(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】マットレスユニット
(51)【国際特許分類】
A61G 7/043 20060101AFI20240820BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240820BHJP
A47C 27/08 20060101ALI20240820BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61G7/043
A47C27/00 C
A47C27/08 Z
A61B5/11 100
(21)【出願番号】P 2018087640
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】草場 大地
(72)【発明者】
【氏名】島田 和司
(72)【発明者】
【氏名】折田 尚俊
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】中村 則夫
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G7/043,A61G7/05-7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部マットレス本体、中間マットレス本体及び下部マットレス本体を組合せたマットレスユニットであって、
前記
中間マットレス本体に設けられたエアセルと、
前記エアセルの内部圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサが接続された制御装置と、を備え、
前記エアセルが前記中間マットレス本体の左右の両短辺側の中央付近に設けられており、
前記制御装置は、前記圧力センサが検出する前記内部圧力の時間変化率が0.5kPa/秒以上の場合に使用者の離床であると判定する、
ことを特徴とするマットレスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスユニット及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や介護施設において、患者や高齢者などの被介護者が、自分で起き上がり、ベッドから離れようとして、ベッドからの転落や、転倒などの事故につながるおそれがあった。このため、被介護者の離床行動を検出して、介護者に通知するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用者の離床状態の検出において誤検出の少ないマットレスユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の態様によって把握される。
(1)本発明に係る1つの態様は、マットレスユニットであって、マットレス本体と、前記マットレス本体に設けられたエアセルと、前記エアセルの内部圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサが接続された制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内部圧力の検出値に変動が起きてから前記内部圧力が規定値に達するまでの変動時間に基づいて、使用者の離床状態を判断し、使用者が離床状態であると判断した場合、使用者の離床を示す離床信号を出力可能とするものである。
(2)上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記圧力センサが検出する前記内部圧力の時間変化率に基づいて、使用者の離床を判断してもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記制御装置は、前記内部圧力の検出値に変動が起きてから前記内部圧力が規定値に達するまでの変動時間に基づいて、使用者の体動状態を判断してもよい。
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの態様において、前記制御装置は、前記内部圧力の検出値に変動が起きてから前記内部圧力が規定値に達するまでの変動時間に基づいて、ベッドの背上げ状態を判断してもよい。
(5)上記(1)から(4)までのいずれか1つの態様において、前記マットレス本体は、前記制御装置を収容してもよい。
(6)本発明に係る別の1つの態様は、使用者の離床状態を判断する制御装置であって、マットレス本体に設けられたエアセルの内部圧力を圧力センサで検出し、前記内部圧力に変動が起きてから前記内部圧力が規定値に達するまでの時間に基づいて、使用者の離床状態を判断し、使用者が離床状態であると判断した場合、使用者の離床を示す離床信号を出力可能とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、誤検出や故障の少ないマットレスユニット及び制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施形態のマットレスユニットについて、分割された複数のマットレス本体の配置の一例を示す斜視図である。
【
図2】1つのマットレス本体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図3】マットレス本体を構成する第1層部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図4】マットレス本体を構成する第2層部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図5】マットレス本体を構成する端座位支持部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図6】中間マットレス本体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図7】中間マットレスの端部に使用者が腰掛けた状態を示す図である。
【
図8】マットレス本体をインナーカバーに包んだ状態を示す図である。
【
図9】マットレス本体をアウターカバーに収納して折り畳んだ状態を示す図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。また、使用者が横臥したときの頭部から足部にかけての上下方向を長手方向と、長手方向と交差し、使用者が横臥したときの左右方向を幅方向という。
【0010】
まず、使用者の離床状態を判断する制御装置90を説明する前に、制御装置90が使用されるマットレスユニット1の全体構成について説明する。なお、本願における離床状態とは、使用者が臥床状態から完全に離床するまでの移行状態を意味する。
【0011】
(マットレスユニットの全体構成)
本発明に係る実施形態のマットレスユニット1は、体圧を分散可能なものであって、複数に分割されたマットレス本体10を各別にインナーカバー20に包み、そのマットレス本体10を1つのアウターカバー30に長手方向に並べて入れた状態で構成されている。
図1では、説明の都合上、インナーカバー20及びアウターカバー30を省略して図示している。インナーカバー20及びアウターカバー30については、後述する。
【0012】
それぞれのマットレス本体10は、表裏利用可能(リバーシブル)に使用することができ、後述するように、硬度の異なる表裏面を有している。
図1では、マットレス本体10が、上部マットレス本体10a、中間マットレス本体10b、下部マットレス本体10cの3つに分割された例を示しており、それぞれのマットレス本体10の横臥面について、上部マットレス本体10a及び下部マットレス本体10cを相対的に低硬度の第1外側表面40aとし、中間マットレス本体10bを相対的に高硬度の第2外側表面50aとされている。
【0013】
マットレス本体10の分割の数は3分割に限られるものではなく、2分割でも、4分割以上であってもよい。例えば、ここで示したように3分割した場合には、使用者を標準的な成人とすると、上部マットレス本体10aが主に頭部に、中間マットレス本体10bが主に殿部に、下部マットレス本体10cが主に足部に、それぞれ対応する。ちなみに、4分割したような場合には、4つのマットレス本体10は、上から順に、頭部、腹部、殿部、足部に対応するようにすることができる。本実施形態では、マットレス本体10が分割された上部マットレス本体10a及び下部マットレス本体10cは、それぞれ同様の構成を有しているが、中間マットレス本体10bの構成については、使用者の離床状態を検出するための後述するエアセル70を備えることから、別途説明する。
【0014】
(マットレス本体の概要)
マットレス本体10は、
図1及び
図2に示すように、第1層部40と、第1層部40に対向する第2層部50とを備えている。また本実施形態では、さらに、第1層部40の幅方向の両方の端部41と、第2層部50の幅方向の両方の端部51の間に、端座位支持部60が挟まれるように設けられている。第1層部40、第2層部50、端座位支持部60は、それぞれの当接面において、接着されている。
【0015】
第1層部40は、相対的に低硬度の第1外側表面40aを有しており、第2層部50は、相対的に高硬度の第2外側表面50aを有している。第1層部40の第1外側表面40aを横臥面とした場合には使用者に柔らかな質感を与え、第2層部50の第2外側表面50aを横臥面とした場合には使用者にしっかりした質感を与えることができ、表裏利用可能に構成されている。本実施形態では、詳しくは後述するように、第1外側表面40aを凹凸状(スリット形状)に、第2外側表面50aを平面状に形成することによって、硬度の相対化を図っている。
【0016】
端座位支持部60は、使用者がベッドの左右に腰掛けたときに腰が落ちた姿勢になって立ち上がり難くなることを避けるため、第1層部40及び第2層部50よりも硬度の高い素材を含んで構成されている。以下に、マットレス本体10の構成要素ごとに説明する。
【0017】
(第1層部)
図3を参照して、第1層部40について説明する。第1層部40は、第1外側表面40aに、所定の間隔で幅方向に延在する凹凸部42を有する。第1層部40は、中硬度のウレタンフォームから形成されているが、この凹凸部42によって、第1外側表面40aは相対的に低硬度となっており、使用者の身体を優しく包み込むような横臥面を提供することができる。
【0018】
図3(b)では、凹凸部42は、22個の凸部42aと、その間の21個の凹部42bとから構成された例を示しているが、凸部42aと凹部42bの数や配置のレイアウト、凸部42a及び凹部42bの幅及び高さなどは、所望の低硬度を得られるように設定すればよい。ここでは、凹凸部42の両端を除き、凸部42aと凹部42bを均一に配置している。両端においては、マットレス本体10の幅方向の全長と凹凸部42の幅とのバランスを考慮して、凹凸部42の最先端の凸部42aは他よりも厚く、最先端よりも1つ中央寄りの凸部42aは他よりも薄く、それぞれ形成されている。
【0019】
第1層部40の第1外側表面40aの反対側の面、すなわち第2層部50の側に位置する第1内側表面40bには、幅方向に延在して両端で開口する第1逆溝部43が設けられている。第1逆溝部43は、使用者が横臥してマットレスユニット1を使用する際に湿気が籠もり難くし、また乾燥し易いという効果を奏する。さらに、マットレスユニット1をマットレス本体10ごとに洗濯する際にも、内部まで洗浄し易くし、洗濯後においても水切れが容易で乾燥し易いという効果を奏する。
【0020】
ここでは、第1逆溝部43として、略M字状の断面を有する溝を複数設けた例を示している。ここでは第1逆溝部43を6個設けているが、その数は6個に限られることなく、所望の数とすることができる。場合によっては、第1逆溝部43を省略することもできる。第1逆溝部43の断面は略M字状に形成されており、M字の中央部によって体圧の一部を支持し、マットレス本体10が沈み込み過ぎることを抑制するようにしている。また、長手方向の中央領域における第1逆溝部43(図中、中央寄りの2個)は、周辺領域の第1逆溝部43(図中、左右の2個ずつ計4個)よりも第1内側表面40bに対して低い溝高さを有するように構成されている。これについても、マットレス本体10が、長手方向の中央領域において、長期間の使用に起因して変形して元に戻らなくなる“ヘタリ”を抑制する方向に寄与する。
【0021】
図3(c)に示すように、第1層部40の第1内側表面40bには、長手方向に延在して両端で開口する複数の第2逆溝部44が設けられている。第2逆溝部44は、第1逆溝部43と相まって、使用時の通気孔、洗濯時の水抜きに寄与する。ここでは、第2逆溝部44として、逆U字状の断面を有する溝を複数設けた例を示している。図中、第2逆溝部44を10個設けているが、その数は10個に限られることなく、所望の数とすることができる。場合によっては、第2逆溝部44を省略することもできる。第2逆溝部44は、幅方向の中央領域を挟む周辺領域に設けられており、これは、使用者の正中線に対応する中央領域が沈み込み過ぎる(いわゆる「底付き」)ことを防止するものである。
【0022】
第1層部40の幅方向の両端にはそれぞれ、第1外側表面40aの側において、幅方向に延在する端部41が設けられている。端部41の下面には、後述する端座位支持部60が取り付けられる。第1外側表面40aの端部41の中央寄りには、凹凸部42を横切って長手方向に延在する第4溝部45が設けられている。第4溝部45は、端部41の下方に端座位支持部60に設けられていることを視覚的に示す目印として役立つとともに、第1層部40と、第1層部40の端部41に覆われた端座位支持部60との硬度の相違に、メリハリを付けることに寄与する。第4溝部45を設けた場合、設けない場合に比較し、第1層部40の端部41に覆われた端座位支持部60の硬度を、全体として、10%程度高くすることができる。
【0023】
(第2層部)
つぎに、
図4を参照して、第2層部50について説明する。第2層部50は、第2外側表面50aが平面によって構成されている。第2外側表面50aは、第1層部40の第1外側表面40aが凹凸部42によって構成されているのに対し、中硬度のウレタンフォームの平面によって構成されていることから、第1外側表面40aに対し相対的に高硬度となっている。これにより、第2外側表面50aは、横臥する使用者の身体の沈み込みを抑制し、寝返りのし易いしっかりした横臥面を提供することができる。
【0024】
第2層部50の第2内側表面50bには、長手方向に延在して両端で開口する複数の第5溝部52が設けられている。第5溝部52は、第1層部40の第2逆溝部44のうち左右両端のものに対向して設けられている。第5溝部52は、第2逆溝部44と相まって、使用時の通気孔、洗濯時の水抜きに寄与するとともに、第1層部40と第2層部50との間に接着剤を塗布する場所の目印としても有用となる。ここでは、第5溝部52として、U字状の断面を有する溝を第2逆溝部44の左右両端に対応して2個設けているが、その数は2個に限られることなく、所望の数としてもよい。
【0025】
第2層部50の幅方向の両端にはそれぞれ、第2外側表面50aの側において、幅方向に延在する端部51が設けられている。端部51の上面には、後述する端座位支持部60が取り付けられる。なお、ここでは、図示していないが、第1層部40に設けられた第4溝部45と同様の役割を果たすため、第2外側表面50aの端部51の中央寄りに、第2外側表面50aを横切って長手方向に延在する逆溝部を設けるようにしてもよい。
【0026】
(端座位支持部)
つぎに、
図5を参照して、端座位支持部60について説明する。本実施形態では、第1層部40と第2層部50に加えて、それらの左右端に、第1層部40の幅方向の端部41と第2層部50の幅方向の端部51に挟まれるように設けられた端座位支持部60を備えるようにしてもよい。端座位支持部60は、基層61と、基層61の上面に接着された支持層62とから構成されている。基層61は、高硬度のウレタンフォームや不織布などから形成されてもよい。
【0027】
基層61の下面61aには、第1層部40の第1逆溝部43に対応する位置にあって幅方向に延在して両端で開口する第3逆溝部63が設けられている。第3逆溝部63は、第1層部40の第1逆溝部43に連通しており、端座位支持部60をマットレス本体10に装着した場合にも、使用者が横臥してマットレスユニット1を使用する際に湿気が籠もり難くし、また乾燥し易いという効果を奏する。さらに、マットレスユニット1をマットレス本体10ごとに洗濯する際にも、内部まで洗浄し易くし、洗濯後においても水切れが容易で乾燥し易いという効果を奏する。
【0028】
第3逆溝部63は、ここでは第1層部40の第1逆溝部43に対応して6個設けられており、第1逆溝部43の数によって増減することになる。第3逆溝部63は、第1逆溝部43の開口の幅方向をカバーするように設けられている。
【0029】
基層61の上面には、支持層62が設けられている。支持層62は、基層61や、第1層部40及び第2層部50よりも硬い素材となるように、不織布を圧縮加工して形成されている。例えば、厚さ30mmの不織布層を熱プレスによって厚さ10mmに圧縮する。これにより、使用者が上部マットレス本体10a又は下部マットレス本体10cの左端又は右端に腰掛けても腰が沈み込むことが抑制され、端座位が安定し、使用者が立ち上がる際に体重を支えることにより立ち上がりが容易になる。
【0030】
(中間マットレス本体の構成)
図6を参照して、中間マットレス本体10bについて説明する。中間マットレス本体10bは、70及び制御装置90を収容するもので、上部マットレス本体10a及び下部マットレス本体10cとは、表裏の使用面が異なっていること以外に、端座位支持部60を備えていない点などで異なっている。また、本実施形態の中間マットレス本体10bでは、第1逆溝部43、第2逆溝部44及び第5溝部52が形成されていないが、設定硬さに応じて形成されていてもよい。
【0031】
図6に示すように、中間マットレス本体10bは、略円筒体のエアセル70を収容する第1収容部46と、略直方体の制御装置90を収容する第2収容部47とが形成されている。
【0032】
第1収容部46は、上部マットレス本体10a、中間マットレス本体10b及び下部マットレス本体10cを組合せてマットレスユニット1とした場合に、マットレスユニット1の長手方向に沿うように、中間マットレス本体10bにおける左右の両短辺側の中央付近にそれぞれ形成されている。左右の第1収容部46同士は、図示されない、連結通路を介して連通している。
【0033】
また、第1収容部46は、中間マットレス本体10bの左右端面に形成された切込48と連通し、切込48を広げることで、エアセル70を収容できるようになっている。
【0034】
第2収容部47は、上部マットレス本体10a、中間マットレス本体10b及び下部マットレス本体10cを組合せてマットレスユニット1とした場合に、上部マットレス本体10a又は下部マットレス本体10cと対向する上辺又は下辺側で、左辺又は右辺に近い位置に形成されている。
【0035】
つづいて、エアセル70は、2枚の樹脂シート(例えば、幅80mm×長さ550mm)を重ね置き、エア供給又は圧力検出用の接続口を除いた略四辺を溶着して形成されたもので、内部にエアが供給されると、円柱状に膨らむが、10.0kPa(ゲージ圧)程度の内部圧力に耐えられるようになっている。また、左右のエアセル70は、それぞれの接続口が分岐チーズ及びホースを介して連結されている。
【0036】
そして、
図7に示すように、使用者が、起床するなど横臥状態から離床し、中間マットレス本体10bの左端又は右端に腰掛けると、使用者の体重によりエアセル70が圧縮されるため、エアセル70の内部圧力が上昇することになる。また、上部マットレス本体10aや下部マットレス本体10cのような端座位支持部60の替わりに、中間マットレス本体10bはエアセル70を備えており、端座位支持部60を備えるものと同様に、左端又は右端に腰掛けても腰が沈み込むことが抑制され、端座位が安定し、使用者が立ち上がる際に体重を支えることにより立ち上がりが容易になる。
【0037】
(インナーカバー及びアウターカバー)
つぎに、
図8及び
図9を参照して、インナーカバー20及びアウターカバー30について説明する。インナーカバー20は、マットレス本体10(
図8では、上部マットレス本体10a又は下部マットレス本体10c)を個別に包む筒状に形成されており、ポリエステルなどの合成樹脂から形成されている。インナーカバー20は、メッシュ状のように通気性のある素材に形成することが使用時の蒸れを防止するうえで好ましい。マットレス本体10は、インナーカバー20に包むことによって滑りが良くなり、アウターカバー30への出し入れが容易となる。
【0038】
インナーカバー20は、マットレスユニット1の短手方向が開口されており、マットレス本体10を開口から出し入れする。
【0039】
複数のマットレス本体10は、例えば
図1に示したような配列で、各別にインナーカバー20に包まれた状態でアウターカバー30に長手方向に並べて入れられている。アウターカバー30は、ウレタン合皮によって形成されており、完全防水が可能であり、使用者が嘔吐、吐血、失禁、薬剤漏れなどを起こした場合であっても、これらが内部に浸透することを防ぐことができ、感染防止などの安全対策や悪臭防止などの衛生対策を実現できる。また、アルコールなどによる清拭消毒も可能である。
【0040】
アウターカバー30は、マットレスユニット1の長手方向の一辺と短手方向の一辺が開口されており、複数のマットレス本体10を開口から出し入れする。開口については、留め具を設けて閉鎖可能に形成されており、留め具の態様は、ファスナー、紐、ホック、安全ピンなどのいずれであってもよい。また、マットレスユニット1の長手方向の少なくとも一辺には、マットレスユニット1をマットレス本体10ごとに折り畳んだり、また、持ち運びやベッド上での配置の調整などを行ったりする便宜のために取手31が設けられている。
図9は、マットレス本体10が3分割されている場合において、中間マットレス本体10bをアウターカバー30から取り出し、中間マットレス本体10bを挟んで上部マットレス本体10aと下部マットレス本体10cを折り畳んだ状態を示している。このように折り畳めることから、マットレスユニット1は、不使用時にコンパクトにすることができ、省スペースを図ることができる。
【0041】
(マットレス本体の組合せ)
上記したように、マットレス本体10は、第1層部40の第1外側表面40aが相対的に低硬度の柔らかな横臥面を提供し、第2層部50の第2外側表面50aが相対的に高硬度のしっかりした横臥面を提供することから、複数のマットレス本体10の配列を変更することにより、使用者の好みや身体の状態に応じた部位ごとの横臥面を提供することができる。例えば、それぞれのマットレス本体10の横臥面について、上部マットレス本体10aでは相対的に低硬度の第1外側表面40a、中間マットレス本体10b及び下部マットレス本体10cでは相対的に高硬度の第2外側表面50aとしてもよい。このように、マットレスユニット1は、使用者の希望に応じて、身体の部位ごとにマットレス本体10の質感の異なる横臥面を自在に選択することができる。
【0042】
なお、既に述べたように、ここでは、上/中/下の3つに分割されたマットレス本体10の場合について説明しているが、分割の数は3つに限られることはなく、上/下の2分割としたり、上/中上/中下/下の4分割以上としたりすることも、もちろん可能である。
【0043】
分割されたマットレス本体10は、それぞれ単独で取り扱うことが可能であるので、汚れや臭いが付着した場合、そのマットレス本体10のみを洗濯すればよく、マットレスユニット1全体を洗濯することに比べて、洗浄、すすぎ、脱水、乾燥などの洗濯の一連のプロセスが極めて容易となる。これにより、常にマットレスユニット1の清浄を維持することが可能となる。
【0044】
また、マットレスユニット1が長期間使用されると、特に殿部に対応する部分がどうしても“ヘタリ(凹み)”が生じてくるが、本実施形態のマットレスユニット1は、分割されたマットレス本体10のみを取り替えることによって、マットレスユニット1の全体を新品と同様に使用することが可能となる。
【0045】
(制御装置の構成)
最後に、使用者の離床状態を判断する制御装置90について説明する。
図10は、本発明に係る実施形態の制御装置90を示すブロック図である。
【0046】
制御装置90は、使用者の離床状態を判断する演算部91、内部圧力の検出値P1や規定値Psを記憶する記憶部92、エアセル70の内部圧力の検出値P1を取得する入力部93、使用者の離床状態を示す離床信号ONを外部に出力する出力部94、動作電力を供給する電源部95などで構成され、筐体90aとして形成されている。なお、本実施形態では、入力部93として、圧力センサ80が直接設けられている。
【0047】
筐体90aは、平面視で略矩形状であり、各種配線や配管を除いて中間マットレス本体10bに形成された第2収容部47に収容されている。筐体90aは、出力部94や電源部95のコネクタ付近が凹状に切り欠かれており、この位置で信号配線や電力配線が接続されている。また、圧力センサ80に接続された検出配管が、筐体90aの外部に突出して設けられている。
【0048】
入力部93としての圧力センサ80には、拡散形半導体圧力トランスジューサを含むもので、例えば、日本電算コパル電子株式会社製のPG-30-101R-Nを用いるとよい。
【0049】
出力部94は、施設内のナースコールシステムに配備されたナースコールコンセントからの信号配線と接続されており、演算部91の演算結果に基づいて、離床信号ONを出力可能とする。
【0050】
電源部95は、室内の電気コンセントから、ACアダプタを介して電力が入力されるものであり、さらに、演算部91などに動作電力を供給し、これらを動作させる。
【0051】
そして、演算部91は、エアセル70の内部圧力の検出値P1に変動が起きてから内部圧力が規定値Psに達するまでの変動時間tに基づいて、使用者の離床状態を判断する。言い換えると、演算部91は、圧力センサ80が検出する内部圧力の時間変化率Fpに基づいて、使用者の離床を判断する。
【0052】
ここで、内部圧力の規定値Psは、エアセル70を収容する中間マットレス本体10b(の第1層部40及び/又は第2層部50それぞれ)の硬さ(クッション性)にも依存するが、臥床状態の内部圧力P0よりも0.25kPa以上大きい値、より好ましくは、0.50kPa以上大きい値を設定するとよい。また、変動時間tも、内部圧力の規定値Psと同様に、中間マットレス本体10bの硬さにも依存するが、0.2秒から1.0秒までの範囲で、例えば0.5秒に設定するとよい。よって、内部圧力の時間変化率Fpは、例えば、0.5kPa/秒以上に設定するとよいが、衝撃などにより瞬間的に内部圧力が変化する場合を除くために、規定値Ps以上の検出値P1が一定時間(例えば、2秒間以上)継続していることも、判断条件に加えてもよい。なお、臥床状態の内部圧力P0は、通常3.0kPaから3.5kPa(ゲージ圧)である。
【0053】
そこで例えば、演算部91は、条件1として「エアセル70の内部圧力の検出値P1が0.5秒間に規定値Psの0.25kPa以上変動したか否か」を判定する。そして、判定結果が「YES」の場合、演算部91は、使用者が離床状態であると判断し、使用者の離床状態を示す離床信号ONを出力部94から外部に出力するように動作する。な
【0054】
判定結果が「NO」の場合、演算部91は、使用者が体動状態(寝返り動作)であると判断し、処理ステップをループして、エアセル70の内部圧力の検出値P1の変動を監視し続ける。なお、離床信号ONを出力する対象としては、例えば、ナースコールシステムであり、出力部94からの信号配線(ナースコールケーブル)をベッドが設置された室内のナースコールコンセントに接続するとよい。
【0055】
ここで、本実施形態のマットレスユニット1が背上げ(ギャッジアップ)可能なベッドに敷かれていると、ベッドの背上げ移行中に、エアセル70の内部圧力の検出値P1が変動することがある。この場合、検出値P1は、使用者の寝返り動作のときよりも、ゆっくりと変化するため、上述した設定値であれば、判定結果が「NO」になる。そこで、条件1よりも内部圧力の時間変化率Fpが小さい、例えば「エアセル70の内部圧力の検出値P1が0.5秒間に規定値Psの0.05kPa以上変動したか否か」という条件2(さらに条件3)を、条件1に加えて二段階あるいは三段階で判定するようにしてもよい。そして、条件2のみ「YES」の場合、演算部91は、使用者が体動状態(寝返り動作)であると判断し、条件2も「NO」の場合、ベッドの背上げ状態であると判断するようにしてもよい。あるいは、ベッドの背上げ角度を検出する角度検出器などから外部信号を取り込んで、判断してもよい。
【0056】
また、ベッドあるいはマットレスユニット1に対して清掃又は消毒を行う時など使用者の離床を判断する必要がない場合のために、演算部91による判断機能をオン/オフあるいは有効/無効に切り替えるスイッチを、制御装置90が付加的に備えてもよい。
【0057】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態のマットレスユニット1は、マットレス本体10と、マットレス本体10に沿って設けられたエアセル70と、エアセル70の内部圧力を検出する圧力センサ80と、圧力センサ80が接続された制御装置90と、を備え、制御装置90は、内部圧力の検出値P1に変動が起きてから内部圧力が規定値Psに達するまでの変動時間tに基づいて、使用者の離床状態を判断し、使用者が離床状態であると判断すると、使用者の離床状態を示す離床信号ONを出力するものである。これにより、使用者の離床状態を、エア圧の検出で判断できるため、電気的接点を削減することができ、断線などによる誤検出や故障の発生を抑制することができる。
【0058】
実施形態の制御装置90は、圧力センサ80が検出する内部圧力の時間変化率Fpに基づいて、使用者の離床を判断する。これにより、使用者の寝返りなどゆっくりと変化する体動の検出を避けることができる。
【0059】
実施形態の内部圧力の時間変化率Fpは、0.5kPa/秒以上である。これにより、使用者の寝返りなどゆっくりと変化する体動(寝返り)の検出を避けることができる。
【0060】
実施形態の内部圧力の規定値Psは、臥床状態の内部圧力P0よりも0.25kPa以上大きい値である。これにより、使用者の寝返りなどの体重が分散された単なる体動の検出を避けることができ、ベッド(詳細には、マットレスユニット1、さらに詳細には中間マットレス本体10b)の端部に腰掛けた状態を検出することができる。
【0061】
実施形態のマットレス本体10は、エアセル70及び制御装置90を収容している。これにより、ベッド周りに離床状態を検出するための各機器の設置スペースが不要となる。
【0062】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことはいうまでもない。また、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。さらに、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0063】
上記実施形態では、制御装置90は、ベッド使用者の離床状態や体動状態、ベッドの背上げ状態を判断したが、エアセル70の内部圧力の検出値P1が、臥床状態の内部圧力P0を下回った場合は、ベッド端部への腰掛け状態からベッドから完全に離れて移動した状態であると判断するようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、圧力センサ80を、制御装置90の筐体90aの内部に設けたが、エアセル70に直接装着し、筐体90aの外部から信号配線を介して制御装置90に検出値P1を出力するようにしてもよいし、左右のエアセル70を接続するホースに設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、制御装置90の筐体90aを、中間マットレス本体10bに収容したが、上部マットレス本体10a又は下部マットレス本体10cに収容してもよい。あるいは、マットレスユニット1を設置するベッドの裏側などに取り付けてもよい。
【0066】
上記実施形態のマットレス本体10では、第1逆溝部43及び第2逆溝部44などが設けられていたが、エアセル70を収容する第1収容部46が形成されていれば、他の構成は、実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0067】
1 マットレスユニット
10 マットレス本体、10a 上部マットレス本体、10b 中間マットレス本体
10c 下部マットレス本体
20 インナーカバー
30 アウターカバー、31 取手
40 第1層部、40a 第1外側表面、40b 第1内側表面
41 端部、42 凹凸部、43 第1逆溝部、44 第2逆溝部、45 第4溝部
46 第1収容部、47 第2収容部、48 切込
50 第2層部、50a 第2外側表面、50b 第2内側表面
51 端部、52 第5溝部
60 端座位支持部
61 基層、62 支持層、63 第3逆溝部
70 エアセル
80 圧力センサ
90 制御装置、90a 筐体
91 演算部、92 記憶部、93 入力部、94 出力部、95 電源部