(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電気治療用端子及び電気治療用装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20240820BHJP
A61H 39/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61N1/04
A61H39/00 K
(21)【出願番号】P 2020074544
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520139516
【氏名又は名称】金田 相元
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【氏名又は名称】小山 靖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来代 哲男
(72)【発明者】
【氏名】金 相元
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/092290(WO,A2)
【文献】米国特許第04237886(US,A)
【文献】特開2011-115347(JP,A)
【文献】特開2018-143366(JP,A)
【文献】特開2018-117729(JP,A)
【文献】特開2006-122415(JP,A)
【文献】特開2003-310767(JP,A)
【文献】特開2009-005993(JP,A)
【文献】特開2000-271100(JP,A)
【文献】特開2011-062373(JP,A)
【文献】特開平03-207377(JP,A)
【文献】特開平09-206384(JP,A)
【文献】特開平05-007613(JP,A)
【文献】特開平11-019222(JP,A)
【文献】特開昭61-031169(JP,A)
【文献】特表2006-513739(JP,A)
【文献】特表2014-522700(JP,A)
【文献】特表2014-529304(JP,A)
【文献】特表2017-503576(JP,A)
【文献】特表2019-503761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0290279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324473(US,A1)
【文献】米国特許第05087241(US,A)
【文献】米国特許第05427096(US,A)
【文献】国際公開第2017/043603(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208799679(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04
A61H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電による電気的な皮膚刺激を行うための電気治療用端子であって、
人体の皮膚表面に局所的に当接させる
平坦状の接触面を備えた基体部と、
前記基体部の接触面とは反対側の面に於いて
垂直方向に起立しており、導通性を有する
一対の板状部からなる突起部とを備え、
前記一対の板状部は、
長尺の板状であり、少なくとも1つの切り欠き部をそれぞれ有しており、
前記基体部の接触面とは反対側の面に於ける内周縁に、相互に対向するように位置しており、かつ、前記基体部から離れる側の端部に於いて重なり合わさっており、
さらに、前記基体部から離れるに従い、長尺方向に対し直角の幅方向の幅は小さくなっており、
前記基体部は少なくとも前記接触面に於いて導通性を有しており、外部より通電のための電流が前記突起部を介して前記接触面に供給されることにより、前記皮膚表面に対し局所的に電気的な皮膚刺激を可能にする電気治療用端子。
【請求項2】
前記基体部の接触面は、直径が2mm以上、7mm以下の
円形状である請求項1に記載の電気治療用端子。
【請求項3】
シート状であり、前記突起部が貫通した状態で、前記基体部の接触面とは反対側の面、及び前記人体の皮膚表面に貼着することで、前記基体部を皮膚表面に固定する貼着部をさらに備える請求項1又は2に記載の電気治療用端子。
【請求項4】
前記基体部を固定する板状の支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記基体部の接触面を露出した状態で、当該基体部を嵌合させて収容する開口部を有しており、
前記支持部に於いて、前記基体部の接触面が露出する側の面であって、前記人体の皮膚表面に当接する面は、当該人体の皮膚面に貼着可能となっている請求項1又は2に記載の電気治療用端子。
【請求項5】
前記基体部の接触面の少なくとも一部に、前記人体の皮膚表面に対し貼着することが可能な導電性ゲル状物が設けられている請求項1~4の何れか1項に記載の電気治療用端子。
【請求項6】
通電による電気的な皮膚刺激を行うための電気治療用装置であって、
請求項1~5の何れか1項に記載の電気治療用端子と、
前記電気治療用端子に皮膚刺激のための電流を供給する供給部と、
前記電気治療用端子と前記供給部とを電気的に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記電気治療用端子に於ける
前記一対の板状部からなる前記突起部を当接した状態で貫通させることにより、電気的な接続を可能にする環状の端子を備える電気治療用装置。
【請求項7】
前記環状の端子の内周縁部には他の切り欠き部が設けられており、
前記他の切り欠き部は、前記一対の板状部が前記環状の端子に貫通した状態で、前記一対の板状部に於ける前記切り欠き部と相互に係合している請求項6に記載の電気治療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気治療用端子及び電気治療用装置に関し、より詳細には、人体の皮膚を侵襲することなく通電による電気治療を行うことが可能な電気治療用端子及び電気治療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍼(針)灸は、経穴(つぼ)、経絡、筋、神経及び血管等に針を刺入して、通電、加圧、加熱等の皮膚刺激を付与する治療方法である。すなわち、鍼を経穴等に刺入して物理的な刺激を与えることで、その刺激に対する人体の反応を利用して疼痛の低減や体調の改善、肩コリ及び腰痛等の不定愁訴の解消、ストレスの緩和等を行う。しかし、鍼灸の施術には、鍼を突き刺す位置と深さを精確に把握して、安全に行うことが要求される。そのため、通常は、鍼灸師等が鍼灸の施術を行う。
【0003】
例えば、特許文献1には、鍼灸治療に於いて、直径約0.2mmのステンレス製の針体を有する毫針(ごうしん)を、人体の経穴に数mm~数10mm挿入し鍼刺激を行うことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ジルコニアセラミックスを主成分とし、かつジスプロジア及びセリアを副成分として含んでなる針部を備えた皮内針が開示されている。この発明によれば、針部は高い曲げ強度を有しており、生体内に長期間挿入しても、生体内の熱や水分による針部の劣化、及びジルコニアセラミックスの単斜晶の増大を抑制することができるとされている。
【0005】
特許文献3には、基板の片面に多数の凸部を該基板と一体的に形成し、各凸部は弾性を有しており、さらに各凸部には基部上に略円柱状の頂部を形成してなる接触針が開示されている。この接触針によれば、皮膚に接触又は押圧させたときに各凸部が皮膚と略平行の方向に揺らぎを生ずるようにすることで、皮膚に接触又は押圧させたときに、皮膚を侵襲することなく、かつ、折損し若しく屈曲することなく、皮膚に好ましい侵害性刺激を与えることができるとされている。
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載の鍼等を用いた従来の鍼治療では、専門の鍼灸師等が行う場合であっても、治療を受ける患者が鍼に対する恐怖を感じる等、患者の精神面に大きなストレスをもたらす。また、鍼の刺入及び通電による疼痛や内出血、火傷、神経損傷等の危険性もある。また、特許文献3に記載の接触針に於いても、皮膚表面と接触させる部分が略円柱状の微細な頂部であるため、通電の際には患者に対し疼痛や火傷を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-78967号公報
【文献】特開2007-061200号公報
【文献】特開2008-259552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、鍼を用いて人体に侵襲することなく疼痛の緩和、体調の改善、肩コリ及び腰痛等の不定愁訴の解消、並びにストレスの緩和等の効果を有する電気治療用端子及び電気治療用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気治療用端子は、前記の課題を解決するために、通電による電気的な皮膚刺激を行うための電気治療用端子であって、人体の皮膚表面に局所的に当接させる平坦状の接触面を備えた基体部と、前記基体部の接触面とは反対側の面に於いて垂直方向に起立しており、導通性を有する一対の板状部からなる突起部とを備え、前記一対の板状部は、長尺の板状であり、少なくとも1つの切り欠き部をそれぞれ有しており、前記基体部の接触面とは反対側の面に於ける内周縁に、相互に対向するように位置しており、かつ、前記基体部から離れる側の端部に於いて重なり合わさっており、さらに、前記基体部から離れるに従い、長尺方向に対し直角の幅方向の幅は小さくなっており、前記基体部は少なくとも前記接触面に於いて導通性を有しており、外部より通電のための電流が前記突起部を介して前記接触面に供給されることにより、前記皮膚表面に対し局所的に電気的な皮膚刺激を可能にすることを特徴とする。
【0010】
前記の構成によれば、基体部の少なくとも接触面と突起部とは導通性を有している。そのため、通電のための電流を外部より突起部を介して基体部の接触面に供給することができる。これにより、前記構成に於いては皮膚表面に対し電気的な皮膚刺激を行うことが可能となっている。ここで、基体部の接触面は人体の皮膚面に対し局所的に当接させることが可能な平坦状を有している。そのため、例えば、鍼を皮膚表面に刺入して通電を行う従来の鍼治療と比較して、鍼の刺入による痛みや内出血、火傷、神経損傷等を生じることなく、患者に対し電気治療を行うことができる。また、接触面は平坦状であり、皮膚表面との接触面積を大きくすることができるので、本発明は、いわゆる非侵襲性の接触針と比較しても通電による痛みを低減又は抑制することができる。
【0011】
前記の構成に於いて、前記基体部の接触面は、直径が2mm以上、7mm以下の円形状であることが好ましい。基体部の円形状の接触面の直径を2mm以上にすることにより、皮膚表面に対する接触面の接触面積が小さくなり過ぎるのを防止できるので、通電による痛みを一層低減又は防止することができる。その一方、基体部の前記接触面の直径を7mm以下にすることにより、例えば、経穴等の治療部位への効率的な電気刺激を付与することができ、治療効果の向上が図れる。
【0012】
前記の構成に於いては、シート状であり、前記突起部が貫通した状態で、前記基体部の接触面とは反対側の面、及び前記人体の皮膚表面に貼着することで、前記基体部を皮膚表面に固定する貼着部をさらに備えていてもよい。これにより、皮膚表面の精確な部位に、電気治療用端子を位置ズレを生じさせることなく固定することができ、通電による電気的な皮膚刺激を効果的に行うことができる。
【0013】
また、前記の構成に於いては、前記基体部を固定する板状の支持部をさらに備え、前記支持部は、前記基体部の接触面を露出した状態で、当該基体部を嵌合させて収容する開口部を有しており、前記支持部に於いて、前記基体部の接触面が露出する側の面であって、前記人体の皮膚表面に当接する面は、当該人体の皮膚面に貼着可能となっていてもよい。この構成によっても、皮膚表面の精確な部位に、電気治療用端子を位置ズレを生じさせることなく固定することができる。
【0014】
本発明の電気治療用装置は、前記の課題を解決するために、通電による電気的な皮膚刺激を行うための電気治療用装置であって、前記電気治療用端子と、前記電気治療用端子に皮膚刺激のための電流を供給する供給部と、前記電気治療用端子と前記供給部とを電気的に接続する接続部とを備え、前記接続部は、前記電気治療用端子に於ける前記突起部を当接した状態で貫通させることにより、電気的な接続を可能にする環状の端子を備えることを特徴とする。
【0015】
前記の構成によれば、電気治療用端子と供給部とを電気的に接続するための接続部は、電気治療用端子の突起部を貫通させることが可能な環状の端子を備えている。ここで、突起部は環状の端子に当接した状態で貫通させるため、電気治療用端子と接続部との電気的な接続を可能にする。これにより、前記構成の電気治療用装置であると、供給部から電気治療用端子に対し、通電による電気的な皮膚刺激を行うための電流を供給することが可能になる。そして、前記構成の電気治療用装置は、前述の電気治療用端子を備えることで、鍼を皮膚表面に刺入して通電を行う従来の鍼治療と比較して、鍼の刺入による痛みや内出血、火傷、神経損傷等を生じることなく、患者に対し電気治療を行うことができる。また、いわゆる非侵襲性の接触針と比較しても通電による痛みを低減又は抑制することができる。
【0016】
前記の構成に於いては、前記環状の端子の内周縁部には他の切り欠き部が設けられており、前記他の切り欠き部は、前記一対の板状部が前記環状の端子に貫通した状態で、前記一対の板状部に於ける前記切り欠き部と相互に係合していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通電により、人体の皮膚面に対し侵襲することなく、局所的に電気的な皮膚刺激を行って電気治療を行うことができる。これにより、例えば、鍼を皮膚表面に刺入して通電を行う従来の鍼治療と比較して、鍼の刺入や通電による痛み、内出血、火傷、神経損傷等を防止しながら、疼痛の緩和、体調の改善、肩コリ及び腰痛等の不定愁訴の解消、並びにストレスの緩和等を可能にする電気治療用端子、電気治療用装置及び電気治療方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は本実施の形態1の電気治療用端子を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は前記電気治療用端子の側面図である。
【
図2】
図2(a)は前記電気治療用端子を突起部側から平面視した平面図であり、同図(b)は前記電気治療用端子を基体部の接触面側から平面視した底面図である。
【
図3】本実施の形態1の電気治療用端子を備えた電気治療用装置の概略を表す模式図である。
【
図4】本実施の形態1の電気治療用装置の接続部に電気治療用端子が電気的に接続されている様子を表す説明図である。
【
図5】本実施の形態1の電気治療用端子における突起部、及び電気治療用装置における接続部の環状の端子にそれぞれ切り欠き部を設けた態様を表す斜視図である。
【
図6】本実施の形態2に係る電気治療用端子を表す側面図である。
【
図7】
図7(a)は本実施の形態3の電気治療用端子を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は電気治療用端子の側面図である。
【
図8】電気治療用端子を基体部の接触面側から平面視した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
[電気治療用端子]
先ず、本実施の形態1の電気治療用端子について、
図1及び
図2を参照しながら以下に説明する。
図1(a)は本実施の形態の電気治療用端子を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は電気治療用端子の側面図である。
図2(a)は前記電気治療用端子を突起部側から平面視した平面図であり、同図(b)は前記電気治療用端子を基体部の接触面側から平面視した底面図である。
【0020】
本実施の形態の電気治療用端子1は、通電による電気的な皮膚刺激を行うために用いられるものであり、
図1(a)及び1(b)に示すように、基体部11と、突起部12と、貼着部13とを少なくとも備える。
【0021】
本実施の形態の基体部11は、
図2(a)及び2(b)に示すように、全体形状が略円形状である。基体部11は、人体の皮膚表面に当接させる接触面11aを備える。また、基体部11の接触面11aとは反対側の面には突起部12(詳細については後述する。)が設けられている。尚、本発明に於いて、基体部11の全体形状は略円形状の場合に限定されない。例えば、基体部11の全体形状は矩形状、楕円形状等であってもよい。
【0022】
接触面11aは略平坦状となっており、皮膚表面に対し面接触となる様に構成されている。これにより、皮膚面に対し点接触で電気が流れるのを防止し、患者に通電による疼痛がもたらされるのを回避することができる。
【0023】
接触面11aが略円形状である場合、当該接触面11aの大きさは、直径が2mm以上、7mm以下であることが好ましい。接触面11aの直径を2mm以上にすることにより、皮膚表面に対する接触面11aの接触面積が小さくなり過ぎるのを防止することができ、通電による疼痛を一層低減又は防止することができる。また、電気治療後の皮膚表面に圧痕が残るのを低減又は防止することができる。その一方、基体部11の前記接触面11aの直径を7mm以下にすることにより、例えば、経穴等の治療部位への効率的な電気刺激を付与することができ、治療効果の向上が図れる。
【0024】
基体部11の厚さは特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。但し、電気治療用端子1の使用に際しては、基体部11の接触面11aと皮膚面との間に、導電性ジェル状物(詳細については後述する。)を介在させる場合がある。その様な場合に、導電性ジェル状物が接触面11aとは反対側の面にも付着するのを防止するとの観点、及び基体部11が機械的強度を良好に維持するとの観点から、適宜設定することができる。
【0025】
基体部11の構成材料は、少なくとも接触面11aが導通性を付与するものであれば、特に限定されない。また、基体部11の構成材料は、人体に対する毒性が低い又は無いものであることが好ましい。その様な構成材料としては、例えば、ステンレス鋼;チタン;ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキ又は錫メッキ等を施した銅板等が挙げられる。また、電気治療用端子1を洗浄及び滅菌処理して再利用する場合、基体部11の材料としては洗浄や高温蒸気による滅菌処理に耐える耐熱性及び耐腐食性を有する材料を用いるのが好ましい。
【0026】
本実施の形態の突起部12は、
図1(a)及び1(b)に示すように、一対の板状部12a、12bからなる。板状部12a及び板状部12bは、基体部11の接触面11aとは反対側の面に於いて略垂直方向に起立している。また、板状部12a及び板状部12bは、
図2(a)に示すように、基体部11の接触面11aとは反対側の面に於いて、相互に対向する様に内周縁に位置している。そして、板状部12a及び板状部12bは、基体部11から離れる側の端部に於いて、重なり合わさっている。
【0027】
板状部12a、12bは長尺の板状である。板状部12a、12bは基体部11から離れるに従い、(長尺方向に対し直角の幅方向の)幅は小さくなっている。板状部12a、12bの幅は、電気治療用装置の接続部に於ける環状の端子(詳細については、後述する。)に貫通可能な程度であれば、特に限定されない。
【0028】
突起部12の高さHは特に限定されないが、接続部に於ける環状の端子に突起部12が貫通した状態を維持できる程度であることが好ましい(
図1(b)参照)。
【0029】
板状部12a、12bの厚さは、接続部に於ける環状の端子に突起部12が貫通可能であり、かつ機械的強度を良好に保持できる程度であれば、特に限定されない。板状部12a、12bの厚さは、適宜設定することができる。
【0030】
突起部12の構成材料は、少なくとも導通性を付与するものであれば、特に限定されない。また、突起部12の構成材料は、人体に対する毒性が低い又は無いものであることが好ましい。その様な構成材料としては、例えば、ステンレス鋼;チタン;ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキ又は錫メッキ等を施した銅板等が挙げられる。また、電気治療用端子1を洗浄及び滅菌処理して再利用する場合、突起部12の材料としては洗浄や高温蒸気による滅菌処理に耐える耐熱性及び耐腐食性を有する材料を用いるのが好ましい。
【0031】
本実施の形態の貼着部13は、
図1(a)及び1(b)に示すように、粘着シートであり、一方の面には粘着剤層(図示しない)が設けられている。貼着部13の中央部には、粘着剤層が設けられていない面側から、突起部12が貫通した状態で突出している。貼着部13の粘着剤層は、基体部11の接触面11aとは反対側の面、及び人体の皮膚表面に貼着することで、当該基体部11を皮膚表面に固定させる。
【0032】
[電気治療用装置]
次に、本実施の形態1の電気治療用端子を備えた電気治療用装置について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施の形態の電気治療用装置の概略を表す模式図である。
図4は、電気治療用装置の接続部に電気治療用端子が電気的に接続されている様子を表す部分拡大図である。
【0033】
本実施の形態の電気治療用装置2は、施術者による操作によって、例えば、EMSの電気信号を出力することで、利用者(患者)の人体に対して電気刺激を与えるための装置である。電気治療用装置2は、
図3に示すように、電気治療用端子1A~1Dと、供給部21と、接続部22A~22Dとを少なくとも備える。
【0034】
本実施の形態の供給部21は、電気治療用端子1A~1Dに電流を供給する。供給部21は、電源のオン/オフや、各種の設定に基づきパルス幅、周波数、出力電圧、最大電流値、通電時間等の電流の出力制御が可能である。
【0035】
本実施の形態の接続部22A~22Dはそれぞれ、
図4に示すように、ケーブル部23と環状の端子24とを備える。ケーブル部23の一方の端部は、供給部21における電流の出力チャンネルに電気的に接続されている。また、ケーブル部23の他方の端部には、環状の端子24が設けられている。そして、接続部22A~22Dと電気治療用端子1A~1Dとの電気的な接続は、電気治療用端子1A~1Dの突起部12が環状の端子24に当接した状態で貫通させることにより実現している。
【0036】
ここで、突起部12(板状部12a、12b)の周辺部には、
図5に示すように、切り欠き部14aが設けられていてもよい。また、環状の端子24の内周縁部にも切り欠き部14bが設けられていてもよい。これにより、突起部12を環状の端子24に貫通させた際に、切り欠き部14aと切り欠き部14bとを相互に係合させることが可能になる。その結果、突起部12から環状の端子24が容易に脱離するのを防止又は低減することができる。尚、
図5は、電気治療用端子1の突起部及び接続部22の環状の端子24にそれぞれ切り欠き部を設けた態様を表す斜視図である。
【0037】
切り欠き部14a、14bは矩形状の形状を有している。但し、切り欠き部14a、14bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、楔状等であってもよい。
【0038】
切り欠き部14aは、突起部12の両周辺部に対となるように設けられていてもよい。また、切り欠き部14aは異なる高さ位置に複数設けられていてもよい。さらに、切り欠き部14bも内周縁部の異なる位置に複数設けられていてもよい。
【0039】
また、切り欠き部は、突起部12(板状部12a、12b)及び環状の端子24の何れか一方にのみ設けられる態様であってもよい。この場合でも、突起部12を環状の端子24に貫通させた際に、両者の係合が可能になる。
【0040】
尚、電気治療用端子1A~1Dと接続部22A~22Dとの電気的な接続方法としては、例えば、環状の端子24に代えて導電性を有するクリップを用い、当該クリップにて突起部12を挟持する方法も考えられる。しかし、クリップであると、その機構的及び構造的な観点から、環状の端子24の様に軽量化することは困難である。そのため、たとえ貼着部13を用いて皮膚表面に貼着し固定させても、環状の端子24を用いた電気治療用端子1A~1Dの場合と比較して安定性に劣る。
【0041】
[電気治療方法]
次に、本実施の形態1の電気治療用装置2を用いた電気治療方法について説明する。
本実施の形態の電気治療方法は、電気治療用装置2を用いて通電による電気的な皮膚刺激を行う際、電気治療用端子1に於ける基体部11の接触面11aと、当該接触面11aが当接する人体の皮膚表面の局所的な部分との間に、導電性ジェル状物を介在させて行う。これにより、基体部11の接触面11aから皮膚表面に直接通電されるのを回避し、患者に対する疼痛の防止又は低減が可能になる。
【0042】
尚、導電性ジェル状物は、皮膚表面と基体部11の接触面11aの全面との間で介在しているのが好ましい。これにより、皮膚表面に対し接触面11aから直接電流が流れるのを回避し、患者に対する疼痛を防止又は低減することができる。また、導電性ジェル状物は皮膚表面と基体部11の接触面11aの全面との間で介在していれば足りる。例えば、顔面全体に導電性ジェル状物を塗布するなど、接触面11aが載置されない皮膚表面に、導電性ジェル状物を塗布する必要がない。
【0043】
導電性ジェル状物としては特に限定されないが、導電性を有する材料からなり、生体適合性を有し、潤滑剤としても機能するものが好ましい。ここで、「生体適合性」とは、導電性ジェル状物中に用いられる成分が、皮膚等の生体組織と接触した際に、生体側及び導電性ジェル状物側の何れにおいても不都合な反応を引き起こさずに目的とする機能を果たし、生体との相互作用・干渉作用が極めて少なく、人体に対する安全性が高いことを意味する。導電性ジェル状物の具体例としては、溶媒の水に、例えばグリセリン、BG(ブチレングリコール)、DPG(ジプロピレングリコール)、カルボマー、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、フェノキシエタノール、メチルパラペン、水酸化カリウム等を含有したものが挙げられる。市販品としては、例えば、ソニックデュウ(商品名、太平化学産業株式会社製)等の超音波ジェルが挙げられる。
【0044】
ここで、本実施の形態の導電性ジェル状物には、人体の皮膚表面に対し粘着性を示す粘着性パッドや粘着性シート等は含まれない。
【0045】
供給部21から供給される(電気刺激用)電流としては、例えば、連続電流、断続電流が挙げられる。連続電流としては直流電流及び交流電流が挙げられ、これらのうち本発明では交流電流が好ましい。また、断続電流としては、矩形波(方形波)、正弦波、三角波、鋸歯状波及びその他の波形を有するパルス電流が挙げられる。本発明に於いてはパルス電流が特に好ましい。
【0046】
電気治療用装置2を使用する患者の通電による疼痛を軽減するとの観点からは、例えば、パルス電流の出力電圧等は、生体の表面(又は表層)に位置する疼痛を感じる感覚神経の閾値を大きく超えない範囲で設定されることが好ましい。その様な観点からは、例えば、前記出力電圧は、0Vp-p以上、70Vp-p以下の範囲内が好ましく、15Vp-p以上、40Vp-p未満の範囲内がより好ましい。出力電圧を70Vp-p以下にすることにより、通電による疼痛や火傷等を低減することができ、さらに40Vp-p以下にすることにより疼痛を一層低減することができる。パルス電流の最大電流値は、25mA以下の範囲内であることが好ましい。通電時間は、5分以上、15分以下の範囲内が好ましい。パルス幅は、0.1ms以上、0.5ms以下の範囲内が好ましく、0.1ms以上、0.25ms以下の範囲内がより好ましい。また、周波数は、1Hz以上、50Hz以下の範囲内が好ましい。尚、本発明の場合、人体の皮膚面に対し侵襲することなく通電を行うので、疼痛を感じる感覚神経の閾値は、侵襲して通電を行う場合と比較して高い。
【0047】
電気治療は、供給部21から、接続部22A、22Bを介して電気治療用端子1A、1Bの間に微弱の(電気刺激用)電流を流すことにより行う。電気治療は一対の電気治療用端子1A、1Bを用いて行う場合の他、さらに電気治療用端子1C、1Dも同時に用いて複数対で行ってもよい。
【0048】
尚、電気治療用端子1A~1Dは、患者の電気治療を実施する毎に取り替えて使用してもよく、あるいは適宜の方法にて洗浄及び滅菌処理を行って再使用してもよい。
【0049】
本実施の形態の電気治療方法は、鍼の刺入を行わないので内出血や神経損傷等の発生を防止することができる。また、基体部11の接触面11aは平坦状であるため、皮膚表面に対し面接触した状態で通電することができる。そのため、皮膚表面に対し点接触した場合と比較して、患者が疼痛を感じる感覚神経の閾値を高くすることができ、通電による疼痛や火傷を防止又は低減することができる。その結果、本実施の形態の電気治療方法は、疼痛の低減や体調の改善、肩コリ及び腰痛等の不定愁訴の解消、ストレスの緩和等の他、頭部、顔面及び頸部等への適用も可能なことから美容にも用いることができる。
【0050】
(実施の形態2)
[電気治療用端子]
本実施の形態2の電気治療用端子について、
図6を参照しながら以下に説明する。
図6は、本実施の形態2に係る電気治療用端子の側面図である。尚、実施の形態1の電気治療用装置と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施の形態2の電気治療用端子3は、実施の形態1と比較して、粘着シートからなる貼着部13に代えて、導電性ゲル層31を用いた点が異なる。より具体的には、電気治療用端子3は、
図6に示すように、基体部11の接触面11aの全面に導電性ゲル層31を備えた点が異なる。
【0052】
導電性ゲル層31は導電性ゲルを含有する層である。導電性ゲルは柔軟性を有しており、容易に変形し得る。そのため、導電性ゲル層31は人体の皮膚等に対する密着性が高く、貼着可能である。また、導電性ゲルは保形性を有しているので、予め所定の厚みや形状にした導電性ゲル層31の形成が可能である
【0053】
導電性ゲル層31の粘着性は、人体の皮膚面に対するよりも、基体部11の接触面11aに対して大きい方が好ましい。これにより、電気治療用端子3の使用後に、当該電気治療用端子3を人体の皮膚面から剥離する際に、導電性ゲル層31が皮膚面に残存するのを防止することができる。
【0054】
導電性ゲル層31の厚さは、基体部11の接触面11a及び人体の皮膚面に対する十分な粘着力と、当該皮膚面への必要な電気伝導性が得られる範囲内で適宜設定することができる。
【0055】
本実施の形態2において導電性ゲル層31は基体部11の接触面11aの全面に設けられているが、本発明はこの態様に限定されない。導電性ゲル層31は接触面11aの少なくとも一部に設けられていればよい。
【0056】
[電気治療用装置及び電気治療方法]
本実施の形態2で使用する電気治療用装置は、実施の形態1に係る電気治療用装置と同様の用いることが可能であるため、その説明は省略する。また、前記電気治療用装置を用いた電気治療方法についても、実施の形態1で述べたのと同様の方法で実施可能であるため、その説明は省略する。
【0057】
(実施の形態3)
本実施の形態3の電気治療用端子について、
図7及び
図8を参照しながら以下に説明する。
図7(a)は本実施の形態の電気治療用端子を模式的に表す斜視図であり、同図(b)は電気治療用端子の側面図である。
図8は、電気治療用端子を基体部の接触面側から平面視した底面図である。尚、実施の形態1の電気治療用装置と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施の形態3の電気治療用端子4は、
図7(a)に示すように、実施の形態1と比較して、粘着シートからなる貼着部13に代えて、剛性の支持部41を用いた点が異なる。
【0059】
支持部41は、その中央に略円形状の開口部42が設けられており、当該開口部42に基体部11を嵌合した状態で収容可能となっている。基体部11は開口部42に嵌合しているため、当該開口部42から基体部11が容易に脱離するのを防止することができる。また、支持部41は剛性を有するため、電気治療用端子4を皮膚表面に貼着した際の安定性を一層向上させることができる。
【0060】
開口部42の深さ(すなわち、支持部41の厚さ)は、基体部11の厚さと略同一である。但し、本発明はこれに限定されず、開口部42の深さは、基体部11の高さより大きくてもよい。
【0061】
支持部41の裏面(人体の皮膚面に貼着する側の面)に於いて、開口部42では基体部11の接触面11aが露出しており、これにより当該接触面11aが皮膚面に当接可能となっている。また、開口部42の周縁部には、
図7(b)及び
図8に示すように、環状の段差部43が設けられており、これにより段差部43には、電気治療用端子4を人体の皮膚面に貼着する際に、導電性ジェル状物44を埋入させることが可能になっている。従って、例えば、接触面11aに付着させた導電性ジェル状物44が過剰であった場合にも、当該導電性ジェル状物44を粘着剤層45(詳細については後述する。)にまで進出するのを低減又は抑制することができる。
【0062】
支持部41の裏面には、開口部42及び段差部43を除き、粘着剤層45が設けられている。これにより、支持部41を人体の皮膚面に貼着可能にする。粘着剤層45は従来公知の粘着剤からなる。粘着剤の種類については特に限定されないが、人体に対する安全性が高いものが好ましい。また、粘着剤層45の厚さは、人体の皮膚面に対する十分な粘着力が得られる範囲内で適宜設定することができる。
【0063】
支持体41の大きさとしては、基体部11を開口部42に収容した状態で、支持部41が皮膚面に十分に貼着し、使用時に脱落しない程度に粘着剤層45が設けられていれば、特に限定されない。
【0064】
本実施の形態3に於いては、支持部41の裏面に粘着剤層45が設けられている場合を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、粘着剤層45に代えて、実施の形態2で説明した導電性ゲル層を設けてもよい。
【0065】
[電気治療用装置及び電気治療方法]
本実施の形態3で使用する電気治療用装置は、実施の形態1に係る電気治療用装置と同様の用いることが可能であるため、その説明は省略する。また、前記電気治療用装置を用いた電気治療方法についても、実施の形態1で述べたのと同様の方法で実施可能であるため、その説明は省略する。
【0066】
(その他の事項)
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は当該実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、電気治療用端子に於ける突起部としては、前述の態様の場合の他に、例えば、全体形状が略円柱状、略角柱状、略円錐状又は略角錐状等のものが挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
1、1A~1D、3、4 電気治療用端子
2 電気治療用装置
11 基体部
11a 接触面
12 突起部
12a 板状部
12b 板状部
13 貼着部
21 供給部
22、22A~22D 接続部
23 ケーブル部
24 環状の端子
31 導電性ゲル層
41 支持部
42 開口部
43 段差部
44 導電性ジェル状物
45 粘着剤層