(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】エコージェニックマーキングを有する医療機器及び医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240820BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20240820BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240820BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240820BHJP
A61M 25/098 20060101ALI20240820BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/06
A61F2/82
A61M25/10
A61M25/098
A61M25/10 502
A61M25/00 504
A61B8/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020084358
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】10 2019 112 606.1
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502451568
【氏名又は名称】テューリンギッシェス・インスティトゥート・フューア・テクスティル-ウント・クンストストッフ-フォルシュング・エー・ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー、グンケル
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0221828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0162530(US,A1)
【文献】特表2010-513609(JP,A)
【文献】特開2004-298632(JP,A)
【文献】特表2007-503263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/06
A61F 2/82
A61M 25/10
A61M 25/098
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコージェニックマーキングを有する医療デバイスであって、
前記医療デバイスは、チューブ状の形状を有する要素を備え、
前記要素は、外側ポリマー層と、1以上の内側ポリマー層とを備え、
少なくとも前記外側ポリマー層は、非常に滑らかな表面を有し、
前記医療デバイスは、
前記外側ポリマー層が、レーザー光線に対して透過性であり、
いずれかの内側ポリマー層が、レーザー吸収剤の形態でレーザー添加剤を含み、
前記エコージェニックマーキングが、レーザー光線の作用下で前記レーザー添加剤によって生成される、前記内側ポリマー層中の閉じた空洞又は泡によって形成されて
おり、
前記レーザー吸収剤が、300nm未満の粒子サイズを有するナノスケール粒子であり、
前記泡又は閉じた空洞が、実質的に球状であり、5~50μmの直径を有する
ことを特徴とする、前記医療デバイス。
【請求項2】
いずれかの内側ポリマー層における前記レーザー吸収剤の濃度が、0.05~1重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項3】
マーキング領域及び非マーキング領域の前記外側ポリマー層の前記表面における、DIN EN ISO 4287に従って測定される平均粗さ値R
aが、互いから0.2μmを超えて外れないことを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項4】
レーザーマーキングが、大面積の領域に存在している、あるいは、小面積のラベル、パターン又はマーキングの形態で存在していることを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項5】
前記エコージェニックマーキングの外部のポリマー層が、可視光に対して高い透過性を有することを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項6】
マーキング領域中の泡又は閉じた空洞の数が、1mm
2当たり5~200であることを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項7】
前記泡又は閉じた空洞に、気体が充填されていることを特徴とする、請求項
6に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【請求項8】
前記医療デバイスが、カテーテル、カニューレ、ニードル、ステント、インプラント、ダイレータ
又はバルー
ンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のエコージェニックマーキングを有する医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された超音波視認性を有する医療デバイス、本発明の医療デバイスを製造する方法、並びに治療上及び診断上のインターベンションにおける医療デバイスの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断(ソノグラフィー)は、世界的に、広範囲の臨床検査において最も一般的に使用されている画像検査法である。侵襲的処置の場合に、それは、作業を無害でモニタリングすることができる可能性と同時に、医師によるインターベンションの可能性を提供する。
【0003】
医療デバイスには、カテーテル、カニューレ、ニードル、ステント、インプラント、ダイレータ、バルーン又はマーカーが含まれる。以下では、対象となるこれらの医療デバイスの全てについて、カテーテルを例として説明する。カテーテルに対してされる記載は、カニューレ、ニードル、ステント、インプラント、ダイレータ、バルーン又はマーカーに対しても適用される。
【0004】
この背景における臨床的な大きな関心事は、超音波によるカテーテルの視認性である。所望の作用位置付近の最適な位置に、カテーテル全体が、最終位置を確認するまでの適用の間、容易に描画可能である必要がある。
【0005】
しかしながら、使用されるプラスチック材料の不十分な超音波視認性(エコー輝度)のために、侵襲的なカテーテルを配置し、位置を確認することは困難である。一方の生体組織と、もう一方のカテーテルとの間の物質定数(音響インピーダンス)の差及び有効径が、識別時の制限要因である。
【0006】
さらに、超音波反射は、超音波ビームに対する医療デバイスの表面形状及び配向に依存する。滑らかな表面を有する円筒状の構造、例えば、ニードル、カテーテル又はカニューレは、一般に、鏡のように作用し、反射鏡のような方法で、扇形のコーン状パターンに超音波の波を反射する。それは、受信機によってわずかに補足されるのみである。入射する超音波ビームに対する直交方向からのほんのわずかなずれでさえ、エコーシグナルの強度を大幅に減少させる。
【0007】
現在、市場で入手可能なカテーテルは、肌表面下の数ミリメートルの深さでのみ、超音波によって確実に視覚化可能である。カテーテルの配向が、音波が伝播する方向に近くなるほど、描画は不十分になる。したがって、先行技術によれば、患者の血管系に挿入されるカテーテルの位置は、好ましくは蛍光透視法の補助によって決定される。この目的のために、例えば、金、白金、白金-イリジウム又はタンタルで構成される金属マーカーであって、環状又はチューブ状の構造を有する該金属マーカーをカテーテルに取り付ける、あるいは、カテーテルの材料に、放射線不透過性の物質、例えば、硫酸バリウムを全体又は帯状に詰める。さらなる可能性は、カテーテルの所定の位置における放射線不透過性の物質の特異的な蒸気コーティング(vapor-coating)又は沈着である。この目的に関して、放射線不透過性のマーカーは、実用レベルでX線画像において達成可能なコントラストを維持するために一定の物質体積を有する必要があり、かつ、全ての場合において、カテーテルから分離可能であってはならない。
【0008】
カテーテルの位置を有益に確認するために超音波画像検査法を使用することによって、X線の暴露を回避することができる。
【0009】
先行技術
金属で構成されるデバイスの場合、一般に、デバイス表面に除去的に(subtractively)形成された構造、例えば、エッチング、くぼみ(indentations)、溝(grooves)、ノッチ、スレッド(threads)、突起(projections)等によって、デバイスの視認性を改善することができる。
【0010】
多くの可能な解決策は、気体状物質の音響インピーダンスが、固体に対して、そして、ヒト組織に対しても大きく異なっているという原理に基づいている。気体/固体界面でのインピーダンスの急な変化を利用して、多くの場合で提案されていることは、基質又はコーティングが、例えば、ガスポケット、空洞、孔、気体を含有するチャンネル(channel)又は表面上に空気の封入体を維持するための微少な表面構造を有することである。
【0011】
WO9818387には、医療機器、例えば、ニードルの表面の一部が、泡沫生成剤(bubble-generation agents)のような反応性物質を詰められた材料、例えば、エポキシ樹脂で覆われている該医療機器が開示されている。組織への没入によって起こり得る液体との接触によって、該反応性物質、例えば、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸は、反応して気体を放出し、多数の運動性を有する泡沫を生成する。気体封入体の生成工程による不均一な寸法によって、不均一な超音波反射が、そのような層で生じる。開気孔構造(open-pore structures)は、表面を粗くし、短期間のみ所望のコントラストをもたらし得る。それは、気泡が徐々に消失し、かつ、表面が液体でぬれているためである。
【0012】
所定のセル構造及び高い均一性を有する閉気孔構造(closed-pore structure)は、中空球を埋め込むことによってシンタクチックフォームとして実現可能である。DE202009001974には、塩化ビニリデンでできた中空微小球体であって、事前に、イソブタン等の気体を充填可能である該中空微小球体の埋め込みによって生成された空洞を有する塗装コーティングが開示されている。コーティングには、一般に、医療デバイスに必要な接着を保証するために多数の複雑な前処理及び処理工程を必要とし、かつ、特に圧力下における、可撓性材料からのコーティングの剥離を確実に回避することはできないという不利益がある。カテーテルに対するコーティングは、可撓性及び表面の性質に影響を与える。局部に限定され、別個の、コーティングによって生成されたマーキングは、複雑なマスキング工程によって生成される必要があり、かつ、望ましくない表面の隆起及び粗さをもたらす。
【0013】
粗い表面は、挿入可能なカテーテルの設計の場合には、望ましくない。凹凸は、摩擦抵抗を高めるとともに、さらに、微生物の付着を助長し、カテーテル関連感染のリスクを高める。材料が粗くなるほど、マイクロメートル領域で生じる流量の変化が大きくなり、それにより、血小板の活性化をもたらし得る。
【0014】
さらに、押出成形によって製造された多層構造によって特徴付けられるカテーテルが知られている。個別の層を調節することによって、エコージェニック特性を改善することができる。EP1462056は、2以上の層からなるカテーテルであって、その外層が内層よりも厚い層であり、かつ、気泡が外層内部に分散されている該カテーテルに関する。気泡は、ポリマー微小球を膨張させることによって実現可能である。このようにして生成された層には、気泡が押出成形された部分の全長に存在するため、気泡がむしろ望ましくない領域にも存在するという不利益がある。内因性の構造と、方法に結び付いたノイズとを、超音波画像においてよりよく区別するためのパターン化されたマーキングの生成は、不可能である。医療デバイスの物理的特性は、大きく影響される。例えば、カテーテルにとって大抵重要である透明性は失われる。
【0015】
US2014221828には、チェス盤形のエコージェニックパターンを有する医療デバイスであって、キャスティング又は金属フィルムの焼付けによって、あるいは、気体が充填されているプラスチック構造によって生成された該医療デバイスが開示されている。上記の形態において、プラスチック構造に推奨されるレーザー処理には、アブレーション及び泡形成のために、表面にくぼみ及び隆起が生じるという不利益がある。レーザービームによって生じる材料の変化は、表面に近い領域で特に作用し、層深度が深くなるとともに減少することが知られている。カテーテル壁の内部にレーザービームの作用を限定することができる方法及び表面の凹凸の形成を回避する方法に関する解決策は示されていない。
【0016】
カテーテルに対する別個の超音波エコーマーキング及びラベルであって、使用性にわずかな影響しか及ぼさない該超音波エコーマーキング及びラベルを、適切かつ効率良く生成するための技術的な解決策は、今日まで記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この背景に対して、本発明の目的は、医療デバイス、特にカテーテルに、高エコー性(高反射性)の領域であって、必要最小限の程度まで縮小されているとともに、表面の滑らかさが従来のカテーテルと比較して損なわれていない領域を設けることによって、患者の身体内における超音波に基づく画像描画を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明によって本質的に提供されるものは、2以上の層からなる熱可塑性プラスチックカテーテルの別個の領域及び層が、レーザー処理によって生成される閉気孔構造を有することである。所望の正確な位置に存在する空洞の実現は、カテーテル表面に対するレーザービームの特定の動きによって達成され、区別された用途を有する多層構造であって、層構造中のレーザー添加剤が均一に分布する多層構造によっても達成される。
【0019】
したがって、本発明は、エコージェニックマーキングを有する医療デバイスであって、
前記医療デバイスは、チューブ状の形状を有する可撓性要素を備え、
前記可撓性要素は、外側ポリマー層と、1以上の内側ポリマー層とを備え、
少なくとも前記外側ポリマー層は、非常に滑らかな表面を有し、
前記医療デバイスは、
前記外側ポリマー層が、レーザー光線に対して透過性であり、
いずれかの内側ポリマー層が、レーザー吸収剤の形態でレーザー添加剤を含み、
前記エコージェニックマーキングが、レーザー光線の作用下で前記レーザー添加剤によって生成される、前記内側ポリマー層中の閉じた空洞又は泡によって形成されている
ことを特徴とする、前記医療デバイスに関する。
【0020】
可撓性要素は、好ましくは、6~18シャリエール(2mm~6mm)、特に、2.5mm~5mmの外径を有する。壁厚は、好ましくは、0.2mm~0.6mm、特に、0.25mm~0.4mmである。可撓性要素は、超音波を検出可能なカテーテルとして有用である。
【0021】
レーザーによって発泡させる方法において、プラスチックに含まれる有機化合物は、局部加熱によって分解され(broken up)、破壊され(destroyed)、蒸発する。この工程において、プラスチックに存在する炭素は、酸化されてCO2を生成し、気泡を形成する。溶融物中の空洞は、材料が冷却されると、材料の構造中に堅く組み込まれる。本明細書において、発泡(foaming)は、互いから相対的に遠い距離に1mm2当たり5~200の少数の泡を生成することを意味すると理解される。
【0022】
この発明の背景において、所謂、化学発泡剤は、特に使用しない。化学発泡剤は、熱分解の結果として高温で気体を放出し、それによって発泡体構造を生成することができる。このような添加剤は、通常、生理的に好ましくない成分又は分解産物によって特徴付けられ、医学的用途に適切でない。さらに、化学発泡剤は、位置正確的な方法では活性化しない。
【0023】
熱注入に関して、レーザービームは、発泡する表面に向けられる。コンピュータ制御の光学システムによって、所望の出力を有する迅速に偏向可能なレーザーパルス(rapidly deflectable laser pulses)が、発泡する位置で特異的に作用することができる。
【0024】
熱の誘導は、熱的に、かつ、幾何学的に正確に規定される。大面積の領域と、小面積のラベル、パターン及びマーキングとの両方が、高い正確性で発泡可能である。
【0025】
レーザー光との相互作用において、プラスチックは、光の波長に依存して、異なる程度のエネルギーを吸収するという点で、多くのその他の材料と異なる。
【0026】
ほとんどのプラスチックは、NIR/IR波長の領域ではレーザー透過性、すなわち、レーザー光線と相互作用を示さない。レーザーの利益を利用するために、容易に分散される吸収剤をカテーテルの特定の層に導入することによって、照射による正確な位置での熱の誘導を保証する。レーザー添加剤は、カテーテルのいずれかの内側ポリマー層に導入され、レーザー添加剤の存在しない外側ポリマー層によって常に覆われていることが好ましい。ポリマー層の弾性特性とともにこの特徴の結果として、発泡形成による表面粗さ又は表面の凹凸に対する影響を無視することができる。粒子サイズが小さく、使用量が少ない適切な吸収物質を選択することによって、機械的特性及び光学的特性に対する悪影響を可能な限り回避することができる。
【0027】
ナノスケールで混合された金属酸化物、特に、酸化インジウムスズ又は酸化アンチモンスズ等は、透明材料に対する吸収添加剤として適切である。ナノスケールの吸収添加剤は、可視光に対する透過性の維持と、空洞の均一なサイズ及び分布の達成とに寄与し、これは、パターン又はレタリング文字のデザインに対して、並びに、超音波視認性に対して、有利な効果を有する。
【0028】
プラスチックを発泡させるために、1064nmの波長域であるコスト効率の良いダイオード励起固体レーザー及びファイバーレーザーが利用可能であり、同様にマーキング及びラベリングのためにも使用される。基材に対してさらにより正確にマーキングするため、及び熱の影響を低減するために、532nm(only 532 nm)又は355nm(even 355 nm)の波長を有する、技術的により複雑な機器を使用することも可能である。
【0029】
本発明によるマーキングは、閉気孔構造によって特徴付けられ、その空洞は、5~50μmのサイズで実質的に球状であり、カテーテルのポリマー層の内側にのみ局在する。添加剤及びレーザーのパラメータ、例えば、出力密度、パルス周波数及び偏向速度を変動させることにより、発泡強度を具体的に設定することが可能である。パラメータは、所望の孔径及び孔数が生成されるように選択される。超音波視認性は、孔の直径が大きいほど増加するが、そのサイズは、壁厚に依存して制限される場合がある。1mm2の面積に10~50の孔数のみで、超音波診断におけるマーキングの視覚化に十分な改善がもたらされることが明らかとなった。
【0030】
本発明の主要な態様は、別個のエコージェニックマーキングが、カテーテル表面の性質を変化させることなく生成されることである。特許請求の範囲に係るカテーテルは、マーキング領域を含む表面全体が、カテーテルの材料及び押出成形条件によってのみ決定される、一貫して滑らかな性質を有するという利益を有する。
【0031】
レーザーで誘導される発泡によるとともに、開気孔による望まない表面変化を回避するために、提示されることは、レーザー感受性の層に、添加剤フリーのレーザー透過性カバー層であって、共押出成形されるか、あるいは、何か他の方法で生成される該レーザー透過性カバー層を重ねることである。好ましい技術において、内側ポリマー層においてのみ発泡形成を特異的に誘導するために、異なる透過挙動の層を利用する。2層を有する好ましい設計に加えて、カテーテルは、さらに追加のポリマー層を含んでもよい。2層のレーザー透過性層の間にレーザーアクティブな層(laser-active layer)を組み込むことによって、例えば、カテーテルルーメン(catheter lumen)の表面が、レーザー処理に影響されないことを保証することも可能にする。通常、カテーテルに使用される熱可塑性材料、例えば、ペバックス、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン又はソフトPVCの弾性特性によって、発泡層の変形が、カテーテルの外側の表面まで伝達されないことを保証する。カバー層の厚みは、100μm未満で十分であるため、通常、発泡層よりも薄くすることができる。DIN EN ISO 10555-1に従う血管内カテーテルのための要求に応じ、外側の表面は、2.5倍の倍率で凹凸及び異物がないように見える。デジタル3D顕微鏡検査を使用する表面分析によって、マーキング領域及び非マーキング領域における、DIN EN ISO 4287:2010に従って測定される平均粗さ値Raが、互いから0.2μmを超えて外れないことが示される。
【0032】
マーキングのエコー輝度の増加によって、超音波検査の補助で視覚的に医療機器を描画することができる。マーキング領域の気体封入体は、音波のより強い反射を発生させ、その結果、超音波画像(Bモード)において、周囲の物質と比較してはっきりと明るいことが示される。カテーテルの検出可能性は、それによりはっきりと改善される。マーキングのパターン化されたデザインによって、内在性の構造の容易な区別が可能であり、ずれ、曲がり又はねじれは容易に識別可能である。さらに、カテーテルの後続の操作のために、特に目的の領域に目盛りを付与する可能性を、パターン及び該領域をハイライトすることによってもたらす。
【0033】
球状の気体封入体の角度非依存的な高い散乱特性の結果として、入射超音波に対して不都合に医療デバイスが傾斜した位置にある場合においてさえ、高い画像コントラストが生成される。既知の解決策と対照的に、本発明に従った設計は、エコー輝度が特に入射角の増大とともに増強されるという利益を提供する。
【0034】
ポリマー層の1層にX線造影剤(例えば、硫酸バリウム又はヨード造影剤)を充填することによって、エコージェニック特性と良好なX線視認性とを兼ね備えることも可能である。
【0035】
カテーテルに対する使用に加えて、特許請求の範囲に係る方法は、人体内部で使用されるさらなる医療デバイスに対しても実施可能である。これらは、特に、カニューレ、ニードル、ステント、インプラント、ダイレータ、バルーン及びマーカーである。熱可塑性材料から構成される必要な層は、押出成形、キャスティング、カバーもしくはスリーブの収縮包装又はカバーもしくはスリーブの接着、あるいは、ポリマーの溶液、溶融物又は粉末によるコーティングによって生成可能である。
【0036】
以下では、例示的な実施形態に基づいて本発明を説明する。本発明のさらなる詳細、利益及び特徴は、特許請求の範囲から直ちに明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、実施例に従って製造されたカテーテルの概略図(a)及び上面図(b)を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例に従って製造されたカテーテルの断面(a)及び表面(b)のSEM画像を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例に従って製造されたカテーテルの0°の位置(a)及び45°の位置(b)における超音波画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1aは、エコージェニックマーキング02を付与されたカテーテル01の基本的な構造を示す。カテーテルは、2層を有し、2層03,04は、同一のポリマーマトリックス又は異なる材料のいずれかからなっていてもよく、かつ、外側の層03は、添加剤を含まないとともに、内側の層04は、0.05~1%のごく少量でレーザー吸収剤が充填されている。非照射領域における可視光に対する良好な透過性と、照射領域における可能な限り均一な孔のサイズ及び分布とを達成するために、粒子サイズが300nm未満であるレーザー吸収剤を使用することが好ましい。レーザー吸収剤の粒子がナノスケールである結果として、パターン形成の有効性が、外形の精度及び画定によって測定される場合、レーザー添加剤の最小限の使用で最適化される。
【0039】
内側の層04中の気泡05は、レーザー処理によって特異的に生成される。レーザー吸収剤によって、内側の層04のみが、レーザー光線に曝されて加熱され、空洞05の形成が、表面では起きない。添加剤が充填されていない外側カバー層03は、変化のない状態を維持し、比較的薄い層厚みで実現可能である。
【0040】
レーザービームの伝播経路は、マーキングされる予定のカテーテルの領域02のみに限局される形で孔構造が生じるようにプログラムされる。示されている例において、カテーテルは、外周全体を囲むようにストライプのマーキング02を有する。様々な数のストライプを有する群におけるストライプの配置によって、超音波画像(
図3a及び3b)における正確な割当を可能にする。
【0041】
図2aに示されるように、カテーテルの添加剤が添加された層04の断面のSEM画像は、閉気孔空洞05が、5~50μmのサイズで形成されていることを示す。レーザーパワーは、層の深部ほど減衰し、空洞のサイズ及び数は、結果として減少する。2層式カテーテルのマーキング領域に対する表面のSEM画像(
図2b)は、レーザー処理によって表面トポグラフィに変化が引き起こされていないことを裏付けている。
【0042】
線状に伸びる超音波ヘッド(linear sonic head)に対して0°(直交角度)及び45°の超音波角度で、かつ、10MHzの周波数で、水浴中における超音波視認性を試験した。非マーキング領域08,09と比較してマーキング10,11のコントラストを評価するために、0の値に対応して100%黒、255の値に対応して100%白である図形処理プログラムによって個々の画像領域のグレースケールスペクトルを互いに比較した。超音波画像において、本発明に従って生成されたマーキングは、非常に良く目立ち、水に対する黒のバックグランド及びカテーテルの非処理領域から200を超える平均輝度値を有する。
【実施例】
【0043】
この例は、カテーテルへの本発明による超音波マーキングの生成を説明する。
【0044】
チューブ押出成形システムによって、外径が3mm、外側ポリマー層の厚みが0.1mm、内側ポリマー層の厚みが0.3mmである2層式カテーテルを製造した。型式Elastollan 1180 A10 FCのTPUを両方の層に使用した。内側ポリマー層に対して、レーザー添加剤を調合した1%のマスターバッチを、TPUの粒状材料と前もって混合した。TPUを主成分として押出機で混合することによりマスターバッチを製造し、マスターバッチは、10~20nmの粒子サイズを有するアンチモンドープ酸化スズを10%含んでいた。長さ調節のためにチューブを切断し、FOBA製パルスYbファイバーレーザーを使用して、チューブをラベルした。長方形のマーキング02(画像1)を、1x3mmの寸法でプログラムし、チューブの外周全体にぐるりとチューブを180°回転させた後のレーザー照射を2回繰り返すことによって実現する。適切なレーザーパラメータを選択することによって、マーキング位置02で、グレーの着色及び発泡の両方を達成する。グレーの着色によって、マーキングを人間の目で視覚的に識別することもできる。レーザー処理において適用される値は、周波数20kHzにおいて、パルスエネルギー4.2ワット及び波長1064nmを有するパルス幅120nsである。
【0045】
カテーテルの断面及び表面の走査型電子顕微鏡による画像は、直径5~50μmの空洞が、レーザー添加剤をドープされた内側ポリマー層に形成されていること、及びカテーテルの表面が、滑らかな状態を維持していることを示す。このサイズ範囲にある空洞の平均数は、1mm2当たりおよそ100である。3Dデジタル顕微鏡VHX-6000を使用して、表面トポグラフィを分析した。マーキングの全幅にわたって特定された算術平均粗さ値Ra(DIN EN ISO 4287:2010)が0.19μm、かつ、平均粗さ深度(averaged roughness depth)Rzが1.7μmであり、カテーテルの非マーキング領域(Ra:0.16μm,Rz:1.6μm)に対して有意な差はなかった。
【0046】
Mindray製DP-50超音波診断機器及び線状に伸びる超音波ヘッドを使用して、水浴中及びポークモデル(pork model)において超音波特性を試験した。
図3a及び3bは、発信された超音波に対して0°(3a)及び45°(3b)の位置で水07中に浸漬されたカテーテルの超音波画像を示す。次の表は、グレー値のヒストグラムから特定された、超音波画像の様々な領域の平均輝度値の総括を示す。
【0047】
【0048】
主観的な目視観察及び画像のデジタル分析の両方によって、エコージェニックマーキングの高度な機能性に対する証拠が提供される。視認性の増大は、カテーテルの位置に対する超音波の角度の増大によって判断可能である。