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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240820BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240820BHJP
   A01B 63/102 20060101ALI20240820BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240820BHJP
   G01S 15/87 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G05D1/43
A01B69/00 303G
A01B63/102
G01S15/931
G01S15/87
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023041838
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2019066142の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023098881
(43)【公開日】2023-07-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】勝野 志郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 和弘
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174890(JP,A)
【文献】特開2017-059150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に作業機を装着する作業車両において、
車体より前方に、車体の前側で且つ車体の幅より広い範囲を検出する左右一対の前側超音波センサーを設け、
車体の左側の範囲を検出する左側超音波センサーと、車体の右側の範囲を検出する右側超音波センサーを車体側部に設け、
車体の後部に、車体の後方を検出する障害物センサーを設け、
作業機の左右幅に応じて、前記左側超音波センサーと前記右側超音波センサーの検出範囲を変更する作業機幅入力手段を備え、
障害物検出機構は複数個の前記障害物センサーを有し、
車体のコントローラーは、前記障害物検出機構を用いて自動運転中の障害物を検出する障害物検出モードと、前記障害物センサーの全部又は一部を用いて、前記作業車両の地面に対する沈下量を測定する沈下量測定モードとを有し、前記沈下量に応じて、前記障害物検出モードにおける、前記障害物検出機構の障害物検出範囲を変更する作業車両。
【請求項2】
作業機が前記作業車両に装着されており、
前記作業機を昇降するリフトアームと、
前記作業機の前記作業車両に対する高さを検出する高さセンサーと、
前記作業機の耕耘深さを検出する耕深センサーとを備え、
前記コントローラーは、前記高さセンサーの検出値と前記耕深センサーの検出値に基づいて、前記作業車両の地面に対する沈下量を算出し、前記沈下量に応じて、前記障害物検出機構の障害物検出範囲を変更する、請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラーは、前記沈下量測定モードにおける前記障害物検出範囲を、前記障害物検出モードにおける前記障害物検出範囲より広く設定しておく、請求項1記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ロボットトラクターなどのような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行経路を検出して、操舵制御を行いながら自律走行する車両の前部に、左右一対の障害物センサーをそれぞれ左右回動可能に設け、障害物センサーが障害物を検出すると車両を緊急停止する制御部を備えた作業車両において、操舵角度の大小などに応じて、障害物センサーの向きをほぼ旋回方向に向かうように回動させるものが公知である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-189610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車体が左右に傾斜した場合や、代掻き作業など水を張った圃場内を走行する際に車体が沈み込んだ場合などで、障害物センサーが水面や地面を障害物として誤検出することがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の作業車両の課題を考慮し、そのような誤検出をなくすため、障害物検出センサーの検出範囲を適切に変更して、効率よく作業可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、
車体の後部に作業機を装着する作業車両において、
車体より前方に、車体の前側で且つ車体の幅より広い範囲を検出する左右一対の前側超音波センサーを設け、
車体の左側の範囲を検出する左側超音波センサーと、車体の右側の範囲を検出する右側超音波センサーを車体側部に設け、
車体の後部に、車体の後方を検出する障害物センサーを設け、
作業機の左右幅に応じて、前記左側超音波センサーと前記右側超音波センサーの検出範囲を変更する作業機幅入力手段を備え、
障害物検出機構は複数個の前記障害物センサーを有し、
車体のコントローラーは、前記障害物検出機構を用いて自動運転中の障害物を検出する障害物検出モードと、前記障害物センサーの全部又は一部を用いて、前記作業車両の地面に対する沈下量を測定する沈下量測定モードとを有し、前記沈下量に応じて、前記障害物検出モードにおける、前記障害物検出機構の障害物検出範囲を変更する作業車両である。
【0007】
第1の本発明によって、作業機11を障害物として検出しかねない恐れを防止することができる。
また、沈下量測定のために、障害物センサーを兼用しているので、安価に車両の沈下量を直接測定することができる。
【0008】
第2の本発明は、
作業機が前記作業車両に装着されており、
前記作業機を昇降するリフトアームと、
前記作業機の前記作業車両に対する高さを検出する高さセンサーと、
前記作業機の耕耘深さを検出する耕深センサーとを備え、
前記コントローラーは、前記高さセンサーの検出値と前記耕深センサーの検出値に基づいて、前記作業車両の地面に対する沈下量を算出し、前記沈下量に応じて、前記障害物検出機構の障害物検出範囲を変更する、第1の本発明の作業車両である。
【0009】
第2の本発明によって、車体が沈下している場合は障害物センサーと地面との距離が近くなるため、障害物判定範囲を変更することにより、地面を障害物と判定して停止することを抑制できるため、効率よく作業できる。
【0010】
【0011】
【0012】
第3の本発明は、
前記コントローラーは、前記沈下量測定モードにおける前記障害物検出範囲を、前記障害物検出モードにおける前記障害物検出範囲より広く設定しておく、第1の本発明の作業車両である。
【0013】
第3の本発明によって、沈下量を測定するために、障害物センサーを兼用していても、沈下量をより正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、車両が傾斜したり沈下したりしても、適正に障害物を検出することができるので、適切に自動走行させることが可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの左側面図
図2】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの平面図
図3】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの走行経路の説明図
図4】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの制御系の構成図
図5】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターのコントローラーを中心とするブロック図
図6】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの前後の検出を行う赤外線センサーを用いた様子を示す平面図
図7】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの傾斜状態を示す背面図
図8】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの障害物検出範囲を説明するための平面図
図9】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの作業機の幅と障害物検出範囲との関係を説明するための平面図
図10】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの沈下量の測定を説明するための左側面図
図11】本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの沈下量と障害物検出範囲との関係を説明するための左側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
はじめに、図1から図4を参照しながら、本発明における作業車両の一例である本実施の形態の農業用ロボットトラクターの構成および動作について具体的に説明する。
【0018】
ここに、図1は本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの左側面図であり、図2は本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの平面図である。図3は本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターが圃場を自動走行する様子を示す略示平面図である。図4は本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの制御系の説明図である。
【0019】
まず本実施の形態の農業用ロボットトラクターの基本的な構成および動作を説明する。
コントローラー200に関連する構成および動作などについては、後に詳細に説明する。
【0020】
車体10の前部のボンネット31の内部には、エンジン30が設けられている。エンジン30の回転動力は、運転ユニット20のフロア21の下方に設けられているトランスミッションケースの内部のさまざまなクラッチを介して伝達される。より具体的には、主変速装置および副変速装置で変速された回転動力は、左前輪40Lおよび右前輪40R、ならびに左後輪50Lおよび右後輪50Rへ伝達される。
【0021】
左側のフロア21には、ブレーキペダル連結解除ペダルおよびクラッチペダルが配置されている。右側のフロア21には、左ブレーキペダルおよび右ブレーキペダル、ならびにアクセルペダルが配置されている。車体10の後部には、作業機11が、たとえば3点リンク機構を利用して装着される。
【0022】
図4において、コントローラー200は、メモリーおよびタイマーなどと協働して動作する、耕耘作業機昇降制御部、エンジン制御部および走行制御部を有する。図3は本発明における実施の形態の農業用ロボットトラクターの走行経路Cの説明図である。
【0023】
コントローラー200は、あらかじめ設定された走行経路Cに沿って車体10を走行させるための自動走行制御を、農業用ロボットトラクターおよび作業機11の設定や、リモートコントローラー201からの指示、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号、および障害物検出機構600の障害物検出結果などに基づいて行う。
【0024】
車体位置測定機構500は、車体10の位置を測定する機構である。本実施の形態においては、車体位置測定機構500は、GNSSユニットを有する。なお、110は前後進クラッチ、120は主変速装置、130は副変速装置、201はリモートコントローラー、320は4WDクラッチ、330は操舵シリンダー、350は車速センサー、400Lは左ブレーキ装置、400Rは右ブレーキ装置である。
【0025】
本実施の形態においては、障害物検出機構600は、二つの前側超音波センサー610、ならびに三つの左側超音波センサー620Lおよび三つの右側超音波センサー620Rを有する。これらは本発明の障害物検出センサーの一例である。
【0026】
前側超音波センサー610は検出範囲A1が車体10の前側の範囲であるセンサーであり、左側超音波センサー620Lは検出範囲A2Lが車体10の左側の範囲であるセンサーであり、右側超音波センサー620Rは検出範囲A2Rが車体10の右側の範囲であるセンサーである。
【0027】
障害物により反射された超音波の帰還時間に基づいて、前側超音波センサー610の検出範囲A1、ならびに左側超音波センサー620Lの検出範囲A2Lおよび右側超音波センサー620Rの検出範囲A2Rにおける障害物の存在が認識された場合には、車体10の自動停止が行われる。そのために、上記帰還時間について所定の閾値を定めておき、その時間内に反射信号が帰還すれば障害物の存在が認識されたことになる。図面においてはその範囲を模式化している。
【0028】
図6は本発明における変形例の実施の形態の農業用ロボットトラクターの平面図であって、図6に示されているように、障害物検出機構600は、一つの前側赤外線センサー630および一つの後側赤外線センサー640を有している。
【0029】
ここに、前側赤外線センサー630は検出範囲A3が車体10の前側の範囲であるセンサーであり、後側赤外線センサー640は検出範囲A4が車体10の後側の範囲であるセンサーである。
【0030】
障害物により反射された赤外線の帰還時間に基づいて、前側赤外線センサー630の検出範囲A3および後側赤外線センサー640の検出範囲A4における障害物の存在が認識された場合には、車体10の自動停止が行われる。
【0031】
もちろん、本発明の実施の形態においては、障害物検出機構600は、車体ルーフへ取付けられた一つの全方向タイプ超音波センサーで前後左右を検出するようにしてもよい。
【0032】
つぎに、図7から図11を参照しながら、本実施の形態や別の実施の形態の農業用ロボットトラクターの構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0033】
図7は本実施の形態にかかる車体10が圃場で傾斜している状態を示す略示背面図である。図の場合は、左側へ傾斜している状態である。ここに、上述したように、前側超音波センサー610の検出範囲A1、左側超音波センサー620Lの検出範囲A2L、右側超音波センサー620Rの検出範囲A2Rが背面側から示されている。
【0034】
100は圃場の地面を示し、101はその圃場の一部が盛り上がった状態を示す。ここで、車体10が走行中に右後輪50Rがその盛り上がり部分101に乗り上げたとする。
【0035】
そのため、車体10は左側に傾く。その傾きを傾斜センサー340が検出する。図4に示すように、その傾斜センサー340の出力信号はコントローラー200に入力される。
コントローラー200はその傾斜センサー340からの傾斜信号を受けて、障害物検出機構600に検出範囲A2L、A2Rの変更を指示する。
【0036】
その変更の仕方は、図7に示すように左側の各検出範囲A2Lを、右側の対応する各検出範囲A2Rよりも狭くする。つまり、図に示すように、車体10が左側へ傾斜した場合、左側の検出範囲A2Lをそれまでどおりの大きさの範囲としておくと、その傾斜が大きい場合、地面100の存在により、障害物が存在しないにもかかわらず、検出信号を出力してしまう恐れがある。
【0037】
しかしながら、図7に示すように、左側の検出範囲A2Lを、傾斜していない場合に比べて狭くしているので、左側の検出範囲A2Lが誤って地面100を障害物として誤検出してしまう心配は無い。したがって、誤検出によってその都度車体10が停止して作業能率が落ちる心配もない。なお、結果としては、傾斜していない側の検出範囲は変更されないので、傾斜した側の検出範囲の方が、傾斜していない側の検出範囲よりも狭く変更されることになる。
【0038】
上述したように、その検出範囲の変更の程度は、傾斜の程度にかかわっているので、その検出範囲の変更の程度も、車体10の傾斜の程度に比例させるのが望ましい。すなわち、傾斜が緩やかな場合は狭くする程度もゆるくし、傾斜がきつい場合は狭くする程度も大きくする。
【0039】
図8は本実施の形態のトラクターの略示平面図であって、検出範囲A2Lが狭く変更された検出範囲A2L’や検出範囲A2Rが狭く変更された検出範囲A2R’を示している。M,Nはその狭くなる状況を示す符号である。
【0040】
なお、車体10の傾斜を検出するだけでなく、その傾斜に関する傾斜の角速度も検出しておき、それも利用することが望ましい。なぜなら、傾斜センサー340の検出にも応答遅れが発生する場合があり、そのような場合傾斜し始めているにも関わらず、検出範囲が狭くならず、誤検出が発生することがあったが、それを避けることができる。
【0041】
図5は、主にコントローラー200の構成を示すブロック図である。201は検出範囲を決定する基準時間手段であり、202は障害物検出機構600の複数の超音波センサー610などから信号を受けとり障害物の存在を判断する障害物判断手段である。
【0042】
また、203は、傾斜センサー340などのセンサーからの信号を受けとり上記基準時間手段201の基準時間を変更する、すなわち、検出範囲を変更する手段である。
【0043】
図9は本発明の別の実施の形態を示し、車体10の後ろに装着する作業機11、例えば耕運機の左右幅に応じて、検出範囲を変更する場合を示す。検出範囲A2RがA2R’に狭くなり、検出範囲A2LがA2L’に狭くなる。図4において、202はその作業機11の幅Pを入力する作業機幅入力手段である。
【0044】
すなわち、作業機11の幅Pが図9の場合のように大きいときは、検出範囲の設定次第では作業機11を障害物として検出しかねない恐れがある。そこで、作業機11の幅Pが大きい場合は、その程度に応じた検出範囲を狭くしたり、検出範囲の方向を変更することが望ましい。もちろん、作業機11の幅が小さい場合は検出範囲を広げることも可能である。
【0045】
また別の実施の形態について説明する。上述したように、図6において、障害物検出機構600は、一つの前側赤外線センサー630および一つの後側赤外線センサー640を有している。ここに、前側赤外線センサー630は検出範囲A3が車体10の前側の範囲であるセンサーであり、後側赤外線センサー640は検出範囲A4が車体10の後側の範囲であるセンサーである。
【0046】
ところで、上述したような車体10が左右でなく(ローリング)、前後方向に傾斜することがある(ピッチング)。
【0047】
上記各赤外線センサー630、640は、このような前後方向への傾斜がある場合も、検出範囲を変更しないと、上述したように地面100の存在を障害物と誤検出する恐れがある。
【0048】
そこで、傾斜センサー340はその前後方向の傾斜も検出し、その赤外線センサー630、640の検出範囲を変更する。その変更の仕方は、その傾斜の程度、方向などに応じて、左右範囲や前後範囲や高低範囲を誤検出しない範囲や方向に変更する。
【0049】
なお、以上説明したローリングやピッチング検出用の傾斜センサー340としては、通常の装置のセンサーの他に、GNSSアンテナに一体化されているIMU(慣性計測装置)の検出値を利用するタイプでもよい。コストの節約となる。
【0050】
図10は本発明のトラクターの別の実施の形態を示す側面図である。ここで、上述した場合はローリングにせよ、ピッチングにせよ、車体10の傾斜に対応して障害物検出範囲を変更する場合であったが、本実施の形態では、車体10の地面100に対する沈下量に対応して障害物検出範囲を変更するものである。
【0051】
すなわち、その車体10の沈下量の測定方法にはいろいろあるが、本実施の形態では作業機11の一例であるロータリーを用いる。図10において、11aは作業機11を保持するリフトアーム、11bはそのリフトアーム11aの位置を検出する位置センサー、11cは作業機11のリヤカバー、11dはそのリヤカバー11cの角度を検出するセンサーである。これら位置センサー11b、角度センサー11dは、図5における沈下センサー12の一例である。
【0052】
これらのセンサー11b、11dの信号に基づき、コントローラー200は後輪50L、50Rの地面100に対する沈下量を測定する。すなわち、リヤカバー11cが上がっていて、且つ、リフトアーム11aが上がっている場合は、沈下していると判断し、その沈下量も測定できる。
【0053】
位置センサー11bは、本発明の高さセンサーの一例であり、角度センサー11dは、本発明の耕耘深さを検出する耕深センサーの一例である。
【0054】
図11はその様子を説明するための側面図であって、赤外線検出範囲A3を、沈下している場合はA3’のように、狭くする。通常の検出範囲A3では沈下している場合、地面100を障害物として誤検出してしまう恐れがあるが、検出範囲A3’のように狭くすることでこの誤検出が防止できる。
【0055】
さらには、その沈下量に比例して、検出範囲A3の狭める程度を変更することも望ましい。なお、このような沈下量が多き過ぎて検出範囲A3が小さくなりすぎる場合は、車体10の走行を停止させる。検出範囲A3を狭めすぎると、誤検出の能力が低下しすぎるのでそれを防ぐためである。
【0056】
次に、図10において、12aは地面100までの距離を測定する専用の超音波センサーであって、車体10の前側に取付られており、超音波を地面100に向けた放射し距離を測定する。その前側に取り付けられた位置は予めわかっているから、車輪の沈下量を測定できる。この超音波センサー12aによって測定された沈下量に応じて、コントローラー200は検出範囲を変更する。この超音波センサー12aも上記沈下センサー12の一例である。
【0057】
なお、さらなる変形例として、この地面100までの距離を測定する超音波センサーを特別設けるのではなく、上述した超音波センサー610などのセンサーの一部で兼用することも可能である。
【0058】
そのような変形例の場合は、車輪の沈下量を測定するモードと、障害物を検出するモードとを分けておいて、沈下量を測定するモードの場合はその検出範囲を、障害物を検出するモードの場合の検出範囲より広く設定しておく方法が望ましい(その方法は図5で説明したとおり基準時間を変更すればよい)。
【0059】
そのように広くすることで確実に地面100からの反射波を確実に読み取ることができる。沈下の程度が大きければ、短時間で反射波が戻ってくることで分かる。
【0060】
なおまた、その沈下量を測定するモードは、車体10の作業開始前に実行するのが望ましい。作業開始後は障害物検出モードに切り替えて実行する。車輪の沈下量は一つ圃場で
はあまり変化は無いので、一度作業開始前に測定すれば十分である。
【0061】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の自動走行制御方法の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0062】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0063】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0064】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明における作業車両は、傾斜した場合や沈下した場合にも円滑な自動走行制御を実現することができ、たとえば、農業用ロボットトラクターなどのような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 車体
11 作業機
12 沈下センサ
20 運転ユニット
21 フロア
30 エンジン
31 ボンネット
40L 左前輪
40R 右前輪
50L 左後輪
50R 右後輪
110 前後進クラッチ
120 主変速装置
130 副変速装置
200 コントローラー
201 リモートコントローラー
320 4WDクラッチ
330 操舵シリンダー
340 傾斜センサー
350 車速センサー
400L 左ブレーキ装置
400R 右ブレーキ装置
500 車体位置測定機構
600 障害物検出機構
601 積層灯
610 前側超音波センサー
620L 左側超音波センサー
620R 右側超音波センサー
630 前側赤外線センサー
640 後側赤外線センサー
A、A1、A2L、A2R、A3、A4 検出範囲
C 走行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11