(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】パテシート、および、パテシートを用いた凹部の平滑化方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240820BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
E04F13/08 Y
E04F13/02 K
(21)【出願番号】P 2022561274
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027818
(87)【国際公開番号】W WO2022102175
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2020201353
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597039423
【氏名又は名称】田島 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】田島 孝
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215021(JP,U)
【文献】特開2009-57812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の表面から貼り付けられるパテシートであって、
合成樹脂エマルジョン系パテ、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテの少なくとも一つの
可撓性を有するパテ材で形成されたパテ層と、
当該パテ層の裏面側に設けられた粘着層と、
を備えたことを特徴とするパテシート。
【請求項2】
前記粘着層に、剥離シートを設けた請求項1に記載のパテシート。
【請求項3】
前記パテ層に、パテ材の厚みを周囲よりも薄くした線状部を設けた請求項1に記載のパテシート。
【請求項4】
合成樹脂エマルジョン系パテ、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテの少なくとも一つの可撓性を有するパテ材で形成されたパテ層、および、当該パテ層を表面側に有する粘着層、を備えたパテシートを、壁面に貼り付けて壁面の凹部を平滑化する方法であって、
前記壁面に、前記パテ層と粘着層とを一体化させたパテシートを貼り付ける工程と、
当該貼り付けられたパテシートの上から上パテ材を塗布する工程と、
当該上パテ材を研磨することによって平滑化処理させる工程と、
を備えた凹部の平滑化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードのつなぎ目地や、壁紙を剥がしたあとの凹部などを平滑化する際に使用されるパテシートおよびそのパテシートを用いた凹部の平滑化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石膏ボードのつなぎ目地や、壁紙を剥がしたあとの凹部などには、パテ材を用いた目地処理が行われる(特許文献1など)。このような目地処理を行う場合、一般的には、ペースト状に調整されたパテ材をコテやヘラなどを用いて下塗りし、その後、サンドペーパーなどで平滑化させる。そして、乾燥させた後、中塗りを行って、同様に、サンドペーパーによる平滑化処理を行い、乾燥させた後、最後に、上塗りとサンドペーパーの研磨による平滑化処理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方法では、次のような問題がある。
【0005】
すなわち、このような目地処理に用いられるパテ材は、水を加えてペースト状に調整されているため、パテ材が乾燥するまでは、次の中塗りや上塗りなどの作業に移ることができない。
【0006】
また、このようなペースト状のパテ材を塗って乾燥させた場合、パテが収縮してしまい、再度、パテを塗り直さなければならないといった問題がある。
【0007】
さらには、このようなパテを塗る作業は、熟練した作業者が工程別に作業する必要があるため、人件費がかかるといった問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、作業時間を短縮化することができるとともに、コストを低減させることのできるパテシートおよびパテシートを用いた凹部の平滑化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、壁面の表面から貼り付けられるパテシートであって、合成樹脂エマルジョン系パテ、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテの少なくとも一つの可撓性を有するパテ材で形成されたパテ層と、当該パテ層の裏面側に設けられた粘着層と、を備えるようにしたものである。
【0010】
このように構成すれば、壁面の凹部を覆うようにパテシートを貼り付けることで、下塗りや中塗りなどの工程が不要になり、貼り付けと同時に凹部を平滑化処理することができるようになる。また、表面をパテ材で構成しているため、そのパテ材を研磨することで、パテシートの境界部分を上パテ材により平滑化させることができるようになる。
【0011】
また、このような発明において、前記粘着層に、剥離シートを設けるようにする。
【0012】
さらに、このパテ層に、パテ材の厚みを周囲よりも薄くした線状部を設けるようにする。
【0013】
このように構成すれば、パテシートを単独でコーナー材として使用した場合であっても、壁面のコーナー部分などのように直角に折り曲げるような部分に対しても、その線状部を介して屈曲させて貼り付けることができるようになる。
【0014】
また、このようなパテシートを用いて壁面の凹部を平滑化させる場合、凹部に対して、合成樹脂エマルジョン系パテ、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテの少なくとも一つの可撓性を有するパテ層、および、当該パテ層を表面側に有する粘着層を備えたパテシートを、壁面に貼り付けて壁面の凹部を平滑化する場合、前記壁面に、前記パテ層と粘着層とを一体化させたパテシートを貼り付け、その後、当該貼り付けられたパテシートの上から上パテ材を塗布し、当該上パテ材を研磨することによって壁面の凹部を平滑化させるようにする。
【0015】
このようにすれば、凹部の周囲との段差をなくして、表面を上パテ材を用いて平滑化させることができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下塗りや中塗りなどの工程が不要になり、貼り付けと同時に凹部を平滑化処理することができるようになる。また、表面をパテ材で構成しているため、そのパテ材を研磨することで、パテシートの境界部分を上パテ材により平滑化させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態を示すパテシートを示す断面図
【
図4】同形態におけるパテシートを石膏ボードのテーパーエッジの溝に貼り付けた状態図
【
図5】同形態におけるパテシートをコーナー保護材に貼り付けた状態図
【
図6】同形態におけるパテシートを直接コーナー部分に貼り付けた状態図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
この実施の形態におけるパテシート1は、
図1に示すように、パテ層2の下に粘着層3を設けて、壁面の凹凸をなくすように貼り付けられるものであって、その上から仕上げの用途に応じて上塗り塗装や壁紙を貼り付けなどを行えるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。なお、ここで「凹部」とは、周囲から凹んだ部分のみならず、段差を有する部分などを含むものとして説明する。
【0020】
まず、パテ層2は、壁面を修復する際に使用されるパテ材によって形成されるものであって、壁面の凹部40を覆うことができるような厚みで形成される。このパテ材としては、乾燥させた状態で可撓性を有するものが用いられ、例えば、合成樹脂、石膏、無機充填材などを主成分とする合成樹脂エマルジョン系パテや、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテなどが用いられる。ここで使用されるパテ材としては、壁面に貼り付ける際にひび割れを生じないような可撓性の性質を有することが好ましい。ここで、「可撓性」とは、例えば、直径25mmから50mmの円筒状の芯材に巻き付けて保管・運搬する場合であっても、ひび割れを生じないような状態や、壁面のコーナー部分(
図5参照)などのように直角な部分に貼り付ける場合であってもひび割れを生じないような状態をいう。また、このパテ層2の厚みについては、薄ければ作業工程中にパテシート1が破れてしまう可能性がある。一方、そのパテ層2が厚ければ、パテシート1と下地との境界部分に段差ができてしまう。そのため、好ましくは、パテ層2の厚みとして、0.10mmから4mm程度としておき、より好ましくは、0.20mmから0.3mmの範囲内としておく。そして、このような厚みにして、表面を平滑化させる。
【0021】
なお、
図2に示すように、このようなパテ層2を線状に薄くした(もしくは、パテ層2のない)線状部21を設けるようにすることもできる。そして、その線状部21を境に直角に折り曲げて、
図6に示すように、壁面のコーナー部分などに直接貼り付けるようにすることもできる。
【0022】
一方、このパテ層2の裏面側には、壁面などに貼り付けるための粘着層3(
図1や
図2参照)が設けられる。この粘着層3としては、凹部40を有する石膏ボード4などに対して粘性する材料で構成され、これによって壁面などに貼り付けられるようにしている。なお、この粘着層3の厚みとしては、可能な限り薄くしておき、パテシート1の全体の厚みが、0.10mmから4mm(好ましくは、0.20mmから0.3mm)となるようにしておく。
【0023】
次に、このように構成されるパテシート1を製造する方法について、
図3を用いて説明する。
【0024】
まず、第一の方法としては、押出成形機を用いてパテシート1を形成する方法である。具体的には、まず、パテ材を生成した後、Tダイ法を用いて、常温もしくは加熱溶融したパテ材をシート状にして吐き出させる。そして、その吐き出されたシートを乾燥・冷却させながら芯材に巻き付けていく。このとき、そのシートの裏面側に、粘着剤と剥離シートを付着させ、ロール状に巻きつけていき、全体としての厚みが、0.10mmから4mm(好ましくは、0.20mmから0.3mm)であって、幅が2cmから10cmのパテシート1を製造する。このような方法を用いれば、大量にパテシート1を形成することができるとともに、厚みも均一にすることができるため、工業製品として販売することも可能になる。
【0025】
また、別の方法としては、作業台の上にビニールシートなどを敷き、その上にヘラやコテなどを用いてパテ材を塗り付ける方法を用いることもできる。そして、このように塗り付けられたパテ材を乾燥させた後に、そのパテ層2をビニールシートから剥離し、所定の寸法に裁断して、粘着剤を塗布するか、あるいは、剥離紙を有する粘着シートを作業台に敷き、その上から、ヘラやコテなどを用いてパテ材を塗り付けてもよい。このような方法によれば、製造装置を有することなく、簡便な方法でパテシート1を形成することができる。
【0026】
次に、このように形成されたパテシート1を用いて、壁面の凹部40を平滑化処理する場合の工程について説明する。
【0027】
まず、ベベルエッジ41やテーパーエッジ42などのように境界部分が傾斜している石膏ボード4の凹部を平滑化させる場合、その石膏ボード4の目地である凹部40を覆うようにパテシート1を貼り付ける。このとき、
図4に示すように、テーパーエッジ42で形成された緩やかに傾斜した大きな凹部40を埋める場合は、その凹部40を埋めるようにパテシート1を貼り付ける。
【0028】
そして、このように貼り付けられたパテシート1の上からパテを上塗り処理する。このとき、貼り付けられたパテシート1は、すでに乾燥した状態であるため、パテシート1を貼り付けたると同時に、上塗りをすることが可能となる。また、そのパテシート1の表面は、パテ材で粗面状となっているため、上塗りパテを塗る場合であっても、上パテ材が剥離してしまうようなことがなくなる。
【0029】
そして、このように上塗り処理されたパテを乾燥させた後、パテシート1と下地の石膏ボード4の境界部分を、必要に応じてサンドペーパーなどで平滑化し、その後、塗装仕上げや壁紙の貼り付けを行う。
【0030】
また、ここでは、石膏ボード4の境界部分の凹部40を埋める場合について説明したが、
図5に示すように、壁面のコーナー部分に取り付けられたコーナー保護材5の境界部分を平滑化する場合にも適用することができる。一般に、このようなコーナー部分には、プラスチック製のコーナービートと称されるコーナー保護材5が貼り付けられる場合があるが、このようなコーナー保護材5と石膏ボード4との境界部分には、段差が生じてしまう。そこで、このようなコーナー保護材5と石膏ボード4の境界部分を埋めるようにパテシート1を貼り付けるようにしてもよい。
【0031】
もしくは、このような石膏ボード4のコーナー部分に対してコーナー保護材5を用いることなく、
図2に示す線状部21を備えたパテシート1を用いてもよい。このとき、
図6に示すように、パテシート1の線状部21を折り曲げて石膏ボード4のコーナー部分に貼り付け、そのコーナー部分を保護できるようにしてもよい。
【0032】
このようにパテシート1を貼り付けた場合も、同様に、その貼り付けられたパテシート1に対して、上から上パテ材を塗り、段差部分を平滑化する。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、壁面の表面から貼り付けられるパテシート1であって、合成樹脂エマルジョン系パテ、石膏系パテ、炭酸カルシウム系パテの少なくとも一つの可撓性を有するパテ材で形成されたパテ層2と、当該パテ層2の裏面側に設けられた粘着層3と、を備えるようにしたので、下塗りや中塗りなどの工程が不要になり、貼り付けと同時に凹部40を平滑化処理することができるようになる。また、表面をパテ材で構成しているため、そのパテ材を研磨することで、パテシート1の境界部分を上パテ材により平滑化することができるようになる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、パテ層2の裏面に粘着層3を形成するようにしたが、その間に中間層を設けてもよい。このような中間層としては、粘着層3とパテ層2との粘着性を高めるための層や、パテシート1の強度を高めるための補強層などを設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、ロール状に巻き付けられた幅2cmから10cmのパテシート1を例に挙げて説明したが、平面視において矩形状、あるいは、円形に切り取られたパテシート1とし、これを壁面の部分的な凹部40に貼り付けるようにしてもよい。
【0037】
さらに、上記実施の形態では、パテ層2を均一な厚みで形成するようにしたが、パテシート1の周辺部分の縁部については厚みを薄くして、パテシート1と石膏ボード4との段差をなくすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・・パテシート
2・・・パテ層
21・・・線状部
3・・・粘着層
4・・・石膏ボード
41・・・ベベルエッジ
42・・・テーパーエッジ
5・・・コーナー保護材