(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ラミネート紙および液体容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20240820BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240820BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/34
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024055280
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 晴香
(72)【発明者】
【氏名】池田 信乃
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 泰地
(72)【発明者】
【氏名】田丸 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-069561(JP,A)
【文献】特開2007-314246(JP,A)
【文献】特開2019-163578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するラミネート紙であって、
断面方向の透気抵抗度が、350秒以上2000秒以下であり、
含水率が、4.0質量%以上8.0質量%以下である、
ラミネート紙。
【請求項2】
前記紙基材の前記ナイロン層を設ける側の平滑度が20秒以下である、請求項1に記載のラミネート紙。
【請求項3】
前記ナイロン層の厚さが3μm以上35μm以下であり、かつ、前記第1接着性樹脂層および第2接着性樹脂層の厚さがそれぞれ15μm以下である、請求項1または2に記載のラミネート紙。
【請求項4】
JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、前記ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトと、前記第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイトとの差の絶対値が0cm
3/10分以上100cm
3/10分以下である、請求項1または2に記載のラミネート紙。
【請求項5】
JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、前記ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトが、10cm
3/10分以上500cm
3/10分以下であり、かつ、前記第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイトが、5cm
3/10分以上500cm
3/10分以下である、請求項1または2に記載のラミネート紙。
【請求項6】
前記紙基材の前記ナイロン層を設ける側とは反対側にさらに熱可塑性樹脂層を有する、請求項1または2に記載のラミネート紙。
【請求項7】
液体容器用である、請求項1または2に記載のラミネート紙。
【請求項8】
請求項1または2に記載のラミネート紙を用いてなる、液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート紙および該ラミネート紙を用いてなる液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体飲料等に利用される液体用紙容器(液体容器)としては、紙容器を構成する紙基材に種々の方法で耐水性を付与した容器が用いられている。紙基材に耐水性を付与する代表的な方法として、紙基材にサイズ剤を添加する方法や紙基材表面に熱可塑性樹脂をラミネートする方法が挙げられる。
【0003】
液体飲料等の内容物の品質保持のため、酸素バリア性材料としてナイロンを使用した液体容器が知られている。例えば、特許文献1には、表面側から少なくとも熱可塑性樹脂層、板紙層、ナイロン層、接着性ポリオレフィン樹脂層を経て最内層の低密度ポリエチレン樹脂層の順で配置された積層構成を有する容器材料からなる紙製液体容器であって、前記最内層の低密度ポリエチレン樹脂層の塗工量が特定値以上であり、前記最内層の低密度ポリエチレン樹脂層と接着性ポリオレフィン樹脂層からなる樹脂層の塗工量が特定値以上、且つ、これらの樹脂層とナイロン層からなる樹脂層の塗工量が特定値以下であることを特徴とする紙製液体容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙製液体容器の容器材料がナイロン層を有することにより、該液体容器のトップ部やボトム部などをヒートシールする際にピンホールが発生しにくい傾向にあるが、ナイロン層と隣接層との間で剥離が発生しやすいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題の存在に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、層間剥離が抑制され、かつ加工適性に優れるラミネート紙および該ラミネート紙を用いてなる液体容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、紙基材と、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するラミネート紙について、断面方向の透気抵抗度を特定の範囲とし、含水率を特定の範囲とすることで、層間剥離が抑制され、かつ、加工適性に優れることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のような構成を有する。
<1> 紙基材と、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するラミネート紙であって、断面方向の透気抵抗度が、350秒以上2000秒以下であり、含水率が、4.0質量%以上8.0質量%以下である、ラミネート紙。
<2> 前記紙基材の前記ナイロン層を設ける側の平滑度が20秒以下である、<1>に記載のラミネート紙。
<3> 前記ナイロン層の厚さが3μm以上35μm以下であり、かつ、前記第1接着性樹脂層および第2接着性樹脂層の厚さがそれぞれ15μm以下である、<1>または<2>のいずれか1つに記載のラミネート紙。
<4> JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、前記ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトと、前記第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイトとの差の絶対値が0cm3/10分以上100cm3/10分以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のラミネート紙。
<5> JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、前記ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトが、10cm3/10分以上500cm3/10分以下であり、かつ、前記第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイトが、5cm3/10分以上500cm3/10分以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のラミネート紙。
<6> 前記紙基材の前記ナイロン層を設ける側とは反対側にさらに熱可塑性樹脂層を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のラミネート紙。
<7> 液体容器用である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のラミネート紙。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載のラミネート紙を用いてなる、液体容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、層間剥離が抑制され、かつ、加工適性に優れるラミネート紙および該ラミネート紙を用いてなる液体容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
[ラミネート紙]
本実施形態のラミネート紙は、紙基材と、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するラミネート紙であって、断面方向の透気抵抗度が、350秒以上2000秒以下であり、含水率が、4.0質量%以上8.0質量%以下である。本実施形態によれば、層間剥離を抑制でき、かつ加工適性に優れるラミネート紙が提供される。ここで、「層間剥離」とは、ナイロン層と、紙基材層または第1接着性樹脂層(以下、その隣接層とも称する)との間の剥離を意味する。ラミネート紙は、層間剥離が抑制されると、液体容器を作製した際に、内容物の漏れを抑制することができ、液体容器に好適に使用できる。また、「加工適性に優れる」とは、特にラミネート紙を印刷加工する際の、しごきによる紙基材内での剥離が抑制される、および/または、ラミネート紙に罫入れ加工を行い、罫線箇所の折り曲げ加工を行った後に罫線箇所に発生する表面の亀裂(罫割れ)が抑制されることを意味する。当該効果を奏するメカニズムは定かではないが、以下のように推測される。
ラミネート紙がナイロン層を有することにより、液体容器のトップ部やボトム部などをヒートシールする際にピンホールが発生しにくい傾向にある(ピンホール耐性を有する)が、ラミネート紙から液体容器を作製する際に、紙基材が含有する水分に起因する水蒸気がナイロン層とその隣接層との間に溜まり、層間剥離が発生する場合がある。ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度を2000秒以下とすることにより、前記水蒸気はラミネート紙の端面(断面)から抜けやすくなるため、ラミネート紙から液体容器を作製する際にラミネート紙の層間剥離を抑制できる。また、ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度を350秒以上とすることにより、紙基材内部が適度にパルプ繊維で充填された状態となり、繊維間結合が強くなることで、印刷加工時のしごきによる紙基材内部の剥離が抑制される。また、ラミネート紙の含水率を8.0質量%以下とすることにより、上述した水蒸気の発生と、ナイロン層とその隣接層との間における水蒸気の滞留が起きにくくなり、ラミネート紙の層間剥離を抑制できる。また、ラミネート紙の含水率を4.0質量%以上とすることにより、ラミネート紙が硬くなりすぎず、印刷加工時のしごきによる紙基材内部の剥離が抑制され、また、罫線箇所を折り曲げ加工した際の罫割れも生じにくくなる。
なお、本発明の効果は、上記メカニズムに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態のラミネート紙の層構成は、具体的には、紙基材/第1接着性樹脂層/ナイロン層/第2接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層、または紙基材/ナイロン層/第2接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層とすることができる。また、上記の層に加えて、紙基材のナイロン層を設ける側とは反対側の面である他方の面にさらに熱可塑性樹脂層を有してもよく、後述するその他の層を有していてもよい。
【0012】
<透気抵抗度>
本実施形態において、ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度は、ナイロン層とその隣接層との間の層間剥離を抑制し、その結果として、液体容器を作製した際に内容物の漏れを抑制するラミネート紙を得る観点から、350秒以上であり、好ましくは400秒以上、より好ましくは450秒以上、さらに好ましくは470秒以上、よりさらに好ましくは480秒以上であり、そして、2000秒以下であり、好ましくは1800秒以下、より好ましくは1700秒以下である。
ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度は、ラミネート紙を構成する紙基材について、パルプ叩解条件、抄紙時のプレス加工条件等を調節することにより調整できる。具体的には、パルプの叩解度を上げたり、プレス圧を高めると、透気抵抗度が増加する傾向にある。
ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度は、次のとおり測定される。ラミネート紙が、後述するように、ナイロン層を設ける側とは反対側にさらに熱可塑性樹脂層(印刷面側)を有する場合には、印刷面側の熱可塑性樹脂層を剥離し、紙基材を露出させる。JIS P 8117:2009に準拠し、紙基材が露出している面の端面(断面)の下側から水平方向に抜ける気体の王研式透気抵抗度が測定される。具体的には、実施例に記載される方法により測定される。
【0013】
<含水率>
本実施形態において、ラミネート紙の含水率は、加工適性に優れるラミネート紙を得る観点から、4.0質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以上であり、そして、層間剥離を抑制する観点から、8.0質量%以下であり、好ましくは7.0質量%以下である。
ラミネート紙の含水率は、ラミネート紙を作製する際の乾燥温度や乾燥時間を調節することにより調整できる。
ラミネート紙の含水率は、JIS P 8127:2010に準拠して測定される。
【0014】
<坪量>
ラミネート紙の坪量は、層間剥離の抑制と加工適性の観点から、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、さらに好ましくは300g/m2以上、よりさらに好ましくは350g/m2以上であり、そして、好ましくは600g/m2以下、より好ましくは500g/m2以下、さらに好ましくは450g/m2以下である。
ラミネート紙の坪量は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0015】
<厚さ>
ラミネート紙の厚さは、層間剥離の抑制と加工適性の観点から、好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは300μm以上、よりさらに好ましくは350μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下、よりさらに好ましくは500μm以下である。
ラミネート紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。具体的には、実施例に記載される方法により測定される。
【0016】
以下、本実施形態のラミネート紙を構成する各層について説明する。
<紙基材>
本実施形態において、紙基材は、紙を主体とし、前記紙基材は、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。
紙基材は、パルプ層を2層以上有する多層構造であることが好ましい。紙基材の層数は、紙基材の層間強度を所望の範囲に調整することが容易となり、その結果として、加工適性により優れるラミネート紙を得る観点から、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上であり、そして、好ましくは7層以下、より好ましくは6層以下、特に好ましくは5層である。紙基材の各パルプ層の坪量は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0017】
(坪量)
紙基材(全層)の坪量は、層間剥離の抑制と加工適性の観点および液体容器とした際の強度の観点から、好ましくは200g/m2以上、より好ましくは250g/m2以上、さらに好ましくは300g/m2以上、よりさらに好ましくは310g/m2以上、よりさらに好ましくは320g/m2以上であり、そして、好ましくは500g/m2以下、より好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは350g/m2以上下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0018】
(厚さ)
紙基材(全層)の厚さは、層間剥離の抑制と加工適性の観点および液体容器とした際の強度の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上、よりさらに好ましくは400μm以上、よりさらに好ましくは420μm以上であり、そして、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは480μm以下である。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0019】
(密度)
紙基材(全層)の密度は、層間剥離の抑制と加工適性の観点および液体容器とした際の強度の観点から、好ましくは0.4g/cm3以上、より好ましくは0.5g/cm3以上、さらに好ましくは0.6g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.7g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm3以下、より好ましくは1.1g/cm3以下、さらに好ましくは1.0g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.9g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.8g/cm3以下である。
紙基材の密度は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0020】
(平滑度)
紙基材は、後述するナイロン層を設ける側(液体容器とした際に接液面となる側)の平滑度は、ナイロン層等との接着性をより効果的に高め、その結果として、層間剥離をより抑制する観点から、好ましくは2秒以上、より好ましくは4秒以上であり、そして、好ましくは20秒以下、より好ましくは18秒以下である。
紙基材の平滑度は、JIS P 8155:2010に準拠して測定される。ラミネート紙から測定する場合には、次のとおり測定される。ラミネート紙をキシレンに浸漬し、98℃の湯浴中で1時間加熱し、紙基材を除いたすべての樹脂層を取り除く。加熱後、キシレンから取り出し、十分乾燥させ、JIS P 8155:2010に準拠し、測定を行う。
【0021】
紙基材が多層構造である場合、各層の間には、接着性成分が付与されていてもよい。また、紙基材の各層の間には、接着性成分を含む接着層を有していてもよい。接着性成分としては、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミド-ポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。接着性成分は、澱粉、ポリアクリルアミド、およびポリアミド-ポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、澱粉およびポリアクリルアミドからなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、澱粉を含むことがさらに好ましい。紙基材の各層間に接着性成分を付与(塗布)することで紙基材の層間強度を向上させることができ、その結果として、加工適性により優れるラミネート紙が得られる。
紙基材の各層間あたりの接着性成分の付与量は、紙基材の層間強度を向上させ、その結果として、特にしごきによる層間剥離をより抑制できるラミネート紙を得る観点から、好ましくは2.0g/m2以上、より好ましくは2.5g/m2以上、さらに好ましくは3.0g/m2以上であり、そして、ラミネート紙の罫割れをより抑制する観点から、好ましくは8.0g/m2以下、より好ましくは7.0g/m2以下、さらに好ましくは6.0g/m2以下、よりさらに好ましくは5.0g/m2以下である。
【0022】
(パルプ)
紙基材は、パルプ(好ましくはセルロースパルプ)を主成分とすることが好ましい。ここで主成分とは、紙基材の全質量に対して、50質量%以上を占める成分をいう。パルプの含有量は、紙基材の全質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0023】
紙基材を構成するパルプとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)等の木材系パルプ、麻パルプ等の非木材系パルプ等が挙げられる。これらのパルプは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、パルプは、品質やコストの面から、好ましくはLKPおよびNKPからなる群より選ばれる1種以上を含有し、より好ましくはLBKPおよびNBKPを含有する。
【0024】
本実施形態においては、紙基材の広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの質量比(LBKP:NBKP)は、紙基材と後述する接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との接着性をより効果的に高め、その結果として、層間剥離をより抑制する観点、および液体容器とした際の強度の観点から、好ましくは10:90~100:0、より好ましくは40:60~70:30、さらに好ましくは50:50~65:45である。
紙基材を構成するパルプ中の針葉樹晒クラフトパルプおよび広葉樹晒クラフトパルプの含有量は、液体容器とする際の印刷適性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。また、同様の観点から、古紙パルプや未晒クラフトパルプの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%未満であり、含有しないことが特に好ましい。
【0025】
紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、パルプがLBKPを含有する場合、層間剥離の抑制と加工適性の観点から、好ましくは400mL以上、より好ましくは420mL以上、さらに好ましくは450mL以上であり、そして、好ましくは500mL以下、より好ましくは490mL以下である。パルプがNBKPを含有する場合、層間剥離の抑制と加工適性の観点から、好ましくは580mL以上、より好ましくは600mL以上、さらに好ましくは620mL以上であり、そして、好ましくは700mL以下である。
パルプのCSFは、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0026】
(各種内添剤)
紙基材には、公知の各種内添剤を添加することができる。内添剤としては、例えば、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤、ろ水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、嵩高剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、防腐剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、紙基材は、より優れた耐水性のラミネート紙を得る観点から、サイズ剤を含有することが好ましい。また、紙基材の強度をより効果的に高める観点から、サイズ剤に加えて、紙力増強剤および湿潤紙力増強剤からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましく、紙力増強剤および湿潤紙力増強剤を含有することがより好ましい。
【0027】
≪サイズ剤≫
サイズ剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、無水マレイン酸系、スチレン-アクリル酸系、スチレン-アクリル系などの公知の紙用各種サイズ剤を挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、サイズ剤は、アルキルケテンダイマー系サイズ剤を含有することが好ましい。
紙基材がサイズ剤を含有する場合、サイズ剤の含有量(固形分換算)は、紙基材の耐水性をより効果的に高め、その結果として、より優れた耐水性のラミネート紙を得る観点から、紙基材に含まれるパルプ100質量部(乾燥質量)に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下、よりさらに好ましくは0.5質量部以下、よりさらに好ましくは0.3質量部以下である。なお、紙基材の各層のサイズ剤の含有量は、製造効率の観点から、同一であることが好ましい。
【0028】
≪紙力増強剤≫
紙力増強剤(乾燥紙力増強剤)としては、ポリアクリルアミド系ポリマー、カチオン化澱粉などの澱粉類、尿素樹脂、ポリアミド-ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、紙基材は、紙力増強剤として、好ましくはカチオン化澱粉およびポリアクリルアミド系ポリマーからなる群より選ばれる1種以上を含有し、より好ましくはポリアクリルアミド系ポリマーを含有する。
紙基材が紙力増強剤を含有する場合、紙力増強剤の含有量(固形分換算)は、紙基材の強度をより効果的に高める観点から、紙基材に含まれるパルプ繊維100質量部(乾燥質量)に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上、よりさらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。
【0029】
≪湿潤紙力増強剤≫
湿潤紙力増強剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド-ポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
紙基材が湿潤紙力増強剤を含有する場合、湿潤紙力増強剤の含有量(固形分換算)は、紙基材の湿潤強度をより効果的に高める観点から、紙基材に含まれるパルプ100質量部(乾燥質量)に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
【0030】
紙基材は、表面強度を高め、ラミネート紙のしごきによる、後述する紙基材に積層される、接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との剥離をより抑制する観点から、上述した内添剤に加えて、表面サイズ剤および表面紙力剤からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
表面サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー系化合物等が挙げられる。
表面紙力剤としては、酸化澱粉、酵素処理澱粉、酸処理澱粉等の変性澱粉、ポリビニルアルコール(PVA)等の水系樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、表面紙力剤は、好ましくは変性澱粉および水系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有し、より好ましくは酸化澱粉およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる1種以上を含有し、さらに好ましくはポリビニルアルコールを含有する。
表面サイズおよび表面紙力剤からなる群より選ばれる1種以上をサイズプレス工程で使用する場合、紙基材に積層される、後述する接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との接着性をより効果的に高める観点から、サイズプレス液にはビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等の接着助剤を混合して使用することが好ましい。すなわち、紙基材は、表面サイズ剤および表面紙力剤からなる群より選ばれる1種以上と接着助剤とを、少なくとも一方の面に付与してなるものであることが好ましい。上記の中でも、接着助剤は、好ましくはビニル樹脂およびポリエチレンイミン樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有し、より好ましくはポリエチレンイミン樹脂を含有する。
表面サイズ剤および表面紙力剤の付与量は、紙基材の表面強度を高める観点から、固形分換算で、好ましくは0.01g/m2以上、より好ましくは0.1g/m2以上、さらに好ましくは0.3g/m2以上、よりさらに好ましくは0.4g/m2以上であり、そして、紙基材の表面強度を適度なものとし、加工適性により優れるラミネート紙を得る観点からは、好ましくは5.0g/m2以下、より好ましくは3.0g/m2以下、さらに好ましくは1.5g/m2以下である。表面サイズ剤と表面紙力剤を組み合わせて使用する場合、それぞれの付与量が上記範囲であることが好ましい。
接着助剤の付与量は、紙基材に積層される、後述する接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との接着性を高める観点から、固形分換算で、好ましくは0.01g/m2以上、より好ましくは0.05g/m2以上、さらに好ましくは0.1g/m2以上であり、そして、ラミネート紙のリサイクル性の観点から、好ましくは5.0g/m2以下、より好ましくは3.0g/m2以下、さらに好ましくは1.5g/m2以下、よりさらに好ましくは1.0g/m2以下、よりさらに好ましくは0.7g/m2以下、よりさらに好ましくは0.4g/m2以下である。
【0031】
(紙基材の製造方法)
紙基材は、パルプ層を2層以上積層する抄紙工程を含む製造方法により製造することが好ましい。パルプ層を多数積層した構成の多層紙は、板紙等の製造技術として使用されており、一般的に、円網抄合わせ抄紙機、長網抄合わせ抄紙機等の多層抄き用抄紙機を使用して製造できる。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれであってもよい。
【0032】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(例えば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用できる。抄紙機によって形成された紙層は、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥できる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0033】
上述したように、紙基材の表面強度を高める観点から、上記のようにして得られた紙基材の片面または両面に、表面サイズ剤および表面紙力剤からなる群より選ばれる1種以上を塗布することが好ましく、さらに後述する接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との接着性を効果的に高める観点から、表面サイズ剤および表面紙力剤からなる群より選ばれる1種以上と接着助剤とを混合して塗布することがより好ましい。
表面サイズ剤、表面紙力剤および/または接着助剤の塗布装置としては、公知のサイズプレス機等を用いることができる。また、後述する接着性樹脂層、ナイロン層または熱可塑性樹脂層との接着性を効果的に高める観点から、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ることが好ましい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用できる。さらに、カレンダー処理の前に、サイズプレス剤を付与してもよい。
【0034】
<第1接着性樹脂層>
第1接着性樹脂層は、紙基材とナイロン層との接着性をより向上させるための層である。第1接着性樹脂層は、紙基材の一方の面に任意に積層できる。ラミネート紙は、より高い温度条件での液体容器の製造に適したものとする観点からは、紙基材の一方の面に第1接着性樹脂層を有することが好ましく、コストの観点からは、紙基材の一方の面に第1接着性樹脂層を有していなくてもよい。
【0035】
第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂は、特に限定されず、公知の接着性熱可塑性樹脂を使用できる。接着性樹脂としては、オレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、接着性樹脂は、エチレン/メタクリル酸共重合体および無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0036】
JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイト(MVR)は、後述するナイロン層との接着性を向上させ、層間剥離をより抑制する観点から、好ましくは5cm3/10分以上、より好ましくは8cm3/10分以上であり、そして、好ましくは500cm3/10分以下、より好ましくは400cm3/10分以下、さらに好ましくは380cm3/10分以下、よりさらに好ましくは170cm3/10分以下、よりさらに好ましくは140cm3/10分以下、よりさらに好ましくは100cm3/10分以下である。第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂は、所望のMVRを有するように、分子量等を考慮して適宜選択できる。
【0037】
ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合、第1接着性樹脂層の厚さは、製造容易性の観点からは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、そして、コストの観点、および層間剥離をより抑制する観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、さらに好ましくは12μm以下、よりさらに好ましくは10μm以下である。
【0038】
第1接着性樹脂層を紙基材上に積層する方法としては、溶融押出ラミネート法、塗工法等の各種公知の方法を適宜選択して使用できる。特に限定されないが、これらの中でも、溶融押出ラミネート法が好ましく、後述するナイロン層を構成するナイロンと溶融共押出をして積層することがより好ましい。
【0039】
<ナイロン層>
ナイロン層は、紙基材の一方の面または任意の第1接着性樹脂層上に積層される。ナイロン層を構成するナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ナイロン、ナイロンMXD6等の芳香族ナイロン等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、ナイロンは、ナイロン6およびナイロンMXD6からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。ナイロン層は、ナイロン以外の成分をさらに含有していてもよい。
【0040】
JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgの条件で測定される、ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトは、ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合に第1接着性樹脂層との接着性を向上させ、層間剥離をより抑制する観点から、好ましくは10cm3/10分以上、より好ましくは13cm3/10分以上であり、そして、好ましくは500cm3/10分以下、より好ましくは400cm3/10分以下、さらに好ましくは350cm3/10分以下、よりさらに好ましくは300cm3/10分以下である。さらに、上記観点から、好ましくは20cm3/10分以上、より好ましくは30cm3/10分以上、さらに好ましくは40cm3/10分以上であり、そして、好ましくは200cm3/10分以下、より好ましくは150cm3/10分以下、さらに好ましくは100cm3/10分以下、よりさらに好ましくは60cm3/10分以下である。ナイロン層を構成するナイロンは、所望のMVRを有するように、分子量等を考慮して適宜選択できる。
【0041】
ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合、ナイロン層を構成するナイロンのメルトボリュームレイトと、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のメルトボリュームレイトとの差の絶対値は、第1接着性樹脂層とナイロン層との接着性を向上させ、層間剥離をより抑制する観点から、好ましくは0cm3/10分以上であり、そして、好ましくは350cm3/10分以下、より好ましくは300cm3/10分以下、さらに好ましくは200cm3/10分以下、よちさらに好ましくは150cm3/10分以下、よりさらに好ましくは100cm3/10分以下、よりさらに好ましくは50cm3/10分以下、よりさらに好ましくは25cm3/10分以下、よりさらに好ましくは10cm3/10分以下である。
【0042】
ナイロン層の厚さは、ピンホール耐性の観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上、よりさらに好ましくは6μm以上であり、そして、層間剥離の抑制および/または加工適性の観点から、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下、さらに一層好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。ナイロン層の厚さが上記上限値以下であると、ラミネート紙の硬さが適度となり、しごき時に紙基材に余計な負荷がかからず、しごきによる紙基材内の剥離が抑制され、加工適性に優れる。また、ナイロン層の厚さが上記上限値以下であると、ラミネート紙を折り曲げた際に表面に加わる力が適度となり、罫割れが抑制され、加工適性に優れる。
【0043】
ナイロン層を紙基材または第1接着性樹脂層上に積層する方法としては、溶融押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法等の各種公知の方法を適宜選択して使用できる。特に限定されないが、これらの中でも溶融押出ラミネート法が好ましく、ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂と溶融共押出をして積層することがより好ましい。この場合、ナイロン層を構成するナイロンのMVRと、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のMVRとの差の絶対値を上述した範囲とすることにより、第1接着性樹脂層とナイロン層との接着性がより向上し、その結果として、層間剥離がより抑制された、ラミネート紙を得られる。
【0044】
<第2接着性樹脂層>
第2接着性樹脂層は、ナイロン層上に積層される。第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂として例示したものを好適に使用できる。第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂は、ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0045】
第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のMVRは、ナイロン層との接着性を向上させる観点から、好ましくは8cm3/10分以上、より好ましくは10cm3/10分以上であり、そして、好ましくは500cm3/10分以下、より好ましくは400cm3/10分以下、さらに好ましくは380cm3/10分以下である。
第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂のMVRは、JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgで測定される。
【0046】
第2接着性樹脂層の厚さは、製造容易性の観点からは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、よりさらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、コストの観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0047】
第2接着性樹脂層をナイロン層上に積層する方法としては、溶融押出ラミネート法、塗工法等の各種公知の方法を適宜選択して使用できる。特に限定されないが、これらの中でも溶融押出ラミネート法が好ましい。
【0048】
<熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層は、第2接着性樹脂層上に積層される。熱可塑性樹脂層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0049】
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、用途に応じて、結晶性樹脂または非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート)(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂およびポリ乳酸(PLA)からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリエチレンからなる群より選ばれる1種以上であることがさらに好ましい。
【0050】
熱可塑性樹脂層は、単一の樹脂の単層で形成してもよいし、複数の樹脂を混合して単層で形成してもよいし、これらの複層(例えば、単一樹脂層/単一樹脂層、単一樹脂層/混合樹脂層、混合樹脂層/混合樹脂層)として形成してもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、液体容器に充填する液体等が紙基材へ浸透することを防止する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下である。
【0052】
本実施形態のラミネート紙は、紙基材のナイロン層を設ける側とは反対(印刷面)側にさらに熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂層は紙基材の両面に積層されることが好ましい。本明細書中、「面に積層される」および「上に積層される」の文言は、直接積層される形態であってもよいし、他の層を介して間接的に積層される形態であってもよいことを意味する。
【0053】
紙基材のナイロン層を設ける側とは反対(印刷面)側の熱可塑性樹脂層の厚さは、ナイロン層を設ける側(接液面側)の厚さと同じであっても、異なっていてもよい。紙基材のナイロン層を設ける側とは反対(印刷面)側の熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下である。
【0054】
上述した紙基材、第1接着性樹脂層、ナイロン層、第2接着性樹脂層、および熱可塑性樹脂層に加えて、用途に応じて、他の層を有していてもよい。他の層としては、水溶性高分子(ポリビニルアルコール(PVA)等)層、顔料およびバインダーを主成分とする顔料塗工層、アルミニウム箔(Al箔)、金属蒸着層、無機酸化物(シリカ、アルミナなど)蒸着層、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)層などのバリア層、印刷層、接着剤層等が挙げられる。
【0055】
[ラミネート紙の製造方法]
本実施形態のラミネート紙は、紙基材の一方の面に、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するように積層するラミネート工程を有する製造方法により製造される。具体的には、ラミネート紙の製造方法は、紙基材の抄紙工程と、紙基材の少なくとも一方の面に、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、を積層するラミネート工程とを有することが好ましい。
【0056】
任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で紙基材上にラミネートする方法としては、溶融押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法等の各種公知の方法を適宜選択して使用できる。これらの中でも、溶融押出ラミネート法が好ましい。特に限定されないが、ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有する場合、例えば、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂とナイロン層を構成するナイロンとを溶融共押出して紙基材上に積層することができる。また、ラミネート紙が第1接着性樹脂層を有さない場合、ナイロン層を構成するナイロンを溶融押出して紙基材上に積層することができる。さらに、第2接着性樹脂層と熱可塑性樹脂層とを溶融共押出してナイロン層上に積層することができる。
ラミネート時には、必要に応じて、紙基材に対してコロナ処理やオゾン処理等の酸化処理を施してもよい。これらの処理を行うことによって、紙基材の表面に極性基が生成し、接着性を向上させることができる。これらの処理は、紙基材のいずれか一方でもよく、両方でもよく、1回でもよく、複数回でもよい。
【0057】
抄紙工程においては、多層抄き用抄紙機を用いて紙基材を抄紙することが好ましい。抄紙工程は、上述したとおりである。
【0058】
[液体容器]
本実施形態のラミネート紙は、液体容器用であることが好ましい。本発明は上述したラミネート紙を用いてなる、ブランクシートまたは液体容器についても提供する。ブランクシートおよび液体容器を製造する方法は、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
【0059】
本実施形態のラミネート紙は、紙パック、紙コップ、アセプティック容器等の液体容器、発泡カップ、アイスカップ、断熱カップ、包装容器等の紙容器のほか、包装資材、断熱資材等の各種用途に用いることができる。これらの中でも、本実施形態のラミネート紙は、液体容器用として好適である。
液体容器の形状は、特に限定されず、屋根型容器(ゲーブルトップ)、直方体容器(ブリック、ストレート、フラットトップ)、三角錐型容器、カップ容器、スラントトップ型容器、正四面体型容器等が挙げられる。したがって、本発明の別の実施形態は、紙容器(好ましくは液体用紙容器)の製造における、上記ラミネート紙の使用である。
ゲーブルトップ型液体容器の作製方法としては、特に限定されないが、例えば、ラミネート紙の表面(印刷面)に印刷を行い、罫入れ加工および打ち抜き加工を行い、さらに、折り曲げ加工を行った後、容器縦方向のフレームシールを行い、折り畳まれたカートン状にて提供される。提供された折り畳みカートンは、ボトム部をヒートシールするボトムシール、殺菌、充填、トップ部をヒートシールするトップシールの各段階を経て、ゲーブルトップ型の液体充填品として流通される。
液体容器に収容される液体は、食品、非食品のいずれであってもよい、液体容器に収容される液体としては、特に限定されず、日本酒、焼酎、およびワイン等のアルコール飲料;牛乳等の乳飲料;ジュース、コーヒー、お茶、紅茶等の嗜好飲料;嗜好食品(ヨーグルト、ゼリー、プリンなど)、惣菜などの液体を伴う食品;医薬品;カーワックス、シャンプー、リンス、洗剤、入浴剤、染毛剤、歯磨き粉等の化学製品等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特にことわりがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。また、実施例および比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
【0061】
[測定]
<パルプ>
(カナダ標準ろ水度)
パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0062】
<紙基材>
(厚さ)
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に従い、100kPa±10kPaの圧力を試験片の円形領域(200mm2)に加えた際の厚さを測定した。
【0063】
(坪量)
紙基材の坪量は、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0064】
(密度)
紙基材の密度は、JIS P 8118:2014に準拠して得られた、紙基材の厚さおよび坪量から算出した。
【0065】
(平滑度)
紙基材の平滑度は、JIS P 8155:2010に準拠して測定した。
【0066】
<熱可塑性樹脂層>
(厚さ)
各樹脂層の厚さは走査型電子顕微鏡にてラミネート紙の断面を観察し、測定した。観察用の試料は、ラミネート紙を樹脂包埋し、ウルトラミクロトームで切断して作製した。
【0067】
<ラミネート紙>
(坪量、厚さおよび密度)
ラミネート紙の坪量、厚さおよび密度は、それぞれ、紙基材の坪量、厚さおよび密度の測定方法と同様に測定を行った。
【0068】
(含水率)
ラミネート紙の含水率は、JIS P 8127:2010に準拠して測定した。
【0069】
(断面方向の透気抵抗度)
ラミネート紙の断面方向の透気抵抗度は、ラミネート紙をMD方向(紙基材の抄紙方向に対応する方向)12cm×CD方向(紙基材の幅方向に対応する方向)8cmの大きさで採取し、紙基材のナイロン層を設けた側とは反対側(印刷面側)の熱可塑性樹脂層を剥離し、紙基材を露出させた。印刷面側の熱可塑性樹脂層の剥離方法としては、所定のサイズに切り出したラミネート紙の一方の端部の熱可塑性樹脂層をはがし、熱可塑性樹脂層と紙基材間の剥離起点を作製した。テンシロン(株式会社エー・アンド・デイ製)の治具に剥離起点を有するラミネート紙を固定し、剥離速度毎分50mm、接着部分の長さの最低9cmが剥離するまで試験を続け、紙基材を露出させた。
紙基材が露出している面がMD方向(紙基材の抄紙方向に対応する方向)8cm×CD方向(紙基材の幅方向に対応する方向)8cmとなるように切り出し、旭精工株式会社製のデジタル型王研式透気度・平滑度試験機EYBO型を用い、シリンダー駆動圧力減圧弁を0.25MPaに設定し、王研式透気抵抗度をJIS P 8117:2009に準拠して測定圧0.05MPaで測定し、断面方向の透気抵抗度を測定した。なお、紙基材のナイロン層を設ける側(接液面側)には、ナイロン層等の樹脂層が存在し、空気が透過しない。したがって、具体的には、紙基材のナイロン層を設ける側とは反対側(印刷面側)の熱可塑性樹脂層を剥離したラミネート紙を測定装置内に配置し、該ラミネート紙の紙基材側から空気を送り込み、断面方向から空気が抜けるまでの秒数を測定した。
【0070】
(樹脂のMVR)
樹脂(接着性樹脂およびナイロン)のMVRは、JIS K 7210:1999に準拠し、280℃、荷重2.16kgで測定した。
【0071】
(樹脂間の剥離強度)
ラミネート紙を幅25mm、長さ200mmに切り出し、引張試験機テンシロン(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、T字剥離試験を行った。所定のサイズに切り出したラミネート紙の一方の端部をはがし、樹脂間の剥離起点を作製した。テンシロンの治具に固定し、剥離速度毎分10mm、接着部分の長さの最低150mmが剥離するまで試験を続けた。各ラミネート紙につき、5回以上剥離試験を行い、最低100mmの剥離(最初の25mmと最後の25mmを除き)を記録した曲線から、樹脂を剥離するのに要した平均剥離力を求めた[単位:kN]。平均剥離力は、最適直線法を用いて算出した。樹脂間の剥離強度が強い場合は、樹脂間で剥離が発生せず、紙基材が破壊されるため、表1および2中「基材破壊」と記載した。一方、樹脂間の剥離強度がやや劣ると樹脂間で剥離が進行し、強度が測定可能なため、平均剥離力を記載した。
【0072】
[評価]
(ピンホール)
実施例および比較例で得られたラミネート紙を150mm角に切り出し、ラミネート紙のナイロン層を有する側(接液面側)の熱可塑性樹脂層に、表1および2に示す温度の熱風を5秒間あてた。その後、ラミネート紙をスカーレットモー(Scarlett Moo)赤色染料水溶液に1分間浸し、続いてラミネート紙を染料溶液から取り出し、水道水で1分間洗い、表面の染料を除いた。最後に、ラミネート紙を乾燥機内で乾燥させた。なお、赤色染料は、被覆物にピンホールがあるとすぐに繊維中に浸透するので、乾燥後に赤色点の形の印が残り、通常ピンホールは3mm未満である。したがって、3mm未満の赤色点の形成の度合いを以下の基準により評価した。
A:ピンホール(3mm未満の赤色点)が、0~1個/cm2
B:ピンホール(3mm未満の赤色点)が、2~3個/cm2
C:ピンホール(3mm未満の赤色点)が、4~7個/cm2
D:ピンホール(3mm未満の赤色点)が、8個以上/cm2
【0073】
(層間剥離)
ナイロン層とその隣接層(紙基材層または第1接着性樹脂層)との間の剥離を、以下の方法で評価した。実施例および比較例で得られたラミネート紙を150mm角に切り出し、ラミネート紙のナイロン層を有する側(接液面側)の熱可塑性樹脂層に、表1および表2に示す温度の熱風を5秒間あてた。その後、ラミネート紙をスカーレットモー(Scarlett Moo)赤色染料水溶液に1分間浸し、続いてラミネート紙を染料溶液から取り出し、水道水で1分間洗い、表面の染料を除いた。最後に、ラミネート紙を乾燥機内で乾燥させた。なお、赤色染料は、層間剥離に起因した被覆物の膨れがあるとすぐに繊維中に浸透するので、乾燥後に赤色点の形の印が残り、通常膨れは3mm以上である。したがって、3mm以上の赤色点形成の度合いを以下の基準により評価した。膨れ評価は同じサンプルにつき、10枚実施した。下記基準でC以上であれば合格とした。
A:膨れ(3mm以上の赤色点)が、0個/10枚中
B:膨れ(3mm以上の赤色点)が、1個/10枚中
C:膨れ(3mm以上の赤色点)が、2個/10枚中
D:膨れ(3mm以上の赤色点)が、3個以上/10枚中
【0074】
(しごき試験)
ラミネート紙を印刷加工する際、ラミネート紙に張力を与えた状態で、各種ローラーの曲面に沿って走行し、またラミネート紙の湾曲方向は表側または裏側と絶えず変化するため、ラミネート紙はしごかれた状態となる。したがって、印刷加工前におけるラミネート紙で強度基準を満たしていても、印刷加工中にラミネート紙が受けるしごきにより強度が低下し、工程中あるいは後の段階で剥離が生じることがある。そこで、特に印刷加工時のしごき耐性を以下の方法で評価した。ラミネート紙を幅25mm、長さ300mmに切り出し、特開2010-127623に記載された測定装置(しごき試験機)を用いて、荷重10kgで、表1および表2に示す回数しごき試験を行い、剥離の有無を目視で確認した。本評価で剥離が見られなかったラミネート紙は、特に印刷加工時のしごきに強く、加工適性に優れる。
【0075】
(罫割れ試験)
罫線箇所を折り曲げ加工した際の罫割れ(罫線箇所の表面の亀裂)を下記方法で評価した。罫線を入れた下敷き用板紙の上に、ラミネート紙の接液面側(ナイロン層が設けられた側)が、下敷き用板紙との固定面となるように、ラミネート紙を重ね合わせて固定した(以下、下敷き用板紙とラミネート紙との積層物を試験サンプルという)。下敷き用板紙の大きさは、ラミネート紙と同じであり、その大きさは150mm×150mmであった。前記罫線は、下敷き用板紙の一辺の中点と、下敷き用板紙の中心とを通るように引かれた線(中心線ともいう)であり、その長さは15cmであった。
ラミネート紙の印刷面側が折り目の山側となり、ラミネート紙の接液面側が折り目の谷側となるように、前記罫線に沿って前記試験サンプルを折り曲げた。前記の折り曲げられた試験サンプルは、罫線を境に、罫線を含む二つの平面がある一定の角度をもつ状態であった(言い換えれば、前記試験サンプルは、罫線を境にV字型であった)。なお、この試験サンプルは、さらに折り曲げることができる余地を残している状態であった。
続いて、折り曲げられた試験サンプルの、罫線を含む二つの平面のうちの一つの平面がテーブル面と平行となるようにテーブル面上に前記試験サンプルを置いた。
続いて、前記二つの平面のうちの一つの平面のエッジ三箇所とテーブルとが固定されるように、折り曲げられた状態でテープを貼った。次に、質量13kg、幅が15cm以上の金属製ローラーを、ローラーの幅方向(ローラーの長さ方向)が試験サンプルの罫線と平行となるようにローラーを載置した。次に、試験サンプルの上を通過するように、ローラーをテーブル上で転がした。なお、試験サンプルは、罫線側から押さえ付けられた状態で、試験サンプルの上にローラーを試験サンプルの全幅に対して通過させた。また、ローラーは、進行中において、進行方向の動力のみ加えられた。このローラーの操作により、折り曲げることができる余地を残している前記試験サンプルは、さらに折り曲げられた。その後、試験サンプルの固定を解いて、ラミネート紙を取り出した。
折り曲げられたラミネート紙の全長(TL)、および該ラミネート紙が罫線に沿って割れている場合のその割れている部分の長さ(BL)を測定した。折り曲げられたラミネート紙の全長に対する、ラミネート紙の割れている部分の長さの割合(BL/TL)×100[%]を算出し、以下の基準により評価した。本評価でCまたはDの場合、罫線箇所を折り曲げた際の表面の亀裂が多く、結露が亀裂部分を通じて紙基材に浸透し、強度低下を招くことがあるため、実用上好ましくない。
A:BL/TLが0%以上25%以下(実用上問題がない)
B:BL/TLが25%を超え50%以下(実用上問題がない)
C:BL/TLが50%を超え75%以下(実用上問題がある)
D:BL/TLが75%を超える(実用上問題がある)
【0076】
実施例1
(紙基材)
パルプ原料としてLBKP60部、NBKP40部を、ダブルディスクレファイナーを使用して叩解し(叩解後のLBKPのカナダ標準ろ水度(CSF)470mL、叩解後のNBKPのCSF660mL)パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー中のパルプ(乾燥質量)に対して、内添紙力増強剤、内添サイズ剤、湿潤紙力増強剤を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて多層抄きの長網抄紙機を用いて、5層抄きにて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間に層間澱粉を吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の両面に表面紙力剤、接着助剤を塗布し、カレンダー処理を行い、坪量が333g/m2、密度が0.757g/cm3の紙基材を得た。ここで得られた紙基材は、表裏で平滑度が異なっていた。低平滑面(接液面)側の平滑度の測定結果を表1に示す。
(ラミネート紙)
得られた紙基材の高平滑面(印刷面)側にLDPE(低密度ポリエチレン)を溶融押出ラミネート法にてラミネートした。得られた紙基材の低平滑面(接液面)側には、紙基材側から、第1接着性樹脂層を構成する接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレンA)、ナイロン層(ナイロンA、ナイロン種:ナイロン6)、第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレンA)、熱可塑性樹脂層を構成するLDPEの順に溶融押出ラミネート法にて積層し、ラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0077】
実施例2
第1接着性樹脂層の厚さを、表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0078】
実施例3
第1接着性樹脂および第2接着性樹脂を、無水マレイン酸変性ポリエチレンBに変更し、第1接着性樹脂層の厚さを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0079】
実施例4、5および14
ナイロン層の厚さを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0080】
実施例6
(紙基材)
叩解後のLBKPのCSFを510mL、叩解後のNBKPのCSFを690mLとした以外は、実施例1と同様に紙基材を作製し、プレス条件を調整することで、坪量325g/m2、密度0.730g/cm3の紙基材を得た。
(ラミネート紙)
得られた紙基材の高平滑面(印刷面)側にLDPEを溶融押出ラミネート法にてラミネートした。得られた紙基材の低平滑面(接液面)側には、紙基材側から、ナイロン層(ナイロンB、ナイロン種:ナイロン6)、第2接着性樹脂層を構成する接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレンA)、熱可塑性樹脂層を構成するLDPEの順に溶融押出ラミネート法にて積層し、ラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0081】
実施例7~9
ナイロン層の厚さを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例6と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0082】
実施例10
第1接着性樹脂および第2接着性樹脂を、無水マレイン酸変性ポリエチレンCに変更し、ナイロンをナイロンC(ナイロン種:ナイロン6)に変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0083】
実施例11
第1接着性樹脂および第2接着性樹脂を、無水マレイン酸変性ポリエチレンBに変更し、ナイロンをナイロンD(ナイロン種:ナイロン6)に変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0084】
実施例12
第1接着性樹脂および第2接着性樹脂を、エチレン/メタクリル酸共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0085】
実施例13
ナイロンをナイロンMXD6に変更した以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0086】
実施例15
カレンダー処理の条件を調整し、坪量333g/m2、密度0.774g/cm3の紙基材を得たこと以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
比較例1
叩解後のLBKPのCSFを355mL、叩解後のNBKPのCSFを560mLに変更し、プレス条件を調整し、坪量350g/m2、密度0.814g/cm3の紙基材を得たこと以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0089】
比較例2
叩解後のLBKPのCSFを510mL、叩解後のNBKPのCSFを700mLに変更し、プレス条件を調整し、坪量320g/m2、密度0.706g/cm3の紙基材を得たこと以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0090】
比較例3
乾燥条件を変更し、ラミネート紙の含水率が8.3質量%となるように紙基材を得たこと以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0091】
比較例4
乾燥条件を変更し、ラミネート紙の含水率が3.9質量%となるように紙基材を得たこと以外は、実施例1と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0092】
比較例5
比較例2で得られた紙基材を使用したこと以外は、実施例6と同様にしてラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0093】
比較例6
乾燥条件を変更し、ラミネート紙の含水率が8.3質量%となるように紙基材を得たこと以外は、実施例6と同様にしてラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0094】
比較例7
乾燥条件を変更し、ラミネート紙の含水率が3.9質量%となるように紙基材を得たこと以外は、実施例6と同様にラミネート紙を得た。その測定結果および評価結果を表2に示す。
【0095】
【0096】
表1および表2からわかるように、断面方向の透気抵抗度が、350秒以上2000秒以下であり、含水率が、4.0質量%以上8.0質量%以下であるラミネート紙は、層間剥離が抑制され、かつ加工適性に優れるものであった。
一方、断面方向の透気抵抗度が2000秒を超える比較例1のラミネート紙は、特に層間剥離が発生しやすいものであった。断面方向の透気抵抗度が350秒未満である比較例2および5のラミネート紙は、しごき試験で剥離が発生し、加工適性に劣るものであった。含水率が8.0質量%を超える比較例3のラミネート紙は、ピンホールおよび層間剥離が発生しやすいものであった。含水率が4.0質量%未満である比較例4および7のラミネート紙は、しごき試験で剥離が発生するとともに、罫割れ試験においても罫割れが多く発生し、加工適性に劣るものであった。含水率が8.0質量%を超える比較例6のラミネート紙は、ピンホールおよび層間剥離が発生しやすいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係るラミネート紙は、層間剥離が抑制され、かつ、加工適性に優れ、紙パック、紙コップ、アセプティック容器等の液体容器、発泡カップ、アイスカップ、断熱カップ、包装容器等の紙容器のほか、包装資材、断熱資材等として好適に使用できる。
【要約】
【課題】層間剥離が抑制され、かつ、加工適性に優れるラミネート紙および該ラミネート紙を用いてなる液体容器を提供する。
【解決手段】紙基材と、任意の第1接着性樹脂層と、ナイロン層と、第2接着性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、をこの順で有するラミネート紙であって、断面方向の透気抵抗度が、350秒以上2000秒以下であり、含水率が、4.0質量%以上8.0質量%以下である、ラミネート紙。前記ラミネート紙を用いてなる液体容器。
【選択図】なし