は、概略的には円筒状の電池缶11を有し、電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電極巻回体20とを備えている。なお、リチウムイオン電池1は、電池缶11の内部に、例えば、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上をさらに備えていてもよい。
【0014】
(電池缶)
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この電池缶11は、例えば、一端面が開放されると共に他端面が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、電池缶11は、開放された一端面(開放端面11N)を有している。この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。電池缶11の表面に、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0015】
(絶縁板)
絶縁板12,13は、電極巻回体20の中心軸(電極巻回体20の端面の略中心を通り
図1のZ軸と平行な方向)に対して略垂直な面を有する円板状の板である。また、絶縁板12,13は、例えば、互いに電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0016】
(かしめ構造)
電池缶11の開放端面11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介してかしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。
【0017】
(電池蓋)
電池蓋14は、主に、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端面11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0018】
(ガスケット)
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ガスケット15の表面に、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0019】
ガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料を用いることができる。中でも、絶縁性材料としては、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を十分に封止することができるからである。
【0020】
(安全弁機構)
安全弁機構30は、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0021】
(電極巻回体)
円筒形状のリチウムイオン電池1では、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を挟んで積層され、且つ、渦巻き状に巻回されて電解液に含浸された状態で、電池缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極活物質層21Bを形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層22Bを形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0022】
図2Aは巻回前の正極21を正面から視た図であり、
図2Bは
図2Aの正極21を側面から視た図である。正極21は、正極箔21Aの一方の主面及び他方の主面に正極活物質層21Bで被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、正極活物質層21Bで被覆していない部分である正極活物質非被覆部21Cを有する。なお、以下の説明において、正極活物質層21Bで被覆した部分を正極活物質被覆部21Bと適宜、称する。また、正極箔21Aの一方の主面に、正極活物質被覆部21Bが設けられる構成でもよい。
【0023】
図3Aは巻回前の負極22を正面から視た図であり、
図3Bは
図3Aの負極22を側面から視た図である。負極22は、負極箔22Aの一方の主面及び他方の主面に負極活物質層22Bで被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、負極活物質層22Bで被覆していない部分である負極活物質非被覆部22Cを有する。なお、以下の説明において、負極活物質層22Bで被覆した部分を負極活物質被覆部22Bと適宜、称する。また、負極箔22Aの一方の主面に、負極活物質被覆部22Bが設けられる構成でもよい。
【0024】
図3Aに示すように、負極活物質非被覆部22Cは、例えば、負極22の長手方向(
図3におけるX軸方向)に延在している第1の負極活物質非被覆部221Aと、負極22の巻回開始側において負極22の短手方向(
図3におけるY軸方向。幅方向とも適宜、称する)に延在している第2の負極活物質非被覆部221Bと、負極22の巻回終止側において負極22の短手方向(
図3におけるY軸方向)に延在している第3の負極活物質非被覆部221Cとを有している。なお、
図3Aにおいて、第1の負極活物質非被覆部221Aと第2の負極活物質非被覆部221Bとの境界、及び、第1の負極活物質非被覆部221Aと第3の負極活物質非被覆部221Cとの境界のそれぞれには点線を付している。
【0025】
本実施形態に係る円筒形状のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20は正極活物質非被覆部21Cと第1の負極活物質非被覆部221Aとが互いに逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。
【0026】
電極巻回体20の中心軸を含む領域には、貫通孔26が設けられている。具体的には、貫通孔26は、正極21、負極22及びセパレータ23が積層した積層物の略中心にできる孔部である。貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、棒状の溶接器具(以下、溶接棒と適宜、称する)等を挿入する孔として使用される。
【0027】
電極巻回体20の詳細について説明する。
図4に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。正極21は、正極活物質被覆部21B(
図4においてドットが疎に付された部分)と正極活物質非被覆部21Cとの境界を被覆する絶縁層101(
図4における灰色の領域部分)とを更に有している。絶縁層101の幅方向の長さは、例えば、3mm程度である。セパレータ23を介して負極活物質被覆部22Bに対向する正極活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極活物質被覆部22Bと正極活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときのリチウムイオン電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、リチウムイオン電池1に衝撃が加わったときに衝撃を吸収し、正極活物質非被覆部21Cが折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0028】
ここで、
図4に示すように、正極活物質非被覆部21Cの幅方向の長さをD5とし、第1の負極活物質非被覆部221Aの幅方向の長さをD6とする。一実施形態ではD5>D6であることが好ましく、例えばD5=7(mm)、D6=4(mm)である。正極活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さをD7とし、第1の負極活物質非被覆部221Aがセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さをD8とした場合に、一実施形態ではD7>D8であることが好ましく、例えば、D7=4.5(mm)、D8=3(mm)である。
【0029】
正極箔21Aと正極活物質非被覆部21Cとは例えばアルミニウムなどからなり、負極箔22Aと負極活物質非被覆部22Cとは例えば銅などからなる。このように、一般的に正極活物質非被覆部21Cの方が負極活物質非被覆部22Cよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施形態では、D5>D6且つD7>D8であることがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部22Cとが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程(詳細は後述)において、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24とのレーザ溶接による接合を容易に行うことができる。また、負極活物質非被覆部22Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程において、負極活物質非被覆部22Cと負極集電板25とのレーザ溶接による接合を容易に行うことができる。
【0030】
(集電板)
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極との一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、本実施形態のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20の一方の端面である端面41に正極集電板24を配置し、電極巻回体20の他方の端面である端面42に負極集電板25を配置する。そして、正極集電板24と端面41に存在する正極活物質非被覆部21Cとを多点で溶接し、また、負極集電板25と端面42に存在する負極活物質非被覆部22C(具体的には第1の負極活物質非被覆部221A)とを多点で溶接することで、リチウムイオン電池1の内部抵抗を低く抑え、ハイレート放電を可能としている。
【0031】
図5A及び
図5Bに、集電板の一例を示す。
図5Aが正極集電板24であり、
図5Bが負極集電板25である。正極集電板24及び負極集電板25は電池缶11に収容される(
図1参照)。正極集電板24の材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板であり、負極集電板25の材料は、例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材でできた金属板である。
図5Aに示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした扇状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。扇状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26や後述する孔部(孔部73)に対応する位置である。
【0032】
図5Aのドットで示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面のドット部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0033】
負極集電板25の形状は正極集電板24と殆ど同じ形状だが、帯状部の形状が異なっている。
図5Bの負極集電板の帯状部34は、正極集電板24の帯状部32より短く、絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部(プロジェクション)37が設けられている。抵抗溶接時には、電流が突起部37に集中し、突起部37が溶けて帯状部34が電池缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には扇状部33の中央付近に孔36があいていて、孔36の位置は貫通孔26に対応する位置である。正極集電板24の扇状部31と負極集電板25の扇状部33は扇形の形状をしているため、端面41,42の一部を覆うようになっている。全部を覆わないことにより、リチウムイオン電池1を組み立てる際に電極巻回体20へ電解液を円滑に浸透させることができ、且つ、リチウムイオン電池1が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスをリチウムイオン電池1外へ放出しやすくすることができる。
【0034】
(正極)
正極活物質層21Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0035】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0036】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0037】
(負極)
負極22を構成する負極箔22Aの表面は、負極活物質層22Bとの密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0038】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0039】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0040】
(セパレータ)
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0041】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層には、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0042】
(電解液)
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0043】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0044】
なお、本明細書において、正極及び負極の何れでもよい場合には、正極及び負極の記載を省略する場合がある。例えば、単に活物質非被覆部と称する場合には、正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aの何れを意味してもよい。また、単に集電板と称する場合には、正極集電板24及び負極集電板25の何れを意味してもよい(但し、正極側の構成同士及び負極側の構成同士が対応するように解釈される。)。
【0045】
[リチウムイオン電池の作製方法]
次に、
図6Aから
図6Fを参照して、一実施形態に係るリチウムイオン電池1の作製方法について説明する。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極活物質被覆部21Bとし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極活物質被覆部22Bとした。このとき、正極箔21Aの幅方向の一端側に正極活物質が塗着されていない正極活物質非被覆部21Cを設け、負極箔22Aに、負極活物質が塗着されていない負極活物質非被覆部22C(第1の負極活物質非被覆部221A、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221C)を設けた。次に、正極21と負極22とに対して乾燥等の工程を行った。そして、正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部22Cとが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように渦巻き状に巻回して、
図6Aのような電極巻回体20を作製した。
【0046】
次に、溝形成用治具(後述する溝形成用治具51)を用いて、
図6Bに示すように、溝43を形成(作製)した。具体的には、溝形成用治具51の端面(後述する端面53)を端面41,42に対して垂直に押し付けることで、端面41と端面42の一部に溝43を作製した。この方法により、貫通孔26から放射状に延びる溝43を作製した。溝43は、例えば、端面41,42のそれぞれの外縁部から貫通孔26まで延在している。なお、
図6Bに示される、溝43の数や配置はあくまでも一例であって図示した例に限定されるものではない。
【0047】
そして、平坦面形成用治具(後述する平坦面形成用治具61)を用いて、
図6Cに示すように、平坦面を形成した。具体的には、平坦面形成用治具61の端面(後述する端面63)を両極側から同時に同じ圧力で端面41,42に対して略垂直方向に押しつけ荷重を印加した。これにより、正極活物質非被覆部21C及び負極活物質非被覆部22C(より具体的には、第1の負極活物質非被覆部221A)が巻回構造の中心軸に向かって曲折し重なり合うように折り曲げることで、端面41,42が平坦面となるようにした。その後、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザ溶接し、端面42に負極集電板25の扇状部33をレーザ溶接し、接合した。
【0048】
続いて、
図6Dに示すように、正極集電板24の帯状部32及び負極集電板25の帯状部34を折り曲げ、正極集電板24に絶縁板12、負極集電板25に絶縁板13を貼り付け、
図6Eに示される電池缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入した。そして、溶接棒(不図示)を押し当てることにより、負極集電板25を電池缶11の缶底に溶接した。電解液を電池缶11内に注入後、
図6Fに示すように、ガスケット15及び電池蓋14にて封止を行った。以上のようにして、リチウムイオン電池1を作製した。
【0049】
なお、絶縁板12及び絶縁板13は、絶縁テープであってもよい。また、接合方法は、レーザ溶接以外の他の方法であってもよい。また、溝43は、正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aを曲折した後も平坦面内に残っており、溝43の無い部分が、正極集電板24又は負極集電板25と接合されるが、溝43が正極集電板24や負極集電板25の一部と接合されていてもよい。
【0050】
なお、本明細書における「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24、及び、第1の負極活物質非被覆部221Aと負極集電板25とが接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む意味である。
【0051】
[溝形成用治具及び平坦面形成用治具]
上述した方法によりリチウムイオン電池1を作製する際に、負極集電板25と電池缶11の缶底とを溶接するために貫通孔26に溶接棒を挿入する必要がある。そのため、溶接棒を挿入する工程の前工程において貫通孔26が閉塞されてはならない。そこで、溝形成用治具51には、溝43を形成する溝形成工程において、位置決めの容易性を向上し、さらに貫通孔26が閉塞されないようにするため、貫通孔26に挿入される棒状のピンが端面の中央付近に設けられる。同様に、平坦面形成用治具61にも、平坦面を形成する平坦面形成工程において、曲折された正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aによって貫通孔26が閉塞されないように、貫通孔26に挿入される棒状のピンが端面の中央付近に設けられる。
【0052】
係る構成の場合には、ピンの径の大きさを適切な大きさにする必要がある。即ち、ピンの径が大きすぎると、最内周側に位置するセパレータ、即ち、貫通孔26の周面を形成するセパレータがピンによって剥離したり傷ついてしまう虞がある。あるいは、負極活物質被覆部等が周面に露出してしまい不良のリチウムイオン電池1となる虞がある。反対に、ピンの径が小さすぎると、曲折された正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aによってピンが把持され抜けにくくなる虞がある。あるいは、次工程において溶接棒が貫通孔26に入らなくなる虞がある。本実施形態では、係る点を考慮して、溝形成用治具及び平坦面形成用治具を適切な形状としている。
【0053】
図7A、
図7B及び
図8は、溝形成用治具51の構成例を説明するための図である。具体的には、
図7Aは溝形成用治具51の正面図であり、
図7Bは溝形成用治具51の一方側の端面である端面53の構成例を示す図である。
【0054】
図7Aに示すように、溝形成用治具51は、略円筒形状の本体部52を有している。
図7Bに示すように、本体部52は端面53を有している。端面53の略中央からは、ピン54が突出している。また、端面53には薄板状の板状部55が形成されている。本実施形態では、ピン54を中心として放射状に延在する8個の板状部によって板状部55が形成されている。
【0055】
図8は、ピン54を拡大して示した図である。なお、
図8では、板状部55の図示を省略している。ピン54は、先端側(本体部52とは反対側)が尖っている略三角錐状の先鋭部54Aを有している。先鋭部54Aの円形状の底面からは、径が略一定である略円筒状の中間部54Bが設けられている。中間部54Bの一端側(先鋭部54Aとは反対側)には、径が本体部52に向かって大きくなる略円錐台形状のテーパー部54Cが設けられている。先鋭部54Aの円形状の底面及び中間部54Bは、貫通孔26の径よりもやや小さい大きさの径を有する。先鋭部54A、中間部54B及びテーパー部54Cは、例えば、樹脂や金属により構成され、且つ、一体的に形成されたものであるが、別部品が接着等されたものでもよい。
【0056】
図9は、平坦面形成用治具61の構成例を説明するための図である。具体的には、
図9Aは平坦面形成用治具61の正面図であり、
図9Bは平坦面形成用治具61の一方の端面である端面63の構成例を示す図である。
【0057】
図9Aに示すように、平坦面形成用治具61は、略円筒形状の本体部62を有している。本体部62は、端面63を有している。
図9Bに示すように、端面63の略中央からは、ピン64が突出している。端面63におけるピン64以外の箇所は平坦となっている。ピン64は、ピン54と略同じ形状を有している。即ち、ピン64は、先鋭部64A、中間部64B、及び、テーパー部64Cを有している。先鋭部64Aの略円形の底面及び中間部64Bは、貫通孔26の径よりもやや小さい大きさの径を有する。先鋭部64A、中間部64B及びテーパー部64Cは、例えば、樹脂や金属により構成され、且つ、一体的に形成されたものであるが、別部品が接着等されたものでもよい。
【0058】
溝形成用治具51及び平坦面形成用治具61のそれぞれの作用について説明する。溝形成用治具51は、溝43を形成する溝形成工程(
図6B参照)で用いられる。例えば、端面41側の貫通孔26の直上付近、すなわち、折り曲げられる前の正極活物質非被覆部21Cや折り曲げられる前の第1の負極活物質非被覆部221Aによって形成される孔部に溝形成用治具51のピン54が挿入されることで溝形成用治具51の位置決めがなされる。位置決めした状態で溝形成用治具51を電極巻回体20の内側に向かって押圧することで、溝形成用治具51が端面41に8個の溝43を形成する。端面42についても同様の工程が行われる。端面41及び端面42のそれぞれに対して同時に溝形成工程が行われてもよい。押圧の際に貫通孔26にピン54が挿入されることから、溝43の形成時に貫通孔26が閉塞されてしまうことを防止できる。
【0059】
平坦面形成用治具61は、平坦面形成工程(
図6C参照)で用いられる。例えば、端面41側の貫通孔26の直上付近に平坦面形成用治具61のピン64を挿入することで平坦面形成用治具61を位置決めする。位置決めした状態で平坦面形成用治具61を電極巻回体20の内側に向かって押圧することで、平坦面形成用治具61が正極活物質非被覆部21Cを折り曲げ、端面41を平坦にすることで平坦面を形成する。端面42についても同様の工程が行われる。端面41及び端面42のそれぞれに対して同時に平坦面形成工程が行われてもよい。押圧の際に貫通孔26にピン64が挿入されることから、平坦面の形成時に、折り曲げられた正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aによって貫通孔26が閉塞されてしまうことを防止できる。なお、上述した溝形成工程及び平坦面形成工程は、人手で行われてもよいし所定の装置によって自動で行われてもよい。
【0060】
図10は、作製されたリチウムイオン電池1を、中心軸を通る平面で切断した断面(電極巻回体20の端面41,42に溝43がない箇所の断面)を断面視した図である。なお、
図10は正極21側を示す図であるが、以下の説明は、負極22側に対しても同様に適用できる。また、
図10では、安全弁機構30等の図示を適宜、省略している。
【0061】
貫通孔26の周面は、例えば、セパレータ23であり、電極巻回体20の内周側は、積層方向(
図10におけるX軸方向)に沿って積層された4層のセパレータ23により構成されている。また、平坦面形成工程によって正極活物質非被覆部21Cが曲折されることで、折り曲げ部71が形成されており、折り曲げ部71の外側の面が平坦面72となっている。平坦面72に対して正極集電板24が溶接されている。
【0062】
溝形成工程及び平坦面形成工程においてピン54の一部及びピン64の一部が貫通孔26に挿入され、且つ、ピン54の一部及びピン64の一部が貫通孔26の直上に位置することで、各工程において貫通孔26が閉塞されず、更に、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられた箇所である折り曲げ部71に孔部73が形成される。貫通孔26と孔部73とは連通しており、更に、孔部73は正極集電板24の孔35と連通している。
【0063】
具体的には、ピン54の挿入時には、ピン54の先鋭部54Aが貫通孔26に、中間部54Bが貫通孔26及び孔部73を跨ぐ位置に、テーパー部54Cが孔部73の上側寄りに位置する。また、ピン64の挿入時には、ピン64の先鋭部64Aが貫通孔26に、中間部64Bが貫通孔26及び孔部73を跨ぐ位置に、テーパー部64Cが孔部73の上側寄りに位置する。これにより、
図10のようにリチウムイオン電池1を断面視した場合に、孔部73はテーパー部54Cやテーパー部64Cに対応する形状、即ち、内側から外側に向かって幅広となる。
【0064】
ここで、
図10に示すような断面視において、孔部73は、積層方向(X軸方向)と略平行である第1の径DA及び第1の径DAよりも所定以上離れた箇所に第2の径DBを有する。第1の径DAは、第2の径DBよりも電極巻回体20内部側に位置する。上述したように、孔部73の形状がテーパー状となることから、第1の径DAから第2の径DBにかけて径が略連続的に大きくなる。ここで、略連続的とは、第1の径DAから第2の径DBにかけて、正極活物質非被覆部21Cの一部が中心軸に向かって突出して径が部分的に狭くなることを許容する意味である。
【0065】
ここで、
図10に示すように、折り曲げ部71に対して接合される正極集電板24の底面を結ぶ直線を基準線DCとする。上述した第1の径DAは、基準線DCから電極巻回体20の内側に向かう0.5~1.5mmの範囲(本実施形態に係るリチウムイオン電池1では、貫通孔26の開放端付近の範囲)において最も小さい径の大きさである。また、第2の径DBは、基準線DCから電極巻回体20の内側に向かう0~0.2mmの範囲において最も小さい径の大きさである。なお、0mmの場合は、第2の径DBと基準線DCとは一致する。折り曲げ部71は、正極活物質非被覆部21Cが均一に積層されたものではないため若干の誤差が生じるものの、第1の径DAは、先鋭部54A、64Aの最大径(又は中間部54B、64Bの径)と略同じ大きさであり、第2の径DBは、テーパー部54C、64Cの最大径と略同じに大きさになる。
【0066】
なお、基準線DCにおける正極集電板24が有する孔35に対応する箇所の大きさ、即ち、孔35の径に対応する大きさは、第1の径DA及び第2の径DBより大きいことが好ましい。これにより、曲折された正極活物質非被覆部21Cが多少位置ズレした場合でも、正極集電板24を平坦面72に確実に接触させることができ、溶接不良の発生を防止することができる。
【0067】
[密集度について]
なお、本実施形態に係るリチウムイオン電池1は、上述した断面視において、集電板の内側周縁部と隣接する領域に位置する活物質非被覆部の密集度が、集電板の外側周縁部と隣接する領域に位置する活物質非被覆部の密集度より大きくなる。
【0068】
例えば、
図11に示すように、正極集電板24の内側周縁部(内側周縁部24A)に隣接する領域として領域AR1が設定される。また、正極集電板24の外側周縁部(外側周縁部24B)に隣接する領域として領域AR2が設定される。領域AR1は、例えば、正極集電板24の底面における中心側のコーナーCN1を頂点として底面に接する正方形(1mm×1mm)に対応する領域である。領域AR2は、例えば、正極集電板24の底面における外側のコーナーCN2を頂点として底面に接する正方形(1mm×1mm)に対応する領域である。
【0069】
密集度は、領域全体の面積に対する正極活物質非被覆部21Cが占める面積の比率、即ち
(正極活物質非被覆部21Cの占める面積)/(領域全体の面積)
により定義される。
本実施形態では、領域AR1における密集度が領域AR2における密集度より大きくなる。
【0070】
密集度の測定方法の一例について説明する。まず、上述した作製方法により作製されたリチウムイオン電池1を、高さ1/2付近で輪切りにし、樹脂に埋め込む。次に、リチウムイオン電池1の中心軸を含む面で切断し、マイクロスコープで断面観察する。観察結果に基づいて画像データ取得装置で領域AR1、AR2のそれぞれに対応するカラー画像を取得する。そして、所定の画像処理ソフトによって、各カラー画像を2値化し、正極活物質非被覆部21Cとそれ以外とに分離する。分離結果に基づいて密集度が計算される。なお、これまで正極21側の構成を例にして説明したが、負極22側の構成についても同様のことが言える。
【0071】
[本実施形態により得られる効果]
本実施形態によれば、例えば、下記の効果を得ることができる。
リチウムイオン電池1において、折り曲げられた活物質非被覆部により形成される孔部の径の大きさを適切な大きさにすることができる。すなわち、貫通孔26に通じる孔部73の間口部分の径を大きくすることで、負極集電板25と電池缶11の缶底を溶接する溶接棒を挿入し易くすることができる。また、貫通孔26に通じる孔部73の間口部分の径を大きくすることで、溶接の際に溶接棒が正極活物質非被覆部21Cをこすり、セパレータ23を巻き込むことを防止できる。
【0072】
また、根元部分より先端の径が小さくなる溝形成用治具51及び平坦面形成用治具61を用いることで、溝形成工程や平坦面形成工程において、貫通孔26の周面を形成するセパレータ23が治具により傷ついたり、剥離してしまうことで負極活物質被覆部22Bが露出してしまうことを防止できる。また、中間部54B、64Bによって、貫通孔26と貫通孔26の開放端付近における径(例えば、第1の径DA)とを略同じ大きさにすることができる。これにより、内周側に位置するセパレータ23の上部に正極活物質非被覆部21Cを確実に配置できるので、セパレータ23の短手方向の端面が露出してしまい、ここに溶接棒が接触してしまうことを防止できる。また、中間部54B、64Bによって、貫通孔26の周面を形成するセパレータ23が貫通孔26を塞がない状態に整形することができる。
【0073】
リチウムイオン電池の作製時において、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41,42に対して垂直に押し付ける際に(
図6Bに示す工程を行う際に)、電極巻回体20の巻回開始側(電極巻回体20の最内周にある正極又は負極の長手方向の端側)において、負極活物質被覆部22Bから負極活物質が剥離することがある。この剥離は端面42に対して押し付ける際に発生するストレスが原因と考えられる。剥離した負極活物質が電極巻回体20内部に侵入し、これにより内部ショートが発生する虞がある。本実施形態では、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221Cを設けているので負極活物質の剥離を防ぐことができ、内部ショートの発生を防止できる。係る効果は、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221Cの一方のみを設ける構成によっても得られるが、両方設けることがより好ましい。
【0074】
電極巻回体20の巻回終止側において、負極22は、正極活物質被覆部21Bに対向しない側の主面で、負極活物質非被覆部22Cの領域を有することができる。正極活物質被覆部21Bに対向しない主面に負極活物質被覆部22Bを有したとしても、それは充放電への寄与が低いと考えられるからである。負極活物質非被覆部22Cの領域は、電極巻回体20の3/4周以上5/4周以下であることが好ましい。このとき、充放電への寄与が低い負極活物質被覆部22Bを設けていないため、同じ電極巻回体20の容積に対して、初期容量を高くすることができる。
【0075】
本実施形態では、電極巻回体20は、正極活物質非被覆部21Cと第1の負極活物質非被覆部221Aとが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、端面41には、正極活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端面42には、第1の負極活物質非被覆部221Aが集まる。係る正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aが曲折されて、端面41,42が平坦面となっている。曲折する方向は端面41,42の外縁部から貫通孔26に向かう方向であり、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なって曲折している。端面41が平坦面となることで、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24との接触を良好とすることができ、且つ、第1の負極活物質非被覆部221Aと負極集電板25との接触を良好とすることができる。また、端面41,42が平坦面となっていることで、リチウムイオン電池1の低抵抗化を実現することができる。
【0076】
また、正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aを曲折することで、一見、端面41,42を平坦面にすることが可能に思われるが、曲折する前に何らの加工もないと、曲折するときに端面41,42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41,42が平坦面とならない虞がある。ここで、「シワ」や「ボイド」とは曲折した正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aに偏りが生じ、端面41,42が平坦面とはならない部分を意味する。本実施形態では、端面41及び端面42側のそれぞれに貫通孔26から放射方向に予め溝43が形成されるようにしている。溝43が形成されていることで、このシワやボイドの発生を抑制することができ、端面41,42をより平坦とすることができる。なお、正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aの何れか一方を曲折してもよいが、好ましくは、両方が曲折される。
【実施例】
【0077】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用い、第1の径DAと第2の径DBとの大小関係を変化させながら、正極活物質非被覆部21C及び負極活物質非被覆部22Cの成型不良率及び溶接棒挿入不良率のそれぞれについて評価した実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0078】
以下の全ての実施例及び比較例において、電池サイズを21700(直径21mm,高さ70mm)とし、負極活物質被覆部22Bの幅方向の長さを62mmとし、セパレータ23の幅方向の長さを64mmとした。セパレータ23を正極活物質被覆部21Bと負極活物質被覆部22Bの全範囲を覆うように重ね、正極活物質非被覆部21Cの幅方向の長さを7mmとした。また、溝43の数を8とし略等角間隔となるように配置した。
【0079】
リチウムイオン電池1の断面観察は以下のようにして行った。
上述した作製方法により作製されたリチウムイオン電池1を、高さ1/2付近で輪切りにし、樹脂に埋め込む。次に、リチウムイオン電池1の中心軸を含む面で切断し、マイクロスコープで断面観察を行った。
上述したように、集電板の底面を結ぶ直線を基準線DCとし、基準線DCから電極巻回体20の内側に向かう0.5~1.5mmの範囲において最も小さい径の大きさを第1の径DAとして測定した(1/100の位を四捨五入した。)。また、基準線DCから電極巻回体20の内側に向かう0~0.2mmの範囲において最も小さい径の大きさを第2の径DBとして測定した(1/100の位を四捨五入した。)。
図10、
図12、
図13はそれぞれ、実施例1、比較例1、比較例2に対応する図である。
【0080】
[実施例1]
リチウムイオン電池1を上述した工程により作製した。この際、
図10に示すように、断面観察を実施したとき正負極共に第1の径DAが2.8mm、第2の径DBが3.2mmとなるように、正負極それぞれについて、ピン54、ピン64を用いて活物質非被覆部を成型した。
【0081】
[比較例1]
ピン54、64に替えて直径の大きさが3.0mmである円柱の形状とした。そして、
図12に示すように、断面観察を実施したとき正負極共に第1の径DAが3.0mm、第2の径DBが同じ3.0mmとなるように、正負極それぞれについて活物質非被覆部を成型した。その他は、実施例1と同様にリチウムイオン電池1を作製した。
【0082】
[比較例2]
ピン54、64に替えて直径の大きさが2.4mmである円柱の形状とした。そして、
図13に示すように、断面観察を実施したとき正負極共に第1の径DAが2.8mm、第2の径DBが2.4mmとなるように、正負極それぞれについて、活物質非被覆部を成型した。その他は、実施例1と同様にリチウムイオン電池1を作製した。
【0083】
[評価]
平坦面形成後の断面観察において、最内周のセパレータが変形し、最内周負極活物質が露出しているものを不良とした。不良本数を、作成した総数(サンプル数)で割ったときの割合を活物質非被覆部成型不良率と定義した。
電池缶11の缶底と負極集電板25とを溶接する直径2.2mmのクロム銅製溶接棒を正極側から貫通孔26に挿入した。孔部73の径が小さすぎるため溶接棒が挿入できなかったもの、若しくは、セパレータ23が変形し負極活物質被覆部22Bが露出したものを不良とした。不良本数を、作成した総数で割ったときの割合を溶接棒挿入不良率と定義した。
実施例1、及び、比較例1、2の構成のリチウムイオン電池1を100本ずつ作製し評価を実施した。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
実施例1では、活物質非被覆部成型不良率及び溶接棒挿入不良率とも0%となった。これは、ピン54、64の先端が貫通孔26の径よりやや小さいため、ピン54やピン64がセパレータ23を引きずることがなかったからと考えられる。また、溶接棒を挿入する間口(第2の径DB)が広いため、溶接棒が挿入しやすくなり、且つ、溶接棒が正極活物質非被覆部21Cと接触することがなかったからと考えられる。あるいは、溶接棒がセパレータ23を変形させなかったと考えられる。
【0086】
比較例1では、溶接棒挿入不良率が0%であったが、活物質非被覆部成型不良率が、正負極とも高かった(正極5%、負極8%)。これは、第2の径DBの径の大きさが小さいために、溝形成工程や平坦面形成工程において、内周のセパレータ23を巻き込んで負極活物質被覆部22Bが露出したと考えられる。
【0087】
比較例2では、活物質非被覆部成型不良率が正負極とも0%であったが、溶接棒挿入不良率が4%と高かった。これは、溶接棒の径に対して、孔部73の第2の間口径の大きさが小さすぎるため、溶接棒を貫通孔26に挿入できなかったためと考えられる。
以上から、実施例1に示す構成が、リチウムイオン電池1の好ましい構成と言える。
【0088】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0089】
ピン54やピン64の形状は適宜、変更可能である。例えば、中間部54B、64Bがないピンの形状でもよい。
領域AR1、AR2の大きさは、1mm×1mm以外の大きさでもよい。
実施例及び比較例では、溝43の数を8としていたが、これ以外の数であってもよい。電池サイズを21700(直径21mm,高さ70mm)としていたが、18650(直径18mm,高さ65mm)やこれら以外のサイズであってもよい。
正極集電板24と負極集電板25は、扇形の形状をした扇状部31,33を備えていたが、それ以外の形状であってもよい。
【0090】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は、リチウムイオン電池以外の他の電池や、円筒形状以外の電池(例えば、ラミネート型電池、角型電池、コイン型電池、ボタン型電池)に適用することも可能である。この場合において、「電極巻回体の端面」の形状は、円筒形状のみならず、矩形、楕円形状や扁平形状なども採り得る。また、本発明は、電池の製造方法としても実現することができる。
【0091】
<応用例>
(1)電池パック
図14は、本発明の実施形態又は実施例に係る二次電池を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。制御部310は各デバイスの制御を行い、さらに異常発熱時に充放電制御を行ったり、電池パック300の残容量の算出や補正を行ったりすることが可能である。電池パック300の正極端子321及び負極端子322は、充電器や電子機器に接続され、充放電が行われる。
【0092】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。
図14では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されている。二次電池301aに対して本発明の二次電池を適用可能である。
【0093】
温度検出部318は、温度検出素子308(例えばサーミスタ)と接続されており、組電池301又は電池パック300の温度を測定して、測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0094】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流をもとに、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aが過充電検出電圧(例えば4.20V±0.05V)以上若しくは過放電検出電圧(2.4V±0.1V)以下になったときに、スイッチ部304にOFFの制御信号を送ることにより、過充電又は過放電を防止する。
【0095】
充電制御スイッチ302a又は放電制御スイッチ303aがOFFした後は、ダイオード302b又はダイオード303bを介することによってのみ、充電又は放電が可能となる。これらの充放電スイッチは、MOSFETなどの半導体スイッチを使用することができる。なお、
図10では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0096】
メモリ317は、RAMやROMからなり、制御部310で演算された電池特性の値や、満充電容量、残容量などが記憶され、書き換えられる。
【0097】
(2)電子機器
上述した本発明の実施形態又は実施例に係る二次電池は、電子機器や電動輸送機器、蓄電装置などの機器に搭載され、電力を供給するために使用することができる。
【0098】
電子機器としては、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、デジタルスチルカメラ、電子書籍、音楽プレイヤー、ゲーム機、補聴器、電動工具、テレビ、照明機器、玩具、医療機器、ロボットが挙げられる。また、後述する電動輸送機器、蓄電装置、電動工具、電動式無人航空機等も、広義では電子機器に含まれ得る。
【0099】
電動輸送機器としては電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)、電動バイク、電動アシスト自転車、電動バス、電動カート、無人搬送車(AGV)、鉄道車両などが挙げられる。また、電動旅客航空機や輸送用の電動式無人航空機も含まれる。本発明に係る二次電池は、これらの駆動用電源のみならず、補助用電源、エネルギー回生用電源などとしても用いられる。
【0100】
蓄電装置としては、商業用又は家庭用の蓄電モジュールや、住宅、ビル、オフィスなどの建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0101】
(3)電動工具
図15を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。電池パック430を構成する電池に対して、本発明の二次電池を適用可能である。
【0102】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータ(図示せず)が備えられており、電池パック430の充放電情報が相互に通信できるようにしてもよい。モータ制御部435は、モータ433の動作を制御すると共に、過放電などの異常時にモータ433への電源供給を遮断することができる。
【0103】
(4)電動車両用蓄電システム
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、
図16に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0104】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力の駆動力変換装置(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608としては、本発明の二次電池、又は、本発明の二次電池を複数搭載した蓄電モジュールが適用され得る。
【0105】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601によって産み出された回転力によって、発電機602で生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。
【0106】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。また、バッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで充電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0107】
なお、本発明に係る二次電池を小型化された一次電池に応用して、車輪604、605に内蔵された空気圧センサシステム(TPMS: Tire Pressure Monitoring system)の電源として用いることも可能である。
【0108】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1・・・リチウムイオン電池、12・・・絶縁板、21・・・正極、21A・・・正極箔、21B・・・正極活物質層、21C・・・正極活物質非被覆部、22・・・負極、22A・・・負極箔、22B・・・負極活物質層、22C・・・負極活物質非被覆部、23・・・セパレータ、24・・・正極集電板、25・・・負極集電板、26・・・貫通孔、41、42・・・端面、43・・・溝、221A・・・第1の負極活物質非被覆部、221B・・・第2の負極活物質非被覆部、221C・・・第3の負極活物質非被覆部、DA・・・第1の径、DB・・・第2の径、DC・・・基準線、AR1,AR2・・・領域