(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】仕上げテープ
(51)【国際特許分類】
A41D 27/24 20060101AFI20240820BHJP
A41H 43/04 20060101ALI20240820BHJP
A41D 27/06 20060101ALI20240820BHJP
D05B 35/06 20060101ALI20240820BHJP
D06C 25/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A41D27/24 B
A41H43/04
A41D27/06 E
A41D27/24 D
D05B35/06 101
D06C25/00 A
(21)【出願番号】P 2023018228
(22)【出願日】2023-02-09
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000187714
【氏名又は名称】松下工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】松下 行利
(72)【発明者】
【氏名】倉地 辰盛
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-131311(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123816(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0042817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/24
A41H 43/04
A41D 27/06
D05B 35/06
D06C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の端部の折り返しを接着する仕上げテープであって、
内面同士の少なくとも幅方向の一部を対向させるとともに外面にホットメルト接着剤層を有する一対の支持テープと、
前記一対の支持テープを
縫着するまつり縫い線と
を備え、
前記一対の支持テープの少なくとも一方が、幅広の外側テープと、外側テープより幅狭の内側テープとを重ねて構成されている仕上げテープ。
【請求項2】
前記まつり縫い線が上糸と下糸とからなる2本糸奥まつり縫い線である請求項1に記載の仕上げテープ。
【請求項3】
前記一対の支持テープは幅が等しく、かつ幅方向の両端が揃えられている請求項1に記載の仕上げテープ。
【請求項4】
前記一対の支持テープの間に挟持されて前記一対の支持テープ同士を長手方向の端部で接着するとともに、前記まつり縫い線の端部をほつれ止めする両面接着シートを備える請求項1に記載の仕上げテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布地の端部を簡単に仕上げるための仕上げ用テープに関し、特に2枚のテープを逢着した仕上げ用テープ、及びこれを縫製するミシンと治具に関する。
【背景技術】
【0002】
背広上着の身ごろ端部の仕上げ等には、布地端縁に沿ってほつれ処理の縫製を施したのち布地端縁を内側に折り返し、奥まつり縫いミシンにより、奥まつり縫いが施されている。
【0003】
ところが、奥まつり縫いミシン、特に2本糸奥まつり縫いミシンは、非常に高価なため、限られた工場にしかなく、高級上着と称される奥まつり縫い目を備えた上着は、数少なくなっている。
上着の縫製を依頼する企業が、奥まつり縫いミシンのない縫製工場に奥まつり縫いを要求すれば、手まつり(人海戦術)となるため、疲弊している工場では、仕事を受け入れないケースも多々見受けられる。かかる状況は海外でも同様で、奥まつり縫いを受け入れる工場は、少なくなっている。
これらの現状より、奥まつり縫い目、特に2本糸奥まつり縫い目を備えた高級上着が、消えていく危惧がある。
【0004】
一方で、廉価な背広上着等では、折り返したヘムを、直接本縫いミシンで縫製する方法が広く用いられる。または布地の端部を仕上げテープにより仕上げる方法もある。(特許文献1乃至特許文献3参照)。
例えば、特許文献1では、テープ本体の両面に幅方向の半分ずつ接着剤層を設けた仕上げ用テープが提案されている。特許文献1の仕上げ用テープでは、表裏の接着剤を幅方向の内側と外側にずらして設けることで、表裏別々に接着ができるよう構成されている。
【0005】
また、特許文献2では、テープ本体の片面に接着剤層を設け、その表面中央から両面接着シートを分岐状に並設した仕上げ用テープが提案されている。特許文献2の仕上げ用テープは、その両面接着シートを折返した布地間に挟み込んで接着させ、その上からテープ本体でさらに接着を行なうことで、二重に接着して強度を確保するよう構成されている。
【0006】
ところが、特許文献1や特許文献2の仕上げ用テープでは、接着部が完全に固着されて融通性がなくなり、歪の吸収ができず布地が引きつれてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献3では、2枚の接着用テープの間に非接着用テープを設け、接着用テープと非接着用テープを逢着することで、折り返した布地間を完全に固着しないようにして歪を吸収させ、布地が引きつらないようにした止め仕上げテープが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実公昭59-17852号公報
【文献】実公昭56-18585号公報
【文献】実公平8-6074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、背広の上着端部の仕上げ部では、まつり縫いによる縫製線が高級品の証であるところ、非特許文献3の止め仕上げ用テープでは、縫製線がまつり縫いでないため、高級服には用いにくいという問題や、折り返した端部から仕上げテープが半分以上露出し、見た目が悪いという問題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高級服同様にまつり縫いを施したように見え、テープ本体が折り返し部分の外側に表れない見た目の良い奥まつり仕上げテープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、布地の端部の折り返しを接着する仕上げテープであって、内面同士の少なくとも幅方向の一部を対向させるとともに外面にホットメルト接着剤層を有する一対の支持テープと、前記一対の支持テープを逢着するまつり縫い線とを備える。
【0011】
本発明に係る仕上げテープは、このように一対の支持テープの外面にホットメルト接着剤層を設けたので、洋服の身ごろ端部を折り返した際の身ごろとヘム(折り返し)の間に当該接着テープを挟持してアイロンがけするだけで身ごろとヘムを接着することができる。
また、一対の支持テープを内面の幅方向の少なくとも一部が対向するように配設したので、一対の支持テープの内面同士が全く対向しない場合に比べて、支持テープがヘムの外側に表れることを抑制できる。
そして、一対の仕上げテープをまつり縫いで縫製したので、ヘムをめくり上げた際にまつり縫いの縫製線が覗くため、身ごろとヘムを直にまつり縫いした高級服と同様の美観を得ることができる。
【0012】
そして、本発明の仕上げテープは、前記一対の支持テープの少なくとも一方が、幅広の外側テープと、外側テープより幅狭の内側テープとを重ねて構成されていることを特徴とする。こうすることで、一対の支持テープ間を広げた際に、まつり縫いの糸が支持テープから抜け落ちることを抑制できる。特に支持テープが織地の場合は、こうすることで、支持テープの幅方向に延びる織糸が抜け落ちることを抑制できる。
【0013】
本発明の仕上げテープは、前記まつり縫い線が上糸と下糸とからなる2本糸奥まつり縫い線であることが好ましい。こうすることで、支持テープを引っ張る力を2本のまつり縫い線に分散できるので、支持テープからまつり縫い糸が抜け落ちることをさらに抑制できる。また、まつり縫い線を2本糸にすることで、まつり縫い線に高級感を与えられる。
【0014】
前記一対の支持テープは、幅が等しく、かつ幅方向の両端が揃えられているとよい。こうすることで、一層ヘムの外側に支持テープがはみ出なくなる。また、一対の支持テープの幅を同じにすることで、一対の支持テープをまつり縫いする場合に上側支持テープと下側支持テープを区別する必要が無いため、製造コストを節約できる。
【0015】
本発明の仕上げテープは、前記一対の支持テープの間に挟持されて前記一対の支持テープ同士を長手方向の端部で接着するとともに、前記まつり縫い線の端部をほつれ止めする両面接着シートを備えることが好ましい。こうすることで、ヘムの両端を身ごろに容易に接着でき、まつり縫い線の両端を容易にほつれ止めできる。
【0016】
本発明は、上述した仕上げテープを縫製するための奥まつり縫いミシンであって、布地を手前側から後方へ送るようにして縫製するよう構成され、下方に湾出する円弧状をなすとともに、針先が後方を向いた状態で前後への揺動と右又は左への移動を交互に繰り返すまつり縫い針と、前記まつり縫い針の下方から前記下側支持テープを持ち上げる下プランジャーと、前記まつり縫い針の側方から前記上側支持テープを前記縫い針の前へ突出させる横プランジャーと、縫着前の一対の支持テープを前記まつり縫い針の前方から前記縫い針へと案内する支持テープ案内用ラッパとを備え、前記支持テープ案内用ラッパは、前後方向に延び、手前側開口と奥側開口とを有し、断面が左右方向を幅方向とし上下方向を厚み方向とする扁平管状をなし、前記一対の支持テープのうち縫製時に下側となる下側支持テープを挿通する下側ラッパと、前後方向に延び、手前側開口と奥側開口とを有し、断面が左右の一側に立設される立辺と、前記立辺から左右の他側に延びる横辺とからなるL字形を有する管状をなすとともに、前記立辺が前記下側ラッパの幅方向の中間かつ下側ラッパの上側に重ねて配設され、前記支持テープのうち縫製時に上側となる上側支持テープを挿通して、前記横プランジャーに前記立辺から送出される前記上側支持テープの直立部分を供給する上側ラッパとを有することを特徴とする奥まつり縫いミシンを含む。
【0017】
本発明の奥まつり縫いミシンは、このように断面が扁平形状をなす下側ラッパの幅方向の中間位置上に上側ラッパの立辺を配設したので、上側支持テープの幅方向の一側半分を垂直に立ち上げるようにして上下の支持テープを重ねた状態で、上下の支持テープをまつり縫い針へ案内することができる。
【0018】
本発明の奥まつり縫いミシンは、前記下プランジャー、及び/又は前記横プランジャーが先端に前後方向に延び、前記まつり縫い針の前後への揺動を案内する案内溝を有することが好ましい。こうすることで、支持テープに対し十分に深く、あるいは支持テープの外面まで縫い糸を通すことができる。
【0019】
本発明は、上述した仕上げテープを縫製するために用いられる仕上げテープ案内用ラッパを含む。
当該仕上げテープ案内用ラッパは、布地を手前側から後方へ送るようにして縫製するよう構成され、先端部分が下方に湾出する円弧状をなすとともに、先端が後方を向いた状態で前後への揺動と右又は左への移動とを交互に繰り返すまつり縫い針と、前記まつり縫い針の下方から前記下側支持テープを持ち上げる下プランジャーと、前記まつり縫い針の側方から前記上側支持テープを前記縫い針の前へ突出させる横プランジャーとを備えた奥まつり縫いミシンに付設されるものである。
当該仕上げテープ案内用ラッパは、縫着前の一対の支持テープを前記まつり縫い針の前方から当該まつり縫い針へと案内するよう構成され、前後方向に延び、手前側開口と奥側開口とを有し、断面が左右方向を幅方向とし上下方向を厚み方向とする扁平管状をなし、前記一対の支持テープのうち縫製時に下側となる下側支持テープを挿通する下側ラッパと、前後方向に延び、手前側開口と奥側開口とを有し、断面が左右の一側に立設される立辺と、前記立辺から左右の他側に延びる横辺とからなるL字形を有する管状をなすとともに、前記立辺が前記下側ラッパの幅方向の中間かつ下側ラッパの上側に重ねて配設され、前記支持テープのうち縫製時に上側となる上側支持テープを挿通して、前記横プランジャーに前記立辺から送出される前記上側支持テープの直立部分を供給する上側ラッパとを備える。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の仕上げテープによれば、支持テープが布地の折り返し部分の外側に表れにくく、布地の折り返し部にまつり縫いを施したような美観を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る仕上げテープで接着した身ごろ端部の両端を閉じる前の身ごろ端部をヘムを持ち上げて示した模式的部分斜視図である。
【
図2】
図1の身ごろ端部を長手方向の両端を接着して閉じた状態の部分斜視図である。
【
図3】
図1に示した仕上げテープを、まつり縫い線を表示すべく上側支持テープを持ち上げて示した模式的斜視図である。
【
図6】
図2に示した身ごろ端部をまつり縫い線までまくり上げた状態の部分斜視図である。
【
図7】
図1の仕上げテープを背広後見ごろに適用した例を示す説明図である。
【
図8】(a)
図1の仕上げテープの奥まつり縫い線を示した模式図である。(b)(a)のまつり縫い線の部分拡大図である。
【
図9】本発明の一の実施の形態に係る奥まつり縫いミシンの(a)側面視概要図、(b)Y-Y線断面図である。
【
図10】
図1の奥まつり縫いミシンの支持テープ案内用ラッパの使用状態をそのミシンの前方側から見た斜視図である。
【
図11】
図10の奥まつり縫いミシンの(a)は横プランジャーの(b)は下プランジャーの動作を示す説明図である。
【
図12】
図10の奥まつり縫いミシンの先引きプーラーの動作を示す説明図である。
【
図13】
図11の下プランジャーの(a)正面図、(b)右側面図、(c)平面図である。
【
図14】
図11の横プランジャーの(a)正面図、(b)平面図(c)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面を用いて本発明の一の実施形態について詳述する。ただし、本発明は以下の実施形態に限られるものではない。
【0023】
(仕上げテープ)
図1乃至
図6は、本発明の一の実施形態に係る仕上げテープ100を示している。仕上げテープ100は、例えば、背広上着の前身頃端部や後身頃端部の折り返し処理、ズボンの裾上げ等、布地A端部の折り返し部分を布地本体部分に接合するために用いられる。仕上げテープ100は、
図3乃至
図5に示すように、一対の支持テープ10,10と、一対の支持テープを逢着するまつり縫い線3と、一対の支持テープ10,10を端部で接着する両面接着シート5を備えている。仕上げテープ100は、例えば、ロール状にして販売され、適宜の長さに切断して使用される。
【0024】
支持テープ10は、
図5に示すように、外側テープ1と内側テープ2とを内外に重ねて構成されている。支持テープ10を貼着したことが布地の表側に響かないように、支持テープ10は薄い方が好ましいが、支持テープを1枚の薄いテープで構成した場合、まつり縫い線に力が加わった際に、まつり縫い線が支持テープを破って外れてしまう虞がある。
特に支持テープを1枚の薄い織地製のテープで構成した場合、まつり縫い線に力が加わった際に、まつり縫い線に当該テープの幅方向の織糸が引っ張られて抜け落ち、支持テープが崩壊する恐れがある。支持テープ10を薄い外側テープ1で構成する一方で、外側テープ1の内側に内側テープ2を重ねて設けることで、まつり糸の抜け落ちや、外側テープ1の織糸の抜け落ちを抑制できる。
内側テープ2は、外側テープ1よりも幅狭に設けられていることが好ましく、こうすることで、支持テープ10が布地の表側に響くことを、さらに抑制できる。
【0025】
一対の外側テープ1,1は、帯状のシート材からなり、少なくとも内面の幅方向の一部を対向するよう設けられている。外側テープ1は、樹脂製テープ、不織布、織地、編地、紙等を用いることができ、不織布、織地、編地が好ましく、織地が特に好ましい。外側テープ1は、特に限定されないが、幅が10mm以上20mm以下であることが好ましく、例えば、15mmのものを好適に用いることができる。外側テープ1は、横糸1bと経糸1cが、幅方向に対し、例えば45度の角度で傾斜する織地を用いることができる(
図3、
図4参照)。
【0026】
外側テープ1は、外面にホットメルト接着剤層1aを備えている。ホットメルト型接着剤としては、アイロンの熱によって溶融する融点の低い接着剤であれば、特に限定されず、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。
【0027】
一対の内側テープ2,2は、
図3、
図5に示すように、帯状のシート材からなり、外側テープ1の内面に接合されている。内側テープ2は、樹脂製テープ、不織布、織地、編地、紙等を用いることができ、不織布、織地、編地が好ましく、織地が特に好ましい。
【0028】
内側テープ2は、特に限定されないが、幅が3mmから7mmが好ましく、例えば、外側テープの幅が15mmの場合は、内側テープ2は幅が5mm程度のものが用いられる。内側テープ2は、外側テープ1に対し、接着剤により接着してもよいし縫着してもよいが、内側テープが布地Aの表側に響かないように、縫着することが好ましい。この縫着方法も特に限定されず、ジグザグ縫いや曲線縫いであってもよいが、直線縫いが内側テープを細くできる点で好ましい。
外側テープ1、及び内側テープ2が共に織地の場合、内側テープ2の横糸2b、及び経糸2cの交差する方向は、外側テープ1の横糸1b、経糸1cの交差する方向と異なることが好ましく、例えば、外側テープ1の横糸1bと経糸1cが幅方向に対し45度の角度で傾斜する場合は、内側テープ2は、横糸2bと経糸2cの一方がその幅方向に対し直角で、他方が平行であるとよい(
図3参照)。こうすることで、まつり縫い線3や直線縫い線4により外側テープ1や内側テープ2の織り糸が抜け落ちることが抑制できる。
内側テープ2の幅方向の一側の端縁は、外側テープ1の幅方向の一側端縁に揃えられていることが好ましい。かかる仕上げテープ100を一側の端縁を外側にしてヘムCの内側に挟むことで、ヘムの端縁近傍にまつり縫い糸3を配置でき、外側からまつり縫い糸が視認しやすい。
また、内側テープ2は、外側テープ1と一体の帯状シートからなり、外側テープ1の幅方向の一端を折り曲げたものであってもよい。
【0029】
まつり縫い線3は、本実施例では、いわゆる2本糸奥まつり縫いミシンにより、
図8に示すような上糸31と下糸32とからなる2本奥まつり縫いに形成されている。まつり縫い線3は、
図8(a)に示すように、上糸31と下糸32が共にジグザグ状に一対の支持テープ10,10間を往復するよう構成されている。詳細には、まつり縫い線3は、
図8(b)に示すように、上糸31が支持テープ10(外側テープ1)の外面で2つ折り状に折り返す表目31aにより下糸32を引き掛けるように構成されている。本実施形態のまつり縫い線3の縫製に用いる2本糸奥まつり縫いミシンとしては、ストローベル(登録商標)の2本糸奥まつり縫いミシン(品番310D-R)ロングアーム2本糸奥まつり縫いミシン(品番3100D-R)を用いることができる。上糸31は、奥まつりミシンのまつり縫い針により供給され、下糸32は、ボビンにより供給される。
【0030】
両面接着シート5は、ポリアミド100%の不織布からなり、両端に1つずつ計2枚設けられている。両面接着シート5は、少なくとも両面に、上述したホットメルト型接着剤層を有するものであればよいが、全体がホットメルト樹脂を構成するものでもよい。
両面接着シート5は、予め使用するサイズに切断されていてもよいし、使用時に切断するようロール状であってもよく、仕上げテープ100に含めてセットで販売されることが好ましいが、仕上げテープ100に含めず、別途販売してもよい。
【0031】
奥まつり縫い線3に用いる糸は、特に限定されないが、テトロン(登録商標)の80番手、100番手などを好適に用いることができる。
【0032】
(仕上げテープの使用方法)
次に、仕上げテープ100を用いて、身ごろAの端部を折り返したヘムCと身ごろ本体Bとを接着する方法について説明する。ヘムCの端縁は、
図1等に示すように、通常布地のほつれを防止するためにほつれ止め部C1が設けられている。ほつれ止め部C1は、
図1等に示したように端縁を折り返してほつれ止め縫い線C1aで逢着する方式や、図示は省略したが、ヘムC端部にテープを巻いて縫着するいわゆるパイプ方式などが有る。
【0033】
仕上げテープ100で、身ごろA端部を接着する場合は、支持テープ10がほつれ止め部C1のヘムCにおける裏側の端縁を隠すべく、当該端縁に乗り上げるようにして仕上げテープ100をヘムCと身ごろ本体Bの間に挟み込む。この状態で、
図2の様にヘムを閉じた状態で上側からアイロンで加熱してヘム側の外側テープ1とヘムCとを接着する。ヘム側を接着したら裏返して身ごろ本体B側からアイロンをかけて身ごろ側の外側テープ1と身ごろ本体Bを接着する。
【0034】
しかる後、仕上げテープ100の両端部において、一対の内側テープ2,2の間に、まつり縫い線3の端部を接着するように、両面接着シート5を挟み込み、ヘムC又は身ごろ本体Bの上からアイロンがけして、一対の内側テープ2,2を接着する。
【0035】
奥まつり縫いミシンでじかに身ごろ本体BとヘムCをまつり縫いする従来の方法では、縫製終了後針先から布地を引き出す際に糸が長く引き出され、縫い始めと縫い終わりの残り糸を玉結びして切断しヘムの内側に入れ込む手作業が発生する。
これに対し、仕上げテープ100では、両面接着シート5を用いることで、簡単に身ごろ本体BとヘムCの両端を閉じることができ、同時にまつり縫い線3のほつれ止めができる。
【0036】
図6は、仕上げテープ100を用いて仕上げ処理した見ごろ端部において、ヘムCを持ち上げて内部を覗いた様子を示しており、高級服に施される2本糸奥まつり縫い線と同様のまつり縫い線を視認することができる。
【0037】
図7は、背広上着の後見ごろAの右半分を示している。この後見ごろAでは、下縁を折り返したヘムCの上にセンターベント側のヘムC2が重なる重なり部C1bが生じる。この重なり部C1bの内部までミシンでじかにまつり縫いすることは不可能である、その為、両端は衣服のデザインによるが、手まつり仕上げとなる。仕上げテープ100を用いる場合には、その端部100Aを重なり部C1bの下方に差し込めるので、重なり部C1bまで、まつり縫い線4を施すことができる。
【0038】
(奥まつり縫いミシン)
図9は、本発明の奥まつり縫いミシン200を概略的に示している。奥まつり縫いミシン200は、市販の2本糸奥まつり縫いミシンMに、支持テープ案内用ラッパ6、下プランジャー71・横プランジャー72、テープ供給部8、及び先引きプーラー9を付設して構成されている。本発明の奥まつり縫いミシンには符号200を付し、そのベースとなる市販の奥まつり縫いミシンには符号Mを付す点に注意されたい。
【0039】
奥まつり縫いミシンMは、
図9に示すように、まつり縫い針M1を備えている。まつり縫い針M1は、下側に湾出した円弧状をなし、ミシン後方(
図9(a)の左方)に針先M1aを向けた状態で、前後に揺動するよう構成されている。針先M1aには、上糸31が挿通される。
【0040】
(支持テープ案内容ラッパ)
支持テープ案内用ラッパ6は、
図10、
図11に示すように、上側ラッパ61と下側ラッパ62とを備えている。
上側ラッパ61は、ステンレス等の金属薄板を板金加工して全体が一体的に形成されており、当該金属板の一端を折り返して筒状に形成したテープ案内孔611と、奥まつり縫いミシンに螺子固定するための支持部612とを備えている。
【0041】
テープ案内孔611は、手前側開口からなるテープ挿入口611aと奥側開口からなるテープ送出口611bとを備えている。テープ挿入口611aは、左右(
図10の左右)に水平に延びるスリット状をなし、テープ送出口611bは、左右の一側(
図10の例では右側)が立辺611cを構成するL字スリット状をなしている。テープ案内孔611は、手前側のテープ挿入口611aの左右の一側の端部と奥側のテープ送出口611bの立辺611cとを結ぶ立孔611dと左右の他端側においてテープ挿入口611aとテープ送出口611bの水平部分を結ぶ水平孔部分611eとからなる断面がL字の貫通孔に形成されている。
【0042】
支持部612は、テープ挿入孔612aから水平に延出する板状をなし、固定用の螺子を挿通する貫通孔と、下側ラッパ62のみを固定する螺子をかわすためのスリットを備えて、略コ字に形成されている。
【0043】
下側ラッパ62は、
図10に示すように、上側ラッパ同様金属薄板の一端を折り返して筒状に形成したテープ案内孔621と、奥まつり縫いミシンに螺子固定するための支持部622とを備えている。
テープ案内孔621は、手前側のテープ挿入口621a、奥側のテープ送出口621bともに左右に水平に延びるスリット状をなし、扁平板状の貫通孔に形成されている。支持部622は、テープ案内孔621の一端側から水平に延出する矩形の板状をなし、固定用の螺子を挿通する3つの貫通孔を備えている。符号621cは、支持テープ10を細い棒の等で送るためのスリットである。
【0044】
奥まつり縫いミシンMは、
図9、
図11に示すように、周壁の断面が略U字をなした前後に延びる縫製室M2を備えている。まつり縫い針M1は、縫製室M2内を前後に揺動して縫製を行う。
【0045】
(プランジャー)
下プランジャー71、及び横プランジャー72は、
図9、
図11に示すように、それぞれ縫製室M2の下側、左右の他側に設けられている。縫製室M2の底壁M2aは、下プランジャー71の上端を挿通可能な底側開口M2bを備え、縫製室M2の左右の他側の側壁M2cは、横プランジャー72の先端を疎通可能な横側開口M2dを備えている。
【0046】
下プランジャー71、横プランジャー72は、
図14,
図15に示すように、極薄テープ芯(外側テープ1)を確実に、糸がすくうように、先端面71a,72aが平らに加工研磨され、前後方向(
図12の紙面奥行方向)に延びてまつり縫い針M1を案内する凹条からなる案内溝71b,72bをそれぞれ有している。
【0047】
(テープ供給部)
テープ供給部8は、
図9に示すように、支持テープ案内用ラッパ6の前方に設けられ、上下一対のテープリール81,82と、テープリール81,82から供給された支持テープ10,10を案内するテープガイド83とを有している。テープガイド83は、2本の案内バー83a,83bと、案内バー83aと協同して2本の支持テープ10,10を挟持するバインダー83cとを備えている。バインダー83cは、不図示のつるまきばねにより前端側が案内バー83a側に回動するよう付勢されている。
【0048】
(先引きプーラー)
奥まつり縫いミシンMは、ヘム側の布地を送り出す不図示の横送り機構を駆動する梃子棒M3を備えている。梃子棒M3は、上端を軸支され下端が前後方向に揺動する。先引きプーラー9は、この梃子棒M3の揺動を利用して作動する。
つまり、先引きプーラー9は、
図9、
図13に示すように、上下一対のローラ91,92と、上側のローラ91の軸91aに上端が抱き締めされ下端が前後に揺動する揺動レバー93と、前後方向に延びる棒状のリンク94とを備えている。リンク94の前端は、ベアリング94aを介して揺動レバー93の下端に連結され、リンク94の後端は、ベアリング94bを介して梃子棒M3の下端に連結されている。ローラ91,92は、ワンウエイクラッチローラを介して、軸91a,92aに支承されている。
【0049】
(仕上げテープの製造方法)
奥まつり縫いミシン200により仕上げテープ100を作成する際にはまず、一対の支持テープ10,10を奥まつり縫いミシン200にセットする。
詳細には、まず外側テープ1に内側テープ2が逢着された一対の支持テープ10,10を、引き出した際に内側テープ2側が対向するよう上下のテープリール81,82にセットする。テープリール81,82から上下一対の支持テープ10,10を引出し、それぞれ案内バー83bの上下から案内バー83aとバインダー83cの間を通し、上側ラッパ61,下側ラッパ62のテープ挿入口611a,621aに挿通する。続けて支持テープ案内用ラッパ6のテープ送出口611b,621bから送出される一対の支持テープ10,10を、縫製室M2を通して奥まつり縫いミシンMの後方に送出し、先引きプーラー9の上下一対のローラ91,92間に挟持させる。
【0050】
支持テープ10,10のセットが完了したら、奥まつりミシンMのまつり縫い針M1、及びこれに連動する送り機構等を駆動して、支持テープ10,10間のまつり縫いを開始する。まつり縫い針M1は、前後(
図9の左右)に揺動しながら、1回の揺動ごとに左右いずれかに移動しながら、支持テープ10,10間にまつり縫い線を形成する。
【0051】
図12は、縫製室M2を手前側から見た様子を示し、
図12(a)に示すように、上側支持テープ10にまつり縫い糸を通す場合は、上側支持テープ10を側壁M2cにより拘束しながら横プランジャー72を横側開口M2d内に進出させて、上側支持テープ10の立ち上げられた直立部分10aの外側テープ1と内側テープが重なった部分を、縫製室M2内に湾出させる。これに合わせて、まつり縫い針M1は、側壁M2c側(
図12(a)の左側)へ移動するとともに後方(
図12(a)の紙面奥側)へ揺動し、前方から支持テープ10の突出部分に針先を刺し通す。支持テープ10に刺し通されたまつり縫い針M1の針先は、後方のボビン(不図示)により供給される下糸32を掬ったのち、支持テープ10から針先を抜いて前方に復帰し、上側支持テープ10にまつり縫いによる表目31aを1目完成する。このあと横プランジャー72は、横側開口M2dから退出する。
【0052】
下側支持テープ10にまつり縫い糸を通す場合は、
図12(b)に示すように、下側支持テープ10を底壁M2aにより拘束しながら下プランジャー71を底側開口M2b内に進出させて、支持テープ10の外側テープ1と内側テープ2が重なった部分を、縫製室M2内に露出させる。これに合わせて、まつり縫い針M1は、縫製室M2の中央へ移動するとともに後方へ(
図12(b)の紙面奥側)揺動し、前方から支持テープ10の突出部分に針先を刺し通す。支持テープ10に刺し通されたまつり縫い針M1の針先は、後方のボビン(不図示)により供給される下糸32を掬ったのち、支持テープ10から針先を抜いて前方に復帰し、上側支持テープ10にまつり縫いによる編目を1目完成する。このあと下プランジャー71は、底側開口M2bから下方に退出する。
【0053】
下プランジャー71、及び横プランジャー72の先端面71a,72aは、
図14、
図15に示すように、それぞれ平面に設けられると共に前後方向の案内溝71b,72bを有し、まつり縫い針M1を案内溝71b,72bにより案内することで、まつり縫い針M1が薄い外側テープ1を掬うことを可能にしている。
【0054】
図13は、先引きプーラー9が作動する様子を示している。まつり縫い針M1が、上下の支持テープ10,10の縫製を1目ずつ完了する度に、梃子棒M3が前方(
図13の左方)へ揺動して不図示の横送り機構を駆動して支持テープ10,10を前進させる。これに合わせて、リンク94が揺動レバー93の下端を前方に揺動させ、上側のローラ91の下端側を前方へ回動させるとともにこれに下側のローラ92を連れ回りさせて、支持テープ10を前方へ送出する。ローラ91,92と軸91a,92aの間には、ワンウエイクラッチローラが設けられ、梃子棒M3が前方へ復帰する際のローラ91,92の逆回転を防止して、仕上げテープ100が逆流しないよう構成されている。
【0055】
以上、本発明の仕上げテープは、上述した実施形態に限らず、例えば、支持テープは、内側テープを備えなくともよい。まつり縫い線は、1本まつり縫い線でもよい。仕上げテープは、ロール状でなく短冊状で提供してもよい。本発明の奥まつり縫いミシンは、テープリールや、先引きローラは備えなくともよい。
【符号の説明】
【0056】
100 仕上げテープ
10 支持テープ
1 外側テープ
1a ホットメルト接着剤層
2 内側テープ
3 まつり縫い線
31 上糸
32 下糸
5 両面接着シート
200 奥まつり縫いミシン
6 支持テープ案内用ラッパ
61 上側ラッパ
62 下側ラッパ
71 下プランジャー
72 横プランジャー
71b,72b 案内溝
A 布地(見ごろ)
M1 まつり縫い針
【要約】 (修正有)
【課題】ヘムの外側から見えにくく、かつヘムを持ち上げた際にまつり縫い線を視認可能な仕上げテープを提供する。
【解決手段】本発明の仕上げテープ100は、布地Aの端部の折り返しを接着するために用いられ、内面同士を対向させるとともに外面にホットメルト接着剤層1aを有する一対の支持テープ10,10と、一対の支持テープ10,10を逢着するまつり縫い線3とを備えている。
【選択図】
図1