IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大関株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-糸状菌用プロモーターおよびその利用 図1
  • 特許-糸状菌用プロモーターおよびその利用 図2
  • 特許-糸状菌用プロモーターおよびその利用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】糸状菌用プロモーターおよびその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240820BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240820BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240820BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12P21/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020198980
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086783
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000204686
【氏名又は名称】大関株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】坪井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】幸田 明生
(72)【発明者】
【氏名】坊垣 隆之
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-009968(JP,A)
【文献】特表2006-506095(JP,A)
【文献】特表2008-531031(JP,A)
【文献】特表2014-502159(JP,A)
【文献】特開平10-313864(JP,A)
【文献】特開平11-276170(JP,A)
【文献】Microb. Cell Fact.,2017年,Vol.16,32 (pp.1-15)
【文献】J. Biotechnol.,2000年,Vol.81,pp.35-44
【文献】Appl. Environ. Microbiol.,2001年,Vol.67,pp.1280-1283
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus (JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する糸状菌用プロモーターであって、
gpdAプロモーター由来配列、エンハンサー配列、およびadhプロモーター由来配列がこの順序で連結されてなるポリヌクレオチドを含み、
上記gpdAプロモーター由来配列は、下記(A1)、(A3)または(A4)のいずれかであり、
上記adhプロモーター由来配列は、下記(B1)、(B3)または(B4)のいずれかであることを特徴とする、糸状菌用プロモーター:
(A1)配列番号1に示される塩基配列のうち、第1位~第599位を少なくとも含むポリヌクレオチド
(A3)上記(A1)に示される塩基配列において1~60個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ当該ポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および下記(B1)のポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド
(A4)上記(A1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ上記(A)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(B1)配列番号2に示される塩基配列のうち、第831位~第907位を少なくとも含むポリヌクレオチド
(B3)上記(B1)に示される塩基配列のうち、1~8個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ上記(A1)のポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および当該ポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(B4)上記(B1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ上記(B)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
上記エンハンサー配列が、配列番号3または配列番号4に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドである、請求項1に記載の糸状菌用プロモーター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の糸状菌用プロモーターを含む、ベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターに含まれる糸状菌用プロモーターの下流に目的タンパク質をコードする遺伝子が連結されたベクターで、糸状菌を形質転換することを特徴とする形質転換方法。
【請求項5】
請求項4に記載の形質転換方法により取得された形質転換体。
【請求項6】
請求項5に記載の形質転換体を培養する工程を含む、タンパク質の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸状菌用プロモーターおよびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来遺伝子組換えによるタンパク質生産の宿主として、糸状菌を採用する技術が知られている。この技術においては、タンパク質を高発現させるために、種々の有用なプロモーターが探求されている。例えば、特許文献1には、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(gpdA)のプロモーターが開示されている。また、特許文献2には、アスペルギルス・オリゼ由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(adh)のプロモーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-187392号公報
【文献】特開平11-276170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術には、タンパク質の発現効率をさらに高める余地が残されていた。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、従来技術よりもタンパク質の発現効率が高い糸状菌用プロモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、gpdAプロモーター由来配列中の特定の配列、エンハンサー配列、およびadhプロモーター由来配列中の特定の配列をこの順番で配置したプロモーターが、従来使用されている強力なプロモーターよりも遥かに強力なプロモーター活性を有していることを見出した。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
<1>
糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する糸状菌用プロモーターであって、
gpdAプロモーター由来配列、エンハンサー配列、およびadhプロモーター由来配列がこの順序で連結されてなるポリヌクレオチドを含み、
上記gpdAプロモーター由来配列は、下記(A1)~(A4)のいずれかであり、
上記adhプロモーター由来配列は、下記(B1)~(B4)のいずれかであることを特徴とする、糸状菌用プロモーター:
(A1)配列番号1に示される塩基配列のうち、第1位~第599位を少なくとも含むポリヌクレオチド;
(A2)上記(A1)に示される塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、かつ当該ポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および下記(B1)のポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(A3)上記(A1)に示される塩基配列において1または複数個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ上記(A2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(A4)上記(A1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ上記(A2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(B1)配列番号2に示される塩基配列のうち、第831位~第907位を少なくとも含むポリヌクレオチド;
(B2)上記(B1)に示される塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、かつ上記(A1)のポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および当該ポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(B3)上記(B1)に示される塩基配列のうち、1または複数個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ上記(B2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド;
(B4)上記(B1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ上記(B2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
<2>
上記エンハンサー配列が、配列番号3または配列番号4に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドである、<1>に記載の糸状菌用プロモーター。
<3>
<1>または<2>に記載の糸状菌用プロモーターを含む、ベクター。
<4>
<3>に記載のベクターに含まれる糸状菌用プロモーターの下流に目的タンパク質をコードする遺伝子が連結されたベクターで、糸状菌を形質転換することを特徴とする形質転換方法。
<5>
<4>に記載の形質転換方法により取得された形質転換体。
<6>
<5>に記載の形質転換体を培養する工程を含む、タンパク質の生産方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、従来技術よりもタンパク質の発現効率が高い糸状菌用プロモーターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一態様に係る糸状菌用プロモーターを含むポリヌクレオチドの構造を模式的に表した図である。
図2】Candida antarctica由来リパーゼB(CALB)を発現するコントロールベクターの構築手順を表す模式図である。
図3】エンハンサー配列と、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの全長と、が連結されたプロモーターを有するベクターの構築手順を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明は以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例も、本発明の技術的範囲に含まれる。本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0010】
本明細書では、ポリヌクレオチドがDNAである場合に基づいて説明する。なお、ポリヌクレオチドがRNAである場合には、以下の説明において「T(チミン)」を「U(ウラシル)」に読み替えればよい。
【0011】
本明細書では、注目するDNA鎖の5’末端側を「上流」、3’末端側を「下流」と表現している場合がある。例えば、「配列Aの上流に」とは、「配列Aの5’末端側に」を意味する。「配列Aの下流に」とは、「配列Aの3’末端側に」を意味する。「上流から下流に」とは、「5’末端側から3’末端側に」を意味する。
【0012】
本明細書における「ポリヌクレオチド」には、RNAおよびDNAが含まれる。RNAの形態であるポリヌクレオチドの例としては、mRNAが挙げられる。DNAの形態であるポリヌクレオチドの例としては、種々のDNA断片、cDNA、ゲノムDNAが挙げられる。RNAおよびDNAは、任意の構造を取りうる(二本鎖または一本鎖など)。
【0013】
〔1.糸状菌用プロモーター〕
図1は、本発明の一態様に係る糸状菌用プロモーター10を含むポリヌクレオチドの構造を模式的に示した図である。糸状菌用プロモーター10は、gpdAプロモーター由来配列1、エンハンサー配列5、およびadhプロモーター由来配列2を有している。これらの配列は、上流から下流に、上記の順番で配置されている。
【0014】
糸状菌用プロモーター10は、目的タンパク質をコードする配列7にコードされているタンパク質の発現を、従来のプロモーターよりも遥かに高める。目的タンパク質をコードする配列7は、糸状菌用プロモーター10の下流に配置されている。なお、図1に表されているポリヌクレオチドは、細胞内に存在していてもよいし(形質転換体など)、細胞外に存在していてもよい(ベクターなど)。図1のポリヌクレオチドがベクターを表している場合、当該ベクターを糸状菌に導入して形質転換させることにより、形質転換体が得られる。
【0015】
gpdAプロモーター由来配列1は、配列番号1に示される塩基配列のうち、第1位~第599位を少なくとも含んでいる配列(またはそのバリアント)である。配列番号1は、gpdA遺伝子の翻訳開始コドンよりも1つだけ上流の塩基を「第-1位」として、第-1000位~第-1位に該当する塩基配列である。それゆえ、配列番号1に基づく塩基の位置から1001を引くと、gpdA遺伝子の翻訳開始コドンを基準とした塩基の位置に換算される。したがって、「配列番号1に示される塩基配列のうち、第1位~第599位の塩基」とは、「gpdA遺伝子の翻訳開始コドンを基準として、第-1000位~第-402位の塩基」に該当する。
【0016】
adhプロモーター由来配列2は、配列番号2に示される塩基配列のうち、第831位~第907位を少なくとも含んでいる配列(またはそのバリアント)である。配列番号2は、adh遺伝子の翻訳開始コドンよりも1つだけ上流の塩基を「第-1位」として、第-1000位~第-1位に該当する塩基配列である。それゆえ、配列番号2に基づく塩基の位置から1001を引くと、adh遺伝子の翻訳開始コドンを基準とした塩基の位置に換算される。したがって、「配列番号2に示される塩基配列のうち、第831位~第907位の塩基」とは、「adhの翻訳開始コドンを基準として、第-170位~第-94位の塩基」に該当する。
【0017】
なお、本明細書では特記しない限り、gpdAプロモーター由来配列1に関連する塩基の位置は、配列番号1に基づく塩基の位置を記載する。また、adhプロモーター由来配列2に関連する塩基の位置は、配列番号2に基づく塩基の位置を記載する。
【0018】
[1.1.gpdAプロモーター由来配列]
gpdAプロモーター由来配列1は、下記(A1)~(A4)のいずれかに示されるポリヌクレオチドである。
(A1)
配列番号1に示される塩基配列のうち、第1位~第599位を少なくとも含むポリヌクレオチド。
(A2)
(A1)に示される塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、かつ当該ポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および(B1)のポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(A3)
(A1)に示される塩基配列において1または複数個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ(A2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(A4)
(A1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ上記(A2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
【0019】
上記のポリヌクレオチドにおいて、(A2)~(A4)は、(A1)のバリアントに該当する。以下、(A1)~(A4)で使用されている表現について、個別に説明する。
【0020】
「配列番号1に示される塩基配列のうち第1位~第599位を少なくとも含む」
ポリヌクレオチド(A1)は、配列番号1に示される塩基配列のうち第1位~第599位を少なくとも含んでいれば、全体の配列は特に限定されない。一実施形態において、ポリヌクレオチド(A1)は、配列番号1に示される塩基配列のうち第1位~第599位のみを含む。一実施形態において、ポリヌクレオチド(A1)は、さらなる塩基配列を含む。この場合、ポリヌクレオチド(A1)の長さは、650bp以下、700bp以下、800bp以下、900bp以下または1000bp以下でありうる。一実施形態において、ポリヌクレオチド(A1)の塩基配列は、配列番号1の第1位~第599位の塩基配列を含み、かつ、配列番号1の一部である塩基配列である。このとき、ポリヌクレオチド(A1)の終点は、配列番号1の、第599位~第625位の範囲、第599位~第650位の範囲、第599位~第700位の範囲、第599位~第800位の範囲、第599位~第900位の範囲、または、第599位~第1000位の範囲に存在しうる。
【0021】
ベクターを構築する上での利便性を考慮すると、gpdAプロモーター由来配列1(ポリヌクレオチド(A1)~(A4))の全長は、800bp以下または900bp以下が好ましい。
【0022】
「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」とは、6×SSCの塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、50~60℃にて16時間ハイブリダイゼーションを行い、0.1×SSCの塩濃度の溶液中で洗浄した後に、ハイブリダイズする条件を言う。ここで、1×SSCの組成は、塩化ナトリウム:150mM、クエン酸ナトリウム:15mMである。
【0023】
「糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する」
本明細書において、「糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する」とは、糸状菌細胞内における特定のタンパク質の発現量を、enoA142プロモーターによる当該タンパク質の発現量よりも高めることを意味する。例えば、糸状菌用プロモーター10によるタンパク質の発現量は、enoA142プロモーターによる当該タンパク質の発現量の、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上または2.5倍以上でありうる。タンパク質の発現量は、タンパク質の種類に応じた適当な公知の手段により、測定できる。なお、enoA142プロモーターに関しては、[Biosci. Biotechnol. Biochem., 69(1),206-208, 2005]を参照(当該文献中で、enoA142プロモーターは、「P-enoA142f」と表記されている)。
【0024】
(A3)および(A4)における、「(A2)と同条件」とは、「(A3)または(A4)のポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および(B1)のポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する」との条件である。
【0025】
「複数個の塩基(A3)」
ポリヌクレオチド(A3)に関して、「複数の塩基」とは、例えば、60個、55個、50個、45個、40個、35個、30個、25個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個の塩基である。
【0026】
「配列同一性」
本明細書において、「配列同一性」とは、同一の塩基数の割合を意味する。配列同一性は、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。
【0027】
塩基配列の配列同一性は、例えば、BLASTNを利用して決定することができる(Altschul SF (1990) "Basic local alignment search tool", Journal of Molecular Biology, Vol.215 (Issue 3), pp.403-410)。BLASTNによって塩基配列を解析する際のパラメーターは、例えば、score=100, wordlength=12を採用できる。これらの解析方法の具体的な手法は周知である。比較対象となる塩基配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失を許容してもよい。
【0028】
[1.2.adhプロモーター由来配列]
adhプロモーター由来配列2は、下記(B1)~(B4)のいずれかに示されるポリヌクレオチドである。
(B1)
配列番号2に示される塩基配列のうち、第831位~第907位を少なくとも含むポリヌクレオチド。
(B2)
(B1)に示される塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、かつ(A1)のポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および当該ポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(B3)
(B1)に示される塩基配列のうち、1または複数個の塩基が置換、欠失または付加されたポリヌクレオチドであり、かつ(B2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
(B4)
(B1)に示される塩基配列との配列同一性が90%以上であるポリヌクレオチドであり、かつ(B2)と同条件におけるプロモーター活性を有するポリヌクレオチド。
【0029】
上記のポリヌクレオチドにおいて、(B2)~(B4)は、(B1)のバリアントに該当する。以下、(B1)~(B4)で使用されている表現について、個別に説明する。
【0030】
「配列番号2に示される塩基配列のうち第831位~第907位を少なくとも含む」
ポリヌクレオチド(B1)は、配列番号2に示される塩基配列のうち第831位~第907位を少なくとも含んでいれば、全体の配列は特に限定されない。一実施形態において、ポリヌクレオチド(B1)は、配列番号2に示される塩基配列のうち第831位~第907位のみを含む。一実施形態において、ポリヌクレオチド(B1)は、さらなる塩基配列を含む。この場合、ポリヌクレオチド(B1)の長さは、100bp以下、150bp以下、200bp以下、300bp以下、400bp以下、500bp以下、600bp以下、700bp以下、800bp以下、900bp以下または1000bp以下でありうる。一実施形態において、ポリヌクレオチド(B1)の塩基配列は、配列番号2の第831位~第907位の塩基配列を含み、かつ、配列番号2の一部である塩基配列である。このとき、ポリヌクレオチド(B1)の始点は、配列番号2の、第1位~第831位、第101位~第831位、第201位~第831位、第301位~第831位、第401位~第831位、第501位~第831位、第601位~第831位、第701位~第831位、第781位~第831位、または、第801位~第831位の範囲に存在しうる。また、ポリヌクレオチド(B1)の終点は、配列番号2の、第907位~第920位、第907位~第940位、第907位~第960位、第907位~第980位、または、第907位~第1000位の範囲に存在しうる。
【0031】
ベクターを構築する上での利便性を考慮すると、adhプロモーター由来配列2(ポリヌクレオチド(B1)~(B4))の全長は、500bp以下、600bp以下または700bp以下が好ましい。
【0032】
「複数個の塩基(B3)」
ポリヌクレオチド(B3)に関して、「複数の塩基」とは、例えば、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個の塩基である。
【0033】
「(B2)と同条件」
(B3)および(B4)における、「(B2)と同条件」とは、「(A1)のポリヌクレオチド、エンハンサー配列、および(B3)または(B4)のポリヌクレオチドがこの順序で連結された場合において、糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する」との条件である。
【0034】
「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」、「糸状菌細胞内でプロモーター活性を有する」および「配列同一性」に関する説明は、[1.1.]節の説明が援用される。
【0035】
[1.3.エンハンサー配列]
本明細書において「エンハンサー配列」とは、タンパク質の発現を正に調節する塩基配列を意味する。エンハンサー配列5をgpdAプロモーター由来配列1とadhプロモーター由来配列2との間に配置することにより、目的タンパク質をコードする配列7の転写活性が上昇し、結果として目的タンパク質が高発現するようになる。
【0036】
エンハンサー配列5の具体的な配列は、特に限定されない。エンハンサー配列5の例としては、[化学と生物(2019) Vol.57, No.9, pp.532-540]に記載の配列が挙げられる。より具体的には、CGGN8CGG、CCGN2CCN6GG、CGGN8CCG、CGGN11CCG、CGGNTAAW、TTAGSCTAA、GGCTAR、GGCWWW、GGNTAAA、CGGDTAAWが挙げられる。
【0037】
一実施形態において、エンハンサー配列5は、配列番号3に示される塩基配列(5’-CGGNNATTTA-3’;Nは任意の塩基を表す)を含む。一実施形態において、エンハンサー配列5は、配列番号3に示される塩基配列からなる。一実施形態において、配列番号3中の「NN」は、「GC」である。
【0038】
一実施形態において、エンハンサー配列5は、配列番号4に示されている塩基配列(5’-CCAATCAGCGT-3’)を含む。一実施形態において、エンハンサー配列5は、配列番号4に示される塩基配列からなる。
【0039】
一実施形態において、エンハンサー配列5は、上流から順に、配列番号3に示される塩基配列と、配列番号4に示される塩基配列とが配置されてなる塩基配列である。一実施形態において、エンハンサー配列5は、上流から順に、配列番号3に示される塩基配列と、配列番号4に示される塩基配列とが、交互に複数回配置されてなる配列である。配列番号3および配列番号4に示される塩基配列は、合計で、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上、配置されていてもよい。また、配列番号3に示される塩基配列と、配列番号4に示される塩基配列との間には、任意構成のスペーサー配列が挿入されていてもよい。スペーサー配列の長さは、例えば、80bp以下、70bp以下、60bp以下または50bp以下とすることができる。以上を総合すると、一実施形態において、エンハンサー配列5は、下記の構造を取る。
5’-(配列番号3)-(任意構成のスペーサー配列)-(配列番号4)-(任意構成のスペーサー配列)-(配列番号3)-(任意構成のスペーサー配列)-(配列番号4)・・・-(配列番号3)-(任意構成のスペーサー配列)-(配列番号4)-3’。
【0040】
一実施形態において、エンハンサー配列5は、配列番号5に示される塩基配列である。配列番号5に示される塩基配列は、配列番号3および配列番号4に示される塩基配列を、それぞれ12個ずつ含んでいる。本明細書では、配列番号5に示されるエンハンサー配列を、「RegionIII」と称する。
【0041】
図1では、エンハンサー配列5は1個のみ描かれている。しかし、2個以上のエンハンサー配列5を、gpdAプロモーター由来配列1とadhプロモーター由来配列2との間に配置してもよい。この場合、同じ配列のエンハンサー配列5を採用してもよいし、異なる配列のエンハンサー配列5を組合せて採用してもよい。また、上記に例示したエンハンサー配列は、逆位に挿入してもよい。すなわち、上記に例示したエンハンサー配列の、5’末端と3’末端を入れ替えた配列をエンハンサー配列5として採用してもよい。
【0042】
[1.4.糸状菌]
糸状菌用プロモーター10を適用する糸状菌は、特に限定されない。すなわち、本発明の一態様に係る形質転換方法を適用する糸状菌、および、本発明の一態様に係る形質転換体の宿主となる糸状菌は、特に限定されない。
【0043】
糸状菌の例としては、アスペルギルス属糸状菌、ペニシリウム属糸状菌、トリコデルマ属糸状菌、リゾプス属糸状菌、ムコール属糸状菌、モナスカス属糸状菌、フザリウム属糸状菌が挙げられる。中でも、糸状菌用プロモーター10は、アスペルギルス属糸状菌において奏効しうる。これは、糸状菌用プロモーター10が、アスペルギルス・オリゼ由来の塩基配列から構成されているためである。
【0044】
アスペルギルス属糸状菌の例としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・フォエニシス(Aspergillus phoenicis)が挙げられる。
【0045】
ペニシリウム属糸状菌の例としては、ペニシリウム・カマンベルチ(Penicillium camemberti)、ペニシリウム・ノタトウム(Penicillium notatum)、ペニシリウム・マルチカラー(Penicillium multicolor)、ペニシリウム・パルロゼナム(Penicillium purpurogenum)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)が挙げられる。
【0046】
トリコデルマ属糸状菌の例としては、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)が挙げられる。
【0047】
リゾプス属糸状菌の例としては、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)が挙げられる。
【0048】
ムコール属糸状菌の例としては、ムコール・エスピー(Mucor sp.)が挙げられる。
【0049】
モナスカス属糸状菌の例としては、モナスカス・パープレウス(Monascus purpureus)が挙げられる。
【0050】
フザリウム属糸状菌の例としては、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)が挙げられる。
【0051】
〔2.ベクター〕
本発明の一態様に係るベクターは、糸状菌用プロモーター10を含んでいる。このベクターは、糸状菌用プロモーター10の下流側に、目的タンパク質をコードする遺伝子7を有していてもよい(図1を参照)。目的タンパク質をコードする遺伝子7がベクターに含まれる場合、当該ベクターで糸状菌を組換えることにより、目的タンパク質を高発現する形質転換体が得られる。
【0052】
本発明の一実施形態に係るベクターの具体的な形態は特に限定されないが、例えば、プラスミドが挙げられる。プラスミドベクターの形状は、環状であってもよいし、鎖状であってもよい。
【0053】
本発明の一実施形態に係るベクターを構成するポリヌクレオチドの由来は、特に限定されない。例えば、本発明を食品などに応用する場合には、セルフクローニングを行うことが好ましいといえる。セルフクローニングを行う場合、ベクターを構成する各ポリヌクレオチドは、当該ベクターが導入される宿主と同一(同種)の生物由来である。糸状菌用プロモーター10はアスペルギルス・オリゼ由来であるため、上述の場合には、ベクターを構成するポリヌクレオチドは、アスペルギルス属糸状菌由来であることが好ましく、アスペルギルス・オリゼ由来であることがより好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態に係るベクターを構成する、それぞれのポリヌクレオチドは、公知の技術によって取得できる。例えば、公知の配列情報に基づいて、PCRなどのDNA増幅手段を用いて、目的の配列を取得できる。あるいは、糸状菌の染色体DNAライブラリーからのクローニングによっても取得できる。
【0055】
[2.1.目的タンパク質]
目的タンパク質の種類は、特に限定されない。目的タンパク質の例としては、糸状菌由来の細胞内タンパク質、分泌タンパク質、原核生物由来タンパク質、真核生物由来タンパク質が挙げられる。より具体的な例としては、酵素(α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ヌクレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなど)、リボソーム構成タンパク質、トランスポーター、シャペロン、転写調節因子が挙げられる。機能未知のタンパク質を、目的タンパク質としてもよい。また、レポーターを目的タンパク質としてもよい。
【0056】
本発明の一実施形態に係るベクターは、宿主糸状菌細胞内で目的タンパク質を発現させるための発現単位を1つ以上含んでいる。発現単位には、プロモーター領域(糸状菌用プロモーター10など)、目的タンパク質をコードする遺伝子7のオープンリーディングフレーム、ターミネーター領域が含まれる。
【0057】
[2.2.その他の配列]
本発明の一実施形態に係るベクターは、本技術分野で公知の、ターミネーター、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点、目的遺伝子を導入する際に使用する制限酵素認識配列などを付加することができる。また、目的タンパク質をコードする遺伝子7と、その他のタンパク質(グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインAなど)をコードする遺伝子とを連結してもよい。このような構成とすれば、目的タンパク質と上記その他のタンパク質との融合タンパク質を発現させることができる。このような融合タンパク質は、適当なプロテアーゼを使用して切断することによって、それぞれのタンパク質に分離できる。
【0058】
本発明の一実施形態に係るベクターは、1個以上の選択マーカーを含んでいてもよい。選択マーカーとしては、糸状菌形質転換体の選択に一般的に使用されているマーカーを利用できる。具体例としては、niaD、sC、argB、adeA、ptrA、pyrGが挙げられる。また、大腸菌などの細菌培養用の薬剤耐性遺伝子(テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子など)を選択マーカーとしてもよい。選択マーカーを利用して、上記ベクターが宿主細胞に導入されたか否かを確認できる。
【0059】
目的タンパク質を、選択マーカーとの融合ポリペプチドとして発現させてもよい。例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)を選択マーカーとして用い、目的タンパク質をGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
【0060】
本発明の一実施形態に係るベクターは、制限酵素認識配列を含んでいてもよい。ベクター内に1箇所のみ存在し、かつ標的配列の内部に存在しない制限酵素認識配列は、当該標的配列をベクター内に導入する際に利用できる。ベクターの汎用性を考慮すると、制限酵素認識配列は、認識部位の出現頻度が少ない6塩基以上を認識する制限酵素の認識配列とすることが好ましく、8塩基以上を認識する制限酵素の認識配列とすることがより好ましい。6塩基を認識する制限酵素の認識配列の例としては、GGGCCC(ApaI)、GGATCC(BamHI)、ATCGAT(ClaI)、AAGCTT(HindIII)、CCATGG(NcoI)、CATATG(NdeI)、CACGTG(PmlI)、GCATGC(SphI)、TCTAGA(XbaI)、CTCGAG(XhoI)が挙げられる。8塩基以上を認識する制限酵素の認識配列の例としては、GGCGCGCC(AscI)、GCGATCGC(AsiSI)、GGCCGGCC(FseI)、GCGGCCGC(NotI)、TTAATTAA(PacI)、GTTTAAAC(PmeI)、CCTGCAGG(SbfI)、GCCCGGGC(SrfI)、ATTTAAAT(SwaI)が挙げられる。
【0061】
本発明の一実施形態に係るベクターは、相同組換えを行わせるために必要な宿主糸状菌由来のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。宿主糸状菌由来のポリヌクレオチドの長さは、特に限定されない。相同組換えの効率を考えると、200bp~20000bpであることが好ましく、500bp~10000bpであることがより好ましい。200bp以上の長さがあれば、相同組換えを効率よく生じさせられる。20000bp以下の長さであれば、ベクターを宿主糸状菌の細胞内に効率よく取込ませることができる。
【0062】
〔3.形質転換方法、形質転換体およびタンパク質の生産方法〕
本発明の一態様に係る形質転換方法は、〔2〕節で説明したベクターで、糸状菌を形質転換する。このベクターは、上流から順に、糸状菌用プロモーター10と、目的タンパク質をコードする遺伝子7とを含んでいる。この形質転換方法によって、本発明の一態様に係る形質転換体が得られる。また、この形質転換体を培養することによって、本発明の一態様に係るタンパク質の生産方法が実施できる。これらの実施形態によれば、目的タンパク質を高効率で生産できる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る形質転換方法において、糸状菌を形質転換する方法には、公知の方法が適宜採用される。具体例としては、カルシウム-PEG法、エレクトロポレーション法が挙げられる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る形質転換体において、宿主となる糸状菌の例としては、上述した糸状菌が挙げられる。
【0065】
本発明の一実施形態に係るタンパク質の生産方法において、形質転換体を培養する方法は、糸状菌の培養方法に通常用いられる培地、培養条件を適宜選択すればよい。形質転換体の培養は、固体培養であっても液体培養であってもよい。培養に用いる培地の例としては、デキストリン-ペプトン培地(2% デキストリン、1% ポリペプトン、0.5% KHPO、0.05% MgSO・7HO)、Czapek-dox培地(0.2% NaNO、0.1% KHPO、0.05% MgSO、0.05% KCl、0.001% FeSO、3% グルコースまたは3% デンプン、pH5.5)、フスマ培地(小麦フスマ、水分含量40%)が挙げられる。培養温度は、形質転換体が生育できる範囲内の適当な温度を採用できる。培養温度の一例を挙げると、20~37℃である。
【0066】
本発明の一実施形態に係る形質転換体の培養物には、目的タンパク質が含まれている。必要に応じて、目的タンパク質を定性分析または定量分析してもよい。あるいは、培養物から目的タンパク質を単離または精製してもよい。
【0067】
形質転換体を液体培養しており、目的タンパク質が菌体外に分泌されている場合には、菌体培養液そのものを回収して、当該目的タンパク質の分析、単離または精製に供することができる。形質転換体を固体培養しており、目的タンパク質が菌体外に分泌されている場合には、適当な緩衝液を用いて培養物から目的タンパク質を含む溶液を抽出して、当該目的タンパク質の分析、単離または精製に供することができる。菌体内に目的タンパク質が蓄積されている場合には、菌体を公知の手段で破砕し、適当な緩衝液を用いて目的タンパク質を抽出して、当該目的タンパク質の分析、単離または精製に供することができる。糸状菌を用いたタンパク質生産系の場合、目的タンパク質は分泌される場合が多い。
【0068】
上記のようにして回収した目的タンパク質をさらに精製する場合は、例えば、タンパク質を含む溶液を公知の方法によって精製すればよい。このような方法の例としては、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィーが挙げられる。タンパク質の精製には、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が好ましく採用される。
【実施例
【0069】
[コントロールベクターの構築]
本実施例では、コントロールベクターとして、pSENSU2512を使用した。このベクターは、既知の強力な改良プロモーターであるenoA142プロモーターを有しており、目的遺伝子を高発現できる。pSENSU2512の構築手順は、以下の通りである(図2も参照)。
1.pSENSU(Takaya, T. et al. Appl Microbiol Biotechnol (2011) 90: 1171.)を、XbaI-SmaIで消化した。次に、アガロース電気泳動によって、pSENSU/XbaI-SmaI消化物を単離および精製した。
2.Aspergillus oryzae RIB40(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)から常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCR法にて2-5-12ターミネーター(T-2512;日本国特許第5,686,974号を参照)を増幅させた。このときに用いたプライマーは、増幅する断片の5’末端側にXbaIサイト、当該断片の3’末端側にSmaIサイト、当該断片の両端にGGGが配置されるように設計した。具体的なプライマーの配列は、配列番号6および配列番号7に示した。
3.T-2512の断片をXbaI-SmaIで消化した後、精製した。精製物をpSENSUのXbaI-SmaIサイトにライゲーションすることにより、pSENSU2512を構築した。
【0070】
〔実施例1:CALB活性の比較〕
実施例1では、Candida antarctica由来リパーゼB(CALB)をレポータータンパク質として、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターによるタンパク質の発現向上効果を検討した。
【0071】
[CALB発現コントロールベクターの構築]
pSENSU2512をPmlI-XbaIで消化することにより、hsp12の5’UTRとターミネーターとの間に、レポーター遺伝子としてCALBを導入した。具体的な手順は、以下の通りである(図2も参照)。
1.pSENSU2512をPmlI-XbaIで消化した。次に、アガロース電気泳動によって、pSENSU2512/PmlI-XbaI消化物を単離および精製した。
2.合成したCALB遺伝子(塩基配列は配列番号8)を鋳型として、PCR法によりCALB遺伝子断片を増幅させた。この鋳型は、CALBの分泌シグナルを、αアミラーゼの分泌シグナルに置換したものである。このときに用いたプライマーは、増幅する断片の5’末端側にTCGCAAACを含ませることによりhsp12の5’UTRを完全長とし、当該断片の3’末端側にXbaIサイトを配置し、当該断片の3’末端にGGGが付加されるように設計した。具体的なプライマーの配列は、配列番号9および配列番号10に示した。
3.得られたCALB遺伝子断片をXbaI消化した後、精製した。精製物をpSENSU2512のPmlI-XbaIサイトにライゲーションすることにより、CALB発現コントロールベクターを構築した。
【0072】
[CALB発現ベクターの構築]
Aspergillus oryzae RIB40由来のグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(gpdA)および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(adh)のプロモーター由来配列、RegionIII、pUC118部分配列ならびにhsp12 5’UTR部分配列を含む、複数の塩基配列(配列番号11~21)を合成した。以下では、RegionIIIの直下にgpdAプロモーター由来配列(配列番号1の全長)を配置されたCALB発現ベクターの構築方法を説明する(図3も参照)。
1.合成した遺伝子配列を鋳型として、pUC118部分配列、RegionIII、gpdAプロモーター由来配列(配列番号1の全長)およびhsp12 5’UTR部分配列を有する遺伝子断片(全長の塩基配列は配列番号11)をPCR法により増幅させた。具体的なプライマーの配列は、配列番号22および配列番号23に示した。次に、PCR産物をアガロース電気泳動させ、増幅した断片を単離および精製した。
2.精製したpUC118部分配列、RegionIII、gpdAプロモーター由来配列(配列番号1の全長)およびhsp12 5’UTR部分配列を有する遺伝子断片をT4 polynucleotide kinaseを用いてリン酸化した。
3.CALB発現コントロールベクターを鋳型として、hsp12 5’UTR部分配列-CALB-T-2512-sC-pUCからなる断片を、インバースPCR法により増幅させた。次に、PCR産物をアガロース電気泳動させ、単離および精製した。具体的なプライマーの配列は、配列番号24および配列番号25に示した。
4.2で得たpUC118部分配列、RegionIII、gpdAプロモーター由来配列(配列番号1の全長)およびhsp12 5’UTR部分配列を有する遺伝子断片と、3で得たhsp12 5’UTR部分配列-CALB-T-2512-sC-pUC断片とをライゲーションした。これにより、RegionIIIの直下に配列番号1の全長が配置されたCALB発現ベクター(比較例1-1)を構築した。
また、同様の手順によって、以下のプロモーター配列を有するCALB発現ベクターを構築した。具体的には、hsp12 5’UTR部分配列-CALB-T-2512-sC-pUC断片とライゲーションする遺伝子断片の配列を、配列番号12~18に変更したベクターが、それぞれ、比較例1-2~1-8に係るベクターである。また、hsp12 5’UTR部分配列-CALB-T-2512-sC-pUC断片とライゲーションする遺伝子断片の配列を、配列番号19~21に変更したベクターが、それぞれ、実施例1-1~1-3に係るベクターである。なお、以下の配列は、配置順が上流から下流になるように記載している。
・RegionIII、配列番号2の全長(比較例1-2)。
・RegionIII、配列番号1の第600位~第1000位(比較例1-3)。
・RegionIII、配列番号2の第600位~第1000位(比較例1-4)。
・配列番号1の第1位~第299位、RegionIII、配列番号1の第300位~第1000位(比較例1-5)。
・配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号1の第600位~第825位(比較例1-6)。
・配列番号2の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第830位(比較例1-7)。
・配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第830位(比較例1-8)。
・配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位(実施例1-1)。
・配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第781位~第907位(実施例1-2)。
・配列番号1の第1位~第625位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位(実施例1-3)。
【0073】
本項目で作製したCALB発現ベクターは、CALB発現コントロールベクターと比較すると、プロモーター配列のみが置換されていることになる。
【0074】
[形質転換体の作製]
作製したベクターを用いて、Aspergillus oryzae NS4株(変異処理により取得した、niaDおよびsCの二重欠損株)を、プロトプラスト-PEG法にて形質転換させた。この中から、PCR法により、ベクターが染色体のsC座位に1コピーだけ導入された形質転換体を選択した。選択した形質転換体を、デキストリン-ペプトン培地(2% デキストリン、1% ポリペプトン、0.5% KHPO、0.05% MgSO・7HO)にて3日間培養し、培養上清を粗酵素液とした。
【0075】
[CALB活性の測定]
250μLの100%エタノールに5μLp-ニトロフェニルブチレートを加え、ピペットで懸濁させた。この懸濁液を、蒸留水で50mLにメスアップすることにより、PNPB溶液を得た。次に、150μLのPNPB溶液と、50μLの20mMリン酸緩衝液(pH7.0)とを混合し、基質溶液を得た。得られた基質溶液に、適宜稀釈した2μLの粗酵素液を加え、反応を開始させた。反応温度は37℃、反応時間は3分間とした。400nmにおける吸光度の増加を測定することにより、CALB活性を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1では、enoA142プロモーターを有するコントロールベクターの活性に対する相対活性として、CALB活性を表記している。enoA142プロモーターとは、エノラーゼ遺伝子(enoA)のプロモーターを制限酵素処理し、その間にRegionIIIを挿入したプロモーターである。
【0076】
【表1】
【0077】
(結果)
実施例1-1~1-3に係るプロモーターは、コントロール(enoA142プロモーター)よりも、CALB活性を大幅に向上させることが判った。このことから、gpdAプロモーター由来配列、エンハンサー配列およびadhプロモーター由来配列がこの順で配置されている、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターは、CALBの発現量を大幅に増加させることが示唆される。
【0078】
gpdAプロモーター由来配列とRegionIIIとの組合せを検討した比較例1-1、1-3、1-5、1-6において、発現効率は最大でコントロールの1.1倍であった。また、adhプロモーター由来配列とRegionIIIとの組合せを検討した比較例1-2、1-4、1-7において、発現効率は最大でコントロールの1.3倍であった。これに対して、gpdAプロモーター由来配列、RegionIIIおよびadhプロモーター由来配列の組合せを検討した実施例1-1~1-3では、発現効率は最大でコントロールの2.5倍に達した。
【0079】
実施例1-1と実施例1-3とを比較すると、gpdAプロモーター由来配列は、少なくとも第1位~第599位を含んでいれば、発現効率を高める機能を有していることが示唆される。また、実施例1-1と比較例1-8とを比較すると、adhプロモーター由来配列は、少なくとも第831位~第907位を含んでいれば、発現効率を高める機能を有していることが示唆される。これは、実施例1-1の領域には機能に必須の領域が含まれており、比較例1-8の領域には機能に必須の領域が含まれていないと考えられるためである。
【0080】
〔実施例2:GUS活性の比較〕
実施例2では、大腸菌由来β-グルクロニダーゼ(GUS)をレポータータンパク質とし、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターによるタンパク質の発現向上効果を検討した。
【0081】
[GUS発現コントロールベクターの構築]
GUSを発現するコントロールベクターは、以下の手順で構築した。
1.pSENSU2512をPmlI-XbaIで消化した。次に、アガロース電気泳動によって、pSENSU2512/PmlI-XbaI消化物を単離および精製した。
2.pBI221(Clontech社)を鋳型として、PCR法によりGUS遺伝子を増幅させた。次に、アガロース電気泳動によって、GUS遺伝子断片を単離および精製した。このときに用いたプライマーは、増幅する断片の5’末端側にTCGCAAACを含ませることによりhsp12の5’UTRを完全長とし、GUS遺伝子断片の3’末端側にXbaIサイトが配置され、当該断片の3’末端にGGGが配置されるように設計した。具体的なプライマーの配列は、配列番号26および配列番号27に示した。
3.精製したGUS遺伝子断片を、XbaIで消化した。次に、アガロース電気泳動によって、GUS/XbaI消化物を単離および精製した。
4.pSENSU2512/PmlI-XbaI消化物とGUS/XbaI消化物とをライゲーションすることにより、GUS発現コントロールベクターを構築した。
【0082】
[GUS発現ベクターの構築]
実施例1-1と同じプロモーター(配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位がこの順に配置されたプロモーター)を有するGUS発現ベクターを構築した。具体的な手順は、以下の通りである。
1.実施例1-1で作製したベクターを鋳型として、インバースPCR法により、T-2512-sC-pUC-配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位-hsp12 5’UTRからなる断片を増幅させた。使用したプライマーの配列は、配列番号28および配列番号29に示した。次に、アガロース電気泳動によって、断片を単離および精製した。
2.pBI221(Clontech社)を鋳型として、PCR法によりGUS遺伝子を増幅させた。次に、アガロース電気泳動によって、GUS遺伝子断片を単離および精製した。具体的なプライマーの配列は、配列番号30および配列番号31に示した。
3.精製したGUS遺伝子断片を、T4 polynucleotide kinaseを用いてリン酸化した。
4.1で得たT-2512-sC-pUC-配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位-hsp12 5’UTRからなる遺伝子断片と、3で得たGUS遺伝子断片とをライゲーションした。これにより、実施例1-1と同じプロモーター配列を有するGUS発現ベクターを構築した。本項目で作製したGUS発現ベクターは、GUS発現コントロールベクターと比較すると、enoA142プロモーターが実施例1-1と同じプロモーターに置換されている点が異なっている。
【0083】
[形質転換体の作製およびGUS活性の比較]
作製したベクターを用いて、プロトプラスト-PEG法により、Aspergillus oryzaeを形質転換させた。この中から、PCR法により、ベクターが染色体のsC座位に1コピーだけ導入されている形質転換体を選択した。選択した形質転換体を、デキストリン-ペプトン培地(2% デキストリン、1% ポリペプトン、0.5% KHPO、0.05% MgSO・7HO)にて2日間培養した。その後、形質転換体を集菌し、乳鉢を用いて液体窒素中ですり潰して、粗酵素液を得た。粗酵素液のGUS活性は、公知の方法(Proc Natl Acad Sci (1986) Vol.83,No.22, pp.8447-8451)に準じて測定した。
【0084】
(結果)
実施例1-1と同じプロモーターを有するGUS発現ベクターを使用した場合のGUS活性は、コントロールのGUS活性の1.5倍だった。このことから、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターは、GUSの発現量を大幅に増加させることが示唆される。
【0085】
〔実施例3:Lac活性の比較〕
実施例3では、Aspergillus oryzae由来ラクターゼ(Lac)をレポータータンパク質とし、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターによるタンパク質の発現向上効果を検討した。
【0086】
[Lac発現コントロールベクターの構築]
Lacを発現するコントロールベクターは、以下の手順で構築した。
1.pSENSU2512を、PmlI-XbaI消化した。次に、アガロース電気泳動によって、pSENSU2512/PmlI-XbaI消化物を単離および精製した。
2.Aspergillus oryzae RIB40から常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCR法により、Lac遺伝子断片を増幅させた。次に、アガロース電気泳動によって、断片を単離および精製した。このときに用いたプライマーは、増幅する断片の5’末端側にTCGCAAACを含ませることによりhsp12の5’UTRを完全長とし、当該断片の3’末端側にXbaIサイトが配置され、当該断片の3’末端にGGGが配置されるように設計した。具体的なプライマーの配列は、配列番号32および配列番号33に示した。
3.精製したLac遺伝子断片を、XbaIで消化した。次に、アガロース電気泳動によって、Lac/XbaI消化物を単離および精製した。
4.pSENSU2512/PmlI-XbaI消化物と、Lac/XbaI消化物とをライゲーションした。これにより、Lac発現コントロールベクターを構築した。
【0087】
[Lac発現ベクターの構築]
実施例1-1と同じプロモーター(配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位がこの順に配置されたプロモーター)を有するLac発現ベクターを構築した。具体的な手順は、以下の通りである。
1.実施例1-1で作製したベクターを鋳型として、インバースPCR法により、T-2512-sC-pUC-配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位-hsp12 5’UTRからなる断片を増幅させた。使用したプライマーの配列は、配列番号28および配列番号29に示した。次に、アガロース電気泳動によって、断片を単離および精製した。
2.Aspergillus oryzae RIB40から常法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号34および配列番号35に記載のプライマーを用いたPCR法によりLac遺伝子断片を増幅させた。次に、アガロース電気泳動を行って、断片を単離および精製した。
3.精製したLac遺伝子断片を、T4 polynucleotide kinaseを用いてリン酸化した。
4.1で得たT-2512-sC-pUC-配列番号1の第1位~第599位、RegionIII、配列番号2の第600位~第907位-hsp12 5’UTR断片と、3で得たLac遺伝子断片とをライゲーションした。これにより、実施例1-1と同じプロモーター配列を有するLac発現ベクターを構築した。本項目で作製したLac発現ベクターは、Lac発現コントロールベクターと比較すると、enoA142プロモーターが実施例1-1と同じプロモーターに置換されている点が異なっている。
【0088】
[形質転換体の作製]
作製したベクターを用いて、プロトプラスト-PEG法によりAspergillus oryzaeを形質転換させた。この中から、PCR法により、ベクターが染色体のsC座位に1コピーだけ導入された形質転換体を選択した。選択した形質転換体を、デキストリン-ペプトン培地(2% デキストリン、1% ポリペプトン、0.5% KHPO、0.05% MgSO・7HO)にて3日間培養し、培養上清を粗酵素液とした。
【0089】
[Lac活性の比較]
2-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドを、0.1M リン酸緩衝液(pH4.5)に溶解させて、5.7mM基質溶液を調製した。175μLの基質溶液に、適宜稀釈した粗酵素液を25μL加え、反応を開始させた。反応温度は30℃、反応時間は10分間とした。反応後、50μLの1M 炭酸ナトリウム溶液を加えた。415nmにおける吸光度を測定することにより、Lac活性を測定した。
【0090】
(結果)
実施例1-1と同じプロモーターを有するLac発現ベクターを使用した場合のLac活性は、コントロールのLac活性の1.6倍だった。このことから、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターは、Lacの発現量を大幅に増加させることが示唆される。
【0091】
実施例1~3の結果から、本発明の一実施形態に係る糸状菌用プロモーターによれば、糸状菌の細胞中において、広汎なタンパク質を高発現させられることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、糸状菌を用いたタンパク質の生産に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 gpdAプロモーター由来配列
2 adhプロモーター由来配列
5 エンハンサー配列
7 目的タンパク質をコードする配列
10 糸状菌用プロモーター
図1
図2
図3
【配列表】
0007540709000001.app