(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】受注予測装置、受注予測方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20240820BHJP
G06Q 30/0202 20230101ALI20240820BHJP
【FI】
G06Q30/02
G06Q30/0202
(21)【出願番号】P 2023508387
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012935
(87)【国際公開番号】W WO2022201512
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 静香
(72)【発明者】
【氏名】丸山 翔平
【審査官】橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191842(JP,A)
【文献】特開2019-095894(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085114(WO,A1)
【文献】西田 京介,深層学習におけるアテンション技術の最新動向,電子情報通信学会誌,日本,一般社団法人電子情報通信学会 DENSHI-JOHO-TSUSHIN-,2018年06月01日, 第101巻 第6号,第591-596頁,ISSN 0913-5693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントに関連するイベントデータを取得する取得手段と、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する予測手段と、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する出力手段と、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する受注要因抽出手段と、
を備える受注予測装置。
【請求項2】
イベントに関連するイベントデータを取得する取得手段と、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する予測手段と、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する出力手段と、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集するアンケート編集手段と、
を備える受注予測装置。
【請求項3】
前記イベントデータは、前記イベントに参加した顧客の顧客情報を含み、
前記受注確率は、前記顧客による受注の確率である請求項1
又は2に記載の受注予測装置。
【請求項4】
前記イベントデータは、前記顧客によるアンケートへの回答、及び、前記イベントにおける前記顧客の行動履歴の少なくとも一方を含む請求項
3に記載の受注予測装置。
【請求項5】
前記受注確率が予め決められた基準確率より高い顧客を、重点顧客として出力する重点顧客選定手段を備える請求項
4に記載の受注予測装置。
【請求項6】
コンピュータにより実行される受注予測方法であって、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力
し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する受注予測方法。
【請求項7】
コンピュータにより実行される受注予測方法であって、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力
し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集する受注予測方法。
【請求項8】
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力
し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力
し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、顧客に関連するデータを用いて受注を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な業界において、自社の製品や技術を他社に紹介し、製品の販売や技術の導入に関する商談などを行う展示会、見本市など(以下、「イベント」と呼ぶ。)が行われている。展示を行う側の企業は、イベントに来場した企業から、その企業の情報、関心のある製品や技術などについての情報を取得し、営業活動に役立てているが、収集した情報を必ずしも効果的に受注に結びつけているとは言い難い。
【0003】
なお、特許文献1は、過去のキャンペーンで用いたキャンペーン文書に対する顧客の反応に基づいて、効果が高いキャンペーン文書を生成する手法を開示している。また、特許文献2は、ユーザの嗜好に関するアンケート結果などを利用して、衣服の将来の需要を予測する手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-228934号公報
【文献】特開2019-128922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の1つの目的は、展示会などのイベントで収集したデータを用いて、高い精度で受注を予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点では、受注予測装置は、
イベントに関連するイベントデータを取得する取得手段と、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する予測手段と、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する出力手段と、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する受注要因抽出手段と、
を備える。
【0007】
本開示の他の観点では、受注予測装置は、
イベントに関連するイベントデータを取得する取得手段と、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する予測手段と、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する出力手段と、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集するアンケート編集手段と、
を備える。
【0008】
本開示のさらに他の観点では、コンピュータにより実行される受注予測方法は、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する。
【0009】
本発明のさらに他の観点では、コンピュータにより実行される受注予測方法は、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集する。
【0010】
本発明のさらに他の観点では、プログラムは、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明のさらに他の観点では、プログラムは、
イベントに関連するイベントデータを取得し、
注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を学習することで生成された受注予測モデルを用いて、前記イベントデータに基づき、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力し、
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、展示会などのイベントで収集したデータを用いて、高い精度で受注を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】受注予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】受注予測装置の学習時の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】受注予測モデルの学習処理のフローチャートである。
【
図5】受注予測時の受注予測装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】受注予測装置による受注予測処理のフローチャートである。
【
図7】予測結果の利用機能を備える受注予測装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の受注予測装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態の受注予測装置による処理のフローチャートである。
【
図10】第3実施形態の学習装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第3実施形態の学習装置による処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
[概略構成]
図1は、第1実施形態に係る受注予測装置を示す。受注予測装置100は、イベントデータを入力とし、受注の予測結果を出力する。イベントデータとは、展示会、見本市などのイベントにおいて収集されたデータであり、そのイベントに来場した顧客の顧客情報、イベントにおける顧客の行動履歴、イベントにおいて実施したアンケートに対する顧客の回答などを含む。
【0015】
具体的に、顧客は企業及び個人を含み、企業の場合には顧客情報はイベントに来場した企業の担当者の職種や役職などの情報を含む。また、顧客情報は、その顧客の業種、規模、事業内容、事業所情報などを含む。なお、顧客情報は、イベントにおいて新たに取得した情報には限られず、事前に取得済みの情報を含む。例えば、既に取引歴のある顧客については、顧客情報は、過去の取引により取得済みの情報を含む。既に取引歴のある顧客の場合、顧客情報は、顧客ランキングなど、各顧客の重要度などを示す情報を含んでもよい。
【0016】
行動履歴は、イベントにおける顧客(来場者)の行動の履歴をいう。コンベンションセンターなどのイベント会場で開催される現実のイベントの場合、行動履歴は、来場者の入場時間(朝/昼/夕、時刻など)、退場時間、訪問した企業ブース、各企業ブースを訪問した順序などを含む。なお、現実のイベントの場合、例えば入場時に来場者に配布する入場者カードなどにバーコードやQRコード(登録商標)のコード情報を設けておき、入退場ゲートや各企業のブースにおいてコード情報を読み込むことにより、顧客の行動履歴を収集することができる。
【0017】
アンケート回答は、イベント会場において来場者に対して行われるアンケートに対する各顧客(来場者)の回答である。アンケート回答は、例えば、イベントに来場した理由や経緯(招待メールを受け取った、ウェブサイトで見つけた、など)、関心のある製品や技術、関心の程度(導入予定、導入を検討中、情報収集中など)、イベント全体や各企業ブースの展示についての評価や満足度などを含む。なお、アンケートは、イベント会場で実施したものでもよく、退場後に来場者がウェブサイトなどで回答するタイプのものであってもよい。
【0018】
受注予測装置100は、イベントデータに基づいて、顧客毎に受注の予測を行い、予測結果を出力する。予測結果は、受注確率と、イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度を含む。着目度は、受注予測装置100が受注を予測する上で各データ項目に着目した度合いを示し、データ項目毎に算出される。
【0019】
なお、上記の例では、受注予測装置100は、顧客情報と、行動履歴と、アンケート回答とを用いて受注を予測しているが、顧客情報と、行動履歴及びアンケート回答のいずれか一方とを用いて受注を予測してもよい。また、受注予測装置100は、さらに行動履歴及びアンケート回答以外の情報を用いて受注を予測してもよい。この点は、以下の説明でも同様である。
【0020】
[ハードウェア構成]
図2は、受注予測装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図示のように、受注予測装置100は、インタフェース(I/F)11と、プロセッサ12と、メモリ13と、記録媒体14と、データベース(DB)15と、表示部16と、入力部17と、を備える。
【0021】
インタフェース11は、外部装置との間でデータの入出力を行う。具体的に、イベントデータ、及び、後述する受注履歴のデータは、インタフェース11を通じて受注予測装置100へ入力される。
【0022】
プロセッサ12は、CPU(Central Processing Unit)などのコンピュータであり、予め用意されたプログラムを実行することにより受注予測装置100の全体を制御する。なお、プロセッサ12は、GPU(Graphics Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよい。プロセッサ12は、後述する学習処理及び受注予測処理を実行する。
【0023】
メモリ13は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。メモリ13は、プロセッサ12による各種の処理の実行中に作業メモリとしても使用される。
【0024】
記録媒体14は、ディスク状記録媒体、半導体メモリなどの不揮発性で非一時的な記録媒体であり、受注予測装置100に対して着脱可能に構成される。記録媒体14は、プロセッサ12が実行する各種のプログラムを記録している。受注予測装置100が各種の処理を実行する際には、記録媒体14に記録されているプログラムがメモリ13にロードされ、プロセッサ12により実行される。DB15は、必要に応じて、イベントデータ及び受注履歴のデータなどを記憶する。
【0025】
表示部16は、例えば液晶表示装置などであり、ユーザに対して情報を表示する。受注予測装置100による予測結果は、表示部16に表示することができる。入力部17は、キーボード、マウスなどの入力機器であり、ユーザにより操作される。
【0026】
[受注予測モデルの学習]
(学習時の構成)
図3は、受注予測装置100の学習時の機能構成を示すブロック図である。学習時の受注予測装置100は、学習部50を備える。学習部50は、機械学習モデルの学習を行い、受注予測モデルMを生成する。
【0027】
具体的に、学習部50には、学習用データが入力される。学習用データは、イベントデータと、受注履歴とを含む。イベントデータとしては、過去のイベントに関連して収集された顧客情報、行動履歴、アンケート回答が使用される。また、受注履歴は、過去のイベントにおける顧客毎の受注実績である。即ち、学習用データとしては、過去のイベントに関する顧客情報、行動情報及びアンケート回答と、その顧客が実際にイベントで紹介してた製品や技術などを受注したか否かの履歴とが用いられる。受注予測モデルMの学習において、イベントデータは学習用の入力データに相当し、受注履歴は学習用の正解データに相当する。
【0028】
学習部50は、注意機構(Attention機構)を用いた機械学習モデルを学習し、学習済みのモデルを受注予測モデルMとして生成する。注意機構とは、深層学習などにおいて使用される手法であり、入力データのどこに注意を向けるか、着目するかを決める機構である。注意機構を備える受注予測モデルを用いることにより、入力データのどの項目に着目して予測結果が得られたかを知ることができる。本実施形態では、注意機構を備える受注予測モデルMで受注を予測することにより、前述のように受注確率のみならず、イベントデータの各データ項目に対する着目度を得ることができる。
【0029】
具体的に、学習部50は、イベントデータである顧客情報、行動履歴、アンケート回答に含まれる各データ項目と、その顧客の受注履歴(受注の有無の実績)との関係性を分析して受注予測モデルMを学習する。これにより、学習により得られた受注予測モデルMは、イベントデータが入力された場合に、イベントデータに含まれる各データ項目の着目度、即ち、各データ項目がその受注確率にどの程度影響を与えるか、寄与するかを判定し、それら着目度に基づいて受注確率を算出する。こうして得られた受注予測モデルMは、受注予測装置100による受注予測に使用される。
【0030】
(学習処理)
図4は、受注予測モデルMを生成する学習処理のフローチャートである。この処理は、
図2に示すプロセッサ12が予め用意されたプログラムを実行し、
図3に示す学習部50として機能することにより実現される。
【0031】
まず、学習部50は、顧客情報、行動履歴及びアンケート回答を含むイベントデータを取得する(ステップS11)。また、学習部50は、取得したイベントデータに含まれる顧客の過去の受注履歴を取得する(ステップS12)。次に、学習部50は、注意機構を用いてイベントデータと受注履歴との関係性を分析し、受注予測モデルMを学習する。そして、学習部50は、所定の学習条件が具備されたときに学習を終了し、学習済みの受注予測モデルMを出力する(ステップS13)。こうして、イベントデータの入力に対して、着目すべきデータ項目及び受注確率を出力する受注予測モデルMが得られる。
【0032】
[受注予測]
(受注予測時の構成)
図5は、受注予測時の受注予測装置100の機能構成を示すブロック図である。受注予測時の受注予測装置100は、データ取得部21と、受注予測部22と、出力部23とを備える。データ取得部21は、顧客情報、行動履歴及びアンケート回答を含むイベントデータを取得し、受注予測部22へ出力する。受注予測部22は、前述の学習処理により生成された受注予測モデルMを用いて、イベントデータから予測を行う。出力部23は、予測結果として受注確率、及び、イベントデータに含まれるデータ項目毎の着目度を出力する。受注確率は、例えば0~100%の間の値として出力される。なお、受注予測装置100は、イベントデータに含まれる全てのデータ項目について着目度を出力してもよいし、着目度が所定の閾値より高いデータ項目のみについて着目度を出力してもよい。
【0033】
予測結果として得られた受注確率は、その後の個々の顧客に対する営業戦略の決定に利用することができる。例えば、営業担当者は、受注確率の高い顧客に対して優先的に営業活動を行うことにより、効率的な営業が可能となる。また、予測結果として、イベントデータに含まれるデータ項目のうち、着目度の高いデータ項目が分かるので、着目度の高いデータ項目について収集するデータ量やデータの精度を上げることにより、受注予測装置100による受注予測の精度を向上させることが可能となる。
【0034】
(受注予測処理)
図6は、受注予測装置100による受注予測処理のフローチャートである。この処理は、
図2に示すプロセッサ12が予め用意されたプログラムを実行し、
図5に示す構成要素として機能することにより実現される。
【0035】
まず、データ取得部21は、イベントに来場した顧客について、顧客情報、行動履歴及びアンケート回答を含むイベントデータを取得する(ステップS21)。次に、受注予測部22は、学習により得られた受注予測モデルMを用いて、イベントデータに基づく予測を行う(ステップS22)。そして、出力部23は、その顧客についての受注確率、及び、データ項目毎の着目度を予測結果として出力する(ステップS23)。なお、出力部23は、予測結果を表示部16に表示してもよいし、外部の端末装置に出力してもよい。そして、処理は終了する。
【0036】
[変形例]
上記の実施形態では、イベントは、実際にコンベンションセンターなどで開催された現実のイベントを想定しているが、その代わりに、ウェブ上のサイトで実施されるイベント(以下、「ウェブイベント」と呼ぶ。)であってもよい。例えば、ウェブイベントは、オンラインで開催される展示会や見本市(オンライン展示会、オンライン見本市ともいう。)などである。ウェブイベントの場合でも、上記の学習処理や受注予測処理などは現実のイベントの場合と同様であるが、イベントデータの収集方法については異なる面がある。
【0037】
具体的に、過去に取引歴の無い新規顧客については、顧客情報は、イベントサイトを訪問した人(以下、「訪問者」と呼ぶ。)がイベントサイト内で入力した情報を含む。また、行動履歴は、イベントサイト内で訪問者が行った操作に関するログとして取得される。例えば、行動履歴は、イベントサイト内において訪問者が訪問した企業ページの訪問履歴(訪問の有無、日時、順序、滞在時間など)、企業ページにおいて訪問者がダウンロードした資料の情報、企業ページで訪問者が視聴した動画コンテンツなどの情報、などを含む。また、アンケート回答としては、ウェブ上で提示されるアンケートに対して訪問者が入力した回答が収集される。なお、アンケートは、イベントサイト全体に関するものでもよく、企業ページ毎に用意されたものでもよい。
【0038】
[予測結果の利用]
次に、受注予測装置100による予測結果を利用する例について説明する。
図7は、予測結果を利用する機能を付加した受注予測装置100xの構成を示すブロック図である。図示のように、受注予測装置100xは、データ取得部21及び受注予測部22に加えて、重点顧客選定部31と、受注要因抽出部32と、イベント/アンケート編集部33と、を備える。受注予測部22が生成した予測結果、即ち、受注確率及び各データ項目の着目度は、重点顧客選定部31、受注要因抽出部32及びイベント/アンケート編集部33にそれぞれ入力される。
【0039】
重点顧客選定部31は、予測結果に含まれる受注確率に基づいて重点顧客、即ち、重要な顧客を選定する。例えば、重点顧客選定部31は、受注確率を予め決められた基準確率と比較し、基準確率よりも高い受注確率を有する顧客を重点顧客として選定する。営業担当者は、重点顧客に対する営業活動を強化することができる。
【0040】
受注要因抽出部32は、予測結果に含まれるデータ項目毎の着目度に基づいて、受注要因を抽出する。受注要因とは、受注につながる要因や受注に寄与する要因である。例えば、受注要因抽出部32は、予測結果に含まれるデータ項目毎の着目度を、予め決められた基準着目度と比較し、基準着目度より高い着目度を有するデータ項目を受注要因として抽出する。
【0041】
また、受注要因抽出部32は、予測結果として基準確率より高い受注確率が得られた場合に、高い着目度を有する複数のデータ項目の組み合わせを受注要因として抽出してもよい。例えば、「業種Aの役職Bの人が行動Cを行った場合の受注確率が高い。」という予測結果が得られた場合、受注要因抽出部32は、「業種A」、「役職B」、「行動C」の組み合わせを受注要因として抽出してもよい。これにより、営業担当者などは、受注につなげるために有効な事項を把握し、営業活動などに生かすことができる。
【0042】
イベント/アンケート編集部33は、予測結果に含まれるデータ項目毎の着目度に基づいて、次回以降のイベントの企画や、イベントで実施するアンケートの項目などを改善する。具体的に、イベント/アンケート編集部33は、基準着目度より高い着目度を有するデータ項目を抽出して次回のイベントの企画や開催条件を出力してもよい。例えば、「業種Dの顧客は、技術分野Eの技術の受注確率が高い。」という予測結果が得られた場合、イベント/アンケート編集部33は、次回のイベントについて「業種D向けの技術分野Eのイベント」という条件を出力してもよい。
【0043】
また、イベント/アンケート編集部33は、予測結果に含まれるデータ項目毎の着目度に基づいて、アンケートの変更案を生成してもよい。具体的に、予め用意された複数のアンケート項目から選択してアンケートを生成、編集するものとすると、イベント/アンケート編集部33は、あるアンケート項目に対するアンケート回答の着目度が高い場合、そのアンケート項目に関連するアンケート項目を増やすようにアンケートを編集してもよい。例えば、イベント/アンケート編集部33は、予測結果に含まれるアンケート回答毎の着目度を参照し、着目度の高い項目から順にアンケート項目として採用するようにしてもよい。
【0044】
このように、イベントやアンケートの内容を改善するように変更することで、より来場者の多いイベントを企画したり、回答率の高いアンケートを生成することができる。これにより、営業活動の成功や売上向上などに貢献することができる。
【0045】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の受注予測装置の機能構成を示すブロック図である。受注予測装置60は、取得手段61と、予測手段62と、出力手段63とを備える。
【0046】
図9は、第2実施形態の受注予測装置60による処理のフローチャートである。取得手段61は、イベントに関連するイベントデータを取得する(ステップS61)。予測手段62は、イベントデータに基づき、注意機構を用いて、イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する(ステップS62)。出力手段63は、着目度及び受注確率を予測結果として出力する(ステップS63)。
【0047】
第2実施形態の受注予測装置60によれば、イベントで収集したデータを用いて、高い精度で受注を予測することが可能となる。
<第3実施形態>
【0048】
図10は、第3実施形態の学習装置の機能構成を示すブロック図である。学習装置70は、取得手段71と、学習手段72と、出力手段73とを備える。
【0049】
図11は、第3実施形態の学習装置70による処理のフローチャートである。取得手段71は、イベントに関連するイベントデータと、受注履歴とを取得する(ステップS71)。学習手段72は、イベントデータ及び受注履歴に基づき、注意機構を用いて受注を予測する予測モデルを学習する(ステップS72)。出力手段73は、学習手段により学習済みの予測モデルを出力する(ステップS73)。
【0050】
第3実施形態の学習装置によれば、イベントに関連するデータから、高精度で受注を予測するモデルを生成することができる。
【0051】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0052】
(付記1)
イベントに関連するイベントデータを取得する取得手段と、
前記イベントデータに基づき、注意機構を用いて、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測する予測手段と、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する出力手段と、
を備える受注予測装置。
【0053】
(付記2)
前記イベントデータは、前記イベントに参加した顧客の顧客情報を含み、
前記受注確率は、前記顧客による受注の確率である付記1に記載の受注予測装置。
【0054】
(付記3)
前記イベントデータは、前記顧客によるアンケートへの回答、及び、前記イベントにおける前記顧客の行動履歴の少なくとも一方を含む付記2に記載の受注予測装置。
【0055】
(付記4)
前記受注確率が予め決められた基準確率より高い顧客を、重点顧客として出力する重点顧客選定手段を備える付記3に記載の受注予測装置。
【0056】
(付記5)
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目を、受注要因として出力する受注要因抽出手段を備える付記1乃至4のいずれか一項に記載の受注予測装置。
【0057】
(付記6)
前記着目度が予め決められた基準着目度より高いデータ項目に基づいて、アンケートに含まれるアンケート項目を編集するアンケート編集手段を備える付記1乃至5のいずれか一項に記載の受注予測装置。
【0058】
(付記7)
イベントに関連するイベントデータを取得し、
前記イベントデータに基づき、注意機構を用いて、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する受注予測方法。
【0059】
(付記8)
イベントに関連するイベントデータを取得し、
前記イベントデータに基づき、注意機構を用いて、前記イベントデータに含まれる各データ項目に対する着目度と、受注確率とを予測し、
前記着目度及び前記受注確率を予測結果として出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体。
【0060】
(付記9)
イベントに関連するイベントデータと、受注履歴とを取得する取得手段と、
前記イベントデータ及び前記受注履歴に基づき、注意機構を用いて受注を予測する予測モデルを学習する学習手段と、
前記学習手段により学習済みの予測モデルを出力する出力手段と、
を備える学習装置。
【0061】
(付記10)
前記イベントデータは、前記イベントに参加した顧客の顧客情報、前記顧客によるアンケートへの回答、前記イベントにおける前記顧客の行動履歴を含む付記9に記載の学習装置。
【0062】
(付記11)
イベントに関連するイベントデータと、受注履歴とを取得し、
前記イベントデータ及び前記受注履歴に基づき、注意機構を用いて受注を予測する予測モデルを学習し、
学習済みの予測モデルを出力する学習方法。
【0063】
(付記12)
イベントに関連するイベントデータと、受注履歴とを取得し、
前記イベントデータ及び前記受注履歴に基づき、注意機構を用いて受注を予測する予測モデルを学習し、
学習済みの予測モデルを出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体。
【0064】
以上、実施形態及び実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0065】
12 プロセッサ
21 データ取得部
22 受注予測部
31 重点顧客選定部
32 受注要因抽出部
33 イベント/アンケート編集部
50 学習部