(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】がんの治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせるペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20240820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240820BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240820BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240820BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240820BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20240820BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/00
A61K38/10
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/475
C07K16/28
C12N15/19 ZNA
(21)【出願番号】P 2021560980
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060750
(87)【国際公開番号】W WO2020212514
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520144543
【氏名又は名称】ウントレサーチ・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト、ペーテル・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン、レナ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン、トミー
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/040666(WO,A1)
【文献】特表2018-500390(JP,A)
【文献】特表2011-519851(JP,A)
【文献】特表2008-542368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/08
A61P 43/00
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 38/10
A61K 39/395
C07K 7/06
C07K 7/08
C07K 14/475
C07K 16/28
C12N 15/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬であって、
前記WNT5Aペプチドは
ヘキサペプチドMDGCEL(配列番号3)又はそのホルミル化誘導
体であり、
前記ペプチド及び前記チェックポイント阻害剤は、組み合わせられているか若しくは別個であり、及び/又は、同時に若しくは連続して投与される、
組合せ医薬。
【請求項2】
前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に応答する、請求項1に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項3】
前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1及びCD47からなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤である、請求項1又は2に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項4】
前記チェックポイント阻害剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び/又は抗CD47抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項5】
前記抗CTLA4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、請求項4に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項6】
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はペムブロリズマブである、請求項4に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項7】
使用するチェックポイント阻害剤の量が、WNT5Aを同時に又は連続して投与しない場合の量と比較して減少する、請求項1~6のいずれか一項に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項8】
前記必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント分子の発現がアップレギュレートしている、請求項1~7のいずれか一項に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項9】
前記チェックポイント阻害剤は抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA4抗体であり、前記必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47の発現がアップレギュレートしている、請求項1~8のいずれか一項に記載の必要とする対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ド及び1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む組合せ医薬。
【請求項10】
対象の結腸がん、大腸がん又は乳がんの治療に使用するための、WNT5Aペプチ
ドを含む医薬組成物であって、
前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に応答し、
前記対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント分子の発現がアップレギュレートしており、
前記WNT5Aペプチドは
ヘキサペプチドMDGCEL(配列番号3)又はそのホルミル化誘導
体である、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェックポイント阻害剤に応答する対象のがんを治療するためのWNT5Aペプチド又はその誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系とがんとの関係は長い間検討されてきた。免疫系は、「非自己」及び過剰発現した抗原を検出することにより、病原体又は感染細胞/悪性細胞から個体を防御し、宿主を保護しながら、病原体又は感染細胞/悪性細胞を破壊し、その後の防御のために、適応免疫応答による免疫記憶を進める。
【0003】
チェックポイント阻害剤(ICI)は、いわゆる免疫チェックポイント分子を阻害する薬剤である。免疫チェックポイントリガンドは、腫瘍細胞や免疫抑制細胞の表面に現れ、同族分子(cognate molecule)は、T細胞やナチュラルキラー細胞といった腫瘍と反応する免疫系細胞の表面に現れる。これらの分子は、免疫応答を弱め、免疫系の過剰な活性化を防ぐのに役に立つ。がん特異的T細胞が免疫チェックポイント分子によって阻害されない場合、このT細胞はがん細胞を殺す。T細胞又はがん細胞で見られる免疫チェックポイント分子には、PD-1及びそのリガンドであるPD-L1、並びにB7-1/B7-2との結合について共刺激分子CD28と競合するCTLA-4が含まれる。
【0004】
多くの免疫チェックポイント分子は特定の分子とリガンドの間の相互作用を調節するので、モノクローナル抗体又は他の薬剤を使用してこの相互作用を阻止し、免疫抑制を防ぐことができる。したがって、免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の阻害を引き起こすチェックポイントタンパク質をブロックする能力に基づいて、がんの治療に用いられる。現在知られているICIは、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4;イピリムマブ)、プログラム細胞死1(PD-1;ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ)又はプログラム細胞死1リガンド(PD-L1;アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)をブロックする。
【0005】
例えば感染した場合、免疫チェックポイント分子に関係する一部のタンパク質は、例としてB7-1/B7-2を使用し、共刺激受容体CD28を介するシグナル伝達によりT細胞が活性化するように指示するのに有効である。しかし、T細胞は、あまりにも長期間活性化するか、標的と不適切に反応する場合、健康な細胞や組織を破壊し始めることがあり、免疫チェックポイント分子であるCTLA-4は、CD28とB7-1/B7-2の間の相互作用をブロックする。
【0006】
いくつかのがん細胞は、T細胞ががん細胞を攻撃することが予定されている場合に、T細胞を不活化するチェックポイントタンパク質リガンドを多量に産生する。したがって、そのようながん細胞は免疫系の停止ボタンを押している。これは、ICI療法に応答しやすいがん患者である。チェックポイント阻害剤による治療に応答する割合は比較的低く、がんの種類に応じて15~40%である。
【0007】
一次耐性及び獲得耐性は、ある種のがんの患者の転帰をさらに改善するための鍵となる臨床的な障壁で、それぞれの根底にある既知のメカニズムには、がんの免疫サイクルのさまざまな要素及び複数のシグナル伝達分子と伝達経路の間の相互作用が含まれる。この複雑さのため、耐性のメカニズムに関する現在の知識はまだ不完全である。治療に対する耐性を克服するには、腫瘍による免疫回避の根底にあるメカニズムを完全に理解する必要がある。
【0008】
組合せ療法が試みられてきた。例えば、チェックポイント阻害剤と組み合わせた放射線療法や、チェックポイント阻害剤同士の組合せによる治療が試験されてきた。このような治療法の欠点は、患者にとって、組合せ療法は単一の治療法よりも毒性が高いかもしれないということである。
【0009】
このような背景において、患者に対し、毒性がないか少なく、適合性のある治療薬を投与することを含む治療法であって、がんを治療する改善された治療法を提供することが、本発明の目的である。チェックポイント阻害剤の効果を改善することが、本発明のさらなる目的である。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第一の側面によれば、必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体であって、前記WNT5AペプチドはXADGXBEL(配列番号2;式中、XAはメチオニン(M)又はノルロイシンであり、XBはシステイン(C)又はアラニン(A)である)又はそのホルミル化誘導体を含み、前記ペプチドの全長は50アミノ酸以下であり、前記ペプチド及び前記チェックポイント阻害剤は、組み合わせられているか若しくは別個であり、及び/又は、同時に若しくは連続して投与される、1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体が提供される。前記WNT5Aペプチドのグリシンを除くアミノ酸残基はL-又はD-立体異性体である。
【0011】
1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせた上記のWNT5Aペプチド及び誘導体は腫瘍の増殖を抑制し、したがって特定の対象のがんの治療に使用できることが見いだされた。現在、WNT5Aペプチドはがん細胞上のチェックポイント分子の発現量を低下させると考えられている。チェックポイント分子の発現が少ないということは、必要なチェックポイント阻害剤の量が少ないか、又は有効性が高くなる可能性を意味する。しかし、この根底にあるメカニズムは、現時点ではよく理解されていない。
【0012】
ある態様では、前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に感受性であるか応答する。免疫チェックポイント阻害剤に対する応答は、腫瘍細胞又は浸潤免疫細胞及びそれらの対応細胞のいずれかで、チェックポイント分子、好ましくはCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47が発現している対象として理解されるべきである。
【0013】
ある態様では、WNT5Aペプチドの全長は20アミノ酸以下である。
【0014】
ある態様では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-L1及びCD47、最も好ましくはCD47からなるがこれらに限定されない群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤である。別の態様では、チェックポイント阻害剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-L1抗体及び/又は抗CD47抗体といった抗体である。チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブ若しくはトレメリムマブ、ニボルマブといったPD-1遮断抗体、若しくは抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ若しくはペムブロリズマブ又はこれらの組合せが考えられる。
【0015】
イピリムマブは、完全ヒト抗CTLA-4モノクローナル抗体(IgG1κ)の国際一般名称(INN)又は一般名(common name)で、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。イピリムマブの商品名はヤーボイ(登録商標)である。
【0016】
トレメリムマブは、CTLA-4に対する完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0017】
ニボルマブは、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体(HuMAb)の国際一般名称又は一般名で、プログラム細胞死-1(PD-1)受容体に結合して、プログラム細胞死1リガンド(PDL1)及びプログラム細胞死2リガンド(PD-L2)との相互作用をブロックし、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。ニボルマブの商品名はオプジーボ(登録商標)である。
【0018】
アテゾリズマブは、Fcが改変され、ヒト化されたIgG1抗プログラム細胞死1リガンド(PD-L1)モノクローナル抗体の国際一般名称又は一般名で、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。アテゾリズマブの商品名はテセントリク(登録商標)である。
【0019】
アベルマブは、免疫調節細胞表面リガンドタンパク質PD-L1に対するヒトモノクローナルIgG1抗体の国際一般名称又は一般名で、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。アベルマブの商品名はバベンチオ(登録商標)である。
【0020】
デュルバルマブは、PD-1とPD-L1の結合を遮断することによって、抗腫瘍応答を含むT細胞応答を増強する抗腫瘍モノクローナル抗体の国際一般名称又は一般名で、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。デュルバルマブの商品名はイミフィンジ(登録商標)である。
【0021】
ペムブロリズマブは、ヒト化モノクローナル抗プログラム細胞死-1(PD-1)抗体(Fc領域に安定化配列変異を有するIgG4/κアイソタイプ)の国際一般名称又は一般名で、現在、組換えDNA技術によってチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞で製造されている。ペムブロリズマブの商品名はキイトルーダ(登録商標)である。
【0022】
必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体は、使用するチェックポイント阻害剤の量を、WNT5Aを同時に又は連続して投与しない場合の量と比較して減らすことを可能にする。その結果、副作用が低減するので、本発明のこの相乗効果は、患者のコンプライアンスの観点から特に有益である。
【0023】
乳がん、結腸がん及び前立腺がんの腫瘍におけるWNT5Aの低発現は、患者での再発の増加及び生存期間の短縮と相関している(Mehdawi LM, Prasad CP, Ehrnstroem R, Andersson T, Sjoelander A, Non-canonical WNT5A signaling up-regulates the expression of the tumor suppressor 15-PGDH and induces differentiation of colon cancer cells. Mol Oncol. 2016 Nov;10(9):1415-1429)。
【0024】
非古典的なWNT5Aシグナル伝達は、腫瘍抑制因子15-PGDHの発現をアップレギュレートし、結腸がん細胞の分化を誘導する。
【0025】
WNT5Aは、体内においてこれらのがん細胞の遊走を阻止することが知られており、組換えWNT5Aの添加は、これらの細胞の遊走を損なうことが示されている。好ましくは、がんは大腸がんのような結腸がん又は乳がんである。
【0026】
がんに罹患していると診断された対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及びCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント分子の発現が、正常な細胞と比較して、アップレギュレートしている可能性がある。
【0027】
WNT5Aペプチドは、抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA4抗体と共に適切に投与され、ここで、必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4及び/又はPD-L1の発現がアップレギュレートしている。
【0028】
本発明において、発現のアップレギュレーションとは、WNT5Aペプチド又はFoxy-5による処置などの外部からの刺激に応答して、細胞がCTLA-4及び/又はPD-L1といった成分を増加させることを意味する。このような成分の減少を伴う相補的なプロセスは、ダウンレギュレーションと呼ばれる。
【0029】
必要とする対象のがんの治療に使用されるWNT5Aペプチド及び誘導体の少なくとも1つのペプチドは、
MDGCEL(配列番号3)、
GMDGCEL(配列番号4)、
EGMDGCEL(配列番号5)、
SEGMDGCEL(配列番号6)、
TSEGMDGCEL(配列番号7)、
KTSEGMDGCEL(配列番号8)、
NKTSEGMDGCEL(配列番号9)、
CNKTSEGMDGCEL(配列番号10)、
LCNKTSEGMDGCEL(配列番号11)、
RLCNKTSEGMDGCEL(配列番号12)、
GRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号13)、
QGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号14)、
TQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号15)、
GTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号16)及び
LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号17)
からなる群から選択される。
【0030】
ある態様では、必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチドは、ヘキサペプチドMDGCEL又はそのホルミル化誘導体である。このホルミル化誘導体は、本明細書ではFoxy-5と呼ばれることがある。
【0031】
別の側面によれば、WNT5Aペプチド又はその誘導体は、対象のがんの治療に使用され、前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に応答し、前記WNT5AペプチドはXADGXBEL(配列番号2;式中、XAはメチオニン(M)又はノルロイシンであり、XBはシステイン(C)又はアラニン(A)である)又はそのホルミル化誘導体を含み、前記ペプチドの全長は50アミノ酸以下である。
【0032】
ある態様では、がんに罹患していると診断された対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及びCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント物質の発現がアップレギュレートしている。
【0033】
本発明は、非限定的な実施態様の例と図面を参照して、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、Foxy-5及びICIの組合せ処置の、4T1乳がん細胞に特異的なT細胞応答への影響を示す。MuLVgp70ペプチド刺激後にIFNγスポット形成細胞をカウントした。
【
図2a】
図2a-2dは、BALB-Cマウスに4T1乳がん細胞を皮下移植した後に、ICI及びFoxy-5による処置を行った場合と行わなかった場合の腫瘍の体積を示す。
【
図2b】
図2a-2dは、BALB-Cマウスに4T1乳がん細胞を皮下移植した後に、ICI及びFoxy-5による処置を行った場合と行わなかった場合の腫瘍の体積を示す。
【
図2c】
図2a-2dは、BALB-Cマウスに4T1乳がん細胞を皮下移植した後に、ICI及びFoxy-5による処置を行った場合と行わなかった場合の腫瘍の体積を示す。
【
図2d】
図2a-2dは、BALB-Cマウスに4T1乳がん細胞を皮下移植した後に、ICI及びFoxy-5による処置を行った場合と行わなかった場合の腫瘍の体積を示す。
【
図3】
図3は、(ウエスタンブロットとその後のデンシトメトリーによる)マウストリプルネガティブ4T1乳がん細胞上のCD47発現に対するFoxy-5の影響を示す。
【
図4】
図4は、(ウエスタンブロットとその後のデンシトメトリーによる)マウストリプルネガティブ4T1乳がん細胞上のPD-L1発現に対するIFNγ及びFoxy-5の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
WNT(Wingless-related integration site)タンパク質ファミリーには、体軸のパターン形成といった胚発生、細胞増殖、遊走などに関与する高度に保存されたタンパク質が含まれる。WNTシグナル伝達経路は、古典的経路又は非古典的経路で、主に、細胞内の古典的シグナル伝達を介し、遺伝子転写及び増殖の調節を、又は細胞内の異なる非古典的シグナル伝達経路の活性化を介し、増殖以外の機能の調節を引き起こす。WNTタンパク質は、さらに、成人の骨髄、皮膚及び腸の組織再生に関与している。WNTシグナル伝達経路における遺伝子の変異は、乳がん、前立腺がん、神経膠芽腫、II型糖尿病及び他の疾患を引き起こす可能性がある。
【0036】
古典的WNT経路は、β-カテニンを活性化し、正常な幹細胞の自己複製の調節には不可欠で、古典的WNTシグナル伝達の崩壊は腫瘍形成に影響がある。これに対して、非古典的なWNTシグナル伝達は、β-カテニンシグナル伝達が増加しないことを特徴とし、胚のパターン形成、原腸陥入及び器官形成における役割について研究されてきた。さらに、非古典的WNTは、古典的なシグナル伝達に拮抗することが提案されている。WNT5Aは、非古典的なWNTリガンドの一例である。WNT5Aは、急性骨髄性白血病(AML)、大腸がんを含む結腸がん、乳がん、前立腺がん及び卵巣がんにおいて腫瘍抑制性である。
【0037】
WNT5Aは、体内の多くの正常細胞で発現するタンパク質である。WNT5Aは細胞から分泌され、主にFrizzled受容体を含む受容体複合体に結合し活性化することによって、同じ細胞又は隣接する細胞に対して作用する。WNT5Aタンパク質がさまざまなFrizzled受容体を活性化することは知られている。Frizzled 5受容体の活性化により、細胞内のシグナル伝達が活性化され、最初に生じることの一つは、細胞内カルシウムの短期間の増加、いわゆるカルシウムシグナル伝達の生成である。カルシウムシグナル伝達は、次いで、接着や移動といった細胞機能の変化に繋がるシグナル伝達を引き起こす。したがって、そのようなFrizzled受容体の活性化により、細胞内でシグナル伝達が生じ、隣接する細胞への細胞の接着が増加し、この周囲の結合組織への接着により、腫瘍細胞がリンパ節や血管といった近くの構造に移動する能力が低下する。例えば、健康な乳房上皮細胞では、多くのWNT5Aが発現しており、細胞と周囲の基底膜が強固に接着し、それにより細胞の移動を制限する。
【0038】
内因性のWNT5Aの発現を欠くがん組織におけるWNT5Aシグナル伝達を再構成するために、WNT5A分子のアミノ酸配列に由来する20アミノ酸以下の小さなペプチドが開発され、さらに修飾されている。このようなペプチドの例はFoxy-5で、これはWNT5Aと同じシグナル伝達事象及び機能的応答を引き起こすという点で真のWNT5Aアゴニストで、WNT5Aと比較するとはるかに単純な分子であり、全身投与が可能で、その上、腫瘍組織に到達可能である。したがって、本明細書において、用語「シグナル伝達特性」は、WNT5A又はFoxy-5ペプチドが、まずFrizzled受容体タンパク質(Fz)に結合し、細胞内シグナル伝達カスケードが、最終的にPD-L1、CTLA4及びCD47などのチェックポイント分子の減少をもたらすことを意味する。よって、Foxy-5を含むWNT5Aペプチドは、WNT5Aの機能を模倣するアゴニストで、WNT経路阻害剤ではない。
【0039】
本明細書において、用語「周囲の非がん細胞」は、腫瘍と起源が同じ細胞であって、腫瘍組織を包囲する又は取り巻く、形態学的に正常な細胞を意味する。
【0040】
用語「チェックポイント」は、腫瘍細胞、T細胞又はNK細胞が発現するいずれかのタンパク質と定義される。腫瘍細胞が発現するタンパク質は、特定のタンパク質の名称に「L」を伴って示される(例.PD-L1)ように、チェックポイントリガンドとして具体的に示されることもある。
【0041】
用語「チェックポイント阻害剤」は、上記腫瘍細胞、T細胞又はNK細胞のいずれかが発現するチェックポイントタンパク質に特異的に結合する分子として定義される。
【0042】
用語「発現のアップレギュレーション」は、WNT5Aペプチド又はFoxy-5による処理といった外部刺激に曝露されていない細胞と比較して、そのような外部刺激に応答した細胞内のCTLA-4及び/又はPD-L1といった成分の量の増加として理解されるべきである。
【0043】
用語「免疫チェックポイント阻害剤に応答する又は感受性である」は、チェックポイント、好ましくは腫瘍細胞又は浸潤免疫細胞が発現するCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47、並びにそれらの対応物、を有する対象として理解されるべきである。
【0044】
用語「アゴニスト」は、他の物質の生理学的作用を妨害又は阻害する物質であるアンタゴニストとは対照的に、受容体と組み合わされた場合に生理学的応答を開始する物質として理解されるべきである。
【実施例】
【0045】
実施例1(プロトコル LEV197)
目的: BALB/cマウスにおいて腫瘍移植と免疫療法後に誘発されたがん抗原に対する免疫応答の分析
Envigoから6~8週齢の動物を購入し、到着後1週間以上休ませてから実験を行った。
【0046】
【0047】
・腫瘍移植:第0日:100μL中に5×104の4T1-Luc細胞、皮下
・Foxy-5投与(腹腔内、100μl、一匹につき40μg):第0、4,8、12,16日 → 一匹につき合計200μg
・大部分の腫瘍が触知できる時点:PD-L1(BioXcell BE0146)及びCTLA-4(BioXcell BE0164)の投与(腹腔内、100μl):
・1回目:PD-L1-200μg/CTLA4-200μg
・2回目:PD-L1-200μg/CTLA4-100μg
・3回目:PD-L1-200ug/CTLA4-100μg
・マウスを安楽死
【0048】
結果を
図1に示す。
結論: Foxy-5とCTLA-4又はPD-L1阻害剤の組合せ処置による4T1に特異的なT細胞応答は、皮下腫瘍においてex vivoで直接観察できた。PBSのみ又は単一の薬剤で処置した動物と比較して、薬剤を組み合わせて処置した動物ではMuLVgp70ペプチド刺激後にIFNγスポット形成細胞が増加した。
【0049】
実施例2(プロトコル LEV221)
目的: BALB/cマウスにおいて腫瘍移植と免疫療法後に誘発されたがん抗原に対する免疫応答の分析
【0050】
【0051】
・腫瘍移植:第0日:100μL中に5×105の4T1細胞、皮下
・Foxy-5投与(腹腔内、100μl、一匹につき40μg):第0、4,8、12,16 → 一匹につき合計200μg必要
・第8、12及び16日に、PD-L1(BioXcell BE0146)及びCTLA-4(BioXcell BE0164)を投与(腹腔内、100μl):
・1回目:PD-L1-200μg/CTLA4-200μg
・2回目:PD-L1-200μg/CTLA4-100μg
・3回目:PD-L1-200ug/CTLA4-100μg
・第17日にマウスを安楽死
【0052】
結果を
図2a~dに示す。
結論: 多くの4T1luc細胞を移植した場合、PD-L1阻害剤及びCTLA-4阻害剤のよる処置群の腫瘍増殖が有意に減少した(最後の2回の測定でp<0.05)が、最も驚くべきことに、Foxy-5/ICI組合せ処置群では累積を超えた。
【0053】
実施例3(図3及び4)
目的: Foxy-5と呼ばれるWNT5Aアゴニストの、乳がん及び結腸がん細胞の細胞表面におけるPD-L1及びCD47の発現を低下させる能力の調査
「私を食べないでください」というシグナルを生成する抗食作用細胞表面分子CD47は、さまざまな腫瘍の間で広く過剰発現していることは十分に確立されている。
【0054】
WNT5Aシグナル伝達とCD47発現の関係を、トリプルネガティブでWNT5A陰性の乳がん細胞株4T1で調べた。この細胞において、Foxy-5による刺激(24時間、n=4)でCD47の実質的な発現が有意に減少した。
【0055】
次に、4T1細胞におけるPD-L1の発現に、Foxy-5がどのように影響するかを調べた。組織培養中で刺激されていない4T1細胞は、限られた量のPD-L1しか発現しなかった。そこで、腫瘍微小環境にあるがん細胞で、PD-L1の既知の誘導因子であるインターフェロンγ(IFNγ)による事前刺激(6時間)を行った。IFNγで事前に刺激し、その後、刺激がない状態で一晩「休止」させた細胞を、Foxy-5で刺激した(24時間)。
【0056】
結論: CD47は、ヒトのがん治療における免疫治療の標的としてPD-1/PD-L1ほど調査されていないが、免疫抑制チェックポイントであることは知られている。
図3の結果は、Foxy-5がCD47の発現を低下させ、それにより、がん治療での使用を手助けすることを示唆している。
【0057】
IFNγ刺激細胞では、Foxy-5による処理で、PD-L1の発現が有意に減少した(
図4、n=5)。これらの結果は、併用療法におけるFoxy-5の役割を裏付けており、PD-L1遮断を補うためのPD-L1発現を低下させることにより、そして、特にPD-L1遮断と相乗的に作用することが知られているCD47を阻害することにより、チェックポイント阻害剤による既存の治療を促進する。
【0058】
CD47の遮断は、ヒトで有効な水準に達するためには非常に高用量を必要とするので、低分子によってCD47の発現を減らすことは非常に価値がある。
【0059】
実施例4
目的: さまざまな乳がん細胞株を用いた機能的免疫応答アッセイによるFoxy-5及び抗PD-L1抗体の単独又は組合せによる細胞毒性効果の調査
【0060】
方法
末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll Paqueベースの密度遠心分離により全血から分離した。SKBR3(PD-L1 低、PD-L1+と表記)又はHCC1954(PD-L1 高、PD-L1+++と表記)細胞を0.1mM* CFSEで染色した。エフェクター細胞(EC)、すなわちPMMC、及び、標的細胞(TC)、すなわちSKBR3又はHCC1954細胞を、それぞれ、濃度2×105細胞/mlとした。細胞を、Foxy-5(100μM)の存在下又は非存在下で処理し、また、ペムブロリズマブ(10μg/μl)の存在下又は非存在下でも処理した。細胞を、基底細胞死対照及び全細胞死対照とともに、EC:TCが、1:1(左のバー)、5:1(中央のバー)及び10:1(右のバー)でプレーティングした。プレーティング後、細胞をスピンダウンし、12時間インキュベートした。12時間後、細胞を5μg/mlの7AADに再懸濁した。次いで、細胞をGuavaフローサイトメーターで分析した。染色パターンに基づいて、生/死細胞及び免疫/がん細胞を区別し、細胞死の割合から直接的な細胞毒性を計算した。
【0061】
SKBR3細胞株における結果-
図5
A.SKBR3 ビヒクル対照と比較した細胞毒性
ビヒクル対照と比較した、Foxy-5及び/又はペムブロリズマブの存在下におけるPBMCが誘発するSKBR3細胞株に対する直接的な細胞毒性。EC:TCは、1:1(左のバー)、5:1(中央のバー)及び10:1(右のバー)である。エラーバーは3回の実験の標準偏差である。スチューデントt検定により統計的有意性を決定した。
*はp<0.05を示す。
【0062】
B.SKBR3 組合せ対単剤
いずれかの処置単独と比較した、Foxy-5及び/又はペムブロリズマブの存在下におけるPBMCが誘発するSKBR3細胞株に対する直接的な細胞毒性。EC:TCは、1:1(左のバー)、5:1(中央のバー)及び10:1(右のバー)である。エラーバーは3回の実験の標準偏差である。スチューデントt検定により統計的有意性を決定した。*はp<0.05を示す。
【0063】
HCC1954細胞株における結果-
図6
A.HCC1954 ビヒクル対照と比較した細胞毒性
ビヒクル対照と比較した、Foxy-5及び/又はペムブロリズマブの存在下におけるPBMCが誘発するHCC1954細胞株に対する直接的な細胞毒性。EC:TCは、1:1(左のバー)、5:1(中央のバー)及び10:1(右のバー)である。エラーバーは3回の実験の標準偏差である。スチューデントt検定により統計的有意性を決定した。
*はp<0.05を示す。
【0064】
B.HCC1954 組合せ対単剤
いずれかの処置単独と比較した、Foxy-5及び/又はペムブロリズマブの存在下におけるPBMCが誘発するSKBR3細胞株に対する直接的な細胞毒性。EC:TCは、1:1(左のバー)、5:1(中央のバー)及び10:1(右のバー)である。エラーバーは3回の実験の標準偏差である。スチューデントt検定により統計的有意性を決定した。*はp<0.05を示す。
【0065】
結果のさらなる説明
SKBR3(PD L1低)
ビヒクル対照との比較: Foxy-5単独ではPBMCに対する直接的な細胞毒性又はトラスツズマブを介したADCCに影響を与えなかった。ペムブロリズマブ単独では、PBMCに対する直接的な細胞毒性が10:1の比率で増加し、トラスツズマブを介したADCCが10:1の比率で減少し、また、5:1のFoxy-5+ペムブロリズマブは、3つの比率(1:1、5:1及び10:1)全てでPBMCに対する直接的な細胞毒性が増加した。
【0066】
組合せ対単剤: Foxy-5とペムブロリズマブの組合せは、3つの比率全てで直接的な細胞毒性が増加した。
【0067】
HCC1954(PD L1高)
ビヒクル対照との比較: Foxy-5単独で、PBMCに対する直接的な細胞毒性が5:1及び10:1の比率で増加した。ペムブロリズマブ単独では、PBMCに対する直接的な細胞毒性が5:1及び10:1の比率で増加した。Foxy-5+ペムブロリズマブは、3つの比率全てでPBMCに対する直接的な細胞毒性が増加し、トラスツズマブを介したADCCが5:1及び10:1の比率で減少した。Foxy-5は、単独で、及びペムブロリズマブと組み合わせて使用した場合、全体的な細胞毒性を1:1及び5:1の比率で増加させた。
【0068】
組合せ対単剤: Foxy-5は、ペムブロリズマブに1:1及び5:1の比で添加した場合、直接的な細胞毒性及び全体的な細胞毒性を増加させた。ペムブロリズマブは、Foxy-5に1:1及び10:1の比で添加した場合、直接的な細胞毒性を増加させた。
【0069】
【0070】
結論
PD-L1チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブとFoxy-5を組み合わせてPKBR3細胞及びHCC1954細胞を処置した場合、がん細胞に対して細胞毒性であることが示され、また、2つの薬剤の組合せは、細胞を薬剤で別々に処理した場合よりも、細胞に対する毒性が高くなることが示された。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体であって、
前記WNT5AペプチドはX
A
DGX
B
EL(配列番号2)
[式中、X
A
はメチオニン(M)又はノルロイシンであり、X
B
はシステイン(C)又はアラニン(A)である]
又はそのホルミル化誘導体を含み、
前記ペプチドの全長は50アミノ酸以下であり、
前記ペプチド及び前記チェックポイント阻害剤は、組み合わせられているか若しくは別個であり、及び/又は、同時に若しくは連続して投与される、
1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[2] 前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に応答する、[1]に記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[3] 前記少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1及びCD47からなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤である、[1]又は[2]に記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[4] 前記チェックポイント阻害剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び/又は抗CD47抗体である、[1]~[3]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[5] 前記抗CTLA4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、[4]に記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[6] 前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はペムブロリズマブである、[4]に記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[7] 使用するチェックポイント阻害剤の量が、WNT5Aを同時に又は連続して投与しない場合の量と比較して減少する、[1]~[6]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[8] 前記がんは大腸がん又は乳がんである、[1]~[7]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[9] 前記必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント分子の発現がアップレギュレートしている、[1]~[8]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[10] 前記チェックポイント阻害剤は抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA4抗体であり、前記必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47の発現がアップレギュレートしている、[1]~[9]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[11] 前記WNT5Aペプチドは、
MDGCEL(配列番号3)、
GMDGCEL(配列番号4)、
EGMDGCEL(配列番号5)、
SEGMDGCEL(配列番号6)、
TSEGMDGCEL(配列番号7)、
KTSEGMDGCEL(配列番号8)、
NKTSEGMDGCEL(配列番号9)、
CNKTSEGMDGCEL(配列番号10)、
LCNKTSEGMDGCEL(配列番号11)、
RLCNKTSEGMDGCEL(配列番号12)、
GRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号13)、
QGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号14)、
TQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号15)、
GTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号16)及び
LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号17)
からなる群から選択される、[1]~[10]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[12] 前記WNT5Aペプチドは、ヘキサペプチドMDGCEL(配列番号3)である、[1]~[11]のいずれかに記載の必要とする対象のがんの治療に使用するための1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせたWNT5Aペプチド。
[13] 対象のがんの治療に使用するためのWNT5Aペプチド又はその誘導体であって、
前記対象は免疫チェックポイント阻害剤に応答し、
前記WNT5AペプチドはX
A
DGX
B
EL(配列番号2)
[式中、X
A
はメチオニン(M)又はノルロイシンであり、X
B
はシステイン(C)又はアラニン(A)である]
又はそのホルミル化誘導体を含み、
前記ペプチドの全長は50アミノ酸以下である、
WNT5Aペプチド又はその誘導体。
[14] 前記必要とする対象は、腫瘍におけるCTLA-4、PD-L1及び/又はCD47からなる群から選択される1つ以上の免疫チェックポイント分子の発現がアップレギュレートしている、[13]に記載のがんの治療に使用するためのWNT5Aペプチド又はその誘導体。
[15] 前記WNT5Aペプチドは、
MDGCEL(配列番号3)、
GMDGCEL(配列番号4)、
EGMDGCEL(配列番号5)、
SEGMDGCEL(配列番号6)、
TSEGMDGCEL(配列番号7)、
KTSEGMDGCEL(配列番号8)、
NKTSEGMDGCEL(配列番号9)、
CNKTSEGMDGCEL(配列番号10)、
LCNKTSEGMDGCEL(配列番号11)、
RLCNKTSEGMDGCEL(配列番号12)、
GRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号13)、
QGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号14)、
TQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号15)、
GTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号16)及び
LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL(配列番号17)
からなる群から選択される、[13]又は[14]に記載のがんの治療に使用するためのWNT5Aペプチド又はその誘導体。
【配列表】