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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】食品顆粒
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/256 20160101AFI20240820BHJP
【FI】
A23L29/256
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020126848
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022013491
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 功
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174595(JP,A)
【文献】特開2017-012119(JP,A)
【文献】特開2012-110240(JP,A)
【文献】特開2011-097919(JP,A)
【文献】特許第6343822(JP,B1)
【文献】米国特許第05149558(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/256
A01J 1/00 - 99/00
A23C 1/00 - 23/00
A23L 21/00 - 21/25
A23L 29/20 - 29/206
A23L 29/231 - 29/30
A23L 2/00 - 2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖の少なくとも一種を15重量%以上含む甘酒、練乳、ジャム、メープルシロップ、カスタードクリーム及び餡のうちいずれか一以上の甘味食品と、日寒水式のゼリー強度で400g/cm2以上である寒天とを混合、寒天を2.5重量%以上、水分を20~59.7重量%含む混合物としトレー又は耐熱性袋に入れて、湿式加熱で寒天を融解後、冷却してゲル状に固化させた後、細切し、凍結乾燥する工程を含む、非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒の製造方法。
【請求項2】
混合物中に、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖のうち少なくとも一種を10重量%以上含む、請求項記載の製造方法。
【請求項3】
甘味食品を1重量部とした場合に、加水量が1重量部以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
甘味食品、寒天及び水以外の原料が混合物中の8重量%以下である、請求項1~の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒及び該甘味食品顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解した糖類を多く含む食材は、乾燥が困難なことが知られており、賦形剤等を添加して乾燥するのが一般的で、例えば甘酒について、特許文献1では、熱湯に溶かして飲むための顆粒として、甘酒にデキストリン等を加えて、減圧乾燥し、粒状に破砕する乾燥甘酒の製造方法が知られていた。また、特許文献2では、お湯又は水により復元させて喫食することができる凍結乾燥甘酒の製造方法であって、ペースト状の果実を含有する甘酒原料を凍結乾燥処理した凍結乾燥甘酒が知られていた。
【0003】
特許文献1及び2は、デキストリンやペースト状の果実といった、甘酒以外の原料を添加するため、甘酒本来の甘味や風味が低下してしまい、甘酒本来の甘味や風味を楽しむことはできなかった。また、特許文献1及び2の乾燥甘酒は、溶解させたり、復元させたりして喫食する乾燥食品で、顆粒自体を喫食することは想定されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2632681号公報
【文献】特許第5785832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、凍結乾燥が困難な甘味食品において、甘味食品本来の味を楽しむことができ、破断性が良く、クランチ性の食感を有する非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、甘味食品と寒天との混合物を加熱し、冷却してゲル状に固化させた後、細切し、凍結乾燥することで、破断性が良く、クランチ性の食感を有する非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の[1]~[10]の態様に係る。
[1]ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖の少なくとも一種を15重量%以上含む甘味食品と、日寒水式のゼリー強度で400g/cm以上である寒天とを含む混合物であって、寒天を2.5重量%以上含む混合物を、加熱後、冷却してゲル状に固化させた後、細切し、凍結乾燥工程を経て得られる、非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒の製造方法。
[2]加熱が湿式加熱である、[1]記載の製造方法。
[3]混合物中に、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖のうち少なくとも一種を10重量%以上含む、[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]甘味食品を1重量部とした場合に、加水量が1重量部以下である、[1]~[3]の何れかに記載の製造方法。
[5]甘味食品、寒天及び水以外の原料が混合物中の8重量%以下である、[1]~[4]の何れかに記載の製造方法。
[6]日寒水式のゼリー強度で400g/cm以上である寒天を5重量%以上含み、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖を40重量%以上含む甘味食品顆粒であって、寒天による網目構造を有し、クランチ性の食感を有する、非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒。
[7]甘味食品が、甘酒、練乳、ジャム、メープルシロップ、カスタードクリーム又は餡である、[6]に記載の凍結乾燥甘味食品顆粒。
[8]空隙率が70容量%以下の多孔質顆粒である、[6]又は[7]に記載の凍結乾燥甘味食品顆粒。
[9][1]~[5]の何れかに記載の製造方法により得られる、[6]~[8]の何れかに記載の凍結乾燥甘味食品顆粒。
[10][6]~[9]の何れかに記載の凍結乾燥甘味食品顆粒を含む、トッピング。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、溶解した糖分を多く含む甘味食品を、簡便かつ高い収率で、破断性が良く、クランチ性の食感を有する非溶解用の凍結乾燥甘味食品顆粒とすることが可能な製造方法を提供できるようになった。また、溶解した糖分を多く含む食品に、大量の水やその他の原料を添加することなく凍結乾燥顆粒が製造できるため、凍結乾燥にかかる製造コストを抑えられることに加え、甘味食品本来の風味や甘味を楽しむことができる上、クランチ性の食感を有し、噛んだ際に歯に引っ付く感じがない、良好な破断性を有しているため、各種飲食品にトッピングとして利用できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒は、甘味食品と寒天とを含む混合物を加熱して混合物中の寒天を融解させ、冷却してゲル状に固化させた後、細切し、凍結乾燥工程を経ることで得られる。
【0010】
本発明に使用する甘味食品は、一般的な甘味食品であれば特に限定されず、溶解したブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖のうち少なくとも一種を含み、水分及び風味を有し、菓子、飲料等に用いられる甘味食品であればよいが、麹甘酒もしくは酒粕甘酒といった甘酒、加糖練乳、ジャム、メープルシロップ、カスタードクリーム、又は小豆、インゲン等の豆類、サツマイモもしくは栗の餡等が例示でき、市販の甘味食品が利用でき、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖の少なくとも一種を15重量%以上含み、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。甘味食品中の水分は特に限定されないが、10~85重量%が好ましく、15~80重量%がより好ましく、20~70重量%がさらに好ましく、65重量%以下が特に好ましい。尚、前記糖類は甘味食品中に溶解しており、単に粉末のブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖のうち少なくとも一種に、水を添加して混合しただけのものは、甘味食品には含まれない。
【0011】
本発明に使用する寒天は、本発明の顆粒が得られれば特に限定されないが、寒天のゼリー強度が400g/cm以上が好ましく、450g/cm以上がより好ましく、500g/cm以上がさらに好ましく、市販の寒天が利用できる。ゼリー強度とは、日本寒天製造水産組合が採用した日寒水式ゼリー強度測定器を用いて測定される値で、寒天製品等に記載されている。具体的には、濃度1.5質量%の寒天水溶液を調製し、20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm当たり20秒間耐えうる最大荷重(g)を測定した値(単位:g/cm)である。寒天を使用することで、溶解した糖分を多く含む甘味食品であっても凍結乾燥顆粒とすることができ、また、乾燥前であっても細切し易く、その後凍結乾燥しても、発泡することなく乾燥顆粒が得られ、乾燥後に細切する場合に比べ、粉部が発生し難いため、ロスが少なく収率が良い。
【0012】
甘味食品と寒天とを混合した混合物は、加熱して混合物中の寒天を融解させ、冷却後にゲル状に固化できれば特に限定されないが、混合物中に寒天を2.5~25重量%含むのが好ましく、3.0~20重量%がより好ましく、3.5~15重量%がさらに好ましく、また、混合物中の水分は、10~80重量%が好ましく、15~75重量%がより好ましく、20~70重量%がさらに好ましく、25~65重量%が特に好ましい。通常、甘味食品は、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖濃度が高く水分が少ないことで凍結し難いため、凍結乾燥が困難だが、本発明では、寒天を使用することで、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖濃度の高い状態でも乾燥可能なため、例えばブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖のうち少なくとも一種を、混合物全体の10重量%以上含んでいてもよく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上又は30重量%以上含んでいてもよく、また、加水してもよいが、加水量は甘味食品を1重量部とした場合に、1.5重量部以下又は1重量部以下が好ましく、0.8重量部以下がより好ましく、0.6重量部以下がさらに好ましく、0.3重量部以下が特に好ましく、0.2重量部以下が最も好ましく、水分含量を抑えて凍結乾燥が可能なため、乾燥コストを抑えられる。また、寒天を使用すれば本発明の凍結乾燥甘味食品顆粒を製造できるため、デキストリン等の賦形剤、高感度甘味料等の呈味成分等、その他の固形分を有する原料を添加する必要はないが、添加する場合は、甘味食品、寒天及び水以外の添加原料は、混合物全体の8重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、2.5又は2重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましく、添加しないのが最も好ましく、顆粒中の甘味食品の割合が高いため甘味食品本来の甘味や風味を楽しむことができる。
【0013】
本発明では、甘味食品と寒天とを含む混合物を、加熱して寒天を融解した後、冷却してゲル状に固化させた後、細切する工程を有する。加熱は、寒天が融解できれば特に限定されないが、85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、95~100℃がさらに好ましく、混合物中のブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖濃度が高いため加熱による焦げが生じ易いが、加熱むらや焦げ、部分的な変色を抑えるためには、前記混合物をトレーや耐熱性袋に入れて湿式加熱を行うのが好ましく、過熱水蒸気加熱、ボイル加熱等が例示でき、蒸し加熱がより好ましい。冷却は、加熱した混合物がゲル状に固まれば、冷却温度は特に限定されず、例えば常温放置後に冷蔵庫又は冷凍庫で冷却してもよい。細切は、固体状のゲルを、例えばパワーミル、ミンチ機、チョッパー、裁断機、粉砕機等により行うことができる。
【0014】
本発明では、細切したゲルを、凍結乾燥する工程を含んでいればよく、常法に従って凍結乾燥すればよいが、例えば細切したゲルをトレーに入れ、予備凍結後、減圧(真空)乾燥すればよく、乾燥開始時の品温は、-25~-10℃が好ましく、-20~-15℃がより好ましい。減圧時の密閉系内の気圧は、250Pa以下が好ましく、20~100Paがより好ましい。細切したゲルを凍結乾燥することで、微粉末が発生し難く、収率を高めることができ、凍結乾燥することにより、ゲル中の水が除去され、網目構造を有する、本発明の非溶解用凍結乾燥甘味食品顆粒となる。
【0015】
本発明の凍結乾燥甘味食品顆粒は、非球形であれば特に限定されないが、顆粒の最大長は、好ましくは500μm~20mm、より好ましくは1mm~15mm、更に好ましくは2mm~10mmであり、凍結乾燥後に篩別して得ることができる。篩別には、前記粒子径を得るために最適な目開きを有するJIS規格Z8801-1:2006のふるいを使用することができる。
【0016】
本発明の凍結乾燥甘味食品顆粒は、甘味食品と寒天とを含む、破断性が良く、サクサク又はザクザクとしたクランチ性の食感を有する凍結乾燥甘味食品顆粒であって、寒天(固形分)は顆粒全体の5重量%以上が好ましく、5.5~35重量%がより好ましく、6~30重量%がさらに好ましく、6.5~25重量%が特に好ましく、甘味食品(固形分)は顆粒全体の70重量%以上が好ましく、75重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、ブドウ糖、ショ糖又は麦芽糖の含量は、顆粒全体の40重量%以上が好ましく、45重量%~95重量%がより好ましく、50~90重量%がさらに好ましく、甘味食品及び寒天以外の添加原料は、顆粒全体の15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、8又は5重量%以下がさらに好ましく、2重量%以下が特に好ましく、含まないのが最も好ましく、顆粒中の甘味食品の割合が高いため甘味食品本来の甘味や風味を楽しむことができる。また、凍結乾燥では水部分が乾燥後に空洞となるが、本発明では凍結乾燥時の水分が少ないため、顆粒の空隙率を小さくすることができ、吸湿し難い顆粒が好ましい場合は、顆粒の空隙率が70容量%以下であるのが好ましく、65容量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明の凍結乾燥甘味食品顆粒は、菓子としてそのまま喫食してもよく、また、トッピングとして、アイスクリーム、かき氷、ケーキ、ゼリー、ヨーグルト、プリン、チョコレート、焼き菓子(せんべい、クッキー、スポンジ等)、パン、ホイップクリーム、餡、固形脂(バター、マーガリン等)、飲料(特にホイップクリーム、アイスクリーム等を載せた飲料)等へふりかけたり、混ぜ込んだりして使用でき、グラノーラ、シリアル等の具材としても利用できる。
【実施例
【0018】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【0019】
[試験例]
試験例1として、ゼリー強度1,800g/cmの寒天(伊那寒天カリコリカン(登録商標)、伊那食品工業社製)、試験例2として、ゼリー強度1,300g/cmの寒天(伊那寒天M-13、伊那食品工業社製)、試験例3として、ゼリー強度700g/cmの寒天(伊那寒天UP-37、伊那食品工業社製)及び試験例4として、ゼリー強度470g/cmの寒天(伊那寒天Z-10、伊那食品工業社製)を使用し、表1の1~4記載の各寒天重量(2g、4g、6.5g又は12g)をそれぞれ入れた容器に、甘味食品としてブドウ糖を約30%含む麹甘酒(厚生産業社製)90gと水8gとを予め混ぜ合わせたものを添加して均一に混合して耐熱性ポリ袋に入れ封をし、各々94~98℃で20分間蒸した後、放冷し、冷蔵庫で冷却してゲル状に固化させた後、袋から取り出しパワーミルで細切してトレーに入れ、常法に従って冷凍庫で予備凍結後、減圧乾燥し、目開き4.75mmの4メッシュを全て通過させ、各甘酒顆粒を得た。尚、乾燥前に細切したため、乾燥後の篩別において微粉が少なく、収率が良かった。尚、混合物中のブドウ糖含量は、試験例1-1、2-1、3-1及び4-1が約27%、試験例1-2、2-2、3-2及び4-2が約26%、試験例1-3、2-3、3-3及び4-3が約26%、試験例1-4、2-4、3-4及び4-4が約25%、顆粒中のブドウ糖含量は、試験例1-1、2-1、3-1及び4-1が約70%、試験例1-2、2-2、3-2及び4-2が約67%、試験例1-3、2-3、3-3及び4-3が約64%、試験例1-4、2-4、3-4及び4-4が約58%である。
【0020】
表1に各原料重量(g)及びその割合、原料中の各固形分重量(g)及びその割合、原料中の固形分(%)、原料中の水分、並びに甘酒1重量部に対する加水量を記載し、試験例1-1~1-4、2-1~2-4、3-1~3-4及び4-1~4-4について、各甘酒顆粒の食感、吸湿性及び味について評価結果を記載した。
尚、「食感」については、乾燥直後の顆粒の食感について記載し、「吸湿性」については、乾燥後、室温に90分間放置後の食感について、「○:乾燥直後と同等、△:乾燥直後と比べやや吸湿している、×:乾燥直後と比べ吸湿している」とし、「味」については、「○:甘酒本来の風味や甘味を強く感じる、△:甘酒本来の風味や甘味を感じる、×:甘酒本来の風味や甘味が弱い」として評価した。尚、凍結乾燥において、何れも発泡又は膨化はみられなかった。
【0021】
また、試験例1-1、1-3、4-1及び4-3で得られた顆粒各15gにお湯各50mLを注いで撹拌し、経時的に観察したが、3分経過後も、試験例1-1及び4-1の顆粒は顆粒形状のまま沈殿しており、試験例1-3及び4-3の顆粒は膨潤しただけで、何れも溶解せず、復元もしなかった。
【0022】
【表1】
【0023】
何れのゼリー強度の寒天を用いた場合でも、原料中の寒天が2%の場合は、破断性の良いクランチ性食感の甘酒顆粒は得られず、吸湿し易い顆粒だったが、何れのゼリー強度の寒天を用いた場合でも、原料中の寒天が3.9%以上の場合は、破断性の良いクランチ性の食感で、甘酒本来の味を楽しむことができる甘酒顆粒が得られ、吸湿性も問題ない範囲だった。
【0024】
[試験例5]
表2に記載の各原料を使用して、甘味食品顆粒の製造を試みた。尚、甘味食品として試験例1と同じ麹甘酒を使用し、寒天は伊那寒天カリコリカン(登録商標)を使用した。比較例1-1は、原料を耐熱性ポリ袋に入れて封をし、また比較例1-2は、原料を均一に混合して耐熱性ポリ袋に入れ封をし、各々冷凍庫で予備凍結後、ポリ袋に切れ目を入れ、常法に従って減圧乾燥したが、飴状の発泡体となり、乾燥物は得られなかった。実施例1は、試験例1と同様に実施し、甘酒顆粒を得た。尚、実施例1の混合物中のブドウ糖含量は約28%、顆粒中のブドウ糖含量は約64%である。
【0025】
表2に各原料重量(g)及びその割合、原料中の各固形分重量(g)及びその割合、原料中の固形分(%)、原料中の水分、並びに甘酒1重量部に対する加水量を記載し、実施例1について、甘酒顆粒の食感、吸湿性及び味について評価結果を記載した。
尚、「食感」については、乾燥直後の顆粒の食感について記載し、「吸湿性」については、乾燥後、室温に90分間放置後の食感について、「○:乾燥直後と同等、△:乾燥直後と比べやや吸湿している、×:乾燥直後と比べ吸湿している」とし、「味」については、「○:甘酒本来の風味や甘味を強く感じる、△:甘酒本来の風味や甘味を感じる、×:甘酒本来の風味や甘味が弱い」として評価した。
【0026】
【表2】
【0027】
甘酒のみで凍結乾燥を試みた比較例1-1と、甘酒に水を添加して凍結乾燥を試みた比較例1-2は、何れも乾燥物は得られなかった。一方、甘酒に寒天を添加し、ゲル状に固化させた後に凍結乾燥した実施例1は、破断性の良いクランチ性の食感で、吸湿し難く、甘酒本来の味を楽しむことができる甘酒顆粒が得られた。
よって、ブドウ糖を多く含む甘酒は、甘酒のみでは凍結乾燥が困難だったが、寒天を使用してゲル状に固化させた後に凍結乾燥することで、破断性の良いクランチ性の食感で、甘酒本来の味を楽しむことができる甘酒顆粒が得られることが分かった。
【実施例2】
【0028】
表3に記載の各原料を使用して、甘味食品顆粒の製造を試みた。尚、甘味食品としてショ糖を約45%含む加糖練乳(日清煉乳社製)を使用し、寒天は伊那寒天カリコリカン(登録商標)を使用した。試験例1と同様に実施し、各練乳顆粒を得た。尚、混合物中のショ糖含量は、実施例2-1が約42%、実施例2-2が約41%、実施例2-3が約39%、実施例2-4が約16%、顆粒中のショ糖含量は、実施例2-1が約57%、実施例2-2が約55%、実施例2-3が約57%、実施例2-4が約55%である。
【0029】
表3に各原料重量(g)及びその割合、原料中の各固形分重量(g)及びその割合、原料中の固形分(%)、原料中の水分、並びに練乳1重量部に対する加水量を記載し、各練乳顆粒の食感、吸湿性及び味について評価結果を記載した。
尚、「食感」については、乾燥直後の顆粒の食感について記載し、「吸湿性」については、乾燥後、室温に90分間放置後の食感について、「○:乾燥直後と同等、△:乾燥直後と比べやや吸湿している、×:乾燥直後と比べ吸湿している」とし、「味」については、「〇:練乳本来の風味や甘味を強く感じる、△:練乳本来の風味や甘味を感じる、×:練乳本来の風味や甘味が弱い」として評価した。
【0030】
【表3】
【0031】
練乳に寒天を添加し、ゲル状に固化させた後に凍結乾燥した実施例2-1及び2-2と、練乳に水と寒天を添加して、ゲル状に固化させた後に凍結乾燥した実施例2-3及び2-4は、加水量が多かった実施例2-4は乾燥顆粒が吸湿し易かったが、何れも破断性の良いクランチ性の食感で、しっかりと練乳本来の味が楽しめる練乳顆粒が得られた。
よって、ショ糖を多く含み、水分が少ない練乳であっても、寒天を使用して、ゲル状に固化させた後に凍結乾燥することで、破断性の良いクランチ性の食感で、練乳本来の味を楽しむことができる練乳顆粒が得られることが分かった。