(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】肥料散布機に用いられるカバーの開閉構造
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A01C15/00 Z
A01C15/00 D
A01C15/00 H
(21)【出願番号】P 2020195345
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月9日に土岐敏男の圃場で行った性能試験
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶翼
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-149719(JP,A)
【文献】特開2019-110846(JP,A)
【文献】特開2002-95321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0008346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーによって上面の開口部が覆われるホッパーと、
当該ホッパーに投入された肥料を圃場に散布させる散布部と、
を備えてなる肥料散布機のカバー開閉構造において、
前記ホッパーの側板の上縁部近傍に回動可能に設けられた第一リンク部材と、前記ホッパーの側板の後縁部近傍に回動可能に設けられた第二リンク部材と、前記第一リンク部材と第二リンク部材に連結されたカバーを備えて構成され、前記第一リンク部材の下端側の回動部から上端側の回動部までの距離を、前記下端側の回動部から前記ホッパーの上部後面板の後方までの距離として、開放されたカバーをホッパーの後面板に密着させる四節リンク機構を備えたことを特徴とするホッパーのカバーの開閉構造。
【請求項2】
前記カバーが、前記ホッパーの開口部を覆う上板と、当該上板から下方に向けて屈曲させた前壁および後壁とを有してなるものであり、
前記四節リンク機構が、
前記カバーを開放させた際に、
前記カバーの前壁がホッパーの後面板の上部縁部よりも低く
位置するように構成されたものである請求項1記載のホッパーのカバーの開閉構造。
【請求項3】
前記カバーが、前記ホッパーの開口部を覆う上板と、当該上板から下方に向けて屈曲させた前壁および後壁とを有してなるものであり、
前記ホッパーの上部後面板に、前記カバーの前壁の内側に係止する載置部を設けた請求項1に記載のホッパーのカバー開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に肥料を散布させるための肥料散布機に関するものであり、より詳しくは、肥料を収容する横長状のホッパーのカバーを開閉させるためのカバーの開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大きな肥料散布機は、トラクターなどの牽引車に牽引されながら圃場に肥料を散布させるように構成されている。このような肥料散布機の一般的な構造について、
図7を用いて説明する。
【0003】
図7において、符号2は、図示しないトラクターなどの牽引車に牽引される横長状のホッパーであって、前方に設けられたヒンジ30を中心にカバー3を後方から開放させて内部に肥料を投入できるようにしたものである。また、符号5は、そのホッパー2の下部に設けられた散布部であり、ホッパー2に投入された肥料を均一に混合させた状態で、底板に設けられた間欠的な穴部26から肥料を落下させるようにしたものである。そして、このような肥料散布機を用いて肥料を散布させる場合、カバー3を開放させて上から肥料をホッパー2に投入し、ホッパー2の底板に設けられた穴部26から肥料を落下させるようにしている(下記の特許文献1・2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-127647号公報
【文献】特開2005-237260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような肥料散布機を用いて肥料を散布させる場合、次のような問題がある。
【0006】
すなわち、通常、肥料を散布させる場合、あらかじめホッパー2に肥料を投入させる必要があるが、従来のカバー3は、前方に設けられたヒンジ30を中心に後端側を開放させるように構成されているため、トラクターの運転手側から肥料の投入状態を確認することができないといった問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献2に示すように、カバーを中央部分で二つ折りにして前方側に開放させるようにすることもできるが、このようにした場合であっても、ホッパーの前方側の肥料の状態を確認することが難しくなる。また、二つ折りにカバーを開放させると、ホッパーの開口面積が小さくなるために、肥料を投入しにくくなるといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、肥料散布機のホッパーのカバーを開放させる際に、運転手側から容易にホッパー内の肥料の状態を確認できるようにした肥料散布機のカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、カバーによって上面の開口部が覆われるホッパーと、当該ホッパーに投入された肥料を圃場に散布させる散布部と、を備えてなる肥料散布機のカバー開閉構造において、前記ホッパーの側板の上縁部近傍に回動可能に設けられた第一リンク部材と、前記ホッパーの側板の後縁部近傍に回動可能に設けられた第二リンク部材と、前記第一リンク部材と第二リンク部材に連結されたカバーを備えて構成され、前記第一リンク部材の下端側の回動部から上端側の回動部までの距離を、前記下端側の回動部から前記ホッパーの上部後面板の後方までの距離として、開放されたカバーをホッパーの後面板に密着させる四節リンク機構を備えるようにしたものである。
【0010】
また、このような発明において、前記カバーを、前記ホッパーの開口部を覆う上板と、当該上板から下方に向けて屈曲させた前壁および後壁とを有するように構成するとともに、前記四節リンク機構を、前記カバーを開放させた際に、前記カバーの前壁がホッパーの後面板の上部縁部よりも低く位置するように構成する。
【0011】
さらに、前記カバーを、前記ホッパーの開口部を覆う上板と、当該上板から下方に向けて屈曲させた前壁および後壁とを有するように構成するとともに、前記ホッパーの上部後面板に、前記カバーの前壁の内側に係止する載置部を設けるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、開閉機構によってカバーを開くことによってホッパーの開口面積を広くすることができ、運転席側からホッパー内の肥料の状態を容易に確認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す肥料散布機の側面図
【
図2】同形態におけるカバーを開放させた状態を示す図
【
図5】同形態における散布部の穴部とシャッターを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態における肥料散布機1に使用されるカバー3の開閉構造について図面を参照しながら説明する。
【0015】
この実施の形態における肥料散布機1は、図示しないトラクターなどの牽引車に牽引されるものであって、
図1に示すように、肥料を収容するホッパー2と、そのホッパー2内に収容された肥料を撹拌させる混合部4と、ホッパー2の下方に設けられた散布部5などを備えて構成されたものであって、特徴的に、そのホッパー2の上部に設けられたカバー3を第一リンク部材61や第二リンク部材62を有する四節リンク機構60を用いて後方に向けて開放させるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明するが、説明の関係上、トラクターの進行方向を前方側とし、これに水平面で直交する方向を側方(もしくは、左右方向)として説明する。
【0016】
この肥料散布装置のホッパー2は、
図3に示すように、横長状に構成されるものであって、その内部に肥料を収容できるように構成されている。具体的には、このホッパー2は、
図1に示すように、前後に対向するように設けられた上部前面板21fおよび上部後面板21bと、その下方に、漸次下方に向けて前後方向の隙間幅を小さくした中間傾斜板22と、その中間傾斜板22の下方に設けられ、さらに内側の隙間幅を小さくした下部傾斜板23と、これらの下部傾斜板23の下方に設けられ、散布部5のアジテーター53を囲む底部壁24や底板25などを設けて構成されている。そして、
図3などに示すように、これに側板を設けて、上部の開口部20をカバー3で覆えるようにしている。
【0017】
このカバー3は、薄板で構成された上板31の各辺を下方に向けて屈曲させた左右の側壁32や、前壁33、後壁34などを設けて構成されており、上板31に設けられた取手35を持って斜め後方に引っ張ることで、ホッパー2の開口部20を開放できるようになっている。
【0018】
このホッパー2の内部に設けられる混合部4(
図1)は、ホッパー2に収容された肥料を撹拌させて、底板25の穴部26(
図5参照)から肥料を落下させられるようにしたものであって、トラクターのPTOからの駆動力を用いてホッパー2の回転軸41を回転させ、この回転軸41に取り付けられた撹拌翼42を回転させるようになっている。
【0019】
ホッパー2の下部に設けられる散布部5は、撹拌翼42によって中央に寄せられた肥料を圃場に向けて落下させるようにしたものであって、
図5に示すように、底板25に間欠的に設けられる穴部26と、その穴部26を塞ぐシャッター51と、そのシャッター51をスライドさせるスライド機構などを有して構成されている。このスライド機構は、底板25の下方に設けられたシャッター51を左右方向にスライドさせるようになっており、矩形状の開口部分52を底板25の穴部26にオーバーラップさせることによって、散布量を調整できるようしている。また、この散布部5には、アジテーター53が設けられており、回転軸に設けられた羽根54を回転させることによって、肥料を穴部26から落下させられるようにしている。
【0020】
このような構成において、ホッパー2の開口部20を覆うカバー3は、開閉機構6によって全ての開口部20を開放できるように構成されている。
【0021】
この開閉機構6としては、この実施の形態では、四節リンク機構60で構成されており、ホッパー2の側板に回動可能に設けられる第一リンク部材61や第二リンク部材62と、これらの第一リンク部材61および第二リンク部材62に回動可能に取り付けられたカバー3などを備えて構成される。
【0022】
このうち、第一リンク部材61は、下端側の回動部61aをホッパー2の側板の上縁部近傍であって、中央位置よりもカバー3の厚み分dだけ後方位置に設けるようにしておき、また、上端側の回動部61bについては、カバー3の側壁32の前端近傍に設けるようにしている。なお、この第一リンク部材61の下端側の回動部61aと上端側の回動部61bまでの長さは、下端側の回動部61aと、ホッパー2の上部後面板21bの後方までの距離となるように設定されており、これによって、
図2に示すように、カバー3を開放させた際に、第一リンク部材61の上端側の回動部61bが上部後面板21bのカバー3の厚み分dだけ後方にくるようにしている。
【0023】
一方、第二リンク部材62は、下端側の回動部62aがホッパー2の側板の後縁部近傍の中央より下方に設けられ、また、上端側の回動部62bについては、カバー3の側壁32の後端側に設けられる。
【0024】
そして、この第一リンク部材61や第二リンク部材62に取り付けられたカバー3を開放させる場合、カバー3の上板31に設けられた取手35を持って斜め後方に持ち上げるように引っ張る。すると第一リンク部材61や第二リンク部材62が、ホッパー2の側面の回動部61a、62aを中心に回動し、カバー3が後方に移動する。
【0025】
そして、このように開放させた状態でカバー3を離すと、カバー3がホッパー2の上部後面板21bに沿うように密着し(
図2の状態)、その際、カバー3の前壁33がホッパー2の上部後面板21bの上縁と一致した状態で止まるようになる。なお、このとき、カバー3が重いと、第一リンク部材61や第二リンク部材62や側壁32が変形してしまう可能性があるため、この実施の形態では、上部後面板21bに、カバー3の前壁33の内側に係止するような載置部27を上部後面板21bに設けておき、この載置部27をカバー3の前壁33の内側に係止させて、カバー3を支えられるようにしている。
【0026】
ところで、このようにカバー3を完全に開放させた際、カバー3が左右方向に振れてしまうと、第一リンク部材61や第二リンク部材62が変形してしまう可能性がある。そこで、
図6に示すように、開放時におけるカバー3の左右への振れを防止するために、カバー3の前壁33の内側に、ホッパー2の上部後面板21bに設けられた載置部27に嵌合する嵌合部27aを設けるようにしてもよい。このとき、例えば、載置部27の上端部分を三角形状に構成しておくとともに、嵌合部27aの下方については、三角形状に凹んだ凹部28を設けるようにしてもよい。このように構成しておけば、互いに三角形状の部分を嵌合させることによって、カバー3の重みを支えることができるとともに、カバー3の左右方向の振れも防止することができるようになる。
【0027】
このように上記実施の形態によれば、カバー3によって上面の開口部20が覆われるホッパー2と、当該ホッパー2に投入された肥料を圃場に散布させる散布部5とを備えてなる肥料散布機1のカバー3の開閉構造において、前記ホッパー2の側板の上縁部近傍に回動可能に設けられた第一リンク部材61と、前記ホッパー2の側板の後縁部近傍に回動可能に設けられた第二リンク部材62と、前記第一リンク部材61と第二リンク部材62に連結されたカバー3を備えて構成され、前記第一リンク部材61の下端側の回動部61aから上端側の回動部61bまでの距離を、前記下端側の回動部61aから前記ホッパー2の上部後面板21bの後方までの距離として、開放されたカバー3をホッパー3の後面板に密着させるようにしたので、カバー3を大きく開いてホッパー2の開口面積を広くすることができるとともに、運転席側からホッパー2内の肥料の状態を確認させることができるようになる。
【0028】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0029】
例えば、上記実施の形態では、カバー3を開閉させる機構として、四節リンク機構60や、ヒンジ付きの摺動部73をスライドさせるスライドレール71を例に挙げて説明したが、上記実施の形態以外の機構を用いてカバー3を後方側に引っ張って開口させるような構造を用いてもよい。
【0030】
また、上記第一の実施の形態では、四節リンク機構60を用いてカバー3を開放させるようにしたが、左右それぞれ一本のリンク部材を用いてカバー3を上部後面板21b側に移動させて添わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1・・・肥料散布機
2・・・ホッパー
20・・・開口部
21b・・・上部後面板
25・・・底板
27・・・載置部
27a・・・嵌合部
28・・・凹部
3・・・カバー
4・・・混合部
5・・・散布部
6・・・開閉機構
60・・・四節リンク機構
61・・・第一リンク部材
61a・・・回動部
61b・・・回動部
62・・・第二リンク部材
62a・・・回動部
62b・・・回動部