(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】半導体素子構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/04 20100101AFI20240820BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2021018091
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-10-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、文部科学省、「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上山 智
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 勇
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-056235(JP,A)
【文献】特表2021-502713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、前記基板の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、
p型不純物が添加されたp型半導体層を前記基板の上に積層するp型半導体層形成工程と、
前記p型半導体層形成工程を実行後、前記p型半導体層に含まれる水素を前記p型半導体層から脱離させる水素脱離工程と、
前記水素脱離工程を実行後、前記p型半導体層の表面に前記p型不純物が添加されない非p型半導体層を積層する非p型半導体層形成工程と、
を備え、
前記p型半導体層及び前記非p型半導体層は、窒化物半導体であり、
前記非p型半導体層形成工程における前記基板の温度は、500℃から650℃であることを特徴とする半導体素子構造の製造方法。
【請求項2】
基板を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、前記基板の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、
p型不純物が添加されたp型半導体層を前記基板の上に積層するp型半導体層形成工程と、
前記p型半導体層形成工程を実行後、前記p型半導体層に含まれる水素を前記p型半導体層から脱離させる水素脱離工程と、
前記水素脱離工程を実行後、前記p型半導体層の表面に前記p型不純物が添加されない非p型半導体層を積層する非p型半導体層形成工程と、
を備え、
前記p型半導体層及び前記非p型半導体層は、窒化物半導体であり、
前記非p型半導体層形成工程における前記基板の温度は、450℃から550℃であることを特徴とする半導体素子構造の製造方法。
【請求項3】
前記非p型半導体層形成工程における前記基板の温度は、500℃から550℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体素子構造の製造方法。
【請求項4】
前記非p型半導体層の厚みは、1.7nmから15nmであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半導体素子構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機金属化合物気相成長法(MOVPE法)等の、水素キャリアガス(H2)やアンモニア(NH3)などの水素化合物原料を使用する成長方法において、p型不純物であるMg(マグネシウム)などのアクセプタを添加してGaN等の窒化物半導体を製造すると、MgとH(水素)が結合することが知られている。本来、窒化物半導体に添加されたMgは正孔を吐き出してイオン化するはずであるが、Hと結合することによって正孔を供給することができなくなってしまう。これをMgの不活性化という。ゆえに、Mgを添加したGaNをエピタキシャル成長させた層に対して、H2を含まない雰囲気下において、500℃以上の熱処理を施す。これによって、この層におけるMgとHとの結合を解き、この層からHを追い出してこの層におけるMgを活性化させることによって、この層にp型の特性を付与している。
【0003】
このとき、Mgから切り離されたHは、p-GaN層(すなわち、p型の特性が付与されたGaN層)内において比較的自由に動くことができるが、n型不純物が添加されたGaN層であるn-GaN層内では自由に動くことができないことが報告されている。ゆえに、p-GaN層がウエハの最表面に存在する場合は問題ないが、トンネル接合を有するLEDなどの発光素子のように、p-GaN層の上にn-GaN層が積層されているとp-GaN層内に存在するHがp-GaN層の上に積層するn-GaN層を通過することができず、このHをp-GaN層から追い出すことが困難である。それゆえ、p-GaN層の上にn-GaN層が積層するようなLED素子構造においては、エッチング等の手法によって円柱状のメサを切り出して形成し、n-GaN層の下に埋め込まれたp-GaN層の側面を断面として露出させる。そして、p-GaN層において、Hを横方向(層が拡がる方向)に移動させ、露出した断面からHを脱離させる方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】Pirouz Sohi et al.,"Low-temperature growth of n ++-GaN by metalorganic chemical vapor deposition to achieve low-resistivity tunnel junctions on blue light emitting diodes"、Semiconductor Science and Technology.Vol.34.Number1(2018).
【文献】V. Fan Arcara et al.,"(Ga,In)N/GaN light emitting diodes with a tunnel junction and a rough n-contact layer grown by metalorganic chemical vapor deposition"、AIP Advances.Vol.9.issue.5(2019).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、p-GaN層において、Hを横方向に長距離(数10μmから数100μm)移動させる必要がある。このため、この方法では、形成したメサに対して高温(700℃以上)、長時間(30分以上)のアニールを施す必要がある。あるいは、十分な高温や長時間のアニールを施さないと、p-GaN層の中央部において十分にHを脱離させることが難しく、p-GaN層の中央部におけるMgの活性化が不十分になる可能性があった。そこで、半導体素子のエピタキシャル成長の途中においてMgを添加したp-GaN層におけるMgの活性化(以降、水素脱離工程ともいう)を行い、その後、n-GaN層を積層してp-GaN層を埋め込む方法が期待される。
【0006】
しかし、p-GaN層が最表面にある段階で水素脱離工程を実行し、Mgの活性化が適切に行われても、直後のn-GaN層のエピタキシャル成長時にNH3を利用することになるため、結局、n-GaN層の直下のp-GaN層内のMgがNH3から生じるHによって再び不活性化してしまうという課題が存在した。非特許文献1、2では、n-GaN層を成長させる際の温度を、結晶性が大幅に劣化することがない700℃程度の温度でエピタキシャル成長することによって、p-GaN層内へHが再び混入することの抑制を試みている。しかし、非特許文献1で得られたトンネル接合では、電流密度が800A/cm2における電圧はおよそ5.8Vであり、非特許文献2で得られたトンネル接合では、電流密度が800A/cm2における電圧はおよそ11Vである。従って、非特許文献1、2における電流・電圧特性は、未だ高抵抗であり、素子としての使用に耐え得る十分な特性が得られていない。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、p型半導体層内におけるp型不純物の活性化を良好に行うことができる半導体素子構造の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の半導体素子構造の製造方法は、
基板を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、前記基板の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、
p型不純物が添加されたp型半導体層を前記基板の上に積層するp型半導体層形成工程と、
前記p型半導体層形成工程を実行後、前記p型半導体層に含まれる水素を前記p型半導体層から脱離させる水素脱離工程と、
前記水素脱離工程を実行後、前記p型半導体層の表面に前記p型不純物が添加されない非p型半導体層を積層する非p型半導体層形成工程と、
を備え、
前記非p型半導体層形成工程における前記基板の温度は、500℃から650℃であることを特徴とする。
【0009】
第2発明の半導体素子構造の製造方法は、
基板を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、前記基板の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、
p型不純物が添加されたp型半導体層を前記基板の上に積層するp型半導体層形成工程と、
前記p型半導体層形成工程を実行後、前記p型半導体層に含まれる水素を前記p型半導体層から脱離させる水素脱離工程と、
前記水素脱離工程を実行後、前記p型半導体層の表面に前記p型不純物が添加されない非p型半導体層を積層する非p型半導体層形成工程と、
を備え、
前記非p型半導体層形成工程における前記基板の温度は、450℃から550℃であることを特徴とする。
【0010】
第1発明の半導体素子構造の製造方法は、p型半導体層形成工程を実行後、水素脱離工程を実行したp型半導体層の上に、p型不純物が添加されない非p型半導体層を積層させる非p型半導体層形成工程における基板の温度を500℃から650℃(結晶性が大きく劣化してしまう極めて低い温度)にすることによって、非p型半導体層における結晶性は劣化するものの、p型半導体層へのHの侵入、すなわちp型半導体層におけるp型不純物の不活性化を抑制し、結果として、良好な電流・電圧特性を有する半導体素子を得ることができる。ここで、基板の上とは、基板の直上だけでなく、基板の直上よりも上方の位置も含む。
【0011】
第2発明の半導体素子構造の製造方法は、非p型半導体層形成工程において、Hが有する運動エネルギーを低下させることができ、これによって、Hがp型半導体層に対し、より侵入し難くすることができる。特に、この温度範囲を採用した半導体素子構造を有する半導体発光素子を製造すると、良好な電流・光出力特性の半導体発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1から実施例8の半導体発光素子の層の構造を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1から実施例8の半導体発光素子を素子形成した状態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1から実施例5の各々のサンプルにおける、電流・電圧・光出力特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例6から実施例8の各々のサンプルにおける、電流・電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0014】
第1発明及び第2発明の半導体素子構造の製造方法において、非p型半導体層形成工程における基板の温度は、500℃から550℃であり得る。この構成によれば、非p型半導体層形成工程において、Hが有する運動エネルギーを低下させることができ、これによって、Hがp型半導体層に対し、より侵入し難くすることができる。特に、この温度範囲を採用した半導体素子構造を有する半導体素子を製造すると、電流・電圧特性、及び電流・光出力特性が共に良好な半導体素子を得ることができるので、半導体発光素子を含む半導体素子の全般において、良好な性能のものとすることができる。
【0015】
第1発明及び第2発明の半導体素子構造の製造方法において、非p型半導体層の厚みは、1.7nmから15nmであり得る。この構成によれば、非p型半導体層の表面平坦性を過度に悪化させることなくp型半導体層へのHの侵入を抑制して、性能が良好な半導体素子を得ることができる。
【0016】
第1発明及び第2発明の半導体素子構造の製造方法において、p型半導体層、及び非p型半導体層は、窒化物半導体であり得る。この構成によれば、p型半導体層に良好なp型の特性を付与した状態を維持しつつp型半導体層の上に非p型半導体層を積層した構成を窒化物半導体を用いた場合にも実現することができる。
【0017】
第1発明及び第2発明の半導体素子構造の製造方法において、非p型半導体層は、n型不純物が添加されたn型半導体層であり得る。この構成によれば、p型半導体層の上にHが通過し難いn型半導体層を配置することによって、p型半導体層へのHの侵入をより効果的に抑制することができる。
【0018】
第1発明及び第2発明の半導体素子構造の製造方法において、p型半導体層、及びn型半導体層は、トンネル接合層であり得る。この構成によれば、p型半導体層に良好なp型の特性を付与した状態を維持しつつp型半導体層の上にn型半導体層を積層することができるので、良好な特性を有するトンネル接合層を形成することができる。
【0019】
次に、本発明の半導体素子構造の製造方法を具体化した実施例1から実施例8について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2>
〔トンネル接合の概要〕
通常のpn接合は、p型半導体層及びn型半導体層で構成され、ダイオード特性により逆バイアス電圧を印加しても電流が流れない。これに対して、トンネル接合は、p型半導体層及びn型半導体層で構成されるpn接合であるが、逆バイアス電圧を印加すると電流が流れる。詳しくは、トンネル接合は、通常のpn接合に比べてp型半導体層及びn型半導体層のそれぞれにp型不純物及びn型不純物が高濃度に添加されたpn接合である。これによって、トンネル接合は、通常のpn接合に比べてp型半導体層とn型半導体層との界面近傍に形成される空乏層の層厚が薄くなり、pn接合の両端に逆バイアス電圧を印加するとキャリア(電子及びホール(正孔))が空乏層を通り抜ける(トンネルする)ことができる。つまり、トンネル接合は、n型半導体層からp型半導体層に向けて電流を流すことができる。
【0021】
〔半導体発光素子の製造手順〕
本発明の半導体素子構造の製造方法を用いた半導体素子である半導体発光素子の製造手順について概要を説明する。この製造手順によって製造する半導体発光素子1は、
図1に示すように、サファイア基板10、アンドープGaN層11、下部n-GaN層12、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13、p-AlGaN層14、p-GaN層15、トンネル接合層16、及び上部n-GaN層17を備えている。トンネル接合層16は、p
++-GaN層16A、及びn
++-GaN層16Bを有している。半導体発光素子1には、窒化物半導体が用いられている。ここで、p
++とはp型不純物であるMgが高濃度に添加された状態を意味し、n
++とはn型不純物であるSiが高濃度に添加された状態を意味する。
【0022】
半導体発光素子1の素子構造は、基板であるサファイア基板10(以下、単に基板10ともいう)の表面側(表は
図1における上側である、以下同じ。)に積層された低温堆積緩衝層(図示せず)を介して形成したアンドープGaN層11の表面側に、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いて積層して結晶成長する。なお、基板10、及びアンドープGaN層11はc面((0001)面)が表面である。
【0023】
先ず、基板10の表面側に形成されたアンドープGaN層11の表面に下部n-GaN層12を積層して結晶成長する。詳しくは、MOCVD法を実行することができる結晶成長装置であるMOCVD装置(有機金属気相成長装置)の反応炉内にアンドープGaN層11が表面に形成された基板10を収容する。そして、反応炉内にN(窒素)の原料であるNH3(アンモニア)、及びキャリアガスであるH2を供給して、反応炉内の温度を調節して基板10の温度を1050℃にする。反応炉内に供給するガスは、別途記載があるまで供給を停止しない。そして、反応炉内にGa(ガリウム)の原料であるTMGa(トリメチルガリウム)と、n型不純物であるSi(ケイ素)の原料であるSiH4(シラン)とを供給して、2μmの厚みの下部n-GaN層12を積層して結晶成長させる。反応炉内へのSiH4の供給量は、下部n-GaN層12に添加されるSi濃度が1×1019cm-3になるように調節する。つまり、MOCVD装置(有機金属気相成長装置)は、基板10を収容した反応炉内に水素元素(H)を含むガスを供給して、基板10の上に半導体層を積層して結晶成長させるのである。
【0024】
次に、下部n-GaN層12の表面にGaInN/GaN5重量子井戸活性層13を積層して結晶成長する。GaInN/GaN5重量子井戸活性層13は、GaInN井戸層(図示せず)、及びGaNバリア層(図示せず)を有している。
【0025】
先ず、GaInN井戸層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのH2、TMGa、及びSiH4の供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。そして、反応炉内にキャリアガスとしてN2(窒素)を供給する。そして、反応炉内の温度を調節して基板10の温度を780℃にする。そして、反応炉内にGaの原料であるTEGa(トリエチルガリウム)と、In(インジウム)の原料であるTMIn(トリメチルインジウム)とを供給して、3nmの厚みのGaInN井戸層を積層して結晶成長させる。
【0026】
次に、GaInN井戸層の表面にGaNバリア層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのTMInの供給を停止して、6nmの厚みのGaNバリア層を積層して結晶成長させる。こうして成長させたGaInN量子井戸層、及びGaNバリア層を1ペアとして、この1ペアを5ペア積層して結晶成長する。こうしてGaInN/GaN5重量子井戸活性層13を形成する。そして、反応炉内へのTEGa及びTMInの供給を停止する。
【0027】
次に、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13の表面にMgが添加されたp型半導体層であるp-AlGaN層14を積層して結晶成長するp型半導体層形成工程を実行する。p-AlGaN層14は、p型不純物が添加され、基板10の上にアンドープGaN層11、下部n-GaN層12、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13を介して積層する。つまり、p-AlGaN層14は、他の半導体層を介して基板10の上に積層される。詳しくは、反応炉内へ供給するキャリアガスをN2からH2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板10の温度を1000℃にする。そして、反応炉内にTMGa、Al(アルミニウム)の原料であるTMAl(トリメチルアルミニウム)、及びMgの原料であるCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を供給して、20nmの厚みのp-AlGaN層14を積層して結晶成長させる。反応炉内へのCp2Mgの供給量はp-AlGaN層14に添加されるMg濃度が3×1019cm-3になるように調節する。
【0028】
次に、p-AlGaN層14の表面にp型半導体層であるp-GaN層15を積層して結晶成長するp型半導体層形成工程を実行する。p-GaN層15は、p型不純物が添加され、基板10の上にアンドープGaN層11、下部n-GaN層12、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13、p-AlGaN層14を介して積層する。つまり、p-GaN層15は、他の半導体層を介して基板10の上に積層される。詳しくは、反応炉内へのTMAlの供給を停止して、160nmの厚みのp-GaN層15を積層して結晶成長させる。p-GaN層15に添加されるMg濃度は4×1019cm-3である。
【0029】
次に、反応炉内でp-GaN層15の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層16の一部となる、アクセプタ(p型不純物)としてMgが添加されたp型半導体層であるp++-GaN層16Aを積層して結晶成長するp型半導体層形成工程を実行する。p++-GaN層16Aは、p型不純物が添加され、基板10の上にアンドープGaN層11、下部n-GaN層12、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13、p-AlGaN層14、p-GaN層15を介して積層する。つまり、p++-GaN層16Aは、他の半導体層を介して基板10の上に積層される。
【0030】
先ず、アクセプタを添加してp++-GaN層16Aを形成する。詳しくは、反応炉内にTMGa、及びCp2Mgを供給する。こうして、数nmから10数nmの厚みのp++-GaN層16Aを成長させる。p++-GaN層16Aに添加されるMg濃度の最大値が2×1020cm-3から3×1020cm-3になるようにTMGa、及びCp2Mgの流量を調節する。こうして、p++-GaN層16Aの成長を終了する。そして、反応炉内へのTMGa、及びCp2Mgの供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。こうして、p型半導体層形成工程を終了する。
【0031】
p++-GaN層16Aは、通常、水素雰囲気下で成長する。TMGa(Ga原料)及びCp2Mg(Mg原料)の供給を停止してp++-GaN層16Aの成長を終了後、反応炉内へ供給するキャリアガスをH2からN2に切り替える。N原料であるNH3を流したまま反応炉内の降温を開始し、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13の上のp-AlGaN層14、p-GaN層15、及びこの時点での最表面層であるp++-GaN層16AまでのMgを活性化するための温度として基板10の温度が700℃になるまで待つ。
【0032】
基板10の温度が700℃に到達した時点で、N原料及びHを供給する要因ともなるNH3の供給を完全に停止し、H2が全く存在しない雰囲気下、すなわち、反応炉内をN2のみの雰囲気にする。この窒素雰囲気下において、基板10の温度を700℃にした状態を15分間保持することによって、全てのp型半導体層(すなわち、p-AlGaN層14、p-GaN層15、p++-GaN層16A、以下、単にp型半導体層14,15,16Aともいう)内のHを除去する水素脱離工程を実行する。つまり、p型半導体層形成工程を実行後、p型半導体層14,15,16Aに含まれるH(水素)をp型半導体層14,15,16Aから脱離させる水素脱離工程を実行する。反応炉内でのMgの活性化、すなわち、水素脱離工程が終了すると、p型半導体層14,15,16A内において不必要なHがp型半導体層14,15,16Aから除去され、p型半導体層14,15,16AにおけるMgが活性化してMgから正孔が生成されるようになる。
【0033】
水素脱離工程を実行後、反応炉内の雰囲気をN2のままとして、非p型半導体層であり、p++-GaN層16Aの表面にMgが添加されないn型半導体層であるn++-GaN層16Bを積層して成長させる非p型半導体層形成工程を実行する。
【0034】
非p型半導体層形成工程では、Ga原料、Si原料、そしてN原料であるNH3を供給する必要がある。ここで課題となるのが、NH3の供給に伴うHの存在である。非p型半導体層形成工程において反応炉内にHが存在すると、p型半導体層14,15,16Aの結晶成長中もそうであるように、NH3の供給に伴いNH3から生じるHがp型半導体層14,15,16A内に侵入し、p型半導体層14,15,16AにおけるMgを不活性化してしまう。ここで、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を低下させると、Hが有する運動エネルギーが減少してHがp型半導体層14,15,16Aへ侵入する割合が低下することが期待される。一方、通常、GaNの成長温度は1050℃であり、この温度よりもはるかに低い成長温度では、n++-GaN層16Bの結晶性が大幅に低下して、期待する特性が得られない可能性がある。
【0035】
そこで、p型半導体層14,15,16AへのHの侵入の抑制を期待して、半導体発光素子1の製造手順のうち、n++-GaN層16Bを形成する非p型半導体層形成工程における基板10の温度を変更させて、実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2のサンプルを作製した。具体的には、従来の温度(すなわち、非特許文献1において開示された温度700℃)と概ね同じである710℃のサンプルを比較例1、2として作製すると共に、この温度よりも低い650℃、600℃、550℃、500℃、450℃でn++-GaN層16Bを結晶成長させた実施例1から実施例5のサンプルを作製した。
【0036】
ここで、比較例1のサンプルは水素脱離工程を実施したものであるのに対して、比較例2のサンプルは水素脱離工程を実施していない。つまり、比較例2のサンプルは、半導体発光素子1の製造手順のうち、水素脱離工程を実行しない点、及びn++-GaN層16Bを形成する非p型半導体層形成工程における基板10の温度が710℃である点が実施例1から実施例5のサンプルと異なる。
【0037】
具体的には、先ず、反応炉内の温度を調節して基板10の温度を450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、及び710℃のいずれかにする。基板10の温度が上記のいずれかに到達したところで、反応炉内にTEGa(Ga原料)、SiH4(Si原料)、及びN原料であるNH3を供給して、15nmの厚みのn++-GaN層16Bを積層して結晶成長させる。n++-GaN層16BにおけるSi濃度は、3×1020cm-3以上になるように、TEGaとSiH4の供給量を調節する。TEGaとSiH4の供給を停止して実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2における非p型半導体層形成工程を終了する。その後、反応炉内へのTEGa及びSiH4の供給を停止する。
【0038】
次に、NH3を流したまま、キャリアガスをN2からH2に切り替えつつ、実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2の各々のサンプルの基板10の温度を1000℃まで上昇させる。最表面に厚みが15nmのn++-GaN層16Bが存在するため、層の内部(すなわち、p型半導体層14,15,16A)にHは侵入しない。このため、p型半導体層14,15,16Aに添加されているMgは、活性化された状態が保たれる。反応炉内を水素雰囲気にし、基板10の温度が1000℃になり次第、Ga原料(例えば、TMGa)、Si原料(例えば、SiH4)を供給して、上部n-GaN層17を積層して結晶成長させる。上部n-GaN層17の厚みは、300nmである。Ga原料とSi原料の供給を停止して上部n-GaN層17の成長を終了する。成長終了後、反応炉にNH3を供給したまま、キャリアガスをH2からN2に変更し、基板10の温度を室温まで下げる。基板10の温度を室温まで下げる途中、基板10の温度が400℃を下回った時点でNH3の供給を停止する。こうして、実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2における半導体発光素子1の素子層構造の作製が終了する。
【0039】
次に、こうして素子層構造を作製した実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2におけるウエハの各々に対して直径35μmのLED(半導体発光素子1)の素子形成を行う。フォトリソグラフィーによって、直径35μmの円形マスクを形成する。そして、円形マスクによって保護された以外の部分をドライエッチングによって下部n-GaN層12が露出するまでエッチングする。これによって、
図2に示すように、GaInN/GaN5重量子井戸活性層13、p-AlGaN層14、p-GaN層15、トンネル接合層16(p
++-GaN層16A、n
++-GaN層16B)、及び上部n-GaN層17において露出した側面Sを形成する。
【0040】
従来は、この時点で反応炉内の雰囲気を窒素雰囲気にして、725℃、30分のアニールを施すことによってp型半導体層14,15,16Aの側面SからHを脱離させて、p型半導体層14,15,16A内のMgの活性化を行っていた。しかし、この半導体素子構造の製造方法では、すでにp型半導体層形成工程の実行後であって非p型半導体層形成工程の前に水素脱離工程を実行しているため、この時点でのp型半導体層14,15,16AのMgの活性化は行わなくてよい。
【0041】
次に、上部n-GaN層17の表面、及び露出した下部n-GaN層12の表面にCr/Ni/Au電極18を真空蒸着法により形成する。こうして、上部n-GaN層17に形成した電極18Aをアノード、下部n-GaN層12に形成した電極18BをカソードとするLEDである半導体発光素子1を作製する。
【0042】
〔実施例1から実施例5、比較例1、及び比較例2のサンプルにおける電流・電圧・光出力特性の比較〕
先ず、n++-GaN層16Bの成長温度が710℃の比較例1、及び比較例2のサンプルの場合、水素脱離工程の有無による電流・電圧特性の差(違い)は見られなかった。なお、比較例1と比較例2との電流・電圧特性を比較する結果は図示しない。これは、710℃でNH3を供給するとウエハ最表面層(n++-GaN層16B)にHが侵入し、Hがn++-GaN層16Bを通過してp型半導体層14,15,16A内のMgが不活性化されることを示唆していると思われる。ゆえに、実施例1から実施例5のサンプルにおいて、比較例1のサンプル(n++-GaN層16Bの成長温度が710℃の)における電流・電圧特性よりも低い駆動電圧が観測されれば、水素脱離工程、及びMgの不活性化の抑制が共に実現していると判断できる。
【0043】
実施例1から実施例5、比較例1のサンプルの電流・電圧・光出力特性を測定した結果を
図3(A)から
図3(E)に示す。比較例1のサンプルの電流・電圧・光出力特性は、比較のために、実施例1から実施例5のサンプルの各々の特性を示すグラフに点線で重ねてプロットした。比較例2のサンプルの電流・電圧・光出力特性は図示しない。これら特性の測定の結果は、二回目以降に安定し易い。このため、
図3(A)から
図3(E)には二回目の測定結果を示した。
【0044】
電流・電圧特性は、500℃から650℃(すなわち、実施例1から実施例4)の範囲において710℃(比較例1)の結果に比べて駆動電圧の低減が観測された。これは、500℃から650℃の温度範囲において、水素脱離工程の効果が得られることを示しており、特にトンネル接合層16での電圧降下に効果があると考えられる。ゆえに、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を500℃から650℃の温度範囲にすることによって、トンネル接合層16を有する半導体素子の性能を向上させることができる。
【0045】
なお、実施例3(550℃)のサンプルにおいて、電流密度が800A/cm2における電圧は、およそ4.9Vである。この結果は、非特許文献1、2における電流・電圧特性に比べ、低い抵抗であり、半導体素子としての性能が非特許文献1、2のものよりも優れていることを示している。つまり、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を500℃から650℃の温度範囲にすることが好ましい。
【0046】
さらに、電流・光出力特性は、450℃から550℃(すなわち、実施例3から実施例5)の範囲において710℃(比較例1)の結果に比べて光出力が大きくなることがわかった。これは、450℃から550℃の温度範囲において、Mg活性化の効果が得られることを示しており、特にGaInN/GaN5重量子井戸活性層13への正孔注入を促すGaInN/GaN5重量子井戸活性層13の直上のp-AlGaN層14内のMgの活性化に効果があると考えられる。ゆえに、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を450℃から550℃の温度範囲にすることによって、良好な性能の半導体発光素子1を製造することができる。つまり、半導体発光素子1を製造する場合、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を450℃から550℃の温度範囲にすることが好ましい。
【0047】
さらに、非p型半導体層形成工程における基板10の温度が500℃から550℃の温度範囲においては、トンネル接合層16の電圧降下、及びp-AlGaN層14内のMgの活性化を共に実現することができる。このため、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を500℃から550℃の温度範囲にすることによって、半導体発光素子1を含む半導体素子の全般において良好な性能のものを製造することができる。つまり、非p型半導体層形成工程における基板10の温度を500℃から550℃の温度範囲にすることがより好ましい。
【0048】
<実施例6から実施例8>
この半導体素子構造の製造方法におけるn++-GaN層16Bの厚みが電流・電圧特性に及ぼす影響を検討するため、n++-GaN層16Bの厚さが15nm、3.5nm、1.7nmの3種類のサンプルを実施例6から実施例8として作製した。ここで、n++-GaN層16Bを15nmより厚くすると、結晶の表面平坦性が大幅に悪化したため、半導体素子に応用するには不適当と判断した。n++-GaN層16Bの成長温度は、実施例1から実施例5のサンプルにおいて電流・電圧特性、及び電流・光出力特性の両方に効果が得られた550℃を選択した。実施例6から実施例8のサンプルの製造手順は、n++-GaN層16Bの厚さを除いて実施例1から実施例5のサンプルと同じであり、実施例1から実施例5のサンプルにおける素子評価と同様の素子評価を行った。
【0049】
実施例6から実施例8のサンプルにおける電流・電圧特性を
図4に示す。
図4には、
図3と同様に二回目の測定結果を示す。n
++-GaN層16Bの厚さが1.7nm(実施例8)と薄い場合であっても、15nm(実施例6)の場合と概ね同等の電流・電圧特性の結果が得られ、比較例1(710℃)のサンプルに比べ十分な特性の改善を得られることがわかった。また、実施例6から実施例8のうちn
++-GaN層16Bの厚さが3.5nm(実施例7)の場合、比較例1(710℃)のサンプルに比べ特性が最も改善していることがわかった。従って、n
++-GaN層16Bの厚みは、1.7nmから15nmの範囲においてp型半導体層14,15,16AへのHの侵入を良好に防ぎ得ることがわかった。
【0050】
次に、上記実施例における作用効果を説明する。
【0051】
この半導体素子構造の製造方法は、基板10を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、基板10の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、Mgが添加されたp型半導体層14,15,16Aを基板10の上に積層するp型半導体層形成工程と、p型半導体層形成工程を実行後、p型半導体層14,15,16Aに含まれる水素をp型半導体層14,15,16Aから脱離させる水素脱離工程と、水素脱離工程を実行後、p++-GaN層16Aの表面にMgが添加されないn++-GaN層16Bを積層する非p型半導体層形成工程と、を備え、非p型半導体層形成工程における基板10の温度は、500℃から650℃である。この構成によれば、p型半導体層形成工程を実行後、水素脱離工程を実行したp++-GaN層16Aの上に、Mgが添加されないn++-GaN層16Bを積層させる非p型半導体層形成工程における基板10の温度を500℃から650℃(結晶性が大きく劣化してしまう極めて低い温度)にすることによって、n++-GaN層16Bにおける結晶性は劣化するものの、p型半導体層14,15,16AへのHの侵入、すなわちp型半導体層14,15,16AにおけるMgの不活性化を抑制し、結果として、良好な電流・電圧特性を有する半導体素子構造を得ることができる。
【0052】
この半導体素子構造の製造方法は、基板10を収容した反応炉内に水素元素を含むガスを供給して、基板10の上に半導体層を積層して結晶成長させる結晶成長装置を用い、Mgが添加されたp型半導体層14,15,16Aを基板10の上に積層するp型半導体層形成工程と、p型半導体層形成工程を実行後、p型半導体層14,15,16Aに含まれる水素をp型半導体層14,15,16Aから脱離させる水素脱離工程と、水素脱離工程を実行後、p++-GaN層16Aの表面にMgが添加されないn++-GaN層16Bを積層する非p型半導体層形成工程と、を備え、非p型半導体層形成工程における基板10の温度は、450℃から550℃である。この構成によれば、非p型半導体層形成工程において、Hが有する運動エネルギーを低下させることができ、これによって、Hがp型半導体層14,15,16Aに対し、より侵入し難くすることができる。特に、この温度範囲を採用した半導体素子構造を有する半導体発光素子1を製造すると、良好な電流・光出力特性の半導体発光素子1を得ることができる。
【0053】
この半導体素子構造の製造方法において、非p型半導体層形成工程における基板10の温度は、500℃から550℃である。この構成によれば、非p型半導体層形成工程において、Hが有する運動エネルギーを低下させることができ、これによって、Hがp型半導体層14,15,16Aに対し、より侵入し難くすることができる。特に、この温度範囲を採用した半導体素子構造を有する半導体素子を製造すると、電流・電圧特性、及び電流・光出力特性が共に良好な半導体素子を得ることができるので、半導体発光素子1を含む半導体素の全般において、良好な性能のものとすることができる。
【0054】
この半導体素子構造の製造方法において、n++-GaN層16Bの厚みは、1.7nmから15nmである。この構成によれば、n++-GaN層16Bの表面平坦性を過度に悪化させることなくp型半導体層14,15,16AへのHの侵入を抑制して、性能が良好な半導体素子を得ることができる。
【0055】
この半導体素子構造の製造方法において、p型半導体層14,15,16A、及びn++-GaN層16Bは、窒化物半導体である。この構成によれば、p型半導体層14,15,16Aに良好なp型の特性を付与した状態を維持しつつp型半導体層14,15,16Aの上にn++-GaN層16Bを積層した構成を窒化物半導体を用いた場合にも実現することができる。
【0056】
この半導体素子構造の製造方法において、n++-GaN層16Bは、Siが添加されたn型半導体層である。この構成によれば、p++-GaN層16Aの上にHが通過し難いn++-GaN層16Bを配置することによって、p型半導体層14,15,16AへのHの侵入をより効果的に抑制することができる。
【0057】
この半導体素子構造の製造方法において、p++-GaN層16A、及びn++-GaN層16Bは、トンネル接合層16である。この構成によれば、p型半導体層14,15,16Aに良好なp型の特性を付与した状態を維持しつつp++-GaN層16Aの上にn++-GaN層16Bを積層することができるので、良好な特性を有するトンネル接合層16を形成することができる。
【0058】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1から実施例8に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、GaNを用いたトンネル接合層を例示しているが、GaInNやAlGaN、AlInN等の他の窒化物を用いたトンネル接合にも適用できる。
(2)上記実施例では、半導体発光素子としてLEDを例示しているが、レーザーダイオードなどの他の半導体発光素子や、整流素子としてのダイオードやトランジスタ等の半導体素子においても本発明は有効である。また、トンネル接合を有したダイオードやトランジスタ等の半導体素子にも本発明は適用できる。また、トンネル接合に限らず、p型不純物が添加されない半導体層によってp型半導体層が埋め込まれた構成を有する半導体発光素子や半導体素子に対しても本発明は有効である。
(3)上記実施例では、基板としてサファイア基板を用いているが、GaN基板やSiC基板等の他の基板であってもよい。
(4)上記実施例では、p型不純物としてMgを用いているが、p型不純物である、Zn,Be、Ca、Sr、及びBa等であってもよい。
(5)上記実施例では、n型不純物としてSiを用いているが、n型不純物である、Ge等であってもよい。
(6)上記実施例では、半導体発光素子として窒化物を用いているが、窒化物に代えて他の化合物を半導体発光素子や半導体素子に用いた構成であってもよい。
(7)上記実施例では、MOCVD装置を用いて積層して結晶成長させているが、これに限らず、HVPEやLPEE等の他の方法を実行し得る装置を用い積層して結晶成長させても良い。
(8)上記実施例では、非p型半導体層としてn型不純物を添加したn++-GaN層を例示しているが、p型不純物及びn型不純物を添加しない半導体層を非p型半導体層としてもよい。
(9)上記実施例では、発光素子などの半導体素子部(量子井戸活性層)が基板側であり、トンネル接合層が半導体素子部よりも表面側に存在するが、トンネル接合層が基板側であり、発光素子などの半導体素子部(量子井戸活性層)がトンネル接合層よりも表面側に存在する構造であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…サファイア基板(基板)
14…p-AlGaN層(p型半導体層)
15…p-GaN層(p型半導体層)
16…トンネル接合層
16A…p++-GaN層(p型半導体層)(トンネル接合層)
16B…n++-GaN層(非p型半導体層)(トンネル接合層)
Mg…p型不純物