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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240820BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q3/02
A61K8/55
A61K8/41
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020164095
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056207
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0182837(US,A1)
【文献】国際公開第2016/099877(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247496(US,A1)
【文献】国際公開第2018/169530(WO,A1)
【文献】特開2018-023682(JP,A)
【文献】特開2018-027944(JP,A)
【文献】特開2003-105033(JP,A)
【文献】特開2017-068007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)成分:(メタ)アクリレートモノマー、
(C)成分:アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、及び、
(D)成分:アリズリンパープルSS、
を含み、
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分の含有量が0.05~3.0質量部であり、
光硬化性人工爪組成物全体に対する(D)成分の含有量が0.3~5質量ppmである、
光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着してこれに装飾を施したりするネイルアートの人気が高まっている。また、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強のために、爪の上に人工爪を形成することが行われている。
このような爪の装飾や補強のためには、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料が爪に塗布されている。
【0003】
最近、爪の装飾又は補強のために使用される材料としては、ジェルネイルと呼ばれる光硬化性人工爪組成物が注目を集めている。ジェルネイルは、光硬化性のジェル状爪被覆材料(光硬化性人工爪組成物)であって、例えば、(メタ)アクリレート系オリゴマーと(メタ)アクリル系モノマーを含むものが知られている。ジェルネイルは、爪に塗布し、紫外線を照射して硬化することで、ラジカル重合反応により、架橋した高分子被膜を形成するため、爪から剥がれにくい強靱な被膜を形成できるとされている。
【0004】
しかし、アクリレート系オリゴマーとアクリル系モノマーを含む光硬化性のジェル状の爪被覆材料(光硬化性人工爪組成物)は、厚塗りして人工爪を作製した場合、硬化前と比較して硬化後の黄変が激しくなる問題点があった。さらに、ジェル状の爪被覆材自体も薄い黄色を有している(黄ばみがある)ことから、製品としての見た目が良くないという問題点もあった。
【0005】
このような着色の問題に対して、これまで以下のような技術が知られている。
特許文献1には、光硬化型マニキュア組成物に、硬化塗膜の色調製を目的として、ブルーイング剤として青色顔料を配合することが記載されている。具体的には、ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して群青を0.001~2重量部の範囲で配合するものである。
特許文献2には、光硬化型ジェルネイル用下地剤に、硬化塗膜の色調製を目的として、ブルーイング剤として青色顔料を配合することが記載されている。具体的には、ウレタンアクリレートオリゴマー100重量部に対して群青を0.001~5重量部の範囲で配合するものである。
特許文献3には、アロマオイルが5~7%添加され、紫201号(アリズリンパープルSS)を含むベースジェル組成物が記載されている。しかし、紫201号の配合量が不明であり、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤を特定量用いることは記載されていない。
特許文献4には、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤を含む、光硬化性人工爪組成物が記載されている。さらに、微量の紫や青の色素を配合し、経時劣化による色調の変化を防止することが記載されている。しかし、色素として何が有効であるのか、どの程度の量配合するかについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5240939号公報
【文献】特許第4981184号公報
【文献】特許第5936018号公報
【文献】特開2016-60715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、硬化前の着色(黄ばみ)が抑制されて透明性に優れ、硬化性に優れ、硬化させた後の着色(黄変)が少なく透明性に優れる、光硬化性人工爪組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成の光硬化性人工爪組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
(A)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)成分:(メタ)アクリレートモノマー、
(C)成分:アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、及び、
(D)成分:アリズリンパープルSS、
を含み、
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する(C)成分の含有量が0.05~5.00質量部であり、
光硬化性人工爪組成物全体に対する(D)成分の含有量が0.3~25質量ppmである、
光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、硬化前の着色(黄ばみ)が抑制されて透明性に優れ、硬化性に優れ、硬化させた後の着色(黄変)が少なく透明性に優れる、光硬化性人工爪組成物を得ることができるという顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の光硬化性人工爪組成物について説明する。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーを含み、特定の染料(アリズリンパープルSS)を特定量含み、特定の光重合開始剤(アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤)を特定量含むものである。
特定の染料と特定の光重合開始剤の最適配合量を見出すことにより、光硬化性人工爪組成物自体が透明で黄色に着色しておらず(黄ばみがない)、硬化前後で黄変が少ないものである。
【0011】
<(A)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー>、
(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するオリゴマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは2~8個である。
(メタ)アクリロイル基の数は、赤外吸収分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)等を用いて分析することによって確認できる。
【0012】
(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、1,000~100,000、好ましくは2,000~30,000、より好ましくは3,000~20,000である。重量平均分子量の範囲をこのような範囲とすることで、低粘度を保持しつつ、硬化物の耐久性を向上することができる。
【0013】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、特に限定されないが、例えば、
主骨格(主鎖)にウレタン結合、エポキシ基の開環反応によって生じる結合、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、カーボネート結合、アミド結合からなる群より選ばれる1種類以上を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、
主骨格(主鎖)がスチレン系、(メタ)アクリル系、オレフィン系、ジエン系モノマーからなる群より選ばれる1種類以上のモノマーの重合により分子鎖を有する(メタ)アクリレートオリゴマー、
等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
これらのうち、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ウレタン結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)、エポキシドの開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル(メタ)アクリレートオリゴマー(エステル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)、エーテル(メタ)アクリレートオリゴマー(エーテル結合を主骨格に有する(メタ)アクリレートオリゴマー)等からなる群より選ばれる1種類以上を用いると、密着性等の点で有利である。
(メタ)アクリレートオリゴマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、本発明においては、光硬化性樹脂組成物及び/又はその硬化物の爪密着性や耐久性等の観点から、1種類以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含んでいることが好ましい。
(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリレートオリゴマー以外のオリゴマーと混合して用いることもできる。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によりイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに対し、分子内に活性水素含有基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等)を反応させる等により合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品は、AH-600、AT-600、UA-306H、UF-8001G(共栄社化学社製)や、RUA-071、RUA-003VE、RUA-075、RUA-048(亜細亜工業社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを光硬化性人工爪組成物に使用すると、伸縮性、密着性、強度に優れる塗膜を得ることができることから、好ましく用いられる。
本発明にて使用できる1種類以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、非芳香族系ポリエーテル骨格、芳香族系ポリエーテル骨格、非芳香族系ポリカーボネート骨格、芳香族系ポリカーボネート骨格、非芳香族系ポリエステル骨格、及び芳香族系ポリエステル骨格からなる群より選ばれる1種類以上を有するものから選択して使用することができる。中でも非芳香族系ポリエーテル骨格の1種類以上を有するものが好ましい。
非芳香族系ポリエーテル骨格の1種類以上を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、イソシアネート基含有ポリエーテルウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を加えて、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基総数の10%以上のイソシアネート基に、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物により付加反応させて得ることができる。
ここで、イソシアネート基含有ポリエーテルウレタンプレポリマーは、炭素数3以上のアルキレン基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネートとを反応させたもので、例えば、重量平均分子量が400~30,000のものである。ポリオール化合物としては、ポリプロピレンポリオールが好ましい。ポリイソシアネートとしては、非芳香族系ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート化物、ビューレット化物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0016】
エステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールと多価カルボン酸との反応により得られたエステル系オリゴマーが有するカルボキシル基及び/又は水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び/又は(メタ)アクリル酸やカルボキシル基を有するアクリル化合物を付加することにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品は、例えば、アロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K、M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、M-9050(東亞合成社製)や、UV-3500BA、UV3520TL、UV-3200B、UV-3000B(三菱ケミカル社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
エーテル結合を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、脂肪族系のポリエーテルポリオールの水酸基や、ビスフェノール等を原料とする芳香族系のポリエーテルポリオールの水酸基に対し、分子内に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリル酸、及び、分子内にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物等からなる群より選ばれる1種類以上を付加させることにより合成できるが、この方法に限定されるものではない。
市販品は、例えば、UV-6640B、UV-6100B、UV-3700B(三菱ケミカル社製)、ライトアクリレート(登録商標)3EG-A、4EG-A、9EG-A、14EG-A、PTMGA-250、BP-4EA、BP-4PA、BP-10EA、ライトエステル4EG、9EG、14EG(共栄社化学社製)、EBECRYL(登録商標)3700(ダイセル・オルネクス社製)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、組成物の構成成分全量に対して50~90質量%、好ましくは60~80質量%、さらに好ましくは63~75質量%である。含有量が90質量%を超えると、光硬化性人工爪組成物の粘度が高くなりすぎ、塗布性や取扱性等が悪くなるおそれがある。含有量が50質量%未満であると、光硬化性人工爪組成物の粘度が低くなりすぎ、塗布性や取扱性が悪くなるおそれがある。
【0019】
<(B)成分:(メタ)アクリレートモノマー>
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するモノマーであれば、特に制限されない。一分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されないが、光硬化性人工爪組成物の硬化性、塗膜の硬度等の観点から、1~10個、好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個である。
本発明では、(メタ)アクリレートモノマーとして、(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上と、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上との混合物を用いることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物;アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリロイル基含有アミド化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0021】
これらの(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーのうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
【0022】
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(イソピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)等)、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートモノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のポリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の(メタ)アクリレート基を4個以上有する(メタ)アクリレートモノマー;等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0023】
これらの(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーのうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、下記式
【化1】
で表されるプロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等からなる群より選ばれる1種類以上を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して5~50質量%、好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。含有量が50質量%を超えると、光硬化性人工爪組成物の粘度が低くなりすぎ、塗布性や取扱性等が悪くなるおそれがある。含有量が5質量%未満であると、爪への密着性が低下するおそれがあり、また、相対的に(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が増えることから、光硬化性人工爪組成物の粘度が高くなり、塗布性や取扱性が悪くなるおそれがある。
【0025】
(メタ)アクリレートモノマーとして、(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上と、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーより選ばれる1種類以上との混合物を用いる場合、各成分の含有量は次のとおりである。
(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して5~50質量%、好ましくは10~40質量%である。含有量が50質量%を超えると、光硬化性人工爪組成物の粘度が低くなりすぎ、塗布性や取扱性等が悪くなるおそれがある。含有量が5質量%未満であると、爪への密着性が低下するおそれがあり、また、相対的に(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が増えることから、光硬化性人工爪組成物の粘度が高くなり、塗布性や取扱性が悪くなるおそれがある。
(メタ)アクリレートモノマーにおける(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、光硬化性人工爪組成物の構成成分全量に対して5~40質量%、好ましくは10~30質量%である。含有量が40質量%を超えると、硬化塗膜の柔軟性が低下し脆く割れやすくなり、また、爪への密着性が低下するおそれがある。含有量が5質量%未満であると、硬化塗膜の硬度が低くなるおそれがある。
本発明においては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーを含有させることによって、光硬化性人工爪組成物のアクリロイル当量を大きくすることができる。その結果、光照射(紫外線照射)による硬化速度を速くすることができ、顔料等の各種添加剤を含有する光硬化性人工爪組成物であっても、十分に硬化させることができる。
【0026】
<(C)成分:アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤>
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤は、一般的に用いられるUV-LED光源から発せられる365~405nmの波長の紫外線が照射されると、ラジカルを発生することができる光重合開始剤である。
例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドは、皮膚コンディショニング剤としても機能することから、本発明において好ましく用いることができる。
【0027】
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤は、光硬化性人工爪組成物に対して、UV-LED光源を用いた場合であっても良好な硬化性と、低黄変性を付与することができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物において、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤の含有量は、光硬化性人工爪組成物中の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.05~5.0質量部、好ましくは0.05~4.0質量部、より好ましくは0.07~3.0質量部、さらに好ましくは0.1~3.0質量部である。含有量が5.0質量部を超えると、硬化膜の分子量が低下し硬化膜が脆くなるおそれがあり、また、光硬化性人工爪組成物の硬化後の塗膜が黄変(黄ばみ)するおそれがある。含有量が0.05質量部未満であると、光硬化性人工爪組成物の硬化に時間がかかるおそれがあり、また、硬化不良となるおそれがある。
【0028】
<(D)成分:アリズリンパープルSS>
光硬化性人工爪組成物に含まれる(D)成分:アリズリンパープルSSは、紫色の色調を有する油溶性染料で、化粧品の添加剤として使用可能なものである。紫色201号、C.I.Solvent Violet 13、1-Hydroxy-4-(4-methylanilino)-9,10-anthraquinone、等の名称で知られている化合物で、下記構造を有する。
【0029】
【化2】
【0030】
光硬化性人工爪組成物における、(D)成分:アリズリンパープルSSの含有量は、光硬化性人工爪組成物全体に対して、0.3~25質量ppm、好ましくは1~20質量ppm、より好ましくは5~15質量ppmである。含有量が0.3質量ppm未満の場合には、硬化前の光人工爪組成物の着色(黄ばみ)及び硬化後の光硬化性人工爪組成物の黄変を防止できないおそれがある。含有量が25質量ppmを超える場合には、硬化前及び硬化後の光硬化性人工爪組成物が紫色に強く着色してしまい、他の色調とすることが困難になるおそれがある
【0031】
<その他成分>
光硬化性人工爪組成物には、粘度や使用性、塗膜の耐久性などに悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和基含有化合物、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤以外の光重合開始剤、アリズリンパープルSS以外の着色剤、多官能性チオール化合物、ポリオール化合物、香料、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、低応力化剤、防腐剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0032】
(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマー以外のラジカル重合性不飽和基含有化合物は、(メタ)アクリロイル基以外のラジカル重合しうる不飽和基を有する化合物である。ラジカル重合しうる不飽和基は、炭素-炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基等があげられる。
例えば、アリルグリシジルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン、酢酸ビニル等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0033】
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤以外の光重合開始剤は、例えば、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシッドエステル系、α-アミノアルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、チタノセン系、キノン系等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
これらのうち、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル-オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、フルオロチオキサントン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、1,2-オクタンジオン、1-(4-(フェニルチオ)-2,2-(O-ベンゾイルオキシム))1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、及び1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE184)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、フェニルグリオキシ酸メチル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、及びカンファーキノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0034】
アリズリンパープルSS以外の着色剤は、顔料、光輝材、染料からなる群より選ばれる1種類以上があげられ、任意の量用いて、光硬化性人工爪組成物に所望の色調を付与する。特に、爪用被覆材に使用されている無機顔料、光輝材、有機顔料及び染料からなる群より選ばれる1種類以上であって、紫外線照射(光照射)による硬化を大きく阻害しないものである。
硬化前の光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
【0035】
アリズリンパープルSS以外の着色剤としては、例えば、褐色201号、黒色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色3号、緑色401号、緑色402号、黄色201号、黄色202号-(1)、黄色202号-(2)、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色4号、黄色401号、黄色402号、黄色403号-(1)、黄色404号、黄色405号、黄色406号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、赤色102号、赤色104号-(1)、赤色105号-(1)、赤色106号、赤色2号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号-(1)、赤色230-(2)、赤色231号、赤色232号、赤色3号、赤色401号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、カーボンブラック、金属粉、金属フレーク、金属酸化物フレーク、ガラスフレーク等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0036】
多官能性チオール化合物は、光硬化性人工爪組成物の硬化性調整剤、架橋剤及び粘度調整剤として配合される。また、多官能性チオール化合物を光硬化性人工爪組成物に配合することで、硬化塗膜を拭き取って除去する際の拭き取り性を向上させることができる。
多官能性チオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物の水酸基に、チオール基又は反応してチオール基になる基を有する化合物が反応して得られたもの等があげられる。例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
多官能性チオール化合物を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、好ましくは1.0~10.0質量%となるように含有させることができる。
【0037】
ポリオール化合物は、光硬化性人工爪組成物の希釈剤、密着性向上剤としての機能を有している。ポリオール化合物としては、例えば、アルキルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノリックポリオール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。中でも、アルキルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが好ましい。
アルキルポリオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
【0038】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、付加重合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。縮合型ポリエステルポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ヘキサンジメタノール、ダイマー酸ジオール、ポリエチレングリコール等からなる群より選ばれる1種類以上のジオール化合物と、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸等からなる群より選ばれる1種類以上の有機多塩基酸との縮合反応によって得られ、分子量は100~100,000が好ましい。付加重合ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンが挙げられ、分子量は100~100,000が好ましい。ポリカーボネートポリオールはポリオールの直接ホスゲン化、ジフェニルカーボネートによるエステル交換法などによって合成され、分子量は100~100,000が好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールがあげられる。
【0039】
重合禁止剤は、例えば、キノン化合物、サリチル酸ヒドラジド、トコフェロール化合物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
重合禁止剤を光硬化性人工爪組成物に含有させる場合には、光硬化性人工爪組成物全体に対して500~5000ppm、好ましくは1000~4500ppmとなるように配合することができる。
【0040】
<光硬化性人工爪組成物の用途・物性等>
本発明の光硬化性人工爪組成物及びその硬化塗膜は、透明性に優れ、着色が抑えられており、経時劣化による色調変化が抑えられており、光沢度に優れている。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュアのように、爪の表面に被覆を行うための組成物であり、使用者自身の爪の表面を、必要に応じてサンディングする等して凹凸を設けた表面に被覆してもよい。特にジェルネイルとして好適に使用でき、例えば、使用者の爪に直接塗布されるベースコート、該ベースコートの上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコートのいずれにも使用できる。
なお、カラーコートとして用いる場合は、着色剤を用いて、ソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に調色して用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、それ自体が黄色に着色していない。このため、アリズリンパープルSS以外の着色剤を含まないクリア系トップコート、金属粉、金属フレーク、金属酸化物フレーク、ガラスフレーク等の光輝材を含むラメ入りクリア系トップコート、又は白色系のカラーコートとして、好適に用いることができる。また、着色剤により着色する際に、黄色との混色となる(調色時に黄色系に色がずれる)おそれがないことから、所望の色調を容易に得ることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜を形成する際には、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様の設備、又は一般の紫外線硬化用の設備を用いることができる。
【0041】
本発明の光硬化性人工爪組成物の硬化塗膜は、酸素による重合阻害等を原因とする未重合の光硬化性成分の含有量が抑制されているため、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルやアセトン等の溶剤、特にエタノールを用いて拭き取る工程が不要である。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いずれの層に用いても、長期間(例えば、硬化後少なくとも2週間)硬化塗膜が欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生することを抑制できる。
【0042】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。
光硬化性人工爪組成物は、硬化塗膜の引っ張り試験による破断時の応力(最大応力)が15.0MPa以上であることが好ましく、18.0MPa以上がより好ましく、20.0MPa以上であることがさらに好ましい。15.0MPa未満であると、擦りにより剥離し易くなるおそれがある。
また、硬化塗膜の破断時の歪率が95.0%以上であることが好ましく、97.0%以上がより好ましく、100.0%以上がさらに好ましい。
【0043】
<光硬化性人工爪組成物を用いた爪の被覆>
本発明の光硬化性組成物を用いて被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でもよい。
本発明の光硬化性人工爪組成物を、爪又は爪に設けられた塗膜の上に塗布して被覆する際、塗布面にサンディングを施してもよく、施さなくてもよい。光硬化性人工爪組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、筆等の塗布具や、インクジェット等の塗布方法を用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は、ベースコート層(下地層)、中間層又はトップコート層のいずれとしても用いることができる。
本発明の光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を、光硬化性人工爪組成物の塗膜表面に付着させ、意匠性を高めることも可能である。
【0044】
また、シートの片面に、爪等の形状を有する層を本発明の未硬化の光硬化性人工爪組成物を用いて作製し、この層を爪表面と接触(転写)させた後に、シートを剥離するか又は剥離せずに、紫外線を照射して硬化させることもできる。
シート表面に予め光硬化性人工爪組成物を用いて層を設け、これを転写する方法によれば、筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能であり、また、使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
【0045】
塗布後の光硬化性人工爪組成物の硬化に関しても公知の紫外線硬化用の装置を用いて行うことができる。光硬化性人工爪組成物の組成によって、硬化に必要な照射エネルギーは異なるものの、その光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上1000mJ/cm以下、好ましくは10mJ/cm以上800mJ/cm以下である。照射エネルギーがこの範囲内であれば、十分な密着性および耐擦性を有するネイルアートを得ることができる。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザーダイオード(UV-LD)が好ましい。
【実施例
【0046】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は質量部を意味する。
【0047】
<実施例1~8、比較例1~3>
表1に示す成分を、表1に示す量比(UA、IBXA、HEMA、Bis-GMA及びTPOは、質量部である。AP-SSは、光硬化性人工爪組成物全体に対する配合量(質量ppm)である。)となるように容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。撹拌後80℃で2時間静置し脱泡し、光硬化性人工爪組成物を得た。これらの工程は、全て遮光下にて行った。
【0048】
表1中の成分は、それぞれ以下の化合物である。
UA:ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリプロピレングリコ―ルとイソホロンジイソシアネートから得られるポリウレタンオリゴマーに、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させて得られたもの)
IBXA:イソボルニルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
Bis-GMA:イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
AP-SS:アリズリンパープルSS
【0049】
得られた光硬化性人工爪組成物の評価を以下のように行った。結果を表1に併せて示す。
(硬化性)
硬化後の光硬化性人工爪組成物の膜厚が100μmの膜厚になるように組成物を塗布し、30W-LEDライトで30秒硬化させ、硬化物を指触評価した。Aが合格である。
A:硬化する
B:硬化しない
【0050】
(組成物色味)
光硬化性人工爪組成物の色味を目視で評価した。Aが合格である。なお、微紫色は、わずかに紫色に着色していると認識できるが、紫色以外の色に着色した際に影響を与えない程度の着色である。
A:無色~微紫色
B:淡黄色に着色
C:紫色に着色
【0051】
(黄変)
隠蔽率試験紙の白色部に160μmの光硬化性人工爪組成物の塗膜を作製した。30W-LEDライトを使用して30秒照射し、塗膜を完全に硬化させた。硬化直後、分光色差計によりb値を測定した。硬化前の塗膜のb値と硬化後の塗膜のb値の差Δbを黄変の程度として評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より、本発明に係る実施例1~8の光硬化性人工爪組成物は、(C)成分:アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、及び、(D)成分:アリズリンパープルSSをそれぞれ特定の量比で含むことにより、硬化性が良好であり、透明性に優れ、光硬化性人工爪組成物の黄変・着色防止、及び光硬化性人工爪組成物を硬化した塗膜の黄変防止に優れていることがわかる。
アリズリンパープルSSを含まない比較例1の光硬化性人工爪組成物は、硬化前の光硬化性人工爪組成物自体が淡黄色に着色しており、さらに、光硬化性人工爪組成物を硬化した塗膜も淡黄色に着色していた。
アリズリンパープルSSを50質量ppm超含む比較例2及び3の光硬化性人工爪組成物は、硬化前の光硬化性人工爪組成物自体が紫色に着色しており、さらに、光硬化性人工爪組成物を硬化した塗膜の黄変が激しかった。
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤の含有量を増やすと、黄変の程度が徐々に大きくなることがわかる。
これらより、本発明者は、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤による黄着色を、アリズリンパープルSSを配合することで抑える際に、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤及びアリズリンパープルSSの両者の配合量が増えると、互いに何らかの作用(例えば、両者の間の反応等)が起こることにより、光硬化性人工爪組成物を硬化した塗膜の黄変が起こるのではないかと推察しているが、この推察に拘束されるものではない。
本発明は、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤の配合量とアリズリンパープルSSの配合量をそれぞれ最適化することで、光硬化性人工爪組成物自体の着色を抑えるとともに、硬化した塗膜の黄変を抑えることができるものであり、極めて有用なものである。