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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】交通制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/07 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G08G1/07 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022082062
(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公開番号】P2023170366
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593202025
【氏名又は名称】株式会社エイビット
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】檜山 竹生
(72)【発明者】
【氏名】小林 充生
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067234(JP,A)
【文献】特開2018-092236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバと、制御装置と、車両認識装置と、表示器とが無線通信網に接続され、前記制御装置は表示入力部と通行可否決定部を有し、前記表示器と車両認識装置は工事区間の両端に設置されて、前記車両認識装置はカメラと、車種パタン記憶部と、台数認識部とを内蔵し、該カメラで撮影された画像より前記車種パタン記憶部の情報をもとに前記工事区間へ進入しようとしてくる車両を検知し、前記台数認識部で、車両の台数を認識するとともに前記工事区間内に存在する車両を認識し、認識された車両台数と車両の存否情報が、前記制御装置に内蔵された通行可否決定部に無線送信され、前記通行可否決定部は、前記工事区間の両端に進入してくる車両への進入許可・不許可を判断し、判断した結果を前記工事区間両端の表示器に無線送信し、該表示器は車両の進入許可・不許可を表示するとともに、前記制御装置にある通行可否決定部はタイマを具備し、車両の進入許可時間、不許可時間が、工事開始時に、タイマ値として初期設定され、該初期設定されたタイマ値は、その後、前記認識された車両台数をもとに、車両の通行量の実績に応じて適宜修正されるとともに、前記表示入力部からも通行可否の操作を可能とし、工事区間の通行履歴は、通行可否決定部の決定履歴情報として前記管理サーバに送信されることを特徴とする交通制御システム。
【請求項2】
管理サーバと、制御装置と、車両認識装置と、表示器とが無線通信網に接続され、前記管理サーバは通行可否決定部を有し、前記制御装置は表示入力部を有し、前記表示器と車両認識装置は、工事区間の両端に設置されて、前記車両認識装置はカメラと、車種パタン記憶部と、台数認識部とを内蔵し、該カメラで撮影された画像より前記車種パタン記憶部の情報をもとに前記工事区間へ進入しようとしてくる車両を検知し、前記台数認識部で、車両の台数を認識するとともに前記工事区間内に存在する車両を認識し、認識された車両台数と車両の存否情報が、前記管理サーバに内蔵された通行可否決定部に無線送信され、前記通行可否決定部は、前記工事区間の両端に進入してくる車両への進入許可・不許可を判断し、判断した結果を前記工事区間両端の表示器に無線送信し、該表示器は車両の進入許可・不許可を表示するとともに、前記管理サーバにある通行可否決定部はタイマを具備し、車両の進入許可時間、不許可時間が、工事開始時に、タイマ値として初期設定され、該初期設定されたタイマ値は、その後、前記認識された車両台数をもとに、車両の通行量の実績に応じて適宜修正されるとともに、前記表示入力部からも通行可否の操作を可能とし、工事区間の通行履歴は、通行可否決定部の決定履歴情報として前記管理サーバで管理されることを特徴とする交通制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、無線通信網に接続された投光装置が工事区間の両端に設置され、前記投光装置は、光量制御部と、投光器を具備し、前記車両認識装置に設けられた照度判定部の情報をもとに、前記投光装置の投光器への光量を制御することを特徴とする交通制御システム。
【請求項4】
請求項3において、前記車両認識装置は照度計を具備し、該照度計の出力情報をもとに照度判定部での判定に活用することを特徴とする交通制御システム。
【請求項5】
請求項3において、前記管理サーバがカレンダ情報を有し、該管理サーバから提供されるカレンダ情報をもとに前記照度判定部内での判定に活用することを特徴とする交通制御システム。
【請求項6】
請求項3において、前記工事区間に住宅地が存在するときは、前記投光装置の投光器への光量を低下するとともに前記車両認識装置が具備する認識感度調整部で認識感度の調整を行うことを特徴とする交通制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
道路工事などにより片側通行とされている車両の通行路への進入管理を電子的に制御し、人による誘導操作作業量を軽減する交通制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、片側通行路の両端には、各々車両の進入を誘導する誘導員が配置され、両端の誘導員が、進入してくる車両の台数を見ながら、相互に連絡を取り、車両の進入の許可、不許可の指示を行っている。この人手による交通誘導をできるだけ自動化すべく、技術開発が行われていて、特許出願も行われている。
【0003】
特許文献1には、車両通過センサを用いて、工事区間に進入してくる車の台数や工事区間から脱出する車の台数をカウントし、円滑に誘導する方法、特許文献2には、カメラで撮影した画像から車両の台数を、より正確に求めるための方法が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-67234
【文献】特開2012-37964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人手による交通誘導をできるだけ自動化するに際し、車両の待ち時間を、できるだけ少なくするとともに交通渋滞を生起させないよう配慮した交通制御を行う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
相互の通行時間を、タイマを利用した設定とするも、カメラで撮影した画像から、進入してくる車両の台数を推定するとともに、工事中でない平常時の車両の通行量、工事区間両端から交通信号のある交差点までの長さ、タイマ値と通行量との実績を見ながら、タイマ値を、より適した値に修正していくことで、工事区間への車両の進入の許可、不許可を決める。
【発明の効果】
【0007】
停止信号による待ち時間を、実際の交通量により最適な時間に設定することができ、円滑な通行が可能になり、運転者の待ち時間も最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の工事区間の模様を示す図である。
図2】本発明による車両認識装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明による車両認識装置内にある認識部の内部構成を示す図である。
図4】本発明による制御装置の内部構成を示す図である。
図5】本発明による表示器の内部構成を示す図である。
図6】本発明による工事区間と工事区間の手前の交通信号機との間が車両で一杯になっている状況を示す図である。
図7】本発明による車両認識装置、制御装置、表示器が無線通信網により接続される形態を示す図である。
図8】本発明による投光装置の内部構成を示すブロック図である。
図9】本発明による第2の実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明を説明する。
【0010】
本発明の一実施態様として、片側1車線の道路で、片側の道路が工事中で、車は工事中車線の他のひとつの車線しか走行できないケースで、車線が直線的な例を取り上げる。
【0011】
図1において、斜線で描かれている箇所が工事個所、1は車両認識装置、2は制御装置、3は表示器である。図1に示す交互通行路は、工事個所でなく、車両が走行する車線であり、交互通行路と工事個所を合わせて、本発明では工事区間と呼ぶ。
【0012】
工事区間の両端には、通行可・不可を青、赤で示す表示器3と車両認識装置1が設置されている。表示器3と、車両認識装置1は、物理的に少し離れた位置に別筐体で設置されてもよく、同じ個所で同一筐体に収納されてもよい。図1では工事区間の一部に制御装置2が置かれ、この制御装置2は、後記するが、車両認識装置1の出力にもとづき工事区間の両端から車両の進入を許可するかどうかの判定を行い、判定結果を表示器3に送るもので、タブレット端末のような形状のもので構成可能である。工事監督者が、工事区間の一部に設けた車両の停車部に工事監督車両が停車され、その中で、工事監督者は、制御装置2を見ながら、交互通行路の車両の通過状況を観察し、場合によっては、車両から車道に出て、交通整理など必要な処置を行う。人手による交通誘導では、工事区間の両端に誘導員を配置することが必要になるが、本発明においては、2人の誘導員の配置を不要とし、工事監督者1名の配置でよい。なお、工事区間が長い場合は、工事監督者の補佐要員を配置することが望まれる。工事監督車両の停車箇所は図1に示すような工事区間の一部であることは必ずしも必要ではなく、工事区間の一方の端(例えば図1の斜線で示す工事箇所の隣側)でもよい。制御装置2と、2つの表示器3、車両認識装置1は、図7に示すように無線通信網5に接続され情報交換される。無線通信方式としては各々がLTEや5Gのような公衆無線通信網を用いて接続されてもよく、ローカル5GやLPWAのような自営の無線通信網を用いてもよい。道路工事の箇所として山間部のケースもあり、山間部は一般的に公衆無線通信網の通信の安定性が劣る箇所もあるので、その場合は自営の無線通信網を使用することになろう。なお、無線通信網5には管理サーバ4が接続され、管理サーバ4では後記する工事区間での車両の認識履歴(通行可否決定部の決定履歴)や工事区間の平時の通行量、日照時間などが情報管理されている。
【0013】
図2は車両認識装置1の構成を示すもので、11はカメラ1、12はカメラ2、13はマイク、14は認識部、15は台数認識部、16は緊急車種認識部、17は照度計、23は無線通信部である。11のカメラ1は工事区間に進入してくる車両を撮影するカメラ、12のカメラ2は交互通行路を走行する車両を撮影するカメラである。カメラ1、カメラ2は各々が撮像素子を搭載する方法や一つの撮像素子を180度回転させ、カメラ1の機能、カメラ2の機能を発揮するようにしてもよい。カメラ1の画像からは、工事区間に進入してくる車両の台数(以下、進入台数)、カメラ2の画像から交互通行路を走行している車両の台数(以下、走行台数)が台数認識部15で検知される。
【0014】
ここで、撮影間隔(車両の認識間隔とも言える)について説明すると、片側1車線の道路の制限速度は、毎時30キロメートルや40キロメートルが多いので、車両の通行速度を36キロメートル、つまり毎秒10メートルとすれば、車両長を5メートル、車間距離を1メートルとすると、5+1=6メートルの走行時間は、6/10=0.6秒であり、車両の進入を1台ごとに撮影しようとすると撮影間隔は、0.6秒になる。実際は、数台単位で撮影してもよく、台数認識部の処理速度、認識の正確性(精度)などを考慮し決めればよい。キリのいい数字で言えば1秒ごとの撮影間隔で十分だろう。
【0015】
車両認識装置1は、認識部14で、1秒間に工事区間に向けて進入してくる進入台数と、交互通行路の走行台数を認識し、無線通信網5を介して、制御装置2に報告する。
【0016】
図3は認識部14の内部構成を示すが、そこには、セダン車、ハイルーフ車、トラック、バス、パトカー、救急車などの車両パタンが車種パタン記憶部141に記憶されていて、それらのパタン情報と対比しながら、比較判定部142で車両を1台ずつ認識していく。また、認識部14には認識感度調整部143があり、車両を1台ずつ認識するのに、完全一致、ほぼ一致のレベルを求めるか、撮影の間隔を1秒から2秒にして認識処理動作を入念に行うかなどが、制御装置2からの指示で必要に応じて調整される。カメラの撮影対象位置は、待機車両の最前列(車両認識装置の手前)から、待機車両の最後部の遠方まで変化するが、認識部14は、撮影対象位置に応じて、カメラのズーム比率をズーム比率指示部145よりカメラに指示する。ズーム比率については、後記するように、制御装置2からも指示される。認識部14にはさらに照度検知部144と照度判定部146が設けられ、カメラ信号から夜間か昼間かが検知され、他の情報とともに照度が判定される。この判定機能については後記する。
【0017】
再び図2を参照すると、車両認識装置1は照度計17を具備していて、照度計17は、外光の照度を測定する。曇天や夕方さらに夜間など、撮影画像の画質が劣化し、台数認識精度が低下するのを防ぐため、照度計出力や後記する照度情報を見ながら投光装置19に設けられた投光器18を点灯・制御する。投光装置19は車両認識装置1の頭部から棒状に伸びた取付棒の高い位置に設置され、進入してくる車両全体に向けて投光されるようにするが、車両認識装置1と別筐体として設置してもよい。投光装置19の内部構成は図8に示すように無線通信部23、光量制御部25、投光器18よりなる。
【0018】
投光器の点灯制御は、上記したように照度計17で測定された照度情報を利用する方法のほか、前記した照度検知部144で画像信号から信号振幅や背景色を認識することで照度を測定する方法もある。さらに工事区間の地理的情報をもとに、日の出・日の入りカレンダ情報や月齢カレンダ情報を用い照度を推定してもよい。照度判定部146では、照度計17を具備しているときは照度計情報を、具備していないときは照度検知部144の情報を照度判定情報として用いる。なお、日の出・日の入りや月齢カレンダ情報は図7に示す管理サーバ4に保管・管理されているが、照度判定部146では、管理サーバ4に保管されているカレンダ情報を見て、カレンダ情報から照度を推定し、照度計情報、照度検知部の情報と比較し、推定の正しさを学習しておき、照度計17を具備しないときには、照度検知部144の情報に替えて、前記カレンダ情報により推定した情報を利用してもよい。
【0019】
このようにして照度判定部146で判定された照度情報を用いて、投光器の点灯時刻、消灯時刻、投光量を設定する。
【0020】
工事区間が住宅地での道路である場合、住民にとっては投光器の光を眩しく感じるため、住民より投光器の光量を低下することが求められる。光量の低下は車両の認識精度の低下を招くので、住民が許容できる光量の情報にもとづき、認識部14内にある認識感度調整部143で、認識感度を調整する。認識感度の調整は、前記したように車両の認識度は完全一致からほぼ一致のレベルに低下するとか、撮影間隔を2秒から3秒に伸ばすということで行う。一般に、夜間は、交通量は減少するため、撮影間隔を3秒とか4秒に長くすることで、光量低下による台数認識の精度を補う事は可能であろう。また、照度判定部146で判定された情報を用いながら、認識感度と投光器18の光量調整を行う。このため、照度判定部146より光量制御部25に、光量値が届く。このような、光量と認識感度の調整情報は、工事区間(現場)においては貴重な情報であり、光量制御の制御結果、感度調整の調整結果情報が判定された照度情報とともに、車両認識装置1の無線通信部23より決定履歴情報として、夜間の30分ごととかの所定の時間間隔で管理サーバ4に送られる。図7の管理サーバ4では受信した履歴情報とともに、月齢情報、日の出日の入り情報、工事区間、工事期間などの情報とともに管理し、光量と車両の認識能力がより詳細に把握されるようになる。
【0021】
道路工事の現場においては、工事区間の距離が長く投光器18の光量が、工事区間の全域に届かないケースがあるが、このようなときは、投光器を複数設置する必要がある。例えば光量の届く範囲が10メートル程度であり、工事区間の距離が20メートルの場合は、中間点に投光装置19を設置する必要がある。投光装置19の物理的構成は図示しないが、スタンド型など自立型の形状にして工事区間の一部に設置するのが簡便であるが、物理的な設置方法は問わない。
【0022】
なお、前記した住宅地において、住民が許容できる投光量では、車両の認識精度が認識感度調整部143で調整しても、精度が著しく低下する場合は、投光量を低下した投光装置19を低下量に応じた台数分設置する。例えば、本来なら10メートルは届く投光量を、3メートル程度の光量にした投光装置19を3台設置する。
【0023】
車両認識装置1はマイク13を具備していて、救急車や消防自動車やパトカ―など警報を鳴らしながら接近してくる緊急車両を認識する。緊急車種認識部16は警報音とともに赤いランプの回転を検出しながら、緊急車両が接近してきたことを認識する。
【0024】
図4は制御装置2の内部構成を示す。
【0025】
図において、22は通行可否決定部、23は無線通信部、24は表示入力部である。制御装置2の通行可否決定部22で工事区間の両端(片方をA端、他の片方をB端と呼ぶ)の表示器3に通行可否の連絡をするが、通行可のときは表示器3を青に点灯、通行不可の時は赤に点灯する。当然のことであるが、A端の表示器3が青の時は、B端の表示器3は赤になる。A端が青から赤に変わった後、交互通行路に車両がなくなったことを確認できるまではB端は赤であり、この期間は両端とも赤である。
【0026】
工事開始前に、工事道路の定常的な交通量(1秒に通過する台数、あるいは何秒に1台通過するかを数字で管理)を、曜日、時間(24時間で30分毎)、天候(雨かどうか)、月末、および業務車両が増える5日、10日を考慮した上で平常時の交通量データとして把握されていて管理サーバ4に保管・管理されており、管理サーバ4より無線通信部23を介して平常時交通量データとして、通行可否決定部22にロードされる。
【0027】
また、工事区間に住宅地が含まれるとき、前記したように、投光器の投光量を制御する必要があるので、制御装置2の表示入力部24から、そのことを、無線通信部23を介して車両認識装置1に伝える。なお、図3に示した照度情報判定部144で画像信号から照度を検知したように、画像信号から図3の認識部14に住宅地検知部(図示せず)を設けて自動検知する方法も採れる。
【0028】
通行可否決定部22は、図示しないが4つのタイマ(A端での青色信号タイマ1、赤色信号タイマ2、B端での青色信号タイマ3、赤色信号タイマ4)を内蔵している。前記した平常時交通量データで工事区間A端からB端への交通量とB端からA端への交通量や、管理サーバ4に保管されている過去の工事履歴情報から当該工事区間の近辺での履歴情報があればそれを参考にしながら、A端での青信号タイマ1とB端での青信号タイマ3の点灯時間(秒)をタイマ値として設定する。交通制御は、このタイマ値を基本に行うが、後記するようにタイマ値は適宜更新される。
【0029】
A端の表示器3が赤になると、A端の車両認識装置1から、前記した進入台数と走行台数が制御装置2に報告されるが、制御装置2の通行可否決定部22は、毎秒報告されるこれらの情報を見ながら、進入台数の積算値が赤信号で停止している待機車両の台数(以下、停止中車両台数)になるはずと認識しながら、赤信号期間の1/2時点や3/4時点でカメラのズーム機構を、より遠方が見られるように変化させ、停止中車両台数をより正確に把握できるよう制御する。また、把握された交通量が平常時交通量と著しい差がないかも確認し、著しい差があるときは、表示・入力部24にそのことを表示する。工事監督者は、その表示をみて、車両認識装置1の台数認識部15から報告された前記進入台数を現場で確認し、現場で目視確認した進入台数と、台数認識部15から報告された進入台数が著しく異なるときで、進入台数が多すぎるときは前記した認識感度調整部143の認識感度を低く変更してみる指示を、逆に進入台数が少なすぎるときは、認識感度を高く変更してみる指示を、制御装置2の表示・入力部24より入力することで行う。その後、しばらくの間、台数認識部15の報告に著しい差がなくなるまで、観察を続ける。
【0030】
通行可否決定の制御は、前記したように、青時間、赤時間についてのタイマ値を設定した上で行うが、実際の車両の通行量を見ながら、タイマ値に拘らない制御を行う。
【0031】
ここでタイマ値に拘らない制御を行う例を2つ示す。
【0032】
1つは、車両の停止中車両台数が増えて、図6に示すように、手前の交通信号交差点までに、待機車両が並ぶときである。図6に示す工事領域とは図1そのものを示す。
【0033】
例えば、工事区間の手前の交差点までの距離が、60メートルとする。1車両の長さが、6メートル(車両長+車間距離)とすると、10台が待機することで、手前の交差点に達する。車両の通行量が5秒に1台とすると、赤信号期間が50秒になると、待機車列が手前の交差点に達する。このようなケースは避けるべきで、タイマ値が60秒に設定されていたとするとき、赤信号は、50秒以下の例えば45秒で、交互通行路における車両の存否(車両が残存していないか、つまり車両が存在しているか)を確認した後、青信号にすることが必要になる。
【0034】
他の1つの例は緊急車両の接近時である。
【0035】
A端の表示器3が赤信号の時、緊急車両の接近を検知したら反対側(B端)の青信号を、タイマに関わらず即赤に変化させ、交互通行路に車両が残っていないことを確認した後、A端の表示器3の信号を赤から青に変化させることが必要である。このような制御操作は自動的に行われるが、人(工事監督者)が制御装置2の表示入出力部24から、A端の表示器3の信号を赤にし、B端の表示器3の信号を青にする操作も可能である。
【0036】
図5は表示器3の内部構成を示す。
【0037】
31は青色点灯部、32は赤色点灯部、33は文字表示部、34はスピーカ部、35は表示等駆動部、36は無線受信部である。制御装置2からの指示で表示器3は動作制御されるが、緊急車両が接近したため、本来は通行可で青が点灯されるべきであったものが赤に変わるときは、文字表示部33やスピーカ部34に、表示等駆動部35を介して「緊急車両が通過するのでお待ちください」などの表示や発音を行う。
【0038】
次に通行可否決定部22(青、赤決定)の制御について、表1とともに説明する。
【0039】
表1の台数は青信号の時は通過台数、赤信号の時は停止中車両台数を示す。時間の示す数字は秒である。時間列にT1、T2、T3、・・・とあるのは、時間幅を示すもので、実際は、開始時刻が、A年B月C日D時E分F秒、終了時刻が、A年B月C日D時E分G秒となっている。
【0040】
【表1】

ここでは、表1のT1、T2に示すようにA端の青信号タイマ1は40秒、B端の青信号タイマ3は20秒の値でスタートする。T1で40秒が経過しタイムアップしたら、交互通行路に車両が存在するかどうかを確認し(確認する方法は後記する)、車両が存在しないことが確認出来たら、制御装置2に、「車両なし」を伝える。同時にB端の表示器3は制御装置2から青に変えるよう指示を受け、青信号タイマ3を起動する。T1において、B端の赤時間に40+2とあるが、この+2は車両がなくなるまでの時間が2秒であったことを示す。B端が+2秒の間、A端は赤であるので、T1の赤時間に2秒が書かれている。T2の開始時刻は、T1の開始時刻の42秒後となる。
【0041】
工事区間の両端の車両認識装置1は、赤信号期間中は、工事区間に向かってくる進入台数をカウントしながら、停止中の車両も認識していて、前記したように停止中の待機車両の長さが次の交差点まで達しそうになったら、制御装置2にそのことを伝える。表1では、T4で、A端での画像台数が33台になっていて、別途管理している交差点までの待機車両最大数の35台に近づいたので、制御装置2は、その時、A端の表示器3を青にするよう指示を出し、交互通行路に車両の存在しないことが確認できるまで、B端の表示器を赤にする指示を出す。T4の時間に20-2+3 とあるのは、本来ならば20秒の赤時間を上記した理由で2秒短くしたことと、車両がなくなるまでの時間が3秒であったことを示す。この時、B端青時間は、2秒短縮される。T5の開始時刻は、T4の開始時刻より21秒(20-2+3)後になる。
【0042】
T3のB端では、停止中車両台数が9台あり、T4でB端を青にしたときの通過台数は9台で、これは、T3での停止中車両台数が通過しただけで、T4期間では、新規に進入通行した台数は0であったことを示す。T5においては、A端の赤時間が0になっているが、タイムアップした時、交互通行路に車両が存在しなかったので即赤に切り替わったことを示す。つまりT6の始まり時刻はタイマ値と同じになる。T6においては、B端の赤信号タイマ4は20秒から15秒に、T7のA端での青信号タイマ1は40秒から45秒に変更されている。それは、T3からT5までの通過台数、停止中車両台数の実績をみて、B端の赤を長く、A端の青を長くしてみようとする試みである。このような試みは随時行われ、より適切な、タイマ値が設定されていくが、タイマ値の最大値を60秒とか運転手の心理に配慮した設定も必要である。
【0043】
表1の工事区間の通行履歴を示す表は、1日単位あるいは所定の時間ごとに、工事区間の住所、道路名、天候(雨か晴れなど)などの属性情報とともに通行可否決定部22の決定履歴として管理サーバ4で管理し、管理サーバ4では、すべての道路工事区間での通行可否決定部22の決定履歴を一元管理する。管理サーバ4における一元管理された情報は、後日に行われる道路工事において、特に、その道路工事が、過去の工事区間の近辺や同一道路の延長上での工事の時などは、大いに参考となろう。
【0044】
表示器3が青から赤に変ったとき、通行路に車両が存在するかどうかを確認する方法をカメラのズーム比率とともに説明する。
【0045】
A端の表示器3の信号が青から赤に変ったときA端のカメラ2は交互通行路に車両が存在しているかを確認するため、ズーム比率を工事区間の通行路全体が見渡せるように設定する。カメラ2は交互通行路に進入する車両の台数を認識するため、表示器3が赤から青に変化すると、青が赤に変化するまで、カメラ2の設置位置の近辺の画像が認識できるズーム比率に設定されているが、赤に変化した後は通行路に進入した車両が、通行路を走り終えるのを確認するため、ズーム比率は通行路全体を見渡せるように設定される。同時にB端のカメラ2は、B端近辺での車両の存在を確認できるようなズーム比率に設定される。A端でのカメラ2の情報とB端でのカメラ2の情報とにより交互通行路に車両が存在しないことを確認して、B端の表示器3を赤から青に変化する。
【0046】
A端とB端のカメラ2で交互通行路の車両の存在確認は、通行路が途中で曲がっている時は必須となる。この時、両端のカメラのズーム比率は、曲がっている地点までが見渡せるように設定する必要がある。
【0047】
なお、A端が青から赤に変化後、車両が交互通行路を走り終えるまでの時間は、通行路長を50メートル、車両の速度を毎秒10メートルとすれば、高々5秒なので、上記したカメラによる車両の存在を確認しないで、両端の表示器を同時に赤にする時間を5秒に設定する方法も採れるが、A端の表示器3が青から赤に変わるとき、交互通行路に、実際に走行車両がない時は、無駄な5秒となるので好ましくない。
【0048】
通行可否決定部22は、タイマ値の更新決定判断のため、平常時交通量、待機車両最大数、表1のタイマ値、台数履歴を常時観察管理している。
【0049】
以上に説明した制御装置2、車両認識装置1、表示器3の間に行き交う信号をまとめると表2のようになる。
【0050】
表2における信号は、工事区間のA、B両端の車両認識装置1と表示器3に対して適用される。例えば、信号1には、「A端の表示器を青表示にする」という信号と「B端の表示器を青表示にする」という信号がある。
【0051】
【表2】

本発明の第2の実施態様として、通行可否決定部の動作を管理サーバ4で行う態様がある。図9は、制御装置2にあった通行可否決定部22が管理サーバ4に移転されている第2の実施態様を示す。この態様では、表2に示す信号において、信号1~4は管理サーバから表示器への信号、信号5~11は、車両認識装置から管理サーバへの信号,信号12~14は管理サーバから車両認識装置への信号、信号20、21は不要となる(管理サーバの内部信号となる)となるが、これらの変化を表3に示す。

【表3】
表3において、信号26,27,28は表示器の状態を制御装置でもモニタできるために必要である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
デジタル社会実現の一例として車両認識装置は人工知能を活用するなど有効な方法を提供している。車両認識装置、表示器の生産が活性化され、交通誘導員の人員削減も可能で、社会のDX化に貢献できる。
【符号の説明】
【0053】
1.車両認識装置
11.カメラ1
12.カメラ2
13.マイク
14.認識部
15.台数認識部
16.緊急車両認識部
17.照度計
18.投光器
19.投光装置
23.無線通信部
2.制御装置
22.通行可否決定部
24.表示入力部
25.光量制御部
3.表示器
31.青色点灯部
32.赤色点灯部
33.文字表示部
34.スピーカ部
35.表示等駆動部
36.無線受信部
4.管理サーバ
5.無線通信網
141.車種パタン記憶部
142.比較判定部
143.認識感度調整部
144.照度検知判定部
145.ズーム比率指示部
146.照度判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9