(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】センタレス研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/18 20060101AFI20240820BHJP
B24B 5/307 20060101ALI20240820BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240820BHJP
【FI】
B24B5/18 A
B24B5/307
B24B41/06 J
(21)【出願番号】P 2022159501
(22)【出願日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114019
【氏名又は名称】ミクロン精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征幸
(72)【発明者】
【氏名】羽角 富彦
(72)【発明者】
【氏名】白田 康明
(72)【発明者】
【氏名】山口 直也
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特許第5057947(JP,B2)
【文献】特開2020-203344(JP,A)
【文献】特許第5823181(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/18
B24B 5/307
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石と、
調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に、
円柱状または円筒状のワークの中心軸線方向に当該ワークを案内する一対の案内機構を備えているワーク案内機構と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間において前記ワークを下方から支持するブレードと、
前記研削砥石および前記調整砥石を少なくとも水平方向に相対的に並進させる砥石並進駆動機構と、
前記ワーク案内機構を少なくとも鉛直方向に並進させる主案内並進駆動機構と、
前記一対の案内機構を少なくとも水平方向に相対的に並進させる副案内並進駆動機構と、
前記研削砥石をその中心軸線まわりに回転駆動する第1砥石回転駆動機構と、
前記調整砥石をその中心軸線まわりに回転駆動する第2砥石回転駆動機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記一対の案内機構により支持された状態で前記ワークが前記中心軸線方向に動かされた際に、当該ワークに対して、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれ
を目標当接位置において当接させるように、前記砥石並進駆動機構の動作を制御
することにより前記研削砥石および前記調整砥石の相対的な位置を調節し、前記主案内並進駆動機構
の動作を制御することにより前記ワーク案内機構の少なくとも鉛直方向の位置を調節し、かつ、前記副案内並進駆動機構
の動作を制御する
ことにより前記一対の案内機構の少なくとも水平方向の位置を調節したうえで、
前記一対の案内機構により支持された状態で前記中心軸線方向に前記ワークを動かすことにより、前記第1砥石回転駆動機構の動作を制御することにより回転駆動されている前記研削砥石、前記第2砥石回転駆動機構の動作を制御することにより回転駆動されている前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれを当該ワークに対して前記目標当接位置において当接させ、前記研削砥石により前記ワークを研削加工する
センタレス研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタレス研削装置において、
前記砥石並進駆動機構が、前記調整砥石を少なくとも水平方向に並進させる第1砥石並進駆動機構と、前記研削砥石を少なくとも水平方向に並進させる第2砥石並進駆動機構と、により構成され、
前記ブレードを少なくとも鉛直方向に並進させるブレード並進駆動機構を備え、
前記制御装置が、前記ワークの外径に応じて、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと前記ワークとの当接箇所の位置を調節するように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
センタレス研削装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、前記ワークの中心軸線を垂線とする仮想平面において、前記ワークの中心を通り、前記ブレードの並進方向に延在する基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記ブレードの接点である第1接点とを結ぶ第1線分がなす角度である第1角度、ならびに、前記基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記調整砥石の接点である第2接点とを結ぶ第2線分がなす角度である第2角度のそれぞれが一定となるように、前記ワークの外径に応じて、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
センタレス研削装置。
【請求項4】
請求項2に記載のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、前記ワークの中心軸線を垂線とする仮想平面において、前記ワークの中心を通り、前記ブレードの並進方向に延在する基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記一対の案内機構のうち一方の案内機構の接点である第3接点とを結ぶ第3線分がなす角度である第3角度、ならびに、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記一対の案内機構のうち他方の案内機構の接点である第4接点とを結ぶ第4線分がなす角度である第4角度のそれぞれが一定となるように、前記ワークの外径に応じて、前記主案内並進駆動機構および副案内並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
センタレス研削装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載のセンタレス研削装置において、
前記ブレードに作用する荷重を測定するための荷重センサを備え、
前記制御装置が、前記荷重センサを用いて測定された、前記ワークと当接している状態の前記ブレードに作用する荷重の時間変化態様または当該荷重の時間変化態様を表わす周波数スペクトルに基づき、前記ワークの真円度が閾値以上になるように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構の少なくとも1つの動作を制御する
センタレス研削装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、入力インターフェースを通じて入力された、前記ワークの材質を表わす物性値、外径または外径および内径、前記研削砥石の外径、前記調整砥石の外径、前記研削砥石の回転速度、前記調整砥石の回転速度、前記研削砥石の材質を表わす物性値、ならびに、前記調整砥石の材質を表わす物性値のうち少なくとも1つが含まれている指定因子に基づき、前記ワークの真円度が前記閾値以上になるように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構の少なくとも1つの動作を制御する
センタレス研削装置。
【請求項7】
請求項6に記載のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、前記指定因子の入力結果と、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと前記ワークとの当接箇所の位置の測定結果と、前記ワークの真円度の測定結果と、の組み合わせを教師データとして、機械学習によってモデルを構築し、前記モデルに前記指定因子の新たな入力結果を入力データとして入力することにより、新たな研削加工対象であるワークの真円度が前記閾値以上になるような、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと当該ワークとの当接箇所の目標位置を出力データとして出力する
センタレス研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタレス研削装置における異径ワークへの段取り換えの自動化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人により、段取り作業を行うワーク径に応じて、研削砥石、調整砥石、そしてブレードの位置および/または姿勢を調整する段取り換え作業の自動化を可能とするセンタレス研削方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、研削砥石および調整砥石の相対位置およびブレードの位置が自動的に調整されるものの、案内板の位置および/または姿勢の調整作業が必要とされていた。このため、その分だけ段取り換え作業の時間およびコストの低減が制限されていた。
【0005】
そこで、本発明は、段取り換え作業の時間およびコストのさらなる低減を図りうるセンタレス研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンタレス研削装置は、
研削砥石と、
調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に、円柱状または円筒状のワークの中心軸線方向に当該ワークを案内する一対の案内機構を備えているワーク案内機構と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間において前記ワークを下方から支持するブレードと、
前記研削砥石および前記調整砥石を少なくとも水平方向に相対的に並進させる砥石並進駆動機構と、
前記ワーク案内機構を少なくとも鉛直方向に並進させる主案内並進駆動機構と、
前記一対の案内機構を少なくとも水平方向に相対的に並進させる副案内並進駆動機構と、
前記研削砥石をその中心軸線まわりに回転駆動する第1砥石回転駆動機構と、
前記調整砥石をその中心軸線まわりに回転駆動する第2砥石回転駆動機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記一対の案内機構により支持された状態で前記ワークが前記中心軸線方向に動かされた際に、当該ワークに対して、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれを目標当接位置において当接させるように、前記砥石並進駆動機構の動作を制御することにより前記研削砥石および前記調整砥石の相対的な位置を調節し、前記主案内並進駆動機構の動作を制御することにより前記ワーク案内機構の少なくとも鉛直方向の位置を調節し、かつ、前記副案内並進駆動機構の動作を制御することにより前記一対の案内機構の少なくとも水平方向の位置を調節したうえで、
前記一対の案内機構により支持された状態で前記中心軸線方向に前記ワークを動かすことにより、前記第1砥石回転駆動機構の動作を制御することにより回転駆動されている前記研削砥石、前記第2砥石回転駆動機構の動作を制御することにより回転駆動されている前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれを当該ワークに対して前記目標当接位置において当接させ、前記研削砥石により前記ワークを研削加工する。
【0007】
前記構成のセンタレス研削装置において、
前記砥石並進駆動機構が、前記調整砥石を少なくとも水平方向に並進させる第1砥石並進駆動機構と、前記研削砥石を少なくとも水平方向に並進させる第2砥石並進駆動機構と、により構成され、
前記ブレードを少なくとも鉛直方向に並進させるブレード並進駆動機構を備え、
前記制御装置が、前記ワークの外径に応じて、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと前記ワークとの当接箇所の位置を調節するように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
ことが好ましい。
【0008】
前記構成のセンタレス研削装置において異径ワークへの段取り換えを行う場合、
前記制御装置が、前記ワークの中心軸線を垂線とする仮想平面において、前記ワークの中心を通り、前記ブレードの並進方向に延在する基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記ブレードの接点である第1接点とを結ぶ第1線分がなす角度である第1角度、ならびに、前記基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記調整砥石の接点である第2接点とを結ぶ第2線分がなす角度である第2角度のそれぞれが一定となるように、前記ワークの外径に応じて、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
ことが好ましい。
前記構成のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、前記ワークの中心軸線を垂線とする仮想平面において、前記ワークの中心を通り、前記ブレードの並進方向に延在する基準線に対して、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記一対の案内機構のうち一方の案内機構の接点である第3接点とを結ぶ第3線分がなす角度である第3角度、ならびに、前記ワークの中心と前記ワークおよび前記一対の案内機構のうち他方の案内機構の接点である第4接点とを結ぶ第4線分がなす角度である第4角度のそれぞれが一定となるように、前記ワークの外径に応じて、前記主案内並進駆動機構および副案内並進駆動機構のそれぞれの動作を制御する
ことが好ましい。
【0009】
前記構成のセンタレス研削装置において、
前記ブレードに作用する荷重を測定するための荷重センサを備え、
前記制御装置が、前記荷重センサを用いて測定された、前記ワークと当接している状態の前記ブレードに作用する荷重の時間変化態様または当該荷重の時間変化態様を表わす周波数スペクトルに基づき、前記ワークの真円度が閾値以上になるように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構の少なくとも1つの動作を制御する
ことが好ましい。
【0010】
前記構成のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、入力インターフェースを通じて入力された、前記ワークの材質を表わす物性値、外径または外径および内径、前記研削砥石の外径、前記調整砥石の外径、前記研削砥石の回転速度、前記調整砥石の回転速度、前記研削砥石の材質を表わす物性値、ならびに、前記調整砥石の材質を表わす物性値のうち少なくとも1つが含まれている指定因子に基づき、前記ワークの真円度が前記閾値以上になるように、前記第1砥石並進駆動機構、前記第2砥石並進駆動機構および前記ブレード並進駆動機構の少なくとも1つの動作を制御する
ことが好ましい。
【0011】
前記構成のセンタレス研削装置において、
前記制御装置が、前記指定因子の入力結果と、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと前記ワークとの当接箇所の位置の測定結果と、前記ワークの真円度の測定結果と、の組み合わせを教師データとして、機械学習によってモデルを構築し、前記モデルに前記指定因子の新たな入力結果を入力データとして入力することにより、新たな研削加工対象であるワークの真円度が前記閾値以上になるような、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードのそれぞれと当該ワークとの当接箇所の目標位置を出力データとして出力する
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態としてのセンタレス研削装置の構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
図1に模式的に示されている本発明の一実施形態としてのセンタレス研削装置は、研削砥石11と、調整砥石12と、ブレード13と、ワーク案内機構14と、を備えている。ブレード13は、研削砥石11および調整砥石12の間においてワークWを下方から支持する。ブレード13には、当該ブレード13に作用する荷重または動力に応じた信号を出力する荷重センサS(動力計)研削砥石11、調整砥石12、ブレード13およびワーク案内機構14は、例えば、設置箇所に設置または固定されたセンタレス研削装置を構成するベッド(図示略)に対して相対的に変位可能または並進可能に設けられている。
【0014】
本実施形態では、研削砥石11および調整砥石12のそれぞれが、水平方向に対して傾斜している第1指定方向(
図1のx軸方向)に並進可能に構成されている。ブレード13およびワーク案内機構14のそれぞれが、第1指定方向に対して垂直であり、鉛直方向に対して傾斜している第2指定方向(
図1のz軸方向)に並進可能に構成されている。調整砥石12が第1指定方向に対して傾斜した方向(例えば水平方向)に並進可能に構成されていてもよい。水平方向が第1指定方向として定義されていてもよく、鉛直方向が第2指定方向として定義されていてもよい。
【0015】
ワーク案内機構14(ワークフィーダ)は、研削砥石11および調整砥石12の間に、ワークWの中心軸線方向(
図1のy軸+方向)に当該ワークWを案内するローラ式の一対の案内機構としての第1案内機構141および第2案内機構142を有している。
【0016】
図1に示されているセンタレス研削装置は、第1砥石並進駆動機構110と、第1砥石旋回駆動機構111、第1砥石回転駆動機構112と、第2砥石並進駆動機構120と、第2砥石旋回駆動機構121と、第2砥石回転駆動機構122と、ブレード並進駆動機構130と、主案内並進駆動機構140と、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420と、を有している。
【0017】
第1砥石並進駆動機構110は、研削砥石11を第1指定方向に並進駆動するように構成されている。第1砥石旋回駆動機構111は、研削砥石11を水平方向に旋回するように構成されている。第1砥石回転駆動機構112は、研削砥石11をその中心軸線(y軸に平行な軸線)まわりに回転駆動するように構成されている。第2砥石並進駆動機構120は、調整砥石12を第1指定方向に並進駆動するように構成されている。第2砥石旋回駆動機構121は、調整砥石12を水平方向に旋回するように構成されている。第2砥石回転駆動機構122は、調整砥石12をその中心軸線(y軸に平行または略平行な軸線)まわりに回転駆動するように構成されている。
【0018】
本実施形態では、第1砥石並進駆動機構110および第2砥石並進駆動機構120により、研削砥石11および調整砥石12を少なくとも水平方向に(水平方向成分を有する第1指定方向に)相対的に並進させる「砥石並進駆動機構」が構成されている。他の実施形態では、第1砥石並進駆動機構110および第2砥石並進駆動機構120のうち一方により「砥石並進駆動機構」が構成されていてもよい。
【0019】
ブレード並進駆動機構130は、ブレード13を少なくとも鉛直方向に(鉛直方向成分を有する第2指定方向に)並進駆動するように構成されている。ブレード並進駆動機構130は省略されてもよい。主案内並進駆動機構140は、ワーク案内機構14を第2指定方向に並進駆動するように構成されている。第1副案内並進駆動機構1410は、第1案内機構141を第1指定方向に並進駆動するように構成されている。第2副案内並進駆動機構1420は、第2案内機構142を第1指定方向に並進駆動するように構成されている。
【0020】
本実施形態では、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420により、第1案内機構141および第2案内機構142を少なくとも水平方向に相対的に並進させる「副案内並進駆動機構」が構成されている。他の実施形態では、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420のうち一方により、「副案内並進駆動機構」が構成されていてもよい。
【0021】
センタレス研削装置は、
図2に示されているように、制御装置200と、入力インターフェース201と、出力インターフェース202と、を備えている。制御装置200は、演算処理装置(例えば、CPU、プロセッサ、プロセッサコア)および記憶装置(例えば、ROM、RAMなどのメモリ)により構成されている。制御装置200は、記憶装置から必要なデータおよびプログラム(ソフトウェア)を読み出し、当該データに対してまたは基づいて当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、タスクを実行するように構成されている。
【0022】
制御装置200は、ワークWの外径に応じて、研削砥石11、調整砥石12およびブレード13のそれぞれと当該ワークWとの当接箇所P1、P2およびP3の位置を調節するように、第1砥石並進駆動機構110、第2砥石並進駆動機構120およびブレード並進駆動機構130のそれぞれの動作を制御するように構成されている。制御装置200は、当該当接箇所P1、P2およびP3の位置に応じて、研削砥石11および調整砥石12の間に案内されるワークWの位置を調整するように、主案内並進駆動機構140、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420のそれぞれの動作を制御するように構成されている。
さらに、制御装置200は、ワークWの外径に応じて、第1案内機構141および第2案内機構142のそれぞれと当該ワークWとの当接箇所P4およびP5の位置を調節するように、第1副案内並進駆動機構1410、第2副案内並進駆動機構1420、および主案内並進駆動機構140それぞれの動作を制御するように構成されている。
【0023】
制御装置200は、荷重センサSの出力信号、ひいては当該出力信号により表わされるブレード13にかかる荷重の時間変化態様に基づき、ワークWの真円度が閾値以上になるように、研削砥石11、調整砥石12およびブレード13のそれぞれと当該ワークWとの当接箇所P1、P2およびP3の位置を調節するため、第1砥石並進駆動機構110、第2砥石並進駆動機構120およびブレード並進駆動機構130のうち少なくとも1つの動作を制御するように構成されている。さらに、第1案内機構141、および第2案内機構142のそれぞれと当該ワークWとの当接箇所P4およびP5の位置を調節するように、第1副案内並進駆動機構1410、第2副案内並進駆動機構1420、および主案内並進駆動機構140それぞれの動作を制御するように構成されている。
【0024】
入力インターフェース201は、例えば、タッチパネル式ディスプレイおよび/またはボタンもしくはプッシュキーにより構成されている。入力インターフェース201は、その操作によってワークWの形状精度または真円度に影響を与える指定因子を入力可能にかつ制御装置200に伝送可能に構成されている。
【0025】
「指定因子」には、ワークWの材質を表わす物性値、外径(ワークWが円柱状である場合)または外径および内径(ワークWが円筒状である場合)、研削砥石11の外径、調整砥石12の外径、研削砥石11の回転速度、調整砥石12の回転速度、研削砥石11の材質を表わす物性値、ならびに、調整砥石12の材質を表わす物性値のうち少なくとも1つが含まれている。指定因子のうち、ワークWの材質を表わす物性値および外径(ワークWが円柱状である場合)または外径および内径(ワークWが円筒状である場合)など比較的動的な第1指定因子が、入力インターフェース201を通じて作業者により入力されてもよい。指定因子のうち、研削砥石11の外径、調整砥石12の外径、研削砥石11の回転速度、調整砥石12の回転速度、研削砥石11の材質を表わす物性値および調整砥石12の材質を表わす物性値など比較的静的な第2指定因子は、制御装置200を構成する記憶装置にあらかじめ記憶保持されていてもよい。
【0026】
出力インターフェース202は、例えば、タッチパネル式ディスプレイにより構成されている。出力インターフェース202は、荷重センサSにより測定された荷重の値、当該荷重の時間変化態様、当該荷重の時間変化態様が周波数解析されることにより得られる周波数スペクトルおよび/または当該周波数スペクトルに応じて推測されたワークWの真円度などを出力表示するように構成されている。
【0027】
(機能)
前記構成のセンタレス研削装置の機能、具体的には、制御装置200により実行される処理手順について
図3に示されているフローチャートを用いて説明する。
【0028】
まず、ワークWの外径等の指定因子が認識される(
図3/STEP102)。
【0029】
続いて、ワークWの外径等に応じて、研削砥石11、調整砥石12、ブレード13、第1案内機構141および第2案内機構142のそれぞれと当該ワークWとの当接箇所P1、P2、P3、P4およびP5の目標位置(ワークWの中心軸線Oを垂線とする仮想平面における座標値)が認識される(
図3/STEP104)。この処理に際して、当該仮想平面において、ワークWの中心Oを通り、ブレード13の並進方向である第2指定方向(z軸方向)に延在する基準線が定義される。例えば、ワークWの中心Oと当該ワークWおよびブレード13の接点である第1接点P3とを結ぶ第1線分が基準線に対してなす角度である第1角度、ならびに、ワークWの中心Oと当該ワークWおよび調整砥石12の接点である第2接点P2とを結ぶ第2線分が基準線に対してなす角度である第2角度、のそれぞれが一定となるように、当該当接箇所P1、P2およびP3の目標位置が決定される。さらに、ワークWの中心Oと当該ワークWおよび第1案内機構141の接点である第3接点P4とを結ぶ第3線分が基準線に対してなす角度である第3角度、ならびに、ワークWの中心Oと当該ワークWおよび第2案内機構142の接点である第4接点P5とを結ぶ第4線分が基準線に対してなす角度である第4角度のそれぞれが一定となるように、当該当接箇所P4およびP5の目標位置が決定される。
【0030】
次に、当該当接箇所P1、P2、P3、P4およびP5のそれぞれの位置が当該目標位置に一致するように、第1砥石並進駆動機構110、第2砥石並進駆動機構120およびブレード並進駆動機構130、ならびに、第1副案内並進駆動機構1410、第2副案内並進駆動機構1420および主案内並進駆動機構140のそれぞれの動作が制御される。
【0031】
そして、第2砥石回転駆動機構122により回転駆動されている調整砥石12に対して当接しているワークWが、第1砥石回転駆動機構112により回転駆動されている研削砥石11により研削加工(または研磨加工)される(
図3/STEP110)。この際、荷重センサSの出力信号に基づき、ブレード13にかかる荷重、ひいてはワークWの研削抵抗が時系列的に測定される(
図3/STEP112)。
【0032】
研削抵抗の時間変更態様が指定条件を充足しているか否かが判定される(
図3/STEP114)。「指定条件」は、ワークの形状精度または真円度が閾値未満になる蓋然性が高くなるような条件である。例えば、研削抵抗の時間変化態様を表わす曲線の振幅が指定値を超えたこと、および/または、研削抵抗の時間変化態様が周波数解析(例えば、FFT)されることにより得られた周波数スペクトルにおいて特定周波数成分のピークの高さが指定値を超えたこと、などが指定条件として定義されていてもよい。
【0033】
指定条件が充足されていないと判定された場合(
図3/STEP114‥NO)、ワークWの研削が終了したか否かが判定される(
図3/STEP118)。
【0034】
指定条件が充足されていると判定された場合(
図3/STEP114‥YES)、当接箇所P1、P2、およびP3の位置が変化するように、第1砥石並進駆動機構110、第1砥石旋回駆動機構111、第2砥石並進駆動機構120、第2砥石旋回駆動機構121、およびブレード並進駆動機構130のうち少なくとも1つの動作が制御される(
図3/STEP116)。例えば、前記周波数スペクトルにおいて特定周波数成分のピークの高さが指定値を超えた場合、当該ピークの高さと当該指定値との偏差に基づき、当該当接箇所P1、P2およびP3の位置がフィードバック制御される。この際、フィードバックゲインは、指定因子に応じて流動的に定められてもよい。
【0035】
そして、ワークWの研削が終了したか否かが判定される(
図3/STEP118)。例えば、荷重センサSにより測定されたブレード13にかかる荷重が0になってから指定期間が経過した場合、一連のワークWの研削加工が終了したと判定される。
【0036】
当該判定結果が否定的である場合(
図3/STEP118‥NO)、ワークWの研削のための処理(
図3/STEP110)以降の処理が繰り返される。当該判定結果が肯定的である場合(
図3/STEP118‥YES)、今回研削対象のワークWに対する一連の処理が終了し、次回研削対象のワークWに対する一連の処理が開始される(
図3/STEP102以降の処理が繰り返される)。
【0037】
(効果)
前記機能を発揮するセンタレス研削装置によれば、ワークWと研削砥石11、調整砥石12およびブレード13のそれぞれとの当接箇所P1、P2およびP3の位置が当該目標位置に一致するように、第1砥石並進駆動機構110、第2砥石並進駆動機構120およびブレード並進駆動機構130のそれぞれの動作が制御される。この際、当該当接箇所P1、P2およびP3の位置に応じて、研削砥石11および調整砥石12の間に案内されるワークWの位置が調整されるように、前記当接箇所P4、およびP5が主案内並進駆動機構140、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420のそれぞれの動作で制御される(
図3/STEP106参照)。これにより、段取り換え作業の時間およびコストのさらなる低減が図られる。
【0038】
(本発明の他の実施形態)
制御装置200が、指定因子の入力結果と、研削砥石11、調整砥石12およびブレード13のそれぞれとワークWとの当接箇所P1、P2およびP3の位置の測定結果と、当該ワークWの真円度の測定結果と、の組み合わせを教師データとして、機械学習によってモデルを構築するように構成されてもよい。第1因子のみが教師データに含まれ、第2指定因子の組み合わせごとに当該モデルが構築されてもよい。そして、制御装置200が、当該モデルに指定因子の新たな入力結果を入力データとして入力することにより、新たなワークWの真円度が閾値以上になるような当該ワークWの当接箇所P1、P2およびP3の目標位置を出力データとして出力してもよい。併せて前記当接箇所P4、およびP5も主案内並進駆動機構140、第1副案内並進駆動機構1410および第2副案内並進駆動機構1420の目標位置を出力データとして出力してもよい。
【符号の説明】
【0039】
11‥研削砥石
12‥調整砥石
13‥ブレード
14‥ワーク案内機構
110‥第1砥石並進駆動機構
112‥第1砥石回転駆動機構
120‥第2砥石並進駆動機構
122‥第2砥石回転駆動機構
130‥ブレード並進駆動機構
140‥主案内並進駆動機構
141‥第1案内機構
142‥第2案内機構
1410‥第1副案内並進駆動機構
1420‥第2副案内並進駆動機構
200‥制御装置
201‥入力インターフェース
202‥出力インターフェース
S‥荷重センサ
W‥ワーク。