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特許7540625光学材料、光学材料用重合性組成物、プラスチックレンズ、アイウェア及び光学センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光学材料、光学材料用重合性組成物、プラスチックレンズ、アイウェア及び光学センサー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240820BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240820BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240820BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240820BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 75/08 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B1/04
G02C7/00
C08G18/38 076
C08G18/32 003
C08G18/08 038
C08L69/00
C08K5/3417
C08G75/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019239499
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107882
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 由之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩之
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152414(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037827(WO,A1)
【文献】特開平11-152413(JP,A)
【文献】特開平11-152416(JP,A)
【文献】特開2002-114790(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208484(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/218615(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/218614(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 1/04
G02C 7/00
C08G 18/38
C08G 18/32
C08G 18/08
C08L 69/00
C08K 5/3417
C08G 75/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である樹脂と、
下記式(I)で表される化合物、及び、下記式(II)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、
前記近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含み、
厚さ2mmで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、a*が-0.8以上10以下であり、L*が85以上であり、
最大吸収波長における透過率が80%以下である、光学材料。
【化1】


式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【化2】


式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【請求項2】
厚さ2mmにおいて、800nm~950nmの波長領域の範囲内で透過率曲線の極小値を有し、前記極小値が0.05%以上80%以下である請求項1に記載の光学材料。
【請求項3】
厚さ2mmにおける視感透過率が70%以上である請求項1又は請求項2に記載の光学材料。
【請求項4】
前記近赤外線吸収剤が、3質量ppm~5質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、840nm~930nmの間にピークを有し、前記ピークのピーク頂点における吸光係数が1.10×10ml/g・cm以上であり、前記ピークのピーク頂点における吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が100nm以下であり、かつ前記ピークのピーク頂点における吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が55nm以下であり、かつ前記ピークのピーク頂点における吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が40nm以下の範囲である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項5】
前記近赤外線吸収剤は、2種以上の化合物からなる請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項6】
前記(チオ)ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位と、ポリチオール化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位の少なくとも一方とからなり、
前記ポリイソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリオール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項7】
前記エピスルフィド樹脂は、エピスルフィド化合物由来の構成単位からなるか、又は、エピスルフィド化合物由来の構成単位とポリチオール化合物由来の構成単位とからなり、
前記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料。
【請求項8】
重合性化合物と、
下記式(I)で表される化合物、及び、下記式(II)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、
前記近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含み、
前記重合性化合物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物及びポリオール化合物の少なくとも一方との組み合わせ、エピスルフィド化合物、及び、エピスルフィド化合物とポリチオール化合物との組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む光学材料用重合性組成物。
【化3】


式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【化4】


式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【請求項9】
前記ポリイソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリオール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項8に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項10】
前記近赤外線吸収剤は、2種以上の化合物からなる請求項8又は請求項9に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項11】
前記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の光学材料を含むプラスチックレンズ。
【請求項13】
請求項12に記載のプラスチックレンズを備えるアイウェア。
【請求項14】
請求項12に記載のプラスチックレンズを備える光学センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学材料、光学材料用重合性組成物、プラスチックレンズ、アイウェア及び光学センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定の波長域をカットするレンズが開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含む透明基板の少なくとも一方の面に、屈折率が異なる2つの誘電体層を交互に積層してなる近赤外線反射膜を有する近赤外線カットフィルターが開示されている。
【0004】
特許文献2には、複数の波長範囲の光を所定の透過率とする近赤外線カットフィルターが開示されている。この近赤外線カットフィルターは、環状オレフィン系樹脂等の透明樹脂とフタロシアニン系化合物等の近赤外線吸収剤とを含むことが記載されている。
【0005】
特許文献3~7には、所定のフタロシアニン色素と樹脂とを含む樹脂組成物等が開示されている。特許文献7には、樹脂組成物から保護眼鏡用レンズを得ることができると記載されている。
特許文献8及び9には、フタロシアニン色素とウレタン樹脂又はポリチオウレタン樹脂とからなる遠赤外線カットレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-258362号公報
【文献】特開2011-100084号公報
【文献】特開平11-48612号公報
【文献】特開2000-313788号公報
【文献】特開2006-282646号公報
【文献】国際公開第2014/208484号
【文献】特開平8-60008号公報
【文献】特表2017-529415号公報
【文献】特表2018-529829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の近赤外線カットフィルターは、近赤外線をカットすることができるものの、フィルターに濁りが生じて透明性が低下する場合があった。
【0008】
そこで、樹脂に近赤外線吸収剤を添加した光学材料の検討を進めたところ、近赤外線吸収剤が樹脂に溶解しない、近赤外線吸収剤の含有量を増やした場合光学材料に濁りが生じて透明性が低下する、着色により色味(意匠性)が悪くなる等が発生する傾向があった。
このように、近赤外線吸収剤を用いた光学材料においては、近赤外線カット効果と意匠性とはトレードオフの関係にあった。
【0009】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、近赤外線カット率が高く、かつ、意匠性に優れる光学材料、光学材料用重合性組成物、プラスチックレンズ、アイウェア及び光学センサーを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1> ポリカーボネート樹脂、(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である樹脂と、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び、下記式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、厚さ2mmで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、a*が-0.8以上10以下であり、L*が70以上である光学材料。
【0011】
【化1】
【0012】
式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【0013】
【化2】
【0014】
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【0015】
【化3】
【0016】
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
<2> 最大吸収波長における透過率が80%以下である<1>に記載の光学材料。
<3> 厚さ2mmにおいて、800nm~950nmの波長領域の範囲内で透過率曲線の極小値を有し、前記極小値が0.05%以上80%以下である<1>又は<2>に記載の光学材料。
<4> 厚さ2mmにおける視感透過率が70%以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の光学材料。
<5> 前記近赤外線吸収剤が、3質量ppm~5質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、840nm~930nmの間にピークを有し、前記ピークのピーク頂点における吸光係数が1.10×10ml/g・cm以上であり、前記ピークのピーク頂点における吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が100nm以下であり、かつ前記ピークのピーク頂点における吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が55nm以下であり、かつ前記ピークのピーク頂点における吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が40nm以下の範囲である<1>~<4>のいずれか1つに記載の光学材料。
<6> 前記近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の光学材料。
<7> 前記近赤外線吸収剤は、2種以上の化合物からなる<1>~<6>のいずれか1つに記載の光学材料。
<8> 前記(チオ)ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位と、ポリチオール化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位の少なくとも一方とからなり、前記ポリイソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリオール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学材料。
<9> 前記エピスルフィド樹脂は、エピスルフィド化合物由来の構成単位からなるか、又は、エピスルフィド化合物由来の構成単位とポリチオール化合物由来の構成単位とからなり、
前記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<7>のいずれか1つに記載の光学材料。
<10> ポリカーボネート樹脂及び重合性化合物の少なくとも一方と、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び、下記式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、前記重合性化合物は、ポリイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及びポリオール化合物の少なくとも一方との組み合わせ、エピスルフィド化合物、及び、エピスルフィド化合物とポリチオール化合物との組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む光学材料用重合性組成物。
【0017】
【化4】
【0018】
式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【0019】
【化5】
【0020】
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【0021】
【化6】
【0022】
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
<11> 前記ポリイソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記ポリオール化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である<10>に記載の光学材料用重合性組成物。
<12> 前記近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含む<10>又は<11>に記載の光学材料用重合性組成物。
<13> 前記近赤外線吸収剤は、2種以上の化合物からなる<10>~<12>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<14> 前記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種である<10>~<13>のいずれか1つに記載の光学材料用重合性組成物。
<15> <1>~<9>のいずれか1つに記載の光学材料を含むプラスチックレンズ。
<16> <15>に記載のプラスチックレンズを備えるアイウェア。
<17> <15>に記載のプラスチックレンズを備える光学センサー。
【発明の効果】
【0023】
本開示の発明によれば、近赤外線カット率が高く、かつ、意匠性に優れる光学材料、光学材料用重合性組成物、プラスチックレンズ、アイウェア及び光学センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1~実施例5で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図2】実施例6~実施例10で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図3】実施例11~実施例15で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図4】実施例16~実施例20で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図5】実施例21~実施例25で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図6】実施例26~実施例30で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
図7】実施例31で得られた平板レンズの透過率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「(チオ)ウレタン」とはウレタン又はチオウレタンを意味する。
【0026】
≪光学材料≫
本開示の光学材料は、ポリカーボネート樹脂、(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である樹脂と、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び、下記式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、厚さ2mmで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、a*が-0.8以上10以下であり、L*が70以上である。
【0027】
【化7】
【0028】
式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【0029】
【化8】
【0030】
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【0031】
【化9】
【0032】
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【0033】
本開示の発明者らは鋭意検討の結果、式(I)~式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と所定の樹脂とを含有し、かつCIE1976色空間においてL*,a*を特定の範囲とすることにより、高い近赤外線カット率と意匠性とを両立できることを見出し、本開示の発明を完成させた。
【0034】
近赤外線(近赤外領域である、700~2500nmの波長域の光)は、水により強く吸収される性質(水の近赤外線吸収係数が高い)を有し、眼の水晶体が約70%の水を含むことから、眼の温度上昇などの悪影響を及ぼす可能性が示唆されていた。
本開示の光学材料用いることで、例えば、近赤外線により高温となった眼の水晶体を紫外線、高エネルギー可視光線等が通過することにより、白内障が進行することを抑制することが期待される。
【0035】
<CIE1976(L*,a*,b*)色空間>
本開示の光学材料は、厚さ2mmで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、a*が-0.8以上10以下であり、L*が70以上である。
本開示の光学材料は、色味を良好にして意匠性を向上させる観点から、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、a*が-0.7以上8以下であることが好ましく、-0.5以上7以下であることがより好ましい。
また、本開示の光学材料は、色味を良好にして意匠性を向上させる観点から、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が80以上であることが好ましく、85以上であることがより好ましく,88以上であることがさらに好ましい。
本開示の光学材料は、色味を良好にして意匠性を向上させる観点から、厚さ2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、b*が-5以上20以下であることが好ましく、-2以上15以下であることがより好ましい。
なお、CIE1976(L*,a*,b*)色空間は、分光測色計(例えばコニカミノルタ社製CM-5)を用いて測定することができる。
【0036】
本開示の光学材料は、色味を良好にして意匠性を向上させる観点から、厚さ2mmで測定した黄色度(YI)が、-15以上32以下であることが好ましく、-10以上25以下であることがより好ましい。
なお、黄色度(YI)は、分光測色計(例えばコニカミノルタ社製CM-5)を用いて測定することができる。
【0037】
本開示の光学材料は、最大吸収波長(即ちλmax)における透過率の透過率が80%以下であることが好ましい。
本開示の光学材料は、優れた意匠性を維持しつつ、近赤外線カット率が高くすることができる。上記近赤外線カット率の高さの程度としては、λmaxにおける透過率を指標とすることができる。即ち、λmaxにおける透過率が低い程、近赤外線カット率が高いことを意味する。
本開示の光学材料は、優れた意匠性を維持しつつ、λmaxにおける透過率を80%以下とすることが可能である。
上記と同様の観点から、本開示の光学材料は、λmaxにおける透過率が74%以下であることがより好ましく、65%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
本開示の光学材料は、本開示の発明の効果の観点から、厚さ2mmにおける波長720nm~800nmの光線透過率、及び波長840nm~950nmの光線透過率の少なくとも1つが以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0039】
本開示の光学材料において、厚さ2mmにおける波長720nm~800nmの光線透過率は、20%以上80%以下であってもよく、好ましくは30%以上80%以下であり、さらに好ましくは40%以上75%以下である。
本開示の光学材料において、厚さ2mmにおける波長840nm~950nmの光線透過率は、0.05%以上80%以下であってもよく、好ましくは5%以上65%以下であり、さらに好ましくは10%以上55%以下である。
本開示の光学材料としては、厚さ2mmにおいて、800nm~950nmの波長領域の範囲内で透過率曲線の極小値を有し、前記極小値が0.05%以上80%以下であることが好ましく、前記極小値が0.05%以上75%以下であることがより好ましく、前記極小値が0.05%以上73%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本開示の光学材料は、厚さ2mmにおける全光線透過率が70%以上であることが好ましい。本開示の光学材料は、濁りや着色が抑制されており意匠性に優れることから、厚さ2mmにおける全光線透過率を70%以上とすることが可能である。
また、本開示の光学材料は、厚さ2mmにおける視感透過率が70%以上であることが好ましい。本開示の光学材料は、濁りや着色が抑制されており意匠性に優れることから、厚さ2mmにおける視感透過率を70%以上とすることが可能である。
本開示の光学材料は、厚さ2mmにおける視感透過率が75%以上であることがより好ましい。
【0041】
<近赤外線吸収剤>
本開示の光学材料は、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及び、式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤を含む。
これによって、光学材料の近赤外線カット率を向上させることができる。
【0042】
式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
本開示において、オキシ金属は、3価若しくは4価の置換金属以外のオキシ金属を指す。
【0043】
式(I)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基などの直鎖又は分岐のアルキル基;
クロロエチル基、ブロモエチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲノアルキル基;
メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;
ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基;
ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基などのヒドロキシポリエーテル基;
メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロポキシエトキシエチル基、ブトキシエトキシエチル基などのアルコキシポリエーテル基;等が例示される。
【0044】
式(I)中のMにおいて、2価の金属原子としては、Cu(II)、Zn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)等が例示される。
【0045】
式(I)中のMにおいて、1置換である3価の置換金属としては、Al-Cl、Al-Br、Al-F、Al-I、Ga-Cl、Ga-F、Ga-I、Ga-Br、In-Cl、In-Br、In-I、In-F、Tl-Cl、Tl-Br、Tl-I、Tl-F、Al-C、Al-C(CH)、In-C、In-C(CH)、In-C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Fe-Cl、Ru-Cl等が例示される。
【0046】
式(I)中のMにおいて、2置換である4価の置換金属としては、CrCl、SiCl、SiBr、SiF、SiI、ZrCl、GeCl、GeBr、GeI、GeF、SnCl、SnBr、SnF、TiCl、TiBr、TiF、Si(OH)、Ge(OH)、Zr(OH)、Mn(OH)、Sn(OH)、TiR、CrR、SiR、SnR、GeR〔Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、及びその誘導体を表す〕、Si(OR’)、Sn(OR’)、Ge(OR’)、Ti(OR’)、Cr(OR’)〔R’はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基及びその誘導体を表す〕、Sn(SR”)、Ge(SR”)(R”はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、及びその誘導体を表す〕等が例示される。
【0047】
式(I)中、オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiO等が例示される。
【0048】
上記の中でも、Mとしては、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AlCl、InCl、TiO及びVOが好ましく、Cuがより好ましい。
【0049】
本開示における式(I)で表される化合物としては、R及びRが直鎖又は分岐の無置換アルキル基であり、Rがニトロ基であることが好ましい。上記に加えてさらに、MがCuであることがより好ましい。
【0050】
本開示の式(I)で表される化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。
上記公知の方法としては、例えば、特開平11-152416号公報に記載の方法が挙げられる。
【0051】
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、Rは、ニトロ基又はNRで表される基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示す。
【0052】
式(II)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、上述の式(I)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基として挙げられた具体例と同様の具体例が例示される。
【0053】
式(II)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基などのアルキル基;
クロロエチル基などのハロゲノアルキル基;
メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;等が例示される。
【0054】
式(II)中、置換されていてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-クロロフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、2-プロピルフェニル基、2-t-ブチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニルチオ基、2-ヒドロキシフェニルチオ基、2-クロロフェニル基、2-ブロモフェニル基等が例示される。
【0055】
式(II)中、置換されていてもよいアルキルカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、トリメチルアセチル基、ヘキサノイル基、tert-ブチルアセチル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2-エチルヘキサノイル基などのアルキルカルボニル基;
シクロペンタンカルボニル基、6-クロロヘキサノイル基、6-ブロモヘキサノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、パーフルオロオクタノイル基などのハロゲノアルキルカルボニル基;
メトキシアセチル基などのアルコキシアルキルカルボニル基;等が例示される。
【0056】
式(II)中、置換されていてもよいアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基、o-クロロベンゾイル基、m-クロロベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、o-フルオロベンゾイル基、m-フルオロベンゾイル基、p-フルオロベンゾイル基、o-アセチルベンゾイル基、m-アセチルベンゾイル基、p-アセチルベンゾイル基、o-メトキシベンゾイル基、m-メトキシベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基、o-メチルベンゾイル基、m-メチルベンゾイル基、p-メチルベンゾイル基、o-トリフルオロメチルベンゾイル基、p-トリフルオロメチルベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基、4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル基等が例示される。
【0057】
式(II)中、置換されていてもよいアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ヘプタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基等のアルキルスルホニル基、2-クロロエタンスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のハロゲノアルキルスルホニル基、ベンジルスルホニル基等が例示される。
【0058】
式(II)中、置換されていてもよいアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基、o-フルオロベンゼンスルホニル基、m-フルオロベンゼンスルホニル基、p-フルオロベンゼンスルホニル基、ペンタフルオロベンゼンスルホニル基、o-メトキシベンゼンスルホニル基、m-メトキシベンゼンスルホニル基、p-メトキシベンゼンスルホニル基、o-メチルベンゼンスルホニル基、m-メチルベンゼンスルホニル基、p-メチルベンゼンスルホニル基、2-メシチレンスルホニル基、4-tert-ブチルベンゼンスルホニル基、N-アセチルスルファニリル基等が例示される。
【0059】
本開示における式(II)で表される化合物としては、R及びRが直鎖又は分岐の無置換アルキル基であり、Rがニトロ基であることが好ましい。
【0060】
本開示の式(II)で表される化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。上記公知の方法としては、例えば、特開2000-86919号公報に記載の方法が挙げられる。
【0061】
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又は置換されていてもよいアリールスルホニル基を示し、Mは、2価の金属原子、3価若しくは4価の置換金属、又はオキシ金属を示す。
【0062】
式(III)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、上述の式(I)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基として挙げられた具体例と同様の具体例が例示される。
【0063】
式(III)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基としては、上述の式(I)中、R及びRにおける置換されていてもよいアルキル基として挙げられた具体例と同様の具体例が例示される。
【0064】
式(III)中、R及びRにおける置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基及び置換されていてもよいアリールスルホニル基としては、上述の式(II)中、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基及び置換されていてもよいアリールスルホニル基として挙げられた具体例と同様の具体例が例示される。
【0065】
本開示における式(III)で表される化合物としては、R及びRが直鎖又は分岐の無置換アルキル基であり、R及びRが水素原子、直鎖又は分岐の無置換アルキル基であることが好ましい。上記に加えてさらに、MがCuであることがより好ましい。
【0066】
式(III)中、2価の金属原子、1置換である3価の置換金属、2置換である4価の置換金属、及び、オキシ金属としては、上述の式(I)における2価の金属原子、1置換である3価の置換金属、2置換である4価の置換金属、及び、オキシ金属として挙げられた具体例と同様の具体例が例示される。
また、式(III)におけるMの好ましい具体例は、式(I)におけるMの好ましい具体例と同様の具体例が挙げられる。
【0067】
本開示の式(III)で表される化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。上記公知の方法としては、例えば、特開平11-152414号公報に記載の方法が挙げられる。
【0068】
本開示における近赤外線吸収剤としては、例えば、高い近赤外線カット率を実現するために、(1)720nm~800nmの波長領域の範囲内で透過率50%未満の分光透過率曲線の極小値を有する近赤外線吸収剤、又は、(2)800nm~950nmの波長領域の範囲内で透過率50%未満の分光透過率曲線の極小値を有する近赤外線吸収剤を用いることができる。
広い近赤外線領域において高いカット率を実現するために、上記(1)及び(2)の特性を有する近赤外線吸収剤を組み合わせて用いることができる。
【0069】
近赤外線吸収剤としては、3質量ppm~5質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、840nm~930nmの間にピークを有し、上記ピークのピーク頂点(Pmaxともいう)の吸光係数が1.10×10ml/g・cm以上であり、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が100nm以下であり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が55nm以下であり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が40nm以下の範囲である化合物を用いることができる。
なお、Pmaxとは、ピーク中で最大吸光係数を示す点を指す。
【0070】
本開示における近赤外線吸収剤は、置換基の置換位置が異なる異性体化合物、合成において副生する置換基の種類が異なる化合物等を含んでもよい。
【0071】
本開示における近赤外線吸収剤は、近赤外線カット率が高く、かつ、意匠性に優れる光学材料を得る観点から、式(I)で表される化合物の中心金属Mを除く質量平均分子量が、900以上5000以下であることが好ましく、1200以上2000以下であることがより好ましい。
上記同様の観点から、式(II)で表される化合物の質量平均分子量が、900以上5000以下であることが好ましく、1200以上2000以下であることがより好ましい。 上記同様の観点から、式(III)で表される化合物の中心金属Mを除く質量平均分子量が、900以上5000以下であることが好ましく、1200以上2000以下であることがより好ましい。
【0072】
本開示における上記近赤外線吸収剤は、異なる構造を有する複数の化合物を組み合わせることが好ましい。即ち、本開示における上記近赤外線吸収剤は2種以上の化合物からなることが好ましい。
これにより、広い領域で近赤外線を効率よくカットすることができる。
【0073】
本開示の光学材料は、近赤外線カット率が高く、かつ、意匠性に優れる光学材料を得る観点から、近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含むことが好ましく、5質量ppm以上65質量ppm以下含むことがより好ましく、10質量ppm以上50質量ppm以下含むことがさらに好ましい。
なお、本開示において、近赤外線吸収剤の含有量とは、本開示の光学材料の全質量に対する近赤外線吸収剤の含有量を表す。
【0074】
<樹脂>
本開示の光学材料は、ポリカーボネート樹脂、(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である樹脂を含む。
【0075】
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシジアリール化合物類とホスゲンとを反応させるホスゲン法、ジヒドロキシジアリール化合物類とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステル類とを反応させるエステル交換法等によって製造してもよい。
【0076】
ポリカーボネート樹脂としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとも呼ばれる)から製造されたポリカーボネート樹脂、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから製造されたポリカーボネート樹脂、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンから製造されたポリカーボネート樹脂、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンから製造されたポリカーボネート樹脂、9,9-ビス〔4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕フルオレンから製造されたポリカーボネート樹脂、ジヒドロキシジアリール化合物類の混合物から製造された共重合ポリカーボネート樹脂であってもよく、上記で挙げた各ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
【0077】
ジヒドロキシジアリール化合物類としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジクロロフェニル)プロパンのような(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのような(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3、3’-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4‘-ジヒドロキシ-3,3‘-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4‘-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4‘-ジヒドロキシ-3,3‘-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類などが挙げられる。
これらは単独又は2種類以上から選択されて使用されてもよい。
【0078】
ジヒドロキシジアリール化合物類は、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4‘-ジヒドロキシジフェニル等と併用して使用してもよい。
なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000~100000、好ましくは10000~400000である。
【0079】
ジヒドロキシジアリール化合物類は、以下に示すような3価以上のフェノール化合物を併用して使用してもよい。3価以上のフェノールとしては、フロログルシン、1、3、5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1、1、1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタンなどが挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、パンライト(帝人株式会社製)、ユーピロン(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、ノバレックス(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)、SDポリカ(住友ポリカーボネート株式会社製)等が挙げられる。
【0080】
(チオ)ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物由来の構成単位と、ポリチオール化合物由来の構成単位及びポリオール化合物由来の構成単位の少なくとも一方とからなることが好ましい。
エピスルフィド樹脂は、エピスルフィド化合物由来の構成単位からなるか、又は、エピスルフィド化合物由来の構成単位とポリチオール化合物由来の構成単位とからなることが好ましい。
【0081】
上記(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂を製造する方法としては、上記ポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物、ポリオール化合物及びエピスルフィド化合物を用いる方法が挙げられる。上記の各化合物について、以下の光学材料用重合性組成物の段落にて詳細に説明する。
【0082】
≪光学材料用重合性組成物≫
本開示の光学材料用重合性組成物は、ポリカーボネート樹脂及び重合性化合物の少なくとも一方と、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、及び、式(III)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である近赤外線吸収剤と、を含み、上記重合性化合物は、ポリイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及びポリオール化合物の少なくとも一方との組み合わせ、エピスルフィド化合物、及び、エピスルフィド化合物とポリチオール化合物との組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
ポリカーボネート樹脂及び近赤外線吸収剤としては、上述のポリカーボネート樹脂及び近赤外線吸収剤で挙げた具体例と同様の具体例を挙げることができる。
【0083】
本開示の光学材料用重合性組成物は、近赤外線吸収剤を3質量ppm以上90質量ppm以下含むことが好ましく、5質量ppm以上65質量ppm以下含むことがより好ましく、10質量ppm以上50質量ppm以下含むことがさらに好ましい。
【0084】
<重合性化合物>
本開示の光学材料用重合性組成物における重合性化合物は、(1)ポリイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及びポリオール化合物の少なくとも一方との組み合わせ、(2)エピスルフィド化合物、又は、(3)エピスルフィド化合物とポリチオール化合物との組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0085】
(ポリイソシアネート化合物)
上記ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられ、1種又は2種以上混合して用いられる。これらのイソシアネート化合物は、二量体、三量体、プレポリマーを含んでもよい。これらのイソシアネート化合物としては、WO2011/055540号に例示された化合物を挙げることができる。
【0086】
本開示において、樹脂に対する近赤外線吸収剤の溶解性を向上させる観点から、上記ポリイソシアネート化合物は、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,5-ペンタメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、m-キシリレンジイソシアネート、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン及び2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0087】
(ポリチオール化合物)
上記ポリチオール化合物は、2以上のメルカプト基を有する化合物であり、WO2016/125736号に例示された化合物を挙げることができる。
本開示において、樹脂に対する近赤外線吸収剤の溶解性を向上させる観点から、上記ポリチオール化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、及び2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、
4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0088】
また、重合性化合物として、上記(1)の内、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物との組み合わせを含む場合には、樹脂に対する近赤外線吸収剤の溶解性を向上させる観点から、上記ポリイソシアネート化合物は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)からなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
また、重合性化合物として、上記(3)であるエピスルフィド化合物とポリチオール化合物との組み合わせを含む場合には、樹脂に対する近赤外線吸収剤の溶解性を向上させる観点から、上記ポリイソシアネート化合物は、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0089】
(ポリオール化合物)
上記ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族又は脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖又は分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトンを付加させたアルコール等
が挙げられ、具体的にはWO2016/125736号に例示された化合物を用いることができる。
【0090】
上記ポリオール化合物は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0091】
(エピスルフィド化合物)
上記エピスルフィド化合物としては、エピチオエチルチオ化合物、鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、芳香族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物、鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物、環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物、芳香族の2,3-エピチオプロピルオキシ化合物等が挙げられ、1種又は2種以上混合して用いられる。これらのエピスルフィド化合物としては、WO2015/137401号に例示された化合物を挙げることができる。
【0092】
樹脂に対する近赤外線吸収剤の溶解性を向上させる観点から、上記エピスルフィド化合物は、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、及び、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドであることがより好ましい。
【0093】
(任意の添加剤)
任意の添加剤として、重合触媒、内部離型剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。本開示において、ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いてもよいし、用いなくてもよい。
【0094】
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独又は2種類以上混合して使用することできる。ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0095】
用いられる紫外線吸収剤としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェ
ノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
【0096】
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、
【0097】
2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2,4-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられるが、好ましくは2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノールや2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
光学材料用組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0098】
<光学材料の用途>
本開示の光学材料は、本開示の光学材料用組成物を重合硬化して得ることができる。
光学材料の用途としては、プラスチック眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズ、光学センサー用レンズ(例えば赤外線センサー用レンズ)、赤外線カメラ用レンズ、サングラスやファッションレンズ等のアイウェアなどの各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる近赤外線吸収膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティング又は車のフロントガラスやバイクのヘルメットの風防、透明性基板等を挙げることができる。なお、本開示の光学材料は、紫外線吸収剤を含むことができる。光学材料としては、プラスチックレンズ、光学センサー用レンズ(例えば赤外線センサー用レンズ)、赤外線カメラ用レンズ、アイウェア、これらの光学レンズなどに用いる近赤外線吸収膜などが好ましい。
上記の中でも、光学材料の用途としては、本開示の光学材料を含むプラスチックレンズが好ましく、上記プラスチックレンズを備えるアイウェア及び上記プラスチックレンズを備える光学センサー用レンズがより好ましく、上記プラスチックレンズを備える赤外線センサーがさらに好ましい。
以下、光学材料の好ましい態様であるプラスチックレンズについて詳細に説明する。
【0099】
(プラスチックレンズ)
本開示におけるプラスチックレンズは、本開示の光学材料を含むプラスチックレンズであってもよい。
プラスチックレンズとしては、以下の構成を挙げることができる。
(a)本開示の光学材料用組成物からなるレンズ基材を備えるプラスチックレンズ
(b)レンズ基材(ただし、本開示の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)表面の少なくとも一方の面上に、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はコーティング層を備えるプラスチックレンズ
(c)本開示の光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(ただし、本開示の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されているプラスチックレンズ
本開示においては、これらのプラスチックレンズを好適に用いることができる。
以下、それぞれの実施形態について説明する。
【0100】
〔実施形態a〕
本開示の光学材料用組成物からなるレンズ基材を備えるプラスチックレンズを製造する方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法としてレンズ注型用鋳型を用いた注型重合が挙げられる。レンズ基材は、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂又はエピスルフィド樹脂から構成することができ、近赤外線吸収剤と、これらの樹脂のモノマー(光学材料用樹脂モノマー)とを含む本開示の光学材料用組成物を用いることができる。
【0101】
具体的には、ガスケット又はテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内に光学材料用組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0102】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中又は水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0103】
本開示において、樹脂を成形する際には、上記「任意の添加剤」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0104】
また、本開示におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、本開示の光学材料用組成物からなるレンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。コーティング層には近赤外線吸収剤を含むことができる。近赤外線吸収剤を含むコーティング層は、近赤外線吸収剤を含むコーティング材料(組成物)を用いて調製することができ、又はコーティング層を形成した後、近赤外線吸収剤を水又は溶媒中に分散させて得られた分散液に、コーティング層付きプラスチックレンズを浸漬して近赤外線吸収剤をコーティング層中に含浸させることにより調製することができる。
【0105】
〔実施形態b〕
本開示におけるプラスチックレンズは、レンズ基材表面の少なくとも一方の面上に、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又は層を備えてもよい。レンズ基材は、本開示の光学材料用組成物から形成されたものでなくてもよく、種々のレンズ基材を用いることができる。
【0106】
本開示におけるプラスチックレンズの製造方法としては、例えば、(b-1)レンズ基材を製造し、次いでレンズ基材の少なくとも一方の面上に、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートを貼り合わせる方法、(b-2)後述のようなガスケット又はテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートをモールドの一方の内壁に沿って配置し、次いでキャビティ内に光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0107】
上記(b-1)の方法において用いられる、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートは、特に限定されず、公知の成形方法により得ることができる。
レンズ基材は、公知の光学用樹脂から得ることができ、光学用樹脂としては種々のものを用いることができる。
本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0108】
上記(b-2)の方法における注型重合は、実施形態aにおけるプラスチックレンズの方法と同様に行うことができ、注型重合に用いる組成物としては、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(近赤外線吸収剤を含まない)を挙げることができる。
【0109】
また、本開示におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、光学材料用組成物からなるレンズ基材上又は「フィルム又は層」上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態aにおけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には近赤外線吸収剤を含むことができる。
【0110】
〔実施形態c〕
本開示におけるプラスチックレンズは、本開示の光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(本開示の光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されてもよい。
【0111】
本開示におけるプラスチックレンズの製造方法としては、例えば、(c-1)レンズ基材を製造し、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートの両面上に貼り合わせる方法、(c-2)ガスケット又はテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートを、モールドの内壁から離間した状態で配置し、次いでキャビティ内に光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0112】
上記(c-1)の方法において用いられる、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシート、及びレンズ基材は、実施形態bにおけるプラスチックレンズの(b-1)の方法と同様のものを用いることができる。
本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
上記(c-2)の方法は具体的に以下のように行うことができる。
【0113】
実施形態aにおけるプラスチックレンズの製造方法で用いた、レンズ注型用鋳型の空間内に、本開示の光学材料用組成物からなるフィルム又はシートを、この両面が、対向するフロント側のモールド内面と並行となるように設置する。
【0114】
次いで、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の2つの空隙部に、所定の注入手段により、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(近赤外線吸収剤を含まない)を注入する。
【0115】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中又は水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0116】
また、本開示におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、レンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態aにおけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には近赤外線吸収剤を含むことができる。
【0117】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本開示のプラスチックレンズを用いて、プラスチック眼鏡レンズを得ることができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0118】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0119】
これらのコーティング層はそれぞれ、本開示において用いられる近赤外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0120】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0121】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0122】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上、及び、これら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上の少なくとも一方を含むハードコート組成物が使用される。
【0123】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物及び多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0124】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0125】
反射防止層は、通常、必要に応じて上記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系及び有機系があり、無機系の場合、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ-ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0126】
反射防止層は単層及び多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。
【0127】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0128】
以上、本開示の実施形態について述べたが、これらは本開示の例示であり、本開示の発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0129】
以下に、実施例により本開示の発明を更に詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本開示の実施例において用いた評価方法、材料は以下の通りである。
【0130】
[透過率、及び視感透過率の測定方法]
測定機器として、島津製作所製 島津分光光度計 UV-1800を使用し、2mm厚
の平板レンズを用いて紫外-可視光スペクトルを測定し、透過率曲線を得た。得られた光透過率をもとに視感透過率を算出した。
なお、平板レンズの視感透過率が75%以上である場合、上記平板レンズは、例えば、夜間の自動車運転時に視認性を確保できることを意味する。
また、λmaxにおける透過率が低い程、赤外線カット率が高い。
【0131】
[L*,a*,b*の測定方法]
分光測色計(コニカミノルタ社製CM-5)を用いて、2mm厚の平板レンズのCIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*,b*を測定した。
[YIの測定方法]
2mm厚の平板レンズをコニカミノルタ社製の分光測色計CM-5でYIを測定した。
【0132】
[全光線透過率の測定方法]
2mm厚の平板レンズを日本電色工業社製のHazeMeter NDH2000で全光線透過率を測定した。
【0133】
実施例においては以下に示される近赤外線吸収剤を用いた。
【0134】
・近赤外線吸収剤A
【化10】
【0135】
化学式(I-1)で表される近赤外線吸収剤Aの4.7質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、858nmにピークを有し、上記ピークのピーク頂点(Pmax:ピーク中で最大吸光係数を示す点)の吸光係数が1.22×10ml/g・cmであり、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が69.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が42.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が31.5nmであった。
【0136】
・近赤外線吸収剤B
【化11】
【0137】
化学式(II-1)で表される近赤外線吸収剤Bの3.1質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、873.5nmにピークを有し、上記ピークのピーク頂点(Pmax:ピーク中で最大吸光係数を示す点)の吸光係数が1.86×10ml/g・cmであり、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が62.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が40.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が30.5nmであった。
【0138】
・近赤外線吸収剤C
【化12】
【0139】
化学式(III-1)で表される近赤外線吸収剤Cの3.6質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、913.5nmにピークを有し、上記ピークのピーク頂点(Pmax:ピーク中で最大吸光係数を示す点)の吸光係数が1.61×10ml/g・cmであり、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が71.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が43.5nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が30.5nmであった。
【0140】
・近赤外線吸収剤D
【化13】
【0141】
上記式で表される近赤外線吸収剤Dの3.3質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、780nmにピークを有し、上記ピークのピーク頂点(Pmax:ピーク中で最大吸光係数を示す点)の吸光係数が1.75×10ml/g・cmであり、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が36nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が24nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が17nmであった。
【0142】
・近赤外線吸収剤E
【化14】
【0143】
上記式で表される近赤外線吸収剤Eの36.5質量ppmのトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、935nmにピークを有し、上記ピークのPmaxにおける吸光係数が1.58×10ml/g・cmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が379nmであり、かつ上記ピークのPmaxにおける吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が252nmであった。なお、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅は、上記ピークのPmaxにおける吸光度の1/4となる値が存在しなかったことから測定することができなかった。
【0144】
[実施例1]
ジブチル錫(II)ジクロリドを0.035質量部、三井化学社製MR用内部離型剤を0.1質量部、紫外線吸収剤Tinuvin329を1.5質量部、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンとの混合物を50.6質量部、近赤外線吸収剤Aの含有量が表1に記載の量となる量仕込んで混合溶液を作製した。この混合溶液を25℃で1時間攪拌して完全に溶解させた。その後、この調合液に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを25.5質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を23.9質量部仕込み、これを25℃で30分攪拌し、均一な溶液を調製した。この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径77mmの平板用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、平板レンズを得た。得られた平板レンズを更に120℃で2時間アニールを行った。
このアニール処理を行った平板レンズについて物性を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
[実施例2~実施例15]
近赤外線吸収剤の種類及び含有量を表1に記載の種類及び含有量とした以外は実施例1と同様の方法にて平板レンズを得た。得られた平板レンズの物性の測定結果を表1に示す。
また、実施例1~実施例5の平板レンズの透過率曲線を図1に示す。実施例6~実施例10の平板レンズの透過率曲線を図2に示す。実施例11~実施例15の平板レンズの透過率曲線を図3に示す。
【0146】
[比較例1]
近赤外線吸収剤Aを近赤外線吸収剤Dに変更し、近赤外線吸収剤Dの含有量を表1に記載の量とした以外は実施例1と同様にして、25℃で1時間攪拌した。しかしながら、近赤外線吸収剤Dは溶解しなかった。
【0147】
[比較例2~比較例7]
近赤外線吸収剤Aを近赤外線吸収剤Eに変更し、近赤外線吸収剤Eの含有量を表1に記載の量とした以外は実施例1と同様にして、25℃で1時間攪拌した。得られた平板レンズの物性の測定結果を表1に示す。
【0148】
[実施例16]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドを100質量部、紫外線吸収剤であるTinuvin PS(BASFジャパン株式会社製)を1.1質量部、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンを0.02質量部、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミンを0.1質量部、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンとの混合物を10質量部、近赤外線吸収剤Aの含有量が表2に記載の量となる量仕込んで、20℃にて15分間攪拌し、均一な溶液を調製した。
この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径77mmの平板用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、20時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、平板レンズを得た。得られた平板レンズを更に120℃で2時間アニールを行った。
このアニール処理を行った平板レンズについて物性を測定した。結果を表2に示す。
【0149】
[実施例17~30]
近赤外線吸収剤の種類及び含有量を表2に記載の種類及び含有量とした以外は実施例16と同様に平板レンズを得た。得られた平板レンズの物性の測定結果を表2に示す。
また、実施例16~実施例20の平板レンズの透過率曲線を図4に示す。実施例21~実施例25の平板レンズの透過率曲線を図5に示す。実施例26~実施例30の平板レンズの透過率曲線を図6に示す。
【0150】
[比較例8]
近赤外線吸収剤Aを近赤外線吸収剤Dに変更し、近赤外線吸収剤Dの含有量を表2に記載の量とした以外は実施例16と同様にして、25℃で1時間攪拌した。しかしながら、近赤外線吸収剤Dは溶解しなかった。
【0151】
[比較例9]
近赤外線吸収剤Aを近赤外線吸収剤Eに変更し、近赤外線吸収剤Eの含有量を表2に記載の量とした以外は実施例16と同様にして、25℃で1時間攪拌した。しかしながら、近赤外線吸収剤Eは溶解しなかった。
【0152】
[実施例31]
ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製パンライトL-1225WP)と近赤外線吸収剤Aとを、近赤外線吸収剤Aの含有量が72質量ppmとなる量にて、タンブラーによって20分混合した後、単軸押出機によって、シリンダー設定温度280℃、スクリュー回転数56rpm(revolutions per minute)の条件下にて、溶融及び混練してペレット(樹脂組成物)を作製した。
作製したペレットを原料として、射出成形機にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル60秒の条件下にて、外形150mm×300mm、厚さ2mmの平板レンズを成形した。得られた平板レンズの物性の測定結果を表2に示す。
また、実施例31の平板レンズの透過率曲線を図7に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
表1又は表2に記載の通り、実施例1~実施例31における平板レンズは、λmaxにおける透過率が低く、近赤外線カット率に優れていた。また、実施例1~実施例31における平板レンズは、色味の評価が良好であり、意匠性に優れていた。
一方、本願における式(I)~式(III)で表される化合物のいずれにも該当しない近赤外線吸収剤Eを用いた比較例2及び比較例3における平板レンズは、λmaxにおける透過率が高く、近赤外線カット率に劣っていた。
本願における式(I)~式(III)で表される化合物のいずれにも該当しない近赤外線吸収剤Eを用いた比較例4~比較例7における平板レンズは、CIE1976(L*,a*,b*)色空間におけるa*の値が低く、色味に劣っていた。
比較例1、8及び9は、近赤外線吸収剤が溶解しなかったため、平板レンズを得られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7