(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】エアテント
(51)【国際特許分類】
E04H 15/20 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
E04H15/20 C
(21)【出願番号】P 2020106305
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505289225
【氏名又は名称】株式会社 ロジックソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】512141356
【氏名又は名称】株式会社LSふぁーむ
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】小坂井 雅次
(72)【発明者】
【氏名】竹下 俊之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-105242(JP,A)
【文献】特開昭61-162684(JP,A)
【文献】特開平02-167971(JP,A)
【文献】特開平10-159392(JP,A)
【文献】実開昭59-190802(JP,U)
【文献】特開2010-059628(JP,A)
【文献】米国特許第05685122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/20,15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアテントの外形形状を形成する外皮層と、
気密構造であって、内部に供給された圧縮流体の圧力により、前記外皮層を内側から支持するリブ部と、
前記外皮層の内側に圧縮流体を供給する第1流体供給部と、
前記リブ部の内側に圧縮流体を供給する第2流体供給部と、
前記外皮層の外側の大気圧と前記外皮層の内側の第1気圧との第1差圧を検出する第1差圧検出部と、
前記外皮層の外側の大気圧と前記リブ部の内側の第2気圧との第2差圧を検出する第2差圧検出部と、
前記第1差圧検出部で検出した前記第1差圧及び前記第2差圧検出部で検出した前記第2差圧の内少なくとも1つが予め設定した差圧値と異なった場合に、前記差圧値が予め設定した差圧値となるように前記第1流体供給部及び前記第2流体供給部の少なくとも1つを制御する制御部と、
を備え
、
前記リブ部は、内側の第2圧力を調整するための圧力調整部を備えるとともに、複数個を略平行に並べることによって前記外皮層を支持し、
前記制御部は、
前記複数個並べた前記リブ部の各前記第2差圧検出部で検出した前記第2差圧が異なるように、前記複数のリブ部の各圧力調整部を制御可能であることを特徴とするエアテント。
【請求項2】
請求項
1に記載のエアテントにおいて、
前記リブ部の内側に内形形状を形成する内皮層と、
前記外皮層の外側の大気圧と前記内皮層の内側の第3気圧との第3差圧を検出する第3差圧検出部と
前記内皮層の内側に圧縮流体を供給する第3流体供給部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第3差圧が所定の圧力になるように、前記第3流体供給部を制御することを特徴とするエアテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ホースに圧縮流体を充填することにより外皮を補強し構造強度を高める構造を有するエアテントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプから空気などの圧縮流体を環状ホースに充填することにより形成される平面構造用材を複数本用いて、中央部を束ねて結束し、外側にシート材の覆いを架け、環状ホースが平行又は直交する部分を固着して立体的な空間を形成する構造を持つエアテントがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のエアテントでは、圧縮流体を所定の圧力で環状ホースに充填しているだけであるため、エアテント全体の強度は一定である。したがって、悪天候時などに強風が吹いたりするなど、外部の圧力変化があった場合にエアテントが変形する場合がある。また、エアテントの外側のシート材に雨水が蓄積したり積雪があったりした場合には、倒壊たりしてしまう場合という問題もある。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、外部の圧力変化があったり、積雪などがあったりした場合でも変形や倒壊を起こさないエアテントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1に記載のエアテント(2)は、
エアテントの外形形状を形成する外皮層と、
気密構造であって、内部に供給された圧縮流体の圧力により、前記外皮層を内側から支持するリブ部(20)と、
前記外皮層(10)の内側に圧縮流体を供給する第1流体供給部(30)と、
前記リブ部(20)の内側に圧縮流体を供給する第2流体供給部(40)と、
前記外皮層(10)の外側の大気圧と前記外皮層(10)の内側の第1気圧との第1差圧を検出する第1差圧検出部(50)と、
前記外皮層(10)の外側の大気圧と前記リブ部(20)の内側の第2気圧との第2差圧を検出する第2差圧検出部(60)と、
前記第1差圧検出部(50)で検出した前記第1差圧及び前記第2差圧検出部(60)で検出した前記第2差圧の内少なくとも1つが予め設定した差圧値と異なった場合に、前記差圧値が予め設定した差圧値となるように前記第1流体供給部(30)及び前記第2流体供給部(40)の少なくとも1つを制御する制御部(70)と、
を備え、
前記リブ部(20)は、内側の第2圧力を調整するための圧力調整部(42)を備えるとともに、複数個を略平行に並べることによって前記外皮層(10)を支持し、
前記制御部(70)は、
前記複数個並べた前記リブ部(20)の各前記第2差圧検出部(60)で検出した前記第2差圧が異なるように、前記複数のリブ部(20)の各圧力調整部(42)を制御可能であることを要旨とする。
【0008】
ここで、外皮層(10)内側とリブ部(20)に圧縮流体を供給してエアテント(2)の設置が完了した状態で、エアテント(2)に強風が吹き付けたり、外皮層(10)の外側に雨水が蓄積したり積雪があったりした場合には、エアテント(2)が変形する。
【0009】
すると、外皮層(10)の外側の圧力(大気圧)と外皮層(10)の内側の圧力(第1気圧)との差圧である第1差圧や大気圧とリブ部(20)の内側の気圧(第2気圧)との差圧である第2差圧が予め設定した差圧値と異なる値となる。
【0010】
そこで、適用例1に記載のエアテント(2)のように、第1差圧検出部(50)で検出した第1差圧及び第2差圧検出部(60)で検出した第2差圧の内少なくとも1つが予め設定した差圧値と異なった場合に、予め設定した差圧値となるように前記第1流体供給部(30)及び前記第2流体供給部(40)の少なくとも1つを制御する。
【0011】
つまり、外部からの外乱によってエアテント(2)が変形しても、大気圧に対する、外皮層(10)やリブ部(20)の内側の気圧(第1差圧及び第2差圧)を所定の値にする
ことができるため、エアテント(2)の変形を元に戻すことが可能となり、エアテント(2)の変形や倒壊を防止することができる。
【0013】
このようなエアテント(2)では、複数のリブ部(20)が略平行に配置されており、各リブ部(20)の内側の圧力(第2圧力)が圧力調整部(42)により異なる第2圧力に調整可能となっている。
【0014】
したがって、例えば、エアテント(2)の外部に積雪があった場合、各リブ部(20)の第2差圧検出部(60)で検出した第2差圧が異なるため、積雪があったことを検出することが可能であり、さらに、積雪があった部分の近傍のリブ部(20)の第2圧力を、圧力調整部(42)で下げることによって、積雪があった部分の外皮層(10)を凹状態にし、当該リブ部(20)の第2圧力を増加させて当該部分に外皮層(10)の形状を元に戻すとともに、隣接するリブ部(20)の第2圧力を減ずることで、隣接する部分の外皮層(10)を凹状態にする。これによって、外皮層(10)の外側に積もった雪などを積雪部分から隣接するリブ部(20)の位置へ移動させることができる。
【0015】
これを複数のリブ部(20)の端部のリブ部(20)まで順次繰り返していけば、エアテント(2)に積もった雪などを、エアテント(2)を設置している地面上に落とすことができる。さらに、降雪時間が長い場合など、定期的にこの処理を繰り返すことで、エアテント(2)から定期的に除雪を行うことができ、降雪によるエアテント(2)の傾きや倒壊を防ぐことができる。
【0016】
[適用例2]
適用例2に記載のエアテント(3)は、適用例1に記載のエアテント(1,2)において、
前記リブ部(20)の内側に内形形状を形成する内皮層(80)と、
前記外皮層(10)の外側の大気圧と前記内皮層(80)の内側の第3気圧との第3差圧を検出する第3差圧検出部(90)と
前記内皮層(80)の内側に圧縮流体を供給する第3流体供給部(100)と、
を備え、
前記制御部(70)は、
前記第3差圧が所定の圧力になるように、前記第3流体供給部(100)を制御することを要旨とする。
【0017】
このようなエアテント(3)では、リブ部(20)で支持された外皮層(10)の内側に内皮層(80)があるため、外皮層(10)と内皮層(80)との間に空間が形成される。したがって、この空間により断熱効果を得ることができ、外部と内部の断熱が必要な、農業用、スポーツ用、避難所用、医療用などのエアテント(3)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】エアテントの概略の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第2実施形態におけるエアテントの概略の構成を示す図である。
【
図4】第2実施形態におけるエアテントの制御部におけるリブ部制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第3実施形態におけるエアテント3の概略の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された実施形態について適宜図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0020】
[第1実施形態]
(エアテントの構成)
図1及び
図2に基づき、エアテント1の構成について説明する。
図1は、エアテント1の概略の構成を示す図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は側面図、
図1(c)は平面図である。
図2は、エアテント1の概略の機能的な構成を示すブロック図である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、エアテント1は、外皮層10、リブ部20、第1流体供給部30、第2流体供給部40、第1差圧検出部50、第2差圧検出部60及び制御部70を備えている。
【0022】
外皮層10は、エアテント1の外形形状を形成する層であり、ポリプロピレンや繊維層、樹脂層を複数積層した材料など、エアテント1の外形形状を形成する層であり、本実施形態の場合、内圧(第1圧力)を上げたときに、底面がレーストラック状のドーム形状となるように形成されている。
【0023】
また、外皮層10の下端部の一か所に、第1流体供給部30が取り付けられており、第1流体供給部30の第1ダクト33から圧縮流体を供給して、外皮層10の内圧(第1圧力)が所定の値となるようにしている。なお、本実施形態では圧縮流体として空気を使用している。
【0024】
リブ部20は、外皮層10を内側から支持する部材であり、複数個(本実施形態では8個)使用されている。リブ部20は、断面形状が環状の機密構造の部材を、外皮層10と同じ素材でリブ状に形成し、両端部も機密構造となるように、外皮層10と同じ素材で閉塞したものである。
【0025】
また、複数のリブ部20の一方の端面部分が第2流体供給部40の第2ダクト43に取り付けられており、この第2ダクト43を介して、各リブ部20へ圧縮流体を供給して、各リブ部20の内圧(第2圧力)が所定の値となるようにしている。なお、本実施形態では圧縮流体として空気を使用している。
【0026】
第1流体供給部30は、外皮層10の内側に空気を供給する装置であり、第1ポンプ31、第1圧力制御弁32、第1ダクト33及び図示しないファンを備えている。
【0027】
第2流体供給部40は、リブ部20の内側に空気を供給する装置であり、第1流体供給部30と同様に、第2ポンプ41、第2圧力制御弁42、第2ダクト43及び図示しないファンを備えている。
【0028】
第1差圧検出部50は、外皮層10の外側の大気圧と外皮層10の内側の第1気圧との第1差圧を検出する部分であり、
図2に示すように、外皮層10の外側の大気圧を検出する大気圧センサ51と外皮層10の内側の第1圧力を検出する第1内圧センサ52とを備えている。
【0029】
そして、大気圧センサ51で検出した大気圧と第1内圧センサ52とで検出した第1圧力を制御部70に入力し、制御部70において大気圧と第1圧力との差を算出して第1差圧とする。
【0030】
第2差圧検出部60は、外皮層10の外側の大気圧とリブ部20の内側の第2気圧との第2差圧を検出す部分であり、
図2に示すように、外皮層10の外側の大気圧を検出する大気圧センサ51とリブ部20の内側の第2圧力を検出する第2内圧センサ61とを備えている。
【0031】
そして、大気圧センサ51と第2内圧センサ61とで検出した圧力を制御部70に入力し、制御部70において大気圧センサ51と第2内圧センサ61との差を算出して第2差圧とする。
【0032】
制御部70は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O及び外部記憶装置を備え、ROMや外部記憶装置に格納したプログラムにより、下記(ア)~(エ)の処理を実行する。
【0033】
(ア)大気圧センサ51で検出した大気圧の値と第1内圧センサ52で検出した第1圧力の値を読み込み、第1差圧=第1圧力-大気圧の式で第1差圧を算出する。
(イ)大気圧センサ51で検出した大気圧の値と第2内圧センサ61で検出した第2圧力の値を読み込み、第2差圧=第2圧力-大気圧の式で第2差圧を算出する。
【0034】
(ウ)第1差圧が予め設定した圧力となるように、第1ポンプ31の空気供給量の増減及び第1圧力制御弁32の調圧制御を行う。
(エ)第2差圧が予め設定した圧力となるように、第2ポンプ41の空気供給量の増減及び第2圧力制御弁42での調圧制御を行う。
【0035】
(エアテント1の特徴)
以上のようなエアテント1は、エアテント1の外皮層10の外側に雨水が蓄積したり積雪があったりした場合には、その重みでエアテント1が変形する。このとき第1差圧(外皮層10の外側の圧力(大気圧)と外皮層10の内側の圧力(第1気圧)との差圧)や第2差圧(大気圧とリブ部20の内側の気圧(第2気圧)との差圧)が所定の値とは異なった値となる。
【0036】
ところが、制御部70からの制御により、第1流体供給部30と第2流体供給部40とを、第1差圧及び第2差圧が予め設定した差圧値となるようにしている。したがって、外部からの外乱によってエアテント1が変形しても、大気圧に対する、外皮層10やリブ部20の内側の気圧(第1差圧及び第2差圧)を所定の値にすることができるため、エアテント1の変形を元に戻すことが可能となり、エアテント1の変形や倒壊を防止することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、
図3及び
図4に基づき第2実施形態におけるエアテント2について説明する。
図3は、第2実施形態におけるエアテント2の概略の構成を示す図であり、
図4は、エアテント2の制御部70におけるリブ部制御の流れを示すフローチャートである。
【0038】
なお、第2実施形態におけるエアテント2では、第2実施形態におけるエアテント1とほぼ同じ構成品を用いているため、同じ構成品には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
エアテント2では、
図3に示すように、複数(本実施形態では8本)のリブ部20を平行に配置してある。また、各リブ部20には、第2圧力制御弁42と第2内圧センサ61が取り付けられており、それらが制御部70に接続されている。
【0040】
(制御部におけるリブ部制御)
次に、
図4に基づき、制御部70で実行されるリブ部20の制御内容について説明する。リブ部制御は、プログラムとして制御部70のROMあるいは外部記憶装置に格納されており、タッチパネル71の操作によりCPUに読み込まれ、実行される。
【0041】
図4に示すように、CPUは、S100において、8個のリブ部20の各圧力センサから圧力の検出値を取得する。具体的には、各大気圧センサ51、各第1内圧センサ52、各第2内圧センサ61の圧力の検出値を取得する。
【0042】
続くS105では、S100において取得した圧力の検出値から、第1差圧と各リブ部20の第2差圧とを算出する。
続くS110では、S105で算出した第1差圧と各リブ部20の第2差圧とがそれぞれ所定の値であるか否かを判定する。そして、第1差圧とすべての第2差圧とが所定の値以内であると判定した場合(S110:Yes)、処理をS100へ戻し、処理を繰り返す。また、第1差圧とすべての第2差圧のいずれか1つでも所定の値以内でない場合(S110:No)、処理をS115へ移行する。
【0043】
S115では、どの差圧が所定の値よりも高いかを抽出する。
続くS120では、S115において抽出した、所定の値よりも高い差圧が第1差圧であるか否かを判定する。そして、所定の値よりも高い差圧が第1差圧である場合(S120:Yes)、処理をS125へ移行し、所定の値よりも高い差圧が第1差圧以外(つまり、第2差圧のいずれか)である場合(S120:No)、処理をS150へ移行する。
【0044】
S125では、S115において抽出した第2差圧のうち所定の値よりも高い差圧のうち一番高い差圧の第2差圧を示しているリブ部20がどのリブ部20であるかを特定する。
【0045】
続くS130では、S125において特定したリブ部20の第2圧力制御弁42を制御し、該当するリブ部20の内側の第2気圧を減少させる。これにより、該当するリブ部20の近傍の外皮層10の外側に蓄積している雨や積雪を該当するリブ部20のところへ集めることができる。
【0046】
続くS135では、S130で第2気圧を減少させたリブ部20の隣のリブ部20でエアテント2の端部に近い方のリブ部20の第2圧力制御弁42を制御し、そのリブ部20の第2圧力を減少させる。
【0047】
続くS140では、S130で第2圧力を減少させたリブ部20の第2流体供給部40を制御して、所定の第2差圧となるように該当するリブ部20に空気を供給する。これにより、外皮層10の外側に蓄積している雨や積雪を移動することができる。
【0048】
続くS145では、リブ部20が最も端部のリブ部20であるか否かを判定する。そして、最も端部のリブ部20であると判定した場合(S145:Yes)、処理を終了し、最も端部のリブ部20ではないと判定した場合(S145:No)、処理をS130へ移行し、処理を繰り返す。
【0049】
S150では、タッチパネル71にエラーが発生している旨の表示を行い、その後処理を終了する。
【0050】
(エアテント2の特徴)
第2実施形態におけるエアテント2では、エアテント2の外部に積雪があった場合、各リブ部20の第2差圧検出部60で検出した第2差圧が異なるため、積雪があったことを検出することが可能である。
【0051】
さらに、積雪があった部分の近傍のリブ部20の第2圧力を、圧力調整部42で下げることによって、積雪があった部分の外皮層10を凹状態にし、当該リブ部20の第2圧力を増加させて当該部分に外皮層10の形状を元に戻すとともに、隣接するリブ部20の第2圧力を減ずることで、隣接する部分の外皮層10を凹状態にする。これによって、外皮層10の外部に積もった雪などを積雪部分から隣接するリブ部20の位置へ移動させることができる。
【0052】
これを複数のリブ部20の端部のリブ部20まで順次繰り返していくので、エアテント2に積もった雪などを地面上に落とすことができる。さらに、降雪時間が長い場合など、定期的にこの処理を繰り返すことで、エアテント2から定期的に除雪を行うことができ、降雪によるエアテント2の傾きや倒壊を防ぐことができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、
図5に基づき第3実施形態におけるエアテント3について説明する。
図5は、第3実施形態におけるエアテント3の概略の構成を示す図である。
【0054】
なお、第3実施形態におけるエアテント3では、第1実施形態及び第2実施形態におけるエアテント1,2とほぼ同じ構成品を用いているため、同じ構成品には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
エアテント3は、
図3に示すように、第1実施形態におけるエアテント1及び第2実施形態におけるエアテント2において、内皮層80、第3差圧検出部90、第3流体供給部100及び排気部110を備えている。
【0056】
内皮層80は、リブ部20の内側にエアテント3の内形形状を形成する層であり、外皮層10と同様に、ポリプロピレンや繊維層、樹脂層を複数積層した材料などで形成されている。
【0057】
また、内皮層80の排気部110の内側(内皮層80が形成する内部空間側)の上方には、ルーバー82が取り付けられている。このルーバー82は、複数の羽板で構成されている。また、第3流体供給部100から供給され、内皮層80の天井部分で暖められた空気を排気部110へ導くように複数の羽板の角度が設定されている。
【0058】
第3差圧検出部90は、外皮層10の外側の大気圧と内皮層80の内側の第3気圧との第3差圧を検出する部分であり、外皮層10の外側の大気圧を検出する大気圧センサ51と内皮層80の内側の第3圧力を検出する第3内圧センサ92とを備えている。
【0059】
そして、大気圧センサ51で検出した大気圧と第3内圧センサ92とで検出した第3圧力を制御部70に入力し、制御部70において大気圧と第3圧力との差を算出して第3差圧とする。
【0060】
第3流体供給部100は、内皮層80の内側に空気を供給する装置であり、第3ポンプ101、第3圧力制御弁102、第3ダクト103、ルーバー104及び図示しないファンを備えている。
ルーバー104は、図示しない複数の羽板を並べて構成されており、第3ダクト109の上部に設けられている。
【0061】
ルーバー104は、第3ポンプ101により外皮部10の外部から吸気されて第3ダクト103から内皮層80の内側に供給される比較的温度の低い空気(外気)を上方(天井の方向)へ吹き出すように各羽板の角度が設定されている。
【0062】
排気部110は、内皮層80の内側から空気を外皮層10の外部に排出する部分であり、第4ダクト111、排出用ポンプ112、ルーバー113及び図示しないファンを備えている。
【0063】
ルーバー113は、複数の羽板から構成され、第4ダクト111の内側(内皮層80の内側)の上部に取り付けられている。ルーバー113は、ルーバー82で導かれた空気を排気用ポンプ112で第4ダクト111から効率よく外部へ排出できるように複数の羽板の角度が設定されている。
【0064】
制御部70は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O及び外部記憶装置を備え、ROMや外部記憶装置に格納したプログラムにより、前述の第1実施形態における処理あるいは第2実施形態における処理のほかに、下記(オ)、(カ)の処理を実行する。
【0065】
(オ)大気圧センサ51で検出した大気圧の値と第3内圧センサ92で検出した第3圧力の値を読み込み、第3差圧=第3圧力-大気圧の式で第3差圧を算出する。
(カ)第3差圧が予め設定した圧力となるように、第3ポンプ101の空気供給量の増減及び第3圧力制御弁102の調圧制御を行う。
【0066】
(エアテント3の特徴)
第3実施形態におけるエアテント3では、外皮層10と内皮層80との間に空間が形成される。したがって、この空間により断熱効果を得ることができ、外部と内部の断熱が必要な、農業用、スポーツ用、避難所用、医療用などに好適なエアテントとすることができる。
【0067】
また、
図5(a)中に矢印で示すように、第3流体供給部100から内皮層80の内部へ供給された比較的温度の低い外気がルーバー104によって内皮層80の天井部分へ導かれ、天井部分で暖められつつ排気部110の方へ流れて行く。
【0068】
この暖められた空気をルーバー82とルーバー104で排気部110へ導き、排気部110によって外皮層10の外側へ排気する。このように、エアテント3の内部の暖かい空気を循環させて外部へ効率よく排気することにより、内皮層80の内部を一定の温度に保ちやすくなる。
【0069】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、圧縮流体として空気を用いていたが、ヘリウムや窒素などの不燃性ガスなどを用いるなどエアテントの用途に応じて他の圧縮流体を選択してもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、同じ形状の複数のリブ部20を用いていたが、エアテントの平面形状が縦方向に長い長円形のドーム状にする場合などには、複数のリブ部20の長さを、ドームの中央に配置するものは長くし、端部にいくほど短くするなど、異なる寸法や形状のリブ部20を用いてもよい。
【0071】
(3)エアテント1,2には吸気部100も設けていなかったが、エアテント1,2にも吸気部100を設けるようにしてもよい。
また、吸気部100を設けた場合(第3実施形態を含む)には、リブ部20の内圧(第2圧力)を高めにしたうえで、内皮層80の内側の内圧(第2圧力)を負圧(大気圧よりも低い圧力)にすることにより、エアテント1,2,3の内部の空気が外部に漏洩しないようにすることもできる。その場合、医療用、特に感染症の治療用のテントとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1,2,3… エアテント 10… 外皮層 20… リブ部 30… 第1流体供給部 31… 第1ポンプ 32… 第1圧力制御弁 33… 第1ダクト 40… 第2流体供給部 41… 第2ポンプ 42… 第2圧力制御弁 43… 第2ダクト 50… 第1差圧検出部 51… 大気圧センサ 52… 第1内圧センサ 60… 第2差圧検出部 61… 第2内圧センサ 70… 制御部 71… タッチパネル 80… 内皮層 82… ルーバー 90… 第3差圧検出部 92… 第3内圧センサ 100… 第3流体供給部 101… 第3ポンプ 102… 第3圧力制御弁 103… 第3ダクト 104… ルーバー 110… 排気部 111… 第4ダクト 112… 排気用ポンプ 113… ルーバー。