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  • 特許-酸素吸収性コーティング剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】酸素吸収性コーティング剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240820BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240820BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240820BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
C09D201/00
B65D65/40 D
C08G18/28 015
C09D7/63
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020116461
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014234
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391056066
【氏名又は名称】ロックペイント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 希
(72)【発明者】
【氏名】沼田 睦章
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 栄太
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】及川 渉
(72)【発明者】
【氏名】勝又 しおり
(72)【発明者】
【氏名】濱野 美恵
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-071408(JP,A)
【文献】特開2020-040321(JP,A)
【文献】特開2010-229409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
B65D 65/40
C08G 18/28
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸素吸収性化合物と、酸化促進触媒とを含有する酸素吸収性コーティング剤組成物であって、
該酸素吸収性化合物は、1個または2個以上の不飽和五員環を分子の主鎖および/または側鎖の末端に有し
該不飽和五員環を構成する5つの炭素原子間の何れかの結合は、炭素-炭素二重結合であり、
該不飽和五員環には、1価および/または2価以上の電子供与性の有機基1が結合し、
該不飽和五員環が1個の場合には、該五員環または該有機基1は、活性水素を有する官能基、または活性水素を有する官能基の活性水素が1価の有機基2に置換された基を有し、
該不飽和五員環が2個以上の場合には、該五員環または該有機基1は、活性水素を有する官能基の活性水素が2価以上の有機基2に置換された基を有し、該不飽和五員環同士は、有機基2を介して結合している、
酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項2】
前記不飽和五員環の構造、または前記不飽和五員環と有機基1とからなる構造が、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上に由来するものである、
請求項1に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記有機基2が、イソシアネート系化合物、または、イソシアネート系化合物および水酸基含有化合物に由来する構造部を含む、
請求項1または2に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート系化合物が、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシ
アネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上である、
請求項3に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項5】
前記水酸基含有化合物が、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上である、
請求項3または4に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項6】
前記有機基2が、架橋性官能基を有していない、
請求項1~5の何れか1項に記載の酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項7】
前記有機基2が、1個または2個以上の架橋性官能基を有し、
該架橋性官能基が、水酸基および/またはイソシアネート基である、
請求項1~5の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項8】
前記酸素吸収性化合物が、下記式(1)で示される化合物と変性剤とを含有する、
請求項1~5の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【化1】
【請求項9】
前記酸素吸収性化合物が、下記式(2)~(4)で示される化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、
請求項1~5の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、a~eは各々1以上の数であり、R、R、Rの各々は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含み、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【請求項10】
前記酸素吸収性化合物が、下記式(5)で示される化合物を含有する、
請求項1~5の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【化5】
(式中、fは0以上の数であり、RとRの各々は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含む有機基であり、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【請求項11】
前記酸化促進触媒が、過酸化物、または遷移金属からなるカチオンを含む化合物である、
請求項1~10の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項12】
前記の遷移金属からなるカチオンを含む化合物が、遷移金属からなるカチオンまたは錯体を放出可能な遷移金属化合物と、脂肪酸からなるアニオンまたは配位子とからなる金属石鹸である、
請求項11に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項13】
前記酸素吸収性コーティング剤組成物が、変性剤をさらに含有する、
求項1~7、9~12の何れか1項に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項14】
前記変性剤は、イソシアネート系化合物、および/または水酸基含有化合物を含有する、
請求項8または13に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項15】
前記イソシアネート系化合物が、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上である、
請求項14に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【請求項16】
前記水酸基含有化合物が、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、ポリアルキレンエーテルジオール、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテート系樹脂、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を含む、
請求項14または15に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料向けの積層体の表面のコーティング層を形成するコーティング剤として用いられ、積層体を透過する酸素、または包装袋内または包装容器内の酸素を吸収する、コーティング剤組成物に関する。
用途として、包装体に用いるフィルムへのコーティングや、ビンの内側面または食品用ラップフィルムの内側面等への応用が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、医療、化成品、化粧品等の内容物の酸素による品質低下を抑制する包装方法として、酸素バリア性の高い包装材料を用いたり、内容物収容部を窒素ガス等の不活性ガスによってガス置換したり、還元鉄粉などが包装された脱酸素剤を同梱したりされているが、性能が不十分であったり、包装コストが上昇したり、廃棄物としてのゴミが増えたり、水分がある環境下でしか性能が発揮しなかったり、誤飲したりする問題点が挙げられている。
さらに、特許文献1では、酸素吸収性を有し、発生臭気の少ない樹脂を用いた包装材料も開発されているが、この樹脂は、極性溶媒に不溶かつ、活性水素基を有さないポリシクロドデセンであり、適用が限定的である。
特許文献2では、酸素吸収性を有する原料としてメチルテトラヒドロフタル酸を用いた樹脂からなる樹脂組成物が提案されているが、酸素吸収性が低く不安定という欠点を持つ。
特許文献3では、炭素-炭素二重結合を含む置換基を有する飽和五員環と、該飽和五員環間を連結する-CH=CH-基からなる繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂の酸素吸収性樹脂が記載されているが、溶剤への溶解性が劣るために使いづらい、発生臭気が強い等の欠点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5873770号公報
【文献】特許第5671816号公報
【文献】特許第6505699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、包装材料向けの積層体の表面のコーティング層を形成するコーティング剤組成物として用いられ、発生臭気が少なく、積層体を透過する酸素、または包装袋内や包装容器内の酸素を吸収して、酸素による、積層体中の該コーティング層自身や他の構成層の劣化や、内容物の劣化を抑制し、耐ブロッキング性と、発生臭気量と、酸素吸収性とのバランスに優れた、酸素吸収性コーティング剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、特定の酸素吸収性化合物と酸化促進触媒とを含有するコーティング剤組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、酸素吸収性化合物と、酸化促進触媒とを含有する酸素吸収性コーティング剤組成物であって、
該酸素吸収性化合物は、1個または2個以上の不飽和五員環を有し、
該不飽和五員環を構成する5つの炭素原子間の何れかの結合は、炭素-炭素二重結合で
あり、
該不飽和五員環には、1価および/または2価以上の電子供与性の有機基1が結合し、
該不飽和五員環が1個の場合には、該五員環または該有機基1は、活性水素を有する官能基、または活性水素を有する官能基の活性水素が1価の有機基2に置換された基を有し、
該不飽和五員環が2個以上の場合には、該不飽和五員環同士は、各々の該五員環または該有機基1上の活性水素基の活性水素を置換する2価以上の有機基2を介して結合している、
酸素吸収性コーティング剤組成物。
2.前記不飽和五員環の構造、または前記不飽和五員環と有機基1とからなる構造が、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上に由来するものである、
上記1に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
3.前記有機基2が、イソシアネート系化合物、または、イソシアネート系化合物および水酸基含有化合物に由来する構造部を含む、
上記1または2に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
4.前記イソシアネート系化合物が、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上である、
上記3に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
5.前記水酸基含有化合物が、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上である、
上記3または4に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
6.前記有機基2が、架橋性官能基を有していない、
上記1~5の何れかに記載の酸素吸収性コーティング剤組成物。
7.前記有機基2が、1個または2個以上の架橋性官能基を有し、
該架橋性官能基が、水酸基および/またはイソシアネート基である、
上記1~5の何れかに記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
8.前記酸素吸収性化合物が、下記式(1)~(4)で示される化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、
上記1~5の何れかに記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、a~eは各々1以上の数であり、R1、R2、R3の各々は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含み、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
9.前記酸素吸収性化合物が、下記式(5)で示される化合物を含有する、
上記1~5の何れかに記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【化5】
(式中、fは0以上の数であり、R4とR5の各々は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含む有機基であり、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
10.前記酸化促進触媒が、過酸化物、または遷移金属からなるカチオンを含む化合物である、
上記1~9の何れかに記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
11.前記の遷移金属からなるカチオンを含む化合物が、遷移金属からなるカチオンまたは錯体を放出可能な遷移金属化合物と、脂肪酸からなるアニオンまたは配位子とからなる金属石鹸である、
上記10に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
12.前記酸素吸収性コーティング剤組成物が、変性剤をさらに含有し、
該変性剤は、イソシアネート系化合物、および/または水酸基含有化合物を含有する、上記1~11の何れかに記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
13.前記イソシアネート系化合物が、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上である、
上記12に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
14.前記水酸基含有化合物が、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、ポリアルキレンエーテルジオール、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテート系樹脂、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を含む、
上記12または13に記載の、酸素吸収性コーティング剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発生臭気が少なく、積層体を透過する酸素、または包装袋内や包装容器内の酸素を吸収して、酸素による、積層体中の該コーティング層自身や他の構成層の劣化や、内容物の劣化を抑制することができ、耐ブロッキング性と、発生臭気量と、酸素吸収性とのバランスに優れた、包装材料向けのフィルムまたは積層体の表面のコーティング層を形成する為の酸素吸収性コーティング剤組成物を得ることができる。
そして、本発明の酸素吸収性コーティング剤組成物は、特に軟包装用途に適し、包装工程の短縮やコストの削減、包装体の軽量化を達成し、従来同梱されていた脱酸素剤の同梱を必要としないことから、該脱酸素剤の誤飲事故を無くし、該脱酸素剤からなるゴミの低減を達成することができる。
また、本発明の酸素吸収性コーティング剤組成物からなるコーティング層を表面に有する積層体は、ロール状に巻かれて長期間保管された場合もブロッキングを生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の酸素吸収性コーティング剤組成物を用いた積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
【0009】
《酸素吸収性コーティング剤組成物》
本発明の酸素吸収性コーティング剤組成物は、少なくとも、酸素吸収性化合物と酸化促進触媒とを含有する酸素吸収性コーティング剤組成物である。
酸素吸収性コーティング剤組成物は、必要に応じて、さらに、変性剤、希釈溶剤、各種添加物等を含有することができる。
本発明の酸素吸収性コーティング剤組成物は、印刷インキバインダーとして用いることもできる。
【0010】
酸素吸収性コーティング剤組成物は、既存のコーティング剤組成物に酸素吸収性化合物を添加してもよく、酸素吸収性化合物を樹脂成分として酸素吸収性コーティング剤組成物を調製してもよい。
ここで、既存のコーティング剤組成物は、1液性のコーティング剤組成物であってもよく、2液性のコーティング剤組成物であってもよい。
酸素吸収性コーティング剤組成物は、1種または2種以上の酸素吸収性化合物を含有することができる。
酸素吸収性コーティング剤組成物および/または上記の既存のコーティング剤組成物は、硬化性であってもよく、非硬化性であってもよい。硬化性の場合は、熱硬化性、光硬化性、電子線硬化性等の何れであってもよい。
酸素吸収性化合物は、既存のコーティング剤組成物に含有される成分と反応するものであってもよく、反応しないものであってもよい。また、酸素吸収性化合物同士で反応するものであってもよい。
上記の反応の有無や反応の種類に応じて、酸素吸収性化合物として、官能基を有さないもの、(共)重合可能な官能基を有するもの、主剤または硬化剤として反応可能な官能基を有するものの、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0011】
具体的には、例えば、イソシアネート系化合物と水酸基含有化合物とを含有する2液性のウレタン系コーティング剤組成物に、官能基を有さない酸素吸収性化合物および/または官能基を有する酸素吸収性化合物を添加することができる。この場合には、官能基としては、イソシアネート基および/または水酸基が好ましい。
また例えば、酸素吸収性コーティング剤組成物の主剤と硬化剤との組み合わせを、イソシアネート系化合物と水酸基を有する酸素吸収性化合物との組み合わせにしたり、水酸基含有化合物とイソシアネート基を有する酸素吸収性化合物との組み合わせにしたり、水酸基を有する酸素吸収性化合物とイソシアネート基を有する酸素吸収性化合物との組み合わせにしたりして、酸素吸収性コーティング剤組成物を調製することができる。
酸素吸収性コーティング剤組成物は、ウレタン系酸素吸収性コーティング剤組成物であることが好ましい。
【0012】
酸素吸収性コーティング剤組成物中の固形分の含有量は、特に制限は無いが、20質量%以上、100質量%以下が好ましい。
【0013】
酸素吸収性コーティング剤組成物中の酸化促進触媒を除く固形分中の、酸素吸収性化合物の含有量は、30質量%以上、100質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、酸素吸収性が不十分になる虞がある。100質量%の場合とは、酸素吸収性化合物がコーティング剤組成物の樹脂成分として使用可能な場合であり、単独で十分なコーティング性を有していたり、単独で硬化可能な官能基を有していたり、主剤となる官能基を有する酸素吸収性化合物と硬化剤となる官能基を有する酸素吸収性化合物とを混合して用いる場合である。
【0014】
酸素吸収性コーティング剤組成物中の酸化促進触媒の含有量は、全固形分に対して10ppm以上、6000ppm以下が好ましい。
含有量が上記範囲よりも少ないと、酸素吸収性が不十分になる場合があり、含有量が上記範囲よりも多いと、酸素吸収性が不安定になり易く、包装体を作製する前に酸素吸収性が消費されてしまい、包装体内容物包装体作製後の酸素による劣化抑制効果が損なわれる虞がある。
【0015】
[酸素吸収性化合物]
本発明の酸素吸収性化合物は、酸素吸収性を有し、発生臭気が少なく、単体で用いることができ、樹脂や樹脂組成物に混合して用いることもできる。
本発明の酸素吸収性化合物は、1個または2個以上の不飽和五員環を有する、不飽和五員環含有化合物であって、該不飽和五員環を構成する5つの炭素原子間の何れかの結合は、炭素-炭素二重結合であり、該不飽和五員環には、1価および/または2価以上の電子供与性の有機基1が結合している。
該不飽和五員環が1個の場合には、該五員環または該有機基1は、活性水素を有する官能基、または活性水素を有する官能基の活性水素が1価の有機基2に置換された基を有し、該不飽和五員環が2個以上の場合には、該不飽和五員環同士は、各々の該有機基1上の活性水素基の活性水素を置換する2価以上の有機基2を介して結合している。
1分子中の該不飽和五員環が2個以上の場合には、該不飽和五員環同士は、各々の該五員環または有機基1上の活性水素を有する官能基の活性水素が、2価以上の有機基2に置換された構造を介して結合している。
1分子中に存在する不飽和五員環、有機基1、有機基2の各々は、1種または2種以上であってもよく、個数は1個または2個以上であってよい。また、1個の該不飽和五員環
に結合している有機基1は、1個であっても2個以上であってもよい。さらにまた、酸素吸収性化合物は、上記のような、1分子中に存在する不飽和五員環、有機基1、有機基2の各々の種類や個数が異なる2種以上の構造の分子の混合物であってもよい。
【0016】
有機基1が該不飽和五員環に電子を供与することによって、該不飽和五員環が有する炭素-炭素二重結合部分の電子密度が高まり、酸素との反応性が高まり、酸素吸収性が高まる。
該不飽和五員環には、電子吸引性基が結合していないことが好ましい。電子吸引性基が結合していることによって、該不飽和五員環が有する炭素-炭素二重結合部分の電子密度が低くなり、酸素との反応性が低下し、酸素吸収性が低下する。
酸素吸収性化合物の具体的な分子構造としては、例えば、1個の該不飽和五員環と1価または2価の有機基1とが結合したもの、1個の該不飽和五員環と1価または2価の有機基1と1価の有機基2とがこの順で結合したもの、2個の該不飽和五員環が2価の有機基1および2価の有機基2を介して結合したもの、3個の該不飽和五員環が2価の有機基1および3価の有機基2を介して結合したもの等が挙げられる。
【0017】
また、酸素吸収性化合物は、架橋性官能基を有していなくてもよいが、有することもできる。
架橋性官能基は、有機基2の由来となった化合物が有していた官能基であってもよく、化学的修飾によって加えられた官能基であってもよい。
酸素吸収性化合物が架橋性官能基を有していることによって、酸素吸収性化合物を樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、酸素吸収性化合物は該樹脂や該樹脂組成物との相溶性が高まったり、該樹脂や該樹脂組成物の架橋構造の一部になったりして、該樹脂や該樹脂組成物または該樹脂組成物硬化物からブリードし難くなることによって、該樹脂や該樹脂組成物中の酸素吸収性化合物の含有量を高めることができる。
架橋性官能基の具体例としては、脂肪族水酸基、芳香族水酸基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート基、脂肪族水酸基が好ましい。
架橋性官能基を有する場合の、酸素吸収性化合物が有する架橋性官能基の個数は、1分子中に、1個または2個以上が好ましい。また、1分子中に含まれる架橋性官能基は1種でもよく、2種以上であってもよい。
架橋性官能基の官能基当量は、特に制限は無いが、500~20000が好ましく、1000~15000がより好ましく、1500~10000がさらに好ましい。
【0018】
酸素吸収性化合物の数平均分子量は、100~10000が好ましく、200~5000がより好ましく、300~2500がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、析出し易い。数平均分子量が上記範囲よりも大きいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、混合物の粘度が高くなるために希釈溶剤を多量に含有する必要が生じ易く、厚いフィルムや層を得難く、塗工適性が悪化し易い。
【0019】
また、本発明の酸素吸収性化合物の酸素吸収作用は、加熱や触媒の添加によって促進することができる。
【0020】
(不飽和五員環)
酸素吸収性化合物が有する不飽和五員環は、炭素-炭素二重結合を不飽和五員環内に有する。ここで、該炭素-炭素二重結合は、不飽和五員環を構成する5つの炭素原子間の何れかの結合であり、1つの不飽和五員環内で1個であってもよく、2個であってもよい。
炭素-炭素二重結合部が、空気中の酸素分子と反応して酸素分子を取り込むことによって、酸素吸収性化合物は酸素吸収性を発揮する。
上記のような不飽和五員環または電子供与性の有機基1が結合している不飽和五員環の由来となる化合物としては、例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、およびこれらの誘導体が挙げられる。酸素吸収性化合物は、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する不飽和五員環を有することができる。
酸素吸収性化合物中の不飽和五員環濃度は、特に制限は無いが、1質量%以上、70質量%以下が好ましく、3質量%以上、60質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと酸素吸収性が不十分になりやすく、上記範囲よりも高い酸素吸収性化合物を得ることは困難であり、諸物性とのバランスが悪くなり易い。
【0021】
(電子供与性の有機基1)
有機基1の具体例としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、環状アルキレン基等が挙げられる。これらの中でも、環状アルキレン基が好ましく、該不飽和五員環とともに脂肪族二環式アルキレン基を構成するものがより好ましい。
環状アルキレン基の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。これらの中でも、シクロペンチレン基がより好ましい。
【0022】
(電子吸引性の有機基)
電子吸引性基の具体例としては、例えば、フェニル基、フェニレン基、カルボニル基、ハロゲン等が挙げられる。
これらの電子吸引性基のみが不飽和五員環に結合したインデン、クマロンは、該不飽和五員環が有する炭素-炭素二重結合部分の電子密度が低くなり、酸素との反応性が低下し、酸素吸収性が低い。
【0023】
(活性水素を有する官能基)
活性水素を有する官能基は化学反応的に活性である。
具体的な活性水素を有する官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、脂肪族水酸基、芳香族水酸基、イミノ基、カルボキシル基、ウレタン基、尿素基等が挙げられ、中でも、1級アミノ基、2級アミノ基、脂肪族水酸基、芳香族水酸基が好ましく、脂肪族水酸基がより好ましい。
【0024】
(有機基2)
有機基2は、上記五員環または有機基1上の活性水素を有する官能基の活性水素を置換し、上記五員環または有機基1に結合している、1価および/または2価以上の基である。
1分子中の該不飽和五員環が2個以上の場合には、該不飽和五員環同士は、活性水素を有する官能基の活性水素が2価以上の有機基2に置換された構造を介して結合している。
具体例としては、例えば、有機基1上の活性水素を有する官能基と、有機基2の由来となる構造部を有するイソシアネート系化合物のイソシアネート基とが反応して、活性水素が有機基2に置換されてウレタン基によって結合することができる。
有機基2が結合していることによって酸素吸収性化合物は1分子中に2個以上の該不飽和五員環を有することができ、さらには、樹脂や樹脂組成物に混合されて混合物を調製した際の相溶性、分散性、反応性が高まったりすることができる。またさらには、該混合物や該混合物の硬化物を柔らかく調整することができる。
【0025】
有機基2は、脂肪族基であってもよく、芳香族基であってもよく、脂肪族基と芳香族基の両方を有していてもよい。
酸素吸収性化合物の1分子中に存在する有機基2は、1種であっても2種以上であってもよい。
有機基2は、イソシアネート系化合物および/または水酸基含有化合物に由来する構造
部を含む基であることが好ましい。ここで、イソシアネート系化合物および/または水酸基含有化合物に由来する構造部とは、イソシアネート系化合物と水酸基含有化合物との反応生成物に由来する構造部の場合も含まれる。
【0026】
(イソシアネート系化合物)
上記の有機基2の由来となるイソシアネート系化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、およびこれらのトリメチロールプロパンアダクトや、ビューレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体(三量体)、さらにはこれらの各種誘導体等が挙げられる。これらの中でも、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体が好ましい。
本発明においては、これらのイソシアネート系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を、上記の1価および/または2価以上の炭化水素基の構造部の由来として用いることができる。2種以上を用いる場合、酸素吸収性化合物の同一分子内に2種が用いられていてもよく、異なる1種を有する酸素吸収性化合物の分子が混合されたものであってもよい。
【0027】
イソシアネート系化合物の数平均分子量は、100~10000が好ましく、160~5000がより好ましい。数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、析出し易い。数平均分子量が上記範囲よりも大きいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、混合物の粘度が高くなるために希釈溶剤を多量に含有する必要が生じ易く、厚いフィルムや層を得難く、塗工適性が悪化し易い。
【0028】
(水酸基含有化合物)
水酸基含有化合物は、上記の有機基2の由来となる化合物であり、水酸基を2個以上有する。
水酸基含有化合物としては、例えば、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテート系樹脂、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロースアセテート系樹脂、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を含むものが好ましい。
水酸基含有化合物は、臭気発生を防ぐために、主骨格の脂肪族鎖に二重結合を有していないものや、水酸基が2個のものが好ましい。末端に水酸基を有するものが入手しやすいものが多いという点では好ましいが、末端に有する必要は無い。
本発明においては、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を、上記の有機基2の由来となる水酸基含有化合物として用いることができる。2種以上を用いる場合は、酸素吸収性化合物の同一分子内に2種が用いられていてもよく、異なる1種を有する酸素吸収性化合物の分子が混合されたものであってもよい。
水酸基含有化合物の数平均分子量は、500~10000が好ましく、750~5000がより好ましく、1000~3000がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲よりも小さいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、析出し易い。数平均分子量が上記範囲
よりも大きいと、樹脂や樹脂組成物に混合した場合に、混合物の粘度が高くなるために希釈溶剤を多量に含有する必要が生じ易く、厚いフィルムや層を得難く、塗工適性が悪化し易い。
【0029】
・多価アルコール類
多価アルコール類は水酸基を2個以上有するモノマーである。
多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、2,2’-オキシジエタノール等のジオール類や、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
上記の中でも、酸素吸収性の面からエチレングリコールが好ましい。
【0030】
・ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールは、2個以上の水酸基を有するポリオレフィン系樹脂である。
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、主骨格が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンであり、且つ水酸基を有するものが挙げられる。
これらの中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体、水添ポリイソプレンを主骨格としたものが、特に好ましい。
【0031】
・ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールは、2個以上の水酸基を有するポリエーテル系樹脂である。
ポリエーテルポリオールは、例えば、上記の多価アルコール類やポリオレフィンポリオールを脱水縮合させて得られ、主骨格にポリエーテル構造を有し、且つ水酸基を有する。
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリブチレンエーテルジオール等のポリアルキレンエーテルジオールや、グリセリン変性ポリエーテルポリオール類等が挙げられる。これらの中でも、ポリアルキレンエーテルジオールが好ましく、ポリプロピレンエーテルジオールが特に好ましい。
【0032】
・ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、2個以上の水酸基を有するポリエステル系樹脂である。
ポリエステルポリオールは、例えば、各種多価カルボン酸またはその誘導体と、上記の多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール等とのエステル化反応によって得られ、主骨格にポリエステル構造を有し、且つ水酸基を有する。
多価カルボン酸の具体例としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられ、これらの多価カルボン酸の誘導体としては、エステル化物、酸無水物、アシル化物等が挙げられる。
上記の中でも、結晶性を下げるため、2種類以上の多価アルコール類と、2種類以上の多価カルボン酸類を併用したポリエステルポリオールが好ましい。
【0033】
・ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールは、2個以上の水酸基を有するポリカーボネート系樹脂である。
ポリカーボネートは主骨格中にポリオール由来部を有するが、このポリオール由来部は、上記の多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等に由来するものであってもよい。
これらの中でも、結晶性を下げるため、2種類以上の多価アルコールを併用したポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0034】
・ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール
ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオールは、2個以上の水酸基を有する、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体である。
ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオールは、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレートや、1個の(メタ)アクリル酸またはその誘導体と1個のジオールとから合成された水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有モノマーを用いて、該水酸基含有モノマー同士で重合、または水酸基を有さない(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることによって得ることができる。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを合成する際のジオールには、上記のジオール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。
これらの中でも、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いたポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
【0035】
・フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂は、多価フェノール化合物と多価エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂であり、芳香族水酸基とエポキシ基とが反応した結合部に、脂肪族水酸基が生成した構造を有している。
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノール類とジグリシジルエーテル化ビスフェノール類とを反応させて得たものが入手しやすく一般的である。
多価フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF等が挙げられ、多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやビスフェノールFジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、ビスフェノールAを用いたフェノキシ樹脂が好ましい。
フェノキシ樹脂の末端は、芳香族水酸基であっても、エポキシ基であってもよい。
【0036】
・ウレタン鎖伸長ポリオール
ウレタン鎖伸長ポリオールは、上記の水酸基含有化合物を、ウレタン鎖によって伸長して得られた、2個以上の水酸基を有するポリオールである。
ウレタン鎖伸長ポリオールは、例えば、上記各種水酸基含有化合物を、上記のイソシアネート系化合物と重合反応させて、ウレタン鎖伸長して得ることができる。また、必要に応じて、ジアミン類やアミノアルコール類を併用して重合してもよい。
上記の中でも、両末端に水酸基を有する上記各種水酸基含有化合物とジイソシアネート系化合物とを反応させて得られるウレタン鎖伸長ポリオールが好ましい。
【0037】
(酸素吸収性化合物の具体例)
以下に、具体的な酸素吸収性化合物を例示する。
式(1)で示される3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンオールと、式(1-b)で示される3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンアミンと、式(1-c)で示される3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-1-オールは、1個の不飽和五員環と1個の有機基1と、1個の有機基1が活性水素を有する官能基として水
酸基またはアミノ基を有する酸素吸収性化合物の1例である。
【化6】
【化7】
【化8】
【0038】
式(2)で示される酸素吸収性化合物は、例えば、式(1)で示される酸素吸収性化合物の有機基1上の活性水素を有する官能基である水酸基と、有機基2の由来となるイソシアネート系化合物であるR1(NCO)aのイソシアネート基とが反応して、該水酸基の活性水素が置換されて、a個の不飽和五員環及び有機基1がR1を介して結合して得ることができる酸素吸収性化合物である。
【化9】
(式中、aは1以上の数であり、R1は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含み、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【0039】
式(5)で示される酸素吸収性化合物は、式(2)において、a=2であり、且つ、R1が、例えば、イソシアネート系化合物OCN-R4-NCOと、水酸基含有化合物HO-R5-OHとに由来し、両者が反応して生成した構造部を含む基である場合の、酸素吸収性化合物である。
【化10】
(式中、fは0以上の数であり、R4とR5の各々は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含む有機基であり、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【0040】
式(3)で示される酸素吸収性化合物は、式(2)において、例えば、R1がイソシアネート系化合物と水酸基含有化合物とに由来し、両者が反応して生成した構造部を含み、且つ、過剰分の水酸基が残留または化学的修飾によって水酸基を含む場合の、酸素吸収性化合物である。
【化11】
(式中、bとcの各々は1以上の数であり、R2は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含み、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【0041】
式(4)で示される酸素吸収性化合物は、式(2)において、例えば、R1がイソシアネート系化合物と水酸基含有化合物とに由来し、両者が反応して生成した構造部を含み、且つ、過剰分のイソシアネート基が残留または化学的修飾によってイソシアネート基を含む場合の、酸素吸収性化合物である。
【化12】
(式中、dとeの各々は1以上の数であり、R3は、炭素数1以上の有機基であり、少なくともアルキレンおよび/またはフェニレン構造を含み、さらに、多価アルコール類、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸エステルポリオール、フェノキシ樹脂、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールからなる群から選ばれる1種または2種以上に由来する構造を含むことができる。)
【0042】
[酸化促進触媒]
酸化促進触媒は、酸素吸収性化合物が酸素分子を吸収して酸化される作用を促進する化合物である。
酸化促進触媒としては、過酸化物や、遷移金属からなるカチオンを含む化合物が挙げられる。
該過酸化物の具体例としては、過酸化水素等が挙げられる。
遷移金属からなるカチオンを含む化合物は、遷移金属原子のカチオンまたは錯体を放出可能な遷移金属含有化合物と、脂肪酸からなるアニオンまたは配位子とからなる金属石鹸が好ましい。
遷移金属としては、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、等が好ましく、アニオンまたは配位子としては、ステアリン酸、ナフテン酸、オクチル酸、アセチルアセトナト等からなるアニオンまたは配位子が好ましい。
酸化促進触媒としては、上記の遷移金属からなる群から選ばれた1種又は2種以上の遷移金属からなるカチオンと、上記の長鎖脂肪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の脂肪酸からなるアニオンとを組み合わせて形成された金属石鹸を用いることができる。具体的な化合物としては、オクチル酸コバルト、アセチルアセトンコバルト(II)、アセチルアセトンコバルト(III)、アセチルアセトンマンガン(III)、アセチルアセトン鉄(III)等が挙げられる。
【0043】
[変性剤]
変性剤は、酸素吸収性化合物が官能基を有する場合に、酸素吸収性化合物と反応する官能基を有する化合物であり、各種の反応性のモノマーや樹脂を用いることができる。
変性剤を酸素吸収性コーティング剤組成物に含有することによって、酸素吸収性化合物を酸素吸収性コーティング剤組成物中の他の成分に結合させたり、酸素吸収性コーティング剤組成物中の酸素吸収性化合物の含有率を調節したり、酸素吸収性コーティング剤組成物の硬化物の硬さを調節したりすることができる。
【0044】
例えば、酸素吸収性化合物が水酸基またはイソシアネート基を有する場合には、イソシアネート系化合物および/または水酸基含有化合物からなる変性剤を用いることができる。
酸素吸収性コーティング剤組成物がウレタン系である場合には、酸素吸収性コーティング剤組成物の当量比NCO/OHは、0.5以上、8以下が好ましい。上記範囲よりも小さいと、酸素吸収性コーティング剤組成物の硬化が不十分になって、ブロッキングの発生や、下層との十分な接着強度が得られない虞があり、上記範囲よりも大きいと、酸素吸収性コーティング剤組成物のポットライフが短くなり過ぎる虞がある。
【0045】
(変性剤用のイソシアネート系化合物)
変性剤用のイソシアネート系化合物は、酸素吸収性化合物の合成時に用いられたイソシアネート系化合物を用いることができ、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、およびこれらのウレタン鎖伸長イソシアネートの何れも用いることができる。また、酸素吸収性コーティング剤組成物が硬化する為に、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。但し、酸素吸収性コーティング剤組成物の十分な効果を阻害しない範囲内で1分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物を併用することもできる。
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物としては、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体が特に好ましい。
【0046】
具体的なイソシアネート系化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、
ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、およびこれらのトリメチロールプロパンアダクトや、ビューレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体(三量体)、さらにはこれらの各種誘導体等が挙げられる。これらの中でも、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体が好ましい。
【0047】
(変性剤用の水酸基含有化合物)
変性剤用の水酸基含有化合物は、酸素吸収性化合物の合成時に用いられた水酸基含有化合物を用いることができ、芳香族水酸基含有化合物、脂肪族水酸基含有化合物、およびこれらのウレタン鎖伸長ポリオールの何れも用いることができる。また、酸素吸収性コーティング剤組成物が硬化する為に、1分子中に2個以上の水酸基を有するものが好ましい。但し、酸素吸収性コーティング剤組成物の十分な効果を阻害しない範囲内で1分子中に1個の水酸基を有する水酸基含有化合物を併用することもできる。
1分子中に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物としては、芳香族水酸基含有化合物、脂肪族水酸基含有化合物系の何れも使用でき、アルコール系であっても、フェノール系であってもよい。
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物としては、特に、ポリアルキレンエーテルジオール、ポリアルキレンエーテルジオールのウレタン鎖伸長ポリオールが特に好ましい。
【0048】
[希釈溶剤]
希釈溶剤は、酸素吸収性化合物と酸化促進触媒を均一に溶解または分散し、酸素吸収性コーティング剤組成物が均一になり、塗工適性があれば特に制限無く、例えばエステル系希釈溶剤、ケトン系希釈溶剤、炭化水素系希釈溶剤等を用いることができる。
エステル系希釈溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられ、ケトン系希釈溶剤の具体例としてはメチルエチルケトン等が挙げられ、炭化水素系希釈溶剤の具体例としてはトルエン等が挙げられる。これらの中でも、酢酸エチルが使い易く、好ましい。
【0049】
[各種添加剤]
酸素吸収性コーティング剤組成物は、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。
例えば、硬化促進剤、ポットライフを長くする為の硬化調整剤、酸素吸収性コーティング剤組成物の保管時や使用時および包装体に内容物を収容する以前での酸素吸収性低下を抑制する為の酸化防止剤、付着助剤、粘着性付与剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤、着色顔料や、体質顔料も添加できる。
【0050】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、酸素吸収性コーティング剤組成物の硬化反応を促進するものであれば特に制限無く用いることができる。
具体的な硬化促進剤としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなど金属含有化合物や、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、トリエタノールアミンのような3級アミンなどが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0051】
(硬化調整剤)
酸素吸収性コーティング剤組成物は、含有する酸化促進触媒によって、ポットライフが
短縮してしまう場合に、硬化調整剤を併用してポットライフを長くすることができる。
具体的な硬化調整剤としては、リン酸類が好ましく、例えば、正リン酸、メタリン酸、ポリリン酸やそれらのエステル誘導体が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
反応調整剤の添加量は、酸素吸収性コーティング剤組成物の樹脂成分に対して、200ppm以上、400ppm以下が好ましい。上記範囲よりも少ないとポットライフを長くする効果が得られ難く、上記範囲よりも多いと、酸素吸収性コーティング剤組成物の硬化を阻害してしまう虞がある。
【0052】
(酸化防止剤)
酸素吸収性コーティング剤組成物の保存時や使用時、さらには酸素吸収性コーティング剤組成物を用いて作製された包装体が内容物を収容する以前の工程において、酸素吸収性の劣化を抑制して、内容物収容後の酸素吸収性を高く保持するために、酸素吸収性コーティング剤組成物は、酸化防止剤を含むことができる。
具体的な酸化防止剤としては、フェノール系、ラクトン系、チオエーテル系、没食子酸系、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール、亜リン酸エステル、ヒンダードアミン、芳香族アミン系などが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
また、熱や光を酸素吸収性発現のトリガーとして用いることを想定した場合は、アスコルビン酸、トコフェロールなどの耐熱性、耐光性の低い酸化防止剤を用いることが好ましく、フェノール系などの高耐熱性、高耐光性の酸化防止剤を用いることは好ましくない。
酸化防止剤の添加量は、酸素吸収性化合物に対して10ppm以上、10000ppm以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、酸化防止効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多いと、酸素吸収性が低下してしまう虞がある。
【0053】
(付着助剤)
接着力を補助する為の付着助剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N-ブチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジアルコキシシランが挙げられ、アルコキシ基としてはメトキシ基またはエトキシ基が好ましく、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0054】
(粘着付与剤)
粘着付与剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ロジン、ロジングリセリンエステル、テルペン、アルキルフェノールなどが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0055】
(レベリング剤)
レベリング剤としては、アクリルポリマー系、変性シリコーン系、アセチレンジオール系などが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0056】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ヒンダードアミン系などが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0057】
(消泡剤)
消泡剤としては、界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0058】
(着色顔料)
着色顔料としては、アンスラキノン、ジケトピロロピロール、ペリレンマルーン、カーボンブラック、ジオキサジン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、フタロシアニン系、インダンスレンなどの有機系顔料や、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、アゾメチン銅錯体、酸化チタン、酸化ケイ素などの無機系顔料が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0059】
(体質顔料)
体質顔料とは、増量剤として用いられたり、着色力や光沢、強度、使用感などの調整剤として用いられたりする白色ないし無色の顔料である。
具体例としては、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、タルクなどの無機系顔料が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0060】
《酸素吸収性コーティング剤組成物の調製方法》
酸素吸収性コーティング剤組成物は、酸素吸収性化合物、酸化促進触媒、必要に応じて、さらに、変性剤、希釈溶剤、各種添加物等の全構成成分を混合することにより製造することができる。あるいは、酸素吸収性化合物、酸化促進触媒、そして、必要に応じて、さらに、変性剤、希釈溶剤、各種添加物等を、既存のコーティング剤組成物に混合することにより製造することができる。
上記の混合を行う方法や、各成分を混合する際の順序は、特に限定されず、一般的なコーティング剤組成物を調製する際の方法や混合順序を適用することができる。
具体的な混合方法としては、溶剤に溶解させて混合する方法や、溶融混錬する方法が挙げられる。この時、溶解性や分散性を上げるために加熱温度を調整することが好ましい。
【0061】
《酸素吸収性コーティング剤組成物の使用方法》
酸素吸収性コーティング剤組成物の使用方法には特に限定は無く、一般的なコーティング剤としての使用方法を適用できる。
例えば、ロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ディッピング法、刷毛法、バーコート法、アプリケータ法等の従来公知の手段により、1回あるいは複数回塗布して、コーティング層を形成することができる。
酸素吸収性コーティング剤組成物を用いてコーティング層を形成する際、その塗工量は、2~10g/m2が好ましく、3~7g/m2がより好ましい。上記範囲よりも少ないと十分な酸素吸収性が得られない虞が有り、上記範囲よりも多くても酸素吸収性はさほど変化せず、コストデメリットにつながる為、好ましくない。
【0062】
酸素吸収性コーティング剤組成物を用いてコーティング剤層を形成して得られた積層体は、通常、20℃以上、50℃以下で、2日間以上、5日間以下のエージングを施すことが好ましい。
尚、エージングする際は、積層体の酸素吸収性を低下させない為に、できるだけ低温、
または不活性ガス雰囲気下でエージングすることが好ましい。
作製された積層体を保管する際も、積層体の酸素吸収性を低下させない為に、10℃以下、または不活性ガス雰囲気下で保管することが好ましい。
【0063】
《コーティング可能な対象物について》
酸素吸収性コーティング剤組成物がコーティング可能な対象物については、特に限定はなく、例えば、樹脂成形品、樹脂フィルム、紙、金属、金属箔、無機蒸着膜面、無機酸化物蒸着膜面へのコーティングが可能である。
【0064】
樹脂フィルムの樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アセタール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0065】
紙の具体例としては、例えば、強サイズ性の晒または未晒の、紙層用の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、コート紙、加工紙、ミルク原紙等の紙基材、その他等が挙げられる。
金属箔の具体例としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等が挙げられる。
無機蒸着層の無機物の具体例としては、アルミニウムが挙げられる。
無機酸化物蒸着層の無機酸化物の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化インジウム錫、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化クロム等、窒化珪素、炭化珪素等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナが好ましい。
【0066】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例
【0067】
以下の実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
<原料>
実施例で用いた主な原料は下記の通りである。
・水酸基末端ポリイソプレン1:出光興産株式会社製、Poly ip。数平均分子量2500。
・ポリカーボネートジオール1:旭化成ケミカルズ株式会社製、デュラノール T5651。数平均分子量1000。
・酸素吸収性化合物1:3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-6-オール。
・酸化促進触媒溶液1:ホープ製薬株式会社製、オクトープAE。オクチル酸コバルト4%酢酸エチル溶液。
・酸化促進触媒溶液2:ホープ製薬株式会社製、アセトープMn(III)。酸化促進触媒であるアセチルアセトンマンガン(III)の10%酢酸エチル溶液。
・塗料1:ロックペイント株式会社製特殊変性ポリエステル樹脂塗料、プロタッチ ホワイト077-0204。固形分49.5質量%。
・塗料2:ロックペイント株式会社製アクリルシリコン樹脂塗料、クリスタルロック UVガードクリヤー、159-0150。固形分47.2質量%。
・PETフィルム1:東洋紡株式会社製、E5100。
【0069】
<原料の溶液調製>
(ポリオール1の合成とポリオール溶液1の調製)
窒素導入管、撹拌機、精留塔、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合反応を進行させた。
エチレングリコール 70.0質量部
ネオペンチルグリコール 140.0質量部
1,6-ヘキサンジオール 190.0質量部
イソフタル酸 300.0質量部
テレフタル酸 300.0質量部
反応液固形分の酸価が15mgKOH/gになったところで、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進行させた。
反応液固形分の酸価が10mgKOH/g以下になったこところで、内圧を30Torrに減圧して引き続き反応を進行させた。
反応液固形分の酸価が0.1mgKOH/g以下になったところで、反応を終了させて、室温まで冷却して、ポリオール1を得た。
得られたポリエステルポリオールであるポリオール1の数平均分子量は8000であった。
次いで、ポリオール1を酢酸エチルに溶解して、固形分60質量%に調製して、ポリオール溶液1を得た。
【0070】
(ポリオール2の合成とポリオール溶液2の調製)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を仕込み、撹拌しながら加熱し、6時間還流反応を行った。
ポリカーボネートジオール1 100.0質量部
1,6-ヘキサンジオール 50.1質量部
イソホロンジイソシアネート 118.5質量部
酢酸エチル 138.0質量部
赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が完全に消失していることを確認し合成を終了させ、冷却して、ポリオール2を得た。
得られたウレタン鎖伸長ポリエステル・ポリカーボネートポリオールであるポリオール2の数平均分子量は8000であった。
次いで、ポリオール2を酢酸エチルに溶解して、固形分60質量%に調製して、ポリオール溶液2を得た。
【0071】
(ポリオール3の合成とポリオール溶液3の調製)
窒素導入管、撹拌機、精留塔、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温180~200℃で脱水縮合反応を進行させた。
エチレングリコール 70.0質量部
ネオペンチルグリコール 140.0質量部
1,6-ヘキサンジオール 190.0質量部
イソフタル酸 300.0質量部
テレフタル酸 300.0質量部
反応液固形分の酸価が15mgKOH/gになったところで、窒素を吹き込みながら、200~240℃でさらに脱水反応を進行させた。
反応液固形分の酸価が10mgKOH/g以下になったこところで、内圧を30Torrに減圧して引き続き反応を進行させた。
反応液固形分の酸価3mgKOH/g以下になったところで、反応を終了させて、反応を終了させて、室温まで冷却して、ポリオール3を得た。
得られたポリエステルポリオールであるポリオール3の数平均分子量は2000であった。
次いで、ポリオール3を酢酸エチルに溶解して、固形分60質量%に調製して、ポリオール溶液3を得た。
【0072】
(ポリイソシアネート溶液1の調製)
窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加えて撹拌し、固形分60質量%のポリイソシアネート溶液1を得た。
ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体 100.0質量部
酢酸エチル 66.7質量部
【0073】
【表1】
【0074】
<酸素吸収性化合物の合成と酸素吸収性化合物溶液の調製>
[酸素吸収性化合物2]
先ず、窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温80~90℃で8時間反応を行った。
酸素吸収性化合物1 100.0質量部
イソホロンジイソシアネート 74.0質量部
赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が完全に消失していることを確認して合成を終了させ、冷却して、酸素吸収性化合物2を得た。
そして、酸素吸収性化合物2を酢酸エチルに溶解して固形分80質量%の、酸素吸収性化合物溶液2を調製した。
【0075】
[酸素吸収性化合物3]
先ず、窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温80~90℃で8時間反応を行った。
酸素吸収性化合物1 100.0質量部
ポリイソシアネート溶液1 212.5質量部
アミン当量法による反応液固形分中のNCO基の含有量がほぼ0.64質量%になったことを確認して合成を終了させ、冷却して、溶媒を除去して、酸素吸収性化合物3を得た

そして、酸素吸収性化合物3を酢酸エチルに溶解して固形分60質量%の、酸素吸収性化合物溶液3を調製した。
【0076】
[酸素吸収性化合物4]
先ず、窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温80~90℃で8時間反応を行った。
酸素吸収性化合物1 100.0質量部
ポリオール溶液1 2000.0質量部
イソホロンジイソシアネート 111.2質量部
赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が完全に消失していることを確認して合成を終了させ、冷却して、溶媒を除去して、酸素吸収性化合物4を得た。
そして、酸素吸収性化合物4を酢酸エチルに溶解して固形分60質量%の、酸素吸収性化合物溶液4を調製した。
【0077】
[酸素吸収性化合物5](ポリオール以外NP-2497酸素吸収性化合物4と同様)
先ず、窒素導入管、撹拌機、コンデンサーを備えたフラスコに、下記原料を加え、撹拌しながら内温80~90℃で8時間反応を行った。
酸素吸収性化合物1 100.0質量部
ポリオール溶液3 682.3質量部
ポリイソシアネート溶液1 265.6質量部
赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が完全に消失していることを確認して合成を終了させ、冷却して、溶媒を除去して、酸素吸収性化合物5を得た。
そして、酸素吸収性化合物5を酢酸エチルに溶解して固形分60質量%の、酸素吸収性化合物溶液5を調製した。
【0078】
酸素吸収性化合物2~5を合成した際の反応液の仕込み組成を表2にまとめた。
また、酸素吸収性化合物溶液2~5の仕込み組成を表3にまとめた。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
<酸素吸収性コーティング剤組成物の調製と評価>
[実施例1]
下記原料を室温で混合し、酸素吸収性コーティング剤組成物を得て、各種評価を実施した。
酸素吸収性化合物溶液2 100.0質量部
塗料1 192.0質量部
酸化促進触媒溶液1 1.1質量部
【0082】
[実施例2~9、比較例1]
表の配合に従って、実施例1と同様に操作して酸素吸収性コーティング剤組成物を得て、同様に各種評価を実施した。但し、実施例8と9においては、塗布乾燥後に40℃72時間のエージングを行った。評価結果を表4、5に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
[結果まとめ]
本発明の全実施例の酸素吸収性コーティング剤組成物は、優れた酸素吸収性と耐ブロッキング性と低臭気性のバランスを示した。
一方、本発明とは異なる酸素吸収性化合物を用いて調製した比較例1のコーティング剤組成物は、強い臭気を示した。
【0086】
<評価方法>
[試験用フィルムの作製]
酸素吸収性コーティング剤組成物を、バーコーターにて乾燥塗布量が5.0g/m2になるように、PETフィルム1に塗布および乾燥し、100mm×100mmの試験用フィルムを得た。
【0087】
[酸素吸収量]
内容量106ccのガラス瓶の内部に、酸素センサーチップ(Precision Sensing社製非破壊酸素センサーチップ)と上記で作製した試験用フィルムを封入した。
そして、封入直後と、25℃の恒温槽にて保管14日後の酸素濃度を測定し、試験用フィルムの酸素吸収量を算出した。酸素濃度は、Presence社製非破壊酸素濃度測定計(FIBOX4 OXYGEN METER)を用いて測定した。
【0088】
[臭気官能評価]
上記の酸素吸収量の測定後に、ガラス瓶内部の空気について、下記の評価基準に従って臭気を官能評価した。
評価基準:
0:無臭
1:かすかな臭気
2:弱い臭い
3:中程度の臭い
4:強い臭い
【0089】
[耐ブロッキング性評価]
2枚の試験用フィルムを用意し、塗布面と非塗布面を重ねて、テスター産業株式会社製
永久歪試験機(定荷重式)を用いて115Nの荷重をかけて40℃で1日静置し、2枚の試験用フィルム間のブロッキングの有無を確認した。
評価基準:
○:ブロッキング無し
×:ブロッキング有り
【符号の説明】
【0090】
1 積層体
2 コーティング層
3 基材層
図1