(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】足括り罠
(51)【国際特許分類】
A01M 23/24 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A01M23/24
(21)【出願番号】P 2024066398
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237061
【氏名又は名称】株式会社三生
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】和田 三生
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-018664(JP,A)
【文献】特開2019-041630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配された二本のねじりコイルバネと、
各前記ねじりコイルバネの両側のバネ棒のうち、同じ側の隣り合うバネ棒に、それぞれの側で固定されている固定具と、
各該固定具のうちの一方に、前記バネ棒の方向と略同じ方向に進退動可能で、適宜位置に固定できるように取り付けられた基アームと、
各前記固定具のうちの他方に、前記バネ棒の方向と略同じ方向に進退動可能で、適宜位置に固定できるように取り付けられた跳上
げアームと、
前記基アーム及び前記跳上げアームの先端部の間に介在して、前記基アームと前記跳上げアームが掛合して仕掛け状態とすると共に、当該仕掛け状態を解除して罠を作動させることが可能なトリガー手段と、
仕掛け状態を解除したときの前記基アームと前記跳上げアームの拡開によって、動物の足を括って捕獲するワイヤロープとを備え、
前記基アームと前記跳上げアームは、各前記固定具に対し進退動させて適宜位置に固定し、前記固定具からの突出長さが調整可能である
足括り罠。
【請求項2】
前記跳上げアームは、前記固定具に対して、自身の軸周方向に回転調整が可能である
請求項1記載の足括り罠。
【請求項3】
前記ねじりコイルバネは、前記基アームと前記跳上げアームに取り付けてある前記固定具に対して、取り外し可能に固定されている
請求項1又は2記載の足括り罠。
【請求項4】
前記基アームは、前記ワイヤロープを掛ける滑車を有し、該滑車に近接してワイヤ通し部が設けられ、該ワイヤ通し部を覆うように、可撓性若しくは変形性を有し、ワイヤロープを押し込むと前記ワイヤ通し部において保持が可能で、所定の外力が作用すれば保持の解除ができるカバーが設けてある
請求項1又は2記載の足括り罠。
【請求項5】
前記トリガー手段が前記基アームと前記跳上げアームに掛合する際に、前記跳上げアームの先部が前記基アームと略平行になるように基部寄りで曲げられている
請求項1又は2記載の足括り罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足括り罠に関するものである。詳しくは、罠の仕掛けにおいて、ワイヤロープによる捕獲範囲をより拡げることができるようにすると共に、作動時に跳上げアームの先端具が動物の足に向かって瞬間的に飛び付くように移動して括ることができるようにして、動物の捕獲率を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のイノシシなどの野生の動物による農作物の被害は拡大するばかりで、深刻なものとなっている。旧来より使用されている狩猟用の罠は様々であるが、動物の足をワイヤロープで括って捕獲する足括り罠もそのような罠の一つである。足括り罠は、その多くが金属製の各種バネを作動力として利用している。
【0003】
その中で、ねじりコイルバネを使用して、2本のアームを拡開してワイヤロープを引き絞る足括り罠としては、特許文献1において本願発明者が提案した動物用罠がある。この従来の動物用罠は、2つのアームを後部側で交差させて回転可能に軸着し、両アームの軸着側にねじりコイルバネを配して、その付勢力を、両アームを拡開する際の作動力(駆動力)とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の動物用罠は、ねじりコイルバネによる動物の足を括る力が強く、捕獲率も高いため有用であった。しかしながら、両アームをアームとは別体のねじりコイルバネで作動させる構造上、罠の重量が比較的重かった。また、ねじりコイルバネの跳上げアーム側のバネ棒の先端の掛合部が、罠仕掛け状態(特許文献1の
図1参照)においては跳上げアームの裏側表面に強い圧力で接触している。
【0006】
このため、作動時に掛合部の先端を跳上げアームの表面で滑らせるときに強い摩擦力が発生し、跳上げアームが跳ね上がるタイミングが一瞬遅れてしまい、同時に動物の足をワイヤロープで括るために跳上げアームの先端具が足に向かって移動する力も速度も弱まって、捕獲に失敗してしまうことがあった。
【0007】
また、両アームは交差部での開き角が約100°に構造的に制限されており(特許文献1の
図8参照)、作動時にワイヤロープを引っ張る跳上げアームの先端具の移動ストロークを充分に稼ぐことができなかった。したがって、罠の仕掛けの際にワイヤロープの先端に形成される輪状の捕獲部を大きくして捕獲範囲を拡げて仕掛けることが難しかった。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、罠の仕掛けにおいて、ワイヤロープによる捕獲範囲をより拡げることができるようにすると共に、作動時に跳上げアームの先端具が動物の足に向かって瞬間的に飛び付くように移動して括ることができるようにして、動物の捕獲率を向上させた足括り罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明は、ねじりコイルバネと、該ねじりコイルバネの各バネ棒の一方の先端部に直接又は間接的に固定してある基アームと、前記ねじりコイルバネの各バネ棒の他方の先端部に直接又は間接的に固定してある跳上げアームと、前記基アーム及び前記跳上げアームを掛合して仕掛け状態とすると共に、当該仕掛け状態を解除して罠を作動させることが可能なトリガー手段と、仕掛け状態を解除したときの前記基アーム及び前記跳上げアームの拡開によって、動物の足を括って捕獲するワイヤロープと、を備える足括り罠である。
【0010】
本発明の足括り罠によれば、ねじりコイルバネと、ねじりコイルバネの各バネ棒の一方の先端部に直接又は間接的に固定してある基アームと、ねじりコイルバネの各バネ棒の他方の先端部に直接又は間接的に固定してある跳上げアームとを備えているので、従来のような、両アームが交差して軸着された部分が存在しない構造であるため、その分だけ、足括り罠を軽量化できる。
【0011】
更に、前記基アーム及び前記跳上げアームを仕掛け状態にすることが可能で、当該仕掛け状態を解除して罠を作動させることが可能なトリガー手段と、罠の作動における前記基アーム及び前記跳上げアームの拡開によって、動物の足を括って捕獲するワイヤロープを備えており、罠の仕掛け後に動物の足でトリガー手段を作用させることにより、捕獲対象動物をワイヤロープで捕獲することができる。
【0012】
また、両アームは、ねじりコイルバネの各バネ棒の先端部に直接又は間接的に固定してあり、罠作動の際、両アームが開くときに、従来の罠のようにねじりコイルバネの掛合部と両アームとの間に強い摩擦力が発生することがない。これにより、罠の作動の際には、足括り罠の後部側(捻りコイルバネ側)がワイヤロープの張力によって、軽量化していることとも相俟って、瞬間的に跳ね上がり、跳上げアームの先端具が動物の足に向かって瞬間的に飛び付くように移動して足を括ることができるので、動物の捕獲率を向上させることができる。
【0013】
また、両アームが拡開する際に跳上げアームの先端具の移動ストロークは、構造的にねじりコイルバネの開き角に依存するので充分に広くなり、両アームの長さを含む罠の大きさが同じ場合でも、ワイヤロープの引き量が従来の罠より大きくなる。したがって、罠の仕掛けにおいてワイヤロープ先端部の捕獲部の輪を大きくし、捕獲範囲をより拡げることができ、動物の捕獲率を向上させることができる。
【0014】
〔2〕本発明の足括り罠は、前記基アーム及び前記跳上げアームの前記ねじりコイルバネの拡開中心からの長さが調整可能である構成とすることもできる。
【0015】
この場合は、前記基アーム及び前記跳上げアームの前記ねじりコイルバネの拡開中心からの長さを、より長くすることにより、足括り罠が作動したときのワイヤロープの引き量を、より大きくすることができる。したがって、罠の仕掛けにおいてワイヤロープの輪状の捕獲部を大きくし、捕獲範囲をより拡げて、動物の捕獲率を向上させることができる。
【0016】
また、足括り罠の大きさを調整することにより、キツネなどの小さい動物からクマなどの大型の動物まで、様々な大きさの動物の捕獲に対応することができる
【0017】
〔3〕本発明の足括り罠は、前記跳上げアームが、前記トリガー手段を介し前記基アームと掛合する際に、先部が前記基アームと略平行になるように基部寄りで曲げられている構成とすることもできる。
【0018】
この場合は、跳上げアームが、トリガー手段を介し基アームと掛合する際に、先部が基アームと略平行になるように基部寄りで曲げられているので、基アームとは略平行になり、仕掛けにおける受具を長く設定することなく、コンパクトに収めることができる。また、基アームと跳上げアームを、トリガー具を介し掛合させる際にも、両アームの掛合部が略平行になるので、掛合させやすい。
【0019】
〔4〕本発明の足括り罠は、前記ねじりコイルバネに対して、前記基アーム及び前記跳上げアームは、取り外し可能に固定されている構成とすることもできる。
【0020】
この場合は、ねじりコイルバネを容易に交換できるので、例えばねじりコイルバネを二本使用する場合、ねじりコイルバネの強さを二種類として、強と強、強と弱、弱と弱、或いは強と無(一本のみ使用)、弱と無、とするなど、作動強さを捕獲対象動物に合わせて、複数種類の強さに設定することが可能になる。
【0021】
〔5〕本発明の足括り罠は、前記跳上げアームは軸周方向に回転調整が可能である構成とすることもできる。
【0022】
この場合は、罠の仕掛けの際に、トリガー手段で基アームと跳上げアームを仕掛け状態(セット状態)にするときに、跳上げアームの先端具をトリガー手段に対して掛合させる際の、先端具の軸周方向の傾きを調整してトリガー手段等の個体差にも合わせることができるので、罠の仕掛けをより確実に行うために有用である。
【0023】
〔6〕本発明の足括り罠は、前記基アームは、前記ワイヤロープを掛ける滑車を有し、該滑車に近接してワイヤ通し部が設けられ、該ワイヤ通し部を覆うように可撓性若しくは変形性を有するカバーが設けてある構成とすることもできる。
【0024】
この場合は、罠の仕掛けの際に、跳上げアームの先端部の滑車の内部隙間に挿通した後で、ワイヤロープをカバーに押し込んでワイヤ通し部おいて保持した後、基アームの滑車に掛けるようにすれば、罠が作動するときにワイヤロープが乱れにくく、ワイヤロープの意図しない引っ掛かりなどが生じることがないようにすることができる。
【0025】
〔7〕上記の目的を達成するために、本発明は、前記跳上げアームの所定位置に番線が固定されており、該番線には、前記ワイヤロープの前記滑車に掛けた所より前移動方向において下手側を通してあり、前記番線より下手側から前記番線に掛かって前記ワイヤロープの前方向への移動を止めて、前記ワイヤロープの捕獲部を絞ることができるストッパーが取り付けてある構成とすることもできる。
【0026】
この場合は、罠の作動の際にワイヤロープが先端具で前方へ引かれることにより、ストッパーが番線に引っ掛かるので、ワイヤロープの前方向への移動が止まり、ワイヤロープが緊張して捕獲部が引き絞られるので、ワイヤロープの捕獲部で動物の足をより確実に絞ることができ、動物を捕獲することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、罠の仕掛けにおいて、ワイヤロープによる捕獲範囲をより拡げることができるようにすると共に、作動時に跳上げアームの先端具が動物の足に向かって瞬間的に飛び付くように移動して括ることができるようにして、動物の捕獲率を向上させた足括り罠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る足括り罠の第1実施の形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す足括り罠の一実施の形態を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す足括り罠の罠本体の構造を示す後方から視た斜視説明図である。
【
図4】カバーにワイヤロープを通して仮止めした状態を示す拡大正面図である。
【
図5】足括り罠を獣道に仕掛けた状態を示す断面説明図である。
【
図6】足括り罠が作動して、動物の足を括っている状態を示す説明図である。
【
図7】本発明に係る足括り罠の第2実施の形態の罠本体を示す斜視図である。
【
図8】基アーム及び跳上げアームの長さを変えたときのワイヤロープの引量の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1乃至
図6を参照して、本発明の足括り罠の実施の形態を更に詳細に説明する。
足括り罠W1、一対のねじりコイルバネ3、3aと、ねじりコイルバネ3、3aの両方の一方の先端部に接続された基アーム1と、ねじりコイルバネ3、3aの両方の他方の先端部に接続された跳上げアーム2と、罠を作動させるトリガー具4(後述する
図5に図示)と、罠作動時におけるねじりコイルバネ3、3aの付勢力による両アーム1、2の拡開移動によって、動物(獲物)の足を括って捕獲するワイヤロープ5を備えている(
図1、
図2参照)。
【0030】
ねじりコイルバネ3、3aは、バネ鋼製で、略対称型に形成されている(
図2、
図3参照)。ねじりコイルバネ3、3aは、それぞれ四重に巻かれたコイルバネ部30と、コイルバネ部30から約140°の開き角(
図6の仮想線を参照)に設定されたバネ棒31、32が延出されて設けられている。
【0031】
バネ棒31、32は、開き角が140°であるため、基アーム1と跳上げアーム2を取り付けたときのワイヤロープ5の引き量も大きいので、ワイヤロープ5の捕獲部51の輪の大きさをより大きくして、動物を捕獲しやすくすることができる。
【0032】
また、バネ棒31は、コイルバネ部30の外側から中間部が外側から内側へ斜めに折り曲げられて延出され、バネ棒32はコイルバネ部30の内側から延出されている(
図2、
図3参照)。ねじりコイルバネ3、3aは、
図1乃至
図3等においては、跳上げアーム2は後述する安全装置に掛かけてあって、付勢力いっぱいまで絞ってある状態である。そして、ねじりコイルバネ3、3aの、
図1において下側のそれぞれのバネ棒31の先端部には、基アーム1が固定具33を介し固定されている。
【0033】
固定具33は、金属ダイキャスト製の略直方体状のブロックで、中央部には基アーム1を差し入れて固定する固定用孔331が長さ方向に貫通して設けてあり、固定用孔331の両側には各バネ棒30を差し入れて固定する固定用孔332が長さ方向に貫通して設けてある。なお、基アーム1は溶接により固定され、各バネ棒30は、固定具33に螺合してあるボルト333でそれぞれ締め付けて固定されている(
図3右図参照)。
【0034】
また、ねじりコイルバネ3、3aの、
図1において上側のそれぞれのバネ棒32の先端部には、跳上げアーム2が固定具34を介し固定されている。跳上げアーム2は、
図1に示すように基部において上方向に所定の角度で曲げられており、跳上げアーム2の先部寄りを罠の仕掛けの際に基アーム1と略平行(罠の仕掛けの際に水平に近い角度)となるようにしてある。
【0035】
固定具34は、金属ダイキャスト製の略直方体状のブロックで、中央部には跳上げアーム2を差し入れて固定する固定用孔341が長さ方向に貫通して設けてあり、固定用孔341の両側には各バネ棒32を差し入れて固定する固定用孔342が長さ方向に貫通して設けてある。
【0036】
そして、跳上げアーム2は固定具34に螺合してあるボルト343で締め付けて固定されており、各バネ棒32は、固定具34に螺合してあるボルト344でそれぞれ締め付けて固定されている(
図3左図参照)。
【0037】
なお、基アーム1は、上記のように固定具33に対し溶接により固定されているが、跳上げアーム2は、固定具34へのボルト343による固定であるため、固定用孔341に対する出入り方向や軸周方向の調整が可能である。
【0038】
これにより、罠の仕掛けの際に、トリガー具4で基アーム1と跳上げアーム2を仕掛け状態とするときに、跳上げアーム2の先部掛止具21をトリガー具4に対して掛合させる際の、先部掛止具21の軸周方向の傾きを調整してトリガー具4等の個体差にも合わせることができ、設定がしやすい利点がある。
【0039】
また、跳上げアーム2は、固定用孔341に溶接して固定してもよく、この場合でも固定具34の各ボルト343を使用することにより、固定具34に対する長さ方向の位置の調整が可能である。なお、基アーム1と跳上げアーム2を共に調整可能としたタイプ(足括り罠W2)については、後述する。
【0040】
上記基アーム1と跳上げアーム2はスチール製である。基アーム1は、所定の長さを有し、基部は上記のように固定具33の固定用孔331に差し込まれて溶接されている。基アーム1の先端寄りには、台座部材6が前後に揺動して角度調整可能なように下方へ向けて軸ピン60で取り付けてある。台座部材6は、円管61の先端に径大な円板状の座部62を設けた構造である。
【0041】
基アーム1のうち台座部材6のやや後方には、滑車受具14が開放側を上方へ向けて取り付けてある。滑車受具14の基部(
図1で下部)には、ピン孔(符号省略)に通した軸ピン141によって滑車15が回転可能に取り付けてある。なお、軸ピン141の取り付けは、一端側をゴム環(図示省略)で止めて簡易に固定されており、罠作動後には獲物が暴れる衝撃で外れ、滑車15も外れるようになっている。
【0042】
また、滑車受具14の片側(
図2で下側)の部材の下端部は一部切り欠いて、ワイヤ通し部144が設けてあり、ワイヤ通し部144を外側から覆うように、ステンレススチール製の薄板状のカバー145が上記軸ピン141と同軸で固定されている。カバー145は、可撓性(変形性)を有し、下端部の一部が内方へ向け曲げられており、後述するワイヤロープ5を押し込むとワイヤ通し部144において保持(仮止め)が可能で、外力が作用すれば比較的容易に保持の解除ができる(
図1参照)。
【0043】
そして、滑車受具14の上部には、ピン孔(図示省略)に安全装置を構成する止めピン146が通され、一端部は蝶ナット147で止められている。止めピン146は、罠仕掛けの際に、罠を過って作動させてしまうことを防止するために、後述するセット後にピン孔に通して跳上げアーム2を止めることができるようにしており、最終的には止めピン146と蝶ナット147を外して、罠仕掛け状態とすることができる。
【0044】
基アーム1の先端部には、縦方向に全径にわたり掛合溝11(
図3中図参照)が設けてあり、掛合溝11を通るように横方向に掛止ピン12が取り付けてある。なお、掛止ピン12には、後述するトリガー具4の縦掛止片43を下から掛合するようにしてある。
【0045】
ねじりコイルバネ3、3aのバネ棒32に接続されている跳上げアーム2の長さは、基アーム1の長さと略同じに設定されている。跳上げアーム2の先端部分には、先端具である先部掛止具21が取り付けてあり、先部掛止具21は、開放側を先方へ向けて取り付けある(
図2参照)。先部掛止具21の先端部両側には、後述するトリガー具4に掛止する掛止部210が突出して設けられている。また、先部掛止具21には、外形が略半円形のガード部211が先方へ突出して設けられている。
【0046】
ガード部211にはピン孔(図示省略)が設けてあり、先部掛止具21の内側には、ピン孔に装着した軸ピン212を介して滑車22が取り付けてある。ガード部211は、滑車22の外周部より径大に形成されており、滑車22をガードして破損を防止できるようにしている。なお、軸ピン212の取り付けは、上記軸ピン141と同様に、一端側をゴム環(図示省略)で止めて簡易に固定されており、罠作動後には獲物が暴れる衝撃で外れ、滑車22も外れるようになっている。
【0047】
また、跳上げアーム2の中間部には、上下方向へ貫通した通孔23が設けてある。通孔23には、針金である番線24が挿通して捻じられて、先部に輪部(符号省略)を形成して取り付けてある。番線24には、後述するワイヤロープ5が通されて、番線24によってワイヤロープ5を簡易的に固定するようにしてある。なお、ワイヤロープ5には、スライド方向(
図1で右方向)における上手(かみて)側のやや離れた位置に、蝶ネジ(符号省略)で固定位置の調整が可能なストッパー50が取り付けてある(
図1参照)。
【0048】
そして、罠仕掛けの際には、基アーム1と跳上げアーム2の先端部には、トリガー具4と踏板7が掛止されて足括り罠W1となる。トリガー具4は、踏板7(
図5参照)が取り付けてある山形鋼状の受部材40(
図5に図示)を備えており、受部材40の垂直部の両端部には、上部側が後方へやや湾曲した引掛爪41が立設されている。受部材40の垂直部の中央には、取付具42が縦方向に取り付けてある。
【0049】
取付具42には、縦掛止片43が設けてあり、縦掛止片43の後部側の下部には、上記したように基アーム1先端部にある掛止ピン12に下側から掛止される掛止凹部(図示省略)が設けられている。なお、取付具42の縦掛止片43に対する角度は、角度調整具45によって調整が可能で、この調整により踏板7の角度も変えることができる。
【0050】
また、縦掛止片43の上部には、上記掛止部210と掛止される掛止板44が略水平となるように設けてある(
図1参照)。なお、掛止部210と掛止板44の掛止部は、前後方向において掛止ピン12に近付けてあり、罠仕掛けの際に縦掛止片43に作用する力のバランスが取れて安定するようにしてある。
【0051】
動物を捕獲するワイヤロープ5には、先端部分にループ状の捕獲部51が、絞り金具52にワイヤロープ5の先端部を止着し、ワイヤロープ5をループ状にして絞り金具52に通して形成されている。なお、捕獲部51は、動物の足の側で絞り金具52が実質的に固定された状態で、ストッパー50が番線24に引っ掛かって止められ、更にワイヤロープ5が前方へ引かれることよって絞られる。
【0052】
そして、ワイヤロープ5は、罠の仕掛けの際に、跳上げアーム2の先端部の滑車22の内部隙間に挿通して掛けた後で、ワイヤロープ5をカバー145に押し込んでワイヤ通し部144おいて保持した後、基アーム1の滑車15に掛けるようにすれば、罠が作動するときに、外れるまではワイヤロープ5が乱れにくく、ワイヤロープ5の意図しない所への引っ掛かりなどが生じて捕獲に失敗することがないようにできる。
【0053】
更に、ワイヤロープ5を跳上げアーム2の番線24に通して簡易的に固定し、後方へ延長させて、立木(図示省略)等に繋ぐようにする。なお、ワイヤロープ5に設けてある猿環53(
図5、
図6参照)は、ワイヤロープ5の捻じれによる切断、破損等を防止するものである。
【0054】
(作用)
主に
図1乃至
図6を参照し、足括り罠W1の使用方法及び作用を説明する。
足括り罠W1を仕掛ける際には、まず、仕掛用穴(符号省略)を掘り、その底部にステンレススチール製の穴ボックス8を入れ、これを安定させる。次に、足括り罠W1を配置し、穴ボックス8の後部壁(
図5で左側)近傍に台座部材6を適宜高さに据える。このとき、台座部材6の下には、木製の板を敷いたり土を突き固めて入れたりして、台座部材6を安定させるようにする。
【0055】
次に、基アーム1と跳上げアーム2をねじりコイルバネ3、3aの付勢力に抗して縮閉し、トリガー具4によって基アーム1と跳上げアーム2を罠セット状態とする。具体的には、まず縦掛止片43を掛止ピン12に下から掛け、先部掛止具21の掛止部210を掛止板44に下から掛けて、安定させる(
図1、
図5参照)。
【0056】
なお、罠仕掛けの際には、滑車受具14の隙間に跳上げアーム2を入れた後、滑車受具14に跳上げアーム2の外側に位置するように止めピン146(
図1参照)を挿通し、蝶ナット147で止めておき、跳上げアーム2が跳ね上がらないようにして、万一の場合の安全を図るようにする。
【0057】
また、このとき、跳上げアーム2は上記のように基部側で曲がって傾斜しているため、前部が基アーム1とは略平行になり、滑車受具14を長く設定しないでも滑車受具14の長さの中に収まる。なお、基アーム1と跳上げアーム2を、トリガー具4を介し掛合させる際にも、両アームの掛合部が略平行になるので、掛合させやすい。
【0058】
更に、トリガー具4に取り付けてある踏板7の先端縁部を穴ボックス8の縁部に掛けて架け渡し、ワイヤロープ5の捕獲部51を所定の大きさに拡げ、穴ボックス8の上部のワイヤ収容部80に収めて、トリガー具4の引掛爪41に引っ掛けて形状を整え、踏板7を略囲む(罠本体から離れた側の一部は上部に掛かっている)ようにする。最後に、足括り罠W1や穴ボックス8に土や、落ち葉や草9を適宜厚さに被せて、カムフラージュする。このとき、足括り罠W1に触れた人間の臭いを動物が感知しにくいように、適宜深く被せるのが好ましい。
【0059】
なお、罠の仕掛けの際に、特に傾斜地においては、踏板7の角度を周囲の地面の角度に合わせるために、微調整をする場合がある。その場合は、先部掛止具21の掛止部210を矢印aの方向(
図1参照)に進退させて、掛止板44との掛合位置を前後にずらして調整することにより、取付具42の基アーム1に対する角度、すなわち踏板7の角度の調整をすることができる。
【0060】
具体的には、例えば
図1において、掛止部210を矢印aの左方向に若干移動させれば縦掛止片43が掛止ピン12を中心として若干左回りに動き、踏板7の右側が上がるように傾斜する。また、掛止部210を矢印aの右方向に若干移動させれば縦掛止片43が掛止ピン12を中心として若干右回りに動き、踏板7の右側が下がるように傾斜する。このようにすれば、角度調整具45を備えていないトリガー具4を使用する場合でも、踏板7の角度の調整が可能である。
【0061】
そして、狩猟対象動物の足Lが踏板7を踏むと、踏板7が落ちて、トリガー具4が基アーム1と跳上げアーム2の先端部から外れ、両アーム1、2はねじりコイルバネ3、3aの付勢力によって瞬間的に回転移動して拡開される(
図6参照)。これによって、跳上げアーム2は先部側が上方へ跳ね上がり、ワイヤロープ5の先部が前方へ強く引かれて、ストッパー50が番線24に引っ掛かって止まり、絞り金具52も足Lの側で実質固定されているため、捕獲部51は更に足Lを絞る。
【0062】
また、上記したように両アーム1、2には、後部側の交差した軸着部分がなく、両アーム1、2はそれぞれねじりコイルバネ3、3aのバネ棒31、32に固定具33、34を介し取り付けてあるので、軽量化されている。よって、上記したように足括り罠W1の周りに十分な土や落ち葉や草9を載せていても、ワイヤロープ5の動きと力の作用によって、足括り罠W1の後部側(ねじりコイルバネ3、3a側)が瞬間的に跳ね上がり、上記跳上げアーム2が作動する際に、先部掛止具21が跳ね上がると同時に足Lに飛び付くように移動して足Lに衝突し、足Lを深い位置(基部寄り)で引き絞ることができる(
図6参照)。
【0063】
その後は、動物が暴れるので、ワイヤロープ5によって番線24が切れて、各滑車15、22が上記した構造により外れるので、ワイヤロープ5から両アーム1、2も外れ、略ワイヤロープ5だけが動物を立ち木に繋いだ状態で残る。また、両アーム1、2がワイヤロープ5から外れることにより、動物が暴れることによる両アーム1、2やねじりコイルバネ3、3aの破損を最小限に抑えることができる。
【0064】
また、足括り罠W1は、アーム1、2の十分な拡開速度が得られ、ワイヤロープ5の径を多少大きくしても作動に支障はなく、捕獲のタイミングを外しにくく、捕獲率が高くなる。これにより、使用するワイヤロープ5の径を太くして、耐久性を向上させることが可能になる。また、両アーム1、2を十分に拡開することができ、両アーム1、2を短くしても捕獲に必要な跳上げアーム2の移動幅を得ることが可能になるので、罠をコンパクトに作ることができる利点がある。
【0065】
更に、ねじりコイルバネ3、3aは、両アーム1、2から取り外すことができ、取り付けも簡単にできる。これにより、捕獲対象動物によって罠の作動強さを調整することができる。すなわち、二本のねじりコイルバネ3、3aのうち一本を外して一本だけにしたり、一本をより強いか、又はより弱いバネに取り替えたりすることによって、上記したような細かな作動強さの調整が可能である。
【0066】
図7を参照して本発明の足括り罠の第2の実施の形態を説明する。なお、
図7に示しているのは、足括り罠W2のワイヤロープ5を省略した罠本体の図であるが、説明の便宜上、W2の符号を付与している。なお、足括り罠W2は、上記足括り罠W1と略同様の構造であるので、共通する部分については同じ符号を付与して説明を援用し、異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
足括り罠W2の基アーム1aと跳上げアーム2aは、足括り罠W1の基アーム1と跳上げアーム2と比較して、基部側がより長く形成されている。基アーム1aと跳上げアーム2aは、それぞれ、固定具33、34に対し進退動が可能で、適宜位置でボルト334、ボルト343によって固定することができる。
【0068】
これにより、固定具33、34からの(バネ棒31、32先端からの)突出長さの調整、すなわち足括り罠W2の大きさの調整が可能である。なお、基アーム1aの基部側と跳上げアーム2aの基部側には、所定の間隔で目盛り19、29が設けてある。各目盛り19、29が設けてあることで、上記固定具33、34からの突出長さの調整の目安とすることができ、調整がしやすい。
【0069】
足括り罠W2は、
図8に示すように、基アーム1a及び跳上げアーム2aのねじりコイルバネの拡開中心からの長さを、より長く調整することにより、罠が作動したときのワイヤロープ5の引き量を、より大きくすることができる。詳しくは、両アーム1a、2aを縮めたときと伸ばしたときでは、両アーム1a、2aの拡開時の基アーム1aの滑車15の先端と跳上げアーム2aの先部掛止具21先端との、それぞれのスパンが、S1からS2へ拡がる。
【0070】
これにより、罠が作動した際のワイヤロープ5の引き量が大きくなり、あらかじめワイヤロープ5の先端部の捕獲部51の大きさを大きく設定しておいても、捕獲部51を充分に引き絞ることができる。したがって、罠の仕掛けにおいて、動物の捕獲範囲をより大きく設定しておくことが可能になり、動物の捕獲率を向上させることができる。
【0071】
すなわち、一台の足括り罠W2で、例えば基アーム1aと跳上げアーム2aを短く設定して捕獲部51を小さくすれば、キツネなどの小さい動物に対応ができ、基アーム1aと跳上げアーム2aを長く設定して捕獲部51を大きくすれば、クマなどの大きな動物にも対応できる。
【0072】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
W1 足括り罠
1 基アーム
11 掛合溝
12 掛止ピン
14 滑車受具
141 軸ピン
144 ワイヤ通し部
145 カバー
146 止めピン
147 蝶ナット
15 滑車
2 跳上げアーム
21 先部掛止具
210 掛止部
211 ガード部
212 軸ピン
22 滑車
23 通孔
24 番線
3、3a ねじりコイルバネ
30 コイルバネ部
31、32 バネ棒
33 固定具
331 固定用孔
332 固定用孔
333 ボルト
34 固定具
341 固定用孔
342 固定用孔
343 ボルト
344 ボルト
4 トリガー具
40 山形鋼状の受部材
41 引掛爪
42 取付具
43 縦掛止片
44 掛止板
45 角度調整具
5 ワイヤロープ
50 ストッパー
51 捕獲部
52 絞り金具
53 猿環
6 台座部材
60 軸ピン
61 円管
62 座部
7 踏板
8 穴ボックス
80 ワイヤ収容部
9 落ち葉や草
L 動物の足
W2 足括り罠
1a 基アーム
19 目盛り
2a 跳上げアーム
29 目盛り
【要約】 (修正有)
【課題】罠の仕掛けにおいて、ワイヤロープによる捕獲範囲をより拡げることができるようにすると共に、作動時に跳上げアームの先端具が動物の足に向かって瞬間的に飛び付くように移動して括ることができるようにして、動物の捕獲率を向上させた足括り罠を提供する。
【解決手段】足括り罠W1は、ねじりコイルバネ3aと、ねじりコイルバネ3aの各バネ棒31、32の一方の先端部に固定してある基アーム1と、ねじりコイルバネ3aの各バネ棒31、32の他方の先端部に固定してある跳上げアーム2と、基アーム1及び跳上げアーム2を仕掛け状態にすることが可能で仕掛け状態を解除して罠を作動させることが可能なトリガー具4と、罠の作動における基アーム1及び跳上げアーム2の拡開によって、動物の足Lを括って捕獲するワイヤロープ5とを備える。
【選択図】
図5