(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】交通制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/07 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G08G1/07 P
(21)【出願番号】P 2021200066
(22)【出願日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593202025
【氏名又は名称】株式会社エイビット
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】檜山 竹生
(72)【発明者】
【氏名】小林 充生
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-172987(JP,A)
【文献】特開2018-92236(JP,A)
【文献】特開2005-228111(JP,A)
【文献】特開2019-67334(JP,A)
【文献】特開2019-12391(JP,A)
【文献】特開2008-108033(JP,A)
【文献】特開2002-367081(JP,A)
【文献】実開昭58-171600(JP,U)
【文献】特開2002-49985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1車線を車両が交互通行する道路工事区間の交通制御システムであって、
前記交通制御システムは、
管理サーバと、カメラを内蔵する車両認識装置と、表示器と、操作・表示端末とが、公衆無線通信網に接続されてなるものであり、
前記管理サーバは、
前記道路工事区間の交互通行路の両端に進入してくる車両への進入許可・不許可を制御する交通制御と、
前記道路工事区間の交互通行路の両端に進入してくる車両への進入を許可した時間、不許可とした時間の経時的な履歴を管理する通行履歴管理とを、
複数の道路工事区間に対し管理するものであり、
前記車両認識装置は、
前記道路工事区間の両端に設置され、
前記カメラで撮影された画像より前記交互通行路へ進入しようとしてくる車両の台数を認識する第1の認識情報とともに、前記道路工事区間の両端に設置された前記カメラが、前記交互通行路内に車両が存在しないと認識する第2の認識情報とを認識するものであり、
前記表示器は、
前記道路工事区間の両端に設置され、
前記交互通行路への車両の進入の可否を表示するものであり、
前記管理サーバは、
前記車両認識装置から無線受信した前記第1の認識情報と前記第2の認識情報をもとに、前記進入許可・不許可を判断し、前記判断した信号を、前記道路工事区間両端の前記表示器に無線送信するとともに、
前記操作・表示端末から無線受信した、実際の通行状態を目視した工事監督者が、車両の進入許可・不許可を判断した信号も、前記道路工事区間両端の前記表示器に無線送信するものであり、
前記両端の表示器は、
前記管理サーバより無線受信した信号によって、進入許可・不許可を表示するものである、
ことを特徴とする交通制御システム。
【請求項2】
1車線を車両が交互通行する道路工事区間の交通制御システムであって、
前記交通制御システムは、
サブ管理サーバと、カメラを内蔵する車両認識装置と、表示器と、操作・表示端末とが、自営無線通信網に接続されてなるものであり、
前記サブ管理サーバは、
前記道路工事区間の交互通行路の両端に進入してくる車両への進入許可・不許可を制御する交通制御と、
前記道路工事区間の交互通行路の両端に進入してくる車両への進入を許可した時間、不許可とした時間の経時的な履歴を所定期間管理する通行履歴管理とを、
1つの道路工事区間に対し管理するとともに、公衆無線通信網にも接続可能なものであり、
前記車両認識装置は、
前記道路工事区間の両端に設置され、
前記カメラで撮影された画像より前記交互通行路へ進入しようとしてくる車両の台数を認識する第1の認識情報とともに、前記道路工事区間の両端に設置された前記カメラが、前記交互通行路内に車両が存在しないと認識する第2の認識情報とを認識するものであり、
前記表示器は、
前記道路工事区間の両端に設置され、
前記交互通行路への車両の進入の可否を表示するものであり、
前記サブ管理サーバは、
前記車両認識装置から無線受信した前記第1の認識情報と前記第2の認識情報をもとに、前記進入許可・不許可を判断し、前記判断した信号を、前記道路工事区間両端の前記表示器に無線送信するとともに、
前記操作・表示端末から無線受信した、実際の通行状態を目視した工事監督者が、車両の進入許可・不許可を判断した信号も、前記道路工事区間両端の前記表示器に無線送信するものであり、
前記両端の表示器は、
前記サブ管理サーバより無線受信した信号によって、進入許可・不許可を表示するものである、
ことを特徴とする交通制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
道路工事などにより片側通行とされている車両の通行路への進入管理を
電子的に制御し、人による誘導操作作業量を軽減する交通制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、片側通行路の両端には、各々車両の進入を誘導する誘導員が配置され、両端の誘導員が、進入してくる車両の台数を見ながら、相互に連絡を取り、車両の進入の許可、不許可の指示を行っている。この人手による交通誘導をできるだけ自動化すべく、技術開発が行われていて、特許出願も行われている。
【0003】
特許文献1には、車両通過センサを用いて、工事区間に進入してくる車の台数や工事区間から脱出する車の台数をカウントし、円滑に誘導する方法、特許文献2には、サーバから車両の進行を制御する技術が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-67234
【文献】特開2020-140597
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人手による交通誘導をできるだけ自動化するに際し、車両の待ち時間をできるだけ少なくするとともに交通渋滞を生起させないよう配慮した交通制御を行う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
相互の通行時間を、タイマを利用した設定とするも、カメラで撮影した画像から、進入してくる車両の台数を推定するとともに、工事中でない平常時の車両の通行量、工事区間両端から交通信号のある交差点までの長さ、タイマ値と通行量との実績を見ながら、タイマ値を、より適した値に修正していくことで、工事区間への車両の進入の許可、不許可を決める。
【発明の効果】
【0007】
停止信号による待ち時間を、実際の交通量により最適な時間に設定することができ、円滑な通行が可能になり、運転者の待ち時間も最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の管理サーバと公衆無線通信網との通信形態を示す図である。
【
図3】本発明による車両認識装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明による操作・表示端末の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明による表示器の内部構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明による工事
区間と工事
区間の手前の交通信号機との間が車両で一杯になっている状況を示す図である。
【
図7】本発明の撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明のサブ管理サーバと自営無線通信網との通信形態を示す図である。
【
図9】本発明のサブ管理サーバと公衆無線通信網と本発明の管理サーバとの通信形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明を説明する。
【0010】
本発明の一実施態様として、片側1車線の道路で、片側の道路が工事中で、車は工事中車線の他のひとつの車線しか走行できないケースで、車線は直線的な例を取り上げる。
【0011】
図1において、斜線で描かれている箇所が
工事個所、1は車両認識装置、2は操作・表示端末、3は表示器、
破線で囲まれた□部が工事区間である。図1に示す交互通行路は、工事個所でなく、車両が走行する車線であり、交互通行路と工事個所を合わせて、本発明では工事区間と呼ぶ。なお、交互通行路は工事区間内の通行路でもある。
【0012】
工事区間の両端には、通行可・不可を青、赤で示す表示器3と車両認識装置1が設置されている。表示器3と、車両認識装置1は、物理的に少し離れた位置に別筐体で設置されてもよく、同じ個所で同一筐体に収納されてもよい。この場合、表示器3と車両認識装置1は縦方向あるいは横方向にずらして配置される。工事区間の一部に操作・表示端末2が置かれているが、操作・表示端末2は、管理サーバ4が工事区間への車両の進入を制御するが、その進入制御(通行可、通行不可の制御)状況を表示するもので、工事区間の一部に設けた車両の停車部に工事監督車両を停車させ、その中で、工事監督者が使用する。工事監督者は、工事区間の車両の通過状況を観察し、場合によっては、車両から車道に出て、交通整理など必要な処置を行う。人手による交通誘導では、工事区間の両端に誘導員を配置することが必要になるが、本発明においては、2人の誘導員の配置を不要とし、工事監督者1名の配置でよい。なお、工事区間が長い場合は、工事監督者の補佐要員を配置することが望まれる。工事監督車両の停車箇所は
図1に示すような工事区間の一部であることは必ずしも必要ではなく、工事区間の一方の端(例えば
図1の斜線で示す箇所の隣側)でもよい。
【0013】
操作・表示端末2と、2つの表示器3、車両認識装置1は、
図2に示すように、公衆無線通信網5で管理サーバ4と情報交換される。公衆無線通信方式としては、LTEや5G、将来的には6Gが用いられる。
【0014】
図3は車両認識装置1の構成を示すもので、11はカメラ1、12はカメラ2、13はマイク、14は認識部、15は台数認識部、16は緊急車両認識部、17は照度計、18は投光器、23は無線通信部である。11のカメラ1は工事区間に進入してくる車両を撮影するカメラ、12のカメラ2は交互通行路を走行する車両を撮影するカメラである。カメラ1、カメラ2は各々が撮像素子を搭載する方法や一つの撮像素子を180度回転させ、カメラ1の機能、カメラ2の機能を発揮するようにしてもよい。カメラ1の画像からは、工事区間に進入してくる車両の台数と撮影画像に映った車両の台数が台数認識部15で検知される。
【0015】
ここで、撮影間隔について説明すると、片側1車線の道路の制限速度は、毎時30キロメートルや40キロメートルが多いので、車両の通行速度を36キロメートル、つまり毎秒10メートルとすれば、車両長を5メートル、車間距離を1メートルとすると、5+1=6メートルの走行時間は、167ミリ秒であり、車両の進入を1台ごとに撮影しようとすると撮影間隔は、167ミリ秒になる。実際は、数台単位で撮影してもよく、認識部14、台数認識部15の処理速度、認識の正確性(精度)などを考慮して決めればよい。キリのいい数字で言えば1秒ごとの撮影間隔で十分だろう。
【0016】
車両認識装置1は、認識部14で、1秒間に工事区間に向けて進入してくる車両台数(進入台数)と画像に映った車両台数(画像台数)を認識し、管理サーバ4に報告する。カメラ2では停止位置から工事区間に進入して走行する車両台数(走行台数)と、車両が工事区間内にいるかどうかが管理サーバ4に報告される。認識部14には、図示しないが、セダン車、ハイルーフ車、トラック、バスなどの車両パタンが記憶されていて、それらのパタン情報と対比しながら、車両を1台ずつ認識していく。また、図示しないが、認識部14には認識感度調整機構があり、車両を1台ずつ認識するのに、完全一致、ほぼ一致のレベルを求めるか、撮影の間隔を1秒から2秒にして認識処理動作を入念に行うかなどが、必要に応じて、操作・表示端末2からの指示が管理サーバ4を介して認識部14に届き、調整される。カメラの撮影対象位置は、待機車両の最前列(認識装置手前)から、待機車両の最後部の遠方まで変化するが、カメラのズーム比率が、認識部14や管理サーバ4からカメラに指示される。
【0017】
車両認識装置1は、照度計17と投光器18を装備していて、照度計17は、外光の照度を測定する。曇天や夕方さらに夜間など、撮影画像の画質が劣化し、台数認識精度が低下するのを防ぐため、照度計出力を見ながら投光器18を点灯する。投光器18は車両認識装置1の頭部より棒状に伸びた取付棒で高い位置に設置され、進入してくる車両全体に向けて投光されるようにするが、車両認識装置1と別筐体にして設置してもよい。
【0018】
車両認識装置1はマイク13を具備していて、救急車や消防自動車やパトカ―など警報を鳴らしながら接近してくる緊急車両を警報音とともに赤いランプの回転を検出しながら、緊急車両が接近してきたことを、緊急車両認識部16で認識する。
【0019】
【0020】
図において、23は無線通信部、24は表示・入力部である。操作・表示端末2は、専用タブレット端末として構成してもいいが、携帯電話を使用してもよい。その場合、工事事業会社から別途供給される管理サーバ4の進入制御(通行可、通行不可の制御)動作が閲覧でき、管理サーバ4との交信も可能な専用ソフトウエア(アプリ)をロードしておくことが必要である。管理サーバ4は、車両認識装置1から情報受信し、工事区間の車両の通行可否を決定判断し、2つの表示器3に通行可否を指示するが、操作・表示端末2は、その情報を受信し、表示・入力部24に表示する。また後記するように、工事監督者が必要に応じて(例えば、工事区間内で車両が故障した場合など)、2つの表示器に赤を点灯させるため、表示・入力部24から情報入力し、管理サーバ4に伝える。
【0021】
管理サーバ4は、工事区間の両端(片方をA端、他の片方をB端と呼ぶ)の表示器3に通行可否の連絡をするが、通行可のときは表示器3を青に点灯、通行不可の時は赤に点灯する。当然のことであるが、A端の表示器3が青の時は、B端の表示器3は赤になる。A端の表示器3が青から赤に変わった後、工事区間の通行路に車両がなくなったことを確認できるまではB端の表示器3は赤であり、この期間は両端の表示器3とも赤である。
【0022】
道路工事が計画されたら、工事道路の定常的な交通量(1秒に通過する台数、あるいは何秒に1台通過するかを数字で管理)を、曜日、時間(24時間で30分毎)、天候(雨かどうか)、月末、および業務車両が増える5日、10日を考慮した上で工事参照データとして把握されていて、管理サーバ4に保管・管理されている、また、後記するが管理サーバ4ではすべての工事区間の制御履歴が保管されているので、当該工事区間の過去の工事履歴や、近隣(特に同一道路上での他工事区間)の工事履歴情報を工事参照データとしてもよい。
【0023】
通行可否決定のため、管理サーバ4は、図示しないが4つのタイマ(A端での青信号タイマ1、赤信号タイマ2、B端での青信号タイマ3,赤信号タイマ4)を内蔵している。前記した工事参照データでA端からB端への交通量とB端からA端への交通量をもとに、工事開始前に、A端での青信号タイマ1、B端での青信号タイマ3の通行可時間(秒)、A端での赤信号タイマ2、B端での赤信号タイマ4の通行不可時間(秒)、をタイマ値として設定する。交通制御は、このタイマ値を基本に行うが、後記するようにタイマ値は適宜更新される。
【0024】
A端の表示器3が赤になると、A端の車両認識装置1から、前記した進入台数と画像台数が管理サーバ4に報告されるが、管理サーバ4は、毎秒報告されるこれらの情報を見ながら、進入台数の積算値が車両の待機台数になるはずと認識しながらも画像台数と比較しながら、赤信号期間の1/2時点や3/4時点でカメラのズーム機構を、より遠方が見られるように変化させ、待機中の車両台数をより正確に把握できるよう制御する。また、把握された交通量が工事参照データと著しい差がないかも確認し、著しい差があるときは、操作表示・端末2に連絡し、表示・入力部24がそのことを表示する。工事監督者は、その表示を見て、車両認識装置1の台数認識部15から報告された前記進入台数を現場で確認し、現場で目視確認した進入台数と、台数認識部15から報告された進入台数が著しく異なるときで、進入台数が多すぎるときは認識感度を低く変更してみる指示を、逆に進入台数が少なすぎるときは認識部14の認識感度を高く変更してみる指示を、操作・表示端末2の表示・入力部24より入力し、管理サーバ4に送る。その後、しばらくの間、台数認識部15の報告に著しい差がなくなるまで、観察を続ける。
【0025】
通行可否決定の制御は、前記したように、青時間、赤時間についてのタイマ値を設定した上で行うが、実際の車両の通行量を見ながら、タイマ値に関わらない制御を行う。
【0026】
ここでタイマ値に関わらない制御を行う例を2つ示す。
【0027】
1つは、車両の待機台数が増えて、
図6に示すように、手前の交通信号交差点まで待機車両が並ぶときである。
図6の工事領域とは、
図1そのものを示す。
【0028】
例えば、工事領域の手前の交差点までの距離が60メートルとする。1車両の長さが、6メートル(車両長+車間距離)とすると、10台が待機することで、待機車列が手前の交差点に達する。車両の通行量が5秒に1台とすると、赤信号期間が50秒になると、手前の交差点に達する。このようなケースは避けるべきで、タイマ値が60秒に設定されていたとするとき、赤信号は、50秒以下の例えば45秒で、工事領域に車両が残っていないことを確認した後、青信号にすることが必要になる。
【0029】
他の1つの例は緊急車両の接近時である。
【0030】
赤信号の時、緊急車両認識部16で緊急車両の接近を検知したら反対側の青信号をタイマに関わらず即赤に変化させ、工事領域に車両が残存していないことを確認した後、赤を青に変化させることが必要である。このような制御操作は自動的に行われるが、工事監督者が操作・表示端末2の表示・入力部24から、A端を赤にする、B端を青にする操作を行い、管理サーバ4に送ることでも可能である。
【0031】
【0032】
図において、31は青色点灯部、32は赤色点灯部、33は文字表示部、34はスピーカ部、35は表示等駆動部、23は無線通信部である。操作・表示端末2からの指示で表示器3は動作制御されるが、緊急車両が接近したため、本来は通行可で青が点灯されるべきであったものが赤に変わるときは、文字表示部33やスピーカ部34に、表示等駆動部35を介して「緊急車両が通過するのでお待ちください」などの表示や発音を行う。なお、管理サーバ4が、緊急車両が通過し終えたことを確認し、文字表示の必要がなくなったら、文字表示、スピーカ発音を解除する信号が、管理サーバ4から表示器3に届く。
【0033】
次に通行可否決定部22(青、赤決定)の制御について、表1とともに説明する。
【0034】
表1の台数は青信号の時は通過台数、赤信号の時は待機台数を示す。時間の示す数字は秒である。時間列にT1、T2、T3、・・・とあるのは、時間幅を示すもので、実際は、開始時刻が、A年B月C日D時E分F秒、終了時刻が、A年B月C日D時E分G秒となっている。
【0035】
【表1】
ここでは、表1のT1、T2に示すようにA端の青信号タイマ1は40秒、B端の青信号タイマ3は20秒の値でスタートする。T1で40秒が経過しタイムアップしたら、工事区間の通行路に車両が存在するかどうかを確認し(確認する方法は後記する)、車両が存在しないことが確認出来たら、操作・表示端末2に「車両なし」を伝える。同時にB端の表示器3は操作・表示端末2から青に変えるよう指示を受け、青信号タイマ3を起動する。T1において、B端の赤時間に40+2とあるが、この+2は車両がなくなるまでの時間が2秒であったことを示す。B端が+2秒の間、A端は赤であるので、T1の赤時間に2秒が書かれている。T2の開始時刻は、T1の開始時刻の42秒後となる。
【0036】
工事区間の両端の車両認識装置1は、赤信号期間中は、工事区間に向かってくる車両の台数(進入台数)をカウントしながら停止している車両の台数(画像台数)を認識していて、前記したように待機車両の長さが次の交差点まで達しそうになったら、操作・表示端末2にそのことを伝える。表1では、T4で、A端での画像台数が33台になっていて、別途管理している交差点までの待機車両最大数の35台に近づいたので、操作・表示端末2は、その時、A端の表示器3を青にするよう指示を出し、工事区間に車両の存在しないことが確認できるまで、B端の表示器を赤にする指示を出す。T4の時間に20-2+3 とあるのは、本来ならば20秒の赤時間を上記した理由で2秒短くしたことと、車両がなくなるまでの時間が3秒であったことを示す。この時、B端青時間は、2秒短縮される。T5の開始時刻は、T4の開始時刻より21秒(20-2+3)後になる。
【0037】
T3のB端では、待機台数が9台あり、T4でB端を青にしたときの通過台数は9台で、これは、T3での待機台数が通過しただけで、T4期間では、新規に進入通行した台数は0であったことを示す。T5においては、A端の赤時間が0になっているが、タイムアップした時、工事区間内に車両が存在しなかったので即赤に切り替わったことを示す。つまりT6の始まり時刻はタイマ値と同じになる。T6においては、B端の赤信号タイマ4は20秒から15秒に、T7のA端での青信号タイマ1は40秒から45秒に変更されている。それは、T3からT5までの通過台数、待機台数の実績をみて、B端の赤を長く、A端の青を長くしてみようとする試みである。このような試みは随時行われ、より適切な、タイマ値が設定されていくが、タイマ値の最大値を60秒とか運転手の心理に配慮した設定も必要である。
【0038】
表1の工事区間の通行履歴を示す表は、1日単位あるいは所定の時間ごとに、工事区間の住所、道路名、天候(雨か晴れなど)などの属性情報とともに管理しておくことで、毎日の工事制御(通行可否の決定判断)や他の工事におおいに参考になろう。
【0039】
青から赤に変えたとき、通行路に車両が存在するかどうかを確認する方法をカメラのズーム比率とともに説明する。
【0040】
A端が青から赤に変えたときA端のカメラ2は通行路に車両が存在しているかを確認するため、ズーム比率を工事区間の通行路全体が見渡せるように設定する。カメラ2は通行路に進入する車両の台数を認識するため、赤から青に変化すると、青が赤に変化するまで、カメラ2の設置位置の近辺の画像が認識できるズーム比率に設定されているが、赤に変化した後は通行路に進入した車両が、通行路を走り終えるのを確認するため、ズーム比率は通行路全体を見渡せるように設定される。同時にB端のカメラ2は、B端近辺での車両の存在を確認できるようなズーム比率に設定される。A端でのカメラ2情報とB端でのカメラ2情報とにより通行路に車両が存在しないことを確認して、B端を赤から青に変化する。
【0041】
A端とB端のカメラ2で工事区間の通行路の車両の存在確認は、通行路が途中で曲がっている時は必須となる。この時、両端のカメラのズーム比率は、曲がっている地点までが見渡せるように設定する必要がある。
【0042】
なお、A端が青から赤に変化後、車両が工事区間の通行路を走り終えるまでの時間は、通行路長を50メートル、車両の速度を毎秒10メートルとすれば、高々5秒なので、上記したカメラによる車両の存在を確認しないで、両端の表示器を同時に赤にする時間を5秒に設定する方法も採れるが、A端が、青から赤に変わるとき、通行路に、実際に走行車両がない時は、無駄な5秒となるので好ましくない。
【0043】
管理サーバ4は、タイマ値の更新決定判断のため、平常時交通量、待機車両最大数、表1のタイマ値、台数履歴を常時観察管理している。
【0044】
管理サーバ4は、表1に示した履歴管理のほか、他の工事区間の履歴も管理していて、たとえば、工事区間が同一道路上で2か所あるとき、他方の工事区間のタイマ履歴を相互に参照し合うことで、より円滑な走行ができるようタイマ値を設定することができる。また、前記したように工事開始時に設定するタイマ値を、過去の工事履歴や近隣の工事履歴を参照し決定してもよい。このため、表1の工事履歴情報には、工事地点の住所、道路名、GPS値、天候などの属性情報が管理サーバ4で別途関連づけされている。
【0045】
図8は、公衆無線通信網5の通信品質が安定してないケース、あるいは公衆無線通信網5のサービスが充分でない山間部などでは、公衆無線通信網5の替わりに、ローカル5GやLPWAのような自営の無線通信網7を使う実施態様を示している。
【0046】
図8の実施態様においては、
図2の管理サーバ4に替えてサブ管理サーバ6が置かれている。サブ管理サーバ6は所定の工事期間(工事時間が日中だけの場合は一日ごと、昼夜を問わず工事している場合では、12時間、24時間ごと)ごとに、サブ管理サーバ6が所持する表1に示す工事履歴情報を管理サーバ4に届ける。この場合、
図9に示すように、サブ管理サーバ6は、公衆無線通信網5が安定的に動作する場所に移動して管理サーバ4に工事履歴情報を届ける。そのため、サブ管理サーバ6を実現するハードウエアは、ノートパソコンのような可搬性のものが望ましい。サブ管理サーバ6は2台必要で、1台のサブ管理サーバ6を公衆無線通信網5が安定的に動作する場所に移動して管理サーバ4に工事履歴情報を届けている間、工事現場には、もう一つのサブ管理サーバ6が設置され交通制御を行っている。
【0047】
サブ管理サーバ6は、自営無線通信網にも公衆無線通信網にも接続可能であることが必要で、ノートPCに無線通信アダプタのようなものを接続して使うことになろう。なお、管理サーバ4には工事履歴情報として、複数個所の工事履歴情報など、膨大なデータが管理されているが、サブ管理サーバ6は、所定期間の工事履歴情報が管理されているだけで、所定期間の工事履歴情報を管理サーバ4に届けた後は、その工事履歴情報を保管しておく必要はない。
【0048】
また、公衆無線通信網が利用できる箇所であっても、自営無線通信網7を使用すれば、公衆無線通信網の事業者に支払う通信料が無料になるというメリットがある。
【0049】
以上に説明した管理サーバ4、車両認識装置1、表示器3の間に行き交う信号をまとめると表2のようになる。
【0050】
【表2】
表2における信号は、信号17、18以外は、工事区間のA、B両端の車両認識装置と表示器に対して存在する。例えば、信号1には、「A端の表示器3を青表示にする」という信号と「B端の表示器3を青表示にする」という信号がある。また信号1~信号17の通信相手の管理サーバは、
図8の例では管理サーバをサブ管理サーバと読み替える。
【0051】
これまでに説明した車両認識装置1、操作・表示端末2、表示器3は、道路工事の3点セットともいえるものであり、工事が終了すると倉庫などに保管され、工事が始まると工事区間に設置されるものである。
【0052】
上記したように、工事区間は、高品質の公衆無線通信網が整備されている箇所であったり、公衆無線通信網が使用できず自営無線通信網を使用する箇所であったりする。このため、車両認識装置1、操作・表示端末2、表示器3の無線通信回路は、公衆無線通信網、自営無線通信網の両方に対応できるようにしておくと、工事区間の無線通信品質を問う必要がなくなる。このため、車両認識装置1、操作・表示端末2、表示器3における無線通信回路23は、公衆無線通信網、自営無線通信網の両方に接続可能にしておき、設置時にどちらの通信網を使用するのかの設定を行う。この設定には、図示しないが、車両認識装置3の無線通信部23に内蔵する手動切替スイッチあるいは受信電波強度を測定した自動切換スイッチを用いる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施態様としては、
図3に示す車両認識装置1が、カメラ1、カメラ2のみを主体とした撮像装置8となり(撮像装置の構成は、
図7に示す)、
図3の車両認識装置1の認識部14,台数認識部、緊急車両認識部16の動作が、管理サーバ4で実行されることになる。この場合、表2の信号において、車両認識装置1と管理サーバ4間の信号(表2のNo.6~12)は存在しなくなる。
【0054】
表3に車両認識装置1が撮像装置8に変わった時の信号を示す。この表3でも信号14以外の信号は、工事区間のA、B両端の車両認識層1と表示器3に対して存在する。例えば、信号1には、「A端の表示器3を青表示にする」という信号と「B端の表示器3を青表示にする」という信号がある。
【0055】
この第2の実施態様においては、
図2の公衆無線通信網5は、高速無線通信網に替わり、高速無線通信網の具体例としては、LTEや5G(5Gの方が望ましい)のような公衆無線通信網やローカル5Gによる自営無線通信網を使用する。
【0056】
【産業上の利用可能性】
【0057】
デジタル社会実現の一例として車両認識装置は人工知能を活用するなど有効な方法を提供している。車両認識装置、表示器の生産が活性化され、交通誘導員の人員削減も可能で、社会のDX化に貢献できる。
【符号の説明】
【0058】
1.車両認識装置
11.カメラ1
12.カメラ2
13.マイク
14.認識部
15.台数認識部
16.緊急車両認識部
17.照度計
18.投光器
2.操作・表示端末
23.無線通信部
24.表示入力部
3.表示器
31.青色点灯部
32.赤色点灯部
33.文字表示部
34.スピーカ部
35.表示等駆動部
4.管理サーバ
5.公衆無線通信網
6.サブ管理サーバ
7.自営無線通信網
8.撮像装置