(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ヘルスケアシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240820BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2024116591
(22)【出願日】2024-07-20
【審査請求日】2024-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2024062786
(32)【優先日】2024-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724002759
【氏名又は名称】キラル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-109017(JP,A)
【文献】国際公開第2023/017857(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/059285(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2024-0043908(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライフステージの遷移に対応したヘルスケアシステムであって、
前記システムが、
端末制御装置と入出力装置を有するユーザの情報処理端末と、
年齢とライフステージとの第1の関連付け情報と、前記ライフステージと前記ライフステージにおいて提供されるべきヘルスケア機能との第2の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶する記憶装置とサーバ制御装置とを有するサーバと、を含み、
前記情報処理端末と前記サーバが連携可能にネットワークを介して接続され、
前記端末制御装置は、前記入出力装置を用いて、ユーザから少なくとも年齢を含むパーソナルデータを取得し、前記記憶装置に記憶し、
前記サーバ制御装置は、前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザのライフステージを決定し、
前記ライフステージと前記第2の関連付け情報とから、前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を決定し、前記端末制御装置と連携して前記入出力装置を介して、前記決定され前記ユーザに前記ヘルスケア機能を提供し、
前記サーバ制御装置は、定期的に前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を更新する、ヘルスケアシステム。
【請求項2】
前記記憶装置にさらに、特定のイベントと前記イベントにおいて提供されるべきヘルスケア機能との第3の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶し、前記サーバ制御装置は、前記入出力装置を介して、前記ユーザの前記イベントの機能の実行のリクエストを受け入れ、提供している前記ヘルスケア機能に代えて、前記イベントに関連する機能をユーザに提供する、請求項1のヘルスケアシステム。
【請求項3】
前記ヘルスケア機能がメンタルヘルスに関するセルフケア機能である、請求項2のヘルスケアシステム。
【請求項4】
前記記憶装置にさらに、前記ユーザの行動と前記行動を行った際に提供されうるヘルスケア機能との第4の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶し、前記サーバ制御装置は、前記情報処理端末の機能を利用してユーザの行動を監視し、所定の条件を満たした行動による情報が検出された場合、前記第4の関連付け情報に基づいて前記ユーザに前記入出力装置を介して、前記ユーザに新たなヘルスケア機能の実行を提案し、前記ユーザの前記実行へのリクエストを受け入れ、提供している前記ヘルスケア機能に代えて、前記新たなヘルスケア機能に関連する機能をユーザに提供する、請求項1のヘルスケアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子商取引に類似する技術と診断用の医療機器等で研究開発された技術を応用した、ヘルスケアシステム、特に年齢に関係なく使い続けることができるヘルスケアシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心理的・社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気をストレス関連疾患と呼ぶ。ストレス関連疾患は心身症とも呼ばれ、 ストレス反応が改善されずに慢性化していくと、メンタルヘルス面での疾患だけでなく、身体面での疾患に至ることがある。ストレス関連疾患のメンタルヘルス面での疾患は、自律神経失調症、うつ病、不安障害、パニック障害、適応障害、アルコール依存症、薬物依存症、摂食障害、過敏性腸症候群、突発性難聴、神経症、片頭痛、不眠症、緊張性頭痛、ストレス関連身体疾患(心身症)としては胃・十二指腸潰瘍、本態性高血圧症、心臓神経症、気管支喘息,過喚起症候群、本態性高血圧症,冠動脈疾患(狭心症,心筋梗塞)、胃・十二指腸潰瘍,潰瘍性大腸炎,心因性嘔吐、単純性肥満症,糖尿病、筋収縮性頭痛,痙性斜頚,書痙、慢性蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症、慢性関節リウマチ,腰痛症、夜尿症,心因性インポテンス、眼精疲労,本態性眼瞼痙攣、メニエール病、顎関節症、PMS/PMDDなどが挙げられる。そして、これらのメンタルヘルス面に起因する疾患については心理療法が用いられている。また、人生における様々なイベントに起因して、ストレスから生じる上述のような疾患に関連するメンタル不調が発生する。
【0003】
従来これらのメンタル不調や心因性疾患をスマートフォンなどの情報処理端末を利用して治療するための治療用アプリに関する技術が開発されてきた。特許文献1は、ライフステージの衝撃度を測定し、その衝撃度に応じて治療用アプリを提供する技術を開示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ライフステージとは、人生を一定の基準によっていくつかの期間に区切った場合の一つひとつの期間のことを指し、たとえば年齢によって、幼年→児童→少年→青年→壮年→老年などと分けることができる。またそのライフステージの中に、結婚出産などのライフイベントが存在している。また、ライフステージとは無関係、あるいはライフステージをまたがったイベントなどがある。従来の技術はいずれも患者の症状に対処する治療モジュールを提供するものであり、ライフステージなどを意識したものではなかった。特許文献1はライフステージの衝撃度から患者の症状を推測し、治療用アプリを提供するものである。この技術に開示されたように、従来の技術はある程度の疾患の症状があってそれに対応するものであり、疾患の予防や初期段階でのセルフケアを提供し得る、ユーザがその年齢層で起こりうるストレス症状に無認知の時点でセルフケア用の環境を提供するものではなかった。
【0006】
本発明の一つ目の課題は、従来のヘルスケアアプリは、特定の疾患や症状を対象としており、その症状等に応じて治療を提供するものであって、ライフステージの遷移を通じた予防のためのセルフケア環境を提供するものではなかった、二つ目の課題は、従来の治療用アプリは、特定の疾患に特化しており、他の疾患のアプリを使おうとすると、その疾患に対応したアプリを別途購入することになり、使い勝手が変わったり、一般的なストレスを対象にしたものは特定の疾患の症状に対応できるものではなかった、三つ目の課題は、疾患毎の異なるアプリを利用した際には以前の入力したデータが共用できないなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明1)
ライフステージの遷移に対応してセルフケア機能を提供するヘルスケアシステムであって、
前記システムが、
端末制御装置と入出力装置を有するユーザの情報処理端末と、
年齢とライフステージとの第1の関連付け情報と、前記ライフステージと前記ライフステージにおいて提供されるべきヘルスケア機能との第2の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶する記憶装置とサーバ制御装置とを有するサーバと、を含み、
前記情報処理端末と前記サーバが連携可能にネットワークを介して接続され、
前記端末制御装置は、前記入出力装置を用いて、ユーザから少なくとも年齢を含むパーソナルデータを取得し、前記記憶装置に記憶し、
前記サーバ制御装置は、前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザのライフステージを決定し、
前記ライフステージと前記第2の関連付け情報とから、前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を決定し、前記端末制御装置と連携して前記入出力装置を介して、前記決定され前記ユーザに前記ヘルスケア機能を提供し、
前記サーバ制御装置は、定期的に前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を更新する、ヘルスケアシステム。
本発明によれば、ユーザの年齢とユーザの年齢の推移に応じて発生するライフステージの関連付け情報と、ライフステージで必要になる機能、情報、データとの関連付け情報と、ユーザに提供する機能、情報やデータが備えられており、自動的又は半自動的にユーザにこれらの情報、データおよび/または機能が提供される。それらの情報、データおよび/または機能によって、単なる疾患に対する対処ではなく、ライフステージおよび各ライフステージに対応したありそうな疾患の予防・早期発見やメンタル不調のセルフケアが可能となる。ヘルスケア機能は、健康管理の情報や機能であれば良いが、メンタルヘルスのセルフケア機能であると最も効果が期待できる。ライフステージに特化した質問等でユーザの状態を把握できることが、単なる、一般的な症状などを問診に聞き取りによって疾患等を判定するシステムと異なり精度が高い。なお、上記で第1の関連付け情報と第2の関連付け情報は一つの情報とされてもよい。また、年齢とヘルスケア機能とを関連付ける情報で代用することもできる。
(発明2)
前記記憶装置にさらに、特定のイベントと前記イベントにおいて提供されるべきヘルスケア機能との第3の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶し、前記サーバ制御装置は、前記入出力装置を介して、前記ユーザの前記イベントの機能の実行のリクエストを受け入れ、提供している前記ヘルスケア機能に代えて、前記イベントに関連する機能をユーザに提供する、発明1のヘルスケアシステム。
本発明によれば、年齢に関係ないイベント(ダイエットや疼痛といったもので典型的には複数のイベントのヘルスケア機能がシステムのいずれかの記憶装置に記憶されており、ユーザが選択できる)とシステムによって選択された機能タイプを入れ替える、追加する、複合タイプに切り替えることができる。
(発明3)
前記ヘルスケア機能がメンタルヘルスに関するセルフケア機能である、発明1-2のヘルスケアシステム。
メンタルケアは従来行われていなかったセルフケアなので有用性が高い。
(発明4)
精神状態を推定するための質問を行う、発明1-2のヘルスケアシステム。
疾患等の状態を検出するための評価尺度の質問や、日常の状態を聴取するためのEMA、や症状メモリなどによって、ユーザの精神状態を推定し、症状の状態が軽微なうちに対処することや疾患の予防につなげるための評価及び機能の提供を行うことができる。
(発明5)
前記記憶装置にさらに、前記ユーザの行動と前記行動を行った際に提供されうるヘルスケア機能との第4の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶し、前記サーバ制御装置は、前記情報処理端末の機能を利用してユーザの行動を監視し、所定の条件を満たした行動による情報が検出された場合、前記第4の関連付け情報に基づいて前記ユーザに前記入出力装置を介して、前記ユーザに新たなヘルスケア機能の実行を提案し、前記ユーザの前記実行へのリクエストを受け入れ、提供している前記ヘルスケア機能に代えて、前記新たなヘルスケア機能に関連する機能をユーザに提供する、発明1―4のヘルスケアシステム。
ユーザの行動を監視して(半)自動的に機能タイプの提案がなされるのでユーザに適した機能タイプを実践できる。
(発明6)
ヘルスケア機能はユーザのヘルスケアデータの記録だけを行うものは除かれ、ユーザに対して心理的介入処理を行う機能を含む、発明1―5のヘルスケアシステム。
(発明6-2)
ヘルスケア機能はユーザのメンタルヘルスに関連のないヘルスケア機能だけを行うものは除かれる、発明1―5のヘルスケアシステム。
本願発明はメンタルヘルスだけでなく、肉体的なヘルスケア機能だけのものも対象とするが、ライフステージの変化は特にメンタルへの影響が大きくメンタルヘルスの管理面で効果が高いので、発明6では特にその点を規定するものである。
(発明7)
ライフステージおよびライフステージにおいて含まれるイベントに適合するヘルスケア機能を提供するシステムに共通して使われるデータベースシステムであって、
前記データベースシステムが、
複数のヘルスケア機能を記憶する記憶部を有するサーバを含み、
年齢を含むユーザのパーソナルデータの情報と、
前記ユーザに対して判定されたライフステージ情報と、
前記ユーザに対して提供されるヘルスケア機能に関する情報と、
前記ユーザに提供されるヘルスケア機能の中で取得される前記ユーザの質問項目の質問への回答および/または前記ユーザに提供されるヘルスケア機能において提供される前記ユーザの実施状況に関する情報と、をセットとして記憶したデータベースシステム。
共通のデータベースを利用できるのでユーザの負担が減る。
(発明8)
発明7のデータベースシステムに、本サービスを提供するシステムのサーバ外で実行される他のアプリが接続され、少なくとも共通の情報のデータを記憶することを特徴とするデータベースシステム。
他社のアプリとデータを共有することで、データ数が向上し、ユーザの利便性が改善されるとともにデータ解析の精度を向上することができる。
(発明9)
セルフケア機能を提供するヘルスケアシステムであって、
前記システムが、
端末制御装置と入出力装置を有するユーザの情報処理端末と、
前記システムに含まれる複数のヘルスケア機能の保管情報と前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶する記憶装置と、サーバ制御装置と、を有するサーバと、を含み、
前記情報処理端末と前記サーバが連携可能にネットワークを介して接続され、
前記端末制御装置は、前記入出力装置を介して、ユーザが前記保管情報を参照して、前記ユーザが利用してみたい前記ヘルスケア機能を選択し、情報処理端末からシステムにリクエストを送信し、前記ユーザからの前記ヘルスケア機能へのリクエストを取得し、その情報を前記サーバに送信し、
前記サーバ制御装置は、前記リクエストされたヘルスケア機能を、前記端末制御装置と連携して前記入出力装置を介して、前記ユーザに前記ヘルスケア機能を提供する、ヘルスケアシステム。
本発明のシステムは、ユーザからリクエストされたヘルスケア機能(例えば、食事管理、運動量管理、ダイエット、メンタルヘルス、うつセルフケア、不眠セルフケア、PMSセルフケア)を提供する。このシステムでも特にメンタルに関するセルフケア機能であると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘルスケアシステムによれば、一つのヘルスケアシステムを使って様々なライフステージおよびライフステージに含まれるイベントやその他の人生におけるイベント(ダイエットや疼痛、病気など)に対応したヘルスケアを行うことができる。また、本人が気づいていない疾患などの早期予防や対処にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の実施例のPMSメモリの(a)ユーザのパーソナルデータのデータベースの一例、(b)入力画面の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例の睡眠日誌の(a)ユーザのパーソナルデータのデータベースの一例、(b)入力画面の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例の疼痛日誌のユーザのパーソナルデータのデータベースの一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例の疼痛日誌の入力画面の一例を示す図である。
【
図6】本発明のシステムの(a)制御プログラムの機能ブロック、(b)制御のフローを示す図である。
【
図7】本発明の実施例のシステムのユーザ画面の一例を示す図である。
【
図8】本発明のセルフケアシステムに含まれるプログラムで用いられる疾患と介入プログラムの対応関係を示すリストである。
【
図9】本発明のプラットフォームのユーザの生物心理社会的要因とプラットフォームの要件の対応関係を示すリストである。
【
図10】本発明の機能タイプの判定フローを示す図である。
【
図11】本発明の年齢層と機能タイプとの対応関係を示す図である。
【
図12】本発明の二つの機能タイプのEMAの入力画面の一例を示す図である。
【
図13】本発明に用いられるデータベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はストレス関連疾患やストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステムにおいて、ストレス関連疾患やストレスに起因するメンタル不調からもたらされる対症的改善提案だけでなく、根本原因となるストレス対処法を身に着けることによって対症的改善提案の効果が向上するという知見に基づく。さらには、ストレス対処法と対症的改善提案の内容や提供時期を関連付けることによってさらに効果を高めることができる。
(セルフケアアプリを含むシステムの構成)
本発明の一実施形態として、インターネット上に設置されたネットワークシステムにインストールされたプログラムを挙げる。ネットワークシステムは、サーバやクラウド上の大容量の記憶装置を備え、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのユーザ端末がインターネットを介して接続されたサーバであり、このサーバ装置は、本実施形態に係るプログラムを実行することで、ユーザ端末とのデータ通信を通じて、ユーザ端末から入力された情報や、サーバの記憶装置に格納されている情報を用いてユーザ端末を介してユーザにストレス関連疾患の治療や緩和、セルフケアを可能とする治療用アプリ、セルフメンタルヘルスケアアプリやストレス関連疾患に関わる疾患教育等の各種情報を提供するものである。また、本システムはサーバとユーザ端末が協同して利用者、患者の症状を改善する例として示したが、すべての要素をサーバ側だけに保持し、ユーザ端末は情報入出力と情報表示のためだけに用いるシステム、あるいは、必要なデータやプログラムをユーザ端末にダウンロードして、すべての処理をユーザ端末で実行できるシステムや、ユーザがアクセスできるウェブページでの提供も本発明の範囲に含まれる。
図1にユーザ端末110とサーバ106を含むネットワークシステム100の構成の概略を示した。ユーザ端末110は、インターネット120を介してサーバ130と通信するための通信装置105、個人情報や、データ、プログラムを記録するための記憶装置102、表示装置103、ユーザからの入力を受け付ける入力装置104、これらの制御を行う制御装置101などを含む。サーバ130には、インターネット120を介してユーザ端末110と通信するための通信装置131、大容量の記憶装置133、および制御装置132などが含まれる。制御装置132には、通信装置131を介してユーザ端末110と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置133に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在または過去の症状・状態を記録した症状の記録(日誌)を管理する専用のプログラム(以下、症状日誌プログラムとも言う)や、セルフケアアプリや治療用アプリのサーバ側プログラム、セルフケアアプリや治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが格納されている。そして、サーバ側の制御プログラムは、ユーザ側のセルフケアアプリ・治療用アプリと連携して診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアを実行し、制御装置132がセルフケア、治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。それによってサーバ130による診断・治療・緩和・改善・維持あるいはセルフケアがユーザに提供される。この例ではセルフケア・治療用アプリはサーバ側部分とユーザ端末側部分に分けられ、診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアが実行される例を示すが、必要なプログラム・データ等をすべてユーザ端末110にダウンロードし、ユーザ端末110で独立して実行できる構成としてもよい。または、ユーザ端末110は入力手段および表示手段としてのみ機能し、サーバ130はユーザ端末110からの入力、例えば専用のウェブページを介した、に基づいてプログラムを実行するように構成してもよい。
【0011】
(ストレスマネジメント法)
心理療法や心理カウンセリングの手法で、被験者のストレスへの対処法を習得させる方法が確立されている。本発明では心理療法の中でも認知行動療法に基づくストレスの対処法について例示するが、その他の心理療法等の手法を適用することも可能なことはいうまでもない。またストレス対処法を身に着けることによって、普段からストレス耐性を高め、さまざまな不適応行動や症状の問題を予防することが可能となり、結果として、ストレス関連疾患の改善や症状の改善につながり、また、症状に対する心理的介入の効果を高めることができる。体系的なストレス対処法とは、マインドフルネスストレス逓減法(基礎作り(インタビュー、マインドフルネスを探索する、世界と自分自身をどう見ているか、自分自身の体とともにある)、ストレスに対応(ストレスとは何か、ストレス:自動反応かマインドフルな対応か、マインドフルなコミュニケーション、サイレントな1日)、ケアする(自分自身をいたわる、振り返り、前に進む、さらに続けていく)などの一連の流れ、あるいは、問題解決法であれば、問題を具体化する、具体的な解決策を考える、いくつかの解決策のそれぞれの長所と短所を検討する、解決策を決定し、実行する、実行した結果を評価する、などの一連の流れを体系的に行う心理療法のことをいう。
【0012】
(アクセプタンスアンドコミットメントセラピーの技法)
近年、第3世代の認知行動療法として、アクセプタンスアンドコミットメントセラピー(ACT)が開発されてきた。ACTでは、(1)アクセプタンス(Acceptance),(2)脱フュージョン(Defusion),(3)今この瞬間への気づき(Present Moment Awareness),(4)文脈としての自己(Self as Context),(5)価値Contact with Values,(6)コミットされた行為(Committed Action),の六つのコアプロセスがあり、アクセプタンスまたはマインドフルネス過程と同時にコミットメントと行動変容過程を適用した、関係フレーム理論を含む現代の行動心理学を基礎とする心理療法である((1)-(4)がマインドフルネスと関連すると言われている)。そして、そのそれぞれに対応したスキルを身につけることで、心理的柔軟性を養い、ストレスへの対処能力を身につけるものである。本願発明者らはACTのこういったプロセスが分離され、それぞれのプロセスの訓練方法が確立しているために、情報処理端末での利用に適していると考え、ACTでの手法を提案する。なお、厳密に上記の分類をする必要もなく、それぞれの目的を達成できるのであれば異なる分類でもよく、また、すべてを実行する必要がないこともいうまでもない。
【0013】
(症状メモリ)
症状メモリはユーザの日々の状態をカレンダー機能・スケジュール機能を用いて記録したものである。対象とする心身症に応じて、ユーザに対する質問項目を変更することができる。また、ユーザの症状に合わせて必要な質問項目を選択するようにしても良い。また広範囲の心身症の症状と質問項目のリストを予め記憶装置に記憶させておき、ユーザがアプリを利用する際に、質問項目に回答を促し、その回答結果から対応する質問項目のリストを症状メモリの毎日の質問項目として設定する構成とすることもできる。心身症の症状は症状の記録を管理することによってセルフケアすることができるので、日々の症状の状態に関する回答結果の推移をユーザが情報処理端末を介してシステムにリクエストして画面に表示できる構成とすると好ましい。
図2(a)には記憶装置に記憶された症状メモリのデータベースの例をしめした。このデータベースでは日時情報とユーザから取得した質問項目への回答(この場合は、4件法、7件法などで入力されている)との対応付けた記録を示している。ここで典型的には、質問項目だけでなく、体温や、心拍数、活動度、などのバイタルデータや、旅行、結婚式、飲み会などの社会的なイベント等の情報などを同時に対応付けて記憶することもできる。また、メンタルに関係のない単なるヘルスケアの管理機能として、例えば、運動量の管理などの場合は、心理的な質問項目などを含まず、ジョギング距離、歩数、食べたもの、体重などの記録だけの記録として症状メモリを使うことも当然可能である。
【0014】
(PMSメモリ)
図2を用いて、症状メモリの一つとしてPMSメモリを説明する。PMSメモリは、生体リズムの影響によって女性のからだに周期的に表われる症状を把握するために、ユーザの生理周期に合わせた、身体症状、精神症状、社会的症状等と、基礎体温等、あるいは、EMA(Ecological Momentary Assessment、経験サンプリング法)と同時に記録するものである。
図2(b)は症状メモリの例としてのPMSメモリのユーザ端末110を介した入力画面の例を示す。PMSメモリではユーザ端末110の表示装置103に入力項目が表示され、表示装置103の表面に設けられたタッチパネルである入力装置104によってそれぞれの項目についての症状のある・なしに基づいてスライダバーを利用して入力する例を記載した(
図2(b)の質問項目が、
図2(a)の項目A、項目B、、、に対応している。なお、紙面の都合で項目は3つしか図示されていないがほかの項目が省略されているにすぎないことはいうまでもない)。表示や入力方法はこれに限られず、自由記載やチェックボックスを利用してもよい。たとえば、基礎体温の測定時に同時にこのPMSメモリを毎日入力し、基礎体温とその日の身体的症状、精神的症状、社会的症状(これらはすべてではなく必要なものだけでも良い)と、場合によっては追加で入力されたEMAの入力データ(PMSメモリのデータだけでなく、その他の測定結果(加速度センサを用いた身体活動量や心電図センサを用いた心拍数の変動、睡眠時間、食事記録)でもよい)が月経周期と関連付けられて記憶装置102あるいは記憶装置133または両方に記憶される。PMSメモリに記録する質問項目としては、PMSメモリ(川瀬ら「日本女性心身医学会雑誌」第5巻、第1号、31-37)、MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)、偏光板MDQ(modified MDQ)、PSST(The Premenstrual Symptoms Screening tool)、DSM-IVのPMDDの診断基準、COPE(Calendar of Premenstrual Experiences)、PMSIS(Premenstrual Symptoms Impact Survey)、健康度・生活習慣診断検査(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit; DIHAL.2,中学生~成人用)、MAQ(Menstrual Attitude Questionnaire)、VAS(月経痛レベル)などに記載のものを利用してもよい。これらの指標は月経随伴症状を診断するために用いることができる。なお、ユーザの心理・社会的な背景として、妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティによっても心理社会的な月経随伴症状に影響が出ると考えることから、ユーザの基礎情報として妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティについても質問項目として、記録されるようにしてもよい。
【0015】
(睡眠日誌)
図3(a)に記憶装置133(場合によっては記憶装置102)に記憶される睡眠日誌のデータの一例を示した。本睡眠日誌は、患者の就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻、睡眠の質(例えば、5段階)、目覚めた回数(あるいは、目覚めていた時間)、昨日の昼寝の時間、睡眠効率、実質睡眠時間、床上時間、翌日業務、睡眠剤やアルコールの摂取などの項目が設けられ、不眠症治療用アプリを含むシステムは例えばスマホなどのユーザ端末110の入力画面(たとえば、
図3(b))から、患者に定期的、典型的には起床後、迅速に、ユーザ端末110を介してこれらの項目の値を入力することを求める。また、翌日業務などは帰宅後などで就寝時刻の設定前に入力するようにしてもよい。ここで、翌日業務は、翌日の業務や作業内容の危険度を示す入力値で例えば、居眠りなどをすることによって身体的な危険が及ぶ業務や作業を行う場合が該当する。ここにチェックが入っている場合や5段階で4以上の場合に、就寝時刻の設定で、実質睡眠時間が短くなるような設定を通常(例えば昼間の眠気が5段階評価の5の場合、短くすることを避ける)よりも避けるように設定(例えば昼間の眠気が5段階評価の4の場合、短くすることを避ける)すると安全面から好ましい。このほか、睡眠回数など他のパラメータを入力し、記憶してもよい。また、人の体温の周期と概日リズムについて相関があることが知られており、人の体温の周期と睡眠周期との相関があることも知られているので、定期的に体温を測定し、そのユーザの一日の体温の変化のグラフと就寝時刻との関係をグラフィカルに表示したり、この体温の変化を就寝又は入眠時刻あるいは覚醒時刻または起床時刻の設定に役立ててもよい(例えば、体温が下がっていくときに就寝時刻を合わせる、あるいは、体温が上がっていくときに起床時刻を合わせる)。このように、ユーザのバイタルサインと就寝又は入眠時刻、あるいは覚醒時刻または起床時刻との関係を表示、あるいはこのデータをそれらの時間設定に役立ててもよい。また、
図3(a)では7月1日から7月3日の3日分のデータとして記憶データを示したが、治療の継続期間や、必要期間分の記録を保存することは言うまでもない。また、上記例では睡眠日誌への入力はユーザ端末110へのユーザの入力としたが、ウェアラブルデバイス等のユーザ端末からの自動的な入力でも構わない。
【0016】
睡眠効率とは、ベッド等の寝床にいる全体の時間のうち、実際に眠れている時間の割合をいう。すなわち、睡眠効率は、以下の式により算出される。
睡眠効率=(入眠時刻から覚醒時刻までの時間)/(就寝時刻から起床時刻までの時間)×100[%]
床上時間とは、以下の式により算出される。
床上時間=就寝時刻から起床時刻までの時間
また、睡眠時間は、以下の式により算出される。
睡眠時間=入眠時刻から覚醒時刻までの時間
実質睡眠時間は、以下の式により算出される。
実質睡眠時間=入眠時刻から覚醒時刻までの時間-目覚めた時間
また、これらの時間や睡眠の質はユーザの入力に変えて、アクチグラフィ、睡眠ポリグラフィや、スマートベッド、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスなどによるデータによって取得するようにしてもよい。
さらに、これらのデータはユーザ端末110や管理者や医療者の端末(図示しない)から、特定日の患者のデータの呼び出し、平均データの呼び出し、特定期間のデータの推移(折れ線グラフ等で)を表示できるようにすることによって、患者の状態の確認や、ユーザのセルフケアに役立てることができる。
【0017】
(疼痛日誌)
図4に記憶装置133(場合によっては記憶装置102)に記憶される疼痛日誌のデータの一例を示した。本疼痛日誌は、患者の午前・午後・夜の疼痛の程度、午前・午後・夜の服薬の記録、午前・午後・夜の生活への疼痛の影響、その日の気分、天候、平均気温(最高気温、最低気温、寒暖差などを記録するようにしても良い)、平均湿度(午前・午後・夜の湿度としても良い)、体温(午前・午後・夜の湿度としても良い)、最高血圧・最低血圧(午前・午後・夜の湿度としても良い)、環境要因や状況などのストレス要因などを記録する、その日の出来事・メモ、生理の有無などをセットにして日毎に記憶している。なお、本日誌はいずれかの慢性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、関節痛、腰痛などに対して利用することができるが、さらに、いずれの痛みかを記録するようにしても良い。次に
図5にそれぞれのデータをユーザ端末110を介して入力する方法を示す。まず、入力時刻はユーザ入力欄をクリックすると、「午前」、「午後」、「夜」を選択可能とするドロップボックスが表示され、ユーザはいずれかを入力する、次に、その入力時点での痛みの程度を入力するために、入力欄をクリックし、出願するドロップボックスから、「強」、「中」、「弱」、「なし」を選択する、続いて、薬品名個数入力のドロップボックスをクリックし、薬品名「バファリン」、「ロキソニン」、「イミグラン」、「ゾーミッグ」、「レルバックス」、「マクサルト」、「アマージ」、「インデラル」などから選択し、また、その量を「1錠」、「2錠」、「3錠」などから選択する。次に、痛みの生活への影響を記録するために、ユーザ入力欄をクリックし、出現するドロップボックスから「大」、「中」、「小」を選ぶ。さらに、その日の気分を記録するために、気分の横のユーザ入力欄をクリックし、「憂鬱」、「不安」、「イライラ」、「脈打つ痛み」、「吐き気」、「重い痛み」、「嘔吐」、「不眠」、「その他」から感情、症状を選択する。また、女性の場合は、生理の有無を入力することもできる。さらに、毎日一定時間に測定した体温、血圧をユーザー欄をクリックして入力する。さらに、その日の天候をユーザ記入欄をクリックして、出てきたドロップボックスの「晴れ」、「曇り」、「雨」から選択して、入力、気温、湿度を、ユーザ入力欄に記入して記憶する。すべての入力が終わったら、図示していない「完了」ボタンをクリックして、
図4に示したリストに入力値を上書きする。また、上記例ではユーザが手入力したが、天候、気温、湿度は地方の気象情報提供サイト等からダウンロードすることができる。さらに、体温、血圧は、スマホのカメラや、スマートウォッチ、イヤホン型のウェアラブルデバイスなどから自動的に取得しても良い。また、痛みを感じたときに都度、タッチするボタンを入力装置として設けて、その都度押すように構成し、その強さや回数から痛みの程度を判定する、あるいは、脈拍などで頭痛の状態にあることが認識できる場合はそのようなバイタルサインを用いて入力するようにしても良い。その他、当業者周知の入力方法でこれらのデータを入力することもできるし、項目を増減することもできる。また、ここでは、日にちの情報はスマートフォンから自動取得されたが、ユーザが入力できるようにしても良い。
図4のリストでは3月1日から3月3日のデータの例を示しているが、これに限らず、連続してデータが増えていくことは言うまでもない。さらに、これらのデータはユーザ端末110や管理者や医療機関の端末(図示しない)と連携させ、これらの端末から、特定日の患者のデータの呼び出し、あるいは、評価しやすいように集計・分析したデータ、例えば、平均データの呼び出し、特定期間のデータの推移(折れ線グラフ等で)を呼びだして表示できるようにすることによって、患者の状態の確認や、ユーザのセルフケアに役立てることができる(呼び出すだけでなく定期的にデータを送信するようにしても良い)。さらに、医療機関の端末の電子カルテ等のソフトと連携させ、データをソフトに転送、あるいは特定のデータをソフトに転送して医療機関で利用することもできる。
疼痛日誌は服薬管理アプリとして使うことも可能で、服薬時に服薬した時間、服薬した薬品名、個数を記録できるようにしても良い。ここで、良く服薬する薬品は、簡単に選択できるように、入力画面でボタン表示させ服薬時にボタンを押すと、その押した回数とともに、時間、を記憶させても良い。さらに、この服薬管理と痛みの相関関係のグラフや、両者のデータの折れ線グラフなどを表示、あるいはそれらのデータを医療機関端末に転送するようにしても良い
【0018】
(アプリ例1)
本実施例では月経随伴症状(特にPMS)のセルフケアアプリを例示する。本アプリの構成は前半部のストレス対処(ストレスケア)と、後半の症状対処とから構成される(ストレスケアのみを意図した場合は前半部だけのアプリとすることもできる)。本アプリの制御はサーバ130またはユーザの情報処理端末110のいずれか、あるいは両者に記憶されたソフトウェアプログラムで実現される。本プログラムは
図6(a)の機能ブロックからなり、
図1の各機能を有する装置を制御してソフトウェアプログラムの機能をユーザに提供する。また、ソフトウェアプログラムは典型的には、
図6(b)のフローで動作する。入出力ブロック601は表示装置103および入力装置104を制御し、ユーザへの情報(ワーク等も含む)を提示したり、ユーザ入力を受け付けるブロックである。評価ブロック602は各ブロックから入力された情報から所定の評価を行うブロックである。スケジュール管理ブロック603はカレンダー機能を有し、日付情報と各種情報を関連付けて、記憶管理ブロック605と連携しながら処理を行うブロックである。ワーク提供ブロック604はプログラムの流れに沿って、制御ブロック606からワークの提供のリクエストを受けると、記憶管理ブロック605と連携しながらワークを入出力ブロック601に送信するブロックである。記憶管理ブロック605はシステムの記憶装置102,133を制御するブロックで、制御ブロック606やその他ブロックからのリクエストに応じて、リクエストされたワークやデータなどの情報を返すブロックである。制御ブロック606は本プログラムの実行を制御するブロックである。
図7に本プログラムに従うホーム画面の例を示した。
図7には、ユーザのスマートフォンである情報処理端末110、ユーザの生理日予測や、バイタルデータ、天気や気圧およびそれらの予報、生理周期の中での状態などが表示されるメインウインドウ701、タッチパネル上のタイル(アイコン)706をタッチすることで所定の機能を起動するための機能ウィンドウ702(横スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、これらの機能ボタンは固定されたものである)、検索窓703、タッチパネル上のタイル(アイコン)705をタッチすることで所定の情報の閲覧や機能の起動するための情報ウィンドウ704(縦スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、新しい情報や機能に対応したアイコンが画面上の上方の情報ウィンドウのタイルに追加され、古い情報は情報ウィンドウの下方に遷移し、所定量のタイルが閲覧可能である(本実施例では18のタイルが閲覧可能で、古くなったものは情報ウィンドウのタイルから削除されるように制御される。なお、本実施例では古くなった情報は機能ウィンドウのアーカイブ機能を起動すると開かれるアーカイブフォルダでカテゴリごと、日付順に整理されて閲覧可能に設定されている)。本実施例では表示される情報のタイルは記憶装置のメモリで管理されており、メモリには情報の新しい物から1-18の順番がつけられ、情報ウィンドウの最上部の左から1-3が、2段目に4-6が表示されるというように制御され、新しい情報が表示されるようにリクエストされると、1に新しい情報が記憶され、元の1の情報は2のメモリに、元の2の情報は3のメモリに、というように書き換えられる。
【0019】
次に、ソフトウェアプログラムのフローを
図6(b)を用いて説明する。
(650)ユーザが入出力制御ブロック601によって制御される情報処理端末110の表示装置103のタッチパネル上の本プログラムを示すアイコンをタッチすることによって起動されるログイン画面(図示しない)からログイン動作を行う。これによって
図7のホーム画面が表示される。(651)スケジュール管理機能ブロック603が記憶管理ブロック605に当日のデータを入力すべきタイミングでのPMSメモリの入力の有無をリクエストし、記憶管理ブロック605は記憶装置133または記憶装置102のデータベースを検索し、記録の有無を返す。記録がなかった場合は、スケジュール管理ブロック604は入出力ブロック601を介してユーザがPMSメモリに記憶すべき質問項目を提示し、ユーザの入力を受けると記憶管理ブロック605へ送付し、PMSメモリの記憶されるユーザごとのパーソナルデータを記憶したデータベースに追記を行う。(652)ユーザがセルフメンタルケアアプリを起動させる、あるいは、ユーザのバイタルデータの変化や、SNSなどでのユーザの特定の入力が検出されたなどの条件が満たされアプリの起動がリクエストされた、プログラムの記述としてそのタイミングでのアプリ起動が規定されていたなどで、セルフケア機能が開始される。スケジュール管理ブロック603は、複数のPMSや月経随伴症状の疾患教育および心理療法(ACTであれば、思考のとらわれについてのメタファーと心理教育、心理的柔軟性についてと価値についての心理教育、価値に沿った行動についての心理教育、アクセプタンスと体験の回避についての心理教育、フュージョンについての心理教育、注意訓練や、文脈としての自己についての心理教育、体験の回避が効果的でないことの心理教育など)についての教育用のコンテンツ(典型的には動画であるが、テキスト形式や音声コンテンツ、エクササイズとして、チャットボットやゲーム形式での双方向性を持つものでも構わない)を所定の時間的間隔、所定の順序で、ここでは、毎朝、これらのコンテンツの提供順を定めたリストに従って一つのコンテンツを提供するように制御ブロック606にリクエストを行う。制御ブロック606はこのリクエストに応じて制御ブロック606が記憶管理ブロック605へリクエストし、記憶管理ブロックは記憶装置133または記憶装置102の該当コンテンツを読み出し、制御ブロック606に送信し、制御ブロック606は入出力ブロック601に送信し、入出力ブロックは必要に応じて表示装置103と入力装置104を介してユーザに該当コンテンツを提供する。実際の画面は
図7のメインウインドウから、該当コンテンツの提供ページに移り、例えば動画の場合、画面上の情報ウィンドウの左上に新たなタイルとして該当コンテンツ動画が提供される(図示しない)。画面上の「戻る」ボタン(図示しない)をタッチするかコンテンツが終了することでメインウインドウに移る。また、このユーザによる実行状況をスケジュール管理ブロック603が監視して、途中中断していた場合は実行状況として、記憶し、制御ブロック606は、次回起動時に再度中断個所から再開するように制御する。該当のコンテンツをユーザが完了した場合、次の処理に移る。スケジュール管理ブロック603は提供スケジュールの記載されたリストに従って、新たなコンテンツを提供しようとした際に、前のコンテンツが終了していなかったことを検出すると、新たなコンテンツを提供するのではなく、前のコンテンツを再度左上に表示するように制御を制御ブロック606にリクエストして制御することもできる。本アプリのコンテンツは、チャットボット形式などの文章、音声、動画、ゲーム形式などを利用することができるが、それらの一つや、コンテンツの中身に応じて組み合わせを用いたコンテンツ群を設けても、一つのコンテンツを複数の形式で作成しておき、事前に設定、あるいは都度ユーザが選択できるようにしても良い。また、ユーザの利用履歴、たとえばアプリの利用履歴を監視装置106を用いて監視、記録し、ユーザが動画鑑賞の頻度が高いユーザの場合、コンテンツも動画で、SNSなどの利用が多い場合はチャットボット形式でコンテンツを提供するようにしても良い。
【0020】
(653)本実施例では、ACTに基づくコアプロセスとして、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」については10個のエクササイズが、「価値」、「コミットメント」の6つを用いる。ここでは3つを用いたがこれには限られず、ACTの6つのプロセスに基づくプロセスであればいずれでもよい(例えば、「マインドフルネス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」、「アクセプタンス」などの4つのプロセスとして実施することもできる)。また、以下で用いられる尺度は一例であって、目的に応じて周知の尺度を利用できることはいうまでもない。まず、制御ブロック606はPMDD評価尺度の質問項目をユーザに実施する。つまり、制御ブロック606から記憶管理ブロック605に該当尺度のリクエストを行い、記憶管理ブロック605はリクエストに従い、記憶装置133または記憶装置102の該当尺度を読み出し、制御ブロック606に送信し、制御ブロック606は入出力ブロック601に送信し、入出力ブロックは表示装置103に尺度の項目を表示し、ユーザは入力装置104を介して回答する。項目については「そう思う」「ややそう思う」「あまり そう思わない」「そう思わない」といった回答を選択する4件法、5件法や7件法のような数値で処理可能な選択方法を選択すると都合がよい。そして、この回答結果(典型的には、合計点数、あるいは尺度に含まれる因子ごとの合計点数)からユーザのPMDDの状況を評価ブロック602が、記憶管理ブロック605に尺度と既知の点数と病状の対応関係を示すリストをリクエストし、記憶管理ブロック605は該当リストを記憶装置133または記憶装置102から読み出し、評価ブロック602に返し、評価ブロックはユーザの回答結果の点数をこのリストと対比してユーザの状態を評価する。その後、評価ブロック602は、記憶管理ブロック605に結果を送信し、記憶管理ブロック605は記憶装置133または記憶装置102のユーザごとのパーソナルデータを記憶したデータベースに記憶する(以下、尺度の回答の取得や評価は同様に行う)。次に心理的柔軟性を測定するためにAAQ-IIの尺度を用いて前述同様にユーザの回答を取得し、ユーザのパーソナルデータに記憶する。また、FFMQやCFQなどの尺度の回答をユーザに促し、その回答結果をユーザのパーソナルデータに記憶させ、ベースデータとして利用することもできる。
【0021】
次にACTの各プロセスについてのACTの理論に基づくエクササイズを提供する。記憶装置133または記憶装置102には、「文脈としての自己」(観察者/視点としての自己=場/文脈としての自己を理解するための、観察者エクササイズ、MCT(メタ認知療法)の自由連想タスク、チェスボードのメタファーなどの周知のエクササイズ)、「アクセプタンス」(苦痛を伴うような内的出来事にこころを開き,そのための時間をとるための、氷を握るエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「価値の明確化」(自分が継続的にどんな行動をとるのか価値の明確化のための、10 個の価値の領域(仕事/職業、友人/社会生活のエクササイズなど)から重要だと考える領域を選択するエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「脱フュージョン」(自分の内的な出来事から距離を置くか,それを切り離し観察できるようになるための、バスのエクササイズ、「私は・・・という考え」を持っていると言いかえるエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「いま、この瞬間」(この瞬間に起こっていることへつながり,埋没するための、オーケストラの楽器の音色、グミの見た目・味・香り・触感、身体のさまざまな部位の感覚に注意を向けるエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「コミットされた行為」(自身の価値に導かれた効果的な行動をとるための、価値に基づくコミットメントを促すワークなどの周知のエクササイズ)が記憶されている。本実施例では、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」については10個のエクササイズが、「価値の明確化」、「コミットされた行為」については一つずつのワークが用意されている(エクササイズやワークの数は特に規定がなく適宜変更可能なことはいうまでもない)。なお、エクササイズやワークだけでなく、その実施順が規定されるものについてはその情報も併せて記憶されている。また、それぞれのプロセスに関する教育コンテンツを含めて提供しても良い。
【0022】
次にフロー653のエクササイズ等のワークの実施について説明する。
各プロセスの実行順序は特に規定はないが、例えば、FFMQやCFQの尺度の測定を行って、相対的に弱いプロセスから始める、あるいは、653の始める際にユーザに対して、6つのプロセスについて興味を持っているプロセスに関する質問枝を提供し、ユーザの回答から順序を決定することにしても良い。また、事前にユーザにBIG5、エニアグラム、MBTIのようなユーザ特性を調査する質問をユーザに行い、そのユーザ特性に合わせて順番や、提供するプロセスを決定しても良い。例えば、BIG5で情緒安定性が低く出ている場合は、「アクセプタンス」から、つぎに「脱フュージョン」のように提供し、好奇心が高いと出ている場合は、「今、この瞬間」、「脱フュージョン」のように提供するとユーザのエクササイズへの効果を高めることができる。また、情報処理端末を介してユーザへの質問をする代わりに、スマートフォンの利用履歴からBIG5のような特性評価を行う周知の技術(例えば、特開2022-189376)を使うと、ユーザの負担を増やすことなく、判断することができる。
本実施例では多くのケースで重要なプロセスである、「いま、この瞬間」、「脱フュージョン」からエクササイズを開始するように設定されている。また、ソフトウェアプログラムの各ブロックとハードウェアの各機能との連携は上述と同様であるので詳細は省略する。また、エクササイズの提供プログラムの実行に先立って、制御ブロック606がFFMQやCFQなどの尺度の回答をユーザに促し、その回答結果をベースとして利用することもできる。
【0023】
まず、スケジュール管理ブロック603は、「いま、この瞬間」のワークセットに含まれる、「お茶を飲む」ワークを提供する。つまり、開始日の朝10:00に情報ウィンドウの最新のタイル(左上)に「お茶を飲む」エクササイズを起動するためのアイコンを表示させるように制御ブロック606にリクエストする。スケジュール管理ブロック603はユーザによる同エクササイズの実行状況を記録する。教育コンテンツと同様に、ユーザが実行していなかった場合、スケジュール管理ブロック603はスケジュールに従ってエクササイズを提供するだけでなく、実行していない、あるいは、中断しているエクササイズを再度最新のタイルに設置するように制御しても良い。また、ユーザがエクササイズを実行した回数をカウントできるように、例えば、エクササイズのページから実施回数ボタンを設け、タッチするたびに積算するようにする、して、実施回数に応じてポイントを付与するようにしてインセンティブを与えるようにすることもできる。次に、前述と同様に、翌日の朝10:00に、スケジュール管理ブロック603はスケジュールのリストに従って、次のエクササイズ、「足を意識して、文章を読む」エクササイズを最新のタイルに表示する。さらに、リストに従って5日目まで次のエクササイズを毎朝、ユーザに提供し、ユーザの実行を促す。6日目にFFMQ(Five Facet Mindfulness Questionnaire)の下位尺度を用いて、「いま、この瞬間」のプロセスの習熟度を測定する(尺度はこれに限られずMAAS(Mindful Attention Awareness Scale)などACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。本実施例ではこの評価結果を評価ブロック602が以前のユーザの評価結果(パーソナルデータに記憶された)と比較して、改善が見られた場合、あるいは、このプロセスの5日間のワークセットの実施が2回目だった場合、次のプロセスに進むように設定されている。なお、この設定は適宜修正可能で、尺度の取得を行わない、尺度の評価を行わないで次のプロセスへ進む、評価結果が向上しているだけでなく所定の程度まで向上するまで同じプロセスを繰り返す(本プロセスのワークセットではエクササイズが10個なので、3回目からは同じエクササイズが繰り返される)、など修正が可能である。
【0024】
次に「脱フュージョン」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはCFQ(Cognitive Fusion Questionnaire)を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
【0025】
次に「アクセプタンス」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはAPQ(Acceptance Process Questionnaire)を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
【0026】
次に「文脈としての自己」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはSACS(Self-as Context Scale)、CompACT、MPFIあるいはFFMQの下位尺度を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
【0027】
次に「価値の明確化」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、価値のワークを実施する。スケジュール管理ブロック603は、制御ブロック606に、次の日の朝10:00に、価値のワークを情報ウィンドウの最新のタイルにエクササイズを起動するためのタイルを表示させるようにリクエストする。タイルがユーザによってタッチされると、制御ブロック606は、画面上に、10個の価値の領域(仕事/職業、友人/社会生活など)からユーザが重要だと考える領域を1乃至3個まで選択し、さらに、ユーザに自由記述で選択した領域内でのユーザが価値があると認める「行動」を入出力ブロック601を制御して入力させる。制御ブロック606はさらに入力された「行動」を記憶管理ブロック605に送信し、記憶する。価値に沿った行動を行っているかどうかはVQ(Valuing Questionnaire)を用いて評価する(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
【0028】
次に「コミットされた行為」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、価値のワークを実施する。スケジュール管理ブロック603は、制御ブロック606に、次の日の朝10:00に、価値のワークを情報ウィンドウの最新のタイルにエクササイズを起動するためのタイルを表示させるようにリクエストする。タイルがユーザによってタッチされると、制御ブロック606は、画面上に、前述の価値の明確化で入力された価値を画面上部に表示し、下部に、短期的、中期的、長期的な価値に沿った行為を入力するための窓を表示する。制御ブロック606は入力された行為を記憶管理ブロック605に送信し、記憶する。コミットされた行為を行っているかどうかは同様にVQ(Valuing Questionnaire)を用いて評価する(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
【0029】
ここで、再度、制御ブロック606は、ユーザのAAQ-II、FFMQ、CFQを測定し、AAQ-IIの点数、6つのプロセスの各数値の変化を、たとえば、AAQ-IIの点数の推移の折れ線グラフ6つのプロセスの6角形のレーダーチャートの変化をグラフィカルな表示を行い、ユーザに本プログラムの効果を視覚的に理解させる。このグラフの経時的な変化はユーザのパーソナルデータを呼び出すことで随時確認することができる。
【0030】
上述のようにACTに基づくストレス対処の体系的な基本プログラムが提供された。つぎに、前述の6つのプロセスの評価結果(FFMQ、CFQの測定結果、あるいはACTの6つのプロセスの他の尺度を用いた測定結果)を評価ブロック602が評価し、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」についてユーザの相対的に得点が低いプロセスを低い順に実施する、実施方法は上述の各プロセスと同様にする。そして、1か月の提供後に、AAQ-II、FFMQ、CFQ、VQを使って、心理的柔軟性と、各プロセスの習熟度を評価ブロック602が評価する。ここで、必要に応じて(価値の達成度が低く、価値の見直しを必要とする場合や、目標が達成され、設定しなおす必要が出たときなど)「価値の明確化」、「コミットされた行為」の上述のプロセスを再度実行する。そして、このターンがこの実行によって終了すると、再度6つのプロセスの評価結果に基づいて、相対的に得点が低いプロセスから順に実施する工程を繰り返す。この繰り返しを続けても、AAQ-IIの得点がある程度に達し、心理的柔軟性が獲得されたことが認められた場合、エクササイズの実行は停止し、定期的、例えば、1か月ごとにAAQ-IIと6つのプロセスの評価を行い、心理的柔軟性やいずれかのプロセスが習熟度が低くなった場合、あるいはAAQ-IIを行い、心理的柔軟性が低くなった場合、に上述のエクササイズの提供を再開するようにすることもできる。また、ACTの6つのプロセスのうちいずれをどのように繰り返すかは適宜決定できるが、例えば、プロセスの評価点のパターンに応じて提供するプロセスとプロセス順を決定しておき、その複数のパターンと提供するプロセスとその順序(2つ以上の場合)をリスト化して記憶装置に記憶させておき、評価ブロック602がユーザの評価点とこのリストを比較して、次に提供するプロセスを決定し、その提供プロセス(群)が終了したのち、尺度による評価を行ってまた次のプロセスを決定するという工程を繰り返しても良い。また、プロセスの評価点と、その後のプロセスの実行後の評価点を教師データとして、機械学習してモデルを構築し、評価点からをこのモデルに入力してお勧めのプロセス(群)を提案するようにし、このプロセスをの実行と評価を繰り返すようにしても良い。
【0031】
(654)次に評価ブロック602の第2の機能を、PMSの疾患特異的な症状のセルフケアを例に挙げて説明する。評価ブロック602はユーザによって入力されたPMSメモリのパーソナルデータを分析する機能を持つブロックでもある。また、ユーザの入力した過去の生理日から次の生理日を算出して予測する機能や、ユーザの入力したユーザのPMSの心身の症状や腹痛などの症状の生理日との関連を分析する(例えば、ユーザは生理日の4日前から「イライラ」などの精神症状を、生理日から3日間「腹痛」などの身体症状を訴える傾向を過去の入力から見出した場合、次回の生理日の予測とともに、その4日前の「イライラ」、生理日から3日間の「腹痛」の予測を算出し、スケジュール管理ブロック603に送信する。スケジュール管理ブロック603は、記憶装置に記憶された、疾患毎の、介入日時と介入プロセスのリストを読み出し、PMSに関するリストで、PMSに対して、予測された日を介入日とし、その日時に、設定された介入プログラムを提供するように制御する。本実施例では、4月10日が次の生理日と予測された結果が出されると、前記リストでは、4月6日に「脱フュージョン」のプロセスを生理日までの期間、つまり4日間提供するように書き込む。また、4月10日に「いま、この瞬間」のプロセスを3日間提供するように書き込む。多くの精神疾患や心身症では、その症状の発言に対して効果的な介入がある。たとえば、PMSであれば、「イライラして人にあたって嫌われている」というようなフュージョンを起こすことが想定されるので、「脱フュージョン」が、生理に伴う痛みに対しては過去の痛みを想起して不快な症状を助長することが想定されるので「いま、この瞬間」のエクササイズや「マインドフルネス」のエクササイズが有効である。これらのエクササイズは前述の心理的柔軟性を養うために行ったエクササイズと同じものを使っても良いが、疾患の症状に合わせて修正したものを用いるとさらに都合がよい。(例えば、おちゃというエクササイズの「おちゃ」を「生理痛」に代えて20秒間繰り返し言葉に出して発言する、などのバージョンを作成しておく。)
【0032】
スケジュール管理ブロック603は前述の心理的柔軟性を養うプロセスのエクササイズと、疾患に特異的な症状のセルフケアのためのプロセスのエクササイズの両者を管理することになる。両者を並行して実施する場合、同時点で前者のプロセスのエクササイズと後者のプロセスのエクササイズとを同時期に提供するような事態が生じる。この場合、スケジュール管理ブロック603は、単純に両者のエクササイズを提供する、前者のエクササイズを中断して、後者のエクササイズを実行する、同時期に提供されるエクササイズが同じテーマ、ここで言えば例えば「脱フュージョン」であれば、前者の「脱フュージョン」のプロセスのエクササイズに代えて、後者の「脱フュージョン」のプロセスのエクササイズを提供する、両者を提供するが提供する時間をずらす、また、プロセスやエクササイズによっては、提供順が重要になる場合があるので、前述のリストに、提供順が逆転すると問題の生じるエクササイズを記録しておき、例えば、脱フュージョンのエクササイズで、エクササイズCがエクササイズDより先になってはいけない場合、後者でエクササイズDが提供されることが決まっている際には前者のエクササイズCがこれより前になるように、プロセスを調整したり、エクササイズの提供順を変更することによって避けるように調整する。なお、スケジュール管理ブロック603はこれらの機能と並行して、毎日のPMSメモリへの入力やEMAへの入力、監視装置のデータの取得やこれらの記録を制御ブロック606、記憶管理ブロック605、入出力ブロック601と連携して行っている。最後に、疾患に特異的な症状の評価をするために尺度、例えばPMDD尺度、で評価を行う。
【0033】
本実施例では、一つ一つのプロセスがテーマを習得するためのワークのセットがパッケージ化されているのでそれぞれのプロセスの習熟度を測りやすく、情報処理端末で自動的に心理療法を提供することができ、繰り返しもやりやすい。また、それぞれのプロセスに対してエビデンスのある尺度で測定することによって信頼性、効果の確認の精度が高まる。
本発明の趣旨からは、その心理療法においてストレス対処を習得するための必要なすべての要素、ACTでは心理的柔軟性を養うための6つのプロセス、ACTのマインドフルネスと関連する要素では4つのプロセス、が含まれることが好ましいが、それぞれのプロセスは関連づいているので、いくつかのプロセスをまとめてワークセット(エクササイズのセット)として提供することもできる(たとえば、「脱フュージョン」、「マインドフルネス」、「価値の明確化」の3つ)。この場合、習熟度の確認等の観点から3つ以上のプロセスであると都合が良い(これらのそれぞれのプロセスに評価尺度があるとさらに都合が良い)。ただし、制作するアプリの目的によっては必要なすべての要素(たとえば、ACTの6つのプロセス)を含む必要がないことは言うまでもない。なお、本実施例では説明のためにストレス対処能力を養うパートと疾患に特異的な症状の緩和のパートとがあるPMSを例に挙げたがストレス対処だけを目的とする場合にはストレス対処のパートだけでシステムを構成することもできる。
【0034】
(アプリ例2)
本実施例では、睡眠障害のセルフケアに本発明を適用した例を説明する。体系的なストレス低減法としてはマインドフルネスストレス低減法(MSBR)を用いる。
マインドフルネスストレス低減法は(1)ボディスキャン(咀嚼瞑想のエクササイズ、呼吸法のエクササイズ、ボディスキャンのエクササイズ)、(2)ボディスキャンとヨガ(ボディスキャンのエクササイズ、ヨガのエクササイズ、歩行瞑想のエクササイズ)、(3)静座瞑想とヨガ(静座瞑想のエクササイズ、ヨガのエクササイズ)、からなり、提供方法としては、ACTのプロセス同様に、文章形式、音声形式、動画形式、ゲーム形式などが選択できるが、マインドフルネスとの相性が動画が良いので本実施例では動画によるエクササイズを提供する。つまり、記憶装置102または記憶装置133に、(1)から(3)のテーマのエクササイズのワークセットが、マインドフルネスの教育動画コンテンツと、睡眠障害の疾患教育コンテンツ動画記憶されている。アプリケーションプログラムの構成としては、
図6(a)と同様であり、それぞれのブロックの機能・動作や、情報処理装置110の各ハードウェアの機能・動作は実施例1と同様であるので詳細は省略する。
【0035】
アプリケーションプログラムのフローは
図6(b)と同様に制御ブロック606が各ブロックと連携して制御する。まず、(650)ユーザがアプリにログインしてアプリが起動される。つぎに(651)症状メモリとしては、
図3(a)のようなデータをパーソナルデータとして記憶し、
図3(b)のような入力画面を介して入力される。入力の詳細はPMSメモリの入力と同様である。また、この段階にセルフケアの効果を検証するためのベースラインとするためにFFMQの尺度によるユーザの回答結果のデータを取得し、これもパーソナルデータに記憶する。(652)制御ブロック606がスケジュール管理ブロック603と連携して、まず、教育コンテンツを、(653)1,2週間目に、(1)のコンテンツ、3,4週間目に、(2)のコンテンツ、5,6週間目に、(3)のコンテンツをユーザに提供する。ここで再度FFMQの尺度の回答をユーザに促し、結果を取得する。そして、その結果とベースデータとを評価ブロック602が比較分析して、効果をグラフィカルにユーザに提示する。また、この比較分析結果でFFMQの得点が所定の値に達成していない場合は、(1)-(3)のテーマのエクササイズを提供する工程を繰り返す。また、(1)、(2)、(3)のそれぞれの間に評価尺度による評価を行い、所定の基準に達していない場合は以前の段階を繰り返すといった修正も可能である。
(654)不眠症の疾患特異的な症状への介入としては、「いま、この瞬間」のプロセスや、マインドフルネス、認知再構成法、刺激性漁法、睡眠制限法、斬新的筋弛緩法、睡眠スケジュール法などが知られており、これを用いることもできる。
「いま、この瞬間」のプロセスの適用については、実施例1の「脱フュージョン」や「いま、この瞬間」のプロセスの適用と同様に、制御ブロック606とスケジュール管理ブロック603の連携でユーザに提供することができる(本発明においても、ストレス対処用のセルフケア機能のエクササイズと同じものを使っても、睡眠障害用に修正したものを用いても良い)。実施例1と異なる点は、適用の時期である。時期は評価ブロック602が睡眠メモリのユーザの睡眠効率と、ユーザの通常時の睡眠効率あるいは同年代の模範的な睡眠効率とを比較して問題があると評価した際、あるいは、睡眠メモリに記載されたユーザの傾向を評価ブロック602が評価し、睡眠障害が発症しそうと評価した時期をスケジュール管理ブロック603に送信し、そのタイミングで、上記プロセスを実行する。この場合、プロセスのエクササイズは睡眠障害が起きている期間に提供するように、スケジュール管理ブロック603が制御ブロック606と連携して制御する。本実施例の変形例として、提供するエクササイズとして、認知再構成法を提供する場合は、周知の技法(例えば、特許文献4)を「いま、この瞬間」の代わりに提供することができる。スケジュール管理ブロック603は実施例1同様にストレス対処法のエクササイズと、疾患に特有のエクササイズの提供を調整することができる。最後に、尺度による評価を行うが例えば介入がストレス対処で提供するものと同じ原理に基づくもの(例えば、「いま、この瞬間」か、またはその症状への適合版のエクササイズ)であれば、同じ尺度(たとえば、FFMQの下位因子)を用いてもよいし、疾患の症状に特化した尺度(例えば、BPS、PSQI、ISI、AIS)を利用してもよい。また、これらの評価結果を継時的にユーザに提供してユーザの満足度を高めることもできる。
【0036】
(アプリ例3)
多くの疾患では症状の発生機序が解明されており、ストレス関連疾患の緩和のためにどのような介入を行えばよいかが決まっている(例えば、上述の実施例のように)。しかしながら、疾患によっては発生原因が複雑に絡み合っている場合があり、単純によく知られた介入を行っても疾患の症状が改善されない場合がある、この多くは疾患の原因の大きな要因が患者自身というよりは、患者を取り巻く社会的要因等との兼ね合いが大きい場合に起こっていることに発明者らは気づいた。そこで、こういった疾患の例としてED(勃起障害)を例に挙げて説明する。なお、上述の疾患についても症状の緩和の効果が見られない場合には同様の原因が考えられるので本実施例の手法を活用してもよい。EDの場合はパートナーが必須の条件で発症する疾患なので社会的な影響が強い。そこで、疾患に特異的な症状の原因をアセスメントして介入方針を決定する。ストレス対処能力を向上させるためのワークセットの実施は上述と同様に行うため説明は省略する。
【0037】
EDに適用する場合は、まず、セルフケアアプリを実行する前にAAQ-IIの測定と並行してユーザに対して疾患の原因を特定するためのアセスメントを実施する。アセスメントは前述の実施例同様の手順で評価用の尺度を用いて行うことができる。これらの疾患の評価を行う場合には、生物心理社会的要因と疾患の状態を測定する尺度が必要となる。本実施例では生物心理社会的要因を測定する尺度として、一般的なSF-36、特にパートナー関係の評価が必要なので,カンザス結婚満足度尺度(KMS)と(社会的ケア関連 QOL 尺度 the Adult Social Care Outcomes Toolkit (ASCOT)など他の周知の尺度を用いることもできる)、一般的なEDの重症度を評価するための国際勃起スコア5(IIEF 5) 、CFQを用いた。アセスメントは評価ブロック602で行い、これらの尺度に含まれる因子の得点に基づいて、まず、IIEF-5の評価点でグループ1(EDではない)、グループ2(EDである)、グループ3(EDであるがかなり重症)に分類し、グループ1は特に疾患に特異的な介入は行わない、グループ3についてセルフケアできるレベルを超えているとして、ユーザに医療機関等への受診をすすめるメッセージを発出する対応を行う。グループ2についてはさらに、KMSの尺度を評価し、夫婦関係が悪いとの評価が出ていた場合にはグループ2a、続いて、SF-36で得点が低く、CFQで認知的フュージョンの傾向が見られない場合はストレス過多としてグループ2b、その他の場合は予期不安型としてグループ3cに分類する。分類の仕方はこれに限られず、任意の尺度を組み合わせ、それぞれの得点での条件分岐、複数の尺度の組み合わせての条件分岐などで分類することができる。次に、(図示しない)グループと介入のワークセットとの対応関係を記載したリストを参照して、所定のワークセットを提供する。スケジュール管理機能がどのようにワークセットを提供するかについての手順についても対応付けて記載してあり、スケジュール管理ブロック603はそれに基づいてワークセットをユーザに提供する。また、リストにさらに尺度による評価結果を記憶できるようにし、それらのデータを教師データとして機械学習させてモデルを構築し、そのモデルによってリストを更新してもよい。(これによって、介入のワークセットやエクササイズ、評価尺度、条件分岐の条件、条件分岐手順などを最適化できる。)
【0038】
(その他のアプリ例)
本発明の応用として、体系的なストレス対処法を提供するために、周知の問題解決法などの「問題焦点型コーピング」や「情動焦点型コーピング」などの技法を用いて上述の実施例と同様にユーザに提供することができる。またそれに組み合わせて、疾患に特有な症状をセルフケアするためのプロセス(エクササイズのセット)を提供しても良い。慢性疼痛や片頭痛に対する、プロセスとしては、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「今、この瞬間」などが利用可能である(慢性疼痛等の症状のセルフケアするためのその他の心理療法を実施するエクササイズでも構わない)。この実施例でも、評価ブロック602が、ユーザの疼痛日誌を分析して、ユーザの痛みの発現するタイミング(気圧や天候の変化、周期性、イベントとの関連)を分析し、そのタイミングをスケジュール管理ブロック603に送信し、スケジュール管理ブロック603と制御ブロック606が連携して、疾患の症状をセルフケアするためのプロセスを調整しながら提供する。その他の疾患の症状のセルフケア用のアプリも同様に構成可能で、たとえば、これらの実施例のストレス対処法に追加して、各疾患の症状をセルフケアするプロセス(たとえば、更年期障害なら、アクセプタンス、脱フュージョン、今この瞬間)を提供し、提供する時期を評価ブロック602,スケジュール管理ブロック603で調整しながら、制御ブロック606が提供するようにすればよい。
【0039】
上述の実施例では、ストレス対処法の提供パートと、疾患の症状の対処パートで同じ心理学の理論に基づくエクササイズを提供するものと異なる心理学の理論に基づくエクササイズを提供するものとを例示しているが、同じ理論に基づくエクササイズを提供するもののほうが一貫性があり効果が高い。
【0040】
(統合診療システムの例)
本アプリは特定の疾患に限らず、複数の疾患の症状のセルフケア用のアプリとすることができる。この場合、システムには、ユーザの症状/疾患を聴取するための問診機能(典型的には入出力ブロックが実行)、プログラムの各機能ブロックと症状メモリの基となる、カレンダー機能(典型的にはスケジュール管理ブロックが実行)ストレス対処用のワークセットと、基礎となる症状メモリと、症状メモリに追加する疾患毎の質問項目のセット、疾患毎の症状のセルフケア用のプロセスのワークセット、を記憶させ、アプリの起動後にユーザの症状を入力する工程を設け、入力結果を評価ブロック602で、記憶装置に記憶された、症状と疾患、評価ブロック602とスケジュールブロック603での処理事項の関連を示すリスト(
図8に一例を示した)と対比して分析し、例えば、ユーザが「眠れない」を入力した場合、リストを参照し、症状(眠れない)-疾患(睡眠障害)という結果を得ると、症状メモリに睡眠障害用の質問項目をセットし、ストレス対処法のワークセットと、睡眠障害の症状緩和用のワークセットを、制御ブロック606が、評価ブロック602、スケジュール管理ブロック603と連携しながら提供するようにすることができる。また、特定の疾患に適用したのち新たに、他の疾患の情報を問診によって入力し、他の疾患へのカスタマイズを行うことも可能である。このばあい、ユーザが過去に入力した日々のデータや個人のパーソナルデータなどは共通のデータベースを利用可能であり、入力を省略することや、過去のデータを活用することも可能である。また、前述の本発明に従うシステムを本実施例の統合診療システムに適用することができる。
【0041】
(実施例:ライフステージの推移に対応するヘルスケアシステム(プラットフォーム))
本発明はユーザの複数のライフステージ(児童期〰老齢期(10歳から70歳)の変化において共通で利用できるものであるが、典型的には25歳〰55歳の年齢層に特に適している)に沿ったライフステージ毎にシステムのプログラム(提供する機能)を変更することができるシステムに関し、前述のアプリ例等の各要素を本システムに適用することができる。システムには、ユーザの生物心理社会的要因を聴取するための問診機能(典型的には入出力ブロックが実行)、プログラムの各機能ブロックと症状メモリの基となる、カレンダー機能(典型的にはスケジュール管理ブロックが実行)、ストレス対処用のワークセットと、基礎となる症状メモリと、症状メモリに追加する、想定される疾患やメンタル不調毎の質問項目のセット、疾患毎の症状のセルフケア用のプロセスのワークセット、ライフステージ、ライフイベント、イベントに応じた尺度(質問項目の質問を含む)のセット等がユーザに提供可能にシステムの記憶装置に記憶されている。また、年齢とライフステージとを関連付ける情報を備えるための、例えば、データベース(などの関連付け情報。リスト形式、フォルダわけなど当業者周知の他の関連付け方法を用いてもよい)が、同時にシステムに備えられている。
図8にユーザのライフステージの一例として、いくつかの生物心理社会的状態と、システムに搭載される要件とを対比づけた表を示した。ここでは、性別、年齢、学生と就業状態、子の有る/無し、就業先において管理職など責任を持っているか、生理があるかどうか、睡眠の問題があるかどうか、疼痛などの問題があるかといった生物心理社会的な事項(ただし、これらは一例にすぎず、他の生物心理社会的な事項を追加しても良く、また、これらの記載された事項を削除しても良い)と、これらの生物心理社会的事項と対応付けられるシステムの要件(タイプごとの機能)を記載したリストの例を示した。例えば、女性で18歳の学生の生理のある場合は、タイプ3に該当し、システムは、生理機能をカレンダー機能にセットし、ヘルスケア機能としてはPMSのセルフケア機能をユーザに提供するように設定する。ヘルスケア機能は、ダイエットや食事管理、歩数などの運動管理、摂取量などのカロリ管理などの一般的な健康管理機能も利用できるが、メンタルヘルスに関する機能であると、ユーザが認知しにくいものなので予防などの観点から好ましい。また、単純にEMAだけ、あるいは、症状メモリの記録だけでも本発明の範囲に含まれる。また、セルフケアや治療用アプリの場合は、シナリオのようなプログラムで提供される期間のおおよそ決まったもの、継続的に提供され続けるもの、ユーザの必要に応じて(ユーザによって呼び出される、ユーザの状態(健康状態についての質問、SNSなどのつぶやき、症状メモリへの入力情報)によってシステムから提案する)実行される機能などが利用できる。尺度については例えば、上記例では、心理的柔軟性を評価する尺度として、AAQ-IIを用いていたが、児童期から青年期までの若者の心理的非柔軟性を測定する尺度AFQ-Y(Avoidance and Fusion Questionnaire for Youth)を利用し、その他の指標は同じ指標を利用する。また、35歳で子持ちの専業主婦で、睡眠障害を持つ場合は症状メモリとして、生理項目と睡眠項目とをセットされ、それらの合わせた質問項目をユーザは入力することになる。また産後うつの可能性も想定されるので、尺度のセットにはうつ病の尺度(たとえば、エジンバラ産後うつ病自己評価票)が追加され、心理的柔軟性の尺度とともにユーザの回答を取得し、うつ病が検出されたら、うつ病に対するワークセットを提供する。また、ストレス対処用のワークセットや、特定疾患用のワークセットも生物心理社会的要因に合わせて修正することもできる。たとえば、45歳以上の男性に対しては、活字メインの読み物として、あるいは20歳以下のものに対しては、漫画形式の読み物として提供するなどである。これはワークセットの形式に限られず、アプリのUI/UXを生物心理社会的要因に合わせて変更するなどの修正も可能である。このように本実施例によれば、ライフステージの変化に応じて、システム要件が変更され、例えば、他の年代向けのパッケージシステムに変更ができる。この場合、ユーザが過去に入力した日々のデータや個人のパーソナルデータなどは共通のデータベースを利用可能であり、入力を省略することや、過去のデータを活用することも可能である。前述のシステムを本実施例のプラットフォームシステムに適用することができる。
【0042】
次に本実施例の具体例の一例を下記に示す。後述の機能はシステム上で実行されるソフトウェアプログラムで実現されるものであるが、それに限られず、それぞれの機能ブロックごとにFPGAなどのハードウェアで実現するといった改変も可能である。また、本実施例では、
図1のシステム100で動作する、ソフトウェアプログラムを想定しているが、すべての動作を情報処理端末110で実行する変形なども可能である。本ソフトウェアプログラムは記憶装置133に記憶され、全体の制御とサーバ130の各装置の制御は制御装置132が行い、情報処理端末110で行われるフロントエンド側のプログラムが記憶装置102に記憶され、情報処理端末側の各装置の制御は制御装置101が制御し、制御装置132と制御装置101が連携しながら(例えば、情報処理端末からサーバへのリクエストやその逆など)、プログラムを実行するものである。また、本プログラムは便宜的に女性のライフステージの遷移に合わせたシステムを想定しているが、これに限られず、同様の構成で男性などに向けたシステムを構成して利用可能なことは言うまでもない(例えば、男性の更年期のライフステージで提供する機能として、上記EDのアプリ例などが採用できる)。本ソフトウェアプログラムの動作フローを
図10に示した。まず、ユーザが典型的にはユーザのスマートフォンなどの情報処理端末110のタッチパネルなどの表示装置103上のアイコンなどをクリックすることによって本プログラムを起動する(なお、インストール手続きなどは省略する)。次に、起動後のユーザ情報入力(X01)工程を説明する。プログラムは記憶装置133に記憶された質問項目の質問の情報を呼び出し、表示装置103にその質問を典型的にはチェックボックスなどの選択、記入欄への文字・数字の入力手段と共に、年齢、ユーザの性別、身長、体重、婚姻関係の有無、妊娠の有無、子の有無、就業の有無、この有無などのパーソナルデータの質問の情報をユーザに提示し、タッチパネルなどの入力装置104を介してユーザが回答を入力し、入力されたデータが記憶装置133にユーザの識別番号とともに、記憶される。本実施例では、25歳女性、妊娠なし、子供なし、などの情報を入力することとする。情報処理端末110とサーバ130のデータや情報の連携は制御装置101と制御装置132が連携して、通信装置105―ネット120―通信装置131を介して行う。また、文字による入出力だけでなく、音声などによる入出力も利用できる。
【0043】
次に機能タイプ分析(X02)工程を説明する。制御部132は記憶装置133に記憶されたライフステージと対応する機能タイプに関する情報を読み出す。典型的には
図11に記載の年齢とライフステージの対応関係を関連付けて記憶したリスト(それらの関連付けがなされて記憶されたデータベースやファイルのヘッドへ情報を記載してそれの検索などの周知の関連付け方法が用いられた情報)が用いられる。つぎに、システムは、システムのいずれかの記憶装置に記憶されたパーソナルデータからユーザの年齢情報を読み出し、リストの年齢層とユーザの年齢を照合し、ユーザが年齢層12-25歳の位置に該当していることを判定する、次に、その年齢層に所属する(表で12-25の行)機能タイプを参照し、「〇」がついているものがその年齢層で、ユーザに適合し得る機能タイプとなっているので、それぞれの基本となる機能タイプの条件とユーザのパーソナルデータとを比較して適合するものを選択する。12-25の基本の機能タイプである、PMS、妊娠、育児とユーザデータを照合する。ここで、各機能タイプの条件として、「PMS」タイプは条件なし、「妊娠」タイプは妊娠有、「育児」タイプは子有が条件としてあらかじめ決められ機能タイプ情報と共に記憶装置133に記憶されているものとする(同様にそのほかのそれぞれのタイプについても条件が設定され記憶されている。ここで、複数の条件を満たした場合は、その優先順位の順番などの条件が同時に記録されており、それに基づいて機能タイプを決めてもよいし、機能タイプが重ならないように、細かく機能タイプを設定してもよい)。ここでは、対象となるユーザデータとして、妊娠と子供なしなので、PMSタイプが設定される(機能タイプ選択の優先順位としては本実施例では妊娠>子供>PMSとされ、前述のリストなどの機能タイプ情報と共に記憶されている)。ここで、年齢層によって適用される基本的な機能タイプは、そのユーザ層で典型的にみられるライフステージであって、ユーザのパーソナルデータに適合した機能タイプが、機能タイプの適合条件とユーザデータの対比に基づいて自動的に決定され、システムの設計者によって適宜設定されるものである。ただし、システムが適合するものを決定した後に、その判定結果を表示装置103を介してユーザに提示し、ユーザが入力装置104を介して、そのプログラムの提供を承諾するか否かを決定するような工程を加えてもよい。この場合、ユーザが承諾しなかった場合は、ユーザが他の機能タイプを設定できるように制御してもよい。なお、上記のような情報の他に、ユーザの適合を判定するための質問項目を設けて(あるいは提供機能の中で利用される質問項目への回答を利用してもよい)、機能タイプの決定に先立って、ユーザの回答を取得し、ユーザデータとして記憶しておきこれを機能タイプの判定に利用してもよい。
【0044】
次にOP選択機能(X03)を説明する。OP選択機能は年齢層に関連付けられるライフステージ(またはそこに含まれるライフイベント)とはそれほど関わりが深くないが、ユーザが選択を希望する可能性があるイベントについての機能タイプである。これらの機能タイプとしては「ダイエット」タイプ、「睡眠障害」タイプや「疼痛」タイプなどがあげられる。これらの機能タイプは上述の基本的な機能タイプの選択の後にユーザが選択できるようにしてもよいし、アプリの設定画面のようなところからユーザが希望するときに選択できるようにしてもよい。ユーザによって機能タイプが選択された場合には、従来提供していた機能タイプと機能を切り替える。あるいは、事前に提供される機能タイプの組み合わせの機能を有する機能タイプを設定しておき、いま提供している機能タイプと選択された機能タイプの複合機能を有する機能タイプに切り替える、または、機能タイプをユーザが切り替え可能に提供するなどの変形も可能である(本実施例の機能タイプの切り替え時にいずれかの方法が用いられる)。
【0045】
次に、ユーザに提供する機能タイプが決定されると、システムは、機能(ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはセルフケア用のプログラムの提供。なお、ここでいうプログラムは、ユーザがセルフケアのために行うワークやエクササイズ等を含むプログラムのことを指す。)の提供を行う処理へと進む。各機能タイプにはそれぞれで用いられる、EMAの質問項目と質問の情報、メンタルや体調の状態の評価尺度、ヘルスリテラシ―情報、ヘルスケアモジュール、症状メモリ(日誌)などが、そのライフステージやイベントに沿うもので設定され(つまり、項目、機能は左記のもののいずれかでも、追加のものを含めてもよい)、それぞれのデータやプログラム、例えば、EMAであれば、その質問項目と質問の情報、ヘルスリテラシ―情報であれば教育コンテンツ(読み物形式、動画、音声、チャットボット形式など)、ヘルスケアモジュールであれば前述のアプリ例のようなセルフケアアプリの機能等が、その機能タイプとの関連付け情報(典型的には対応付けられた対応関係を示すリストやデータベースなど)とともに、記憶装置133に記憶されている。例としては、PMSタイプの場合は、前述のPMSメモリやアプリ例1で例示されたEMAや評価尺度や治療モジュールなどがPMSタイプと関連付けられる情報として挙げられる。不眠であれば、不眠患者に適したEMAの質問項目と質問の情報、睡眠障害の状態を評価するための指標として、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、アテネ不眠尺度など周知の尺度が利用可能である。セルフケア用のモジュールとしては、前述のセルフケアアプリ、睡眠障害の疾患教育や心理教育などの情報などが挙げられる。これらの関連付け情報もいずれかの記憶装置に記憶された情報(リスト形式、データベース形式、ファイルのヘッダ情報など周知の関連付け手段を用いた情報形式でよい)であっても、プログラムに記載された情報であってもよい。ライフステージと機能タイプの関連付け情報も同様に当業者に周知の情報形式で実現できる。また、ライフステージと機能タイプと提供機能等とを一つのセットとして持たせた情報でもよい。またライフステージと提供機能等をセットとした情報として実現する場合もある。
【0046】
次にセルフケアアプリの機能タイプに応じた機能の提供(X04)を説明する。これらの機能タイプが決定されると、機能タイプに応じて、それぞれのEMAなどが設定され、前述のアプリ例で詳細した手順によって、セルフケア機能がユーザに提供される。この際、UI(ユーザーインターフェース)が機能タイプを通じて少なくとも一部、好ましくはすべてが共通で、質問項目やその中身、提供されるエクササイズのコンテンツの内容だけが変わっているように設定されると、たとえば、
図12(a)にPMSタイプに提供されるEMAの質問の画面、
図12(b)に育児タイプに提供されるEMAの質問の画面の例を示したが、このように画面表示や、入力方法が同じUIを用いてあり、質問だけが異なる(質問C-質問E、質問F-質問Hが異なっている)ように設定され、ユーザが操作感に迷うこともなくなり、好ましい。
【0047】
次にセルフケアアプリの機能の終了(X05)を説明する。これらの基本となる機能タイプやオプションとなる機能タイプは典型的には終了条件が設定される。つまり、妊娠タイプは出産すると終了になる、ダイエットタイプであれば目標設定された体重が達成されると終了となる。これは、特定の期間で終了にしてもよいし、後述のような自動検出の技術を利用して終了としても良いし、ユーザが設定画面等から終了するようにしても良い。ここで、設定されていた機能タイプのセルフケアが終了されると、システムが(X02)のフローのように基本の他の機能タイプとの対応を再度判定するようにしても良いし、オプションの他の機能タイプを(X03)のように選択するようにしても良い。または、その年齢層の最も基本となる機能タイプ(本実施例ではPMSタイプが優先順位が低く、条件がない機能タイプなので最も基本となる機能タイプである)となるようにしても良い。
【0048】
上記では各機能タイプの機能に終了条件を設定する例を示したが、これに限られず、所定のタイミング(例えば、誕生日、年始、システムのユーザの登録日、あるいは、ユーザが設定した日時)で、X02の機能タイプ判定を実施するようにし、そこで判定された機能タイプに、その時点で行っている機能タイプの機能を変更することもできる。また、ユーザの情報処理端末の利用状況を基に機能タイプの変更の提案をシステムからユーザへ行うように構成することもできる。
【0049】
そして(X04)機能タイプが決定されると、その機能タイプに応じた、上述のアプリ例のようにヘルスリテラシ―情報の提供、セルフケアアプリ機能などからなるプログラム(シナリオ)がユーザに提供される。次にその他の機能タイプの判定のためのユーザの監視について述べる。この一例は、システムがユーザの行動を監視する(この監視は例えば、情報処理端末110でバックグラウンドで動作する常駐プログラムであると都合がよい)、つまり、情報処理端末110の制御装置101が情報処理端末を使ったユーザの行動を監視する処理を行う。例えば、ユーザが情報処理端末でSNSアプリ、メールアプリ、日記アプリ、スケジュールアプリ、BBSアプリ、WEBサイトでの情報入力などで、ユーザが入力装置104を利用して行った、「つぶやき」などの入力情報を監視し、入力された情報、典型的には、入力された単語(文章の場合は分節して単語を抽出する、精度を向上するために単語の前後の文脈もテキストマインニングにより分析するのが好ましい)が、記憶装置133(サーバのリソースを使う場合は制御装置101が制御装置132と連携して、制御装置132が記憶装置133を制御して情報処理端末110とサーバ130の情報の伝達を行う)または記憶装置102にあらかじめ記憶された、機能のタイプと関連付けられた単語群とを比較し、適合した単語があった場合、その関連付けられた機能のタイプを抽出する(提案の精度を上げるために単語だけでなく、前後の文脈なども併せて抽出し比較するように設定しても良い)。そして、制御装置101は抽出された機能タイプへの切り替えを表示装置103であるタッチパネル等を介して提案する。監視するユーザの行動の別の例は位置情報である。制御装置101は監視装置106として、GPSを利用し、ユーザの位置情報を利用することが挙げられる。制御装置101はユーザの情報処理端末110のGPSからの情報を収集し、ユーザが所定時間(たとえば、30分以上)、同一の位置(位置情報が例えば10m以上離れていない)にいるかどうかを評価し、ユーザが同一の位置にいると判定した場合、その位置情報に対応する建物情報を位置情報提供業者から取得する(GoogleMapなども利用できる)。ここで、各機能タイプと建物情報(位置情報に関する情報)との関連付け情報があらかじめ記憶装置102または記憶装置133に記憶されている、たとえば、妊娠タイプと(産婦人科病院、マタニティビクススクール)、育児タイプと(小児科病院、学校、塾、書道教室)などのような対応関係が関連付け情報として対応付けられる。そして、ユーザの位置情報から得られる情報(建物名や位置に関連する情報)が関連付け情報と対比、あるいは照合され、一致するものがあった場合、たとえば、産婦人科にいた場合、制御装置101は妊娠タイプへの切り替えを表示装置103であるタッチパネル等を介して提案する。監視対象のユーザの行動は上記の情報入力や位置情報に限られず、適宜周知のユーザの行動を監視対象として利用して、機能タイプの提案等に用いることができる。上記ユーザの行動と機能タイプとの関連付け情報はリストのような情報としてでもデータベースのような機能を利用しても良く、また、前述の機能と機能タイプと関連付け情報と一緒に記憶させても良い。つぎに、ユーザが提案に応じて機能タイプの切り替えに同意する処理を入力装置104を介して行った場合、システム(制御装置101または制御装置132あるいはそれらが協力して、関連する装置と連携しながら)は機能タイプの切り替えを行う。また、たとえば、それらの行動が所定期間検出できなくなった場合、その行動に対応した機能タイプの終了を提案し、ユーザが提案に応じる処理をした場合は、再度、機能タイプ判定(X02)を行うように制御することもできる。このように、本システムは自動的、半自動的(ユーザがシステムの提案に同意するか選択する処理を行う場合)または、手動(ユーザが手動で所望の機能タイプを選択する場合)で機能タイプの提供を行う。上記実施例では自動的又は半自動的に機能タイプを提供し、そのうえで、ユーザが機能タイプを選択できるような構成を示したが、ユーザが機能タイプを選択する形式だけにすることもできる。また、前述の統合診療システムと本システムを組み合わせ、例えば、ユーザの症状/疾患を聴取するための問診機能として、EMA、症状メモリや症状を診断・把握するための評価尺度を用いて問診機能とする。また、ユーザの年齢や、ライフステージ、ライフイベントおよび/またはユーザのパーソナルデータ(それら、またはそれらの組み合わせ)や、それらの組み合わせと、左記それぞれのケースでありそうな疾患を評価する尺度を組み合わせ、をそれらのケースの条件が満たされた際にそれらの尺度の組み合わせの評価(質問情報をユーザに提供し、回答を取得して統計処理を行う)を行い、その評価結果に基づいて、疾患が発見された場合には、それをユーザに通知するとともに、ユーザの同意処理が行われた際には対応する治療アプリを提供する、あるいは、機能タイプが設定された際に、機能タイプでありそうな疾患の評価尺度の評価を行い、その結果をユーザに表示器を介して通知し、結果に基づく処理を行う、つまり、疾患の症状が出ている場合はその疾患の治療用アプリを提供するといった処理もできる。ここで、これらの処理は通常の機能タイプに応じて提供される処理と組み合わされてもよいことは言うまでもない。また、機能タイプが設定された際には、設定された機能タイプをユーザの認識可能に表示装置に表示するようにすると好ましい。なぜならこの表示を見たユーザは自分の機能タイプでありそうな疾患などを意識することができるからである。
【0050】
上述のように、本実施例の応用として、年齢等の変化に応じた(半)自動的な機能タイプの変更だけでなく、その要素技術を用いて、サーバに保存された、各ヘルスケア機能をユーザが選択してユーザに提供するように設定することができる。その概要は、ライフステージまたはライフイベントに対応したセルフケア機能を提供するヘルスケアシステムであって、システムが、端末制御装置と入出力装置を有するユーザの情報処理端末と、ライフイベントまたはライフステージと前記ライフイベントまたはライフステージにおいて提供されるべきヘルスケア機能との関連付け情報と、ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはセルフケア用のプログラムを記憶する記憶装置とサーバ制御装置とを有するサーバと、を含み、情報処理端末とサーバが連携可能にネットワークを介して接続され、端末制御装置は、入出力装置を用いて、ユーザからの前記ヘルスケア機能へのリクエストを取得し、その情報をサーバに送信し、サーバ制御装置は、リクエストされたヘルスケア機能を、端末制御装置と連携して入出力装置を介して、ユーザに前記ヘルスケア機能を提供する。本発明のシステムは、ユーザからリクエストされたヘルスケア機能(例えば、食事管理、運動量管理、ダイエット、メンタルヘルス、うつセルフケア、不眠セルフケア、PMSセルフケア)を提供する。このシステムでも特にメンタルに関するセルフケア機能であると好ましい。上記例ではライフステージやライフイベントに一対一で対応したヘルスケア機能をユーザが選択して、実行をリクエストする例を挙げたが、それぞれのライフステージやライフイベントに対して複数のヘルスケア機能を対応付けて、その中からユーザが選択可能とする、あるいは、サーバの記憶装置に含まれるヘルスケア機能について、サーバに含まれる複数のヘルスケア機能に関する情報(フォルダ一覧やリストなど周知の形式の情報が利用できる)からユーザが選択して実行するようにすることもできる。
【0051】
(データ管理用のデータベース)
次に上記プラットフォームシステムで用いるデータベースの例を
図13に示す。データベースは本システムのユーザ毎に設けられ、各データベースは本システム上で行われた、説明へのユーザの回答や、ユーザに提供されたタイプ、ユーザの特性、ユーザに提供されたエクササイズ(実施の有無)、ユーザの心理的柔軟性の評価結果などで、システムの利用者によって設定された項目が、ユーザに提供された機能に関わらず一元管理されている。ここで一元管理とは一つのデータベース内にすべてのデータが含まれるだけでなく、複数のデータベースに分かれていても、それぞれがリンク付けされて一つの関連データとして参照できるような状態になっているものも含まれる。
図13では簡略化のために、一部の日付の、一部の記録されたデータを説明のために示している。図で、タイプはユーザに割り当てられた機能タイプ、特性、矢印は元のデータが継続していること(例えば、1990年1月8日 22歳の時に、ゲーミフィケーションの動機づけを分類するHEXAD SCALEの実施結果でユーザがSO、つまり、Socialistに特性が分類されたことを示す)、また、質問A-質問DはEMAや評価尺度でユーザに与えられた質問に対する6点法での回答得点を示し、「-」は実施しなかったことを示し、EX A-EX Cはユーザに提供されたエクササイズの実施状況(〇は実施あり、×は実施なし)を示し、FLEXはAAQ-IIによる心理的柔軟性の評価結果を示している。また図示していないが、その他のユーザによって入力されたパーソナルデータも一元管理されており、機能タイプの切り替えの際に新たにユーザに回答を促すことなく利用できる。なお、ユーザのパーソナルデータはユーザによる回答や、行動からの検出により更新することができる。また、ユーザから取得したデータをユーザ毎に提供機能によって分けることなく一元管理することによって、共通のパーソナルデータを共有できる、共通のデータをユーザの分析や他のユーザとの比較分析のために使えるデータ量が増大し、精度が上がるなどの利点がある。また、本データベースのデータと共通のデータの取得、活用を行う他のアプリケーションプログラムを本データベースと接続し、データベースを共有してもよい。他のアプリケーションとは、本システム外のサーバなどにバックエンドの機能が存在し、そのサーバの提供するアプリのサービスのユーザによって、典型的にはそのユーザの情報処理端末で、(フロントエンド側が)実行されるものである。そして、他のアプリとAPI接続などの周知の連携方法で接続して、データベースを共有化することによって、データ量を飛躍的に増大することができ、分析の精度が向上するだけでなく、接続する他のアプリへも分析情報をフィードバックし、他のアプリの質問項目と対応するアプリや機能を修正することなどに活用することができる。
【0052】
本アプリはEMA(日常生活の心理・身体症状などを,スマートフォンなどの電子機器を用いて,その場でそのときに記録する評価手法がEMA(ecological momentary assessment)で、スマホ画面上に表示される質問(日常を記録するものなので週に1-数回、一日に1-数回など適宜設定される回数の質問が行われる)に対して、ラジオボタンやVisual Analog Scale(場合によってはテキストボックスへの文章の自由記載)による記録などができる)および/または症状メモリなどの機能を提供し、高頻度で継続的にユーザの心身に関わる状態をシステムが取得できるものであると都合がよい。またこのような構成を取ることで端末でユーザの症状を改善する治療用アプリと大きく異なる効果を得ることができる。つまり、例えば、日本国内ではヘルスリテラシ教育が十分ではないので、なんらかのストレス関連疾患の症状を示したり、その予兆を感じていたとしても、ユーザがそのストレス関連疾患について知識がない場合、有効な対処を行えないことが多い。本願においては、年齢層に応じてありそうなストレス関連疾患の予兆をとらえるEMAや症状メモリの実施をユーザに促す。システムはEMAや症状メモリのユーザの回答結果を分析して、ありそうなストレス関連疾患をユーザに情報処理端末を介して提示(表示装置を介したアラートなど)し、かつ、その対処に適した機能の提案を行う。たとえば、10代後半の女性の場合、EMAや症状メモリとして、PMSメモリの機能を提示し、PMSを知らない女性に対しても、イライラなどのその症状が現れたら対処する機能を提供することができる、あるいは、女性で40代からプレ更年期症状があらわれてくると言われているが、その事実を知らない女性が多い。そこで、40代前半の女性に対しては、EMAで、その典型的な症状をとらえる設問(たとえば、ほてりの有無など)を設けておき、EMAの回答結果を分析し、プレ更年期の症状が疑われた場合、その対処のメンタルケア機能を提供するなどで、疾患の予防や、疾患の改善、自己の健康管理を行うことができる。さらに、項目と項目、項目と項目の組み合わせ、項目の組み合わせ間の相関分析を行い、例えば、特性と実施が期待できるエクササイズの予測、特定の特性を持つユーザのエクササイズによる心理的柔軟性に与える効果の予測、特定の質問項目や質問項目の組み合わせと、将来メンタル不調になる機能タイプなどに役立てることができる。さらに、これらの項目のデータを機械学習させ、機能タイプと提供する情報やデータの組み合わせ、機能タイプの振り分けロジックなどAIに修正させることもできる。
【0053】
本実施例で用いられた、機能タイプや機能タイプに対応付けられたEMA、教育コンテンツ、評価尺度、治療アプリ機能などは例示であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正できる。また、上記機能タイプまたはライフステージに合わせて、さらに、ヘルスケア機能以外の情報、例えば、趣味、美容、時事情報、ファッションや芸能などの情報を提供すること、利用に応じたインセンティブを付与する機能などを設けてユーザの本システムの利用の継続率を向上することもできる。
【0054】
いくつかの実施例に基づいて本発明を説明してきたがそれぞれの実施例に用いられた要素を他の実施例の構成に追加して用いることが可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100 本発明のシステム
101 制御装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 通信装置
106 監視装置
110 ユーザの情報処理端末
120 インターネット
130 サーバ
131 通信装置
132 制御装置
133 記憶装置
【要約】
【課題】電子商取引に類似する技術と診断用の医療機器等で研究開発された技術を応用した、ライフステージに応じたメンタルのセルフケアシステム を提供する。
【解決手段】
ヘルスケアシステムであって、
前記システムが、
端末制御装置と入出力装置を有するユーザの情報処理端末と、
年齢とライフステージとの第1の関連付け情報と、前記ライフステージと前記ライフステージにおいて提供されるべきヘルスケア機能との第2の関連付け情報と、前記ヘルスケア機能を実現するために必要な情報、データおよび/またはプログラムを記憶する記憶装置とサーバ制御装置とを有するサーバと、を含み、
前記情報処理端末と前記サーバが連携可能にネットワークを介して接続され、
前記端末制御装置は、前記入出力装置を用いて、ユーザから少なくとも年齢を含むパーソナルデータを取得し、前記記憶装置に記憶し、
前記サーバ制御装置は、前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザのライフステージを決定し、
前記ライフステージと前記第2の関連付け情報とから、前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を決定し、前記端末制御装置と連携して前記入出力装置を介して、前記決定され前記ユーザに前記ヘルスケア機能を提供し、
前記サーバ制御装置は、定期的に前記パーソナルデータと前記第1の関連付け情報を用いて前記ユーザに提供すべきヘルスケア機能を更新する、ヘルスケアシステム。
【選択図】
図1