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特許7540774生体データ測定装置、生体データ測定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】生体データ測定装置、生体データ測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20240820BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61B5/0537 100
A61B5/107 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023021793
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2019068650の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023056003
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正義
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-128195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0042360(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0100052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053-5/0538
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極群を備え、
利用者の上肢に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が上肢通電用電極及び上肢測定用電極を一組とする一組の上肢電極群として機能する第1測定モードと、前記利用者の上肢とは異なる局所的な部位に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が局所通電用電極及び局所測定用電極を一組とする二組の局所電極群として機能する第2測定モードとを有する電極部と、
前記電極部を用いて前記利用者の生体インピーダンス情報を測定する生体情報測定手段と、
前記第1測定モードと前記第2測定モードとを切替えるモード切替手段と、
を備えることを特徴とする生体データ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体データ測定装置であって、
前記上肢通電用電極及び前記上肢測定用電極のいずれか一方は、隣接された少なくとも四つの電極から構成されており、
前記モード切替手段は、
前記電極部を前記第1測定モードに設定する場合は、前記少なくとも四つの電極を互いに導通させることで前記電極部に前記一組の上肢電極群を構成し、
前記電極部を前記第2測定モードに設定する場合は、前記少なくとも四つの電極が電気的に四分割されるように互いに非導通にするとともに、前記上肢通電用電極及び前記上肢測定用電極の他方を非導通にすることで、前記電極部に前記二組の局所電極群を構成する、
生体データ測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体データ測定装置であって、
前記四つの電極は、一列に隣接するように構成される、
生体データ測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の生体データ測定装置であって、
前記電極部は、前記利用者の手に把持可能に構成されるハンドグリップを含む、
生体データ測定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の生体データ測定装置であって、
前記モード切替手段により設定された前記電極部の測定モードを報知する報知手段をさらに備える生体データ測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の生体データ測定装置であって、
前記生体情報測定手段は、前記モード切替手段により前記電極部が前記第2測定モードに設定される場合は、前記生体インピーダンス情報として、前記二組の局所電極群が前記利用者に押し当てられた局所部位の皮脂厚を測定する、
生体データ測定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の生体データ測定装置であって、
前記電極部は、前記第1測定モードと前記第2測定モードとを有する第一電極部と、前記利用者の下肢に接触可能に構成される第二電極部と、を含み、
前記生体情報測定手段は、
前記モード切替手段により前記第一電極部が前記第1測定モードに設定される場合には、前記第一電極部及び前記第二電極部を用いて前記利用者の前記第一電極部及び前記第二電極部間の前記生体インピーダンス情報を測定し、
前記モード切替手段により前記第一電極部が前記第2測定モードに設定される場合には、前記第一電極部を用いて前記利用者の局所部位の皮脂厚を測定する、
生体データ測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の生体データ測定装置であって、
前記モード切替手段は、前記第一電極部が前記第2測定モードに設定された状態において、前記第2測定モードでの測定が終了すると、前記第一電極部を前記第1測定モードに切り替える、
生体データ測定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の生体データ測定装置であって、
前記電極部の傾斜を検出する傾斜検出手段をさらに備え、
前記モード切替手段は、前記傾斜検出手段が検出した前記電極部の傾斜に応じて、前記第1測定モードと前記第2測定モードとを切替える、
生体データ測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の生体データ測定装置であって、
前記傾斜検出手段は、前記電極部に備わる加速度センサである、
生体データ測定装置。
【請求項11】
コンピュータに、
電極群を備え、利用者の上肢に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が上肢通電用電極及び上肢測定用電極を一組とする一組の上肢電極群として機能する第1測定モードと、前記利用者の上肢とは異なる局所的な部位に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が局所通電用電極及び局所測定用電極を一組とする二組の局所電極群として機能する第2測定モードとを有する電極部を用いて前記利用者の生体インピーダンス情報を測定する生体情報測定ステップと、
前記第1測定モードと前記第2測定モードとを切替えるモード切替ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
電極群を備え、利用者の上肢に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が上肢通電用電極及び上肢測定用電極を一組とする一組の上肢電極群として機能する第1測定モードと、前記利用者の上肢とは異なる局所的な部位に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が局所通電用電極及び局所測定用電極を一組とする二組の局所電極群として機能する第2測定モードとを有する電極部を用いて前記利用者の生体インピーダンス情報を測定する生体情報測定ステップと、
前記第1測定モードと前記第2測定モードとを切替えるモード切替ステップと、
を含むことを特徴とする生体データ測定方法。
【請求項13】
利用者が把持することによって前記利用者の掌に固定可能に構成され、前記利用者の生体インピーダンスを測定するための電極ユニットであって、
電極群を備え、
前記電極群のうち少なくとも一部が上肢通電用電極及び上肢測定用電極を一組とする一組の上肢電極群として機能する第1測定モードと、前記利用者の掌とは異なる局所的な部位に固定的に接触された状態で前記電極群のうち少なくとも一部が局所通電用電極及び局所測定用電極を一組とする二組の局所電極群として機能する第2測定モードとの測定モードを有する
電極ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の生体データを測定する生体データ測定装置、生体データ測定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体データ測定装置として、ユーザが手でグリップ電極を握るタイプの体組成計が提案されている(特許文献1参照)。このタイプの体組成計は、ユーザが手でグリップ電極を握ると手から電流を流し、インピーダンス等の生体データを測定することによってユーザの体組成に関する値、例えば体脂肪率を求めている。
【0003】
ここで、ユーザが測定毎にグリップ電極を握る位置を変化させる等、グリップ電極を適切に把持しない場合には、グリップ電極を介して測定される生体データが変動してしまうため、ユーザの体組成を正確に求めることができない。
【0004】
このため、特許文献1に開示された体組成計は、ユーザがグリップ電極を適切に把持しているか否かを判定し、適切に把持していると判定した場合にのみ、ユーザの生体データを測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5493198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、手から電流を流すことにより測定される生体データは、筋肉の収縮率や体水分の変動等に応じて変化する。また、筋肉の収縮率や体水分等は、利用者の姿勢に応じて変動してしまう。このため、上記の体組成計では、ユーザがグリップ電極を適切に把時している場合であっても、測定時の姿勢によってはユーザの体組成に関する値を正確に求めることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、生体データを測定する際のユーザの姿勢に関わらずにユーザの体組成に関する値を正確に求めることができる生体データ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、生体データ測定装置は、離間配置された通電用電極及び測定用電極を備え、利用者の上肢に固定可能な電極部と、前記電極部を用いて前記利用者の生体情報を測定する生体情報測定手段と、前記電極部の傾斜を検出する傾斜検出手段と、前記傾斜検出手段が検出した前記電極部の傾斜に応じて前記生体情報測定手段による測定結果を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この態様によれば、手から電流を流すことにより測定される生体情報を利用者の姿勢に応じて補正することが可能となるので、利用者の体組成に関する値を利用者の姿勢に関わらずにより正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態における生体データ測定装置が適用される体組成計の外観を示す図である。
図2図2は、第1実施形態における生体データ測定装置が備えるハンドグリップの外観を示す図である。
図3図3は、ハンドグリップの使用状態を説明する図である。
図4図4は、第1実施形態の体組成計の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、ハンドグリップが備える加速度センサの配置例を説明する図である。
図6図6は、第1実施形態における体組成測定処理に関する処理手順例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態の体組成計を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する際に推奨される姿勢(通常姿勢)を説明する図である。
図8図8は、第1実施形態の体組成計を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する際における不適切な姿勢(異常姿勢)を説明する図である。
図9図9は、第1実施形態の体組成計を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する際における不適切な姿勢(異常姿勢)の一例を示す図である。
図10図10は、第1実施形態の体組成計を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する際における不適切な姿勢(異常姿勢)の一例を示す図である。
図11図11は、第2実施形態におけるハンドグリップを説明する図である。
図12図12は、第2実施形態の体組成計の機能構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、第2実施形態におけるモード切替処理に関する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、添付図面等を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る生体データ測定装置を、体脂肪等の身体情報の測定が可能な体組成計に適用した例について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る体組成計10の外観を示す図である。図1に示すとおり、体組成計10は、利用者の生体インピーダンスを計測するための手側測定部(ハンドグリップ)1、2、及び足側測定部3、4と、表示部5と、操作部6とを備える。さらに、体組成計10は、表示部5及び操作部6が設けられる手側ユニット11と、足側測定部3、4が設けられる足側ユニット12と、足側ユニット12に固定され手側ユニット11を支持する支軸13と、ハンドグリップ1、2をそれぞれ脱着可能に保持する保持部14、15とを備える。
【0013】
ハンドグリップ(電極部)1、2は、利用者の上肢に固定された状態、具体的には利用者の手に把持された状態で手に電流を流すとともに電圧を検出することによって利用者の生体インピーダンスを測定するために構成される。ハンドグリップ1は、利用者の右手に電流を流すための電流電極1aと、電流電極1aから利用者の右手に電流が印加されることにより右手に生じる電圧を検出するための電圧電極1bとを備える。ハンドグリップ2は、利用者の左手に電流を流すための電流電極2aと、電流電極2aから利用者の左手に電流が印加されることにより左手に生じる電圧を検出するための電圧電極2bとを備える。なお、本実施形態のハンドグリップ1、2は、測定データを伝達可能なケーブルを介して手側ユニット11に接続される。ハンドグリップ1、2の詳細については、図2、3等を参照して後述する。
【0014】
足側測定部3、4は、足に電流を流すとともに電圧を検出することによって利用者の生体インピーダンスを測定するために構成される。足側測定部3は、利用者の右足に電流を流すための電流電極3aと、電流電極3aから利用者の右足に電流が印加されることにより右足に生じる電圧を検出するための電圧電極3bとを備える。足側測定部4は、利用者の左足に電流を流すための電流電極4aと、電流電極4aから利用者の左足に電流が印加されることにより左足に生じる電圧を検出するための電圧電極4bとを備える。なお、足側測定部3、4が設けられる足側ユニット12は、体重計の機能を兼ね備えるように構成されてもよい。
【0015】
このように、本実施形態の体組成計10は、ハンドグリップ1、2が接続される手側ユニット11と、足側測定部3、4を備える足側ユニット12とが支軸13を介して一体に構成され、両手及び両足に各々接触可能に離間配置された8つの電極を用いて利用者の全身及び各部位の生体インピーダンスを測定可能に構成されている。ただし、本実施形態にかかる生体データ測定装置は、必ずしも八つの電極を有する八電極タイプの体組成計に適用される必要はない。本発明にかかる生体データ測定装置は、足側測定部3、4を要さずに、ハンドグリップ1、2が備える計四つの電極を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する4電極タイプの体組成計に適用されてもよい。
【0016】
表示部5は、利用者に測定結果等を報知するための報知手段として機能する。表示部5には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の液晶表示パネルが採用される。
【0017】
操作部6は、利用者の入力操作を受け付ける入力インターフェースとして機能する。例えば、本実施形態の操作部6は、複数の操作ボタンから構成されており、身長、性別、年齢等の基礎生体情報を入力するための入力ボタン、及び、体組成計10の電源をON/OFFするための電源ボタン等を含む。ただし、表示部5に入力インターフェースとして機能するタッチパネルが採用される場合は、操作部6を省略し、操作部6の機能を表示部5に含ませてもよい。
【0018】
以下では、本実施形態のハンドグリップ1、2の詳細について説明する。ただし、ハンドグリップ1とハンドグリップ2とは、体組成計10において左右対称に構成されており、測定対象が右手か左手かの違い以外は基本的な構成及び機能が同じである。よって、以下では代表して利用者の右手を測定対象とするハンドグリップ1の詳細について説明する。
【0019】
図2及び図3は、ハンドグリップ1の詳細を説明するための図である。図2は、ハンドグリップ1の外観を説明する図である。図3は、ハンドグリップ1の使用状態を説明する図である。図3(a)は、ハンドグリップ1の適切な使用状態を示し、図3(b)はハンドグリップ1の不適切な使用状態の一例を示している。
【0020】
ハンドグリップ1は、保持部14から取り出された後、利用者の右手で把持された状態で使用される。また、図3(a)で示すように、利用者がハンドグリップ1を握る際は、指先側が電流電極1aに接触し、掌が電圧電極1bに接触するようにして、少なくとも測定中にハンドグリップ1がぐらつくことがないようにしっかり握るのが好ましい。図3(b)で示すように緩く握り過ぎると、利用者の手と各電極との接触が不十分となることや、測定中にハンドグリップ1がぐらついてしまうこと等に起因して測定精度が著しく低下してしまうため好ましくない。
【0021】
また、図3(a)に示すように、ハンドグリップ1は、利用者の右手によって長手方向が地面に対して水平方向となるような状態で使用されるのが好ましい。この状態を基準として、図2(a)は、ハンドグリップ1の上面を、図2(b)はハンドグリップ1の側面を、図2(c)はハンドグリップ1の下面をそれぞれ示す。図示するとおり、ハンドグリップ1には、電流電極1aが通電用電極として、電圧電極1bが測定用電極として離間配置される。また、電流電極1aはハンドグリップ1の下面に設けられ、電圧電極1bはハンドグリップ1の上面に設けられる。
【0022】
ハンドグリップ1がこのように構成されることにより、ハンドグリップ1は、図3(a)で示すように利用者の右手で把持された状態において、利用者の右手の指先側に電流を印加するとともに、利用者の右手の掌から電圧を好適に検出することができる。そして、体組成計10は、少なくとも一対のハンドグリップ1及び2が印加した電流及び検出した電圧の各値に基づいて利用者の生体インピーダンスを測定(算出)し、更に、測定した生体インピーダンスの測定値に基づいて、利用者の体脂肪率、内臓脂肪レベル等の体組成に関する値を算出することができる。なお、測定された生体インピーダンスの値をいかでは測定値ともいう。
【0023】
しかしながら、ハンドグリップ1を用いて利用者に印加した電流及び検出した電圧の各値に基づいて測定される利用者の生体インピーダンスは、測定時の利用者の状態によって変動する。例えば、利用者の姿勢によって利用者の体水分が変動(移動)すると、体水分の変動量(移動量)に応じて生体インピーダンスも変動する。また、利用者の筋肉が姿勢に応じて収縮し、当該筋肉の断面積が変化した場合も、生体インピーダンスは変動する。その他にも、利用者の関節の形状の変化、血流の変化等に応じて生体インピーダンスは変動する。
【0024】
すなわち、ハンドグリップ1を用いて利用者の生体インピーダンスを測定する際に、生体インピーダンスの測定値が利用者の姿勢によって変動してしまうという問題がある。そのため、適切でない姿勢で生体インピーダンスが測定された場合には、その生体インピーダンスの測定値に基づいて算出される利用者の体組成に関する値も不正確なものになってしまう。本実施形態の生体データ測定装置はこのような問題を鑑みて発明されたものであり、測定時の利用者の姿勢に関わらずに、利用者の体組成に関する値を出来る限り正確に算出することができるように構成される。
【0025】
具体的には、本発明の第1実施形態に係る体組成計10は、利用者の姿勢を示すパラメータとしてハンドグリップ1の傾斜(角度)を検出するように構成される。本実施形態のハンドグリップ1は、傾斜を検出する手段として3軸の加速度センサ7を備え、利用者の姿勢を示すパラメータとして各軸(X軸、Y軸、Z軸)の角度を検出する。そして、体組成計10は、ハンドグリップ1が備える加速度センサ7による検出値(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)に基づいて、ハンドグリップ1により測定された生体インピーダンスの測定値を補正する。これにより、体組成計10は、測定時における利用者の姿勢が乱れても、姿勢に応じて生体インピーダンスの測定値を補正することにより、生体インピーダンスの測定値に基づいて算出される体組成に関する値の正確性を向上させることができる。結果として、本実施形態の体組成計10は、測定時における利用者の姿勢に関わらずに、利用者の体組成に関する値をより正確に算出することができる。以下、本実施形態の体組成計10の機能の詳細について説明する。
【0026】
図4は、本実施形態における体組成計10の主要な機能構成を示すブロック図である。なお、上述したように、ハンドグリップ1とハンドグリップ2とは右手に対応するか左手に対応するかの違い以外は基本的な構成及び機能が同様であるため、図4では代表してハンドグリップ1のみを示す。また、足側ユニット12に係る足側測定部3、4は、上述したように本発明に必須の構成ではないので割愛する。
【0027】
体組成計10は、その機能構成として、上述した表示部5、操作部6、ハンドグリップ1、電流電極1a、電圧電極1b、及び、加速度センサ7に加えて、記憶部8と、生体インピーダンス計測部9と、生体情報算出部27及び生体情報補正部22を含む制御部20と、を主に備える。
【0028】
加速度センサ7は、傾斜検出手段としてハンドグリップ1の内部に設けられ、ハンドグリップ1の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)を検出する。加速度センサ7の詳細について図5を参照して説明する。
【0029】
図5は、ハンドグリップ1に設けられた加速度センサ7を説明する図である。図5(a)は、加速度センサ7が検出する軸方向を示し、図5(b)は、ハンドグリップ1の内部における加速度センサ7の配置例を示す。本実施形態の加速度センサ7は、例えば図5(a)の平面図が示すように、加速度センサ7の面方向に水平な所定の一方向をX軸として検出し、同じく面方向に水平であってX軸に対して直交する方向をY軸として検出する。さらに、図5(a)の側面図が示すように、加速度センサ7は、面方向に垂直な方向をZ軸として検出する。
【0030】
そして、図5(b)が示すように、加速度センサ7は、長手方向を地面に対して水平に傾斜させた状態のハンドグリップ1の内部において、ハンドグリップ1の長手方向とZ軸方向が一致し、ハンドグリップ1の上面(図2(b)参照)における短手方向とY軸方向が一致し、X軸方向が地面に対して垂直方向と一致するように配置される。なお、ハンドグリップ1の長手方向における加速度センサ7の位置は検出感度を考慮して適宜設定されてよい。このように、加速度センサ7がハンドグリップ1の内部に設けられることによって、利用者が把持するハンドグリップ1の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)を検出することができる。なお、図示しないが、ハンドグリップ2においても加速度センサ7が同様に配置される。以下、図4に戻って説明を続ける。
【0031】
生体インピーダンス計測部9は、電流電極1aに電気的に接続された電流印加部9aと、電圧電極1bに電気的に接続された電圧測定部9bとから構成される。そして、電流印加部9aが電流電極1aを介して利用者の手の指先側に交流電流を印加するとともに、電圧測定部9bが電圧電極1bを介して利用者の掌の電圧を検出する。
【0032】
生体情報算出部27は、ハンドグリップ1及び2を用いて利用者の生体情報を測定する生体情報測定手段として機能する。ここでの生体情報には、生体インピーダンス、又は、体組成が含まれる。本実施形態では、当該生体情報は生体インピーダンスであるものとして以下の説明を続ける。本実施形態の生体情報算出部27は、生体インピーダンス計測部9において供給された電流及び検出された電圧の各値に基づいて利用者の生体インピーダンスを算出する。生体インピーダンスを算出する方法としては、いわゆるBIA(Bioelectrical impedance analysis;生体電気インピーダンス法)を用いればよく、後述の補正を行うことを除けば公知の体組成計と同様で構わない。
【0033】
生体情報補正部22(以下、単に補正部22とも称する)は、加速度センサ7が検出したハンドグリップ1の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)に基づいて、生体情報算出部27が算出した利用者の生体インピーダンスの測定値を補正する。補正の詳細は、図6を参照して後述する。
【0034】
記憶部8は、体組成計10の動作を制御する制御プログラムが格納されている。すなわち、記憶部8は、本実施形態の生体データ測定装置の機能を実現するプログラムを格納する記憶媒体として機能する。記憶部8は、不揮発性メモリ(ROM;Read Only Memory)や揮発性メモリ(RAM;Random Access Memory)などにより構成される。
【0035】
また、記憶部8は、操作部6に入力された基礎生体情報、補正後の生体インピーダンス情報、生体インピーダンスの測定値をX軸角度、Y軸角度、又はZ軸角度に応じて補正する際に参照するマップデータ等も記憶する。
【0036】
制御部20は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)と、上述したような各機能構成と接続される入出力インターフェースと、これらを相互に接続するバスと、から構成される。制御部20は、記憶部8に格納されている制御プログラムを読み出して中央演算処理装置に実行させることにより、入出力インターフェースを介して体組成計10の各部を制御する。
【0037】
より具体的には、制御部20は、ハンドグリップ1及び2、表示部5、操作部6、生体インピーダンス計測部9、記憶部8、生体情報算出部27、及び、補正部22の各々を制御するとともに、これらを制御するのに必要な種々の演算処理を実行する。また、制御部20は、後述する各機能を実現するために、生体インピーダンスの測定値に基づいて利用者の体組成(本実施形態では体脂肪率)を算出する体組成算出手段、検出されたハンドグリップ1、2の傾斜が所定の傾斜範囲内にあるか否かを判定する異常姿勢判定手段、及び、推奨される利用者の姿勢を維持した場合に想定されるハンドグリップ1、2の傾斜と、検出されたハンドグリップ1、2の傾斜との差分を算出する異常姿勢度算出手段としての機能を有している。
【0038】
続いて、体組成計10が実行する利用者の体組成を測定するための処理(体組成測定処理)の詳細を説明する。本例では、利用者の体組成の一種として体脂肪率を算出する例を示す。以下に説明する体組成測定処理は、記憶部8に格納されている制御プログラムに基づいて実現される。
【0039】
ここで、フローチャートの説明に先だって、利用者が体組成計10を用いて利用者の体組成を測定する際の状況について説明する。先ず、自身の体脂肪率を測定したい利用者は、ハンドグリップ1、2を保持部14、15からそれぞれ取り外すとともに、右手でハンドグリップ1を、左手でハンドグリップ2をそれぞれ握る(図3参照)。そして、利用者は、ハンドグリップ1、2を介して生体インピーダンスが測定される間、図7で示すような姿勢を維持する。このような姿勢を維持する必要があることは、例えば、取扱説明書に記載すること等により利用者に事前に報知されるか、或いは、測定開始直前に表示部5を介して報知される。図7で示す姿勢(通常姿勢)は、体組成計10が利用者の生体インピーダンスを適切に測定するために推奨される姿勢であり、生体インピーダンスの測定値に対して後述する補正が必要か否かを判定する際の基準となる姿勢である。
【0040】
通常姿勢は、図示するように両腕を肩から重力方向に自然に垂らした状態であり、前後左右方向への不自然な広がりはなく、また、手首も曲がっていない。このような姿勢であれば、特に上半身の体水分が異常に変動することもなく、又、手首の関節や腕の筋肉の収縮率等が不自然に変化することもないので、利用者の本来の生体インピーダンスを適切に測定することができる。本実施形態の体組成計10は、利用者がこのような通常姿勢をとった際に加速度センサ7が検出するX軸角度、Y軸角度、及びZ軸角度を実験により得た実測値等から予め想定し、想定した値を後述する姿勢判定の基準値として記憶部8に予め記憶させている。なお、当該基準値は、利用者の体型や筋肉量等に関わらず一律に設定されても良いし、操作部6に入力された基礎生体情報等から推定される利用者の体型等に応じて調整(増減)されてもよい。
【0041】
以上を前提として、以下、体組成計10が実行する体組成測定処理の流れをフローチャートに沿って説明する。
【0042】
ステップS10では、制御部20は、電流印加部9aを介して利用者の手に電流が印加されることにより、利用者の生体インピーダンス測定が開始されてから、利用者が動かずに一定時間経過したか否かを判定する。一定時間とは、生体インピーダンスを好適に測定するために要する時間であって例えば10秒である。この期間、利用者は、脱力した状態でなるべく動かないように心掛ける。そして、ステップS10では、制御部20は、加速度センサ7からハンドグリップ1の傾斜に関連するデータ(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)を取得する。すなわち、ステップS10は、利用者の姿勢を示すパラメータとしてハンドグリップ1の傾斜を検出する傾斜検出ステップとして機能する。ここで、一定時間が経過する前に、電圧電極1b、2bの検出値及び又は加速度センサ7の検出値が変動することを検知する等して、利用者が動いていると判定された場合には、ステップS10の処理を再度始めから実行する。ステップS10の処理を再度実行する場合には、利用者の姿勢をより適切な姿勢に修正する必要があることを表示部5を介して利用者に報知してもよい。電圧電極1b、2bの検出値及び加速度センサ7の検出値が異常に変動せず、利用者が動かずに一定時間が経過したと判定された場合には、ステップS11の処理が実行される。
【0043】
ステップS11では、生体情報算出部27は、利用者の基礎生体情報と、ステップS10において電流電極1a、2aから印加された電流及び電圧電極1b、2bが検出した電圧とに基づいて、公知の方法により利用者の生体インピーダンスを算出する。生体インピーダンスが算出されると、ステップS12の処理が実行される。
【0044】
ステップS12では、制御部20は、ステップS10において生体インピーダンスを測定するのに要した一定時間におけるX軸角度の平均値が所定の傾斜範囲内であるか否かを判定する。ここでの所定の傾斜範囲は、利用者が通常姿勢である場合に想定されるX軸角度の検出値(基準値)に基づいて設定される。例えば、本実施形態では、体脂肪率の測定結果の正確性を担保する観点から許容できる測定誤差を考慮して、基準値の±5°をX軸角度の所定の傾斜範囲に設定する。例えば、基準値を0°に設定した場合には、検出されるX軸角度が±5°の範囲内にあれば通常姿勢と判定され、±5°の範囲内になければ異常姿勢と判定される。
【0045】
図8は、ステップS12においてX軸角度が所定の傾斜範囲内にないと判定される姿勢(異常姿勢)例を説明する図である。
【0046】
図8(a)に示されるのは、手首の曲がり具合に起因して利用者の姿勢が異常姿勢と判定される例を説明する図である。図示するように、本例における利用者は、ハンドグリップ1を握った状態でハンドグリップ1を内側(身体側)に巻き込むように手首を不自然に曲げている。この様な姿勢は、特に右手首の関節の形状が通常姿勢時とは異なっており、腕(特に前腕)の筋肉の収縮率等が通常姿勢時と比べて変化するので、測定される生体インピーダンスが変動してしまう。
【0047】
利用者がこのような異常姿勢をとった場合には、例えば本実施形態の体組成計10によれば、測定時に加速度センサ7が検出するX軸角度が地面に対して垂直方向に設定されたX軸角度の基準値(例えば0°)に対して内側(身体側)に変動する。したがって、制御部20は、ハンドグリップ1が備える加速度センサ7を介して検出されるX軸角度と基準値との差分(X軸角度θ1)を手首の曲り具合を示すパラメータとして取得することができる。
【0048】
また、図8(b)に示されるのは、腕の広がり具合に起因して利用者の姿勢が異常姿勢と判定される例を説明する図である。図示するように、本例における利用者は、ハンドグリップ1を握った状態で腕を外側(身体側の逆側)に不自然に広げている。このような姿勢をとると、利用者の体水分が通常姿勢時から変動(移動)するので、測定される生体インピーダンスが体水分の変動量(移動量)に応じて変動してしまう。また、肩周りや胸の筋肉(例えば三角筋や胸筋)の収縮率も通常姿勢時と比べて変化するので、これも生体インピーダンスの変動要因となる。
【0049】
利用者がこのような異常姿勢をとった場合には、例えば本実施形態の体組成計10によれば、測定時に加速度センサ7が検出するX軸角度が、地面に対して垂直方向に設定されたX軸角度の基準値(例えば0°)に対して外側(身体側の逆側)に変動する。したがって、制御部20は、ハンドグリップ1が備える加速度センサ7を介して検出されるX軸角度と基準値との差分(X軸角度θ2)を腕の広がり具合を示すパラメータとして取得することができる。
【0050】
制御部20は、このようにして検出されるX軸角度の平均値と基準値との差分(例えばX軸角度θ1又はθ2)が所定の傾斜範囲内であるか否かを判定し、所定の傾斜範囲内にある場合には、利用者の姿勢は通常姿勢であると判定して、ステップS14の処理を実行する。X軸角度の平均値が所定の傾斜範囲内にないと判定された場合には、利用者の姿勢は異常姿勢と判定され、ステップS13の処理が実行される。
【0051】
ステップS13では、補正部22は、加速度センサ7を介して検出されるX軸角度と基準値との差分に基づいて、ステップS11で算出された生体インピーダンスの測定値を補正する。補正量は、検出されるX軸角度と基準値との差分の大きさ(X軸変動量)に応じて調整されるのが好ましい。例えば、X軸角度θ2が大きければ大きいほど、生体インピーダンスはより小さい値となるように補正される。X軸変動量に対する生体インピーダンスの補正量は、補正後の生体インピーダンスが適正な値となるように適宜調整される。補正量は、例えば、実験により導出したX軸変動量に対する適切な補正量を定めたマップデータを予め記憶しておき、当該マップデータを参照することで決定される。また、X軸変動量に対する補正量は、利用者の体型や筋肉量等に関わらず一律に設定されてもよいし、操作部6に入力された基礎生体情報等から推定される利用者の体型等に応じて調整(増減)されてもよい。
【0052】
また、X軸変動量に対する補正量は、利用者の異常姿勢の態様によって調整されてもよい。例えば、上述のX軸変動においては、手首の曲がり具合よりも腕の広げ具合の方が測定される生体インピーダンスの変動により強い影響を及ぼす。従って、例えばX軸変動量(X軸角度θ1、θ2)の絶対値が同じであっても、手首の曲がり具合を示すX軸角度θ1よりも腕の広げ具合を示すX軸角度θ2の方が補正量により強く影響するように重み付けしてもよい。
【0053】
なお、利用者の異常姿勢の態様は、利用者が通常姿勢をとった場合においてX軸角度が基準値を示すことを前提に、例えば加速度センサ7が検出するX軸角度の変化方向(例えば正負)によって判別することができる。また、利用者の異常姿勢の態様をより正確に把握するために、加速度センサ7だけでなく、例えば、ジャイロセンサや距離センサ等の他のセンサの検出値を組み合わせるか、或いは画像認識等を用いて判別できるように構成してもよい。一方で、異常姿勢の態様を考慮せず、X軸変動量の絶対値に応じて補正量を一律に設定してもよい。X軸変動量に基づいて生体インピーダンスの測定値が補正されると、続くステップS14の処理が実行される。
【0054】
ステップS14では、制御部20は、ステップS10において生体インピーダンスを測定するのに要した一定時間におけるY軸角度の平均値が所定の傾斜範囲内であるか否かを判定する。ここでの所定の傾斜範囲は、X軸角度と同様に、利用者が通常姿勢である場合に想定されるY軸角度の検出値(基準値)に基づいて設定される。
【0055】
図9は、ステップS14においてY軸角度が所定の範囲内にないと判定される姿勢(異常姿勢)例を説明する図である。
【0056】
図9で示されるのは、前後方向における腕の角度に起因して異常姿勢と判定される例を説明する図である。図示するように、本例における利用者は、ハンドグリップ1を握った状態で腕を前方に過剰に上げている。このような姿勢では、利用者の体水分や肩周りの筋肉の収縮率等が通常姿勢時と比べて変化するので、測定される生体インピーダンスが変動してしまう。なお、図示はしないが、腕を後方に過剰に下げる場合も同様である。
【0057】
利用者がこのような異常姿勢をとった場合には、例えば本実施形態の体組成計10によれば、測定時に加速度センサ7が検出するY軸方向が、ハンドグリップ1の短手方向における水平方向に設定されたY軸角度の基準値に対して上側(腕を後方に下げた場合は下側)に変動する。したがって、制御部20は、ハンドグリップ1が備える加速度センサ7を介して検出されるY軸角度と基準値との差分を前方への腕の上がり具合を示すパラメータとして取得することができる。
【0058】
制御部20は、このようにして検出されるY軸角度の平均値と基準値との差分が所定の傾斜範囲内であるか否かを判定し、所定の傾斜範囲内にある場合には、利用者の姿勢は通常姿勢であると判定し、ステップS16の処理を実行する。Y軸角度の平均値が所定の傾斜範囲内にないと判定された場合には、利用者の姿勢は異常姿勢と判定され、ステップS15の処理が実行される。
【0059】
ステップS15では、補正部22は、加速度センサ7を介して検出されるY軸角度と基準値との差分に基づいて、ステップS11で算出され、必要であればステップS13で補正された生体インピーダンスをさらに補正する。補正量は、X軸変動量について上述したのと同様に、検出されるY軸角度と基準値との差分の大きさ(Y軸変動量)に応じて調整されるのが好ましい。Y軸変動量に基づいて生体インピーダンスが補正されると、続くステップS16の処理が実行される。
【0060】
ステップS16では、制御部20は、ステップS10において生体インピーダンスを測定するのに要した一定時間におけるZ軸角度の平均値が所定の傾斜範囲内であるか否かを判定する。ここでの所定の傾斜範囲は、X軸角度及びY軸角度と同様に、利用者が通常姿勢である場合に想定されるZ軸角度の検出値(基準値)に基づいて設定される。
【0061】
図10は、ステップS16においてZ軸角度が所定の傾斜範囲内にないと判定される姿勢(異常姿勢)例を説明する図である。
【0062】
図10で示されるのは、腕の捻り具合に起因して利用者の姿勢が異常姿勢と判定される例を説明する図である。図示するように、本例における利用者は、ハンドグリップ1を握った状態で腕を時計回り(左手は反時計回り)に過剰に捻っている。このような姿勢では、利用者の腕の筋肉の収縮率や血流等が通常姿勢時と比べて変化するので、測定される生体インピーダンスが変動してしまう。
【0063】
利用者が上述のような異常姿勢をとった場合には、例えば本実施形態の体組成計10によれば、測定時に加速度センサ7が検出するZ軸方向が、ハンドグリップ1の短手方向における水平方向に設定されたZ軸方向の基準値に対して変動する。したがって、制御部20は、ハンドグリップ1が備える加速度センサ7を介して検出されるZ軸角度と基準値との差分を腕の捻り具合を示すパラメータとして取得することができる。
【0064】
制御部20は、このようにして検出されるZ軸角度の平均値と基準値との差分が所定の傾斜範囲内にあるか否かを判定し、所定の傾斜範囲内にある場合には、利用者の姿勢は通常姿勢であると判定し、ステップS18の処理を実行する。Z軸角度の平均値が所定の範囲内にないと判定された場合には、利用者の姿勢は異常姿勢と判定され、ステップS17の処理が実行される。
【0065】
ステップS17では、補正部22は、加速度センサ7を介して検出されるZ軸角度と基準値との差分に基づいて、ステップS11で算出され、必要であればステップS13及びステップS15で補正された生体インピーダンスの測定値をさらに補正する。補正量は、X軸変動量について上述したのと同様に、検出されるZ軸角度と基準値との差分の大きさ(Z軸変動量)に応じて調整されるのが好ましい。Z軸変動量に基づいて生体インピーダンスが補正されると、続くステップS18の処理が実行される。
【0066】
ステップS18では、制御部20は、上述のフローにより補正された生体インピーダンスの測定値に基づいて、利用者の体脂肪率を公知の方法により算出する。利用者の体脂肪率が適正に求められると、続くステップS19の処理が実行される。
【0067】
ステップS19では、制御部20は、ステップS19で求めた利用者の体脂肪率に係る測定結果を表示部5に表示することにより利用者に報知する。これにより、体組成計10は、測定時の利用者の姿勢が通常姿勢に比べて異常な場合であっても、利用者の姿勢に関わらず、利用者の体脂肪率を従来に比べてより正確に算出することができる。算出した体脂肪率が利用者に報知されると、制御部20は、利用者の体組成を測定するための処理を終了する。
【0068】
以上が、本実施形態の体組成計10が利用者の体組成を測定するために実行される制御の一例である。なお、上述したフローに係るステップS10からステップS19の処理は、必ずしも全てのステップが上述した順序で実行される必要はない。例えば、補正部22は、X軸変動量、Y軸変動量、及びZ軸変動量の全ての変動量に基づいて生体インピーダンスを補正する必要は必ずしもなく、少なくとも一つ以上、例えばX軸変動量のみに基づいて補正をしてもよい。また、X軸変動量、Y軸変動量、及びZ軸変動量のうち、二つ以上の変動量に基づいて生体インピーダンスを補正する場合には、各軸の変動量の生体インピーダンスへの影響度を考慮して補正量が増減されるように重み付けしてもよい。なお、例えばX軸変動量のみに基づいて補正する場合には、加速度センサ7として必ずしも3軸の加速度センサを採用する必要はなく、X軸に対応する1軸の加速度センサを採用してもよい。
【0069】
また、各軸の変動量に基づいて補正する対象が生体インピーダンスである必要は必ずしもない。体組成計10は、X軸変動量、Y軸変動量、及びZ軸変動量の少なくとも一つの変動量に基づいて、体組成に関する値としての体脂肪率を補正してもよい。換言すれば、補正部22は、加速度センサ7が検出したハンドグリップ1の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度)に基づいて、体組成に関する値としての体脂肪率を補正してもよい。この場合には、ステップS13、S15、及びS17を削除し、ステップS18での処理をステップS11で算出された補正されていない生体インピーダンスに基づいて利用者の体脂肪率を算出する処理に変更する。そして、ステップS18とステップS19との間に、ステップS12、S14、及びS16で検出されたX軸変動量、Y軸変動量、及びZ軸変動量の少なくとも一つの変動量(傾斜角度)に基づいて、体脂肪率を補正する処理を追加すればよい。なお、この場合は、上述した生体情報測定手段として機能する生体情報算出部27は、利用者の体組成(本実施形態では体脂肪率)を算出する体組成算出手段を含む機能部であって、ハンドグリップ1及び2を用いて利用者の体組成を測定するように構成されるものとする。
【0070】
続いて、本実施形態における作用効果について説明する。
【0071】
本実施形態によれば、離間配置された通電用電極(電流電極1a,1b)及び測定用電極(電圧電極1b,2b)を備え、利用者の上肢に固定可能な電極部(ハンドグリップ1,2)と、ハンドグリップ1,2を用いて利用者の生体情報を測定する生体情報測定手段(生体情報算出部27)と、ハンドグリップ1,2の傾斜を検出する傾斜検出手段と、傾斜検出手段が検出したハンドグリップ1,2の傾斜に応じて生体情報測定部27による測定結果を補正する補正手段(生体情報補正部22)と、を備える。これにより、測定時における利用者の姿勢が異常な姿勢であっても、姿勢に応じて生体情報を補正することができるので、利用者の姿勢に依らず、当該利用者の生体情報を正確に測定することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、生体情報測定部27による測定結果は利用者の生体インピーダンス、又は、利用者の体組成を含む。また、測定結果が利用者の生体インピーダンスの場合は、補正手段により補正された生体インピーダンスに基づいて利用者の体組成を算出する体組成算出手段(制御部20)をさらに備える。これにより、生体情報算出部27による測定結果が体組成である場合には、測定時における利用者の姿勢が異常な姿勢であっても、当該姿勢に応じて利用者の体組成を補正することにより、利用者の姿勢に依らず、当該利用者の体組成を正確に測定することができる。
【0073】
また、生体情報測定部27による測定結果が生体インピーダンスの場合には、測定時における利用者の姿勢が異常な姿勢であっても、姿勢に応じて生体インピーダンスを補正することができるので、生体インピーダンスに基づいて算出される体組成に関する値の正確性を向上させることができる。ここで、上述したように補正対象が体組成である場合には、体組成の内容、例えば体脂肪率か筋肉量なのかの違いによって補正量が変動する。これに対して、生体情報測定部27による測定結果が生体インピーダンスの場合には、体組成の内容によらず、補正対象を生体インピーダンス一つに絞ることができるので、体組成の具体的内容に応じて各々を個別に補正する場合と比較して演算負荷を低減することができる。
【0074】
また、体組成計10によれば、傾斜検出手段は、ハンドグリップ1,2に備わる加速度センサ7である。これにより、測定時における利用者の姿勢に相当するパラメータとして、ハンドグリップ1の角度を検出することができる。
【0075】
また、体組成計10は、検出されたハンドグリップ1,2の傾斜が所定の傾斜範囲内にあるか否かを判定する異常姿勢判定手段(制御部20)をさらに備え、生体情報補正部22は、制御部20によりハンドグリップ1,2の傾斜が所定の傾斜範囲内にないと判定された場合に生体インピーダンスの測定値を補正する。これにより、測定結果の正確性の観点から許容できる測定時における利用者の姿勢の微動(ブレ)や測定誤差等を考慮して、測定された生体インピーダンスをより適切に補正することができる。
【0076】
また、体組成計10によれば、所定の傾斜範囲は、ハンドグリップ1,2が固定された利用者が生体インピーダンスを測定する際に推奨される姿勢を維持した時のハンドグリップ1,2の傾斜に基づいて設定される。これにより、異常姿勢を判定するための適切な比較対象が設定されるので、利用者の姿勢が異常であるか否かを好適に検出することができる。
【0077】
また、体組成計10は、するさらに備え、生体情報補正部22は、異常姿勢度算出手段(制御部20)を用いてハンドグリップ1,2を把持した利用者が生体インピーダンスを測定する際に推奨される姿勢を維持した時のハンドグリップ1,2の傾斜と、検出されたハンドグリップ1,2の傾斜との差分を算出し、算出した差分が大きいほど、生体インピーダンスがより小さい値となるように補正する。これにより、利用者の姿勢の変動量に応じて補正量を調整することができるので、測定された生体インピーダンスをより的確に補正することが可能となり、生体インピーダンスに基づいて算出される体組成に関する値の正確性をより向上させることができる。
【0078】
<第2実施形態>
以下では、本発明に係る生体データ測定装置が適用される第2実施形態の体組成計10について説明する。
【0079】
ここで、少なくとも二つのハンドグリップを有し、両腕又は四肢に電流を印加する四電極又は八電極タイプの体組成計(体脂肪計)が知られている。又、その他にも、一対の電圧電極と一対の電流電極とを備える一つの電極部を腹部等に押し当てることにより利用者の皮下脂肪厚を測定できるような四電極タイプの体組成計が知られている。測定箇所の異なるこれらの体組成計は、同様の電極を用いて構成されていながらも、必要な電極の個数や配置が異なるため、別製品として提供されている。
【0080】
本実施形態の体組成計10は、上記の事情を鑑みて発明されたものであり、態様の異なる二つのタイプの体組成計の機能を一つの体組成計が備える点に特徴がある。より具体的には、本実施形態の体組成計10が備えるハンドグリップ21は、四電極又は八電極タイプの体組成計(体脂肪計)において一方の腕(本実施形態では右腕)に電流を印加する二電極の体組成計として機能する「通常モード」と、利用者の体組成を局所的に測定する四電極タイプの体組成計として機能する「皮脂厚計モード」とを切替え可能に構成されている点に特徴がある。以下、本実施形態の体組成計10の詳細について図11から図13を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の機能及び構成については説明を省略する。
【0081】
図11は、本実施形態のハンドグリップ21を説明する図である。本実施形態のハンドグリップ21は、第1実施形態で説明したハンドグリップ1に対して「皮脂厚計モード」を実現する機能、及び「皮脂厚計モード」と「通常モード」とを切替える機能が付加されたものである。ただし、これらの機能はハンドグリップ1にのみ付加可能なものではなく、ハンドグリップ2にのみ、或いはハンドグリップ1及び2の双方に付加させることもできる。以上を前提に、以下では、ハンドグリップ1に対応するハンドグリップ21について、ハンドグリップ1との相違点を中心に説明する。
【0082】
図11(a)、(b)は、通常モード時におけるハンドグリップ21の構成を説明する図である。図11(a)、(b)は、図2(a)、(b)にそれぞれ相当する。すなわち、通常モード時におけるハンドグリップ21は、第1実施形態のハンドグリップ1と同様に電流電極1aと電圧電極1bの二電極を備える右腕用の生体インピーダンス測定器として構成される。ただし、図中の点線で示すように、本実施形態のハンドグリップ21は隣接された少なくとも四つの電極A~Dから構成されており、さらに、これら四つの電極A~Dが互いに導通することによって測定用電極としての電圧電極1bが構成される。
【0083】
図11(c)、(d)は、皮脂厚計モード時におけるハンドグリップ21の構成を説明する図である。皮脂厚計モード時におけるハンドグリップ21は、図11(a)、(b)で示す電圧電極1bに対応する部分が、電流電極21a+、電流電極21a-、電圧電極21b+、及び電圧電極21b-の四つの電極に分割される。換言すると、ハンドグリップ21において皮脂厚計モード時に機能する四電極は、通常モード時には互いが導通することによって一つの電極(電圧電極1b)を構成していた四つの電極A~Dが互いに非導通になることによって実現される。さらに、図11(a)、(b)で示す電流電極1aに対応する部分は、例えば電流印加部9aとの間を非導通とすることにより電極としての機能を消失させる。これにより、皮脂厚計モード時におけるハンドグリップ21は、電流電極21a+、電流電極21a-、電圧電極21b+、及び電圧電極21b-の四電極を備える局所測定用の生体インピーダンス測定器(皮下脂肪厚計)としての機能を実現することができる。
【0084】
なお、上述の隣接された四つの電極A~Dの導通/非導通を実現する方法は特に限定されず、例えば、四つの電極A~Dの隣接する電極間に、後述するモード切替部26からの制御信号に応じてオンオフする不図示のスイッチ回路を備えることにより実現されてよい。また、四つの電極A~Dの導通/非導通を切替える箇所は、図示するようにハンドグリップ21に設けられた電極A~D間である必要は必ずしもなく、電極A~Dの各電極と制御部20との間を導通するライン上のいずれの箇所でもよい。
【0085】
図12は、本実施形態の体組成計10の主要な機能構成を示すブロック図である。なお、本図面においては、第1実施形態では割愛した足側測定部3、4、及び通常モード時におけるハンドグリップ2も示す。
【0086】
本実施形態の体組成計10は、その機能構成として、ハンドグリップ2、足側測定部3、足側測定部4、表示部5、操作部6、加速度センサ7、記憶部8、生体インピーダンス計測部(手側生体インピーダンス計測部)9、及び制御部20に加えて、ハンドグリップ21と、足側生体インピーダンス計測部23と、手側モード切替器24と、足側モード切替器25と、モード切替部26とを主に備える。
【0087】
手側生体インピーダンス計測部9は、電流を印加するための二つの出力線(I+、I-)を備える電流印加部9aと、電圧を検出するための二つの入力線(V+、V-)を備える電圧測定部9bとから構成される。電流印加部9aの出力線及び電圧測定部9bの入力線と、ハンドグリップ21及びハンドグリップ2が備える各電極との結線(電気的な接続)は、手側モード切替器24を介して各測定モード(通常モード又は皮脂厚計モード)に応じて切り替えられる。
【0088】
足側生体インピーダンス計測部23は、電流を印加するための二つの出力線(I+、I-)を備える電流印加部23aと、電圧を検出するための二つの入力線(V+、V-)を備える電圧測定部23bとから構成される。電流印加部23aの出力線及び電圧測定部23bの入力線と、足側測定部3及び足側測定部4が備える各電極との結線は、足側モード切替器25を介して各測定モード(通常モード又は皮脂厚計モード)に応じて切り替えられる。
【0089】
モード切替部26は、加速度センサ7が検出したハンドグリップ21の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度の少なくとも一つ)に基づいて体組成計10の測定モードを切り替える。より具体的には、モード切替部26は、加速度センサ7が検出したハンドグリップ21の角度に応じて手側モード切替器24と足側モード切替器25とを制御して、体組成計10の測定モードを切り替える。例えば、モード切替部26は、検出されたハンドグリップ21の角度に基づいて利用者がハンドグリップ21を地面に対して水平にした状態を一定時間維持したことを検知した場合には、体組成計10の測定モードを「通常モード」に切替えるように手側モード切替器24と足側モード切替器25とを制御する。
【0090】
他方、モード切替部26は、検出されたハンドグリップ21の角度に基づいて利用者がハンドグリップ21を地面に対して垂直にした状態を一定時間維持したことを検知した場合には、体組成計10の測定モードを「皮脂厚計モード」に切替えるように手側モード切替器24と足側モード切替器25とを制御する。なお、ハンドグリップ21の角度、及び当該角度を維持する時間がいずれの測定モードに対応するトリガとなるかは適宜設定されてよい。
【0091】
手側モード切替器24は、モード切替部26からの制御信号(モード切替信号)に応じて手側生体インピーダンス計測部9の入出力線とハンドグリップ2及び22が備える各電極との結線を切替える。
【0092】
本実施形態において図示する一例では、測定モードが「皮脂厚計モード」の場合には、手側モード切替器24は、電流印加部9aの出力線I+を電流電極21a+に、出力線I-を電流電極21a-にそれぞれ結線するとともに、電圧測定部9bの入力線V+を電圧電極21b+に、入力線V-を電圧電極21b-にそれぞれ結線する。これにより、体組成計10の測定モードを皮脂厚計モードに設定することができる。なお、図12に示す手側モード切替器24の結線は、「皮脂厚計モード」時の結線である。
【0093】
他方、測定モードが「通常モード」の場合には、手側モード切替器24は、電流印加部9aの出力線I+を電流電極1aに、出力線I-を電流電極2aにそれぞれ結線するとともに、電圧測定部9bの入力線V+を電圧電極1bに、入力線V-を電圧電極2bにそれぞれ結線する。これにより、体組成計10の測定モードを通常モードに設定することができる。
【0094】
足側モード切替器25は、モード切替部26からの制御信号(モード切替信号)に応じて足側インピーダンス計測部23の入出力線と足側測定部3及び4が備える各電極との結線を切替える。
【0095】
本実施形態において図示する一例では、測定モードが「皮脂厚計モード」の場合には、足側モード切替器25は、足側インピーダンス計測部23の入出力線と足側測定部3及び4が備える各電極とを断線する。これにより、体組成計10の測定モードを皮脂厚計モードに設定することができる。なお、図12に示す足側モード切替器25の状態は、「皮脂厚計モード」時の状態である。
【0096】
他方、測定モードが「通常モード」の場合には、足側モード切替器25は、電流印加部23aの出力線I+を電流電極3aに、出力線I-を電流電極4aにそれぞれ結線するとともに、電圧測定部23bの入力線V+を電圧電極3bに、入力線V-を電圧電極4bにそれぞれ結線する。これにより、8電極タイプの体組成計10において足側に備わる4電極の機能を実現することができる。
【0097】
なお、体組成計10の「通常モード」をハンドグリップ2及び21を用いる4電極タイプの体組成計として構成する場合には、上述の「皮脂厚計モード」と同様に足側インピーダンス計測部23の入出力線と足側測定部3及び4が備える各電極とを断線して足側測定部3、4の機能を消失させればよい。或いは、そもそもの構成として、体組成計10の構成から足側インピーダンス計測部23と足側モード切替器25と足側測定部3、4とを削除してもよい。
【0098】
以下では、本実施形態の体組成計10が実行する体組成計10の測定モードを切り替えるための処理(モード切替処理)の詳細を説明する。本例では、利用者の体脂肪率を測定する体脂肪計モードを「通常モード」と、ハンドグリップ21を用いて利用者の皮脂厚を局所的に測定するモードを「皮脂厚計モード」とを切替える例を示す。以下に説明するモード切替処理は、記憶部8に格納されている制御プログラムに基づいて実現される。
【0099】
以下に説明するモード切替処理は、少なくとも利用者がハンドグリップ21を持っていることを前提にスタートする。
【0100】
ステップS20では、モード切替部26は、ハンドグリップ21が備える加速度センサ7により検出されるハンドグリップ21の角度(X軸角度、Y軸角度、Z軸角度の少なくとも一つ)を取得する。この時、利用者は、所望の測定モードに設定するためにハンドグリップ21を各モードに対応する角度に傾斜させる。例えば、「通常モード」に対応する角度が角度条件A、「皮脂厚計モード」に対応する角度が角度条件Bと定められていた場合に利用者が通常モードを選択したい場合には、利用者は、角度条件Aを満たすようにハンドグリップ21を一定時間傾斜させる。
【0101】
なお、上述したように、角度条件A、Bは適宜設定されてよい。例えば、ハンドグリップ21の長手方向を地面に対して水平に傾けた際の角度を角度条件Aとし、ハンドグリップ21の長手方向を地面に対して垂直に傾けた際の角度を角度条件Bとしてもよい。また、ある角度を一方の角度条件(例えば角度条件A)に設定し、角度条件A以外の角度を角度条件Bに設定してもよい。
【0102】
ステップS21では、モード切替部26は、角度条件Aが一定時間維持されたか否かを判定する。ここでの一定時間は、利用者が意図するハンドグリップ21の角度を適切に読み取る観点から適宜設定されてよく、例えば3秒である。角度条件Aが一定時間維持されたと判定された場合には、ステップS22の処理が実行される。角度条件Aが一定時間維持されていないと判定された場合には、ステップS24の処理が実行される。
【0103】
ステップS22では、モード切替部26は、手側モード切替器24と足側モード切替器25とを制御して、ハンドグリップ2、21、及び足側測定部3、4の電極の配置(結線)を通常モードに設定する(図11(a)、(b)及び図12参照)。この時、制御部20は、体組成計10の測定モードが「通常モード」に設定されたことを利用者に表示部5を介して報知してもよい。
【0104】
そして、ステップS23において、制御部20は、八電極又は四電極タイプの体脂肪計として利用者の生体インピーダンスの測定を開始するとともに、モード切替処理を終了する。なお、モード切替処理が終了して以降は、第1実施形態において上述した体組成測定処理、或いは、第1実施形態において説明したような加速度センサの検出値(傾斜角度)に応じた補正を行わない公知の体組成測定処理が実行される。
【0105】
他方、ステップS24では、モード切替部26は、角度条件Bが一定時間維持されたか否かを判定する。角度条件Bが一定時間維持されたと判定された場合には、ステップS25の処理が実行される。角度条件Bが一定時間維持されていないと判定された場合には、再度ハンドグリップ21の角度を取得するために、ステップS20の処理が実行される。なお、上述したように角度条件Aに対応する角度以外の角度を角度条件Bとする場合には、ステップS24を削除してもよい。この場合には、ステップS21が否定(NO判定)されると、続いてステップS25が実行される。
【0106】
ステップS25では、モード切替部26は、手側モード切替器24と足側モード切替器25とを制御して、ハンドグリップ2、21、及び足側測定部3、4の電極の配置(結線)を皮脂厚計モードに設定する(図11(c)、(d)及び図12参照)。この時、制御部20は、体組成計10の測定モードが「皮脂厚計モード」に設定されたことを表示部5を介して利用者に報知してもよい。
【0107】
そして、ステップS26において、制御部20は、四電極を備えるハンドグリップ21を用いた皮脂厚計として生体インピーダンス測定を開始するとともに、モード切替処理を終了する。なお、モード切替処理が終了して以降は、制御部20は、公知の方法により利用者の局所的な皮脂厚を測定する。以上説明したフローにより、利用者は、体組成計10が備える二つの機能をハンドグリップ21の傾斜を変えるという単純な行為によって容易に切り替えることができる。
【0108】
続いて、本実施形態における作用効果について説明する。
【0109】
本実施形態の体組成計10によれば、ハンドグリップ21は、一組の通電用電極(電流電極1a)及び測定用電極(電圧電極1b)が機能する第1測定モード(通常モード)と、二組の局所通電用電極(電流電極21a+,21a-)及び局所測定用電極(電圧電極21b+,21b-)が機能する第2測定モード(皮脂厚計モード)とを切替可能に構成されており、体組成計10は、傾斜検出手段(加速度センサ7)が検出したハンドグリップ21の傾斜に応じて第1測定モードと第2測定モードとを切替えるモード切替手段(モード切替部26)をさらに備える。これにより、第1測定モードに対応する四電極タイプ又は八電極タイプの従来の体組成計が備える機能と、第2測定モードに対応する四電極タイプの皮脂厚計(腹部脂肪計)が備える機能(第2測定モード)とを兼ね備え、更に、これら二つの機能を容易に切替え可能な体組成計10を実現することができる。
【0110】
その結果、利用者にとっては、それぞれの機能を備える二つの装置を別個に入手せずとも一つの装置によって各機能を利用できるので、コスト面及び装置の載置スペースの面から利点となる。また、このような体組成計10によれば、全身の体脂肪率を測定した後に、続く一連の動作で局所の皮脂厚を測定することができるので、利用者にとっては、簡単な操作で自身の体組成をより多角的に測定することができる利点となる。またこのような利点によれば、本実施形態の体組成計10は、利用者が自身の体組成をより詳細に測定しようとするモチベーションを向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態の体組成計10によれば、電流電極1a及び電圧電極1bのいずれか一方は、隣接された少なくとも四つの電極A~Dから構成されており、モード切替手段(モード切替部26)は、ハンドグリップ21を第1測定モードに設定する場合は、少なくとも4つの電極A~Dを互いに導通させることでハンドグリップ21に一組の通電用電極(電流電極1a)及び測定用電極(電圧電極1b)を構成し、ハンドグリップ21を第2測定モードに設定する場合は、少なくとも4つの電極A~Dが電気的に四分割されるように互いに非導通にするとともに、通電用電極(電流電極1a)及び測定用電極(電圧電極1b)の他方を非導通にすることで、ハンドグリップ21に二組の局所通電用電極(電流電極21a+,21a-)及び局所測定用電極(電圧電極21b+,21b-)を構成する。これにより、第1測定モードに対応する機能に使用される電極と、第2測定モードに対応する機能に使用される電極とを少なくとも一部兼用することができるので、上述の二つの機能を備える体組成計10を実現する際に必要な電極の総個数及び載置スペースを抑制することができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述の実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0113】
例えば、電極部1,2は、図2等を参照して上述したようなハンドグリップである必要は必ずしもない。電極部1,2は、利用者の生体インピーダンスを測定するにおいて上述したハンドグリップ1,2と同様の機能を備え、且つ、利用者の上肢に固定可能な形状であればよい。具体的には、電極部1,2は、例えば、クリップのような形状の挟持部を有し、当該挟持部によって利用者の上肢(例えば前腕部分)を挟持することにより当該利用者に固定可能に構成されてもよい。
【0114】
例えば、傾斜検出手段は、加速度センサ7に限られない。傾斜検出手段は、生体インピーダンス測定中における利用者の姿勢を示すパラメータとしてハンドグリップ1の傾斜を検出できる限り、ジャイロセンサ等の他のセンサを用いてもよい。また、センサに限らず、公知の機構や画像認識等を用いてハンドグリップの傾斜を検出してもよい。
【0115】
また、体組成計10の形状は、図面等を用いて説明した形状に限られない。上述した機能を備える限り、適宜変更されてよい。例えば、ハンドグリップ1、2、21の形状は図示するものに限定されず、握り易さや、測定時における利用者の姿勢の安定性等を考慮して適宜変更されてよい。
【0116】
また、体組成計10の構成についても、図面等を用いて説明した構成に限られない。上述した機能を備える限り、適宜変更されてよい。例えば、ハンドグリップ1、2、21が備える各電極の配置は、上述の各機能が各測定モードに対応して適切に動作する限り、適宜入れ替え可能である。また、図11を用いて説明した電極A~Dは必ずしも一列に隣接する四つの電極である必要はない。上述の皮脂厚計モードにおいて、ハンドグリップ21の電流電極1aまたは電圧電極1bを隣接した四つの電極に分割できる限り、五以上の電極で構成されてもよい。例えば、五つの電極で構成される場合には、隣接する二つの電極を導通させ、この二つの電極と、他の三つの電極とを互いに非導通にすることによって、電流電極1a又は電圧電極1bを互いに非導通な四つの電極に分割できるように構成してもよい。
【0117】
また、上述したハンドグリップ1、2、21に設けられる加速度センサ7が検出する方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)は一例であって、適宜変更可能である。また、図8から図10を参照して説明した各軸方向に対応して検出される利用者の異常姿勢は一例であって、図示したものに限られない。加速度センサ7がハンドグリップ1、2、21の傾斜に対応して検出する軸方向、及び、当該軸方向の変動に応じて検出される異常姿勢は、適宜調整乃至変更されてよい。
【0118】
また、図6、13で示すフローチャートは、必ずしも図示するステップを全て備える必要はないし、必ずしも図示する順序で実行される必要はない、また、上述の機能を損なわない限り、図示しない他のステップを含んでいても良い。例えば、図6で示す体組成測定処理の測定開始条件として、通常姿勢(基準値)が検知されることを判定するステップを追加してもよい。このようなステップを追加することにより、図6で示す体組成測定処理は、ハンドグリップ1及び2を把持した状態の利用者が少なくとも一度は通常姿勢をとることを測定開始条件とすることができる。
【0119】
また、第2実施形態において上述したモード切替処理は、図13で説明した態様に限られない。例えば、図6で示すような通常モードでの測定中において所定範囲を超える傾斜角度が検出されたときに(例えばステップS12、S14、及びS16におけるNO判定を参照)、皮脂厚計モードに切り替わり、皮脂厚計モードでの測定が終了すると通常モードに再び切り替わり、体脂肪率の測定が再び開始されるように構成してもよい。なおこの場合は、皮脂厚計モードに切り替わったとき、及び通常モードに再び切り替わったときには、動作モードが切り替わったことが利用者に報知されることが好ましい。
【0120】
また、上述のモード切替処理は、必ずしも加速度センサが検出する傾斜角度をモード切替のトリガとする必要はない。例えば、操作部6を介して取得される利用者の操作に応じて切り替わるように構成してもよい。また、通常モードでの測定の終了後に自動的に皮脂厚計モードに切り替わる、或いは、皮脂厚計モードでの測定の終了後に自動的に通常モードに切り替わる等、利用者による所定の切替操作を要さずに、各動作モードで実行される測定処理の一連の流れとして動作モードが切り替わるように構成されてもよい。
【0121】
なお、上述の説明において、特にハンドグリップ1、2、21の説明や、加速度センサ7が検出する軸方向の説明の際に用いた水平方向、垂直方向等の方向を指す用語は、必ずしも厳密に正確な方向を示す意図ではない。本明細書において規定した方向は、体組成計10が測定する体組成の測定精度の観点から許容できる範囲において多少のズレを含んでもよいものとする。
【符号の説明】
【0122】
1、2、21 ハンドグリップ(電極部)
1a、2a 電流電極(通電用電極)
1b、2b 電圧電極(測定用電極)
7 加速度センサ(傾斜検出手段)
10 体組成計(生体データ測定装置)
20 制御部(体組成算出手段、異常姿勢判定手段、異常姿勢度算出手段)
21a+、21a- 電流電極(局所通電用電極)
21b+、21b- 電圧電極(局所測定用電極)
22 生体情報補正部(補正手段)
26 モード切替部(モード切替手段)
27 生体情報算出部(生体情報測定手段)
S10 (傾斜検出ステップ)
S13、S15、S17 (補正ステップ)
S18 (体組成算出ステップ)
S19 (報知ステップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13