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特許7540661化合物、並びにそれを用いた発光材料、光学材料及び光電変換材料
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  • 特許-化合物、並びにそれを用いた発光材料、光学材料及び光電変換材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】化合物、並びにそれを用いた発光材料、光学材料及び光電変換材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20240820BHJP
   C07D 513/04 20060101ALI20240820BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240820BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240820BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240820BHJP
   C07D 285/08 20060101ALI20240820BHJP
   C07D 417/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
C07D513/04 301
C09K11/06 655
G02B5/20
H05B33/14 B
C07D285/08
C07D417/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119572
(22)【出願日】2020-07-11
(65)【公開番号】P2022016207
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】辻 勇人
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110317210(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109485635(CN,A)
【文献】特開2014-058516(JP,A)
【文献】Angew. Chem. Int. Ed. ,2020年,59,12674-12679
【文献】Dyes and Pigments,2019年,165,18-24
【文献】Macromolecules,2018年,51,2961-2968
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3a)又は(3b)で表す化合物。
【化1】
(上記一般式(3a)中、Aは、下記(A1)~(A3)のいずれかから選択され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。上記一般式(3b)中、A’は、下記(A1’)で表され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【化2】
(上記(A1)~(A3)において、ベンゼン環又はナフタレン環から延びる二本の直線は、結合手を意味する。)
【化3】
(上記(A1’)において、チアゾール環から延びる直線は、結合手を意味する。)
【請求項2】
下記一般式(4a)又は(4b)で表す請求項1記載の化合物。
【化4】
(上記一般式(4a)中、Aは、下記(A1)~(A3)のいずれかから選択され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。上記一般式(4b)中、A’は、下記(A1’)で表され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【化5】
(上記(A1)~(A3)において、ベンゼン環又はナフタレン環から延びる二本の直線は、結合手を意味する。)
【化6】
(上記(A1’)において、チアゾール環から延びる直線は、結合手を意味する。)
【請求項3】
請求項1又は2記載の化合物からなる発光材料。
【請求項4】
請求項1又は2記載の化合物からなる光学材料。
【請求項5】
請求項1又は2記載の化合物を含む光電変換材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、並びにそれを用いた発光材料、光学材料及び光電変換材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光材料は、スマートデバイスにおける表示部を構成するOLED(Organic Light Emmiting Diode)の発光素子や、各種のイメージング用途に用いられつつある。このような発光材料は、蛍光色素と呼ばれる分子で構成され、その分子が電場や紫外線等の作用により励起状態となり、次いで基底状態に戻る際に特定波長の光を発する。このため、光の三原色等のように様々な波長の発光に対応すべく、有機発光材料における分子設計ではπ共役系の長さや、電子供与基(ドナー)や電子受容基(アクセプタ)の選択や配置等といった分子設計が重要になる。また、こうした分子は、電場が印加された場合には高度な酸化又は還元環境に曝されたり、用途によっては高温状態に曝されたりするため、化学的な安定性も求められる。さらには、こうした分子には、発光材料としての有用性を高めるために、高い量子収率も求められる。
【0003】
こうした課題を解決するため、非特許文献1には、炭素架橋型p-フェニレンビニレンの重合体が本発明者らにより提案されている。この重合体では、繰り返し単位である炭素架橋型p-フェニレンビニレンユニットが長い共役系を備えたドナーとして機能し、必要に応じてこれにアクセプタとなる基を結合させることで様々な波長の可視光を発光する。また、この重合体では、p-フェニレンビニレンユニットにおける炭素架橋が分子内回転を抑制して量子収率の向上に寄与し、π共役系の上方と下方にせり出した嵩高い置換基がπ共役系に対する分子種の攻撃を抑制して色素分子の化学的安定性ならびに熱安定性を高めるとされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Hiroki Nishioka, Hayato Tsuji, and Eiichi Nakamura, Macromolecules, 2018, 51, 2961-2968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載された重合体は、確かに発光材料として優秀なものだが、重合体であるがゆえに結晶性に乏しく、レーザー媒質や非線形光学材料等としての用途に制限があった。本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、重合体のような長い共役系を持たない低分子量の化合物であっても、様々な波長の可視光を発光することの可能な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、単独の又は複数連結した炭素架橋型フェニレンビニレンをドナー部位(D)とし、1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる置換基をアクセプタ部位(A)としたとき、D-A-D、又はA-D-Aのように置換基群を結合させた化合物によれば、非特許文献1に記載される重合体のように大きなπ共役系を備えなくとも、可視光領域に様々な波長の蛍光を良好な量子収率で発し得ることを見出した。本発明は、以上のような知見をもとになされたものであり、次のようなものを提供する。
【0008】
(1)本発明は、下記一般式(3a)又は(3b)で表す化合物である。
【化1】
(上記一般式(3a)中、Aは、下記(A1)~(A3)のいずれかから選択され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。上記一般式(3b)中、A’は、下記(A1’)で表され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【化2】
(上記(A1)~(A3)において、ベンゼン環又はナフタレン環から延びる二本の直線は、結合手を意味する。)
【化3】
(上記(A1’)において、チアゾール環から延びる直線は、結合手を意味する。)
【0009】
(2)また本発明は、下記一般式(4a)又は(4b)で表す(1)項記載の化合物である。
【化4】
(上記一般式(4a)中、Aは、下記(A1)~(A3)のいずれかから選択され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。上記一般式(4b)中、A’は、下記(A1’)で表され、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【化5】
(上記(A1)~(A3)において、ベンゼン環又はナフタレン環から延びる二本の直線は、結合手を意味する。)
【化6】
(上記(A1’)において、チアゾール環から延びる直線は、結合手を意味する。)
【0013】
(3)また本発明は、(1)項又は(2)項記載の化合物からなる発光材料である。
【0014】
(4)また本発明は、(1)項又は(2)項記載の化合物からなる光学材料である。
【0015】
(5)また本発明は、(1)項又は(2)項記載の化合物を含む光電変換材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、重合体のような長い共役系を持たない低分子量の化合物であっても、様々な波長の可視光を発光することの可能な化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、化合物1~3、及び6のそれぞれについての吸収スペクトル及び蛍光スペクトルである。
図2図2は、化合物4及び5のそれぞれについての吸収スペクトル及び蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の化合物、発光材料、光学材料及び光電変換材料のそれぞれについての一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
[化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表す化合物である。この化合物は、電子供与基(ドナー;D)と電子受容基(アクセプタ;A)とが交互に結合し、A-D-A型又はD-A-D型の構造を備える。この化合物においてドナーであるDは、下記一般式(2)で表すように繰り返し単位を備え、フェニレンビニレン骨格が連続した共役構造を有する。このフェニレンビニレン骨格は、ビニレン部分において5員環を形成するように炭素原子で架橋され、この架橋によってビニレン部分の自由回転が制限されている。その結果、共役系のねじれが抑制され、高い発光効率(すなわち量子収率)が実現される。また、上記の架橋を行っている炭素原子には嵩高い置換基(R)が結合しており、この置換基が共役系の上方と下方にせり出して共役系を覆うため、共役系に対する化学種の攻撃を抑制する。これにより、本発明の化合物は、高度な熱安定性と化学的安定性を示す。
【0020】
本発明の化合物では、上記のドナー部分から構成される共役系を両端から挟む(A-D-A)ように、又はこの共役系の途中(D-A-D)に、アクセプタを備える。このアクセプタが共役系の一部として取り込まれることで、より長波長の発光を示すようになる。
【0021】
【化7】
【0022】
上記一般式(1)において、m及びnは、互いに一方が1であり他方が0であることを条件に、1又は0である。つまり、上記一般式(1)で表す化合物は、既に説明したように、A-D-A型又はD-A-D型の構造を備える。
【0023】
上記一般式(1)において、ドナーである各Dは、それぞれ独立に、下記一般式(2)で表す構造である。
【0024】
【化8】
【0025】
上記一般式(2)において、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基である。鎖中にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖としては、アルキル基、ポリオキシエチレン基等を挙げることができる。置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、アルキルフェニル基等を挙げることができ、アルキルフェニル基の中でも、4-オクチルフェニル基が好ましく例示される。
【0026】
各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、カルバゾリル基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成する。Xは、フェニレンビニレン部分のフェニレン基又は末端のベンゾ縮環位上への修飾基であり、フェニレンビニレン基の繰り返しの途中のフェニレン部分に結合してもよいし、その繰り返しの末端のベンゾ縮環位上に結合してもよい。特に、D-A-D構造をとる場合、末端のベンゾ縮環位上にカルバゾリル基のように励起した時に分極しやすい置換基を結合させることにより、遷移双極子モーメントが大きくなり発光効率が高くなることが期待できる。なお、複数のXが互いに結合して環構造を形成する場合、このような環構造としては、置換基を有してもよい脂肪環又は芳香環が挙げられる。各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。
【0027】
各Yは、それぞれ独立に、水素原子、又は後述するAへの結合である。つまり、本発明の化合物がA-D-A型の構造をとるならば、一般式(2)で表すDの両端に存在するYは、Aへの結合になり、本発明の化合物がD-A-D型の構造をとるならば、化合物の両端に存在するYは、水素原子となる。なお、上記一般式(2)において、Yは、繰り返し単位の外側にあり、一般式(2)で表すユニットの両端のみに存在することになる。
【0028】
pは、1~10の整数であり、好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1~2の整数である。pは、フェニレンビニレンユニットの繰返し回数を表し、これが大きくなれば共役系の拡張により発光の長波長シフトが期待できるが、その一方で、共役系の拡張に伴う発光の長波長シフトは、共役系の拡張があるレベルを超えると飽和し、また、分子が大きくなりすぎると、結晶の単位体積当たりの発光密度が低下する傾向となる。そのため、pは、大きければ大きい程良いというものでもない。
【0029】
上記一般式(1)において、各Aは、それぞれ独立に、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる置換基である。上述の通り、Aは、電子受容基(アクセプタ)であり、LUMOのエネルギー準位の低い置換基となる。そのため、本発明では、Aが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなるものをアクセプタとして用いる。なお、「Aが1つの化合物として存在したとき」とは、置換基であるAに水素原子を結合させ1つの化合物としたとき、との意味である。より好ましくは、Aは、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが-5~-2eVとなる置換基、チアゾール基、及びベンゾチアゾール基からなる群より選択される。
【0030】
Aとしては、sp混成軌道を備えた窒素原子を含む芳香族基が好ましく挙げられる。このようなAとしては、1価であれば、ベンゾチアジアゾリル基、ナフトビスチアジアゾリル基、ベンゾビスチアジアゾリル基、キノキサリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾ[a,j]フェナジニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基、オキサゾリル基等が好ましく例示され、2価であれば、ベンゾチアゾリレン基、ナフトビスチアジアゾリレン基、ベンゾビスチアジアゾリレン基、キノキサリレン基、チアゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基、ジベンゾ[a,j]フェナジニレン基、ピリジレン基、ピリダジニレン基、ピラジレン基、ピリミジレン基、トリアジレン基、オキサゾリレン基等が好ましく例示される。
【0031】
これら例示した置換基が1つの化合物として独立して存在したときのHOMO及びLUMOのエネルギー準位の計算値を表1に示す。これらのエネルギー準位の計算値は、B3LYP/6-31Gで最適化された構造について求めたものである。
【0032】
【表1】
【0033】
より具体的には、上記一般式(1)で表す化合物として、下記一般式(3a)又は(3b)で表すものを挙げることができる。
【0034】
【化9】
【0035】
上記一般式(3a)中、Aは、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる2価の置換基であり、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。これらについては、上記一般式(1)及び(2)について説明したものと同様なので、ここでの説明を省略する。なお、上記一般式(3a)で表す化合物は、D-A-D型の構造を備える。
【0036】
上記一般式(3b)中、各A’は、それぞれ独立に、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる置換基であり、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。
【0037】
上記一般式(3b)において、A’は、上記一般式(1)について説明したAと同様である。なお、A’は、1価の置換基となる。その他の各事項、すなわち、R、X、p及びqは、上記一般式(2)について説明したものと同様なので、ここでの説明を省略する。なお、上記一般式(3b)で表す化合物は、A-D-A型の構造を備える。
【0038】
より具体的には、上記一般式(1)で表す化合物として、下記一般式(4a)又は(4b)で表すものを挙げることができる。なお、下記一般式(4a)で表す化合物は、上記一般式(3a)で表す化合物に対応し、下記一般式(4b)で表す化合物は、上記一般式(3b)で表す化合物に対応する。一般式(4a)及び(4b)で表す構造は、フェニレンビニレン部分が、p-フェニレンビニレン構造であると特定したものになる。
【0039】
【化10】
【0040】
上記一般式(4a)中、Aは、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる置換基であり、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、各pは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。これらについては、上記一般式(1)及び(2)について説明したものと同様なので、ここでの説明を省略する。なお、上記一般式(4a)で表す化合物は、D-A-D型の構造を備える。
【0041】
上記一般式(4b)中、各A’は、それぞれ独立に、それが1つの化合物として独立で存在したときにLUMOが0~-5eVとなる置換基であり、各Rは、それぞれ独立に、鎖中にヘテロ原子や分岐を含んでもよい炭素数1~30の炭素鎖、又は置換基を有してもよいアリール基であり、各Xは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、若しくは置換基を有してもよいエチニル基、又は複数のXが互いに結合して環構造を形成し、pは、1~10の整数であり、各qは、それぞれ独立に、0~3の整数である。これらについては、上記一般式(1)、(2)及び(3b)について説明したものと同様なので、ここでの説明を省略する。なお、上記一般式(4b)で表す化合物は、A-D-A型の構造を備える。
【0042】
上記一般式(3a)及び(4a)におけるAとして、下記化学式(A1)~(A4)のいずれかから選択されるものを好ましく例示できる。なお、Aは、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化11】
【0044】
また、上記一般式(3b)及び(4b)におけるA’として、下記化学式(A1’)で表すものを好ましく例示できる。なお、A’は、これに限定されるものではない。
【0045】
【化12】
【0046】
次に、本発明の化合物の合成方法の一例について説明する。なお、この説明では、一例として、下記のスキームに示した本発明に係る化合物1~4、及び比較化合物5の合成経路について述べるが、本発明は化合物1~4に限定されるものではないし、本発明の化合物を他の合成方経路により合成してもよい。なお、下記の合成スキームに記載した化合物10は、特開2011-32197号公報に記載の方法に従って合成したものを用いることができる。また、下記の合成スキームにおいて、Phは、無置換のフェニル基を意味し、Arは、4-オクチルフェニル基を意味する。
【0047】
まずは、本発明における架橋フェニレンビニレン構造の表記について説明する。既に説明したように、本発明の化合物は、一般式(2)に表すように、架橋フェニレンビニレン構造を繰り返し単位として備える。ここでp個の繰り返し構造を有する架橋フェニレンビニレン構造をCOPVpと呼ぶ。具体的には、下記に示す通りである。なお、COPVとは、carbon-bridged oigo(phenylenevinylene)の略である。
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
【化17】
【0053】
【化18】
【0054】
上記の合成スキームに示す通り、特開2011-32197号公報の記載に従って合成された化合物10を出発として、両端がブロモ化された化合物11を得て、これにピナコールで保護されたボロン酸基を導入した化合物12を得る。化合物11及び12は、いずれも本発明の化合物を得るための中間体である。化合物11にカルバゾリル基を導入して化合物13を得た後、ピナコールで保護された2つのボロン酸基を有するベンゾチアジアゾールを鈴木-宮浦カップリング反応により化合物13と反応させることで、アクセプタであるベンゾチアジアゾリレン基が導入されD-A-D型構造を有する化合物1(Cz-COPV2-BTz-COPV2-Cz)が得られる。同様に、ピナコールで保護された2つのボロン酸基を有するナフトビスチアジアゾールを鈴木-宮浦カップリング反応により化合物13と反応させることで、アクセプタであるナフトビスチアジアゾリレン基が導入されたD-A-D構造を有する化合物2(Cz-COPV2-NTz-COPV2-Cz)が得られる。さらに同様に、特開2011-32197号公報の記載に従って合成された化合物10を出発として、一端がブロモ化された化合物14を得て、これにピナコールで保護されたボロン酸基を一つだけ導入した化合物16を得る。この化合物16に、2つのブロモ基を備えたベンゾチアジアゾールを鈴木-宮浦カップリング反応させることで、アクセプタであるベンゾチアジアゾリレン基が導入されたD-A-D型構造を有する化合物3(COPV2-BTz-COPV2)が得られる。上記化合物13をトリメチルスタンニル化し、ジブロモベンゾビスチアジアゾールと小杉-右田-Stilleカップリング反応させることで、D-A-D構造を有する化合物6(Cz-COPV2-BBTz-COPV2-Cz)が得られる。
【0055】
一方、化合物12と2-ブロモチアゾールとを鈴木-宮浦カップリング反応させることで、アクセプタであるチアゾリル基が両端に導入されたA-D-A型構造を有する化合物4(Tz-COPV2-Tz)が得られる。この反応にて副生成物として得られる、分子の一端だけチアゾリル基の導入された化合物15を鈴木-宮浦カップリング反応によりN,N-ジメチル-4-ブロモアニリンと反応させることで、ドナーである4-ジメチルアミノフェニル基が導入されたA-D-D型構造を有する化合物5(Tz-COPV2-NMe)が得られる。化合物5は、A-D-A型でもD-A-D型でもない構造を有し、本発明の化合物とはならない。
【0056】
以上で説明した本発明の化合物は、高い発光効率を示し、アクセプタを選ぶことで、緑、赤、近赤外といった長波長側の光を発することも可能である。このため、本発明の化合物は、例えばレーザー媒体や各種イメージングに有用な発光材料としての用途や、例えば非線形光学効果を示す光学材料への用途が期待される。また、本発明の化合物は、分子内にドナー及びアクセプタを備えることから、それ自体が太陽電池における薄膜又はバルクへテロジャンクション型の活性層として活用できるほか、酸化チタン等と組み合わせて色素増感型太陽電池における活性層へ適用も可能である。
【0057】
[発光材料]
上記本発明の化合物からなる発光材料もまた、本発明の一つである。これについては、上記本発明の化合物の説明にて既に述べた通りなので、ここでの説明を省略する。
【0058】
[光学材料]
上記本発明の化合物からなる光学材料もまた、本発明の一つである。上記のように、本発明の化合物は、ドナー部位とアクセプタ部位とを備えるため、強い光の照射を受けたり、強力な電場に置かれたりすることで励起したときに、高度に分極することが可能である。このため、本発明の化合物は、有機非線形光学材料としても有用である。
【0059】
[光電変換材料]
上記本発明の化合物を含む光電変換材料もまた本発明の一つである。本発明の化合物は、分子内にドナー部位とアクセプタ部位とを併せ持つため、それ自体が薄膜又はバルクへテロジャンクション型の光電変換材料となるほか、これを増感剤として酸化チタン等と組み合わせることでも良好な光電変換材料となる。この光電変換材料は、太陽電池の活性層として有用である。
【実施例
【0060】
以下、実施例を示すことで本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の化学式において、化合物番号は、上記の合成スキームにおけるものと共通である。また、以下の化学式において、Phは、無置換のフェニル基を意味し、Arは、4-オクチルフェニル基を意味する。
【0061】
・化合物11の合成
【化19】
【0062】
特開2011-32197号公報に記載の方法に従って合成された化合物10(0.282g、0.203mmol)及びCuBr/Al(0.82g、1.22mmol)の四塩化炭素混合液(14mL)を85℃で12時間加熱した。室温まで冷却し、硫酸水素ナトリウムの水溶液を加えて急冷し、ジクロロメタンを用いて短経路(short path)シリカゲルカラムに通した。溶媒を留去し、残渣をメタノール及びn-ヘキサンで洗浄し、黄色固体の化合物11を得た(収量0.281g、収率90%)。
【0063】
H-NMR(500MHz,CDCl):δ 0.88(t,J=6.3Hz,12H),1.27-1.30(m,40H),1.50-1.55(m,8H),2.49(t,J=8.0Hz,8H),6.95(d,J=8.0Hz,8H),6.99(d,J=8.0Hz,2H),7.06(d,J=8.6Hz,8H),7.15-7.23(m,22H),7.25(s,2H),7.50(d,J=1.8Hz,2H)
MS(APCI):1542.9
【0064】
・化合物12の合成
【化20】
【0065】
化合物11(1.36g、0.80mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.03g、4.1mmol)、PdCl(dppf)・CHCl(72.3mg、0.089mmol)及び酢酸カリウム(813mg、8.3mmol)の1,4-ジオキサン溶液(16mL)を80℃で22時間撹拌した。反応混合物に蒸留水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=9:1、4:1、その後2:1)で精製し、ジクロロメタン及びメタノールで再沈殿することで、黄色固体の化合物12を得た(収量671mg、収率41%)。
【0066】
H-NMR(500MHz,CDCl):δ 7.82(s,2H),7.59(d,J=8.0Hz,2H),7.27(s,2H),7.20-7.14(m,22H),7.10(d,J=8.6Hz,8H),6.92(d,J=8.0Hz,8H),2.48(t,J=7.7Hz,8H),1.55-1.52(m,8H),1.31-1.25(m,64H),0.88(t,J=6.9Hz,12H)
TOF HRMS (APCI):1641.0798
【0067】
・化合物13の合成
【化21】
【0068】
化合物11(3.03g、1.96mmol)、カルバゾール(487mg、2.91mmol)及びナトリウムtert-ブトキシド(474mg、4.93mmol)のトルエン溶液(100mL)に、アルゴン雰囲気下、Pd(dba)(46.6mg、0.0509mmol)及びトリtert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(28.8mg、0.0993mmol)を添加した。得られた混合物を120℃で5時間撹拌し、室温まで冷却した。反応混合物をクロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n-ヘキサン=1:4)で精製し、黄色固体の化合物13を得た(収量848mg、収率27%)。
【0069】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.85-0.91(m,12H),1.24-1.36(m,40H),1.51-1.58(m,8H),2.48-2.53(m,8H),6.95-7.01(m,9H),7.08-7.15(m,9H),7.20-7.34(m,30H),7.52(d,J=1.8Hz,1H),7.62(s,1H),8.08(d,J=7.7Hz,2H)
【0070】
・化合物1の合成
【化22】
【0071】
化合物13(16.0mg、9.80μmol)、4,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(2.1mg、5.41μmol)及びPd(PPh(4.5mg、3.89μmol)を1,4-ジオキサン(0.6mL)及び2M炭酸カリウム水溶液(0.4mL)に混合し、アルゴン雰囲気下、110℃で19時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、クロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n-ヘキサン=1:2)で精製し、さらに、溶出液をクロロホルムとしたGPCにより精製することで、橙色固体の化合物1を得た(収量2.7mg、収率15%)。
【0072】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.85-0.88(m,24H),1.23-1.35(m,80H),1.50-1.59(m,16H),2.48-2.53(m,16H),6.95-6.98(m,16H),7.15-7.36(m,78H),7.54(s,2H),7.63(s,2H),7.80(d,J=8.7Hz,2H),7.90(s,2H),8.08(d,J=7.8Hz,4H)
MALDI-TOF MS (M):3236.56
【0073】
・化合物2の合成
【化23】
【0074】
化合物13(50.4mg、30.9μmol)、5,10-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス([1,2,5]チアジアゾール)(7.6mg、15.3μmol)及びPd(PPh(16.6mg、14.4μmol)を、トルエン(1.1mL)及び蒸留水(0.7mL)にAliquat(登録商標)336(3滴)を添加したものに混合し、アルゴン雰囲気下、110℃で6時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、クロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n-ヘキサン=1:2)で精製し、さらに、溶出液をクロロホルムとしたGPCにより精製することで、赤色固体の化合物2を得た(収量12.8mg、収率25%)。
【0075】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.84-0.88(m,24H),1.24-1.36(m,80H),1.51-1.59(m,16H),2.52(t,J=7.3Hz,16H),6.97-7.01(m,16H),7.17(d,J=8.2Hz,8H),7.21-7.38(m,70H),7.64(s,2H),7.93(d,J=9.2Hz,2H),8.08(d,J=7.8Hz,4H),8.18(s,2H),8.85(s,2H)
MALDI-TOF MS (M):3344.63
【0076】
・化合物16の合成
【化24】
【0077】
特開2011-32197号公報に記載の方法に従って合成された化合物10(2.00g、1.44mmol)及びCuBr/Al(2.90g、4.32mmol)の四塩化炭素混合液(120mL)を85℃で25時間加熱した。室温まで冷却し、反応混合物をクロロホルムで希釈してからCelite(登録商標)545の短経路(short path)カラムに通した。溶媒を留去することで、化合物14、上記化合物11及び出発物質である化合物10の混合物を得た。この混合物に、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.86g、7.33mmol)、PdCl(dppf)・CHCl(131mg、0.160mmol)、酢酸カリウム(1.43g、14.6mmol)及び1,4-ジオキサン(100mL)を加え、80℃で14時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物をクロロホルムで希釈してからCelite(登録商標)545の短経路(short path)カラムに通した。溶媒を留去した後に残った残渣を蒸留水に加え、クロロホルムで3回抽出した。有機相を集めて無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:n-ヘキサン=1:1)で精製することで、黄色固体の化合物16を得た(843mg、収率33%)。
【0078】
H-NMR(600MHz,CDCl):δ 0.87-0.89(m,12H),1.24-1.34(m,52H),1.50-1.57(m,8H),2.48(t,J=7.9Hz,8H),6.92(d,J=8.3Hz,8H),7.05-7.11(m,10H),7.14-7.23(m,23H),7.26(s,1H),7.29(s,1H),7.40(d,J=6.9Hz,1H),7.59(d,J=7.6Hz,1H),7.82(s,1H)
【0079】
・化合物3の合成
【化25】
【0080】
化合物16(19.6mg、12.9μmol)、4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(4.5mg、15.3μmol)及びPd(PPh(3.8mg、3.29μmol)をトルエン(0.6mL)及び2M炭酸カリウム水溶液(0.4mL)に混合し、アルゴン雰囲気下、110℃で22時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、クロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。溶出液をクロロホルムとして残渣をGPCで精製することで、橙色固体の化合物3(収量2.4mg、収率5%)を得た。
【0081】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.84-0.89(m,24H),1.25-1.30(m,80H),1.52-1.57(m,16H),2.46-2.51(m,16H),6.93(d,J=7.8Hz,16H),7.04-7.11(m,12H),7.16-7.32(m,56H),7.41(d,J=6.9Hz,2H),7.53(s,2H),7.79(dd,J=8.2andJ=1.4Hz,2H),7.88(d,J=1.4Hz,2H)
MALDI-TOF MS (M):2906.51
【0082】
・化合物17の合成
【化26】
【0083】
化合物13(51.1mg、31.3μmol)、ヘキサメチルジスタンナン(29.5mg、90.0μmol)及びPd(PPh(5.7mg、4.93μmol)をトルエン(1.0mL)に混合し、マイクロウェーブリアクターを用いて150℃(300W)にて15分間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:n-ヘキサン=1:5)で精製することで、化合物17(NMRによる収率28%)及びCz-COPV2(同68%)の混合物を得た。この混合物をそのまま次の合成に用いた。
【0084】
・化合物6の合成
【化27】
【0085】
上記化合物17(10.6mg、6.18μmol)及びCz-COPV2の混合物、4,7-ジブロモベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ビス([1,2,5]チアジアゾール(1.1mg、3.13μmol)並びにPd(PPh(1.3mg、1.13μmol)をトルエン(1.0mL)に混合し、120℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却後、クロロホルムで希釈して短経路(short path)シリカゲルカラムに通し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n-ヘキサン=1:3)で精製した後、溶出液をクロロホルムとしたGPCにて精製することで、緑色固体の化合物6(収量4.5mg、収率44%)を得た。
【0086】
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.84-0.88(m,24H),1.24-1.33(m,80H),1.51-1.58(m,16H),2.48-2.53(m,16H),6.96-6.99(m,16H),7.17(d,J=8.2Hz,8H),7.21-7.35(m,H),7.38-7.39(m,4H),7.41(s,4H),7.64(s,2H),8.02(dd,J=8.0andJ=1.6Hz,2H),8.08(d,J=7.8Hz,4H),8.34(d,J=1.8Hz,2H)
【0087】
・化合物4及び15の合成
【化28】
【0088】
化合物12(16.5mg、0.0101mmol)、2-ブロモチアゾール(5.61mg、0.0342mmol)及びPd(PPh(1.24mg、1.07μmol)を、1,4-ジオキサン(0.8mL)及び4Mリン酸カリウム水溶液(15.1μL)に混合し、アルゴン雰囲気下、100℃で19時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣に含まれる混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で前半のフラクションと後半のフラクションに分け、それぞれについて溶出液をクロロホルムとしたGPCによりそれぞれさらに精製することで、橙色固体の化合物4(収量7.6mg、収率48.5%)、及び黄色固体の化合物15(収量7.5mg、収率47.1%)を得た。
【0089】
(化合物4)
H-NMR(400MHz,CDCl):δ 0.89(t,J=7.2Hz,12H),1.25-1.38(m,40H),1.56(m,8H),2.51(t,J=7.6Hz,8H),6.98(d,J=8.4Hz,8H),7.17(d,J=8.4Hz,8H),7.19-7.27(m,24H),7.34(s,2H),7.71(d,J=8.0Hz,2H),7.77(d,J=3.2Hz,2H),8.06(s,2H)
MALDI-TOF MS (M):1553.13
【0090】
・化合物5の合成
【化29】
【0091】
化合物15(8.8mg、5.51μmol)、4-ブロモジメチルアニリン(1.38mg、6.89μmol)及びPd(PPh(0.64mg、0.551μmol)を、1,4-ジオキサン(1mL)及び4Mリン酸カリウム水溶液(18μL)に混合し、アルゴン雰囲気下、100℃で19時間撹拌した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で精製することで橙色固体の化合物5(収量1.8mg、収率20.5%)を得た。
【0092】
[蛍光測定]
D-A-D型の化合物である化合物1~3及び6のそれぞれについて、吸収スペクトルと蛍光スペクトルを測定した。吸収スペクトル測定及び蛍光スペクトル測定のいずれについても、測定溶液におけるサンプル濃度を1μmol/L程度とし、測定溶媒をジクロロメタンとした。また、蛍光スペクトル測定における励起波長は、吸収スペクトル測定で得られた吸収極大における波長とした。その結果を図1に示す。図1は、化合物1~3、及び6のそれぞれについての吸収スペクトル及び蛍光スペクトルである。また、A-D-A型の化合物4及び比較化合物である化合物5の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルについても同様の手順で測定した。その結果を図2に示す。図2は、化合物4及び5のそれぞれについての吸収スペクトル及び蛍光スペクトルである。
【0093】
図1に示すように、ベンゾチアジアゾリレン基(BTz)をアクセプタとして備える化合物1及び3は、いずれも類似した吸収及び蛍光特性を示し、615nm付近に強い蛍光を示した。また、ナフトビスチアジアゾリレン基(NTz)をアクセプタとして備える化合物2は、化合物1及び3よりも蛍光が長波長シフトしており、やはり蛍光が強い傾向を示した。このように、D-A-D型構造を備える本発明の化合物は、長波長の蛍光を効率良く示すことがわかる。なお、ビスベンゾチアジアゾリレン基(BBTz)をアクセプタとして備える化合物6では、他の化合物における発光波長域まで吸収が長波長シフトしていた。
【0094】
また、図2に示すように、A-D-A構造を有する化合物4と比較化合物である化合物5は、それぞれ479nmと475nmに蛍光を示した。このときの量子収率は、A-D-A構造を有する化合物4が87%と高く、比較化合物である化合物5が50%だった。このような違いは、化合物5におけるアミノ基とチアゾリル基との間で分子内電荷移動を生じたためと思われる。
図1
図2