(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20240820BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B66B1/14 B
B66B11/02 F
(21)【出願番号】P 2023146924
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】前川 一男
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025518(JP,A)
【文献】特開2013-170032(JP,A)
【文献】特開2022-181015(JP,A)
【文献】特開2001-328771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に空気を送り込む送風ユニットと、前記送風ユニットの運転を制御する制御部とを含むエレベータであって、
前記制御部は、前記乗りかご内の温度が予め設定された閾値未満の温度である場合には前記乗りかごを利用する乗客がいないことを示唆する所定の状態であることを条件に前記送風ユニットの運転を開始するように構成された第1モードを実行
し、
前記所定の状態には、前記乗りかごがかご扉を閉じた状態でいずれかの乗場に停止している戸閉待機状態であり、且つ、前記乗りかごに設置されたかご操作盤および乗場に設置された乗場操作盤を介して呼び操作が行われていない状態であることが含まれ、
前記第1モードは、前記送風ユニットを運転しているときに前記呼び操作が行われた場合には前記送風ユニットの運転を停止するように構成される、
エレベータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記乗りかご内の温度が前記閾値以上の温度である場合には呼び操作が行われたことを条件に前記送風ユニットの運転を開始する第2モードを実行する、
請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記制御部は、予め設定されたスケジュールに基づいて前記閾値を変更するように構成されている、
請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記制御部は、特定の行先階に関する呼び操作が行われた場合には前記閾値を変更する、
請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記送風ユニットは、前記乗りかご内の温度を調節する機能を有する、
請求項1に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関し、特に、エレベータに備えられた乗りかごに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごには、かご内の換気や空調を行うために送風ユニットが設けられている。このような送風ユニットを備えたエレベータの中には、かご内の乗客の人数に応じて送風ユニットがかご内に送り込む空気の風量を調節する機能を有するものなどがある。
【0003】
しかしながら、かご内の乗客の人数に応じて風量を変更する場合には、乗客がかごに乗り込んでから風量を変更することとなり乗客が乗り込んでからかご内が快適な状態となるまでに時間を要するという問題もある。
【0004】
例えば、特許文献1には、乗り場呼びの登録がなされたときの乗りかご内の温度に基づいて乗りかご内に送り込む空気の風量を調節可能に構成されたエレベータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のエレベータの構成では、かご内の温度に基づいて送り込む空気の風量を調節することができるものの送風ユニットから送り込まれる空気の流れによって乗客が冷えや寒さを感じることで快適性が損なわれる場合も起こり得る。
【0007】
本発明では、乗りかご内の快適性を向上させることができるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベータは、乗りかご内に空気を送り込む送風ユニットと、送風ユニットの運転を制御する制御部とを含むエレベータであり、制御部は乗りかご内の温度が予め設定された閾値未満の温度である場合には乗りかごを利用する乗客がいないことを示唆する所定の状態であることを条件に送風ユニットの運転を開始するように構成された第1モードを実行し、所定の状態には、乗りかごがかご扉を閉じた状態でいずれかの乗場に停止している戸閉待機状態であり、且つ、乗りかごに設置されたかご操作盤および乗場に設置された乗場操作盤を介して呼び操作が行われていない状態であることが含まれ、第1モードは、送風ユニットを運転しているときに呼び操作が行われた場合には送風ユニットの運転を停止するように構成されてもよい。
【0012】
本発明のエレベータにおいて、制御部は、乗りかご内の温度が閾値以上の温度である場合には呼び操作が行われたことを条件に送風ユニットの運転を開始する第2モードを実行してもよい。
【0014】
本発明のエレベータにおいて、制御部は、予め設定されたスケジュールに基づいて閾値を変更するように構成してもよい。
【0015】
本発明のエレベータにおいて、制御部は、特定の行先階に関する呼び操作が行われた場合には閾値を変更してもよい。
【0016】
本発明のエレベータにおいて、送風ユニットは、乗りかご内の温度を調節する機能を有してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエレベータによれば、乗りかご内の温度が閾値未満である場合には乗りかごを利用する乗客がいないことを示唆する所定の状態であるときに送風ユニットの運転が開始される。これにより、乗りかご内の温度が比較的低い場合には乗りかご内に乗客がいないときに送風ユニットの運転を行うことができる。このため、送風ユニットの運転によって乗客が冷えや寒さを感じることを抑制できる。この結果、乗りかご内の快適性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエレベータの全体構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に含まれる乗りかごの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に含まれる制御装置を中心としたブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における空調制御部による空調ユニットの運転制御の流れを示すフローチャートを示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るエレベータにおける空調制御部による空調制御の流れを示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るエレベータにおける空調制御部による空調制御の流れを示す図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係るエレベータにおける空調制御部による空調制御の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータ10について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図中に示す「X」は綱車15Aの軸方向と略直交する水平方向を示し、「Y」は水平方向Xに直交する水平方向Yを示し、「Z」は水平方向X,Yに各々直交する上下方向Zを示すものとする。
【0020】
図1は、エレベータ10の概略構成を示す図である。
図1に示すように、エレベータ10は、トラクション方式のロープ式エレベータであり、主ロープ11の一端側に吊り下げられた乗りかご20と、主ロープ11の他端側に吊り下げられた釣合おもり12とを備える。主ロープ11は、昇降路14直上の機械室Mに設置される巻上機15の綱車15A及びそらせ車15Bに架け渡されており、不図示の駆動モータにより綱車15Aを正転または逆転させることにより乗りかご20及び釣合おもり12を相対的に昇降させる。
【0021】
また、各階の乗場16A,16B,…16H(以下、特に区別する必要がない場合には「乗場16」と表記)には乗場扉17A,17B,…17H(以下、特に区別する必要がない場合には「乗場扉17」と表記)と、乗りかご20を乗場16に呼ぶための乗場操作盤19A,19B,…,19H(以下、特に区別する必要がない場合には「乗場操作盤19」と表記)が設けられている。
【0022】
図2は、乗りかご20の内部構成を模式的に示す図である。なお、
図2において、後述する空調ユニット30によって乗りかご20のかご内に供給される冷気の流れを1点鎖線で示している。
図2に示すように、乗りかご20は、乗降するためのかご扉22と、かご扉22に隣接する位置にかご操作盤24とが設けられ、壁面にかご内の温度を測定する温度測定部26が設けられている。また、乗りかご20の上部20Tには空調ユニット(換気ユニット)30が設置されている。
【0023】
この空調ユニット23は、換気機能を備えた空気調和装置であり、乗りかご20の外側の昇降路14内の空間から取り込んだ空気を予め設定された温度となるように調節してから乗りかご20のかご内に供給する機能を有する。なお、本実施形態では、空調ユニット30をエレベータ10が備える例を挙げて説明しているが、空調ユニット30の代わりに換気のみを行う機能を有する換気ユニットを乗りかご20が備えるものとしてもよい。
【0024】
図2に1点鎖線の矢印で示すように、空調ユニット30によって乗りかご20の外側の空間から取り込まれた空気は、ダクト32を介して乗りかご20の上部20Tに設けられた貫通孔(不図示)からかご内に供給される。ここで、乗りかご20の上部20Tには化粧パネル28が取り付けられており、供給された空気は化粧パネル28と乗りかご20の天井面を形成している上部20Tとの間に形成される空気通路APに沿って乗りかご20の側壁付近の吹出口29A,29Bまで略水平方向に運ばれてから下方のかご内空間に供給される。これにより、乗りかご20内の乗客に強い風量の冷気があたるのを防いでいる。
【0025】
なお、本実施形態では、温度測定部26を乗りかご20の壁面に設置しているが、必ずしも乗りかご20の壁面に設置する必要はなく乗りかご20のかご内空間の温度が測定ないし推定可能な場所に設置すればよい。例えば、化粧パネル28など天井周辺に設置してもよい。
【0026】
本実施形態の空調ユニット30では、乗りかご20の外側空間から外気を取り込んで予め設定された温度に調節して乗りかご20のかご内空間に供給しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、乗りかご20のかご内空間から空気を取り込んで予め設定された温度に調節した空気をかご内空間に供給するように構成された空調ユニットを用いる場合には、かご内空間から空気を取り込む取り込み口周辺や同取り込み口から空調ユニットに連通する空気通路に温度測定部26を設置するようにしてもよい。
【0027】
また、機械室Mには、乗りかご20の運転を統括的に制御するとともに上述した空調ユニット30の運転を制御する制御装置40が設けられている。ここで、
図3は、制御装置40を中心としたブロック図である。
図3に示すように、制御装置40は、各種制御プロブラムが記憶されたROM、RAM、およびHDDなどからなる記憶デバイス42やCPUなどの演算処理装置(不図示)を備える。
【0028】
制御装置40は、記憶デバイス42から上記制御プログラムを読み出して演算処理を行うことにより巻上機15の駆動を制御する運転制御部44や、上述した空調ユニット30の運転を制御する空調制御部46として機能する。運転制御部44は、かご操作盤24を介して受け付けられた行先階の乗場16を登録する登録操作(換言すると、かご呼び操作)や、乗場操作盤19を介して受け付けられた所定階の乗場16に乗りかご20を呼ぶ操作(換言すると、乗場呼び操作)に基づいて乗りかご20を昇降させる機能を有する。
【0029】
空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20内の温度が予め設定された第1閾値α(一例として、23℃)以上である場合には乗りかご20内に乗客がいるタイミングで空調ユニット30の運転を行う乗客利用時運転モード(第2モード)を実行する。これにより、乗客が蒸し暑さなどを感じてしまうことを防止して乗りかご内の快適性を向上できる。
【0030】
また、空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20内の温度が予め設定された第1閾値α未満である場合には乗りかご20内に乗客がいないことを示唆する所定の状態であるときに空調ユニット30の運転を行う乗客不在時運転モード(第1モード)を実行するように構成されている。
【0031】
本実施形態における所定の状態とは乗りかご20が戸閉待機状態であり、且つ、呼び操作を運転制御部44が受け付けていない状態である。戸閉待機状態とは、乗りかご20がかご扉22を閉じた状態でいずれかの乗場16に停止している状態を意味する。このように乗りかご20が戸閉待機状態となる場合は、かご操作盤24を介したかご呼び操作および乗場操作盤19を介した乗場呼び操作が行われていない状態が予め設定された時間だけ継続していることが前提となるため、戸閉待機中の乗りかご20内には乗客がいないことが通常である。
【0032】
また、運転制御部44が呼び操作を受け付けていない状態とは、かご操作盤24を介したかご呼び操作を運転制御部44が受け付けておらず、且つ、乗場操作盤19を介した乗場呼び操作も運転制御部44が受け付けていない状態を意味する。
【0033】
通常、乗りかご20を利用する乗客が乗りかご20のかご内にいない場合には、かご操作盤24を介してかご呼び操作が行われることはない。従って、運転制御部44がかご呼び操作を受け付けていない状態である場合には、乗りかご20を利用する乗客がいない状態を示唆するものと捉えることができる。
【0034】
また、同様に、乗りかご20を利用しようとする乗客がいずれかの乗場16にいなければ乗場操作盤19を介して乗場呼び操作が行われることもない。このため、運転制御部44が乗場呼び操作を受け付けていない状態である場合においても、乗りかご20を利用する乗客がいない状態を示唆するものと捉えることができる。
【0035】
そこで、本実施形態では、空調制御部46は、乗りかご20が戸閉待機状態であり、且つ、かご呼び操作および乗場呼び操作(以下、特に区別する必要がない場合には「呼び操作」と適宜表記)の双方を運転制御部44が受け付けていない状態であることを以て利用中の乗客がいないと判断することとしている。以下、
図4を用いて上述した空調制御の流れについてより具体的に説明を行う。
【0036】
図4は、空調制御部46による空調ユニット30の運転制御の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、空調制御部46は、記憶デバイス42に予め記憶されている第1閾値αを設定する(ステップS1)。
【0037】
空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20内の温度Tが第1閾値α未満である場合には乗客不在時運転モードで空調ユニット30の運転を行う(ステップS2:NO)。乗客不在時運転モードでは、空調制御部46は運転制御部44が呼び操作の登録を受け付けていないこと(ステップS3:NO)、及び、乗りかご20が戸閉待機状態であること(ステップS4:YES)を条件として空調ユニット30の運転を開始する(ステップS5)。これにより、乗りかご20のかご内に乗客がいない状態のときに換気を行うことが可能となる。
【0038】
さらに、空調制御部46は、空調ユニット30の運転開始から所定時間(一例として、30分)が経過すると空調ユニット30の運転を停止させる(ステップS6:YES,ステップS7)。本実施形態では、上記所定時間を30分としているが、乗りかご20のサイズや乗客の利用頻度などに応じて30分より短く設定してもよいし、長く設定してもよい。
【0039】
また、空調制御部46は、所定時間が経過する前に(ステップS6:NO)、呼び操作が行われた場合には(ステップS3:YES)、空調ユニット30の運転を停止させる(ステップS7)。このように、乗客不在時運転モードで空調ユニット30を運転しているときに乗りかご20を利用する乗客があらわれた場合には、空調ユニット30の運転を停止させる。これにより、冷風が乗客にあたって冷えや寒さを感じてしまうこと防ぐことができる。
【0040】
一方、空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20のかご内の温度Tが第1閾値α以上である場合には乗客利用時運転モードで空調ユニット30の運転を行う(ステップS2:YES)。乗客利用時運転モードにおいて、空調制御部46は、運転制御部44が呼び操作の登録を受け付けていることを条件として(ステップS8:YES)、空調ユニット30の運転を開始させる(ステップS9)。一方、運転制御部44が呼び操作の登録を受け付けていない場合には(ステップS8:NO)、空調制御部46は空調ユニット30の運転状態を変更せずに戸閉待機中であるか否かを判定するステップS10の処理に進むこととなる。
【0041】
さらに、空調制御部46は、運転制御部44を介して乗りかご20が戸閉待機中であり(ステップS10:YES)、空調ユニット30の運転開始から所定時間(一例として、30分)が経過している場合に空調ユニット30の運転を停止する(ステップS11:YES,ステップS12)。
【0042】
また、空調制御部46は、乗りかご20が戸閉待機中ではない、換言すると、乗りかご20が昇降運転中、または、かご扉22を開いた状態(換言すると戸開状態)で乗場16に停止している場合には(ステップS10:NO)、ステップS8の処理に戻る。本実施形態においてステップS3~S7の処理が乗客不在時運転モードに相当し、ステップS8~S12の処理が乗客利用時運転モードに相当する。
【0043】
上記実施形態では、ステップS6およびS11に示す乗客不在時運転モードおよび乗客利用時運転モード双方の場合における所定時間の長さ、すなわち空調ユニットの運転時間の長さを同じ長さとしているが、異なる長さとなるように設定してもよい。
【0044】
第1実施形態のエレベータ10によれば、乗りかご20のかご内の温度が第1閾値α未満である場合には乗りかご20を利用する乗客がいないことを示唆する所定の状態、すなわち、乗りかご20が戸閉待機状態であり且つ呼び操作を運転制御部44が受け付けていない状態であるときに空調ユニット30の運転が開始される。これにより、乗りかご20内の温度が比較的低い場合には乗りかご20の中に乗客がいないときに換気を行うことができる。このため、換気によって乗客が冷えや寒さを感じることを抑制することができる。この結果、乗りかご20のかご内における快適性を保ちつつ換気を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、所定の状態として、乗りかご20が戸閉待機状態であり、且つ、呼び操作を運転制御部44が受け付けていない状態であるときを例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記戸閉待機状態であること、および、呼び操作を運転制御部44が受け付けていない状態のいずれか一方のみを基準として所定の状態であるか否かを空調制御部46が判断するようにしてもよい。
【0046】
また、空調制御部46は、乗りかご20が戸閉待機状態であり、且つ、乗りかご20内の荷重を検出するロードセル等からなる荷重検出部が検出する荷重が所定値以下である状態を所定の状態として用いてもよい。ここで、上記所定値は、乗りかご20のかご内に乗客が存在していないことを示唆する値に設定すればよい。この場合においても上記第1実施形態におけるエレベータ10と同様の効果を得ることができる。
【0047】
上記実施形態では、空調制御部46は、記憶デバイス42に予め記憶された固定値である第1閾値αを参照して設定する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものはない。例えば、予め設定されたスケジュールに従って第1閾値αを変更するようにしてもよい。すなわち、記憶デバイス42に時間帯ごとに予め設定された第1閾値αの値を記憶させ、空調制御部46が時間帯ごとに第1閾値αを変更するようにしてもよい。この場合には、例えば、早朝や深夜の時間帯の第1閾値αの値が昼間の時間帯における値よりも大きくなるように設定してもよい。
【0048】
これにより、比較的気温の低い早朝、深夜においては乗りかご20内に乗客がいないときに換気を実行する乗客不在時運転モードが実行されやすくなるため換気時に発生する冷気(空気)によって乗客が冷えや寒さを感じにくくできる。一方で、比較的気温の高い昼間の時間帯においては、乗りかご20内に乗客がいるときに換気が実行されるため冷気によって乗客が蒸し暑さを感じにくくできる。
【0049】
また、例えば、第1閾値αの値を季節や月、或いは、日時ごとに各々記憶デバイス42に予め記憶させておき、空調制御部46が記憶デバイス42を参照して第1閾値αを季節や月、或いは、日時ごとに変更するようにしてもよい。
【0050】
また、或いは、制御装置40にインターネット等のネットワークを介して管理サーバなどと通信する機能を備えさせるとともに、上記管理サーバに季節や月、或いは、日時ごとに予め設定された第1閾値αの値を記憶させておくようにしてもよい。この場合には、制御装置40が上記管理サーバと通信することによって季節や月、或いは、日時ごとに予め設定された第1閾値αの値を設定する。これらの場合においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
上記第1実施形態では、空調制御部46は乗りかご20内の温度が第1閾値α以上である場合には呼び操作が行われている場合に所定時間だけ空調ユニット30を運転するように構成された乗客利用時運転モードを実行する例を挙げて説明している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。上述した第1実施形態における乗客利用時運転モードに代えて、例えば、空調制御部46は乗りかご20内の温度が第1閾値α以上である場合には空調ユニット30を連続運転させるように構成された連続運転モードを実行するようにしてもよい。
【0052】
この場合の第2実施形態における空調ユニット30の運転制御の流れについて
図5を用いて以下において説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のエレベータ10における空調ユニット30の運転制御の構成と同一の部分については適宜同一の符号を付して示すとともに適宜説明を省略しつつ、構成の異なる部分について主に説明を行う。
【0053】
図5は、第2実施形態に係る空調制御部46による空調ユニット30の運転制御の流れを示す図である。
図5に示すように、上記第1実施形態におけるステップS8~S12の処理に代えてステップS13の処理を備える点で上記第1実施形態における空調ユニット30の運転制御と構成が相違する。すなわち、空調制御部46は、ステップS2の処理において、温度測定部26を介して測定される乗りかご20内の温度が第1閾値α以上である場合には空調ユニット30を連続的に運転させるように構成された連続運転モードを実行する(ステップS13)。
【0054】
これにより、乗りかご20内の温度が第1閾値α以上である場合には呼び操作の有無や戸閉待機状態であるか否かに関わらず空調ユニット30を連続的に運転させることができる。これにより、乗りかご20内の第1閾値α以上である場合には乗りかご20内を常時換気しつつ予め設定された温度となるように温度の調節も行うことができる。
【0055】
上記第1実施形態では、空調制御部46は乗りかご20内の温度が第1閾値α以上であるか第1閾値α未満であるかによって空調ユニット30の運転モードを変更する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の閾値を用いて空調ユニット30の運転を行うタイミングをより細かく変更するようにしてもよい。この場合における第3実施形態の空調ユニット30の運転制御の流れについて
図6を用いて以下において説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のエレベータ10における空調ユニット30の運転制御の構成と同一の部分については適宜同一の符号を付して示すとともに適宜説明を省略しつつ、構成の異なる部分について主に説明を行う。
【0056】
図6は、第3実施形態に係る空調制御部46における空調ユニット30の運転制御の流れを示す図である。
図6に示すように、上記第1実施形態におけるステップS8~S12の処理に代えてステップS21~S27の処理を備える点で上記第1実施形態における空調ユニット30の運転制御と構成が相違する。
【0057】
すなわち、本実施形態において、空調制御部46は、第1閾値αおよび第1閾値αよりも大きな値に設定された第2閾値βを用いて乗りかご20のかご内の温度に応じて断続運転モード(第2モード)または連続運転モードのいずれか一方を実行するように構成されている。
【0058】
より具体的には、
図6に示すように、空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20のかご内の温度Tが第1閾値α以上である場合には(ステップS2:YES)、乗りかご20におけるかご内の温度Tが第2閾値β以上であるか否かを判定する(ステップS21)。この際、空調制御部46は、乗りかご20のかご内における温度が第2閾値β以上である場合には(ステップS21:YES)、空調ユニット30を連続的に運転させる連続運転モードを実行する(ステップS27)。これにより、乗りかご20のかご内が比較的高温である場合には空調ユニット30を連続運転させることで乗りかご20のかご内における温度が高温とならないように調節しつつ換気を行うことができる。これにより、乗りかご20のかご内空間を快適な状態に保つことができる。
【0059】
また、ステップS21の処理において、空調制御部46は、乗りかご20のかご内の温度Tが第2閾値β未満である場合には(ステップS21:NO)、運転制御部44が呼び操作の登録を受け付けていることを条件に空調ユニット30に運転を開始する断続運転モードを実行する(ステップS22:YES,ステップS23)。この断続運転モードでは、空調制御部46は戸閉待機中であり、空調ユニット30の運転開始から所定時間が経過している場合に空調ユニット30の運転を停止させ一連の制御処理を終了する(ステップS24:YES,ステップS25:YES,ステップS26)。
【0060】
また、空調制御部46は、乗りかご20が戸閉待機中ではない、換言すると、乗りかご20が昇降運転中または戸開状態で乗場16に停止している場合には(ステップS24:NO)、ステップS22の処理に戻る。
【0061】
上記第3実施形態におけるエレベータ10においても、上記第1実施形態に係るエレベータ10と同様の効果を得ることができる。
【0062】
上記第1実施形態では、空調制御部46は乗りかご20のかご内の温度が第1閾値αを基準として空調ユニット30の運転モードを変更する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、運転制御部44が受け付けている行先階の登録に特定の行先階が含まれている場合には第1閾値αの値を変更するようにしてもよい。この場合における第4実施形態に係る空調ユニット30の運転制御の流れについて
図7を用いて以下において説明を行う。
【0063】
以下の説明において、上記第1実施形態のエレベータ10における空調ユニット30の運転制御の構成と同一の部分については適宜同一の符号を付して示すとともに適宜説明を省略しつつ、構成の異なる部分について主に説明を行う。
【0064】
図7は、第4実施形態における空調制御部46による空調ユニット30の運転制御の流れを示す図である。
図7に示すように、上記第1実施形態におけるステップS8~S12の処理に代えてステップS31~S38の処理を備える点で上記第1実施形態における空調ユニット30の運転制御と構成が相違する。
【0065】
すなわち、空調制御部46は、温度測定部26を介して測定される乗りかご20のかご内の温度Tが第1閾値α以上である場合には(ステップS2:YES)、運転制御部44が呼び操作の登録を受け付けているときに(ステップS31:YES)、受け付けた呼び操作に特定の階(本実施形態では、一例として1階)の乗場16を行先階とする呼び操作が含まれているか否かを判定する(ステップS32)。空調制御部46は、受け付けた呼び操作に1階が含まれている場合には(ステップS32:YES)、第1閾値αを第1閾値αと異なる値に設定されている第3閾値γに変更済みであるか否かを判断し(ステップS33)、変更済みでない場合には第1閾値αを第3閾値γに変更する(ステップS33:NO,ステップS38)。これにより、例えば、空調管理が行われている特定階の乗場16を利用する乗客がいる場合には同特定階の空調管理状況を踏まえた値の閾値に変更することで乗りかご20に乗降するときに乗客が温度差を感じにくくするなどより快適性を向上させることが可能となる。
【0066】
そして、空調制御部46は、空調ユニット30の運転を実行させ(ステップS34)、運転制御部44を介して乗りかご20が戸閉待機中であり(ステップS35:YES)、空調ユニット30の運転開始から所定時間が経過している場合に空調ユニット30の運転を停止して一連の制御処理を終了する(ステップS36:YES,ステップS37)。
【0067】
また、空調制御部46は、乗りかご20が戸閉待機中ではない、換言すると、乗りかご20が昇降運転中または戸開状態で乗場16に停止している場合には(ステップS35:NO)、ステップS31の処理に戻ることとなる。上記第4実施形態におけるエレベータ10においても、上記第1実施形態に係るエレベータ10と同様の効果を得ることができる。
【0068】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0069】
10 エレベータ
12 主ロープ
15 巻上機
16A,16B,16H,16 乗場
19A,19B,19H,19 乗場操作盤
20 乗りかご
26 温度測定部
30 空調ユニット(送風ユニット)
28 化粧パネル
32 ダクト
24 かご操作盤
40 制御装置
42 記憶デバイス
44 運転制御部
46 空調制御部
S1~S38 ステップ
X,Y 水平方向
Z 上下方向
【要約】
【課題】乗りかご内の快適性を向上させることができるエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ10は、乗りかご20のかご内に空気を送り込む空調ユニット30と、空調ユニット30の運転を制御する空調制御部46とを含み、空調制御部46は乗りかご20のかご内の温度が予め設定された第1閾値α未満の温度である場合には乗りかご20を利用する乗客がいないことを示唆する所定の状態であることを条件に空調ユニット30の運転を開始するように構成された第1モードを実行する。
【選択図】
図3