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特許7540558超音波眼圧計、および、超音波アクチュエータ
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  • 特許-超音波眼圧計、および、超音波アクチュエータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】超音波眼圧計、および、超音波アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240820BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61B3/16 300
A61B3/10 900
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023130299
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2021515479の分割
【原出願日】2018-11-23
(65)【公開番号】P2023138757
(43)【公開日】2023-10-02
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P201830938
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲之
(72)【発明者】
【氏名】植村 努
(72)【発明者】
【氏名】カルドーニ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ゴンサレス イグナシオ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05251627(US,A)
【文献】国際公開第2017/149506(WO,A1)
【文献】特開昭63-302842(JP,A)
【文献】特開2011-030755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計であって、
超音波を発生させる超音波素子と、前記超音波素子から発生した超音波を伝搬するソノトロードと、を有し、前記被検眼に対して超音波を照射する超音波アクチュエータを備え、
前記超音波アクチュエータは、ランジュバン型であり、
前記ソノトロードは、超音波の音軸方向に前記ソノトロードの肉厚が変化する凹凸部を備えることを特徴とする超音波眼圧計。
【請求項2】
前記凹凸部は、前記ソノトロードの外面のみに設けられることを特徴とする請求項1の超音波眼圧計。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記音軸方向に沿って、厚肉部と、前記厚肉部よりも前記ソノトロードの肉厚が薄い薄肉部と、を備えることを特徴とする請求項2の超音波眼圧計。
【請求項4】
前記厚肉部同士で外径は同一であることを特徴とする請求項3の超音波眼圧計。
【請求項5】
前記厚肉部と前記薄肉部との間に曲率部を備えることを特徴とする請求項3または4の超音波眼圧計。
【請求項6】
前記厚肉部は、前記音軸方向において被検眼側の先端に位置されることを特徴とする請求項3~5のいずれかの超音波眼圧計。
【請求項7】
超音波を放射する超音波アクチュエータであって、
超音波を発生させる超音波素子と、
前記超音波素子から発生した超音波を伝搬するソノトロードと、を備え、
前記超音波アクチュエータは、ランジュバン型であり、
前記ソノトロードは、超音波の音軸方向に前記ソノトロードの肉厚が変化する凹凸部を備えることを特徴とする超音波アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計、および超音波を放射する超音波アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式眼圧計としては、未だ空気噴射式眼圧計が一般的である。空気噴射式眼圧計は、角膜に空気を噴射したときの角膜の変形状態と、角膜に噴射される空気の空気圧とを検出することによって、所定の変形状態における空気圧を眼圧に換算していた。
【0003】
また、非接触式眼圧計としては、超音波を用いて眼圧を測定する超音波眼圧計が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の超音波眼圧計は、角膜に超音波を照射したときの角膜の変形状態と、角膜に照射される超音波の放射圧とを検出することによって、所定の変形状態における放射圧を眼圧に換算するものである。
【0004】
また、超音波眼圧計としては、角膜からの反射波の特性(振幅、位相)と眼圧との関係に基づいて眼圧を計測する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-253190
【文献】特開2009-268651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波眼圧計では、被検眼の角膜に対して超音波を適正に照射することができていなかった。例えば、特許文献1の眼圧計では、角膜に対して超音波を適正に照射できず、実際に角膜を扁平または陥没させることはできなかった。また、例えば、特許文献2の眼圧計では、角膜に対して超音波を適正に照射できず、反射波の特性を充分に検出できなかった。
【0007】
本開示は、従来の問題点を鑑み、被検眼に対して超音波を適正に照射できる超音波眼圧計、および超音波アクチュエータを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1) 超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計であって、
超音波を発生させる超音波素子と、前記超音波素子から発生した超音波を伝搬するソノトロードと、を有し、前記被検眼に対して超音波を照射する超音波アクチュエータを備え、
前記超音波アクチュエータは、ランジュバン型であり、
前記ソノトロードは、超音波の音軸方向に前記ソノトロードの肉厚が変化する凹凸部を備えることを特徴とする超音波眼圧計。
(2) 超音波を放射する超音波アクチュエータであって、
超音波を発生させる超音波素子と、
前記超音波素子から発生した超音波を伝搬するソノトロードと、を備え、
前記超音波アクチュエータは、ランジュバン型であり、
前記ソノトロードは、超音波の音軸方向に前記ソノトロードの肉厚が変化する凹凸部を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、超音波眼圧計の外観図である。
図2図2は、筐体内部を示す概略図である。
図3図3は、超音波アクチュエータの構成を示す概略断面図である。
図4図4は、超音波アクチュエータの一部を拡大した断面図である。
図5A図5Aは、ソノトロードの円筒断面を示す図である。
図5B図5Bは、ソノトロードの円筒断面を示す図である。
図6図6は、超音波アクチュエータの構成を示す概略断面図である。
図7A図7Aは、凹凸部を示す図である。
図7B図7Bは、凹凸部を示す図である。
図8図8は、ソノトロードの一部を示す図である。
図9図9は、ソノトロードの一部を示す図である。
図10図10は、制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る第1実施形態について説明する。第1実施形態の超音波眼圧計は、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する。超音波眼圧計は、例えば、超音波アクチュエータ(例えば、超音波アクチュエータ100)を備える。超音波アクチュエータは、被検眼に対して超音波を照射する。超音波アクチュエータは、例えば、超音波素子(例えば、超音波素子110)と、ソノトロード(例えば、ソノトロード131)と、を備える。超音波素子は、超音波を発生させる。ソノトロードは、超音波素子から発生した超音波を伝搬する。ソノトロードは、凹凸部(例えば、凹凸部180)を備える。凹凸部は、超音波の音軸方向(超音波の進行方向、超音波素子の振動方向、超音波の放射方向、超音波眼圧計の前後方向)にソノトロードの肉厚が変化する部分から構成される。このように、本実施形態の超音波眼圧計は、ソノトロードが凹凸部を備えることによって、超音波の振幅を増幅して、より効率的に超音波を放射することができる。
【0012】
なお、ソノトロードは、開口部(例えば、開口部101)を備えてもよい。開口部は、例えば、超音波の音軸方向に開口する。この場合、凹凸部は、ソノトロードの外面および内面の少なくともいずれかに設けられてもよい。例えば、ソノトロードの外面は、ソノトロードの超音波の出力面(被検眼側)を正面としたときのソノトロードの側面である。ソノトロードの内面は、例えば、開口部の内側におけるソノトロードの内壁面である。つまり、ソノトロードは中空円筒状に形成されており、ソノトロードの外周壁面と内周壁面の両方に凹凸部が設けられてもよいし、どちらか一方の壁面に凹凸部が設けられてもよい。開口部には、例えば、被検眼を観察するための観察光学系、または被検眼の測定を行う測定光学系の光軸等が配置されてもよい。したがって、開口部を介して被検眼の観察または測定などが行われてもよい。つまり、本実施形態の超音波眼圧計は、開口部に光軸が配置された光学系を有してもよい。
【0013】
なお、凹凸部は、厚肉部(例えば、厚肉部181)と薄肉部(例えば、薄肉部182)とを備えてもよい。薄肉部は、厚肉部よりもソノトロードの肉厚が薄い。凹凸部には、厚肉部と薄肉部とが音軸方向に沿って交互に形成されている。このため、厚肉部と薄肉部の肉厚の差によって凹凸が形成される。また、厚肉部と薄肉部との間に曲率部(例えば、曲率部183)が設けられてもよい。曲率部は、例えば、曲面で形成される。これによって、厚肉部と薄肉部との間が連続面となり、厚肉部から薄肉部へと効率よく超音波を伝搬させることができる。
【0014】
なお、凹凸部を構成する厚肉部と薄肉部の対の音軸方向に沿った長さは、超音波素子から発生した超音波の1/2波長の整数倍に等しくてもよい。これによって、超音波アクチュエータが共振し易くなり、より効率的に超音波を伝搬させることができる。
【0015】
なお、凹凸部を構成する厚肉部と薄肉部の対は、1/2波長の整数倍の間隔で複数設けられてもよい。これによって、超音波アクチュエータの振動モードが単一モード(1次振動モード、単振動モード)に近づき、効率よく音圧を上昇される。
【0016】
<第2実施形態>
第2実施形態の超音波眼圧計は、第1実施形態と同様に、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する。第2実施形態の超音波眼圧計(例えば、超音波眼圧計1)は、例えば、超音波アクチュエータ(例えば、超音波アクチュエータ100)を備える。超音波アクチュエータは被検眼に対して超音波を照射する。超音波アクチュエータは、超音波素子(例えば、超音波素子110)と、ソノトロード(例えば、ソノトロード131)を備える。
【0017】
超音波素子は、超音波を発生させる。ソノトロードは、超音波素子から発生した超音波を伝搬する。ソノトロードは、照射面(例えば、照射面184)と、開口部(例えば、開口部101)と、を備える。照射面は、例えば、被検眼に対向する面である。例えば、超音波素子から発生した超音波は、ソノトロードを伝搬し、照射面から空気中に出力される。開口部は、例えば、超音波の音軸方向に開口する。ソノトロードは、超音波素子から発生した超音波が照射面に到達するまでの伝搬距離が、ソノトロードの外面と内面とで略同一となるように形成される。これによって、照射面における超音波の波面が揃い、超音波の波面が照射面に対して平行に入射するようになる。このため、超音波アクチュエータの振動モードが単一モードとなり、照射面から出力した超音波が効率的に空気中を伝搬する。なお、伝搬距離は、ソノトロードの外面と内面とで厳密に一致していなくてもよい。
【0018】
なお、ソノトロードは、伝搬距離調整部(例えば、内溝部185、外溝部186)を備えてもよい。伝搬距離調整部は、ソノトロードの外面と内面と、で伝搬距離の差が小さくなるように設けられる。例えば、伝搬距離調整部は、ソノトロードの外面と内面とで伝搬距離が一致するように設けられる。これによって、照射面における超音波の波面が揃う。伝搬距離調整部は、ソノトロードの外面と内面との両方に設けられてもよいし、片方だけに設けられてもよい。
【0019】
なお、伝搬距離調整部は、曲面を有する溝部であってもよい。超音波が溝部に沿って伝搬することによって、超音波の伝搬距離を増やすことができる。これによって、超音波の伝搬距離が調整され、照射面における超音波の波面が揃う。
【0020】
なお、照射面は、音軸の中心に向けて超音波素子側に傾斜してもよい。すなわち、照射面は、開口部の中央に向けて超音波素子側に傾斜してもよい。これによって、超音波を被検眼に向けて収束させることができる。なお、照射面は、曲率を持っていてもよい。例えば、照射面は、傾斜した曲面であってもよい。
【0021】
なお、第1実施形態および第2実施形態における超音波アクチュエータは、ランジュバン型であってもよい。ランジュバン型の超音波アクチュエータは、例えば、超音波素子をマス部材で挟み込んだ形状である。これによって、ランジュバン型の超音波アクチュエータは高い出力を得ることができる。
【0022】
なお、第1実施形態および第2実施形態における超音波アクチュエータは、眼圧計だけでなく、他の分野に用いられてもよい。例えば、皮膚科等の眼科以外の医療機器に用いられてもよい。高出力の超音波を利用する機器に用いられてもよい。
【0023】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。本実施例の超音波眼圧計は、例えば、超音波を用いて非接触にて被検眼の眼圧を測定する。超音波眼圧計は、例えば、被検眼に超音波を照射したときの被検眼の形状変化または振動等を、光学的または音響的に検出することで眼圧を測定する。例えば、超音波眼圧計は、角膜へパルス波またはバースト波を連続的に照射し、角膜が所定形状に変形したときの超音波の出力情報等に基づいて眼圧を算出する。出力情報とは、例えば、超音波の音圧、音響放射圧、照射時間(例えば、トリガ信号が入力されてからの経過時間)、または周波数等である。なお、被検眼の角膜を変形させる場合、例えば、超音波の音圧、音響放射圧、または音響流等が用いられる。
【0024】
図1は、超音波眼圧計の外観を示している。超音波眼圧計1は、例えば、基台2と、筐体3と、顔支持部4と、駆動部5等を備える。筐体3の内部には、後述する超音波アクチュエータ100と、光学ユニット200等が配置される。顔支持部4は、被検眼の顔を支持する。顔支持部4は、例えば、基台2に設置される。駆動部5は、例えば、アライメントのために基台2に対して筐体3を移動させる。
【0025】
図2は、筐体内部の主な構成の概略図である。筐体3の内部には、例えば、超音波アクチュエータ100と、光学ユニット200等が配置される。超音波アクチュエータ100と、光学ユニット200について、図2を用いて順に説明する。
【0026】
超音波アクチュエータ100は、例えば、超音波を被検眼Eに照射する。例えば、超音波アクチュエータ100は、角膜に対して超音波を照射し、角膜に音響放射圧を発生させる。音響放射圧は、例えば、音波の進む方向に働く力である。本実施例の超音波眼圧計1は、例えば、この音響放射圧を利用して、角膜を変形させる。なお、本実施例の超音波ユニットは、円筒状であり、中央の開口部101に、後述する光学ユニット200の光軸O1が配置される。
【0027】
本実施例の超音波アクチュエータ100は、いわゆるランジュバン型振動子である。図3に示すように、超音波アクチュエータ100は、例えば、超音波素子110、電極120、マス部材130、および締付部材160等を備える。超音波素子110は、超音波を発生させる。超音波素子110は、電圧素子(例えば、圧電セラミックス)、または磁歪素子等であってもよい。本実施例の超音波素子110はリング状である。例えば、超音波素子110は複数の圧電素子が積層されたものでもよい。図4は、図3の領域A1を拡大した図である。本実施例では、図4に示すように、超音波素子110は積層された2つの圧電素子(例えば、圧電素子111、圧電素子112)が用いられる。例えば、2つの圧電素子には、それぞれ電極120(電極121,電極122)が接続される。本実施例の電極121,電極122は、例えば、リング状である。
【0028】
マス部材130は、例えば、超音波素子110を挟む。マス部材130は、超音波素子110を挟み込むことによって、例えば、超音波素子110の引っ張り強度を強くし、強い振動に耐えられるようにする。これによって、高出力の超音波を発生させることができる。マス部材130は、例えば、金属ブロックであってもよい。例えば、マス部材130は、ソノトロード(ホーン、またはフロントマスともいう)131と、バックマス132等を備える。
【0029】
ソノトロード131は、超音波素子110の前方(被検眼側)に配置されたマス部材である。ソノトロード131は、超音波素子110から発生した超音波を伝搬し、増幅させる。本実施例のソノトロード131は、中空円筒状(中空円柱状)である。ソノトロード131の内円側には、一部に雌ねじ部133が形成される。雌ねじ部133は、後述する締付部材160に形成された雄ねじ部161と螺合する。
【0030】
本実施例のソノトロード131は、不均一な厚さを有する中空円筒である。例えば、ソノトロード131は、中空円筒の音軸O1方向(長手方向)に関して外径と内径が変化する形状である。例えば、図3のように、厚肉部181と薄肉部182を含む凹凸部180を備える。図5Aは、厚肉部181を音軸方向に対して垂直に切断したときの断面を示す。図5Bは、薄肉部182を音軸方向に対して垂直に切断したときの断面を示す。厚肉部181は、外径φa、内径φbである。薄肉部182は、外径φc、内径φdである。厚肉部181の外径φaは、薄肉部182の外径φcよりも大きく、厚肉部181の内径φbは、薄肉部182の内径φdよりも小さい。また、厚肉部181の中空円筒の断面積M1は、薄肉部182の中空円筒の断面積M2よりも大きい。
【0031】
厚肉部181と、薄肉部182は、超音波素子110から発生した超音波を増幅させる。例えば、超音波が厚肉部181から薄肉部182に伝搬するときに超音波が増幅される。これは、ホーン効果によるものである。例えば、一定流量の水が太いパイプから細いパイプに流れるとき、細いパイプ内の流速が大きくなるのと同様である。このときの振幅増幅率は、厚肉部181の断面積M1と薄肉部182の断面積M2との面積比(M1/M2)で与えられる。
【0032】
なお、図6に示すように、凹凸部180を構成する厚肉部181と薄肉部182の対は、超音波アクチュエータの端面(照射面184または、後面)から音軸方向に沿って、超音波素子110から発生した超音波の1/2波長の整数倍の間隔で設けられる。これによって、超音波アクチュエータ100が共振し易くなり、より効率的に超音波を伝搬させることができる。また、厚肉部181と薄肉部182は、それぞれ超音波の波長λの4分の1の間隔で配置される。例えば、図6に示すように、厚肉部181aの音軸方向の長さは、1/4λである。厚肉部181aに隣接する薄肉部182aの音軸方向の長さも1/4λである。同様に、厚肉部181b、薄肉部182b、および厚肉部181cの音軸方向の長さも1/4λである。このように、厚肉部181と薄肉部182が1/4λ間隔で設けられることによって、超音波アクチュエータ100の振動モードが単一モードとなり易い。これによって、超音波アクチュエータ100の全体が効率よく振動し、高い音圧を発生させることができる。
【0033】
また、本実施例の厚肉部181と薄肉部182は、1/4波長の間隔で複数設けられる。つまり、凹凸部180には、厚肉部181と薄肉部182の対が1/2波長間隔で複数設けられる。この場合、超音波素子110によって発生した超音波は、厚肉部181aから薄肉部182aに伝搬し、その後、厚肉部181b、薄肉部182b、厚肉部181cの順に、厚肉部181と薄肉部182を交互に伝搬する。このように、厚肉部181と薄肉部182をそれぞれ複数設けることによって、振動モードがより単一モードに近づき、効率よく音圧を上昇させることができる。また、複数の厚肉部181と複数の薄肉部182によって、超音波の増幅が繰り返され、より音圧を高めることができる。
【0034】
なお、複数の厚肉部181(例えば、厚肉部181a、厚肉部181b、厚肉部181c)と複数の薄肉部182(例えば、薄肉部182a、薄肉部182b)において、厚肉部同士または薄肉部同士で内径と外径は同一であっても、異なる内径または外径であってもよい。
【0035】
なお、断面積M1が大きい厚肉部181から、断面積M2が小さい薄肉部182へと超音波が入射する部分は、曲率部183が設けられる。曲率部183は、例えば、曲面(曲率を有する形状)である。図3の例の場合、厚肉部181aと薄肉部182aとの間に曲率部183aおよび曲率部183bが設けられる。曲率部183aはソノトロード131の外面に設けられ、曲率部183bはソノトロード131の内面に設けられる。同様に、厚肉部181bと薄肉部182bとの間に曲率部183cおよび曲率部183dが設けられる。曲率部183cはソノトロード131の外面に設けられ、曲率部183dはソノトロード131の内面に設けられる。例えば、曲率部183は、厚肉部181と薄肉部182との間の径の変化が連続的になるような曲面で形成される。
【0036】
仮に、図7Aのように、厚肉部181と薄肉部182との間に曲率部183がない場合、厚肉部181を音軸Q1方向に伝搬してきた超音波が薄肉部182によって進行方向とは逆方向に反射してしまう。しかしながら、図7Bの本実施例のように、厚肉部181と薄肉部182との間に曲率部183が設けられる場合、厚肉部181を音軸Q1方向に伝搬してきた超音波が薄肉部182で反射することが抑制され、より効率的に薄肉部182へと超音波を伝搬させることができる。
【0037】
上記のように、厚肉部181と薄肉部182のような凹凸部をソノトロードに設けることによって、厚肉部181から薄肉部182に伝搬される超音波の振幅が増幅され、超音波がより効率的に照射面184から空気中へと伝搬される。これによって、眼圧を測定するために十分な出力の超音波を被検眼に照射することができる。また、曲率部183を設けて、厚肉部181と薄肉部182との間で曲率を持たせることによって、厚肉部181から薄肉部182へとスムーズに超音波を伝搬させることができる。
【0038】
なお、本実施例のソノトロード131は、超音波を収束させる形状を有する。例えば、ソノトロード131の照射面(被検眼側の端面)184は、開口部101の中央(音軸Q1)に向けて超音波素子110側に傾斜した形状である。例えば、照射面184はテーパ形状である。照射面184は、曲率を持つ傾斜面であってもよい。また、照射面184は、超音波アクチュエータ100の作動距離を半径とする球面形状であってもよい。照射面184が傾斜していることによって、照射面184から出射した超音波が目標位置に収束し、大きな音圧が発生する。
【0039】
ソノトロード131の照射面184が傾斜している場合、超音波素子110からの超音波が照射面184に到達するまでの時間が、ソノトロード131の外面(外周円側)と内面(内周円側)とで異なる。例えば、ソノトロード131の外面を伝搬する超音波は、内面を伝搬する超音波よりも伝搬経路が長いため、内面を伝搬する超音波よりも遅れて照射面184に到達する。したがって、照射面184の外側と内側とで超音波の波面がずれ、照射面184において複雑な振動モードとなる。これによって、超音波が空気中に伝搬し難い状態となってしまう。
【0040】
図8は照射面184へ入射する超音波の波面の様子を示す。超音波の波面が超音波素子110に対して垂直に伝搬し、そのまま照射面184に入射すると、超音波の波面が照射面184に対して斜めに入射することになる。つまり、超音波の同じ波面が照射面184に到達するまでに内面側と外面側とで時間差ができてしまい、超音波による照射面184の変位が場所によって変化してしまう。これによって、照射面184は十分な変位量が得られず、効率よく超音波が放射されない。
【0041】
このため、本実施例のソノトロード131は、図9に示すように、内溝部185と、外溝部186を備える。内溝部185は、ソノトロード131の開口部101の内側に形成された溝である。外溝部186は、ソノトロード131の外側に形成された溝である。内溝部185の沿面距離と外溝部186の沿面距離には差がある。ここで、沿面距離とは、例えば、ソノトロード131の外面または内面に沿った音軸Q1方向の距離である。例えば、内溝部185は、外溝部186よりも肉厚方向に深く切り込まれているため、内溝部185の沿面距離は、外溝部186の沿面距離より長くなっている。内溝部185と外溝部186との沿面距離の差は、超音波の波面を照射面184と平行にするために用いられる。
【0042】
超音波の波面が照射面184と平行になる条件を式(1)に示す。
Lin=Lout …(1)
【0043】
つまり、内側の沿面距離Linと外側の沿面距離Loutが等しくなると、超音波の波面が照射面184と平行になる。式(1)を満たすために、例えば、内溝部185と外溝部186との各溝の深さは、照射面184が傾斜することによって生じる内面側と外面側との沿面距離の差を相殺するように設定される。これによって、照射面184の振動モードが単一モードとなり、超音波を効率的に空気中に伝搬させることができる。
【0044】
上記のように、本実施例の超音波眼圧計1は、互いに沿面距離の異なる内溝部185と、外溝部186を備えることによって、照射面184が傾斜している場合であっても、照射面184に対して超音波の波面を平行にすることができる。これによって、超音波を被検眼に対して収束させるだけでなく、照射面184の振動モードが単一モードとなることで、空気に対する超音波の伝搬効率または出射効率が改善され、角膜を充分に変形できる音圧(または音響放射圧)を発生させることができる。
【0045】
バックマス132は、超音波素子110の後方に配置されたマス部材である。バックマス132は、ソノトロード131とともに超音波素子110を挟み込む。これによって、バックマス132は、超音波素子110とソノトロード131を結合させる。バックマス132は、例えば、円筒状である。バックマス132の内円部には、一部に雌ねじ部134が形成される。雌ねじ部134は、後述する締付部材160の雄ねじ部161と螺合する。また、バックマス132はフランジ部135を備える。フランジ部135は、装着部400によって保持される。
【0046】
締付部材160は、例えば、マス部材130と、マス部材130に挟み込まれる超音波素子110と、を締め付ける。締付部材160は、例えば、中空ボルトである。締付部材160は、例えば、円筒状であり、外円部に雄ねじ部161を備える。締付部材160の雄ねじ部161は、ソノトロード131およびバックマス132の内側に形成された雌ねじ部133,134と螺合する。ソノトロード131とバックマス132は、締付部材160によって、互いに引き合う方向に締め付けられる。これによって、ソノトロード131とバックマス132との間に挟まれた超音波素子110が締め付けられ、圧力が負荷される。
【0047】
なお、超音波アクチュエータ100は、絶縁部材170を備えてもよい。絶縁部材170は、例えば、電極120または超音波素子110などが締付部材160に接触することを防ぐ。絶縁部材170は、例えば、電極120と締付部材160との間に配置される。絶縁部材170は、例えば、スリーブ状である。
【0048】
なお、図6に示すように、ソノトロード131の厚肉部181、薄肉部182およびバックマス132を含む超音波アクチュエータ100全体の構造は、超音波素子110から発生する超音波の波長λの2分の1を基準とする長さで設けられる。例えば、超音波アクチュエータ100の全長は1/2λの整数倍に設定される。これは、超音波アクチュエータ100の両端で振動振幅が大となる1/2波長共振の振動を音軸Q1方向に発生させるためである。このように、1/2λを基準とする形状にすることによって、超音波アクチュエータ100全体が効率よく振動し、高い音圧を発生させる。これによって、超音波アクチュエータ100は、角膜を所定形状に変形させるのに十分な出力の超音波を被検眼に照射することができる。
【0049】
なお、ソノトロード131、超音波素子110、バックマス132の音軸Q1方向の長さは、音速(振動の媒質を伝わる波の速さ)または形状による伝搬経路長が1/2λとなるように考慮される。
【0050】
なお、ソノトロード131とバックマス132は、互いに異なる素材によって形成されてもよい。例えば、バックマス132は、ソノトロード131の素材よりも剛性の高い素材で形成されてもよい。例えば、本実施例では、より柔らかい素材であるチタンがソノトロード131に用いられ、チタンよりも剛性が高い素材のスチールがバックマス132に用いられる。チタンは音響損失が低いため、超音波アクチュエータ100の全体的なQ値が増加する。ソノトロード131とバックマス132とで異なる素材を用いることによって、超音波アクチュエータ100のQ値が増加するとともに、各部の振動が同期し易くなる。したがって、超音波アクチュエータ100がより高い音圧を出力できるようになる。Q値が高いほど、振動モードは単一モードに近づく。したがって、超音波をより効率的に伝搬させることができる。
【0051】
<光学ユニット>
光学ユニット200は、例えば、被検眼の観察、または測定等を行う(図2参照)。光学ユニット200は、例えば、対物系210、観察系220、固視標投影系230、指標投影系250、変形検出系260、ダイクロイックミラー201、ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ203、およびビームスプリッタ204等を備える。
【0052】
対物系210は、例えば、光学ユニット200に筐体3の外からの光を取り込む、または光学ユニット200からの光を筐体3の外に照射するための光学系である。対物系210は、例えば、光学素子を備える。対物系210は、光学素子(対物レンズ、リレーレンズなど)を備えてもよい。
【0053】
照明光学系240は、被検眼を照明する。照明光学系240は、例えば、被検眼を赤外光によって照明する。照明光学系240は、例えば、照明光源241を備える。照明光源241は、例えば、被検眼の斜め前方に配置される。照明光源241は、例えば、赤外光を出射する。照明光学系240は、複数の照明光源241を備えてもよい。
【0054】
観察系220は、例えば、被検眼の観察画像を撮影する。観察系220は、例えば、被検眼の前眼部画像を撮影する。観察系220は、例えば、受光レンズ221および受光素子222等を備える。観察系220は、例えば、被検眼によって反射した照明光源241からの光を受光する。観察系は、例えば、光軸O1を中心とする被検眼からの反射光束を受光する。例えば、被検眼からの反射光は、超音波アクチュエータ100の開口部101を通り、対物系210および受光レンズ221を介して受光素子222に受光される。
【0055】
固視標投影系230は、例えば、被検眼に固視標を投影する。固視標投影系230は、例えば、視標光源231、絞り232、投光レンズ233、および絞り234等を備える。視標光源231からの光は、光軸O2に沿って絞り232、投光レンズ233、および絞り232等を通り、ダイクロイックミラー201によって反射される。ダイクロイックミラー201は、例えば、固視標投影系230の光軸O2を光軸O1と同軸にする。ダイクロイックミラー201によって反射された視標光源231からの光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。固視標投影系230の視標が被検者によって固視されることで、被検者の視線が安定する。
【0056】
指標投影系250は、例えば、被検眼に指標を投影する。指標投影系250は、被検眼にXYアライメント用の指標を投影する。指標投影系250は、例えば、指標光源(例えば、赤外光源であってもよい)251と、絞り252と、投光レンズ253等を備える。指標光源251からの光は、光軸O3に沿って絞り252および投光レンズ253を通り、ビームスプリッタ202によって反射される。ビームスプリッタ202は、例えば、指標投影系250の光軸O3を光軸O1と同軸にする。ビームスプリッタ202によって反射された指標光源251の光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。被検眼に照射された指標光源251の光は、被検眼によって反射され、再び光軸O1に沿って対物系210と受光レンズ221等を通り、受光素子222によって受光される。受光素子によって受光された指標は、例えば、XYアライメントに利用される。この場合、例えば、指標投影系250および観察系220は、XYアライメント検出手段として機能する。
【0057】
変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜形状を検出する。変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜の変形を検出する。変形検出系260は、例えば、受光レンズ261、絞り262、および受光素子263等を備える。変形検出系260は、例えば、受光素子263によって受光された角膜反射光に基づいて、角膜の変形を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、指標光源251からの光が被検眼の角膜によって反射した光を受光素子263で受光することによって角膜の変形を検出してもよい。例えば、角膜反射光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、ビームスプリッタ202およびビームスプリッタ203によって反射される。そして、角膜反射光は、光軸O4に沿って受光レンズ261および絞り262を通過し、受光素子263によって受光される。
【0058】
変形検出系260は、例えば、受光素子236の受光信号の大きさに基づいて角膜の変形状態を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、受光素子236の受光量が最大となったときに角膜が圧平状態になったことを検出してもよい。この場合、例えば、変形検出系260は、被検眼の角膜が圧平状態になったときに受光量が最大となるように設定される。
【0059】
なお、変形検出系260は、OCT又はシャインプルーフカメラ等の前眼部断面像撮像ユニットであってもよい。例えば、変形検出系260は、角膜の変形量または変形速度などを検出してもよい。
【0060】
角膜厚測定系270は、例えば、被検眼の角膜厚を測定する。角膜厚測定系270は、例えば、光源271と、投光レンズ272と、絞り273と、受光レンズ274と、受光素子275等を備えてもよい。光源271からの光は、例えば、光軸O5に沿って投光レンズ272および絞り273を通り、被検眼に照射される。そして、被検眼によって反射された反射光は、光軸O6に沿って受光レンズ274によって集光され、受光素子275によって受光される。
【0061】
Zアライメント検出系280は、例えば、Z方向のアライメント状態を検出する。Zアライメント検出系280は、例えば、受光素子281を備える。Zアライメント検出系280は、例えば、角膜からの反射光を検出することによって、Z方向のアライメント状態を検出してもよい。例えば、Zアライメント検出系は、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射した反射光を受光してもよい。この場合、Zアライメント検出系280は、例えば、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射してできた輝点を受光してもよい。このように、光源271は、Zアライメント検出用の光源として兼用されてもよい。例えば、角膜によって反射した光源271からの光は、光軸O6に沿ってビームスプリッタ204によって反射され、受光素子281によって受光される。
【0062】
<検出部>
検出部500は、例えば、超音波アクチュエータ100の出力を検出する。検出部500は、例えば、超音波センサ、変位センサ、または圧力センサ等のセンサである。超音波センサは、超音波アクチュエータ100から発生した超音波を検出する。変位センサは、超音波アクチュエータ100の変位を検出する。変位センサは、変位を継続的に検出することによって、超音波アクチュエータ100が超音波を発生させるときの振動を検出してもよい。
【0063】
図2に示すように、検出部500は、超音波の照射経路Aの外に配置される。照射経路Aは、例えば、超音波アクチュエータ100の前面Fと、超音波の照射目標Tiを結ぶ領域である。検出部500は、例えば、超音波アクチュエータ100の側方または後方などに配置される。本実施例のように、検出部500が側方に配置される場合、観察系220での被検眼の観察を行い易い。検出部500として超音波センサが用いられる場合、検出部500は、超音波アクチュエータ100の側方または後方から漏れる超音波を検出する。検出部500として変位センサが用いられる場合、検出部500は、超音波アクチュエータ100の側方または後方から超音波アクチュエータ100の変位を検出する。変位センサは、例えば、超音波アクチュエータ100にレーザ光を照射し、反射したレーザ光に基づいて超音波アクチュエータ100の変位を検出する。検出部500によって検出された検出信号は、制御部に送られる。
【0064】
<制御部>
次に、図10を用いて、制御系の構成について説明する。制御部70は、例えば、装置全体の制御、および測定値の演算処理等を行う。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、およびRAM73等で実現される。ROM72には、超音波眼圧計1の動作を制御するための各種プログラムおよび初期値等が記憶されている。RAM73は、各種情報を一時的に記憶する。なお、制御部70は、1つの制御部または複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。制御部70は、例えば、駆動部5、記憶部74、表示部75、操作部76、超音波アクチュエータ100、光学ユニット200、および検出部500等と接続されてもよい。
【0065】
記憶部74は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、または着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0066】
表示部75は、例えば、被検眼の測定結果を表示する。表示部75は、タッチパネル機能を備えてもよい。
【0067】
操作部76は、検者による各種操作指示を受け付ける。操作部76は、入力された操作指示に応じた操作信号を制御部70に出力する。操作部76は、例えば、タッチパネル、マウス、ジョイスティック、およびキーボード等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスであってもよい。なお、表示部75がタッチパネルである場合、表示部75は、操作部76として機能してもよい。
【0068】
<測定動作>
以上のような構成を備える超音波眼圧計1の制御動作について説明する。まず、制御部70は、顔支持部4に顔を支持された被検者の被検眼に対する超音波眼圧計1のアライメントを行う。例えば、制御部70は、受光素子222によって取得される前眼部正面画像から指標投影系250による輝点を検出し、輝点の位置が所定の位置になるように駆動部5を駆動させる。もちろん、検者は、表示部75を見ながら、操作部76等を用いて被検眼に対するアライメントを手動で行ってもよい。制御部70は、駆動部5を駆動させると、前眼部画像の輝点の位置が所定の位置であるか否かによってアライメントの適否を判定する。
【0069】
被検眼Eに対するアライメント完了後、制御部70は、角膜厚測定系270によって角膜厚を測定する。例えば、制御部70は、受光素子275によって受光された受光信号に基づいて角膜厚を算出する。例えば、制御部70は、受光信号に基づいて、角膜表面の反射光によるピーク値と、角膜裏面の反射光のピーク値との位置関係から角膜厚を求めてもよい。制御部70は、例えば、求めた角膜厚を記憶部74等に記憶させる。
【0070】
続いて制御部70は、超音波アクチュエータ100を用いて被検眼の眼圧を測定する。例えば、制御部70は、超音波素子110に電圧を印加し、被検眼Eに超音波を照射する。制御部70は、例えば、超音波によって音響放射圧を生じさせることによって角膜を変形させる。そして、制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形状態を検出する。例えば、制御部70は、受光素子263の受光信号に基づいて角膜が所定形状(圧平状態または扁平状態)に変形したことを検出する。
【0071】
制御部70は、例えば、被検眼の角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧に基づいて被検眼の眼圧を算出する。被検眼に加わる音響放射圧は超音波の照射時間と相関があり、超音波の照射時間が長くなるにつれて大きくなる。したがって、制御部70は、超音波の照射時間に基づいて、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧を求める。角膜が所定形状に変形するときの音響放射圧と、被検眼の眼圧との関係は、予め実験等によって求められ、記憶部74等に記憶される。制御部70は、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧と、記憶部74に記憶された関係に基づいて被検眼の眼圧を決定する。
【0072】
もちろん、眼圧の算出方法は、上記に限らず、種々の方法が用いられてもよい。例えば、制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形量を求め、変形量に換算係数を掛けることによって眼圧を求めてもよい。なお、制御部70は、例えば、記憶部74に記憶された角膜厚に応じて算出した眼圧値を補正してもよい。
【0073】
なお、制御部70は、被検眼によって反射した超音波に基づいて眼圧を測定してもよい。例えば、制御部70は、被検眼によって反射した超音波の特性変化に基づいて眼圧を測定してもよいし、被検眼によって反射した超音波から角膜の変形量を取得し、その変形量に基づいて眼圧を測定してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 超音波眼圧計
2 基台
3 筐体
4 顔支持部
5 駆動部
70 制御部
100 超音波アクチュエータ
110 超音波素子
131 ソノトロード
132 バックマス
180 凹凸部
181 厚肉部
182 薄肉部
183 曲率部
184 照射面
185 内溝部
186 外溝部
200 光学ユニット
400 装着部
500 検出部


図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10