(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】床用目地装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
(21)【出願番号】P 2023008937
(22)【出願日】2023-01-24
【審査請求日】2023-02-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-329625(JP,A)
【文献】実開昭57-162280(JP,U)
【文献】特開平06-135677(JP,A)
【文献】実公昭50-044703(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体と他方の躯体間の目地部を塞ぐ床用目地装置であって、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に形成された第2の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部に一端部側が支持された状態で取り付けられ、前記第2の目地プレート支持部に他端部側が支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレートとで構成され、
前記目地プレートは、目地プレート本体と、前記目地プレート本体の
前後方向の側面にそれぞれ形成され、前記目地プレート本体を吊り上げるための吊り上げ具が係合し、
前記目地プレート本体の底面の寸法が上面の寸法よりも小さくなる形状で、使用状態において目視できない略クランク状の係合部とで構成され、
前記目地プレートは、前後方向に数ミリ程度の間隔を有して複数個設置され、
前記前後方向とは、前記第1の目地プレート支持部が延在する方向である床用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレート本体には、その
左右方向の側面にもそれぞれ断面視略クランク状の前記係合部が形成され、前記係合部は前記目地プレート本体の全周に形成されていることを特徴とする請求項1記載の床用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面間の目地部を塞ぐ床用目地装置として、ある程度重量のある目地プレートを用いた床用目地装置が広く知られている。このような床用目地装置の目地プレートは、メンテナンスの際に目地部から移動させてメンテナンスを行うことになるが、重量が大きいためクレーン等で吊り下げて移動することが一般的である。クレーンで移動可能な目地プレートを備える床用目地装置としては「目地部を介して建てられた左右の建物の一方の建物の目地部側床躯体に目地部に開口するように形成された目地プレート支持凹部と、この目地プレート支持凹部と対応する他方の建物の目地部側床躯体に目地部に開口するように形成された目地プレートスライド移動支持凹部と、この目地プレートスライド移動支持凹部と前記目地プレート支持凹部を覆うように取付けられた目地プレートと、この目地プレートの先端部と前記目地プレートスライド移動支持凹部の反目地部側部位とに形成された目地部が狭くなると、該目地プレートの先端部を他方の建物の床面上へ導く傾斜面を用いたガイド機構と、前記目地プレート支持凹部に固定された上部が反目地部方向に突出するくさび状あるいは逆L字状の支持片と、前記目地プレートの後端部に形成された前記支持片が挿入される支持片挿入凹部と、前記目地プレートの四角に上面より、移動時には吊り下げボルトを取付けることができ、不使用時にはボルトを取付けておくことができるように固定されたナットとからなることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような床用目地装置では、移動時にアイボルト等の吊り下げボルトを螺合させる必要があるが、長期間設置されていた目地プレートにおいてはネジ部が風雨や砂等により劣化してしまいボルトを適切に螺合できないおそれがあった。また、通常時もナットやボルト等が表面にあらわれるため、目地プレートの表面の統一感が失われ美観を損なうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、美観を損なうことなく、かつ、クレーン等を用いて適切に吊り上げることができる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0007】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の床用目地装置は、一方の躯体と他方の躯体間の目地部を塞ぐ床用目地装置であって、前記一方の躯体に設けられた第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に形成された第2の目地プレート支持部と、前記第1の目地プレート支持部に一端部側が支持された状態で取り付けられ、前記第2の目地プレート支持部に他端部側が支持され、前記目地部を塞ぐ目地プレートとで構成され、前記目地プレートは、目地プレート本体と、前記目地プレート本体の前後方向の側面にそれぞれ形成され、前記目地プレート本体を吊り上げるための吊り上げ具が係合し、前記目地プレート本体の底面の寸法が上面の寸法よりも小さくなる形状で、使用状態において目視できない略クランク状の係合部とで構成され、前記目地プレートは、前後方向に数ミリ程度の間隔を有して複数個設置され、前記前後方向とは、前記第1の目地プレート支持部が延在する方向であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の床用目地装置の前記目地プレート本体には、その左右方向の側面にもそれぞれ断面視略クランク状の前記係合部が形成され、前記係合部は前記目地プレート本体の全周に形成されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、目地プレート本体の側面に吊り上げ具が係合する断面視略クランク状の係合部が形成されているので、目地プレートの上面(使用時に目視できる部位)に係合部があらわれることなく、かつ、クレーン等を用いて目地プレートを適切に吊り上げることができる。
(2)また、目地プレートの両側部に係合部を形成することにより、目地プレートの端部はクランク状に屈曲した状態となり、剛性を向上させることができる。
(3)請求項2に記載の発明においても、前記(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、長手方向の側面にもそれぞれ断面視略クランク状の前記係合部が形成されていることにより、ゴミやホコリ等が発生しても、これらをこの係合部に落とし込むことができ、目地プレートと躯体との隙間にゴミが詰まることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至
図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至
図14は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【
図1】第1の実施形態を示す床用目地装置の平面図(通常時)。
【
図7】地震で目地部が狭くなった状態の動作説明図。
【
図8】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
【
図9】第2の実施形態を示す床用目地装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1乃至
図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた一方の躯体3及び他方の躯体4間に設置された床用目地装置である。
【0015】
なお、左右方向とは
図1(平面視)における左右方向(目地プレート7の長手方向)であり、前後方向とは
図1における上下方向(目地プレート7の幅方向、前記長手方向と直交する方向)、上下方向とは
図2における上下方向(目地プレート7の厚さ方向)をいう。
【0016】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0017】
本実施形態の床用目地装置1は、
図1乃至
図3に示すように、一方の躯体3に設けられた第1の目地プレート支持部5と、他方の躯体4に形成された第2の目地プレート支持部6と、前記第1の目地プレート支持部5に一端部側が支持された状態で取り付けられ、前記第2の目地プレート支持部6に他端部側が支持され、前記目地部2を塞ぐ本発明の目地プレート7とで構成されている。
【0018】
一方の躯体3には第1の目地プレート支持部5が形成されており、この第1の目地プレート支持部5は、例えば
図2に示すように、本実施形態では一方の躯体3の目地部2側の床面に前後方向に延在するように形成された凹所状の部位で、後述する目地プレート7の一端部の前後側の両端部に設けられた杭ケース8に挿入される係止杭9が設けられている。なお、一方の躯体3の目地部2側の壁面に略アングル状又は略クランク状等の金属製の部材を固定し、第1の目地プレート支持部5としてもよい。
【0019】
他方の躯体4には、第2の目地プレート支持部6が形成されており、この第2の目地プレート支持部6は地震時に目地プレート7が左右方向に摺動できる程度の長さに形成されている。また、第2の目地プレート支持部6の目地部2と反対側の端部には、地震によって目地部2が狭くなった場合に、目地プレート7が乗り上げる乗り上げ傾斜面10が形成されている。
【0020】
本発明の目地プレート7は、通常時においては
図1等に示すように、一端部に形成された杭ケース8に第1の目地プレート支持部5に設けられた係止杭9が挿入され、取付状態で一端部が支持され、他端部が第2の目地プレート支持部6に直接又は間接的に(支持プレート等を介して)支持された状態で目地部2の前後方向に複数個隙間なく設けられている。
【0021】
この目地プレート7は、
図4及び
図5に示すように、面視長方形状で金属材製の目地プレート本体11と、この目地プレート本体11の一端部の両側部に設けられた前記杭ケース8と、目地プレート本体11の前後方向(幅方向)の側面11aにそれぞれ形成され、前記目地プレート本体11を吊り上げるための吊り上げ具12が係合する断面視略クランク状の凹所に形成された係合部13と、前記目地プレート本体11の内部に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材14と、この充填部材14の上面に貼り付けられた大理石等のタイルやレンガ等の化粧板15と、目地プレート本体11の他端部側にヒンジ部材16を介して取り付けられたカバープレート17とで構成されている。
【0022】
ところで本実施形態においては、上面が平坦な目地プレート本体11を用いているが、左右方向(長手方向)に傾斜がある目地プレート本体11や、前後方向(長手方向と直交する方向)に傾斜がある目地プレート本体11を用いてもよい。また、浅皿状の目地プレート本体11の内部に目地プレート本体11の長手方向に延在する複数のリブや格子状のリブ等の補強材(図示せず)を固定的に設けてもよい。このような補強材を設ける場合、目地プレート本体11の内部の底部に補強材の下端部を溶接等により固定し、その後充填部材14を充填する。
【0023】
本実施形態では、浅皿状の目地プレート本体11を用い、この目地プレート本体11の内部に充填部材14を充填し、化粧板15を設けたものを用いたが、例えば板状(中実)の目地プレート本体11を用いた目地プレート7としてもよいし、化粧板15やカバープレート17等を備えない目地プレート7としてもよい。
【0024】
係合部13は、目地プレート本体11の下側が小寸法となる(目地プレート本体11の底面の寸法が上面の寸法よりも小さくなる)形状の断面視略クランク状に形成されており、目地プレート本体11の幅方向の側面11aに左右方向に延在するよう、全面に形成されている。このような形状であるため、吊り上げ具12が係合できるとともに、目地プレート7の上面にはこの係合部13はあらわれず、使用状態において、係合部13が目視できない状態となる。これにより、化粧板15等の目地プレート上面にあらわれる模様等が損なわれることなく、美観を維持することができる。なお、本実施形態においては、係合部13は目地プレート本体の前後方向の側面11aの全体に形成しているが、一部にのみ形成したものを除外するものではない。
【0025】
目地プレート7は使用状態においては前後方向に数ミリ程度、本実施形態においては前後方向に2mm程度の間隔を有して略隙間なく設置されており、吊り上げ具12はこの隙間から挿入可能で、かつ、係合部13に係合可能なものが用いられる。例えば、本実施形態では
図6に示すように、金属板を略アングル状に折り曲げた1対の吊り上げ具本体12aと、この吊り上げ具本体12aを連結するように固定されたバー部材12bとで構成されるもの等が用いられる。このバー部材12bをクレーン18等に連結し、クレーン18等で目地プレート7を吊り上げ、メンテナンスを行う。
【0026】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなると、
図7に示すように、目地プレート7は第2の目地プレート支持部6の乗り上げ傾斜面10を乗り上げて地震による揺れ動きを吸収する。
【0027】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、
図8に示すように、目地プレート7が左右方向に摺動し、地震による揺れ動きを吸収する。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図9乃至
図14に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
図9乃至
図14に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、左右方向(目地プレート本体の長手方向)の側面11bにもそれぞれ係合部13を形成した目地プレート本体11Aを用いた目地プレート7A及びこの目地プレート7Aを用いた床用目地装置1Aにした点で、このような目地プレート7A及び床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
本実施形態においては、係合部13がすべての側面に形成されており、係合部13は前記目地プレート本体11Aの全周に形成されている。このように係合部13を形成することにより、必要に応じて目地プレート7Aの長手方向の側面に吊り上げ具12を係合させ、目地プレート7Aを吊り上げることができる。
また、ゴミやホコリ等が発生しても、この係合部に落とし込むことができ、目地プレートと躯体との隙間にゴミが詰まることを防止でき、第1の目地プレート支持部5にゴミ排出用の切り欠き等(図示せず)を形成することにより、係合部13に侵入したゴミを目地部2の下方へ排出することもでき、目地プレート支持部5、6にゴミ等が貯まることを防止できる。
【0030】
なお、本発明の実施形態では、化粧板やカバープレートを備える目地プレートについて説明したが、これらは必ずしも設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0032】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:第1の目地プレート支持部、 6:第2の目地プレート支持部、
7、7A:目地プレート、 8:杭ケース、
9:係止杭、 10:乗り上げ傾斜面、
11、11A:目地プレート本体、 12:吊り上げ具、
13:係合部、 14:充填部材、
15:化粧板、 16:ヒンジ部材、
17:カバープレート、 18:クレーン。