(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】口腔ケア具
(51)【国際特許分類】
A61C 17/00 20060101AFI20240820BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61C17/00 Z
A61C19/06 A
(21)【出願番号】P 2023134003
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2022567762の分割
【原出願日】2022-11-07
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314000800
【氏名又は名称】株式会社無有
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066030(WO,A1)
【文献】実開昭55-134951(JP,U)
【文献】国際公開第2013/054824(WO,A1)
【文献】特開2005-160979(JP,A)
【文献】特開2005-131167(JP,A)
【文献】特開2014-30518(JP,A)
【文献】米国特許第3952867(US,A)
【文献】米国特許第3298507(US,A)
【文献】米国特許第5107562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔用の薬剤が収容され、側面部及び底部を有する袋体を備え、
前記袋体の裏面の少なくとも一部には、歯を磨くための歯磨き部が設けられており、
前記底部は、前記袋体の内部に入り込んでおり、
前記袋体は、開封後に前記底部が当該袋体の口部をくぐり抜けるように当該底部を押し上げることにより裏返せるように構成されており、
開封された前記袋体から前記薬剤が取り出された後
に当該袋体を裏返すことにより、前記歯磨き部で歯を磨けるように構成されていることを特徴とする口腔ケア具。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記底部の上端部の幅は、前記袋体の前記内部の幅よりも小さい口腔ケア具。
【請求項3】
請求項2に記載の口腔ケア具において、
前記底部の前記上端部の前記幅は、前記袋体の前記内部の前記幅の40%以上80%以下である口腔ケア具。
【請求項4】
請求項2に記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記底部の前記上端部は、前記袋体の前記内部の左右両端から離間している口腔ケア具。
【請求項5】
請求項2に記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記底部の幅は、当該底部の下端部から前記上端部にかけて次第に小さくなる口腔ケア具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記底部の裏面は、前記側面部の裏面に接着されていない口腔ケア具。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記底部の長さは、前記袋体の長さの4分の1以上4分の3以下である口腔ケア具。
【請求項8】
請求項7に記載の口腔ケア具において、
前記底部の前記長さは、前記袋体の前記長さの3分の1以上3分の2以下である口腔ケア具。
【請求項9】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記底部の裏面に設けられている口腔ケア具。
【請求項10】
請求項9に記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記底部の前記裏面の全体に設けられている口腔ケア具。
【請求項11】
請求項9に記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記底部の前記裏面にのみ設けられている口腔ケア具。
【請求項12】
請求項9に記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記底部の前記裏面及び前記側面部の裏面の双方に設けられている口腔ケア具。
【請求項13】
請求項12に記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記側面部の前記裏面において当該裏面の一部にのみ設けられている口腔ケア具。
【請求項14】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、前記袋体の前記裏面の全体に設けられている口腔ケア具。
【請求項15】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部の摩擦係数は、前記袋体の表面の摩擦係数よりも大きい口腔ケア具。
【請求項16】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部の表面粗さは、前記袋体の表面の表面粗さよりも大きい口腔ケア具。
【請求項17】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記歯磨き部は、吸水性を有する材料からなる口腔ケア具。
【請求項18】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
前記袋体は、当該袋体の表面を構成する表面層と、当該袋体の前記裏面を構成する裏面層とを有するシートからなる口腔ケア具。
【請求項19】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記袋体の前記内部の幅は、15mm以上50mm以下である口腔ケア具。
【請求項20】
請求項1乃至5の何れかに記載の口腔ケア具において、
正面視で、前記袋体の長さは、30mm以上110mm以下である口腔ケア具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔のケアに用いられる口腔ケア具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の口腔ケア具としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された口腔ケア具は、口腔用の薬液が収容された袋体を備えている。袋体の裏面には、歯を磨くための歯磨き部が設けられている。この口腔ケア具は、薬液が取り出された後に袋体を裏返すことにより、歯磨き部で歯を磨けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の口腔ケア具によれば、薬液で口をゆすぐだけでなく、裏返した袋体を用いて歯磨きまで行うことができる。しかしながら、薬液を取り出した後に袋体を裏返す作業が必ずしも容易でないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、袋体を裏返しやすい口腔ケア具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による口腔ケア具は、口腔用の薬剤が収容され、側面部及び底部を有する袋体を備え、上記袋体の裏面の少なくとも一部には、歯を磨くための歯磨き部が設けられており、上記底部は、上記袋体の内部に入り込んでおり、上記薬剤が取り出された後に上記袋体を裏返すことにより、上記歯磨き部で歯を磨けるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
この口腔ケア具においては、袋体の底部が当該袋体の内部に入り込んでいる。このように底部が袋体の内部に予め入り込んでいる場合、薬剤を取り出した後、底部が袋体の内部により深く入り込むように当該底部を指で押し上げることにより、袋体を裏返すことが可能となる。このため、袋体の裏返し作業が容易になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、袋体を裏返しやすい口腔ケア具が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による口腔ケア具の第1実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明による口腔ケア具の第1実施形態を示す背面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。
【
図4】袋体10を構成するシート20を示す断面図である。
【
図5】
図1及び
図2の口腔ケア具の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図6】
図1及び
図2の口腔ケア具の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図7】
図1及び
図2の口腔ケア具の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図8】
図1及び
図2の口腔ケア具の使用方法の一例を説明するための図である。
【
図9】
図1及び
図2の口腔ケア具の使用方法の一例を説明するための図である。
【
図10】
図1及び
図2の口腔ケア具の使用方法の一例を説明するための図である。
【
図11】本発明による口腔ケア具の第2実施形態を示す正面図である。
【
図12】本発明による口腔ケア具の第2実施形態を示す背面図である。
【
図13】
図11のXIII-XIII線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。
【
図14】
図11及び
図12の口腔ケア具における底部16の構造を説明するための斜視図である。
【
図15】本発明による口腔ケア具の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図16】本発明による口腔ケア具の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図17】本発明による口腔ケア具の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。
【
図19】本発明による口腔ケア具の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図20】本発明による口腔ケア具の製造方法の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
【0011】
図1及び
図2は、それぞれ、本発明による口腔ケア具の第1実施形態を示す正面図及び背面図である。また、
図3は、
図1のIII-III線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。口腔ケア具1は、口腔のケアに用いられる口腔ケア具であって、袋体10を備えている。袋体10には、口腔用の薬剤(図示せず)が収容されている。本実施形態において薬剤は、液体状をしている。かかる薬剤としては、例えば、マウスウォッシュ(洗口液)、液体歯磨き等が挙げられる。袋体10は、薬剤が外に漏れないように密封されている。
【0012】
袋体10は、正面視で、矩形状をしている。正面視で、袋体10の長さd1は、30mm以上110mm以下であることが好ましい。また、正面視で、袋体10の内部(薬剤が収容される空間)の幅w1は、15mm以上50mm以下であることが好ましい。本明細書において「長さ」及び「幅」は、それぞれ、袋体10を平坦にした状態(薬剤が収容されていない状態)における袋体10の上下方向(
図1及び
図2の上下方向に等しい)及び左右方向(
図1及び
図2の左右方向に等しい)についての寸法である。なお、
図3においては、見やすくするため、袋体10の内部を前後方向(
図3の左右方向)に広げて示している。袋体10の上端の近傍には、袋体10を開封するための開封口12が形成されている。本実施形態において開封口12は、切込みからなる。
【0013】
袋体10は、側面部14、及び底部16を有している。側面部14は、袋体10の正面を構成する側面部142(第1側面部)、及び袋体10の背面を構成する側面部144(第2側面部)からなる。側面部142と側面部144とは、合同な形状をしており、互いに完全に重なり合っている。各側面部142,144の形状は、矩形である。側面部14の上端部(側面部142の上端部142a、及び側面部144の上端部144a)、並びに側面部14の側端部(側面部142の側端部142b、及び側面部144の側端部144b)は、閉じている。具体的には、上端部142aと上端部144aとが互いに接着されるとともに、側端部142bと側端部144bとが互いに接着されている。
【0014】
底部16は、側面部14の下端部(側面部142の下端部142c、及び側面部144の下端部144c)に接続されている。底部16は、袋体10の内部に入り込んでいる。すなわち、底部16は、側面部142と側面部144との間に挟まれた状態にある。本実施形態においては、底部16の全体が側面部142と側面部144との間に挟まれている。このため、底部16は、正面視及び背面視の何れにおいても、視認できない。一方、側面部14は、袋体10の内部に入り込んでいない。このため、側面部14は、その全体が正面視又は背面視で視認できる。底部16は、側面部142の下端142cに接続された底部162(第1底部)、及び側面部144の下端144cに接続された底部164(第2底部)からなる。底部162と底部164とは、合同な形状をしており、互いに完全に重なり合っている。各底部162,164の形状は、台形である。正面視で、底部16の幅は、底部16の下端部(底部162の下端部162c、及び底部164の下端部164c)から上端部(底部162の上端部162a、及び底部164の上端部164a)にかけて次第に小さくなっている。
【0015】
底部16の上端部は、閉じている。具体的には、底部162及び底部164は折り返された1枚のシートからなっており、その折目が上端部162a及び上端部164aに相当する。底部16は、その上端部以外の部分においては折り返されていない。また、底部16の側端部(底部162の側端部162b、及び底部164の側端部164b)も、閉じている。具体的には、側端部162bと側端部164bとが互いに接着されている。底部16の下端部は、開いている。すなわち、下端部162cと下端部164cとは、互いに接着も接続もされておらず、開口を形成している。なお、底部16の裏面(側面部14の側端部に重なる部分を除く)は、側面部14の裏面に接着されていない。
【0016】
正面視で、底部16の上端部の幅w2は、袋体10の内部の幅w1よりも小さい。幅w2は、幅w1の40%以上80%以下であることが好ましい。正面視で、底部16の上端部は、袋体10の内部の左右両端から離間している。底部16の上端部と袋体10の内部の左右両端との間隔d2は、例えば2mm以上15mm以下である。正面視で、底部16の長さd3は、袋体10の長さd1の4分の1以上4分の3以下であることが好ましく、長さd1の3分の1以上3分の2以下であることがより好ましい。正面視で、底部16の上端部は、袋体10の内部の上端からも離間している。底部16の上端部と袋体10の内部の上端との間隔d4は、例えば5mm以上80mm以下である。
【0017】
袋体10は、全体が1枚のシートからなる。袋体10は、1枚のシートを所定の箇所で折り返して、当該シートにおける折目以外の周縁部(側面部14の上端部及び側端部、並びに底部16の側端部)をシールすることにより形成されている。具体的には、当該シートは、側面部142と底部162との境界(下端部142c及び下端部162c)、側面部144と底部164との境界(下端部144c及び下端部164c)、並びに底部162と底部164との境界(上端部162a及び上端部164a)の3箇所で折り返されている。袋体10の外側から見て、上記シートは、側面部142と底部162との境界、及び側面部144と底部164との境界において山折りされるとともに、底部162と底部164との境界において谷折りされている。
【0018】
図4は、袋体10を構成するシート20を示す断面図である。シート20は、表面層22及び裏面層24からなる。表面層22は、袋体10の表面を構成する層であり、開封前の袋体10において外側に露出している。表面層22は、防水性を有する材料からなり、薬剤を透過させたり吸収したりしない。表面層22の材料としては、例えば、アルミニウム又はプラスチックを用いることができる。当該材料として、アルミ蒸着フィルムを用いてもよい。
【0019】
裏面層24は、表面層22の略全体に積層されている。裏面層24は、袋体10の裏面を構成する層であり、開封前の袋体10において薬剤に直接触れる。裏面層24は、吸水性を有する材料からなり、薬剤を吸収する。裏面層24は、歯を磨くための歯磨き部として機能する。すなわち、本実施形態においては、袋体10の裏面の全体に歯磨き部が設けられている。それゆえ、歯磨き部は、側面部14の裏面及び底部16の裏面の双方に設けられている。詳細には、歯磨き部は、側面部14の裏面の全体に設けられるとともに、底部16の裏面の全体に設けられている。
【0020】
裏面層24の摩擦係数は、袋体10の表面(表面層22)の摩擦係数よりも大きい。裏面層24の表面粗さ(Ra)は、袋体10の表面の表面粗さよりも大きい。裏面層24には、凹凸が形成されていることが好ましい。裏面層24は、表面層22よりも柔らかい材料からなることが好ましい。また、裏面層24は、表面層22よりも伸縮性の高い材料からなることが好ましい。裏面層24の材料としては、例えば、不織布又は織布を用いることができる。これらの不織布及び織布は、綿等の天然繊維からなっていてもよいし、レーヨン等の化学繊維からなっていてもよい。
【0021】
図5乃至
図7を参照しつつ、口腔ケア具1の製造方法の一例を説明する。まず、充分な大きさのシート20を準備し、シート20を
図5に示す形に切断する。かかる切断は、例えば型抜き成形により行うことができる。切断されたシート20は、側面部142となる矩形状の部分142p、側面部144となる矩形状の部分144p、底部162となる台形状の部分162p、及び底部164となる台形状の部分164pからなる。部分162p及び部分164pは、それぞれ、部分142p及び部分144pと連続している。また、部分162p及び部分164pは、互いに連続している。
【0022】
次に、
図6に示すように、部分162pと部分164pとの境界に位置する折目L1で、シート20を折り返す。このとき、部分142pの表面及び部分162pの表面が、それぞれ、部分144pの表面及び部分164pの表面と対向するようにする。その後、部分162pの側端部と部分164pの側端部とを互いに接着する。かかる接着は、例えばヒートシールにより行うことができる。
図6においては、このとき接着される部分を斜線で示している。
【0023】
次に、
図7に示すように、部分142pと部分162pとの境界に位置する折目L2、及び部分144pと部分164pとの境界に位置する折目L3で、シート20を折り返す。このとき、部分142pの裏面及び部分144pの裏面が、それぞれ、部分162pの裏面及び部分164pの裏面と対向するようにする。その後、部分142pの側端部と部分144pの側端部とを互いに接着する。
図7においては、このとき接着される部分を斜線で示している。次に、当該側端部に、開封口12となる切込みを形成する。これにより、上端が開いた状態の袋体が得られる。続いて、当該上端から袋体の内部に薬剤を入れる。最後に、部分142pの上端部と部分144pの上端部とを互いに接着する。以上により、
図1及び
図2に示した袋体10からなる口腔ケア具1が得られる。
【0024】
図8乃至
図10を参照しつつ、口腔ケア具1の使用方法の一例を説明する。まず、開封口12から袋体10を開封する。具体的には、開封口12から袋体10の一部(側面部14の上端部を含む部分)を切り取る。これにより、
図8に示すように、上部に口部10a(開口部)を有する袋体10が得られる。その後、開封された袋体10から取り出した薬剤で、口をゆすぐ。さらに、薬剤が取り出されて空になった袋体10を裏返す。例えば、
図9に示すように、袋体10の底部16が口部10aをくぐり抜けるように、底部162と底部164との間に指90(例えば人差し指)を入れて底部16を押し上げればよい。これにより、
図10に示すように、裏返された袋体10が指90に被された状態となる。その状態のまま歯磨き部(裏面層24)で歯を擦ることにより、歯を磨くことができる。また、歯磨き部で歯肉をマッサージしてもよい。このように、口腔ケア具1は、薬剤が取り出された後に袋体10を裏返すことにより、歯磨き部で歯を磨けるように構成されている。
【0025】
口腔ケア具1の効果を説明する。口腔ケア具1においては、袋体10の底部16が袋体10の内部に入り込んでいる。このように底部16が袋体10の内部に予め入り込んでいる場合、薬剤を取り出した後、底部16が袋体10の内部により深く入り込むように底部16を指で押し上げることにより、袋体10を裏返すことが可能となる。このため、袋体10の裏返し作業が容易になる。したがって、袋体10を裏返しやすい口腔ケア具1が実現されている。
【0026】
これに対し、底部が袋体の内部に入り込んでいない場合、袋体を裏返す際に底部を袋体の内部に押し込む手順が必要となる。底部を袋体の内部に押し込むには、比較的剛性が高い部分である袋体(底部)の角部を潰さなければならない。このことが、従来の口腔ケア具において袋体の裏返し作業を難しくする要因であった。この点、口腔ケア具1によれば、底部16を袋体10の内部に押し込む手順が不要となるため、袋体10を容易に裏返すことができる。
【0027】
正面視で、底部16の上端部の幅w2は、袋体10の内部の幅w1よりも小さい。このように幅w2を幅w1よりも小さくすることにより、底部16を押し上げる際、底部16が袋体10の内部をスムーズに通過しやすくなる。かかる観点から、幅w2は、幅w1の80%以下であることが好ましい。他方、幅w2が小さすぎると、底部16を押し上げる際や裏返された袋体10で歯を磨く際に、底部16の上端部に指が当接しにくくなる。かかる観点から、幅w2は、幅w1の40%以上であることが好ましい。
【0028】
正面視で、底部16の上端部は、袋体10の内部の左右両端から離間している。この場合、底部16を押し上げる際、底部16の上端部が袋体10の内部の左右両端と干渉しにくくなる。このため、底部16が袋体10の内部をスムーズに通過しやすくなる。
【0029】
正面視で、底部16の幅は、底部16の下端部から上端部にかけて次第に小さくなっている。この場合、底部16を押し上げる際、底部16は、幅が小さい方を先頭にして袋体10の内部を進むことになる。このため、底部16が袋体10の内部をスムーズに通過しやすくなる。
【0030】
底部16の裏面は、側面部14の裏面に接着されていない。このことも、底部16が袋体10の内部をスムーズに通過しやすくするのに有利である。また、この場合、袋体10の内部において側面部14の裏面と底部16の裏面との間の全体に薬剤を収容できるという利点がある。
【0031】
底部16の長さd3が大きい方が、底部16を押し上げる距離が小さくなるため、袋体10の裏返し作業が楽になる。かかる観点から、長さd3は、正面視で、袋体10の長さd1の4分の1以上であることが好ましく、3分の1以上であることがより好ましい。他方、長さd3が大きすぎると、袋体10の内部に収容可能な薬剤の量が過度に少なくなってしまう。かかる観点から、長さd3は、正面視で、袋体10の長さd1の4分の3以下であることが好ましく、3分の2以下であることがより好ましい。
【0032】
歯磨き部は、底部16の裏面に設けられている。底部16は、裏返された袋体10が指に被された状態で、指先を覆うことになる。指先は、力を入れやすく、かつ口内の奥まで届きやすい部分である。それゆえ、底部16の裏面に歯磨き部を設けることにより、歯を磨く際の袋体10の取り扱いが容易になる。
【0033】
歯磨き部は、底部16の裏面及び側面部14の裏面の双方に設けられている。この場合、歯磨き部が底部16の裏面にのみ設けられている場合に比して、袋体10の裏面の広範囲で歯を磨くことができる。
【0034】
歯磨き部は、底部16の裏面の全体に設けられている。これにより、底部16の裏面の何れの位置においても歯を磨くことが可能となる。特に歯磨き部は、袋体10の裏面の全体に設けられている。これにより、袋体10の裏面の何れの位置においても歯を磨くことが可能となる。
【0035】
裏面層24の摩擦係数は、表面層22の摩擦係数よりも大きい。このように歯磨き部である裏面層24の摩擦係数を大きくすることにより、歯磨き効果を高めることができる。ただし、裏面層24の摩擦係数を表面層22のそれよりも大きくすることは、必須でない。
【0036】
裏面層24の表面粗さは、表面層22の表面粗さよりも大きい。このように歯磨き部である裏面層24の表面粗さを大きくすることによっても、歯磨き効果を高めることができる。ただし、裏面層24の表面粗さを表面層22のそれよりも大きくすることは、必須でない。
【0037】
裏面層24は、吸水性を有する材料からなっている。この場合、歯磨き部である裏面層24に薬剤が染み込んだ状態で歯を磨くことができるため、歯磨き効果を高めることができる。ただし、裏面層24に吸水性をもたせることは、必須でない。
【0038】
シート20は、表面層22及び裏面層24を有している。このように袋体10の表面を構成する層と裏面を構成する層とを別々に設けることにより、各層の機能に応じて最適な材料を選択しやすくなる。例えば、表面層22には防水に適した材料を用いる一方で、裏面層24には歯磨きに適した材料を用いることができる。
【0039】
袋体10の内部の幅w1が小さい方が、袋体10の材料を節約し、口腔ケア具1の製造コストを低くするのに有利である。かかる観点から、幅w1は、50mm以下であることが好ましい。他方、幅w1が小さすぎると、袋体10を裏返す際に底部16を押し上げにくくなってしまう。かかる観点から、幅w1は、15mm以上であることが好ましい。
【0040】
袋体10の長さd1が大きい方が、袋体10の内部に収容可能な薬剤の量を多くするのに有利である。かかる観点から、長さd1は、30mm以上であることが好ましい。他方、長さd1が大きすぎると、袋体10を裏返す際に底部16を押し上げにくくなってしまう。かかる観点から、長さd1は、110mm以下であることが好ましい。
(第2実施形態)
【0041】
図11及び
図12は、それぞれ、本発明による口腔ケア具の第2実施形態を示す正面図及び背面図である。また、
図13は、
図11のXIII-XIII線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。
図13においては、見やすくするため、袋体10の内部を前後方向(
図13の左右方向)に広げて示している。口腔ケア具2は、口腔のケアに用いられる口腔ケア具であって、袋体10を備えている。袋体10には、口腔用の薬剤(図示せず)が収容されている。
【0042】
本実施形態において底部16の側端部は、開いている。すなわち、底部162の側端部162bと底部164の側端部164bとは、互いに接着も接続もされておらず、開口を形成している(
図14参照)。一方、底部16の下端部は、仮着されることにより閉じている。すなわち、底部162の下端部162cと底部164の下端部164cとは、互いに仮着されている。ここで、仮着とは、袋体10を損傷することなく手で剥がせる程度の力で、下端部162cと下端部164cとを接着することをいう。袋体10のその他の構成は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0043】
口腔ケア具2は、
図5乃至
図7で説明したのと同様の方法により製造することができる。ただし、部分162pの側端部と部分164pの側端部とを接着する工程(
図6参照)は、実行されない。その代わり、部分162pの下端部と部分164pの下端部とを仮着する工程が実行される。かかる仮着は、例えば、接着力が適度に調整された接着剤を用いて行うことができる。この製造方法によれば、2箇所の接着(部分162pの両側端部と部分164pの両側端部との接着)に代えて、1箇所の接着(部分162pの下端部と部分164pの下端部との仮着)で済ませることができる。
【0044】
口腔ケア具2の効果を説明する。口腔ケア具2においては、袋体10の底部16が袋体10の内部に入り込んでいる。このように底部16が袋体10の内部に予め入り込んでいる場合、薬剤を取り出した後、底部16が袋体10の内部により深く入り込むように底部16を指で押し上げることにより、袋体10を裏返すことが可能となる。このため、袋体10の裏返し作業が容易になる。したがって、袋体10を裏返しやすい口腔ケア具2が実現されている。
【0045】
底部16の側端部は、開いている。この場合、側端部が閉じている場合に比して底部16の変形自由度が高いため、底部16を押し上げる際、底部16が袋体10の内部をスムーズに通過しやすくなる。
【0046】
底部16の下端部は、仮着されることにより閉じている。このように底部16の下端部を閉じることにより、口腔ケア具2の使用前、袋体10が前後方向に広がりにくくなるため、袋体10が薄い状態を維持しやすくなる。このことは、口腔ケア具2の運搬・保管の便宜に資する。また、底部16の下端部は仮着されているだけであるため、袋体10から薬剤を取り出した後、袋体10を裏返すのに先立って、下端部162cと下端部164cとを引き剥がして底部16の下端部を開くことができる。これにより、底部162と底部164との間に指を入れて底部16を押し上げられるようになる。口腔ケア具2のその他の効果は、口腔ケア具1と同様である。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。本発明による口腔ケア具は、上述の方法に限らず、例えば
図15乃至
図20に示す方法により製造することもできる。まず、シート20を
図15に示す形に切断する。次に、
図16に示すように、折目L4及び折目L5で、シート20を折り返す。このとき、部分162pの裏面どうしが対向するとともに、部分164pの裏面どうしが対向するようにする。折目L4は、部分162p内に存在し、部分162pの端部(袋体10において底部16の上端部を構成する端部)と平行である。折目L4から部分162pの端部までの距離は、例えば3mm以上10mm以下である。折目L5は、部分164p内に存在し、部分164pの端部(袋体10において底部16の上端部を構成する端部)と平行である。折目L5から部分164pの端部までの距離は、折目L4から部分162pの端部までの距離に等しい。
【0048】
次に、
図17及び
図18に示すように、部分142pと部分144pとの境界に位置する折目L6で、シート20を折り返す。
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に沿った端面の構造を説明するための模式図である。このとき、部分142pの裏面が部分144pの裏面と対向するとともに、部分162pの折り返された部分の表面が部分164pの折り返された部分の表面と対向するようにする。その後、部分162pの折り返された部分の上端部と部分164pの折り返された部分の上端部とを互いに接着する(
図18参照)。また、部分142pの側端部(折目L6と反対側の側端部)と部分144pの側端部とを互いに接着するとともに、部分162pの側端部と部分164pの側端部とを互いに接着する。続いて、部分142p,144pの側端部に、開封口12となる切込みを形成する。
【0049】
次に、
図19に示すように、袋体の上端を開いた状態で、部分162p及び部分164pを、部分142pと部分144pとの間に押し込む。このとき、各部分162p,164pの一部が内側に折り返されているため、部分162p及び部分164pを押し込みやすい。続いて、上端から袋体の内部に薬剤を入れる。最後に、部分142pの上端部と部分144pの上端部とを互いに接着する。以上により、
図20に示す袋体10からなる口腔ケア具が得られる。
【0050】
上記実施形態においては、歯磨き部が袋体10の裏面の全体に設けられている場合を例示した。しかし、歯磨き部は、袋体10の裏面の少なくとも一部に設けられていれば充分であり、当該裏面の一部にのみ設けられてもよい。例えば、歯磨き部は、側面部14の裏面において当該裏面の一部にのみ設けられてもよい。このとき、底部16の裏面にも歯磨き部が設けられていることが好ましい。その場合、側面部14の裏面の残部に歯磨き部(裏面層24)を設ける必要がないため、袋体10の材料を節約することができる。あるいは、歯磨き部は、底部16の裏面にのみ設けられてもよい。その場合、側面部14の裏面に歯磨き部を一切設ける必要がないため、袋体10の材料を一層節約することができる。
【0051】
上記実施形態においては、シート20が複数の層からなる場合を例示した。しかし、シート20は、単一の層からなっていてもよい。その場合、例えば、シート20の下面(袋体10の裏面)の全体又は一部に表面処理(例えば粗面化処理)を施すことにより、歯磨き部を形成してもよい。
【0052】
上記実施形態においては、薬剤が液体状をしている場合を例示した。しかし、薬剤は、粉末状、ジェル状、又はペースト状をしていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 口腔ケア具
2 口腔ケア具
10 袋体
10a 口部
12 開封口
14 側面部
142 側面部(第1側面部)
142a 上端部
142b 側端部
142c 下端部
144 側面部(第2側面部)
144a 上端部
144b 側端部
144c 下端部
16 底部
162 底部(第1底部)
162a 上端部
162b 側端部
162c 下端部
164 底部(第2底部)
164a 上端部
164b 側端部
164c 下端部
20 シート
22 表面層
24 裏面層(歯磨き部)
90 指