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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240820BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01D5/244 A
G01D5/245 110L
G01D5/245 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020124015
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020490
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000138071
【氏名又は名称】株式会社メトロール
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 崇元
(72)【発明者】
【氏名】菅野 隆行
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169696(JP,A)
【文献】特開2001-221608(JP,A)
【文献】特開2010-096540(JP,A)
【文献】特開2011-220832(JP,A)
【文献】特開2008-101932(JP,A)
【文献】特開2010-197373(JP,A)
【文献】特開平09-229612(JP,A)
【文献】特開昭61-083710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0096723(US,A1)
【文献】国際公開第2020/158677(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/069680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/62
G01B 7/00- 7/34
H01H 36/00-36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って延びる移動経路上を可動体とともに移動するように構成される磁石であって、前記第1の方向に垂直な第2の方向において異なる磁極を有する磁石と、
前記移動経路から前記第2の方向に等しい距離だけ離間するとともに、前記第2の方向に延びる基準線から等しい距離に配置された1対の磁気センサであって、同一のセンサ特性を有する1対の磁気センサと、
前記1対の磁気センサ間の距離と、前記磁石の前記第1の方向の長さとが等しい構成により、前記1対の磁気センサの双方の出力変化率の絶対値が略最大となった状態で前記磁石が前記基準線上に位置したことを検出するように構成される検出部と
を備える位置検出装置。
【請求項2】
前記磁石の前記第1の方向の長さは、略1.5mm以上である、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁石は略5mm角以内の大きさである、請求項1又は請求項に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記磁石は略1.5mm角以上の大きさである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記磁石は、前記第1の方向の長さが略1.5mm~3mmであり、前記第2の方向の長さが略2mm以上、略4mm以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記磁石は、前記第1の方向及び前記第2の方向に垂直な第3の方向の長さが略1mm以上、略3mm以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記磁石の形状は長方形であり、当該長方形の対称軸が、前記第1の方向及び前記第2の方向に一致する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記1対の磁気センサは、前記第1の方向に、略1.5mm以上離間する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記磁石の前記移動経路の中心軸と前記1対の磁気センサとの間の距離は、略0.3mm以上、略0.8mm以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記磁石は、サマリュウムコバルト磁石又は防錆処理をしたネオジム磁石である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記位置検出装置の待機時における前記磁気センサの出力と、前記磁石を前記第1の方向に移動させた後、前記磁石が前記第1の方向とは逆方向に戻り終えた時点の前記磁気センサの出力とを比較する比較部と、
前記比較部による当該比較結果に基づいて、前記位置検出装置の異常を診断する第1診断部とを更に備える、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記位置検出装置の待機時における振動による、前記磁気センサの出力の値の変動に基づいて、前記位置検出装置の異常を診断する第2診断部を更に備える、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に係り、特に可動体の位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、マシニングセンタのような工作機械においては、正確な加工を実現するために工具の初期位置を検出する必要がある。このような工具などの検出対象により移動させられる可動体の位置を検出する位置検出装置として、可動体の移動に応じて電気的接点を機械的にオン/オフするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような従来の位置検出装置では、機械的にオン/オフすることを繰り返すことにより接点が劣化するため、寿命が短いという問題がある。また、異物の混入や酸化皮膜の形成により接点間の導通不良が生じたり、繰り返し接触することによる接点の摩耗や凹みなどにより検出精度が低下したりする問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-183699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、長寿命で、検出精度が高く、安定して位置検出を行うことができる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、長寿命で、検出精度が高く、安定して位置検出を行うことができる位置検出装置が提供される。この位置検出装置は、第1の方向に沿って延びる移動経路上を可動体とともに移動するように構成される磁石を備える。この磁石は、上記第1の方向に垂直な第2の方向において異なる磁極を有する。また、上記位置検出装置は、上記移動経路から上記第2の方向に等しい距離だけ離間するとともに、上記第2の方向に延びる基準線から等しい距離に配置された1対の磁気センサを備える。上記1対の磁気センサは、同一のセンサ特性を有する。上記位置検出装置は、前記1対の磁気センサ間の距離と、前記磁石の前記第1の方向の長さとが等しい構成により、上記1対の磁気センサの双方の出力変化率の絶対値が略最大となった状態で上記磁石が上記基準線上に位置したことを検出するように構成される検出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態における位置検出装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態における磁石の位置と磁気センサの出力との関係を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施形態における磁気センサの出力の温度による変化を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施形態における磁石の形状と最大磁束の関係を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態における磁石の厚みと磁束密度の関係を示すグラフである。
図6図6は、本発明の実施形態における磁気センサのトラックずれと磁石との位置関係を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態におけるトラック方向の磁気センサのズレと出力分布との関係を示すグラフである。
図8図8は、本発明の実施形態における磁石の位置と磁気センサの出力変化率との関係を示すグラフである。
図9図9は、本発明の実施形態における磁気センサと磁石との距離(ギャップ)と磁束密度との関係を示すグラフである。
図10図10は、本発明の実施形態における検出点を中心にしたX方向の距離と、出力との関係を示すグラフである。
図11図11は、本発明の実施形態における検出点を中心にしたX方向の距離と、出力変化率の実測値との関係を示すグラフである。
図12図12は、位置検出装置1が正常である場合の、内部データとしての内部センサの値の変化を示す図である。
図13図13は、戻り不良があるために位置検出装置1が異常である場合の、内部データとしての内部センサの値の変化を示す図である。
図14図14は、軸受けの劣化があるために位置検出装置1が異常である場合の、内部データとしての内部センサの値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る位置検出装置の実施形態について図1から図14を参照して詳細に説明する。なお、図1から図14において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図2から図14においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0009】
〔1 基本構成〕
図1は、本発明の第1の実施形態における位置検出装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態における位置検出装置1は、固定部10と、固定部10上に固定された1対の磁気センサ21,22と、信号線12を介して磁気センサ21,22に接続された検出部30と、例えばマシニングセンタの工具などの検出対象により移動させられる可動体2に取り付けられた磁石40とを含んでいる。可動体2は、矢印で示すようにX方向(第1の方向)に沿って移動可能となっており、この可動体2に取り付けられた磁石40は、X方向に沿って延びる移動経路M上を移動するように構成されている。位置検出装置1は、このようにX方向に移動可能な可動体2(ひいてはマシニングセンタの工具などの検出対象)が所定の位置(図1の基準線S)にあるか否かを検出するものである。
【0010】
磁石40は、Z方向(第2の方向)において異なる磁極を有している。例えば、図1に示すように磁石40の+Z方向側の磁極41がN極、-Z方向側の磁極42がS極であってもよいし、あるいはこの逆であってもよい。磁石40の形状としては、直方体状、立方体状、円筒状、円板状のものなどが考えられる。
【0011】
磁気センサ21,22は、周囲の磁場を検出するものであり、同一のセンサ特性(電気特性・磁気特性・温度特性)を有している。これらの磁気センサ21,22は、X方向に延びる固定部10上に並べられており、磁石40が移動する移動経路MからZ方向に等しい距離だけ離間した位置に配置されている。磁気センサ21,22は、それぞれZ方向に垂直なセンサ感知面21A,22Aを有している。また、磁気センサ21,22は、Z方向に延びる基準線Sから等しい距離に配置されている。換言すれば、2つの磁気センサ21,22を結ぶ線分の中点上に基準線Sが位置している。なお、図1に示すように、2つの磁気センサ21及び22の間の距離は、磁石40のX方向の長さLと略同一である。とりわけ、磁石40の形状が直方体状、及び立方体状の場合には、2つの磁気センサ21及び22の間の距離は、磁石40のX方向の辺の長さと略同一である。また、磁石40の形状が円筒状、又は円板状の場合には、磁気センサ21及び22の間の距離は、磁石40の円の直径の長さと略同一である。このような磁気センサ21,22としては、ホール素子、磁気変調型センサ、磁気抵抗素子、SQUID磁気センサなどを用いることができる。
【0012】
検出部30には、磁気センサ21,22からの出力が入力されており、検出部30は、これらの磁気センサ21,22からの出力を比較する比較回路を含んでいる。図2は、磁石40の位置と磁気センサ21,22の出力との関係を示すグラフである。図2において、磁気センサ21の出力は実線で、磁気センサ22の出力は点線で示されている。図2の横軸は基準線Sから磁石40の中心までの距離を表しており、縦軸は磁気センサ21,22の出力を表している。なお、この例では、磁気センサ21のX方向の中心と磁気センサ22のX方向の中心との間の距離を約3mmとし、磁石40のX方向の幅を約4mmとしている。
【0013】
図2に示すように、磁石40のX方向の位置に応じて磁気センサ21,22のセンサ出力は凸状となる。ここで、磁気センサ21と磁気センサ22とは同一のセンサ特性を有しているため、磁石40が磁気センサ21と磁気センサ22とを結ぶ線分の中点に位置しているとき、すなわち移動距離=0mmのとき(磁石40が基準線S上に位置しているとき)、両者のセンサ出力が一致する。換言すれば、図2に示すように、磁気センサ21の出力特性と磁気センサ22の出力特性とが交差する点Pは基準線S上に位置することとなる。したがって、磁気センサ21の出力と磁気センサ22の出力とが一致しているときには、磁石40が基準線S上に位置していると判断することができる。検出部30は、この原理を用いるものであり、磁気センサ21からの出力と磁気センサ22からの出力とを比較し、両者が一致したときに磁石40が基準線S上に位置していると判断する。
【0014】
このような構成により、機械的な接点を用いることなく、磁石40が基準線S上に位置したことを検出することができる。すなわち、本実施形態の位置検出装置1によれば、機械的な接点を用いることなく、可動体2の位置を検出することが可能となる。このように機械的な接点を用いないため、接点の劣化による寿命の短縮化や接点間の導通不良、接点の摩耗や凹みによる検出精度の低下といった問題が生じない。
【0015】
ここで、磁石40が基準線S上に位置しているときに磁気センサ21,22の出力の変化率が最大となるように磁気センサ21,22を配置すれば、磁石40が基準線Sの近傍にあるときに磁気センサ21,22の出力が変化しやすくなるため、磁気センサ21,22の出力が一致する点がより正確に特定される。したがって、磁石40の位置の検出精度が高くなる。
【0016】
また、磁気センサ21,22の出力特性は温度によって変化するが、磁気センサ21,22のセンサ特性が同一であるため、磁気センサ21,22の出力特性が温度によって変化しても、磁気センサ21の出力特性の変化と磁気センサ22の出力特性の変化とが互いに相殺される。このため、図3に示すように、温度が低下した際の磁気センサ21の出力特性と温度が低下した際の磁気センサ22の出力特性とが交差する点PLは基準線S上に位置し、温度が上昇した際の磁気センサ21の出力特性と温度が上昇した際の磁気センサ22の出力特性とが交差する点PHも基準線S上に位置する。したがって、上述したように、磁気センサ21の出力と磁気センサ22の出力とが一致しているか否かを判断することで、温度が変化した場合においても、磁石40が基準線S上に位置していることを安定して検出することができる。なお、図3においては、図2に示す磁気センサ21,22の出力特性は細い点線で示されている。
【0017】
同様に、磁気センサ21,22の電気的特性や磁気特性が変化した場合においても、磁気センサ21の出力特性の変化と磁気センサ22の出力特性の変化とが互いに相殺されるため、磁石40の位置を安定して検出することができる。また、Z方向や紙面に垂直なY方向における外部磁場も磁気センサ21と磁気センサ22の両方に同様に作用し、磁気センサ21の出力特性の変化と磁気センサ22の出力特性の変化とが互いに相殺されるため、これらの外部磁場の影響を抑えて磁石40の位置を検出することができる。また、磁石40のZ方向やY方向の変位に対する磁気センサ21,22の出力特性の変化が相殺されるため、磁石40のZ方向やY方向の変位の影響を抑えて磁石40の位置を検出することができる。
【0018】
なお、磁気センサ21,22の出力をAD変換してデジタルフィルタによってノイズを低減してもよい。あるいは、磁気センサ21,22のアナログ出力をローパスフィルターにかけてノイズを除去してもよい。
【0019】
〔2 構成の具体例〕
〔2.1 磁石の大きさ〕
磁石40及びセンサ基板は、精密機器に組み込むために出来るだけ小さいことが要求される。そこで、磁石40は、5mm角以内、又はφ5mm以下とすることが好適である。一方で、位置検出装置1の組み立て作業のしやすさを考慮すると、磁石40は適度な大きさを有することが望まれるため、磁石40は、1.5mm角以上とすることが好適である。
【0020】
〔2.2 磁石の形状〕
磁石40は磁場が強いほど、S/N比の値が良くなると共に、繰り返し精度が良くなる。すなわち、磁石40は、大きく厚いことが望まれる。また、磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離がより近いことが望まれる。
図4は、磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40とのギャップを0.8mm、磁石40の厚み(Z方向の長さ)を1.0mmとした際の磁石の形状と最大磁束の関係を示すグラフである。図4中の各々の線は、磁石40のY方向の長さを示す。すなわち、図4は、磁石40のY方向の長さが、1mm、2mm、3mm、4mm、及び5mmの各々の場合において、磁石40のX方向の長さを変化させた場合の磁束密度の値の変化を示している。図4のグラフから分かるように、磁石40のX方向の長さは、1.5mmを下回ると磁束密度の値が小さすぎる一方で、3mmを超えても、磁束密度の値にあまり変化はない。すなわち、磁石40のX方向の長さは、1.5~3mmとすることが好適である。一方で、磁石40のY方向の長さは、2mm~4mmとすることが好適である。
【0021】
また、磁石40の磁化方向の磁場は、磁石40の厚み(Z方向の長さ)にほぼ比例するが、厚すぎると磁石40の形状が大きくなり、切り粉の付着を防ぐためにも、磁気シールドを強力にする必要があるため、磁石40の厚みを適度な範囲とすることが望ましい。
図5は、磁石40のX方向及びY方向の長さを、2mm×3mm及び3mm×4mmとした場合の、磁石40のZ方向の長さ(厚み)と磁束密度との関係を示すグラフである。図5のグラフに示されるように、磁石40の厚みが1mmを下回ると磁束密度が小さすぎる一方で、厚みが3mmを超えると、磁束密度の値にあまり変化がない。すなわち、磁石40の厚みは、1mm~3mmとすることが好適である。
【0022】
また、本実施形態で用いる磁気センサ21及び磁気センサ22を含む位置検出装置1の原理に基づけば、X方向の位置決め精度は、磁気センサ21及び磁気センサ22のトラックずれに依存しないが、磁気センサ21及び磁気センサ22の実装誤差が生じた場合には、トラックずれの影響により、位置誤差が発生する。このとき、磁石40として、小型でかつ丸型や正方形の磁石を使用すると、トラックすなわちX軸から、Y方向の外側に向かって、磁場の減衰が大きくなり、S/N比が落ちやすく、原点位置ずれが発生しやすい。このため、磁石40は、長手方向がY方向となるような長方形とすることが望ましい。
図6は、磁気センサ21及び磁気センサ22のトラックずれと、磁石40が長方形だった場合の位置関係を示す図である。図6に示すように、磁石40の磁場は、長手方向をY方向とするような楕円状となっているため、トラックずれの影響は小さくなる。
図7は、磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40とのギャップが0.8mm、磁石40のX方向、Y方向、Z方向の長さが3mm×4mm×1mmだった場合の、トラック方向の磁気センサ21及び磁気センサ22のずれと、出力分布との関係を示すグラフである。磁石40は長手方向をY方向とする長方形の形状であるが、この場合、トラック方向のずれが0.3mmあったとしても、出力の減衰率は2%の範囲に収まる。このことからも、磁石40は、長手方向がY方向となるような長方形とすることが好適であることが分かる。
【0023】
〔2.3 磁石の材質〕
磁石40は、強く、錆びにくく、温度係数が良い材質が望ましい。より具体的には、温度係数が-0.03%/℃のサマリュウムコバルト磁石や、-0.13%/℃の防錆処理をしたネオジム磁石が好適である。
【0024】
〔2.4 磁気センサの間隔〕
1対の磁気センサ21及び磁気センサ22を表面実装する場合、磁気センサ21と磁気センサ22とを、略1.5mm以上離すことが好適である。
【0025】
〔2.5 磁石と磁気センサとの関係〕
1対の磁気センサ21及び磁気センサ22の出力の最大変化率を得られる磁石40のX方向の長さは、磁気センサ21と磁気センサ22との実装距離に略等しいので、上記のように、磁気センサ21と磁気センサ22とが略1.5mm以上離れている場合、磁石40のX方向の長さも略1.5mm以上の長さとすることが好適である。
図8は、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40とのギャップが0.8mmであり、磁石のX方向、Y方向、及びZ方向の長さが、3mm×4mm×1mmであると共に、磁石40のX方向の長さが、磁気センサ21と磁気センサ22との実装距離に略等しい場合における、磁石40の位置と、磁気センサ21及び磁気センサ22の出力変化率との関係を示すグラフである。図8に示されるように、磁石40の位置が0、すなわち磁石40が基準線上に位置したとき、磁気センサ21及び磁気センサ22の出力変化率の絶対値の双方が略最大となっている。
【0026】
また、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)は、繰返し精度、部品精度、組立て精度、組立て確認しやすさ等で決定される。具体的には、例えば部品精度として±0.1mm、実装精度として0.2mm、メカ変動、すなわち、例えば軸のガタ等に由来する変動として0.1mm以下の値が求められることを考慮して決定される。その結果、1対の磁気センサ21と磁石40との距離(ギャップ)は、0.3mm以上0.8mm以下とすることが好適である。
【0027】
図9は、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)と、磁束密度との関係を示すグラフである。当該距離(ギャップ)が0.3mm以上0.8mm以下の場合、磁束密度は、概して、120mT以上170mT以下となる。
【0028】
図10は、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)が、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmの場合の、検出点を中心にしたX方向の距離と、出力との関係を示すグラフである。なお、図10のグラフにおいて、「Ch1」は磁気センサ21の出力を示し、「Ch2」は磁気センサ22の出力を示す。図10から分かるように、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)が1.0mmのグラフは、他のグラフに比較して、出力が小さいことが示された。
【0029】
図11は、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)の間隔が、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmの場合の、検出点を中心にしたX方向の距離と、出力変化率の実測値との関係を示すグラフである。なお、図11のグラフにおいて、「Ch1」は磁気センサ21の出力変化率を示し、「Ch2」は磁気センサ22の出力変化率を示す。図10から分かるように、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22と磁石40との距離(ギャップ)が1.0mmのグラフは、他のグラフに比較して、出力変化率の絶対値が小さいことが示された。
【0030】
〔3 内部データの活用例〕
上記の位置検出装置1の内部データである磁力データ(センサデータ)を監視することで、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22の状態を把握することにより、位置検出装置1の故障診断をすることが可能である。より詳細には、内部データを監視することにより、位置検出装置1のメンテナンス時期の診断、1対の磁気センサ21及び磁気センサ22の故障の診断、位置検出装置1の使用環境診断が可能となる。
【0031】
メンテナンス時期の診断のためには、内部データを用いて、位置検出装置1の摺動部に切り粉や切削液が付着、堆積したことによる戻り不良を把握したり、動作回数を把握したりすることが有効である。1対の磁気センサ21及び磁気センサ22の故障の診断のためには、切子や切削液の付着、内部負圧、軸受の劣化に起因する戻り不良を把握したり、衝突による廻止め破損を把握したりすることが有効である。使用環境診断のためには、例えば、周辺温度が変化したことにより、位置検出装置1の内部が負圧になったことに起因する戻り不良を把握したり、加工振動、パレットチェンジによる衝撃、ワーク着脱、クランプ/アンクランプによる衝撃、及び、格納搬出による衝撃に起因する軸受の劣化を把握したりすることが有効である。
【0032】
以下、図12図14を参照することにより、内部データを用いた戻り不良、及び軸受の劣化の検知方法について説明する。
【0033】
図12は、従来の接点を用いた内部出力であって、コンタクト11を押し込んだ後、戻ってくる状況における内部出力を示す。
【0034】
図12において、(a)に示すように、待機時にはコンタクト11が正常な待機時高さにある。続いて、(b)に示すようにコンタクト11を押し込む。その後、コンタクト11への負荷を外すと、(c)に示すようにコンタクト11は元の位置に戻る。この際、(a)でのコンタクト11の待機時高さと、(c)でのコンタクト11の待機時高さとは等しいことから、(a)から(b)に至る際のコンタクト11の押込み量と、(b)から(c)に至る際のコンタクト11の戻り量とは等しくなる。また、内部センサの値に関しても、コンタクト11の押込み前の値と、コンタクト11を押し込んでから戻った後の値とは等しい。
【0035】
図13は、戻り不良があるために位置検出装置1が異常である場合の、内部データとしての内部センサの値の変化を示す。
図13に示す例においては、(c)に示すように、位置検出装置1のコンタクト11が摺動する領域に、切削液や切り粉が付着している。このため、(b)から(c)に至る際、コンタクト11は正常な位置まで復帰しない。したがって、(a)から(b)に至る際のコンタクト11の押込み量よりも、(b)から(c)に至る際のコンタクト11の戻り量は小さくなる。また、内部センサの値に関しても、コンタクト11の押込み前の値よりも、コンタクト11を押し込んでから戻った後の値は小さくなる。
【0036】
図14は、軸受けの劣化があるために位置検出装置1が異常である場合の、内部データとしての内部センサの値を示す。(a)に示すように、正常な待機時においては、内部センサの値が変動することはない。一方で、軸受けの劣化がある場合には、加工振動や被加工物着脱時の振動、センサの格納、搬出時の振動、パレットチェンジによる衝撃が発生した場合に、コンタクト11もそれに合わせて振動してしまい、(b)に示すように、内部センサの値は変動してしまう。
【0037】
このため、位置検出装置1は、位置検出装置1の待機時における磁気センサ21及び磁気センサ22の出力と、磁石40をX方向に移動させた後、磁石40がX方向とは逆方向に戻り終えた時点の磁気センサ21及び磁気センサ22の出力とを比較する比較手段(不図示)と、比較部による当該比較結果に基づいて、位置検出装置1の異常を診断する第1診断手段(不図示)とを更に備えてもよい。
【0038】
また、位置検出装置1は、位置検出装置1の待機時における、磁気センサ21及び磁気センサ22の出力の波形に基づいて、位置検出装置1の異常を診断する第2診断手段(不図示)を更に備えてもよい。
【0039】
〔4 実施形態が奏する効果〕
以上述べたように、本発明の一態様によれば、長寿命で、検出精度が高く、安定して位置検出を行うことができる位置検出装置が提供される。この位置検出装置は、第1の方向に沿って延びる移動経路上を可動体とともに移動するように構成される磁石を備える。この磁石は、上記第1の方向に垂直な第2の方向において異なる磁極を有する。また、上記位置検出装置は、上記移動経路から上記第2の方向に等しい距離だけ離間するとともに、上記第2の方向に延びる基準線から等しい距離に配置された1対の磁気センサを備える。上記1対の磁気センサは、同一のセンサ特性を有する。上記位置検出装置は、上記1対の磁気センサの双方の出力変化率の絶対値が略最大となったときに、上記磁石が上記基準線上に位置したことを検出するように構成される検出部を備える。
【0040】
これにより、機械的な接点を用いることなく、磁石が基準線上に位置したことを検出することができる。すなわち、本発明に係る位置検出装置によれば、機械的な接点を用いることなく、可動体の位置を検出することが可能となる。このように本発明に係る位置検出装置によれば、機械的な接点を用いないため、接点の劣化による寿命の短縮化や接点間の導通不良、接点の摩耗や凹みによる検出精度の低下といった問題が生じない。また、温度変化などによる磁気センサの出力特性の変化が1対の磁気センサ間で互いに相殺されるため、磁石の位置を安定して検出することができる。
【0041】
上記1対の磁気センサの出力は、上記磁石が上記基準線上に位置したときに最大の変化率を呈することが好ましい。このようにすることで、磁石が基準線の近傍にあるときに磁気センサの出力が変化しやすくなるため、磁気センサの出力が一致する点がより正確に特定され、磁石の位置の検出精度が高くなる。
【0042】
本発明によれば、長寿命で、検出精度が高く、安定して位置検出を行うことができる位置検出装置が提供される。
【0043】
また、本発明によれば、故障診断や、保全予知もできる位置検出装置が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、可動体の位置を検出する位置検出装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1 位置検出装置
2 可動体
10 固定部
21,22 磁気センサ
30 検出部
40 磁石
41,42 磁極
M 移動経路
S 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14