(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】温度調整装置および温度調整システム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240820BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20240820BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
A41D13/005 103
A61F7/10 300H
(21)【出願番号】P 2021193833
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 琢眞
(72)【発明者】
【氏名】高牟禮 英治
(72)【発明者】
【氏名】竹前 昭宏
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0084125(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0108999(KR,A)
【文献】特開2016-204781(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025784(WO,A1)
【文献】実開平05-010410(JP,U)
【文献】特開2018-013261(JP,A)
【文献】特開2019-039120(JP,A)
【文献】特開2019-203770(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F25D 1/00-31/00
F24F 1/00-13/32
A41D 13/005
A61F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒液の温度を調整する冷凍サイクルと、温度調整対象に装着された熱交換器に対して少なくとも一部が可撓性を有する供給用配管を介して前記熱媒液を供給するポンプと、前記冷凍サイクルおよび前記ポンプの動作を制御する本体部側処理部とを有する本体部を備え、
前記本体部に対する相対的な位置が変化する前記温度調整対象に装着された前記熱交換器に対して前記熱媒液を供給することによって当該温度調整対象の温度を調整可能に構成された温度調整装置であって、
制御信号を送信可能な端末側無線通信部と、当該端末側無線通信部から前記制御信号を送信させる端末側処理部とを有する携帯端末を備え、
前記本体部は、前記端末側無線通信部から送信された前記制御信号を受信可能な本体部側無線通信部
と、当該本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる移動機構とを備え、
前記端末側処理部は、前記本体部に対する前記携帯端末の相対的な位置を検出可能な位置検出信号を前記端末側無線通信部から送信させ、
前記本体部側処理部は、前記本体部側無線通信部によって受信された前記制御信号に応じて、前記冷凍サイクルによる前記熱媒液の温度調整状態、および前記ポンプによる当該熱媒液の供給状態の少なくとも一方の状態を変更可能に構成され
ると共に、前記本体部側無線通信部によって受信された前記位置検出信号に基づいて前記本体部に対する前記携帯端末の相対的な位置を検出すると共に、検出した位置に応じて前記移動機構を制御して当該本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる温度調整装置。
【請求項2】
前記携帯端末は、前記温度調整対象の温度を検出可能な温度センサを備え、
前記端末側処理部は、前記温度センサによって検出された温度を特定可能な前記制御信号を前記端末側無線通信部から送信させ、
前記本体部側処理部は、前記本体部側無線通信部によって受信された前記制御信号に基づいて前記温度調整対象の温度を特定すると共に、特定した温度に応じて前記少なくとも一方の状態を変更する請求項1記載の温度調整装置。
【請求項3】
前記携帯端末は、前記少なくとも一方の状態を指定する指定操作が可能な操作部を備え、
前記端末側処理部は、前記指定操作によって指定された前記少なくとも一方の状態を特定可能な前記制御信号を前記端末側無線通信部から送信させる請求項1または2記載の温度調整装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の温度調整装置、前記供給用配管、および前記熱交換器を備え、前記温度調整装置の前記本体部から前記供給用配管を介して前記熱交換器に供給される前記熱媒液との熱交換によって当該熱交換器が装着されている前記温度調整対象の温度を調整可能に構成されている温度調整システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、装着する前記温度調整対象の外形に応じて変形可能に構成されている請求項
4記載の温度調整システム。
【請求項6】
前記熱交換器としての温度調整用ジャケットを備え、当該温度調整用ジャケットの装着者の身体を前記温度調整対象として当該装着者の身体の温度を調整可能に構成されている請求項
4または
5記載の温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部に対する相対的な位置が変化する温度調整対象に装着された熱交換器に対して本体部内の冷凍サイクルによって温度を調整した熱媒液を供給して温度調整対象の温度を調整可能に構成された温度調整装置、およびそのような温度調整装置を備えて構成された温度調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の温度調整装置および温度調整システムとして、冷却衣に冷却水を供給して冷却衣の装着者(装着者の身体)を冷却可能に構成された可搬型冷却装置(以下、単に「冷却装置」ともいう)が下記の特許文献に開示されている。この冷却装置は、本体部から一対のホースのうちの一方を介して冷却衣に冷却水を供給すると共に、冷却衣から一対のホースのうちの他方を介して本体部に冷却水を回収することができるように構成されている。また、本体部には、水を冷却するための冷凍サイクル(圧縮機、凝縮器、毛細管(膨張弁)、蒸発器およびファン)、水(氷)を貯蔵可能に構成された蓄氷タンク、冷却衣に水を圧送して回収する循環ポンプ、および冷却装置の各部を制御する制御部などが収容されている。さらに、本体部には、電源スイッチや、各種の情報(冷却装置の動作状態等)を表示するディスプレイなどが配設されている。
【0003】
この冷却装置の使用に際しては、本体部、冷却衣および接続用のホースを使用場所まで搬送する。次いで、冷却衣を装着すると共に、本体部と冷却衣とをホースによって接続した後に、本体部の電源スイッチを操作して冷却処理を開始させる。この場合、この冷却装置では、冷凍サイクルの蒸発器が蓄氷タンク内に収容されており、蓄氷タンク内の水が冷凍サイクル(蒸発器)によって冷却されて蓄氷タンク内に氷が生成される構成が採用されている。また、この冷却装置では、蓄氷タンク内において氷結しなかった水や、蓄氷タンク内において氷が融解して生じた水が循環ポンプによってホースを介して冷却衣に供給され、冷却衣において装着者の身体との熱交換によって温度上昇させられた水がホースを介して蓄氷タンク内に回収される構成が採用されている。
【0004】
これにより、この冷却装置では、蓄氷タンク内における水の冷却(氷の生成)および循環ポンプによる水の圧送(本体部と冷却衣との間での循環)を継続させることで、冷却衣の装着者(身体)を継続的に冷却することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-013261号公報(第3-6頁、第1-3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献に開示の冷却装置には、以下のような解決すべき課題が存在する。具体的には、上記特許文献に開示の冷却装置では、本体部の設置場所を中心とするホース長の範囲内において冷却衣(熱交換器)の装着者(温度調整対象)が任意に移動することが可能となっている。
【0007】
この場合、この種の温度調整装置の使用時には、温度調整対象において必要とされる温度調整量(冷却量)が逐次変化することがある。一例として、上記の冷却装置の例においては、温度調整対象(冷却対象)である「冷却衣の装着者」の運動量(運動に伴う発熱量)や、環境温度(日向/日陰のいずれに位置しているかや、発熱体の近くの位置/発熱体から離れた位置のいずれに位置しているかなど)に応じて、装着者の身体を快適な温度まで冷却するのに必要な冷熱量が変化する。
【0008】
一方、上記特許文献に開示の冷却装置では、本体部に配設されている電源スイッチを操作し、冷凍サイクルや循環ポンプを停止させることで本体部から冷却衣への冷却水の供給を停止させ、冷凍サイクルや循環ポンプを動作させることで本体部から冷却衣への冷却水の供給を開始(再開)させることができる。したがって、例えば、運動量が少ないとき(装着者の発熱量が少ないとき:必要とされている冷熱量が少ないとき)には、電源スイッチをオフ状態に操作して冷却衣への冷却水の供給を停止させ、運動量が多いとき(装着者の発熱量が多いとき:必要とされている冷熱量が多いとき)には、電源スイッチをオン状態に操作して冷却衣への冷却水の供給を再開させることができる。
【0009】
しかしながら、例えば、本体部を床面上に設置した状態で装着者が脚立や梯子に登って作業をしている最中に必要な冷熱量が変化したときには、作業を中断して脚立や梯子を降りて、本体部の電源スイッチを操作して冷凍サイクルや循環ポンプを停止/動作させた後に、脚立や梯子を登って作業を再開する必要がある。このため、この例では、快適な温度下で作業を継続するために脚立や梯子を登り降りするのが非常に煩雑となっている。
【0010】
また、この種の温度調整装置(冷却装置)の用途として、冷却衣に代えて敷布状の冷却マット(ウォーターマット:熱交換器)に冷却水を供給することで冷却マット上に寝ている者(身体)を冷却するといった用途が存在する。このような用途においても前述の例と同様にして必要とされる冷熱量が変化することがある。この場合、冷却マットの近くに本体部を設置することが可能な使用環境下では、冷却マット上に寝た状態で本体部の電源スイッチを操作することができるが、冷却マットの近くに本体部を設置することができない使用環境下では、冷却マット上に寝た状態で本体部の電源スイッチを操作するのが困難となる。このため、電源スイッチを操作するために起き上がって本体部の設置場所まで移動するのが非常に煩雑となっている。
【0011】
なお、冷凍サイクルや循環ポンプの処理能力を変化させることが可能な能力可変型の温度調整装置(冷却装置)では、停止/動作の切替えしかできない上記特許文献に開示の冷却装置とは異なり、必要とされる冷熱量に応じた適温適量の冷却水を冷却衣や冷却マット等の熱交換器に供給することができる。しかしながら、能力可変型の温度調整装置であっても、冷却水の温度や供給量を変更するには、本体部に設けられている操作スイッチを操作して動作条件を変更する必要がある。このため、上記特許文献に開示の冷却装置と同様の課題が生じる。
【0012】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、好適な温度に調整可能な動作状態に確実かつ容易に変更し得る温度調整装置および温度調整システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の温度調整装置は、熱媒液の温度を調整する冷凍サイクルと、温度調整対象に装着された熱交換器に対して少なくとも一部が可撓性を有する供給用配管を介して前記熱媒液を供給するポンプと、前記冷凍サイクルおよび前記ポンプの動作を制御する本体部側処理部とを有する本体部を備え、前記本体部に対する相対的な位置が変化する前記温度調整対象に装着された前記熱交換器に対して前記熱媒液を供給することによって当該温度調整対象の温度を調整可能に構成された温度調整装置であって、制御信号を送信可能な端末側無線通信部と、当該端末側無線通信部から前記制御信号を送信させる端末側処理部とを有する携帯端末を備え、前記本体部は、前記端末側無線通信部から送信された前記制御信号を受信可能な本体部側無線通信部と、当該本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる移動機構とを備え、前記端末側処理部は、前記本体部に対する前記携帯端末の相対的な位置を検出可能な位置検出信号を前記端末側無線通信部から送信させ、前記本体部側処理部は、前記本体部側無線通信部によって受信された前記制御信号に応じて、前記冷凍サイクルによる前記熱媒液の温度調整状態、および前記ポンプによる当該熱媒液の供給状態の少なくとも一方の状態を変更可能に構成されると共に、前記本体部側無線通信部によって受信された前記位置検出信号に基づいて前記本体部に対する前記携帯端末の相対的な位置を検出すると共に、検出した位置に応じて前記移動機構を制御して当該本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる。
【0014】
また、請求項2記載の温度調整装置は、請求項1記載の温度調整装置において、前記携帯端末は、前記温度調整対象の温度を検出可能な温度センサを備え、前記端末側処理部は、前記温度センサによって検出された温度を特定可能な前記制御信号を前記端末側無線通信部から送信させ、前記本体部側処理部は、前記本体部側無線通信部によって受信された前記制御信号に基づいて前記温度調整対象の温度を特定すると共に、特定した温度に応じて前記少なくとも一方の状態を変更する。
【0015】
また、請求項3記載の温度調整装置は、請求項1または2記載の温度調整装置において、前記携帯端末は、前記少なくとも一方の状態を指定する指定操作が可能な操作部を備え、前記端末側処理部は、前記指定操作によって指定された前記少なくとも一方の状態を特定可能な前記制御信号を前記端末側無線通信部から送信させる。
【0017】
請求項4記載の温度調整システムは、請求項1から3のいずれかに記載の温度調整装置、前記供給用配管、および前記熱交換器を備え、前記温度調整装置の前記本体部から前記供給用配管を介して前記熱交換器に供給される前記熱媒液との熱交換によって当該熱交換器が装着されている前記温度調整対象の温度を調整可能に構成されている。
【0018】
請求項5記載の温度調整システムは、請求項4記載の温度調整システムにおいて、前記熱交換器は、装着する前記温度調整対象の外形に応じて変形可能に構成されている。
【0019】
請求項6記載の温度調整システムは、請求項4または5記載の温度調整システムにおいて、前記熱交換器としての温度調整用ジャケットを備え、当該温度調整用ジャケットの装着者の身体を前記温度調整対象として当該装着者の身体の温度を調整可能に構成されている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の温度調整装置では、冷凍サイクル、ポンプおよび本体部側処理部を有する本体部を備え、本体部に対する相対的な位置が変化する温度調整対象に装着された熱交換器に対して熱媒液を供給することによって温度調整対象の温度を調整可能に構成されると共に、制御信号を送信可能な端末側無線通信部と、端末側無線通信部から制御信号を送信させる端末側処理部とを有する携帯端末を備え、本体部が、端末側無線通信部から送信された制御信号を受信可能な本体部側無線通信部を備え、本体部側処理部が、本体部側無線通信部によって受信された制御信号に応じて、冷凍サイクルによる熱媒液の温度調整状態、およびポンプによる熱媒液の供給状態の少なくとも一方の状態を変更可能に構成されている。また、請求項1記載の温度調整装置では、本体部が、本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる移動機構を備え、端末側処理部が、本体部に対する携帯端末の相対的な位置を検出可能な位置検出信号を端末側無線通信部から送信させ、本体部側処理部が、本体部側無線通信部によって受信された位置検出信号に基づいて本体部に対する携帯端末の相対的な位置を検出すると共に、検出した位置に応じて移動機構を制御して本体部の位置および向きの少なくとも一方を変化させる。また、請求項4記載の温度調整システムでは、上記の温度調整装置、供給用配管および熱交換器を備えている。
【0021】
したがって、請求項1記載の温度調整装置および請求項4記載の温度調整システムによれば、熱交換器が装着された温度調整対象が本体部から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末を温度調整対象の近くに配置しておくことで、携帯端末から本体部に制御信号を送信させて熱媒液の温度調整状態や供給状態を確実かつ容易に変更することができる。これにより、温度調整対象を好適な温度に調整可能な動作状態に確実かつ容易に変更することができる。この場合、本体部および携帯端末間で有線通信によって制御信号を送受信する構成では、信号線の断線によって通信不能な状態となるおそれがあるが、本体部側無線通信部および端末側無線通信部間で無線通信によって制御信号を送受信する構成を採用したことで、通信不能な状態となる可能性を十分に低減することができる。また、有線通信によって制御信号を送受信する構成では、信号線の断線や導線の露出が生じたときに、可燃性物質に引火する事故や感電事故を招くおそれがあるが、無線通信によって制御信号を送受信する構成を採用したことで、そのような事故が生じるのを好適に回避することができる。また、携帯端末を温度調整対象の近傍に配置しておくことで、本体部に対する携帯端末の相対的な位置が検出され、検出された位置に応じて携帯端末に対する本体部の相対的な位置や携帯端末に対する本体部の向きが移動機構によって変更されるため、本体部と携帯端末との離間距離(すなわち、本体部と温度調整対象との離間距離)が過剰に大きくなったり、本体部における供給用配管の接続部が携帯端末の方向とは異なる方向を向いた状態となったりするのを回避することができる。これにより、本体部や、温度調整対象に装着された熱交換器からの供給用配管の外れや、供給用配管の破断を好適に回避することができる。
【0022】
請求項2記載の温度調整装置では、携帯端末が、温度調整対象の温度を検出可能な温度センサを備え、端末側処理部が、温度センサによって検出された温度を特定可能な制御信号を端末側無線通信部から送信させ、本体部側処理部が、本体部側無線通信部によって受信された制御信号に基づいて温度調整対象の温度を特定すると共に、特定した温度に応じて上記の少なくとも一方の状態を変更する。したがって、請求項2記載の温度調整装置、およびそのような温度調整装置を備えた温度調整システムによれば、熱交換器が装着された温度調整対象が本体部から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末を携行していれば、温度センサによって検出される温度に応じて、適当な温度調整能力が発揮されるように温度調整状態や供給状態が自動調整される。また、温度調整能力を指定する操作も不要となる。このため、温度調整対象を好適な温度に調整可能な動作状態に一層容易に変更することができる。
【0023】
請求項3記載の温度調整装置では、携帯端末が、上記の少なくとも一方の状態を指定する指定操作が可能な操作部を備え、端末側処理部が、指定操作によって指定された少なくとも一方の状態を特定可能な制御信号を端末側無線通信部から送信させる。したがって、請求項3記載の温度調整装置、およびそのような温度調整装置を備えた温度調整システムによれば、熱交換器が装着された温度調整対象が本体部から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末を携行していれば、本体部の近くに移動することなく、所望の温度調整能力が発揮されるように温度調整状態や供給状態を任意に指定することができる。このため、温度調整対象を好適な温度に調整可能な動作状態に一層確実に変更することができる。
【0026】
請求項5記載の温度調整システムによれば、装着する温度調整対象の外形に応じて変形可能に熱交換器を構成したことにより、特に、人体や動物の体のように様々な外形の温度調整対象に対して熱交換器を好適に接触させた状態とすることができるため、温度調整対象の温度を確実に調整することができる。
【0027】
請求項6記載の温度調整システムによれば、熱交換器としての温度調整用ジャケットの装着者の身体を温度調整対象として装着者の身体の温度を調整可能に構成したことにより、装着者の身体に熱交換器を容易に装着することができ、かつ、装着者の動作を妨げることなく、その身体の温度を好適に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】ウォータージャケット4の装着者における手首(身体)に携帯端末3を装着した状態について説明するための説明図である。
【
図3】チラー2における処理装置14の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、温度調整装置および温度調整システムの実施の形態について説明する。
【0030】
最初に、冷却システム1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1,2に示す冷却システム1は、「温度調整システム」の一例である可搬型の冷却システムであって、チラー2、携帯端末3、ウォータージャケット4および連結ホース5を備えている。
【0032】
この冷却システム1は、後述するように、チラー2において冷却した水(一例として、飲料用保存水のように不純物の含有量が十分に少ない真水:冷却水:「熱媒液」の一例)をウォータージャケット4(「熱交換器」の一例)に対して連結ホース5を介して供給することにより、ウォータージャケット4を装着している装着者(冷却システム1の使用者)の身体(上半身)を冷却する(温度調整する)ことができるように構成されている。したがって、例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の治療に携わる医療従事者や、ウイルスの除染作業を行う作業者など、外気によって身体を直接的に冷却するのが困難な者(防護服の着用者)がこの冷却システム1を使用することで、体温を好適な温度に調整することが可能となっている。なお、本明細書では、ウォータージャケット4の装着者(装着者の身体)を「温度調整対象」とする例(「本体部に対する相対的な位置が変化する温度調整対象」の一例)について説明する。
【0033】
チラー2は、「本体部」の一例であって、携帯端末3と相俟って「温度調整装置」を構成する。このチラー2は、
図1に示すように、冷凍サイクル11、タンク12、ポンプ13および処理装置14を備え、これらが筐体内に収容されて一体化されている。この場合、
図2に示すように、筐体の底部には、複数の自在キャスター15が取り付けられており、チラー2を押したり引いたりして設置面上を任意に移動させることができるように構成されている。
【0034】
冷凍サイクル11は、「冷凍サイクル」の一例であって、
図1に示すように、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23、蒸発器24およびファン25を備えている。この場合、本例のチラー2では、ファン25が凝縮器22の近傍に配設されており、ファン25によって送風した空気(筐体内の空気)が凝縮器22を通過させられる際に冷凍サイクル11の冷媒を冷却(凝縮)させる構成が採用されている。また、本例のチラー2では、一例として、コイル状に形成された蒸発器24がタンク12内に収容されて、冷媒との熱交換によってタンク12内の水が冷却される構成が採用されている。
【0035】
タンク12は、「貯液槽」の一例であって、上記のように冷凍サイクル11の蒸発器24(冷却コイル)を収容可能に構成されると共に、「熱媒液」としての水を貯水(貯液)可能に構成されている。ポンプ13は、「ポンプ」の一例であって、処理装置14における後述の処理部35の制御に従い、連結ホース5を介してタンク12内の水を圧送してウォータージャケット4に供給する。この場合、本例の冷却システム1では、一例として、ポンプ13が圧送量可変型のポンプで構成されている。
【0036】
また、本例の冷却システム1では、チラー2とウォータージャケット4とを一対の連結ホース5によって連結することにより、タンク12内の水が、ポンプ13、一方の連結ホース5(供給用のホース)、ウォータージャケット4、他方の連結ホース5(回収用のホース)を経てタンク12に戻る循環路が形成される構成が採用されている。したがって、本例の冷却システム1では、ポンプ13によってウォータージャケット4に水を圧送することで、ウォータージャケット4からチラー2(タンク12)に水が回収される。なお、以下の説明においては、供給用のホースおよび回収用のホースを併せて連結ホース5ともいう。
【0037】
処理装置14は、
図3に示すように、通信部31、操作部32、表示部33、水量センサ34、処理部35および記憶部36を備えている。通信部31は、「本体部側無線通信部」の一例であって、後述するように、処理部35の制御に従い、携帯端末3から送信される各種制御信号の受信、および携帯端末3に対する各種制御信号の送信を実行する。この場合、本例の冷却システム1(チラー2)では、一例として、ブルートゥース(登録商標)規格に準ずる近距離無線通信が可能な無線通信モジュールで通信部31が構成されており、携帯端末3、および専用のアプリケーションソフトをインストールしたスマートフォンやタブレット端末などのブルートゥース対応機器との間で無線通信よる各種データの送受信を行うことができるように構成されている。
【0038】
操作部32は、チラー2(冷却システム1)の動作を開始/停止させる操作や、チラー2(冷却システム1)の動作条件(ウォータージャケット4に供給する水の温度や単位時間当りの供給量など)を指定する操作が可能な操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部35に出力する。表示部33は、処理部35の制御に従い、チラー2の動作条件を設定する画面や、チラー2の動作状態を示す画面(いずれも図示せず)を表示する。水量センサ34は、「液量検出部」の一例であって、前述のタンク12に配設されている。この水量センサ34は、タンク12内の水の貯水量を検出して検出信号を処理部35に出力する。
【0039】
処理部35は、「本体部側処理部」の一例であって、チラー2を総括的に制御する。具体的には、処理部35は、冷凍サイクル11(圧縮機21、膨張弁23およびファン25)を制御することによってタンク12内の水を冷却させる。また、処理部35は、ポンプ13を制御してタンク12内の水をウォータージャケット4に圧送(供給)させる。この場合、本例のチラー2(冷却システム1)では、後述するように携帯端末3から送信される制御信号に基づいて携帯端末3の装着者(ウォータージャケット4の装着者)の体温を特定し、特定した温度に応じて冷凍サイクル11やポンプ13の動作状態を調整する自動調整処理60(「温度調整状態」や「熱媒液の供給状態」を変更する処理の一例:
図6参照)、および後述するように携帯端末3から送信される制御信号や操作部32の操作によって指定された温度および供給量となるように冷凍サイクル11やポンプ13の動作状態を調整する手動調整処理70(「温度調整状態」や「熱媒液の供給状態」を変更する処理の他の一例:
図7参照)を実行することができるように構成されている。
【0040】
また、処理部35は、ウォータージャケット4に供給する水の温度として指定された温度や、単位時間当りの供給量として指定された供給量を特定可能な制御信号、すなわち、冷凍サイクル11がタンク12内の水をどのような温度に冷却し、ポンプ13がどのような供給量で水を圧送しているかを特定可能な制御信号(「本体部の動作状態を特定可能な制御信号」としての「温度調整状態および供給状態の少なくとも一方の状態を特定可能な制御信号」の一例)を通信部31から携帯端末3に送信させる。さらに、処理部35は、水量センサ34から出力される検出信号に基づいてタンク12内の水の貯水量を特定し、特定した貯水量が予め設定された量を下回ったときに、貯水量が不足していることを報知すると共に、貯水量が不足していることを特定可能な制御信号(「本体部の動作状態を特定可能な制御信号」としての「液量が警告量を下回ったことを特定可能な制御信号」の一例)を通信部31から携帯端末3に送信させる。なお、処理部35による上記の各処理等については、後に詳細に説明する。記憶部36は、処理部35の動作プログラムや処理部35の演算結果を記憶する。
【0041】
携帯端末3は、「携帯端末」の一例であって、
図2に示すように、本例では、ウォータージャケット4の装着者における手首(「装着者の身体」の一例)などに装着可能な腕時計型(リストバンド型)の端末で構成されている。この携帯端末3は、
図4に示すように、通信部41、操作部42、表示部43、温度センサ44、処理部45および記憶部46を備えている。通信部41は、「端末側無線通信部」の一例であって、後述するように、処理部45の制御に従い、チラー2に対する各種制御信号の送信、およびチラー2から送信される各種制御信号の受信を実行する。この場合、本例の冷却システム1(携帯端末3)では、一例として、チラー2の通信部31と同様にして、ブルートゥース(登録商標)規格に準ずる近距離無線通信が可能な無線通信モジュールで通信部41が構成されている。
【0042】
操作部42は、「温度調整状態および供給状態の少なくとも一方の状態を指定する指定操作が可能な操作部」の一例であって、後述するようにチラー2(冷却システム1)の動作を開始/停止させる操作や、チラー2(冷却システム1)の動作条件(ウォータージャケット4に供給する水の温度や単位時間当りの供給量など)を指定する操作が可能な操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部45に出力する。表示部43は、処理部45の制御に従い、チラー2の動作条件を設定する画面や、チラー2の動作状態を示す画面(いずれも図示せず)を表示する。
【0043】
温度センサ44は、「温度センサ」の一例であって、検出した温度を特定可能な検出信号を処理部45に出力する。この場合、本例の冷却システム1(携帯端末3)では、一例として、装着者の手首に装着された状態において手首(身体)に触れる部位に温度センサ44が配設されており、この温度センサ44を介して装着者の体温(「温度調整対象の温度」の一例)を検出することができるように構成されている。
【0044】
処理部45は、「端末側処理部」の一例であって、携帯端末3を総括的に制御する。具体的には、処理部45は、温度センサ44から出力される検出信号に基づき、温度センサ44によって検出された温度(装着者の体温)を特定可能な制御信号(「温度センサによって検出された温度を特定可能な制御信号」の一例)を通信部41からチラー2に送信させる。また、処理部45は、後述するように操作部42のスイッチ操作によってチラー2の動作の停止/開始(再開)を指示されたときに、指示された内容を特定可能な制御信号(「指定操作によって指定された温度調整状態および供給状態の少なくとも一方の状態を特定可能な制御信号」の一例)を通信部41からチラー2に送信させる。さらに、処理部45は、後述するように操作部42のスイッチ操作によってウォータージャケット4に供給する水の温度や単位時間当りの供給量が指定されたときに、指定された温度や供給量を特定可能な制御信号を通信部41からチラー2に送信させる。
【0045】
また、処理部45は、チラー2から送信される制御信号に基づき、チラー2の動作状態(指定されている温度や供給量)を表示部43に表示させる。さらに、処理部45は、貯水量が不足していることを示す制御信号がチラー2から送信されたときに、タンク12内の貯水量が不足していることを示すメッセージを表示部43に表示させると共に、図示しないスピーカから警告音を出力する。なお、処理部45による上記の各処理等については、後に詳細に説明する。記憶部46は、処理部45の動作プログラムや処理部45の演算結果を記憶する。
【0046】
ウォータージャケット4は、「装着する温度調整対象の外形に応じて変形可能に構成された熱交換器」、および「装着者の身体の温度を調整可能に構成された温度調整用ジャケット」の一例であって、チラー2に接続された一対の連結ホース5を接続可能に構成されると共に、供給用の連結ホース5が接続される接続口と回収用の連結ホース5が接続される接続口とが、可撓性を有する複数の細管で連結されている(図示せず)。これにより、このウォータージャケット4では、供給用の連結ホース5からウォータージャケット4内(各細管内)に供給される水との熱交換によって装着者(身体)を冷却することが可能となっている。この場合、このウォータージャケット4は、織物やシートで形成されたジャケット本体内に上記の可撓性を有する複数の細管が配設されている。したがって、このウォータージャケット4は、装着者の身体(上半身)の外形に合わせて自由に変形させることが可能となっている。
【0047】
連結ホース5は、「少なくとも一部が可撓性を有する供給用配管」の一例であって、チラー2およびウォータージャケット4を相互に接続可能に構成されている。この場合、本例の冷却システム1では、管端に配設された接続具を除き、連結ホース5の管長方向(長手方向)の全体が可撓性を有する耐圧ホースで構成されている。なお、本例の冷却システム1では、連結ホース5(供給用のホースおよび回収用のホース)の全長が2m~10m程度(一例として5m程度)となっている。なお、チラー2およびウォータージャケット4(「温度調整装置の本体部」および「熱交換器」)を1組の連結ホース5(1本の供給用のホース、および1本の回収用のホース)によって接続する本例の使用形態に限定されず、圧損に起因する水(熱媒液)の圧送不良が生じない範囲内の管長となるように、供給用のホースおよび回収用のホースとして、それぞれ複数本の連結ホース5を連結してチラー2およびウォータージャケット4を相互に接続することもできる。
【0048】
次に、冷却システム1の使用方法について、添付図面を参照して説明する。
【0049】
冷却システム1の使用に際しては、チラー2、携帯端末3、ウォータージャケット4および連結ホース5を使用場所まで搬送する。なお、チラー2と携帯端末3との間で無線通信を行うには、通信部31,41のペアリングを実施する必要があるが、このペアリングの手順については公知のため、詳細な説明を省略する。この場合、例えば、1台のチラー2を複数人で共用する(交代して使用する)ときに、各使用者に対して携帯端末3を個々に所有させ、冷却システム1の使用時には、使用者が所有する携帯端末3をチラー2に無線通信によって接続して後述のような各処理を実行させることができる。この際に、各使用者の好みに応じた動作モードを特定可能な情報を携帯端末3における通信部41の識別情報(MACアドレス等)に関連付けてチラー2(処理装置14)の記憶部36に記憶させておくことで、使用者が所有する携帯端末3がチラー2に接続されたとき(無線通信可能な状態となったとき)に、好みに応じた動作モード(接続された形態端末3に応じた動作モード)でチラー2を動作させることができる。
【0050】
次いで、チラー2およびウォータージャケット4を連結ホース5によって連結すると共に、図示しない給水口からタンク12に水を給水し、かつチラー2の電源ケーブルを商用交流に接続した状態において、予め規定された手順に従って水の循環路内の空気を脱気する。なお、上記の連結、給水および脱気については、冷却システム1の保管場所において実施した状態で使用場所に搬送することもできる。続いて、
図2に示すように、ウォータージャケット4および携帯端末3を装着する。この際に、ウォータージャケット4が装着者の身体の外形に応じて変形可能に構成されているため、「温度調整対象」である装着者(身体:本例では上半身)に「熱交換器」であるウォータージャケット4を容易に装着して身体にウォータージャケット4を好適に密着させることができる。次いで、携帯端末3操作部32を操作してチラー2に電源を投入する。この際には、両通信部31,41が互いに接続されてチラー2および携帯端末3の間で各種の信号が送受信される状態となる。以上により、冷却システム1の使用準備が整う。
【0051】
次いで、操作部32,42のいずれかを操作することによって冷却処理を開始させる。この際に、処理部35は、冷凍サイクル11を制御してタンク12内の水の冷却を開始させると共に、ポンプ13を制御してタンク12内の水の圧送を開始させる。これにより、タンク12内において蒸発器24内の冷媒との熱交換によって冷却された水が、ポンプ13によって連結ホース5を介してウォータージャケット4に供給され、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者(身体)が冷却される。また、ウォータージャケット4における熱交換によって温度上昇させられた水は、連結ホース5を介してタンク12に回収され、タンク12内において再び冷却された後に連結ホース5を介してウォータージャケット4に供給される。したがって、冷凍サイクル11による水の冷却、およびポンプ13による水の圧送を継続して実行させることで、ウォータージャケット4の装着者(身体)が継続的に冷却(温度調整)される。
【0052】
また、本例の冷却システム1では、携帯端末3において、処理部45が、温度センサ44から出力される検出信号に基づいて温度センサ44の配設位置の温度(本例では、ウォータージャケット4の装着者の体温:携帯端末3を装着した手首の温度)を特定すると共に、その温度を特定可能な制御信号を通信部41からチラー2に送信させる処理を一定時間間隔(一例として、10秒間隔)で繰り返し実行する。これにより、後述するように、チラー2において装着者の体温が逐次特定される。
【0053】
また、チラー2では、処理部35が、上記の冷凍サイクル11やポンプ13の制御と並行して、
図5に示す報知処理50を実行する。この場合、本例の冷却システム1(チラー2)では、チラー2の電源が投入されたときに処理部35が報知処理50を自動的に開始する構成が採用されている。この報知処理50では、処理部35は、設定温度(ウォータージャケット4に供給する水を冷却する温度)を特定すると共に(ステップ51)、設定供給量(ウォータージャケット4に供給する水の単位時間当りの供給量)を特定する(ステップ52)。次いで、処理部35は、設定温度および設定供給量を表示部33に表示させると共に、それらを特定可能な制御信号を通信部31から携帯端末3に送信させる(ステップ53)。
【0054】
これに応じて、携帯端末3では、チラー2(通信部31)から送信された上記の制御信号が通信部41によって受信されたときに、処理部45が、受信された制御信号に基づき、設定温度および設定供給量(チラー2の動作状態)を特定すると共に、特定した設定温度および設定供給量を表示部43に表示させる(「予め規定された処理」としての「動作状態を報知する報知処理」の一例)。これにより、装着者がチラー2から離れていたとしても、携帯端末3の表示部43に表示される情報に基づき、チラー2の冷凍サイクル11がどのような設定温度(目標温度)で動作し、チラー2のポンプ13がどのような設定供給量(目標供給量)で動作しているかを確実かつ容易に認識することができる。
【0055】
一方、冷却システム1の使用時には、チラー2やウォータージャケット4に対する連結ホース5の接続不良に起因して連結ホース5の接続部から水が漏出したり、連結ホース5やウォータージャケット4の破れに起因して破損箇所から水が漏出したりすることがある。かかる場合には、タンク12内の貯水量が減少して、前述の循環路内に空気(大気)が混入してポンプ13による水の圧送が困難となったり、冷凍サイクル11(蒸発器24)による水の冷却が困難となったりするおそれがある。したがって、処理部35は、上記のステップ53の処理の後に、水量センサ34から出力される検出信号に基づき、タンク12の貯水量を特定する(ステップ54)。
【0056】
また、処理部35は、特定した貯水量が、予め規定された警告量を下回っているか否かを判別し(ステップ55)、十分な貯水量であったとき(警告量を下回っていないとき)には、設定温度を特定する前述のステップ51に戻る。また、タンク12の貯水量が警告量を下回っているときには、タンク12内の貯水量が不足していることを特定可能なメッセージを表示部33に表示させると共に、図示しないスピーカから警告音を出力する(ステップ56)。さらに、処理部35は、タンク12内の貯水量が警告量を下回ったことを報知させる制御信号を通信部31から携帯端末3に送信させた後に(ステップ57)、設定温度を特定する前述のステップ51に戻る。
【0057】
この際に、携帯端末3では、処理部45が、チラー2(通信部31)から送信された上記の制御信号が通信部41によって受信されたときに、チラー2におけるタンク12内の貯水量が警告量を下回ったと特定し、貯水量が不足していることを特定可能なメッセージを表示部43に表示させると共に、図示しないスピーカから警告音を出力する(「予め規定された処理」としての「動作状態を報知する報知処理」の他の一例)。これにより、装着者がチラー2から離れていたとしても、携帯端末3の表示部43に表示される情報や警告音に基づき、タンク12内の貯水量が警告量を下回ったことを確実かつ容易に認識することができる。
【0058】
したがって、貯水量が不足していることを認識した装着者が、チラー2の図示しない給水口からタンク12内に水を給水することで、タンク12内に十分な量の水が貯水された状態となり、冷凍サイクル11(蒸発器24)による好適な冷却、およびポンプ13による好適な圧送が継続される。この後、処理部35は、操作部32,42の操作によって報知処理50を停止するように指示されない限り、この報知処理50を継続的に実行する。
【0059】
なお、タンク12の貯水量の特定(ステップ54)から、メッセージの表示および警告音の出力(ステップ56)、および制御信号の送信(ステップ57)までの一連の処理に代えて(または、それらの処理に加えて)、ウォータージャケット4に対して必要十分な量の水を供給できているか否かや、ウォータージャケット4から必要十分な量の水を回収できているか否かなどを特定して、メッセージの表示および警告音の出力や制御信号の送信などの処理を実行する構成を採用することもできる。
【0060】
この場合、連結ホース5が押し潰された状態となったり、チラーの設置場所と装着者(ウォータージャケット4)の位置との高低差が過剰に大きい状態となったりしたときには、ウォータージャケット4に対して必要十分な量の水を供給したり、ウォータージャケット4から必要十分な量の水を回収したりするのが困難となることがある。かかる状態においては、ポンプ13の負荷が大きくなるため、このポンプ13に対する電力の供給状態に基づき、好適な供給および回収ができているか否かを特定し、特定した結果を報知することができる。
【0061】
また、処理部35は、上記の報知処理50と並行して、
図6に示す自動調整処理60、および
図7に示す手動調整処理70のいずれかを実行する。この場合、本例の冷却システム1では、初期設定状態として、電源投入時に自動調整処理60を開始するように設定されており、電源投入時に処理部35がこの自動調整処理60を自動的に開始する構成が採用されている。また、本例の冷却システム1では、後述するように、自動調整処理60の実行中に手動調整処理70を実行するように指示されて手動調整処理70を実行している状態において電源が遮断されたときに、次の電源投入時に手動調整処理70を自動的に開始する構成(電源遮断時の動作状態が保持される構成)が採用されている。
【0062】
例えば、冷却システム1(チラー2)を初めて使用するときや、直前の電源遮断時に自動調整処理60を実行していたときに、処理部35は、自動調整処理60を実行する。この自動調整処理60では、処理部35は、携帯端末3(通信部41)から温度データ(温度センサ44の配設位置の温度(本例では、装着者の体温)を特定可能な制御信号)が送信されたか否かを監視する(ステップ61)。この場合、前述したように、本例の冷却システム1では、携帯端末3の処理部45が温度センサ44の配設位置の温度を特定可能な制御信号を一定時間間隔で通信部41から繰り返し送信させる。したがって、携帯端末3(通信部41)から送信されたこの制御信号が通信部31によって受信されたときに、処理部35は、制御信号に基づいて特定される温度(装着者の体温)が規定温度範囲(一例として、35℃以上37℃以下の範囲)内の温度であるか否かを判別する(ステップ62)。
【0063】
なお、上記の規定温度範囲の例は、初期値として規定されている温度範囲の一例であって、装着者の平均体温や、使用環境の温度などに応じて任意の温度範囲に変更することができる。この場合、前述したように、チラー2を共用する者に対して携帯端末3をそれぞれ所有させると共に、個々の好みに応じた動作モードを特定可能な情報を携帯端末3(通信部41)の識別情報に関連付けてチラー2の記憶部36に記憶させておくことで、チラー2に接続された携帯端末3に対応して、関連付けられている動作モードでチラー2を動作させることができる。この際に、識別情報に関連付ける動作モードとして上記の規定温度範囲を任意に変更して記憶させておくことで、以下に説明するように、記憶されている温度範囲内の温度でチラー2から水が供給される。
【0064】
具体的には、処理部35は、上記のステップ62において特定した温度が規定温度範囲よりも高温であったとき(装着者の身体を規定温度範囲内の温度まで冷却する冷熱量が不足しているとき)に(ステップ63)、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量(ポンプ13による水の圧送量)を増量可能か否かを判別する(ステップ64h)。また、増量可能と判別したとき(ポンプ13を最大能力で動作させていないとき)には、ポンプ13を制御して単位時間当りの水の供給量を増量させ(ステップ65h)、後述するステップ69の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量が増量されるため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0065】
一方、ステップ64hにおいて増量不可能と判別したとき(ポンプ13を最大能力で動作させているとき)に、処理部35は、冷凍サイクル11による水の目標冷却温度を低温に変更可能であるか否かを判別する(ステップ66h)。また、目標冷却温度を低温に変更可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最大能力で動作させていないとき)には、目標冷却温度を予め規定された変更量(一例として、1℃)だけ低温の温度に設定し、新たな目標冷却温度となるように冷凍サイクル11を制御してタンク12内の水を冷却させ(ステップ67h)、後述するステップ69の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4に供給される水の温度が低下するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0066】
また、ステップ66hにおいて目標冷却温度を低温に変更不可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最大能力で動作させているとき)に、処理部35は、好適な冷却が困難な状態であることを示すメッセージを表示部33に表示させると共に、同様のメッセージを携帯端末3(表示部43)に表示させる制御信号を通信部31から送信させる(ステップ68)。これにより、携帯端末3の表示部43にも好適な冷却が困難な状態であることを示すメッセージが表示され、冷却システム1の冷却能力の上限に達していることを装着者が認識する。
【0067】
また、上記のステップ65hにおけるポンプ13の制御、ステップ67hにおける冷凍サイクル11の制御、およびステップ68におけるメッセージの表示や制御信号の出力のいずれかを完了したときに、処理部35は、操作部32による操作、または、携帯端末3から送信される制御信号により、温度調整能力を変更する指示が行われたか否かを判別する(ステップ69)。
【0068】
この際に、装着者が冷却システム1による温度調整能力を手動で変更するためにチラー2の操作部32、および携帯端末3の操作部42のいずれかを操作したときには、操作部32からの操作信号、または、携帯端末3から送信される制御信号(操作部42の操作に伴って送信される制御信号)を受信したときに、処理部35が、自動調整処理60に代えて手動調整処理70を開始する。また、ステップ69において、温度調整能力を変更する指示が行われていないと判別したときには、前述のステップ61に戻って携帯端末3(通信部41)から新たな温度データ(携帯端末3において特定された温度を示す制御信号)の送信を監視する。
【0069】
一方、前述のステップ62において携帯端末3から送信された制御信号に基づいて特定した温度が規定温度範囲内の温度ではないと判別し、特定した温度が規定温度範囲よりも低温であったとき(装着者の身体を規定温度範囲内の温度まで冷却する冷熱量が多過ぎるとき)に(ステップ63)、処理部35は、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量(ポンプ13による水の圧送量)を減量可能か否かを判別する(ステップ64c)。また、減量可能と判別したとき(ポンプ13を最小能力で動作させていないとき)には、ポンプ13を制御して単位時間当りの水の供給量を減量させ(ステップ65c)、前述のステップ69の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量が減量されるため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0070】
一方、ステップ64cにおいて減量不可能と判別したとき(ポンプ13を最小能力で動作させているとき)に、処理部35は、冷凍サイクル11による水の目標冷却温度を高温に変更可能であるか否かを判別する(ステップ66c)。また、目標冷却温度を高温に変更可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最小能力で動作させていないとき)には、目標冷却温度を予め規定された変更量(一例として、1℃)だけ高温の温度に設定し、新たな目標冷却温度となるように冷凍サイクル11を制御してタンク12内の水を冷却させ(ステップ67h)、前述のステップ69の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4に供給される水の温度が上昇するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0071】
また、ステップ66cにおいて目標冷却温度を高温に変更不可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最小能力で動作させているとき)に、処理部35は、前述のステップ68の処理を実行する。これにより、携帯端末3の表示部43にも好適な冷却が困難な状態であることを示すメッセージが表示され、冷却システム1の冷却能力の下限に達していることを装着者が認識する。この際には、必要に応じて冷却システム1(チラー2)を停止させる操作が行われる。また、上記のステップ65cにおけるポンプ13の制御、ステップ67cにおける冷凍サイクル11の制御、およびステップ68におけるメッセージの表示や制御信号の出力のいずれかを完了したときに、前述のステップ69の処理を実行する。
【0072】
以上のように、自動調整処理60の実行中には、携帯端末3の温度センサ44によって検出された温度を特定可能な制御信号が携帯端末3からチラー2に送信され、チラー2において制御信号に基づいて特定される温度が規定温度範囲内の温度となるようにポンプ13による水の供給状態(圧送量)や、冷凍サイクル11による水の温度調整状態(冷却状態)が自動的に変更される。これにより、ウォータージャケット4の装着者の身体を規定温度範囲内の温度とするのに必要十分な冷熱がチラー2からウォータージャケット4に供給される。
【0073】
一方、一例として、ウォータージャケット4の装着者が、上記の自動調整処理60によって調整される冷却能力では快適な温度に調整されないと感じたときには、冷却システム1の冷却能力を操作部32または操作部42の操作によって手動で変更する。この際に、例えば操作部42の操作によって冷却能力を変更するように指示されたときに、処理部45は、指示された変更の内容を特定可能な制御信号を通信部41からチラー2に送信させる。これに応じて、チラー2では、処理部35が、
図7に示す手動調整処理70を開始し、通信部31によって受信された制御信号に基づき、冷却能力を向上させるように指示されたか否かを判別する(ステップ71)。
【0074】
この際に、冷却能力を向上させるように指示されていたとき(ウォータージャケット4の装着者が希望する冷却能力よりも低い能力で動作しているとき)に、処理部35は、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量(ポンプ13による水の圧送量)を増量可能か否かを判別する(ステップ72h)。また、増量可能と判別したとき(ポンプ13を最大能力で動作させていないとき)には、ポンプ13を制御して単位時間当りの水の供給量を増量させ(ステップ73h)、後述するステップ77の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量が増量されて冷却システム1による冷却能力が向上するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0075】
一方、ステップ72hにおいて増量不可能と判別したとき(ポンプ13を最大能力で動作させているとき)に、処理部35は、冷凍サイクル11による水の目標冷却温度を低温に変更可能であるか否かを判別する(ステップ74h)。また、目標冷却温度を低温に変更可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最大能力で動作させていないとき)には、目標冷却温度を予め規定された変更量(一例として、1℃)だけ低温の温度に設定し、新たな目標冷却温度となるように冷凍サイクル11を制御してタンク12内の水を冷却させ(ステップ75h)、後述するステップ77の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4に供給される水の温度が低下させられて冷却システム1による冷却能力が向上するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0076】
また、ステップ74hにおいて目標冷却温度を低温に変更不可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最大能力で動作させているとき)に、処理部35は、指示された状態への変更が困難な状態であることを示すメッセージを表示部33に表示させると共に、同様のメッセージを携帯端末3(表示部43)に表示させる制御信号を通信部31から送信させる(ステップ76)。これにより、携帯端末3の表示部43にも指示された状態への変更が困難な状態であることを示すメッセージが表示され、冷却システム1の冷却能力の上限に達していることを装着者が認識する。
【0077】
また、上記のステップ73hにおけるポンプ13の制御、ステップ75hにおける冷凍サイクル11の制御、およびステップ76におけるメッセージの表示や制御信号の出力のいずれかを完了したときに、処理部35は、操作部32による操作、または、携帯端末3から送信される制御信号により、手動調整処理70から自動調整処理60への移行を指示する操作が行われたか否かを判別する(ステップ77)。
【0078】
この際に、装着者が自動調整を希望してチラー2の操作部32、および携帯端末3の操作部42のいずれかを操作したときには、操作部32からの操作信号、または、携帯端末3から送信される制御信号(操作部42の操作に伴って送信される制御信号)を受信したときに、処理部35が、手動調整処理70に代えて自動調整処理60を開始する。また、ステップ77において、自動調整処理60への移行を指示する操作が行われていないと判別したときには、この手動調整処理70を終了する。
【0079】
一方、前述のステップ71において冷却能力を低下させるように指示されていたと判別したとき(ウォータージャケット4の装着者が希望する冷却能力よりも高い能力で動作しているとき)に、処理部35は、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量(ポンプ13による水の圧送量)を減量可能か否かを判別する(ステップ72c)。また、減量可能と判別したとき(ポンプ13を最小能力で動作させていないとき)には、ポンプ13を制御して単位時間当りの水の供給量を減量させ(ステップ73c)、前述のステップ77の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4への単位時間当りの水の供給量が減量されて冷却システム1の冷却能力が低下するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0080】
一方、ステップ72cにおいて減量不可能と判別したとき(ポンプ13を最小能力で動作させているとき)に、処理部35は、冷凍サイクル11による水の目標冷却温度を高温に変更可能であるか否かを判別する(ステップ74c)。また、目標冷却温度を高温に変更可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最小能力で動作させていないとき)には、目標冷却温度を予め規定された変更量(一例として、1℃)だけ高温の温度に設定し、新たな目標冷却温度となるように冷凍サイクル11を制御してタンク12内の水を冷却させ(ステップ75c)、前述のステップ77の処理を実行する。これにより、チラー2からウォータージャケット4に供給される水の温度が上昇して冷却システム1の冷却能力が低下するため、ウォータージャケット4における熱交換によって装着者の身体が好適に冷却される。
【0081】
また、ステップ74cにおいて目標冷却温度を高温に変更不可能と判別したとき(冷凍サイクル11を最小能力で動作させているとき)に、処理部35は、前述のステップ76の処理を実行する。これにより、携帯端末3の表示部43にも指示された状態への変更が困難な状態であることを示すメッセージが表示され、冷却システム1の冷却能力の下限に達していることを装着者が認識する。この際には、必要に応じて冷却システム1(チラー2)を停止させる操作が行われる。また、上記のステップ73cにおけるポンプ13の制御、ステップ75cにおける冷凍サイクル11の制御、およびステップ76におけるメッセージの表示や制御信号の出力のいずれかを完了したときに、前述のステップ77の処理を実行する。
【0082】
以上のように、手動調整処理70の実行により、指示された冷却能力でチラー2からウォータージャケット4に水が供給される。これにより、ウォータージャケット4の装着者の身体を装着者が希望する温度とするのに必要十分な冷熱がチラー2からウォータージャケット4に供給される。なお、本例の冷却システム1では、前述の報知処理50が継続的に実行されているため、自動調整処理60および手動調整処理70のいずれを実行しているときであっても、その時点における設定温度(目標冷却温度)や設定供給量(目標供給量)が携帯端末3の表示部43に逐次表示される。
【0083】
また、上記の自動調整処理60では、特定された温度が規定温度範囲内の温度を外れているときに、ウォータージャケット4に対する水の供給量の変更を優先して実行し、供給量を変更できないときに、ウォータージャケット4に供給する水の温度を変更しているが、このような制御に代えて、特定された温度が規定温度範囲内の温度を外れているときに、ウォータージャケット4に供給する水の温度の変更を優先して実行し、温度を変更できないときに、ウォータージャケット4に対する水の供給量の変更する制御を行うこともできる。また、上記の手動調整処理70では、指定された冷却能力に応じて、ウォータージャケット4に対する水の供給量の変更を優先して実行し、供給量を変更できないときに、ウォータージャケット4に供給する水の温度を変更しているが、このような制御に代えて、指定された冷却能力に応じて、ウォータージャケット4に供給する水の温度の変更を優先して実行し、温度を変更できないときに、ウォータージャケット4に対する水の供給量の変更する制御を行うこともできる。
【0084】
このように、このチラー2および携帯端末3では、チラー2が、冷凍サイクル11、ポンプ13および処理部35を備え、チラー2に対する相対的な位置が変化する「温度調整対象(本例では、ウォータージャケット4の装着者)」に装着されたウォータージャケット4に対して水を供給することによって装着者の身体の温度を調整可能に構成されると共に、携帯端末3が、制御信号を送信可能な通信部41と、通信部41から制御信号を送信させる処理部45とを備え、チラー2が、通信部41から送信された制御信号を受信可能な通信部31を備え、処理部35が、通信部31によって受信された制御信号に応じて、冷凍サイクル11による水の温度調整状態、およびポンプ13による水の供給状態の少なくとも一方の状態を変更可能に構成されている。また、この冷却システム1では、上記のチラー2、携帯端末3、ウォータージャケット4および連結ホース5を備えている。
【0085】
したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を装着者の近く(本例では、装着者の手首)に配置しておくことで、携帯端末3からチラー2に制御信号を送信させて水の温度調整状態や供給状態を確実かつ容易に変更することができる。これにより、装着者の身体を好適な温度に調整可能な動作状態に確実かつ容易に変更することができる。この場合、「本体部」および「携帯端末」間で有線通信によって制御信号を送受信する構成では、信号線の断線によって通信不能な状態となるおそれがあるが、通信部31,41間で無線通信によって制御信号を送受信する構成を採用したことで、通信不能な状態となる可能性を十分に低減することができる。また、有線通信によって制御信号を送受信する構成では、信号線の断線や導線の露出が生じたときに、可燃性物質に引火する事故や感電事故を招くおそれがあるが、無線通信によって制御信号を送受信する構成を採用したことで、そのような事故が生じるのを好適に回避することができる。
【0086】
また、このチラー2および携帯端末3では、携帯端末3が、ウォータージャケット4の装着者(装着者の身体)の温度を検出可能な温度センサ44を備え、処理部45が、温度センサ44によって検出された温度を特定可能な制御信号を通信部41から送信させ、処理部35が、通信部31によって受信された制御信号に基づいてウォータージャケット4の装着者の温度を特定すると共に、特定した温度に応じて上記の少なくとも一方の状態を変更する。したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を携行していれば、温度センサ44によって検出される温度に応じて、適当な冷却能力が発揮されるように温度調整状態や供給状態が自動調整される。また、冷却能力を指定する操作も不要となる。このため、装着者の身体を好適な温度に調整可能な動作状態に一層容易に変更することができる。
【0087】
また、このチラー2および携帯端末3では、携帯端末3が、上記の少なくとも一方の状態を指定する指定操作が可能な操作部42を備え、処理部45が、指定操作によって指定された少なくとも一方の状態を特定可能な制御信号を通信部41から送信させる。したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を携行していれば、チラー2の近くに移動することなく、所望の冷却能力が発揮されるように温度調整状態や供給状態を任意に指定することができる。このため、装着者の身体を好適な温度に調整可能な動作状態に一層確実に変更することができる。
【0088】
また、このチラー2および携帯端末3では、冷凍サイクル11、ポンプ13および処理部35を有するチラー2を備え、チラー2に対する相対的な位置が変化する「温度調整対象(本例では、ウォータージャケット4の装着者)」に装着されたウォータージャケット4に対して水を供給することによってウォータージャケット4の装着者(装着者の身体)の温度を調整可能に構成されると共に、制御信号を受信可能な通信部41と、通信部41によって受信された制御信号に基づいて予め規定された処理を実行する処理部45とを有する携帯端末3を備え、チラー2が、制御信号を送信可能な通信部31を備え、処理部35が、チラー2の動作状態を特定可能な制御信号を通信部31から送信させ、処理部45が、通信部41によって受信された制御信号に基づいてチラー2の動作状態を特定すると共に、特定した動作状態を報知する報知処理を予め規定された処理として実行可能に構成されている。また、この冷却システム1では、上記のチラー2、携帯端末3、ウォータージャケット4および連結ホース5を備えている。
【0089】
したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を装着者の近く(本例では、装着者の手首)に配置しておくことで、チラー2の設置場所まで移動することなく、チラー2から携帯端末3に制御信号を送信させてチラー2の動作状態を携帯端末3において報知してチラー2の動作状態を確実かつ容易に認識させることができる。
【0090】
また、このチラー2および携帯端末3では、処理部35が、冷凍サイクル11による水の温度調整状態、およびポンプ13による水の供給状態の少なくとも一方の状態を動作状態として特定可能な制御信号を通信部31から送信させる。したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を携行していれば、チラー2における水の温度調整状態や供給状態を携帯端末3において報知して、これらの情報を確実かつ容易に認識させることができる。
【0091】
また、このチラー2および携帯端末3では、チラー2が、水をウォータージャケット4から回収して冷凍サイクル11によって温度を調整してウォータージャケット4に再び供給可能に構成されると共に、回収した水を貯液可能なタンク12と、タンク12内の水の液量を検出可能な水量センサ34とを備え、処理部35が、水量センサ34によって検出された液量が予め規定された警告量を下回ったときに、液量が警告量を下回ったことを動作状態として特定可能な制御信号を通信部31から送信させる。したがって、このチラー2および携帯端末3、並びに冷却システム1によれば、ウォータージャケット4の装着者がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を携行していれば、タンク12の液量の不足を直ちに認識させることができ、液量の不足に起因して正常な冷却が困難となったり、冷凍サイクル11やポンプ13が破損したりするのを好適に回避することができる。
【0092】
また、この冷却システムによれば、装着する「温度調整対象」の外形に応じて変形可能に「熱交換器(本例では、ウォータージャケット4)」を構成したことにより、特に、人体や動物の体のように様々な外形の「温度調整対象」に対して「熱交換器」を好適に接触させた状態とすることができるため、「温度調整対象」の温度を確実に調整することができる。
【0093】
また、この冷却システムによれば、「熱交換器」としてのウォータージャケット4の装着者の身体を「温度調整対象」として装着者の身体の温度を調整可能に構成したことにより、装着者の身体に「熱交換器(ウォータージャケット4)」を容易に装着することができ、かつ、装着者の動作を妨げることなく、その身体の温度を好適に調整することができる。
【0094】
なお、「温度調整装置」の構成や「温度調整システム」の構成は、上記のチラー2および携帯端末3の構成や、冷却システム1の構成の例に限定されない。
【0095】
例えば、押したり引いたりして設置面上で移動させることができるようにチラー2の筐体に自在キャスター15を取り付けた構成を例に挙げて説明したが、そのような構成に代えて(または、そのような構成に加えて)、設置面上におけるチラー2の位置を変化させる自走機構(「移動機構」の一例)や、設置面上におけるチラー2の向きを変化させる回動機構(「移動機構」の他の一例)をチラー2に配設し、チラー2に対する「温度調整対象」の相対的な位置や相対的な方向に応じてチラー2を自走させたり回動させたりする構成を採用することもできる(図示せず)。
【0096】
このような構成を採用する際には、一例として、チラー2の処理部35がチラー2に対する携帯端末3の相対的な位置を特定し、特定した位置に応じて、チラー2と携帯端末3とが予め規定された距離範囲内の距離となるようにチラー2を移動させる構成(自走機構を備えた場合)や、チラー2における連結ホース5の接続部が携帯端末3の方向を向くようにチラー2を回動させる構成(回動機構を備えた場合)を採用するのが好ましい。具体的には、一例として、予め規定されたビーコン信号(「本体部に対する前記携帯端末の相対的な位置を検出可能な位置検出信号」の一例)を通信部41から所定時間間隔で発信させる処理を携帯端末3の処理部45に実行させる。
【0097】
また、チラー2に自走機構を配設する場合には、チラー2の通信部31に複数のアンテナを配設する。また、通信部31の各アンテナを介して受信された上記のビーコン信号の受信強度をそれぞれ特定し、特定した各受信強度および各アンテナの配置に基づいて、ビーコン信号の発信源(すなわち携帯端末3)が存在する方向を特定する処理、および特定した各受信強度に基づいてチラー2に対する携帯端末3の離間距離を特定する処理を処理部35に実行させる。さらに、特定した方向、および特定した離間距離に基づき、携帯端末3を中心とする予め規定された距離範囲内の離間距離となるように自走機構を制御してチラー2を移動(自走)させる処理(「移動機構を制御して本体部の位置を変化させる」との処理の一例)を処理部35に実行させる。
【0098】
このような構成においては、上記の「予め規定された距離範囲」を連結ホース5の長さよりも十分に短く規定することにより、チラー2に対してウォータージャケット4の装着者(携帯端末3を携行している者)が移動したときに、連結ホース5が引き延ばされて、チラー2やウォータージャケット4から連結ホース5が外れてしまったり、伸長方向におけるストレスが加わって連結ホース5が破断したりするのを好適に回避することができる。
【0099】
また、チラー2に回動機構を配設する場合にも、自走機構の配設時と同様にして通信部31に複数のアンテナを配設する。また、通信部31の各アンテナを介して受信された上記のビーコン信号の受信強度をそれぞれ特定し、特定した各受信強度および各アンテナの配置に基づいて、ビーコン信号の発信源(すなわち携帯端末3)が存在する方向を特定する処理を処理部35に実行させる。さらに、特定した方向に基づき、チラー2における連結ホース5の接続部が携帯端末3の方向を向くように回動機構を制御してチラー2を回動させる処理(「移動機構を制御して本体部の向きを変化させる」との距離の一例)を処理部35に実行させる。
【0100】
このような構成を採用することで、チラー2に対してウォータージャケット4の装着者(携帯端末3を携行している者)が移動したときに、チラー2に対する接続部において連結ホース5に対して屈曲方向におけるストレスが加わって連結ホース5が破断したりチラー2から外れたりするのを好適に回避することができる。
【0101】
このように、チラー2が、チラー2の位置および向きの少なくとも一方を変化させる「移動機構(自走機構や回動機構)」を備え、処理部45が、チラー2に対する携帯端末3の相対的な位置を検出可能な位置検出信号(上記の例におけるビーコン信号)を通信部41から送信させ、処理部35が、通信部31によって受信された位置検出信号に基づいてチラー2に対する携帯端末3の相対的な位置を検出すると共に、検出した位置に応じて「移動機構」を制御してチラー2の位置および向きの少なくとも一方を変化させるようにチラー2および携帯端末3を構成することができる。
【0102】
このような構成のチラー2および携帯端末3によれば、携帯端末3をウォータージャケット4(ウォータージャケット4の装着者)の近傍に配置しておく(例えば、本例のようにウォータージャケット4と共に携帯端末3を装着する)ことで、チラー2に対する携帯端末3の相対的な位置が検出され、検出された位置に応じて携帯端末3に対するチラー2の相対的な位置や携帯端末3に対するチラー2の向きが「移動機構」によって変更されるため、チラー2と携帯端末3との離間距離(すなわち、チラー2と、ウォータージャケット4の装着者との離間距離)が過剰に大きくなったり、チラー2における連結ホース5の接続部が携帯端末3の方向とは異なる方向を向いた状態となったりするのを回避することができる。これにより、チラー2やウォータージャケット4からの連結ホース5の外れや、連結ホース5の破断を好適に回避することができる。
【0103】
また、携帯端末3に配設した温度センサ44によって装着者の体温を検出し、検出した体温に応じてチラー2の動作状態を変更する構成を例に挙げて説明したが、体温に代えて(または、体温に加えて)装着者(温度調整対象)の心拍数や血圧などの各種生体情報を「携帯端末」において検出し、検出した生体情報を特定可能な「制御信号」を「携帯端末」から「温度調整装置の本体部」に送信させて「本体部」の動作状態を変更する構成を採用することもできる。この場合、心拍数や血圧などを特定可能な「制御信号」を「携帯端末」から「本体部」に送信させることで、「本体部」において「携帯端末」の装着者(すなわち、ウォータージャケット4等の「温度調整用ジャケット」の装着者)の活動状況を特定することができる。したがって、例えば、活動開始直後には、「温度調整装置の本体部」から供給する水の温度をやや高温としたり、供給量を少量としたりして、急激な体温低下に伴うヒートショックを回避すると共に、装着者の活動量の増加に伴って、供給する水の温度を徐々に低下させたり、供給量を徐々に増加させたりして、活動量が多いとき(身体を十分に冷却する必要があるとき)に必要十分な温度および量の水が「温度調整用ジャケット」に供給されるようにすることができる。
【0104】
また、「携帯端末」の一例である専用の携帯端末3を備えて冷却システム1を構成した例について説明したが、携帯端末3に代えて(または、携帯端末3に加えて)、携帯端末3における前述の各処理と同様の処理を実行可能なアプリケーションソフトをインストールした汎用の「携帯端末」(スマートフォンやタブレット端末、およびそれらと組み合わせて使用可能な各種のウェアラブル端末等)を備えて「温度調整システム」を構成することもできる。なお、汎用の「携帯端末」によって実行される各処理については、前述の冷却システム1における携帯端末3の処理部45が実行する各処理と同様のため、詳細な説明を省略する。また、ウォータージャケット4とは別体の携帯端末3を備えて冷却システム1を構成した例について説明したが、「携帯端末」をウォータージャケット4に一体的に組み込むこともできる。
【0105】
また、管長方向(長手方向)の全体が可撓性を有する耐圧ホースで構成された連結ホース5を「供給用配管」として使用する例について説明したが、管長方向(長手方向)の一部のみが可撓性を有する管体で「供給用配管」を構成することもできる。具体的には、一例として、通常使用の範疇で実質的な撓みが生じない複数の管体(可撓性を有さない管体)を、可撓性を有する管体によって連結することにより、連結部位(可撓性を有する管体の部位)において屈曲するように「供給用配管」を構成することもできる(図示せず)。このように、管長方向(長手方向)の少なくとも一部が可撓性を有する「供給用配管」を採用することにより、「本体部」に対する「熱交換器が装着された温度調整対象」の相対的な位置を自由に変化させることができる。
【0106】
また、水(真水)を「熱媒液」として使用する構成のチラー2(冷却システム1)を例に挙げて説明したが、水に代えて、不凍液や合成油などの「液状の熱媒体」を「熱媒液」として使用する構成を採用することができる。さらに、冷却した「熱媒液」を「熱交換器」に供給して「熱交換器」を装着している「温度調整対象」を冷却する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)、加熱した「熱媒液」を「熱交換器(例えば、ウォータージャケット4)」に供給して「温度調整対象」を加熱する構成(凝縮器22における冷媒との熱交換によって「熱媒液」を加熱して、「温度調整対象」に装着されている「熱交換器」に供給する構成)を採用することもできる。これらの構成においても、前述のチラー2(冷却システム1)と同様の効果を奏することができる。
【0107】
また、「貯液槽」としてのタンク12を備えた構成を例に挙げて説明したが、「貯液槽」を備えない構成を採用することもできる。このような構成を採用する際には、「熱媒液」の流路中に配設した「熱交換器」内に「蒸発器(熱媒液を冷却する構成のとき)」や「凝縮器(「熱媒液を加熱する構成のとき)」を配設して、「熱媒液」の通過時に温度を調整する構成を採用することができる。さらに、「熱交換器」との間で「熱媒液(上記の例では、水)」を循環させる「循環型の温度調整装置」の構成を例に挙げて説明したが、「熱交換器」から「熱媒液」を回収しない「非循環型の温度調整装置」にも本願の構成を採用することができる。
【0108】
また、ウォータージャケット4(ウォータージャケット4の装着者)を「装着する温度調整対象の外形に応じて変形可能な熱交換器」として「熱媒液(上記の例では水)」を供給して装着者の身体(上半身)を温度調整(冷却)する使用形態を例に挙げて説明したが、「熱媒液を供給する熱交換器」はこれに限定されない。例えば、「熱媒液(水等)」の通過が可能な細管が配設されると共に、腕、脚および首などに装着可能なアイシングカバー(冷却帯:「本体部に対する相対的な位置が変化する熱交換器」の他の一例)に「熱媒液(水等)」を供給してもよい。具体的には、織物やシートで形成されたカバー本体内に可撓性を有する複数の細管が配設したアイシングカバーを「熱交換器」として採用することができきる(「装着する温度調整対象の外形に応じて変形可能な熱交換器」の他の一例)。これにより、肢体や首などに炎症を伴う不具合が生じている者が安静状態を維持するのが困難なとき(例えば、リハビリ等を行う必要があるとき)にアイシングカバーを装着して「熱媒液(水等)」を供給させることで装着部位を好適に冷却することができる。このような使用形態においても、「携帯端末」を携行することで、温度調整状態、および熱媒液の供給状態の調整や、機器の動作状態の確認を確実かつ容易に行うことが可能となる。
【0109】
また、敷布のように布団の上に敷いて寝ている者(身体)を冷却可能に構成されたウォーターマット(冷却マット:「本体部に対する相対的な位置が変化する熱交換器」のさらに他の一例)に「熱媒液(水等)」を供給してもよい。具体的には、織物やシートで形成されたマット本体内に可撓性を有する複数の細管が配設したウォーターマットを「熱交換器」として採用することができきる(「装着する温度調整対象の外形に応じて変形可能な熱交換器」のさらに他の一例)。これにより、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者など、布団から起き上がるのが困難な者にとっては、本体部がある程度離れた位置に設置されているときに、温度調整状態、および熱媒液の供給状態の調整や、機器の動作状態の確認が困難となる。しかしながら、本願発明のような構成を採用することにより、布団(ウォーターマット)から起き上がることなく、温度調整状態、および熱媒液の供給状態の調整や、機器の動作状態の確認を行うことが可能となる。
【0110】
また、人に代えて、ペットや家畜などの各種の動物を「温度調整対象」とする際にもウォータージャケット4、アイシングカバーおよびウォーターマットを「熱交換器」として使用して温度を調整することができる。また、「人や動物の温度調整を目的とする熱交換器」に代えて、任意の温度を維持すべき物品の陳列棚や収納庫(冷蔵庫や保温槽)を「温度調整対象」として、これらに「熱交換器」を装着して温度を調整することもできる。具体的には、生鮮食品などの移動販売に際して、「熱媒液(水等)」の通過が可能な細管が配設されたアイシングシート(冷却シート:「本体部に対する相対的な位置が変化する熱交換器」のさらに他の一例)を、陳列する商品の下、或いは、陳列した商品の上に配設し、このアイシングシートに「熱媒液(水等)」を供給して商品(温度調整対象)を冷却することができる。さらに、温度調整を必要とする各種の機械(溶接機、掘削機および切削器などの可搬型の機械器具)を「温度調整対象」としたり、生育環境を所望の温度範囲内の温度とすべき植物(作物)の成育場所を「温度調整対象」としたりして「熱交換器」を装着(配設)して温度を調整することもできる。
【0111】
また、電源ケーブルを商用交流に接続して使用する構成のチラー2(冷却システム1)を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)、冷凍サイクル11(圧縮機21および膨張弁23)やポンプ13等を動作させるための電源を蓄電可能な二次電池(「本体部の各構成要素に電力を供給する二次電池」の一例)を搭載することもできる。
【0112】
この場合、二次電池からの電源供給によって動作可能にチラー2を構成するときには、処理部35が、二次電池の蓄電残量、およびチラー2を現状のまま動作させた際に蓄電残量で動作可能な動作可能時間の少なくとも一方を特定可能な制御信号を通信部31から携帯端末3に送信させ、携帯端末3において処理部45が通信部41によって受信された制御信号に基づき、チラー2における二次電池の蓄電残量やチラー2の動作可能時間を表示部43に表示させる構成を採用するのが好ましい。このような構成を採用することにより、「熱交換器」が装着された「温度調整対象」(ウォータージャケット4の装着者等)がチラー2から離れた場所に位置していたとしても、携帯端末3を「温度調整対象」(装着者)の近くに配置しておくことで、二次電池の蓄電残量やチラー2の動作可能時間を確実かつ容易に把握することができる。
【0113】
また、任意に移動可能な「熱交換器」であるウォータージャケット4等に対してチラー2から「熱媒液(水)」を供給する冷却システム1の構成を例に挙げて説明したが、任意の場所に携行して使用可能な可搬型のチラー2から任意の場所に固定的に配置された各種の「熱交換器(「本体部に対する相対的な位置が変化する温度調整対象に装着された熱交換器」のさらに他の一例)に対して「熱媒液(水)」を供給するように構成することもできる。さらに、任意の場所に携行して使用可能な可搬型のチラー2を備えた構成を例に挙げて説明したが、任意の場所に固定的に設置して使用する固定型の「本体部」を備えた「温度調整システム」において本願発明の構成を採用することもできる。
【0114】
加えて、「温度調整装置」の一例であるチラー2および携帯端末3に加えて、ウォータージャケット4および連結ホース5を備えた冷却システム1の実施形態について説明したが、「温度調整装置」以外の構成要素(冷却システム1におけるウォータージャケット4や連結ホース5)については、既存の物品(他の「温度調整装置」から「熱媒液」の供給を受けて「温度調整対象」の温度を調整するための物品)を使用することもできる。
【符号の説明】
【0115】
1 冷却システム
2 チラー
3 携帯端末
4 ウォータージャケット
5 連結ホース
11 冷凍サイクル
12 タンク
13 ポンプ
14 処理装置
15 自在キャスター
21 圧縮機
22 凝縮器
23 膨張弁
24 蒸発器
25 ファン
31,41 通信部
32,42 操作部
33,43 表示部
34 水量センサ
35,45 処理部
36,46 記憶部
44 温度センサ
50 報知処理
60 自動調整処理
70 手動調整処理