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特許7540602地図データ生成装置、地図データ生成システム及び地図データ生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】地図データ生成装置、地図データ生成システム及び地図データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240820BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240820BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/01 A
G08G1/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023539719
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2022026596
(87)【国際公開番号】W WO2023013342
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021126700
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小久保 侑子
(72)【発明者】
【氏名】北川 弘之
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/241766(WO,A1)
【文献】特開2004-340633(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098703(WO,A1)
【文献】特開2013-007723(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00
G08G 1/01、1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行情報とGNSS情報とを含むプローブデータを車載機から受信する地図データ生成装置(3)であって、
前記プローブデータに含まれる前記走行情報と前記GNSS情報との相関を示す相関係数を算出する相関係数算出部(10b)と、
前記相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出する遅延時間算出部(10c)と、
前記GNSS遅延時間に基づいて前記GNSS情報を遅延時間補正する遅延時間補正部(10d)と、
前記プローブデータを、遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する地図データ生成部(10e)と、を備える地図データ生成装置。
【請求項2】
前記相関係数算出部は、前記走行情報として、3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用い、前記GNSS情報として、3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用いる請求項1に記載した地図データ生成装置。
【請求項3】
前記GNSS情報に対応する測位時刻情報に基づいて前記GNSS情報を受信ばらつき補正する受信ばらつき補正部(10a)を備え、
前記地図データ生成部は、前記プローブデータを、受信ばらつき補正及び遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する請求項1又は2に記載した地図データ生成装置。
【請求項4】
前記地図データ生成部は、前記プローブデータを、受信ばらつき補正された後に遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する請求項3に記載した地図データ生成装置。
【請求項5】
走行情報とGNSS情報とを含むプローブデータを送信する車載機(2)と、前記プローブデータを前記車載機から受信する地図データ生成装置(3)と、を備える地図データ生成システム(1)であって、
前記プローブデータに含まれる前記走行情報と前記GNSS情報との相関を示す相関係数を算出する相関係数算出部(10b)と、
前記相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出する遅延時間算出部(10c)と、
前記GNSS遅延時間に基づいて前記GNSS情報を遅延時間補正する遅延時間補正部(10d)と、
前記プローブデータを、遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する地図データ生成部(10e)と、を備える地図データ生成システム。
【請求項6】
前記相関係数算出部は、前記走行情報として、3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用い、前記GNSS情報として、3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用いる請求項5に記載した地図データ生成システム。
【請求項7】
前記GNSS情報に対応する測位時刻情報に基づいて前記GNSS情報を受信ばらつき補正する受信ばらつき補正部(10a)を備え、
前記地図データ生成部は、前記プローブデータを、受信ばらつき補正及び遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する請求項5又は6に記載した地図データ生成システム。
【請求項8】
前記地図データ生成部は、前記プローブデータを、受信ばらつき補正された後に遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する請求項7に記載した地図データ生成システム。
【請求項9】
走行情報とGNSS情報とを含むプローブデータを車載機から受信する地図データ生成装置(3)の制御部(10)に、
前記プローブデータに含まれる前記走行情報と前記GNSS情報との相関を示す相関係数を算出する相関係数算出手順と、
前記相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出する遅延時間算出手順と、
前記GNSS遅延時間に基づいて前記GNSS情報を遅延時間補正する遅延時間補正手順と、
前記プローブデータを、遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する地図データ生成手順と、を実行させる地図データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年8月2日に出願された日本出願番号2021-126700号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、地図データ生成装置、地図データ生成システム及び地図データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、地図データ生成装置において、車載機から送信されたプローブデータを用いて地図データを生成する構成が供されている。例えば特許文献1には、複数のセグメントで共通する共通ランドマークを用いてセグメント中の区画線を設定し、その設定したセグメント中の区画線を地図上の区画線と特定して地図データを生成する手法が開示されている。特許文献1による手法では、ばらつきが大きいGNSS(Global Navigation Satellite System)座標を用いるのではなく、共通ランドマークを用いてセグメント中の区画線を設定し、その設定した区画線を地図上の区画線と特定して地図データを生成することで、少ないサンプル数でも精度の高い地図データを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-38356号公報
【発明の概要】
【0005】
車載機から送信されるプローブデータには画像認識結果やセンサ情報の他にGNSS情報が含まれる。地図データ生成装置は、プロープデータをGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する。車両において、車載機とGNSS受信機とがゲートウェイを介して接続され、GNSS情報がGNSS受信機からゲートウェイを介して車載機に入力される構成では、通信遅延により影響を受けて車両移動中では進行方向後方へGNSS情報が遅れて取得されることになる。そのため、車載カメラにより撮像されたカメラ画像の画像認識結果やセンサ情報とGNSS情報との間でずれが生じ、プローブデータが統合されて生成される地図データにも地物の絶対位置にずれが生じる。
【0006】
本開示は、通信遅延による影響を未然に回避し、地図データを適切に生成することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様によれば、相関係数算出部は、プローブデータに含まれる走行情報とGNSS情報との相関を示す相関係数を算出する。遅延時間算出部は、相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出する。遅延時間補正部は、GNSS遅延時間に基づいてGNSS情報を遅延時間補正する。地図データ生成部は、プローブデータを、遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成する。
【0008】
プローブデータに含まれる走行情報とGNSS情報との相関を示す相関係数を算出し、その算出した相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出し、その算出したGNSS遅延時間に基づいてGNSS情報を遅延時間補正する。プローブデータを、遅延時間補正したGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成するようにした。プローブデータを、遅延時間補正したGNSS情報により補正して地図データを生成することで、通信遅延による影響を未然に回避した上で地図データを適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、一実施形態の地図データ生成システムの全体構成を示す機能ブロック図であり、
図2図2は、処理の流れを模式的に示す図であり、
図3図3は、GNSS情報が遅延する態様を示す図であり、
図4図4は、GNSS情報が画像認識結果と対応付けられる態様を示す図であり、
図5図5は、GNSS遅延時間を算出する態様を示す図であり、
図6図6は、相関係数のピーク値を示す図であり、
図7図7は、GNSS速度を遅延時間補正する態様を示す図であり、
図8図8は、フローチャートであり、
図9図9は、フローチャートであり、
図10図10は、フローチャートであり、
図11図11は、受信ばらつき補正処理の前後の態様を示す図であり、
図12図12は、遅延時間補正処理の前後の態様を示す図であり、
図13図13は、相関係数を算出する区間を示す図であり、
図14図14は、GNSS遅延時間を算出する態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、地図データ生成システム1は、車両に搭載されている車載機2と、ネットワーク側に配置されているサーバ3とが例えばインターネット等を含む通信ネットワーク4を介してデータ通信可能に構成されている。車載機2が搭載されている車両は、自動運転機能を有する車両であっても良いし、自動運転機能を有しない車両であっても良い。自動運転機能を有する車両は、自動運転と手動運転とを逐次切り替えて走行する。車載機2とサーバ3とは複数対1の関係にあり、サーバ3は複数の車載機2との間でデータ通信可能である。サーバ3は地図データ生成装置に相当する。
【0011】
車載機2は、車両に搭載されている各種センサや各種電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)から車両周辺に関する周辺情報、車両走行に関する走行情報、車両位置に関する位置情報を入力する。車載機2は、周辺情報として、車載カメラにより撮像された車両進行方向のカメラ画像、例えばミリ波センサ等のセンサにより車両周囲が検知されたセンサ情報、レーダにより車両周囲が検知されたレーダ情報、ライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)により車両周囲が検知されたライダ情報等を入力する。カメラ画像には、道路上に設置されている信号機、交通標識、看板、道路の路面上にペイントされている区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等が含まれる。車載機2は、周辺情報として、カメラ画像、センサ情報、レーダ情報、ライダ情報のうち少なくとも一つを入力すれば良い。
【0012】
車載機2は、走行情報として、車両センサにより検知された車速情報を入力する。車載機2は、位置情報として、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機により測位されたGNSS情報を、中継装置としてのゲートウェイ5を介して入力する。GNSS情報は、絶対位置を示すGNSS座標と、速度を示すGNSS速度とを含む。GNSSは、汎地球測位航法衛星システムの総称であり、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、BeiDou、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)等の多様なシステムが実現されている。
【0013】
車載機2は、制御部6と、データ通信部7と、プローブデータ記憶部8と、地図データ記憶部9とを備える。制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、車載機2の動作全般を制御する。マイクロコンピュータはプロセッサと同じ意味である。車載機2において、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた1つ又は複数の非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、共通の非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、1つの記憶媒体に相当していても良く、1つ又は複数の記憶媒体における一部の記憶領域に相当していても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9のうち少なくとも1つを含むように記憶装置が構成されていても良い。記憶装置は、データの読み出し及び書き換えのための回路を、更に備えていても良い。
【0014】
サーバ3は、制御部10と、データ通信部11と、プローブデータ記憶部12と、地図データ記憶部13とを備える。制御部10は、CPU、ROM、RAM及びI/Oを有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、サーバ3の動作全般を制御する。サーバ3においても、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部12及び地図データ記憶部13は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。
【0015】
車載機2において、制御部6は、周辺情報、走行情報及び位置情報を入力すると、その入力した各種情報からプローブデータを生成し、その生成したプローブデータをプローブデータ記憶部8に記憶させる。プローブデータは、周辺情報、走行情報及び位置情報を含んで構成されるデータであり、道路上に設置されている信号機、交通標識、看板、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の位置、色、特徴、相対的な位置関係等を示すデータを含む。又、プローブデータは、車両が走行中の道路に関する道路形状、道路特徴、道路幅等を示すデータも含む。
【0016】
制御部6は、例えば所定時間が経過したこと、又は車両の走行距離が所定距離に到達したことを契機とし、プローブデータ記憶部8に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる。制御部6は、上記した時間や車両の走行距離を契機とすることに代えて、サーバ3がプローブデータ送信要求を車載機2に所定周期で送信する構成であれば、サーバ3から送信されたプローブデータ送信要求がデータ通信部7により受信されたことを契機とし、プローブデータ記憶部8に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。又、制御部6は、例えばイグニッションオン時に前回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良いし、イグニッションオフ時に今回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。制御部6は、プローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる際に、地図を管理する上で予め決められたエリアの単位であるセグメント単位でプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良いし、セグメント単位とは無関係な所定エリアの単位でプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。
【0017】
地図データ記憶部9は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部9に記憶されている地図データには、三次元地図情報、地物情報、道路の属性値情報等が含まれている。三次元地図情報は、道路形状や構造物の特徴点の点群を含む情報である。地物情報は、信号機、交通標識、看板、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の形状や位置に関する情報である。道路の属性値情報は、道路の車線に関する情報であり、車線数、右折専用車線の有無等に関する情報である。地図データ記憶部9に記憶されている地図データは、後述するサーバ3の地図データ記憶部13に記憶されている地図データが当該サーバ3から車載機2にダウンロードされることで逐次更新される。
【0018】
サーバ3において、地図データ記憶部13は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部13に記憶されている地図データは、車載機2の地図データ記憶部9に記憶されている地図データよりも大容量のデータであり、広域なエリアの情報を反映しているデータである。制御部10は、車載機2から送信されたプローブデータをデータ通信部11により受信し、その受信したプローブデータをプローブデータ記憶部12に記憶させる。制御部10は、プローブデータ記憶部12に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータを、地図データ記憶部13に記憶されている地図データに逐次反映させて当該地図データを逐次更新する。即ち、地図データ記憶部13に記憶されている地図データは、複数のプローブデータが統合されて生成される統合地図データである。
【0019】
上記したようにGNSS情報がGNSS受信機からゲートウェイ5を介して車載機3に入力される構成では、通信遅延による影響を受けて車両移動中では進行方向後方へGNSS情報が遅れて取得される。そのため、車載カメラにより撮像されたカメラ画像の画像認識結果やセンサ情報とGNSS情報との間でずれが生じ、プローブデータを用いて生成される地図データにも地物の絶対位置にずれが生じる。このような事情から、本実施形態では、車載機2及びサーバ3は以下に示す機能を有する。
【0020】
図2に示すように、車載機2において、制御部6は、車載カメラにより撮像された車両進行方向のカメラ画像を認識処理し、そのカメラ画像を認識処理した画像認識結果を含むプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる。この場合、制御部6は、GNSS受信機により測位されたGNSS情報を入力すると、GNSS情報に対応する測位時刻情報を含めてプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる。GNSS情報に対応する測位時刻情報とは、GNSS受信機がGNSS情報を取得した時刻を示す情報であり、測位した時刻を示す情報である。
【0021】
サーバ3において、制御部10は、車載機2から送信されたプローブデータをデータ通信部11により受信すると、その受信したプローブデータを補正するプローブデータ補正処理として、短期的なばらつきを補正するための受信ばらつき補正処理を行い、定常的な通信遅延を補正するための遅延時間補正処理を行う。制御部10は、プローブデータ補正処理により補正した補正後のプローブデータを統合して地図データを生成する統合処理を行う。
【0022】
サーバ3において、制御部10は、受信ばらつき補正部10aと、相関係数算出部10bと、遅延時間算出部10cと、遅延時間補正部10dと、地図データ生成部10eとを有する。これらの各部10a~10eは地図データ生成プログラムにより実行される機能の一部に相当する。即ち、制御部10は、地図データ生成プログラムの一部を実行することで各部10a~10eの機能を行う。
【0023】
受信ばらつき補正部10aは、測位時刻情報に基づいてGNSS情報を受信ばらつき補正する。受信ばらつき補正部10aは、図3に示すように、GNSS受信機からゲートウェイまでの通信遅延「ΔTGn(nは0以上の整数)」と、ゲートウェイから制御部10までの通信遅延「ΔTCn(nは0以上の整数)」とを算出し、その通信遅延「ΔTGn」と通信遅延「ΔTCn」との合算値から、GNSS情報「ア」の通信遅延を暫定的な定常遅延「ΔT」として減算し、短期的なばらつき「ΔTVn(nは0以上の整数)」を算出する。GNSS情報が1[s]周期で取得され、カメラ画像の画像認識結果が0.1[s]周期で取得される場合には、図4の例示では、通信遅延により、時刻「0.0」のGNSS情報「ア」がカメラ内部時刻「0.3」の画像認識結果と対応付けられ、時刻「1.0」のGNSS情報「イ」がカメラ内部時刻「1.4」の画像認識結果と対応付けられ、時刻「2.0」のGNSS情報「ウ」がカメラ内部時刻「2.2」の画像認識結果と対応付けられている。
【0024】
相関係数算出部10bは、プローブデータに含まれる走行情報とGNSS情報との相関を示す相関係数を算出する。相関係数算出部10bは、図5に示すように、車両センサの車速をずらしながら相関係数を算出する。
【0025】
遅延時間算出部10cは、相関係数が相関係数算出部10bにより算出されると、その算出された相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出する。遅延時間算出部10cは、図6に示すように、相関係数が最大値のときの車速のずらし時間をGNSS遅延時間として決定し、GNSS遅延時間を算出する。図6の例示では、遅延時間算出部10cは、GNSS遅延時間として0,7[s]を算出する。
【0026】
遅延時間補正部10dは、GNSS遅延時間が遅延時間算出部10cにより算出されると、その算出されたGNSS遅延時間に基づいてGNSS情報を遅延時間補正する。遅延時間補正部10dは、図7に示すように、GNSS情報としてGNSS速度をGNSS遅延時間ずらし、GNSS速度を遅延時間補正する。
【0027】
地図データ生成部10eは、GNSS情報が受信ばらつき補正部10aにより受信ばらつき補正され、GNSS情報が遅延時間補正部10dにより遅延時間補正されると、プローブデータを、その受信ばらつき補正及び遅延時間補正されたGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを統合して地図データを生成する。
【0028】
次に、上記した構成の作用について図8から図14を参照して説明する。
サーバ3において、制御部10は、地図データの生成条件が成立し、地図データ生成処理の開始イベントが成立すると、プローブデータ記憶部12に記憶されているプローブデータを読出して取得し(S1)、受信ばらつき補正処理に移行する(S2)。
【0029】
制御部10は、受信ばらつき補正処理を開始すると、その取得したプローブデータから測位時刻情報を取得する(S11)。制御部10は、GNSS情報を測位時刻情報に基づいて1[s]周期で補正し(S12)、GNSS情報のずれを確認し(S13)、ずれの有無を判定する(S14)。
【0030】
制御部10は、ずれが有ると判定すると(S14)、ずれを調整する(S15)。制御部10は、地図データの生成対象範囲の全てのプローブデータを対象としてずれを確認したか否かを判定する(S16)。制御部10は、地図データの生成対象範囲の全てのプローブデータを対象としてずれを確認していないと判定し、ずれを未確認のプローブデータが存在すると判定すると(S16:NO)、ステップS13に戻り、ステップS13以降を繰り返す。
【0031】
制御部10は、地図データの生成対象範囲の全てのプローブデータを対象としてずれを確認したと判定し、ずれを未確認のプローブデータが存在しない判定すると(S16:YES)、受信ばらつき補正処理を終了し、遅延時間補正処理に移行する(S3)。制御部10は、受信ばらつき補正処理を行うことで、図11に示すように、プローブデータの地物位置のばらつきを解消し、短期的なばらつきによる影響を未然に回避する。
【0032】
制御部10は、遅延時間補正処理を開始すると、相関係数の初期値として最大値を「0」に設定する(S21)。制御部10は、所定範囲において車両センサの車速を0.1[s]ずつずらし(S22)、相関係数を算出する(S23、相関係数算出手順に相当する)。制御部10は、算出した相関係数の算出値と最大値とを比較し(S24)、算出値が最大値よりも大きな値であると判定すると(S24:YES)、算出値を新たな最大値に設定する(S25)。
【0033】
制御部10は、所定範囲の全てを対象として相関係数を算出したか否かを判定する(S26)。制御部10は、所定範囲の全てを対象として相関係数を算出していないと判定し、相関係数を未算出の範囲が存在すると判定すると(S26:NO)、ステップS22に戻り、ステップS22以降を繰り返す。
【0034】
制御部10は、所定範囲の全てを対象として相関係数を算出したと判定し、相関係数を未算出の範囲が存在しないと判定すると(S26:YES)、相関係数が最大値であるときの車速のずらし時間をGNSS遅延時間として算出する(S27、遅延時間算出手順に相当する)。制御部10は、GNSS情報をGNSS遅延時間ずらし、GNSS情報を遅延時間補正し(S28、遅延時間補正手順に相当する)、遅延時間補正処理を終了する。制御部10は、遅延時間補正処理を行うことで、図12に示すように、プローブデータの地物位置と本来の地物位置との乖離を低減し、定常的な通信遅延による影響を未然に回避する。
【0035】
制御部10は、受信ばらつき補正処理及び遅延時間補正処理により補正されたプローブデータを統合して地図データを生成し(S4、地図データ生成手順に相当する)、地図データ生成処理を終了し、次の地図データ生成処理の開始イベントが成立を待機する。
【0036】
尚、GNSS情報が1[s]周期で取得され、カメラ画像の画像認識結果が0.1[s]周期で取得される場合を例示したが、例えばGNSS情報が0.1[s]周期で取得され、カメラ画像の画像認識結果が0.01[s]周期で取得される等、GNSS情報が取得される周期及びカメラ画像の画像認識結果が取得される周期は例示した値に限らない。又、車両センサの車速を0.1[s]ずつずらして相関係数を算出する場合を例示したが、遅延時間の算出分解能を細かくするために、例えば車両センサの車速を0.05[s]ずつずらして相関係数を算出する等、車両センサの車速をずらす時間は例示した値に限らない。尚、車速は0.1[s]周期で記録されているが、0.1[s]周期で記録される車速を補間して0.05[s]周期の車速を算出することにより、記録された周期よりも細かい分解能で相関係数を算出することができる。
【0037】
本実施形態では、車載機2において相関係数を算出するのではなく、サーバ3において相関係数を算出するので、図13に示すように、車両センサの車速及びGNSS速度をサーバ3に蓄積することで、相関係数を算出する区間を長く確保することができ、GNSS遅延時間の精度を高めることができる。
【0038】
又、受信ばらつき補正処理及び遅延時間補正処理をサーバ3が行う構成を例示したが、受信ばらつき補正処理及び遅延時間補正処理を車載機2が行う構成としても良い。車載機2において、測位時刻情報を送信する構成を例示したが、フリーランカウンタを用い、フリーランカウンタによるカウント値をサーバ3に送信する構成としても良い。
【0039】
又、車両センサの車速とGNSS速度との相関を算出することでGNSS遅延時間を算出する構成を例示したが、図14に示すように、車両センサの方位角とGNSS方位との相関を算出することでGNSS遅延時間を算出しても良い。又、走行情報により算出した前回位置と今回位置との距離差と、GNSS情報の前回位置と今回位置と距離差との相関を算出することでGNSS遅延時間を算出しても良い。即ち、走行情報とGNSS情報との相関を算出可能な指標値であれば、どのような指標値を用いても良く、走行情報として、例えば3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用い、GNSS情報として、例えば3次元位置、3次元速度、3次元方位、3次元加速度及び3軸回転速度のうち少なくとも何れか一つである車両の挙動を示す情報を用いれば良い。
【0040】
以上に説明したように本実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
サーバ3において、測位時刻情報に基づいてGNSS情報を受信ばらつき補正し、プローブデータを、受信ばらつき補正及び遅延時間補正したGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成するようにした。GNSS情報を受信ばらつき補正することで、定常的な通信遅延による影響に加えて短期的なばらつきによる影響を未然に回避した上で地図データをより適切に生成することができる。
【0041】
サーバ3において、プローブデータに含まれる走行情報とGNSS情報との相関を示す相関係数を算出し、その算出した相関係数に基づいてGNSS遅延時間を算出し、その算出したGNSS遅延時間に基づいてGNSS情報を遅延時間補正する。プローブデータを、遅延時間補正したGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成するようにした。走行情報とGNSS情報との相関を利用してGNSS情報を遅延時間補正し、プローブデータを、その遅延時間補正したGNSS情報により補正して地図データを生成することで、定常的な通信遅延による影響を未然に回避した上で地図データを適切に生成することができる。
【0042】
サーバ3において、プローブデータを、受信ばらつき補正した後に遅延時間補正したGNSS情報により補正し、補正後のプローブデータを用いて地図データを生成するようにした。先に受信ばらつき補正して後から遅延時間補正することで、短期的なばらつきによる影響を未然に回避した上で定常的な通信遅延による影響を未然に回避することができる。
【0043】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0044】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
図1
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図14