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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】衛生用品ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/00 20060101AFI20240820BHJP
   G07F 11/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G07F9/00 T
G07F11/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024521908
(86)(22)【出願日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2024012034
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520169878
【氏名又は名称】オイテル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 真
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特許第7075553(JP,B1)
【文献】特開2003-072967(JP,A)
【文献】特開2014-088236(JP,A)
【文献】実公昭57-015872(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/00
G07F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の扁平な衛生用品を上下に積み重ねて収容する収容部と、
複数個の前記衛生用品をその重ね方向の下端のものから順に前記収容部から送り出す送出し機構と、
略水平な白色の反射面を有し、前記収容部に収容した前記重ね方向の上端の前記衛生用品の上に乗せる錘部材と、
前記反射面に光を照射する発光部及びその反射光を受光する受光部を有し、前記発光部が光を出射してから前記受光部が反射光を受光するまでの時間に基づいて、前記収容部に収容されている前記衛生用品の在庫数を検出する残量検出部と、
を有する衛生用品ディスペンサ。
【請求項2】
前記錘部材は、前記反射面と平行な前記送出し機構による前記衛生用品の送出し方向に沿って略水平に延びた平らな第1下面と、前記送出し方向と直交し且つ前記反射面と平行な幅方向に沿って略水平に延びた平らな第2下面を有し、前記収容部に収容した前記重ね方向の上端の前記衛生用品の上面に前記第1下面を接触させた状態で、上端の前記衛生用品の上に乗せる、
請求項1に記載の衛生用品ディスペンサ。
【請求項3】
前記収容部は、前記送出し機構のプッシュスライダを前記送出し方向に沿って移動可能に備えた底面と、前記底面の周縁から前記底面と直交する上方に立設した側面を有し、
前記錘部材の前記第1下面及び前記第2下面の少なくとも一方は、前記錘部材を上端の前記衛生用品の上に乗せた状態で、前記収容部の前記側面に近接する外周縁を有する、
請求項2に記載の衛生用品ディスペンサ。
【請求項4】
前記錘部材は、全ての前記衛生用品を前記収容部から送り出した状態で、前記第1下面が前記プッシュスライダの移動経路から外れた位置で前記収容部の前記底面に面で接触し、前記第2下面が前記プッシュスライダの移動経路の上方に離間し、前記プッシュスライダに非接触状態となる、
請求項3に記載の衛生用品ディスペンサ。
【請求項5】
前記錘部材は、その重さを変えるため、少なくとも1つの錘を取り付けるための少なくとも1つの取付凹部を有する、
請求項1に記載の衛生用品ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトイレに設置され、生理用品やポケットティッシュのような衛生用品を提供するための衛生用品ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
女性の社会進出により、女性のライフスタイルが大きく変化し、そのことにより生じる問題もある。その1つが女性特有の身体現象である生理に関わる問題である。
【0003】
生理期間中、女性は、経血が漏れないように、ナプキンやタンポン等の生理用品を使用する。従って、女性は、一般に、生理期間が近付くと、これら生理用品を携行している。
【0004】
生理による経血量は、日によって変化するが、経血のついた生理用品は、長時間放置すると、ばい菌が繁殖する原因になったり、ムレや臭いの原因となる恐れもある。従って、生理期間中は、通常、2~3時間に1度の頻度で、生理用品を交換する必要がある。
【0005】
従って、例えば、飲食店やホテルでは、生理が予定よりも早く来てしまい、生理用品を持ち合わせていない女性客のために、女性用トイレの例えば洗面台のわきの籠の中に生理用品を置いてあるところもある。希望者は籠から生理用品を自由に取り出して、使用することができる。
【0006】
これは、理想的なことではあるが、自由に取り出すことができることを良いことに、必要ない場合であっても、持ち帰ることができる。極端な話、生理中ではない人が、すべて持ち去って行くことだってできてしまう。これは、置いてくれた側(例えば、飲食店やホテル)の折角の好意を台無しにする残念な行為であり、実際に使用したい人がいても、使えない場合が生じるという皮肉な結果をもたらす恐れがある。
【0007】
また、生理用品が単に籠の中に置いてあるだけの状態では、誰でも触れることができることから、使用をためらう人もいる。例えば、病原となるウィルスが流行している状況においては、誰が触ったのかも分からないものには触れること自体非常に不安であるからである。
【0008】
一方、このような不安を払拭しつつ、必要とする女性に、生理用品を提供する手段として、非特許文献1のように、生理用品を収納したディスペンサが挙げられる。
【0009】
実際、福利厚生の一環として、このようなディスペンサを、女性用トイレの個室に設置し、生理が予定よりも早く来てしまい、生理用品を持ち合わせていない女性社員が、生理用品を自由に利用できるようにしている企業もある。
【0010】
生理用品は通常はディスペンサの内部に収納されており、生理用品を取り出す際には、内部から1つずつ排出されるので、生理用品は、不特定多数の人によって触られることはない。従って、使用希望者は、不快感を抱くことなく、生理用品を安心して使用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】https://www.goauntflow.com/(2024年1月24日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この種のディスペンサは、使用希望者の操作によって、生理用品は1つずつ排出されるものの、個数に制限はない。このため、何度も操作を繰り返すことによって、生理用品を何個でも取り出すことができてしまう。
【0013】
従って、この種のディスペンサでも、前述したように、生理中ではない人であっても、無制限に生理用品を取り出して、持ち帰ることだってできてしまうので、前述した問題の解決にはならない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、衛生用品の不正な取出しを防止して、使用を希望しているユーザに確実に衛生用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0016】
すなわち、本発明の第1の態様の衛生用品ディスペンサは、収容部と、送出し機構と、錘部材と、残量検出部と、を有する。収容部は、複数個の扁平な衛生用品を上下に積み重ねて収容する。送出し機構は、複数個の衛生用品をその重ね方向の下端のものから順に収容部から送り出す。錘部材は、略水平な白色の反射面を有し、収容部に収容した重ね方向の上端の衛生用品の上に乗せる。残量検出部は、反射面に光を照射する発光部及びその反射光を受光する受光部を有し、発光部が光を出射してから受光部が反射光を受光するまでの時間に基づいて、収容部に収容されている衛生用品の在庫数を検出する。
【0017】
本発明の第2の態様の衛生用品ディスペンサは、第1の態様の衛生用品ディスペンサにおいて、錘部材が、反射面と平行な送出し機構による衛生用品の送出し方向に沿って略水平に延びた平らな第1下面と、送出し方向と直交し且つ反射面と平行な幅方向に沿って略水平に延びた平らな第2下面を有する。錘部材は、収容部に収容した重ね方向の上端の衛生用品の上面に第1下面を接触させた状態で、上端の衛生用品の上に乗せる。
【0018】
本発明の第3の態様の衛生用品ディスペンサは、第2の態様の衛生用品ディスペンサにおいて、収容部が、送出し機構のプッシュスライダを送出し方向に沿って移動可能に備えた底面と、底面の周縁から底面と直交する上方に立設した側面を有する。錘部材の第1下面及び第2下面の少なくとも一方は、錘部材を上端の衛生用品の上に乗せた状態で、収容部の側面に近接する外周縁を有する。
【0019】
本発明の第4の態様の衛生用品ディスペンサは、第3の態様の衛生用品ディスペンサにおいて、錘部材が、全ての衛生用品を収容部から送り出した状態で、第1下面がプッシュスライダの移動経路から外れた位置で収容部の底面に面で接触し、第2下面がプッシュスライダの移動経路の上方に離間し、プッシュスライダに非接触状態となる。
【0020】
本発明の第5の態様の衛生用品ディスペンサは、第1の態様の衛生用品ディスペンサにおいて、錘部材が、その重さを変えるため、少なくとも1つの錘を取り付けるための少なくとも1つの取付凹部を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の衛生用品ディスペンサによれば、衛生用品の不正な取出しを防止することができ、使用を希望しているユーザに確実に衛生用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、トイレの個室に設置した本発明の一実施形態に係る衛生用品ディスペンサの外観斜視図である。
図2図2は、図1のディスペンサのフロントカバーを開いた状態を示す斜視図である。
図3図3は、図2のフロントカバーを開いた状態のディスペンサを右側から見た側面図である。
図4図4は、図1のディスペンサを背面側から見た斜視図である。
図5図5は、図2のディスペンサの収容部にあるプッシュスライダの取付構造を示す分解斜視図である。
図6図6は、図2のディスペンサの収容部にあるプッシュスライダを拡大して示す部分拡大斜視図である。
図7図7は、図6のプッシュスライダの動作説明図である。
図8図8は、図6のプッシュスライダの動作説明図である。
図9図9は、図2のドアユニットのドアを示す斜視図である。
図10図10は、図2のドアユニットのドアを開いた状態の要部を部分的に拡大して示す部分拡大正面図である。
図11図11は、図2のドアユニットのドアの開閉検知動作について説明するための概略図である。
図12図12は、図2のディスペンサの収容部にある在庫センサのレイアウトを示す概略図である。
図13図13は、図2のディスペンサの収容部に取り付ける錘部材を示す斜視図である。
図14図14は、図2のディスペンサの収容部から全ての衛生用品を送り出した状態を示す部分拡大斜視図である。
図15図15は、図1のディスペンサの電子回路構成例を示すブロック図である。
図16図16は、履歴情報テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る衛生用品ディスペンサ10(以下、単にディスペンサ10と称する)は、略矩形箱状の筐体11を有する。筐体11は、リヤケース12とフロントケース13を有する。ディスペンサ10は、例えば、図1に示すように、女性用トイレの各個室の壁1に取り付けられる。以下、ディスペンサ10を壁1と垂直な方向から見て、上下、前後、左右の各方向を規定する。なお、後述する「重ね方向」は上下方向であり、「排出方向」は後方から前方に向かう方向である。
【0024】
ディスペンサ10が取り扱う衛生用品は、女性の生理用のナプキンやタンポン、ポケットティッシュなどである。ディスペンサ10は、他の衛生用品として、例えば小さく折り畳んでパッケージで包んだ紙パンツや紙おむつなどを取り扱うことも可能である。ディスペンサ10は、取り扱う衛生用品のサイズに合わせた大きさに設計すればよい。本実施形態のディスペンサ10は、ナプキンN(図2)を取り扱うものであり、種々のサイズのナプキンを取り扱い可能な大きさに設計されている。
【0025】
リヤケース12は、後壁121、天壁122、底壁123、左側の側壁124、及び右側の側壁125を一体に有する。後壁121は、略矩形板状であり、トイレの個室の壁1に近接して壁1と平行に配置される。天壁122は、略矩形板状であり、後壁121の上端から前方に向けて後壁121と垂直に延設されている。底壁123は、略矩形板状であり、後壁121の下端から前方に向けて後壁121と垂直に延設されている。左側の側壁124は、略矩形板状であり、後壁121の左端から前方に向けて後壁121と垂直に延設されている。右側の側壁125は、略矩形板状であり、後壁121の右端から前方に向けて後壁121と垂直に延設されている。
【0026】
フロントケース13は、前壁131、天壁132、底壁133、左側の側壁134、及び右側の側壁135を一体に有する。前壁131は、リヤケース12の後壁121と略同じ形の略矩形板状であり、リヤケース12の後壁121と平行に配置される。天壁132は、略矩形板状であり、前壁131の上端から後方に向けて前壁131と垂直に延設されている。底壁133は、略矩形板状であり、前壁131の下端から後方に向けて前壁131と垂直に延設されている。左側の側壁134は、略矩形板状であり、前壁131の左端から後方に向けて前壁131と垂直に延設されている。右側の側壁135は、略矩形板状であり、前壁131の右端から後方に向けて前壁131と垂直に延設されている。
【0027】
図2に示すように、ディスペンサ10の筐体11内には、扁平なナプキンNを上下に重ねて収容するための収容部21がある。ナプキンNは、樹脂製の外装材によって包装したものである。リヤケース12は、収容部21にアクセスするための略矩形の開口部12aを前面側に有する。開口部12aは、天壁122の前端、底壁123の前端、左側の側壁124の前端、及び右側の側壁125の前端により囲まれた略矩形の開口である。
【0028】
フロントケース13は、2つのヒンジ14を介してリヤケース12に対して回動可能に接続されている。2つのヒンジ14は、リヤケース12の底壁123の前端、すなわち開口部12aの下端縁と、フロントケース13の底壁133の後端を接続している。
【0029】
フロントケース13は、図1の閉じ位置に配置した状態でリヤケース12の開口部12aを閉じ、図2の開放位置に配置した状態でリヤケース12の開口部12aを開く。リヤケース12の天壁122及びフロントケース13の天壁132には、フロントケース13を閉じ位置に配置した図1の状態で、フロントケース13をリヤケース12に施錠するための錠部15がある。フロントケース13をリヤケース12に施錠することで、収容部21に収容したナプキンNが誰かに触られたり、無制限に持ち出されたりする不具合を防止することができる。
【0030】
図3に示すように、フロントケース13は、開放位置に配置した状態で、リヤケース12に対して鋭角(例えば約80°)に配置される。リヤケース12とフロントケース13の間には、同じ長さの2本のワイヤー16がかけ渡されている。2本のワイヤー16は、可撓性を有する線状のものであり、筐体11の左右に取り付けられている。図3では右側のワイヤー16のみ図示しており、図2ではワイヤー16の図示を省略している。ワイヤー16の両端には、留め具16aが固設されている。
【0031】
各ワイヤー16は、一端にある留め具16aをリヤケース12の後壁121に設けた係合部12b(図2)に係合し、他端にある留め具16aをフロントケース13の前壁131に設けた係合部13b(図2)に係合することで、リヤケース12とフロントケース13の間に取り付けられる。ワイヤー16の長さは、フロントケース13を自重により開いて図3に示すようにリヤケース12とフロントケース13の間でワイヤー16を張設したとき、リヤケース12の後壁121に対してフロントケース13の前壁131が鋭角に配置される長さにされている。
【0032】
ワイヤー16の留め具16aは、リヤケース12の係合部12bとフロントケース13の係合部13bに対して着脱可能である。リヤケース12又はフロントケース13に対するワイヤー16の留め具16aの係合を解除すると、フロントケース13をリヤケース12に対して所望する角度に自由に回動させることができる。ワイヤー16は、金属製に限らず、例えば樹脂線などであってもよい。
【0033】
壁1に取り付けたディスペンサ10にナプキンNを補充する場合やメンテナンス時には、ワイヤー16を張設した状態でフロントケース13を開く(図3の状態)ことで、ディスペンサ10の前方の作業スペースが狭い場合であってもフロントケース13を開放位置に保持することができる。なお、図1に示す閉じ位置にフロントケース13を配置した状態で、ワイヤー16は、筐体11内で弛んだ状態となる。
【0034】
フロントケース13をリヤケース12に対して直角に開く場合と比較して、フロントケース13をリヤケース12に対して鋭角に配置することで、ディスペンサ10の前方の作業スペースを十分に確保できない状況であっても、フロントケース13を開放位置に保持することができる。一方、ディスペンサ10の組み立て時などには、ワイヤー16を取り外した状態でフロントケース13を大きく開くことができ、作業性を高めることができる。ワイヤー16は、ディスペンサ10を壁1に設置した後で取り付ければよい。
【0035】
図4に示すように、リヤケース12の後壁121の外面121b側には、上下に延びた3本の縦リブ17C、17L、17Rと、左右に延びた2本の横リブ18L、18Rと、6個の略長円形のボス19(以下、まとめて突出部分17C、17L、17R、18L、18R、19とする場合もある)が突設されている。突出部分17C、17L、17R、18L、18R、19は、板金により形成した後壁121をプレス加工して形成する。このため、リヤケース12の後壁121の内面121a側には、突出部分17C、17L、17R、18L、18R、19の形状にならう形状の複数の凹所(図示せず)がある。2本の横リブ18L、18Rは、後述するプッシュスライダ30の後端30Rを受け入れるための膨出部分である。ボス19は、ディスペンサ10のリヤケース12を壁1に固定するためのネジを挿通する孔を有する。
【0036】
3本の縦リブ17C、17L、17Rは、リヤケース12の左右方向の中央、及び左右方向の両側に互いに平行に離間して設けられている。中央の縦リブ17Cは左右の縦リブ17L、17Rより幅が広い。横リブ18Lは中央の縦リブ17Cと左側の縦リブ17Lの下端近くで両者の間に配置され、横リブ18Rは中央の縦リブ17Cと右側の縦リブ17Rの下端近くで両者の間に配置されている。左側の横リブ18Lの左端と左側の縦リブ17Lの間、横リブ18Lの右端と中央の縦リブ17Cの間、右側の横リブ18Rの右端と右側の縦リブ17Rの間、及び横リブ18Rの左端と中央の縦リブ17Cの間には隙間がある。
【0037】
図1に示すようにディスペンサ10を女性用トイレの個室の壁1に取り付ける際に、壁1を構成するパネルの間のシーム部分がわずかに出っ張っている場合、突出部分17C、17L、17R、18L、18R、19が有効に機能する。つまり、この場合、壁1のシーム部分から外れた位置でリヤケース12の背面から突出した突出部分17C、17L、17R、18L、18R、19を壁1に突き当ててリヤケース12を壁1に固定することで、ディスペンサ10を壁1に対してガタつくことなく固定することができる。
【0038】
図2に示すように、筐体11の内部にある収容部21は、筐体11内の左右に並んで2つの収容部21L、21Rに分かれている。以下、ディスペンサ10を前方から見て左側の収容部に符号21Lを付し、右側の収容部に符号21Rを付す。2つの収容部21L、21Rは略同じ構造を有するため、ここでは主に左側の収容部21Lについて説明し、右側の収容部21Rについては同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
収容部21Lは、左右2枚の仕切板22L、22Rと底板24と後板26によって囲まれている。収容部21Lの上端側と前面側は開放している。収容部21Lの底板24は、2枚の仕切板22L、22Rの下端と後板26の下端をつなげるように設けられている。後板26は、2枚の仕切板22L、22Rの後端と底板24の後端をつなげるように設けられている。2枚の仕切板22L、22Rの間の距離、すなわち収容部21Lの左右方向の幅は、種々のサイズのナプキンを収容可能な大きさに設計しているが、取り扱うナプキンNの大きさが設計値から外れる場合には、2枚の仕切板22L、22Rの間隔を拡げたり狭めたりすることもできる。
【0040】
収容部21Lの2枚の仕切板22L、22Rと底板24と後板26は、リヤケース12の後壁121の内面121aに固定される。このとき、収容部21Lの後板26がリヤケース12の後壁121の内面121aに接触し、後板26と後壁121が平行に配置される。2枚の仕切板22L、22Rと底板24は、リヤケース12の開口部12aから前方に突出する大きさを有する。言い換えると、2枚の仕切板22L、22Rと底板24の前後方向の長さは、リヤケース12の前後方向の厚み(すなわち、天壁122、底壁123、側壁124、125の後壁121からの突出高さ)より大きい。つまり、フロントケース13を開いた図3の状態で、収容部21Lの仕切板22L、22R(図3では右側のみ図示)と底板24の前方の一部はリヤケース12の開口部12aから前方へ突出している。見方を変えると、2つの収容部21L、21Rは、それぞれ、リヤケース12の内部空間とフロントケース13の内部空間にわたって設けられていることになる。
【0041】
2枚の仕切板22L、22Rは、それぞれ、その前端に、ナプキンNの前方への脱落を防止するための係止片23L、23Rを備える。係止片23L、23Rは、それぞれ、仕切板22L、22Rと一体であり、仕切板22L、22Rの前端を部分的に略直角に互いに向かい合う方向に折り曲げた構造を有する。係止片23L、23Rは、フロントケース13を閉じ位置に配置した状態で、フロントケース13の内側に配置される。係止片23L、23Rは、リヤケース12の開口部12aと略平行に延設されている。
【0042】
係止片23L、23Rの上下方向の長さは、仕切板22L、22Rの上下方向の長さより短い。このため、係止片23L、23Rの下端と底板24の間には、係止片23L、23Rが存在しない部分があり、この部分を介して集積方向の下端近くにある数個のナプキンNの前方への移動が可能となっている。図1に示す閉じ位置に配置した状態のフロントケース13の排出口13L、13Rは、係止片23L、23Rの下端より下方にある。
【0043】
底板24の内面24aは、収容部21Lの底面である。後板26の内面26b、仕切板22L、22Rの内面22a、及び係止片23L、23Rの内面23aは、収容部21Lの側面である。後板26、仕切板22L、22R、及び係止片23L、23Rは、それぞれ、その内面26b、22a、23aを底板24の内面24aと直交する上方に立設している。
【0044】
収容部21Lの底板24の上には、上下方向に積み重ねた複数個のナプキンNを集積方向の下端側から順に排出するためのプッシュスライダ30がある。プッシュスライダ30の上には、集積方向の下端のナプキンN1が接触した状態で乗る。以下の説明では、プッシュスライダ30の上面31上に積み重ねた複数個のナプキンNのうち上面31に接触した重ね方向の最下端のナプキンをナプキンN1と称する。
【0045】
2つの収容部21L、21Rには、それぞれ、例えば20~30個のナプキンNを重ねて収納することができる。各収容部21L、21Rにおいて積み重ねられたナプキンNの上方向への膨らみを抑えるため、集積方向の上端にあるナプキンNの上には、それぞれ錘部材40を乗せる。以下の説明では、集積方向の上端にあるナプキンをナプキンNnと称する。
【0046】
図2では、左側の収容部21LにナプキンNを収容していない状態を示す。このため、図2では、左側の収容部21Lの底に、プッシュスライダ30が見えている。一方、右側の収容部21Rには、6個のナプキンNを重ねて収容し、一番上のナプキンNnの上に錘部材40を乗せた状態を示す。このため、右側の収容部21Rの底にあるプッシュスライダ30は見えていない。錘部材40は、例えば、2、3個のナプキンNと同等の重さである。
【0047】
各収容部21L、21Rの底板24の前方に対向する位置には、それぞれ、ドアユニット50L、50Rが設けられている。フロントケース13を閉じた状態で、各ドアユニット50L、50Rの前方には、それぞれ、フロントケース13の左右の排出口13L、13Rが対向する。排出口13L、13Rは、フロントケース13を閉じた状態で、収容部21L、21Rの底板24の内面24aとほぼ同じ高さにある。
【0048】
つまり、各ドアユニット50L、50Rは、フロントケース13を閉じた状態で、収容部21L、21Rの下端とフロントケース13の排出口13L、13Rの間に配置されている。ドアユニット50L、50Rは、それぞれ、ナプキンN1によって押されて開くドア51(図2)を有する。左右のドアユニット50L、50Rは同じ構造を有するため、ここでは左側のドアユニット50Lについて代表して説明し、右側のドアユニット50Rの説明を省略する。
【0049】
上記構造のディスペンサ10は、ユーザからの妥当な提供要求に応じて、プッシュスライダ30を前方へ移動させ、収容部21R、21Lに収納されているナプキンNのうち、最下端にあるナプキンN1を、ドアユニット50L、50Rを通して、フロントケース13の排出口13L、13R(図1)から排出する。
【0050】
図5及び図6に示すように、収容部21Lの底に設けたプッシュスライダ30は、略矩形板状である。プッシュスライダ30は、その後端30Rの上面31側に突出した縦壁32を有する。縦壁32は、プッシュスライダ30の左右方向の全幅にわたって設けられている。縦壁32は、その前側の表面に、上下方向に延設された平らな押圧面32aを有する。押圧面32aは、プッシュスライダ30の上面31と略直交する面である。プッシュスライダ30の上面31から縦壁32の上端までの押圧面32aの高さは、1個のナプキンNの厚み以下であり、ナプキンNの厚みの80%~100%程度であることが好ましい。また、縦壁32は、押圧面32aの上端から後方に向けて膨出した形状の湾曲面32bをその後側の表面に有する。
【0051】
ナプキンNは、製造メーカ等によって厚みが異なる。本実施形態のディスペンサ10は、厚みの異なる複数種類のナプキンNを取り扱うことができるように、プッシュスライダ30を交換可能にすることができる。つまり、ナプキンNの厚みに応じた突出高さの縦壁32を有するプッシュスライダ30を選択して使用することができる。或いは、プッシュスライダ30から縦壁32を取り外しできるようにして、ナプキンNの厚みに応じた高さの縦壁32を選択してプッシュスライダ30に取り付けるようにしてもよい。
【0052】
プッシュスライダ30は、収容部21Lの底板24の内面24aに面で接触する平らな下面33を有する。プッシュスライダ30の上面31は、その後端側から先端30Fに向けてわずかに傾斜した柱面である。プッシュスライダ30の上面31と下面33は、プッシュスライダ30の先端30Fに向けて収束してつながっている。
【0053】
プッシュスライダ30は、その下面33に、2つのラック34L、34Rとスライド突起35を有する。プッシュスライダ30は、縦壁32、ラック34L、34R、及びスライド突起35を備えて、樹脂により一体成形することができる。ラック34L、34Rは、下面33の左右に離間して互いに平行に配置され、前後方向に延設されている。ラック34L、34Rは、長手方向に一定のピッチで並設した複数の歯を有する。ラック34L、34Rの前後方向の長さは、プッシュスライダ30の全長よりわずかに短い。スライド突起35は、略長円柱状の突起であり、2つのラック34L、34Rの間に配置され、前後方向に延設されている。スライド突起35の下面33からの突出高さは、収容部21Lの底板24の厚みよりわずかに大きい。
【0054】
図7及び図8に示すように、収容部21Lの底板24の下には、プッシュスライダ30を前後に駆動するための駆動機構60がある。プッシュスライダ30と駆動機構60は、特許請求の範囲における「送出し機構」の一例である。駆動機構60は、左右方向に延設した1本の回転軸61に互いに軸方向に離間して同軸に固設した2つのピニオン62L、62R(図7、8では左側のピニオン62Lのみを図示)と、回転軸61を正逆両方向に回転させるステッピングモータ64を有する。図6に示すように、ピニオン62L、62Rは、それぞれ、収容部21Lの底板24を貫通して設けたスリット37L、37Rを介して、その一部が収容部21L内に突出する状態で取り付けられている。
【0055】
プッシュスライダ30を取り付ける収容部21Lの底板24には、底板24の下方に配置した駆動機構60のピニオン62L、62Rを部分的に受け入れるための2つのスリット37L、37Rと、スライド突起35を前後方向にスライド可能に受け入れるスリット38がある。3つのスリット37L、37R、38は、底板24を貫通して前後方向に延設されている。スライド突起35を受け入れるスリット38は、スリット37L、37Rの間に設けられている。スリット38の長さは、プッシュスライダ30の前後方向への移動を妨げることのない十分な長さである。
【0056】
プッシュスライダ30を収容部21Lの底板24に取り付ける場合、プッシュスライダ30の下面33を収容部21Lの底板24の内面24aに対向させ、下面33から突出したスライド突起35を底板24の中央のスリット38に挿通する。この状態で、プッシュスライダ30の下面33が収容部21Lの底板24の内面24aに接触する。また、この状態で、プッシュスライダ30の下面33から突設した2つのラック34L、34Rに駆動機構60のピニオン62L、62Rがそれぞれ歯合する。
【0057】
この後、収容部21Lの底板24の外面24b側から、プッシュスライダ30のスライド突起35に抜け防止のためのプレート39を取り付ける。プレート39の左右方向の幅は、スリット38の幅より大きい。このため、スリット38を介して収容部21Lの底板24の外面24b側に突出したスライド突起35の突出方向の先端にプレート39を取り付けると、プッシュスライダ30の上方への抜けが禁止され、プッシュスライダ30が収容部21Lの底板24にスライド可能に取り付けられる。
【0058】
プレート39は、その上面側に突出した2本のピン39aを有する。プレート39は、前後方向に沿って2本のピン39aの間に、ネジ2を挿通するための挿通孔39bを有する。また、プレート39は、前後方向の両端から長手方向の外側に突出した2つの突起部39F、39Rを有する。突起部39F、39Rは、後述するリミットセンサ75F、75R(図15)によって検出される部分である。
【0059】
プッシュスライダ30のスライド突起35は、プレート39の2本のピン39aをそれぞれ受け入れる2つのピン穴35aを有する。スライド突起35は、前後方向に沿って2つのピン穴35aを有し、これら2つのピン穴35aの間にネジ2を螺合するためのネジ穴35bを有する。
【0060】
プレート39をスライド突起35に固定する場合、プレート39の2本のピン39aをスライド突起35の2つのピン穴35aにそれぞれ差し込み、プレート39をスライド突起35に位置合わせする。そして、スライド突起35のネジ穴35bに同軸に重なったプレート39の挿通孔39bを介してネジ2を挿通し、スライド突起35のネジ穴35bに螺合する。これにより、プレート39がスライド突起35に締結固定される。
【0061】
この状態で、ステッピングモータ64を回転させてピニオン62L、62Rを回転させると、ピニオン62L、62Rに歯合したラック34L、34Rが前後に移動し、ラック34L、34Rを一体に備えたプッシュスライダ30が前後に移動する。プッシュスライダ30は、スライド突起35とスリット38の嵌め合いにより前後方向に移動が限定され、図6及び図7に示す待機位置と図8に示す排出位置の間で移動可能である。リミットセンサ75Rはプッシュスライダ30が待機位置に配置されたことを検知し、リミットセンサ75Fはプッシュスライダ30が排出位置に配置されたことを検知する。
【0062】
例えば、図7に示す待機位置に配置したプッシュスライダ30は、ピニオン62L、62Rを図7で反時計回り方向に回転させることにより、前方(図示左方)へ移動する。そして、リミットセンサ75Fによってプッシュスライダ30のスライド突起35の先端にある突起部39Fを検知した時点でピニオン62L、62Rの回転を停止させることにより、プッシュスライダ30が図8に示す排出位置に停止される。
【0063】
一方、図8に示す排出位置に配置したプッシュスライダ30は、ピニオン62L、62Rを図8で時計回り方向に回転させることにより、後方(図示右方)へ移動する。そして、リミットセンサ75Rによってプッシュスライダ30のスライド突起35の後端にある突起部39Rを検知した時点でピニオン62L、62Rの回転を停止させることにより、プッシュスライダ30が図7に示す待機位置に停止される。
【0064】
図6及び図7に示す待機位置にプッシュスライダ30を配置した状態で、プッシュスライダ30の後端30Rは、収容部21Lの後板26に設けた矩形の逃げ孔26aに挿入配置される。プッシュスライダ30を待機位置に配置してその後端30Rを逃げ孔26aに挿し込んだ状態で、プッシュスライダ30の縦壁32の押圧面32aと収容部21Lの後板26の内面26bが略面一に配置される。このように、待機位置に配置したプッシュスライダ30の押圧面32aを収容部21Lの後板26の内面26bと面一に配置することで、収容部21Lに収容するナプキンNがプッシュスライダ30の縦壁32に引っ掛かる不具合を防止することができる。
【0065】
なお、収容部21Lの後板26の逃げ孔26aを通って後方に突出したプッシュスライダ30の後端30Rは、リヤケース12の後壁121に設けた横リブ18Lの内側の凹所内に配置される。言い換えると、リヤケース12の横リブ18L、18Rは、それぞれ、収容部21L、21Rの後板26に設けた逃げ孔26aに対向する位置に配置されている。
【0066】
また、プッシュスライダ30は、縦壁32の後側に湾曲面32bを有するため、プッシュスライダ30が後方の待機位置に向けて後方に移動してプッシュスライダ30の後端30Rが逃げ孔26aに入るときに縦壁32が後板26に接触しても、湾曲面32bが逃げ孔26aの縁に摺接してプッシュスライダ30が逃げ孔26aにひっかかる不具合を抑制することができる。
【0067】
収容部21LにナプキンNを収容した状態で、図6及び図7に示す待機位置から図8に示す排出位置に向けてプッシュスライダ30を前方に移動すると、プッシュスライダ30の上面31上に乗っている重ね方向の最下端のナプキンN1の後端がプッシュスライダ30の縦壁32の押圧面32aによって前方に向けて押される。このとき、最下端のナプキンN1の上に乗っている2個目のナプキンN2は縦壁32の押圧面32aの移動経路より上方に外れた位置にあり、前方に移動されることなくその場に留まる。また、このとき、2個目のナプキンN2の先端は、ドアユニット50Lのケース52の後端に当接し、前方への移動が規制される。そして、ナプキンN1の前端がドアユニット50Lのドア51を押してドア51が開き、プッシュスライダ30が排出位置に停止した図8に示す状態で、ナプキンN1の前端がフロントケース13の排出口13Lから部分的に突出する。
【0068】
ユーザは、排出口13Lから突出したナプキンN1の先端をつまんで引っ張ることにより、ナプキンN1を収容部21Lから引き抜くことができる。このとき、ユーザによって引き抜かれる最下端のナプキンN1の上に重なっている2個目のナプキンN2は、プッシュスライダ30の縦壁32の上端によって下から支えられて、ドアユニット50Lの後方に留まっている。このため、1つ目のナプキンN1を引き抜いた後、例えば工具などを用いてドア51を開けた状態に保持して、2個目のナプキンN2を排出口13Lを介して不正に引き抜こうとしても、ナプキンN2にアクセスすることができないようになっている。
【0069】
ユーザがナプキンN1を引き抜いた後、ドアユニット50Lのドア51が自重により閉じる。ドア51が開き位置から移動すると、後述するドアセンサ55(図10、15)のセンサ出力が明となり、ピニオン62L、62Rが逆回転し、プッシュスライダ30が待機位置に向けて後方に移動する。プッシュスライダ30が待機位置に戻ると、縦壁32によって下から支えられていた2個目のナプキンN2が自重により落下してプッシュスライダ30の上面31の上に乗る。これにより、ナプキンN2の後端が縦壁32の押圧面32aに対向する。この後、ユーザの要求に応じて、ナプキンN1の排出動作と同様の動作をすることにより、収容部21Lに収容した複数個のナプキンNを排出口13Lを介して1個ずつ提供することができる。
【0070】
図9に示すように、ドアユニット50Lのドア51は、左右方向に長い略矩形板状に形成されている。ドア51の長さはナプキンNの左右の幅よりわずかに大きく、ドア51の短手方向の幅はナプキンNの厚みよりわずかに大きい。この場合、ナプキンNの厚みは、市販されているナプキンNのうち最も厚みの大きいナプキンNの厚みを想定している。図2に示すように、ドアユニット50Lは、左右方向に長い略矩形枠状のケース52を有する。
【0071】
フロントケース13を閉じ位置に配置した状態で、ケース52は、前方の開口部54Fが排出口13Lの外側を囲うように、フロントケース13の前壁131内面131aに略接触する。ドア51は、ケース52の後方の開口部54Rを開閉する位置に取り付けられ、ケース52の内側に遊びを有して嵌っている。ケース52は、開口部54R、54Fを通してナプキンNを挿通可能な大きさを有する。
【0072】
ドア51は、短手方向の一端側(図示上端側)に片寄った位置に長手方向に延びた回動軸53を有する。回動軸53の両端は、ドア51の全長をわずかに超えて左右方向の外側にそれぞれ突出している。ケース52は、後方の開口部54Rの上端近くで、ドア51の回動軸53を回動可能に保持している。ドア51は、回動軸53を中心に、自由に回動可能である。つまり、ドア51は、自重により、図7に示す閉じ位置に配置される。
【0073】
図7に示す閉じ位置にドア51を配置すると、ケース52の後方にある矩形の開口部54Rが概ね塞がれる。つまり、この状態で、フロントケース13の排出口13Lがドア51によって塞がれたことになる。ナプキンN1の排出方向の前端によってドア51が前方に押されて、図8に示す開き位置にドア51が回動されると、ケース52の開口部54Rが開かれる。つまり、ドア51は、図8に示すようにナプキンN1の先端によって前方に押されると、回動軸53を中心に開き位置に向けて回動し、ナプキンN1がユーザによって引き抜かれた後、自重により図7に示す閉じ位置に回動する。
【0074】
図10に示すように、ドアユニット50Lのケース52の上には、ドア51が開き位置に回動したことを検知するためのドアセンサ55がある。ドアセンサ55は、2本の支柱57によりケース52の上方に離間して略水平に配置された略矩形板状の保持プレート58の下面58aに固設されている。つまり、ドアセンサ55は、ケース52と保持プレート58の間に設けられている。ドアセンサ55は、発光部55a、受光部55b、及び枠体55cを有する。
【0075】
ケース52の内側に嵌るドア51は、ドアセンサ55によって検知される突起56を有する。突起56は、ドア51の前面51aから略垂直に突設されている。ケース52は、ドア51が開く際に突起56を通すスリット状の挿通孔52aを有する。挿通孔52aは、ドアセンサ55の発光部55aと受光部55bの間に対向する位置にある。図10に示すように、挿通孔52aに挿通されたドア51の突起56は、発光部55aと受光部55bの間に配置される。
【0076】
ドアセンサ55の枠体55cは、断面略U字形であり、発光部55aから出射した光を受光部55bで受光できるように発光部55aと受光部55bを向かい合わせで保持している。枠体55cは、発光部55aから出射して受光部55bで受光する光の光軸が左右方向と平行になるように、発光部55aと受光部55bを保持している。ドアセンサ55は、例えばフォトインタラプタである。ドアセンサ55として、リミットスイッチ(マイクロスイッチ、接点式)を用いることもできる。
【0077】
そして、図11に示すように、ドア51が二点鎖線で示す閉じ位置から実線で示す開き位置に回動すると、突起56がドアセンサ55の発光部5aと受光部55bの間の光軸を遮る。これにより、ドアセンサ55の出力が暗になり、ドア51が開き位置に回動されたことが検知される。これに対し、ドア51が上述した開き位置から二点鎖線で示す閉じ位置に向けて移動すると、突起56がドアセンサ55の光軸を遮ることがなくなり、ドアセンサ55の出力は明となり、ドア51が閉じ位置に向けて回動されていることを検知することができる。
【0078】
受光部55bを保持した枠体55cが断面U字形であり、保持プレート58の下面58aに固設されており、且つケース52の上方に配置されているため、ドアセンサ55の受光部55bにノイズとなる外光が不所望に入射することはほとんど無い。そもそも、ドアセンサ55は、フロントケース13に覆われた筐体11内に配置されており、フロントケース13をリヤケース12に対して閉じた状態で、筐体11内に外光が入射する可能性は極めて低い。
【0079】
唯一、フロントケース13の排出口13L、13Rを介して外光が筐体11内に入射する可能性も考えられるが、排出口13L、13Rの後方に配置したドアユニット50L、50Rのケース52が前後方向に長さを有する筒状であり、且つ排出口13L、13Rから後方に離れた位置にある開口部54Rにドア51を備えるため、ドア51が開き位置に回動された状態であっても、排出口13L、13Rを介して筐体11内に外光が入射し難い構造になっている。
【0080】
また、ディスペンサ10は、図1に示すように、例えば、トイレの個室の壁1に取り付けられているトイレットペーパーの上方に取り付けられ、便座に座ったユーザの目線の高さに配置されている。このため、トイレの扉が開いた状態で外光が個室内に差し込んだ状況であっても、外光が排出口13L、13Rを介して斜め上方に向かう光である可能性は低く、ドアセンサ55の受光部55bに外光が入射する可能性は極めて低い。
【0081】
図12に示すように、収容部21Lの上方のリヤケース12の天壁122の内面122aには、在庫センサ27が取り付けられている。在庫センサ27は、特許請求の範囲における「残量検出部」の一例であり、収容部21Lに収容した集積方向の最上端のナプキンNn(或いは、錘部材40の反射板42の上面42a)に向けて略下方に光を出射する発光部27a、及び錘部材40の反射板42の上面42a(或いはナプキンNn)によって反射された光を受光する受光部27bを有する。在庫センサ27は、発光部27a及び受光部27bを左右方向に並設している。
【0082】
在庫センサ27は、発光部27aから光を出射してから錘部材40の反射板42の上面42aで反射されて受光部27bで受光するまでの時間を検出し、この時間に基づいて光の光路長を算出して錘部材40の高さ位置を検出する。これにより、収容部21Lに収容したナプキンNの在庫数を高精度に検出することができる。錘部材40が無くても、集積方向の最上端にあるナプキンNnの表面によって反射された光を検出することで、在庫数を検出することもできる。
【0083】
図13に示すように、錘部材40は、反射板42、梁部分44、及び左右の嵌合部分46L、46Rを有する。錘部材40は、例えば樹脂の一体成形により形成することができる。錘部材40は、それ自体がナプキンNの2、3枚分に相当する重量を有し、少なくとも1個の図示しないウェイト板(錘)を取り付けることで重さを変えることができる。
【0084】
反射板42は、均一な厚みを有する略矩形の平らな板状の部分であり、特許請求の範囲における「略水平な反射面」として機能する平らな上面42aを有する。収容部21Lの底にあるプッシュスライダ30の上面31上に積み重ねた複数個のナプキンNの最上端のナプキンNnの上に錘部材40を乗せた状態で、反射板42の上面42aは略水平に配置される。反射板42の上面42aは、光の反射率を高くするため白色であることが望ましい。
【0085】
反射板42は、左右の幅より前後の長さがわずかに長い略長方形の板であり、面取りした4つの角部を有する。反射板42の形状や大きさはいかなるものであってもよいが、反射板42の上面42aを水平に配置した姿勢で収容部21L内を上下に移動可能な形状及び大きさである必要がある。よって、本実施形態では、反射板42は、収容部21Lの内部空間を横切る水平面より十分に小さくしている。
【0086】
梁部分44は、反射板42の左右の幅を超える長さを有し、反射板42の下面42b側に一体的に接続されている。梁部分44の長さは、収容部21Lの左右の幅よりわずかに短い。梁部分44は、錘部材40を収容部21Lに取り付けた状態(例えば図14に示す状態)で、ナプキンNの送出し方向と直交する幅方向に延設される部分であり、左右方向に延びた長尺な略四角柱形状を有する。梁部分44は、反射板42の前後方向の中央に接続されている。梁部分44の上面44aは、反射板42の上面42aと面一に配置されている。つまり、梁部分44の上面44aは、反射板42の上面42aと同一平面に配置されている。
【0087】
梁部分44は、後述する嵌合部分46L、46Rの凹部48と協働して図示しないウェイト板を取り付けるための左右2つのスリット状の凹部45L、45R(取付凹部)を有する。凹部45L、45Rは、反射板42の左右の外側で梁部分44の上面44a側に設けられている。2つの凹部45L、45Rの外側の端部は、それぞれ凹部48につながっている。
【0088】
2つの嵌合部分46L、46Rは、反射板42を中心にして左右対称な構造を有する。例えば、左側の嵌合部分46Lは、反射板42と平行に配置した均一な板厚を有する底板部461、底板部461の左端から上方に延設した側板部462、及び2つのウェイト板を取り付けるための2つのスリット状の凹部47(取付凹部)を有する取付部463を有する。左右対称形である右側の嵌合部分46Rについては、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0089】
底板部461は、上下方向に均一な厚みを有する前後に長い略長方形の板であり、前後方向の中央でその上面46aに梁部分44の左端近くの下面44bを接続している。底板部461の板厚は、上述したプッシュスライダ30の上面31と下面33の間の厚みより少なくとも厚い。つまり、底板部461の下面46bと梁部分44の下面44bの間には、プッシュスライダ30を非接触状態で受け入れる厚さの段差がある。底板部461の下面46bは、特許請求の範囲における「第1下面」の一例であり、梁部分44の下面44bは、特許請求の範囲における「第2下面」の一例である。
【0090】
側板部462は、均一な厚みを有する略長方形の板であり、底板部461と前後の長さが同じであり、底板部461の上面46aと直交する上方に延設されている。底板部461と側板部462の前後方向の長さは、収容部21Lの前後方向の幅、すなわち収容部21Lの後板26と係止片23L、23Rの間の距離よりわずかに短い。また、左側の嵌合部分46Lの側板部462の左側面46cと右側の嵌合部分46Rの側板部462の右側面46dの間の左右方向の長さ、すなわち錘部材40の左右方向の幅は、収容部21Lの左右の仕切板22L、22Rの間の距離よりわずかに短い。
【0091】
このため、例えば、図2に示すように、プッシュスライダ30の上に積み重ねた複数個のナプキンNの上に錘部材40を乗せた状態で、左右の嵌合部分46L、46Rが収容部21Lに対してわずかな隙間を介して嵌合する。より具体的には、錘部材40を収容部21L内に取り付けた状態で、左側の嵌合部分46Lの側板部462の左側面46cが収容部21Lの左側の仕切板22Lの内面22aに近接して平行に対向し、右側の嵌合部分46Rの側板部462の右側面46dが収容部21Lの右側の仕切板22Rの内面22aに近接して平行に対向する。
【0092】
また、この状態で、嵌合部分46L、46Rの底板部461の後端と側板部462の後端が収容部21Lの後板26の内面26bにわずかな隙間を介して近接し、底板部461の前端と側板部462の前端が係止片23L、23Rの内面23aにわずかな隙間を介して近接する。よって、収容部21L内に取り付けた錘部材40は、水平方向への移動が略できない状態であり、且つ傾斜できない状態であり、錘部材40の上下方向への移動時おいて、反射板42の上面42aを略水平に保つことができる。
【0093】
取付部463は、底板部461の上面46aと側板部462の右側面46eを接続した矩形ブロック状に形成されている。取付部463の前後方向の長さは、底板部461及び側板部462の前後方向の長さより短い。2つの凹部47は、梁部分44の前方及び後方で取付部463の上面46f側に設けられている。つまり、2つの凹部47は、前後方向に並んで設けられている。
【0094】
また、取付部463の前後方向の中央には、上述した梁部分44の左側の凹部45Lに連通した左右方向に延びた凹部48がある。凹部48は、梁部分44の凹部45Lと協働して1つのウェイト板を受け入れ可能である。よって、錘部材40は、最大で6個のウェイト板を取付可能である。
【0095】
図14は、収容部21Lに収容した最後のナプキンNnをユーザが排出口13Lから引き抜いた直後の収容部21Lの底部付近を示す斜視図である。最後のナプキンNnをユーザが引き抜いた後、プッシュスライダ30の上面31と錘部材40の間には、ナプキンNが存在しない状態となり、錘部材40がプッシュスライダ30に最も近接した状態となる。最後のナプキンNnを引き抜いた直後は、プッシュスライダ30は、図14に実線で示す最も前方の排出位置に配置されている。
【0096】
プッシュスライダ30は、この後、ドアセンサ55を介してドア50が開き位置から閉じ位置に向けて移動したことを検出したのに基づいて、図中実線で示す排出位置から図中破線で示す待機位置に向けて後方へ移動する。このため、錘部材40は、最後のナプキンNnが引き抜かれた後、排出位置にあるプッシュスライダ30の上面31に向けて下方に移動して待機位置に向けて後方へ移動する間、プッシュスライダ30に干渉しない形状を有する必要がある。以下、最後のナプキンNnが引き抜かれた後、錘部材40がプッシュスライダ30に干渉しないための構造について説明する。
【0097】
まず、図14に示す状態で、錘部材40の左右の嵌合部分46L、46Rの底板部461の下面46bが、それぞれ、排出位置にあるプッシュスライダ30の左右方向の外側に外れた位置で、収容部21Lの底板24の内面24aに面で接触する。この状態で、左側の嵌合部分46Lの底板部461の右端とプッシュスライダ30の左端の間には隙間があり、右側の嵌合部分46Rの底板部461の左端とプッシュスライダ30の右端の間には隙間があり、左右の嵌合部分46L、46Rとプッシュスライダ30は非接触状態となっている。
【0098】
また、この状態で、プッシュスライダ30の上面31と錘部材40の梁部分44の下面44bは非接触状態となっている。上述したように、錘部材40の梁部分44の下面44bと左右の嵌合部分46L、46Rの底板部461の下面46bの間には、プッシュスライダ30の厚みを超える大きさの段差がある。このため、左右の嵌合部分46L、46Rの底板部461の下面46bを収容部21Lの底板24の内面24aに接触させた状態では、梁部分44の下面44bがプッシュスライダ30の上面31の上方に非接触で離間した状態となる。
【0099】
また、図14に示す状態で、プッシュスライダ30の縦壁32と錘部材40は非接触状態となっている。つまり、錘部材40の梁部分44は、この状態で、プッシュスライダ30の縦壁32の押圧面32aより前方に離間した位置関係に配置されている。また、図14に示す状態で、プッシュスライダ30の縦壁32の上端と錘部材40の反射板42の下面42bは上下方向に離間して非接触状態となっている。反射板42の下面42bと梁部分44の下面44bの間にも段差があり、この段差がプッシュスライダ30の上面31から縦壁32の突出高さより大きくなっている。
【0100】
なお、上記のように排出位置にあるプッシュスライダ30と錘部材40を非接触状態で配置することで、プッシュスライダ30を図中破線で示す待機位置へ移動する際にも、錘部材40に対してプッシュスライダ30を非接触状態とすることができる。
【0101】
収容部21Lの上方に反射型の在庫センサ27を取り付けることにより、ナプキンNの在庫数を正確に検出することができる。反射型の在庫センサ27を用いることで、光を出射してから反射光を受光するまでの時間から光路長を算出して、この光路長の半分を在庫センサ27から反射板42の上面42aまでの距離として検出することができる。このため、ナプキンNの取出しにより変化した光路長の差分から取出し個数を正確に検出することができる。よって、本実施形態によると、正規の手続きを経ずにナプキンNが不正に取り出された場合、このような不正があったことを確実に検出することができ、使用を希望しているユーザに確実にナプキンNを提供することができる。
【0102】
また、この位置に在庫センサ27を取り付けることで、収容部21Lの前後方向及び左右方向に隣接してセンサを配置する必要がなく、ディスペンサ10の前後左右方向のサイズを小さくすることができる。
【0103】
また、本実施形態のディスペンサ10は、収容部21Lの後板26がプッシュスライダ30の後端30Rを受け入れる逃げ孔26aを有するとともに、リヤケース12の後壁121が横リブ18L、18Rを有するため、プッシュスライダ30の前後方向の十分なストロークを確保した上で、筐体11の前後方向の大きさを小さくすることができる。
【0104】
また、本実施形態のディスペンサ10は、収容部21Lの底板24の下にプッシュスライダ30を駆動する駆動機構60を配置するスペースを有するため、筐体11の前後左右方向の大きさを小さくすることができる。
【0105】
このように、筐体11の奥行のサイズを可能な限り薄型化することにより、限られたトイレの空間、特に、便座に座ったユーザとディスペンサ10との間隔を十分に確保することができる。これにより、ユーザは、ディスペンサ10が配置されているトイレを使用する場合でも、特に圧迫感を感じることがない。
【0106】
また、本実施形態のディスペンサ10は、駆動機構60のステッピングモータ64の動作音が非常に小さいので、ディスペンサ10からナプキンNが排出される際に、ステッピングモータ64が動作している場合でも、動作音はほとんど聞こえないので、ディスペンサ10を使用中であることを、隣の個室の人に気が付かれることも無い。
【0107】
次に、図15を参照して、ディスペンサ10の電子回路構成について説明する。
ディスペンサ10は、電子回路として、バス71によって互いに接続されたCPU70、記録媒体読取部72、通信部74、メモリ76、及び記憶装置78を備えている。
【0108】
ディスペンサ10は、バス71によって接続されたディスプレイ4、人感センサ6、ユーザ情報読取部8、在庫センサ27、ドアセンサ55、及びリミットセンサ75F、75Rを備えている。在庫センサ27、ドアセンサ55、及びリミットセンサ75F、75Rは、2つの収容部21L、21Rにそれぞれ対応して2組ずつあるが、ここでは図示簡略化のため一方のみ図示している。
【0109】
メモリ76は、制御プログラム76aを記憶しているとともに、書込可能データエリア76bを確保している。
【0110】
通信部74は、例えばインターネットのような通信ネットワーク100を介して、管理サーバ300や、広告サーバ(図示せず)等と通信することができる。
【0111】
制御プログラム76aは、ディスペンサ10の動作全体を制御するためのプログラムであって、メモリ76に予め記憶されていてもよいし、或いはメモリカード等の外部記録媒体73から記録媒体読取部72を介してメモリ76に読み込まれ記憶されたものであってもよい。制御プログラム76aは、ユーザの操作によって書き換えできないようになっている。一方、書込可能データエリア76bは、書き換えが可能なデータを記憶するエリアである。
【0112】
CPU70は、コンピュータであって、メモリ76に記憶されている制御プログラム76aに従い回路各部の動作を制御する。
【0113】
記憶装置78は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等からなり、映像データ記憶部79を有する。
【0114】
映像データ記憶部79は、スポンサーからの広告や、ディスペンサ10の使用方法を説明するための映像データ、及び/或いは静止画である画像データを記憶している。
【0115】
映像データや画像データは、ディスプレイ4を介して表示される。映像データや画像データの表示時間は、ユーザのトイレ個室への1回の入室毎に2分程度とし、それ以上長くは表示しない。これによって、ユーザが、ディスプレイ4から表示される映像データや画像データに見入ってしまい、ついトイレに長居するようなことがないにようにしている。映像データや画像データの表示時間は、2分に限定されるものではなく、例えばユーザが個室に入室している間は常時表示するようにしてもよい。
【0116】
2分間での効果的な表示のために、映像データや画像データの長さは、例えば、15秒程度とする。また、映像データや画像データの種類は、例えば、広告と、ディスペンサ10の使用方法の説明のように、2種類程度とする。すなわち、ディスプレイ4から映像データや画像データを表示する場合、1つが15秒程度の2種類の映像データや画像データを、2分間の間に繰り返し表示する。
【0117】
なお、新たな映像データや画像データを映像データ記憶部79に登録する場合には、新たな映像データや画像データを記録した外部記録媒体73を、記録媒体読取部72によって読み取り、映像データ記憶部79に書き込むことによって行う。或いは、通信部74によって、例えばインターネットのような通信ネットワーク100を介して、管理サーバ300や、広告サーバ(図示せず)等から映像データや画像データを取得し、取得した映像データや画像データを、映像データ記憶部79に書き込むことによって行ってもよい。
【0118】
ディスプレイ4、人感センサ6、及びユーザ情報読取部8は、図1に示すように、フロントケース13の前壁131に設けられている。人感センサ6とユーザ情報読取部8は、センサユニット7として一体に設けられている。
【0119】
人感センサ6は、例えば赤外線センサによって実現され、トイレの個室に入ったユーザを感知し、感知信号Aを出力する。出力された感知信号Aは、バス71を介してメモリ76へ送られる。
【0120】
制御プログラム76aは、メモリ76へ感知信号Aが送られたことに応じて、映像データ記憶部79に記憶された映像データや画像データの、ディスプレイ4からの表示を開始させる。また、通信部74を使って、通信ネットワーク100を介して、図示しない広告サーバから配信される広告の映像データや画像データを受信し、受信した広告の映像データや画像データのディスプレイ4からの表示を開始させてもよい。
【0121】
このように、ディスペンサ10は、ディスプレイ4から広告を表示できるので、ディスペンサ10によってナプキンNを提供する事業者は、広告スポンサーを募り、ディスプレイ4から、広告を表示することによって広告収入を得、その収入の一部でナプキンNを購入し、ディスペンサ10に補充するサイクルを繰り返すことによって、ユーザに対してナプキンNを無償で提供し続けるというビジネスモデルを実施することも可能となる。ディスプレイ4には、広告以外にナプキンNの型番などを表示するステータスバーを表示することもできる。このステータスバーに表示する型番などの情報は、ディスペンサ10を設置した施設ごとに使用されているナプキンNに関するデータを格納したデータベースから取得することができる。また、ステータスバーには、各種のお知らせなども表示することができる。
【0122】
次に、ユーザがディスペンサ10に対して行うナプキンNの提供要求の方法の例について説明する。
【0123】
ユーザがディスペンサ10に対して、ナプキンNの提供要求Cを行う方法については、本明細書では特に限定しないが、例えば、ユーザが、ユーザ情報読取部8からユーザ情報を入力することによって行ったり(読取方式)、あるいは、スマートフォン等のユーザデバイス151に、専用アプリAPをインストールし、この専用アプリAPを使って、管理サーバ300を経由して行なったり(アプリ方式)することができる。
【0124】
まず、読取方式によるナプキンNの提供要求Cの方法について以下に説明する。
【0125】
読取方式によってナプキンNの提供要求Cを行う場合、ユーザは、非接触方式でも、接触方式でも、ユーザ情報読取部8からユーザ情報を入力できる。
【0126】
非接触方式でのユーザ情報入力の例として、NFC技術の適用が挙げられる。この場合、ユーザ情報読取部8を、NFC対応受信機とし、ユーザは、NFC対応型カード150(例えば、交通系カード、社員証や学生証等の身分証、クレジットカード、キャッシュカード等のICカード)やユーザデバイス151(例えば、スマートフォン)を、ユーザ情報読取部8にかざす。ユーザ情報読取部8は、NFC対応型カード150やユーザデバイス151から情報j(例えば、カードの番号、デバイス番号等)を読み取る。ユーザ情報読取部8は、この読み取った情報jを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。このように、NFC技術を適用する場合、NFC対応型カード150のみならず、スマートフォンのようなユーザデバイス151でも利用可能である。
【0127】
また、非接触方式の別のユーザ情報入力の例として、ビーコンやRFID等の無線技術の適用が挙げられる。ビーコンを使用する場合、ユーザ情報読取部8を、ビーコン受信機とし、ユーザは、ビーコン識別情報IDを送信するビーコンデバイス152を、ユーザ情報読取部8に近づける。ユーザ情報読取部8は、ビーコン識別情報IDを受信し、この受信したビーコン識別情報IDを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0128】
RFIDを使用する場合、ユーザ情報読取部8を、RFIDリーダとし、ユーザは、RFIDタグ153をユーザ情報読取部8に近づける。ユーザ情報読取部8は、RFID識別情報idを受信し、この受信したRFID識別情報idを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0129】
非接触方式のさらに別の例として、QRコード(登録商標)154の利用が挙げられる。この場合、ユーザ情報読取部8を、QRコードリーダとし、ユーザは、所定の情報が埋め込まれたQRコード154を、ユーザ情報読取部8に読み取らせる。そして、ユーザ情報読取部8は、QRコード154から、所定の情報qを取得し、この所定の情報qを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0130】
非接触方式の他の例として、生体情報認証の利用が挙げられる。この場合、ユーザ情報読取部8を、生体認証装置とする。生体認証装置は、ユーザUの生体情報rを認証し、認証した生体情報rを、ユーザ情報ujとして、メモリ76へ出力する。生体情報rとしては、例えば、指紋、掌形、網膜、虹彩、顔、静脈パターンなどが挙げられるが、例えば、生体情報rとして、顔認証情報を利用する場合、ユーザ情報読取部8を、顔認証装置とし、ユーザUは、ユーザ情報読取部8に自分の顔を向ける。そして、ユーザ情報読取部8が、顔特徴情報を取得し、この顔特徴情報を、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0131】
一方、接触方式でのユーザ情報入力の例として、磁気カード155の利用が挙げられる。この場合、ユーザ情報読取部8を、磁気リーダとし、ユーザは、磁気カード155を、ユーザ情報読取部8に読み取らせる。そして、ユーザ情報読取部8は、磁気カード155から、例えばカード番号のような磁気情報pを取得し、この磁気情報pを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0132】
接触方式の別の例として、指紋情報の利用が挙げられる。この場合、ユーザ情報読取部8を指紋リーダとし、ユーザUは、ユーザ情報読取部8に指を載せる。そして、ユーザ情報読取部8は、指紋情報vを読み取り、この指紋情報vを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0133】
接触方式のさらに別の例として、NFC非対応型のICカードの利用が挙げられる。NFC非対応型ICカード156の場合、非接触で情報を読み取ることができないので、ユーザ情報読取部8を、ICカードリーダとし、ユーザは、ICカードに記憶された例えばカード番号のようなカード情報wを、ユーザ情報読取部8に読み取らせる。ユーザ情報読取部8は、このカード情報wを、ユーザ情報ujとして、バス71を介してメモリ76へ出力する。
【0134】
メモリ76へユーザ情報ujが出力されると、制御プログラム76aは、ユーザ情報ujを、提供要求Cとして認識する。
【0135】
次に、アプリ方式によるナプキンNの提供要求Cの方法について以下に説明する。
【0136】
アプリ方式によってナプキンNの提供要求Cを行う場合、ユーザは、先ず、スマートフォンやタブレット等の自分のユーザデバイス151に、専用アプリAPをインストールする必要がある。
【0137】
専用アプリAPのインストール方法については、特に限定しないが、例えば、ディスペンサ10によってナプキンNを提供する事業者は、専用アプリAPをダウンロードするためのサイト(例えば、管理サーバ300)のサイトを示す情報(例えば、QRコード(登録商標)や、バーコード)を印刷したシールを、筐体11に貼付けたり、或いはこのサイトを示す情報を、ディスプレイ4から表示することによって、ユーザへ通知する。そして、この通知に従って、ユーザが、自分のユーザデバイス151を使って、サイトにアクセスし、専用アプリAPをダウンロードし、インストールする。
【0138】
専用アプリAPのインストール後、ユーザは、専用アプリAPに従ってユーザデバイス151からユーザ情報ujを入力することによってユーザ登録を行った後、ナプキンNの提供を要求することができる。この要求に応じて、専用アプリの管理サーバ300において、ユーザ情報ujに基づいて提供要求Cが生成され、生成された提供要求Cが、通信ネットワーク100を介して送信され、通信部74によって受信され、バス71を介してメモリ76へ出力される。
【0139】
制御プログラム76aは、これら提供要求Cの妥当性を判定する。このために、制御プログラム76aはまず、提供要求Cを、ディスペンサ10に付与されているディスペンサ識別情報dとともに、通信部74から、通信ネットワーク100を介して、管理サーバ300へ出力し、記憶させる。
【0140】
管理サーバ300には、すべてのディスペンサ10から、このようにディスペンサ識別情報dとともに提供要求Cが出力される。前述したように、提供要求Cには、ユーザ情報ujが含まれている。また、後述するが、提供要求Cに対して、ディスペンサ10によるナプキンNの提供が正しくなされた場合には、制御プログラム76aによって、通信部74を介して、提供済を示すOK情報が、管理サーバ300へ送信される。
【0141】
一方、制御プログラム76aによって、この提供要求Cが妥当ではないと判定されたり、或いは、ディスペンサ10の不具合等によって、ナプキンNが提供されなかった場合には、制御プログラム76aによって、通信部74を介して、非提供を示すNG情報が、管理サーバ300へ送信される。
【0142】
従って、管理サーバ300は、図14に例示されるように、提供要求Cが送信された時刻tと、提供要求Cに対応するユーザ情報ujと、送信元のディスペンサ10のディスペンサ識別情報dと、提供済か非提供かのステータスsaとからなるレコードRを蓄積する履歴情報テーブル310を管理することができる。
【0143】
制御プログラム76aは、通信部74を介して管理サーバ300にアクセスし、管理サーバ300において管理されている履歴情報テーブル310を参照して、提供要求Cの妥当性を判定する。
【0144】
この妥当性の判定基準としては、限定される訳ではないが、この提供要求Cをしたユーザへ、直近にナプキンNが提供された時刻から、所定時間(例えば、2時間)以上経過している場合、要求が妥当であると判定したり(第1の判定基準)、及び/又は、所定期間(例えば、過去1カ月)中にこのユーザに提供されたナプキンNの数が、所定数に達していない場合、要求が妥当であると判定する(第2の判定基準)という具合である。
【0145】
これらいずれの判定基準を採用するにせよ、制御プログラム76aは、提供要求Cの妥当性を判定するために、管理サーバ300において管理されている履歴情報テーブル310を参照する。例えば、提供要求Cに関連するユーザ情報ujに関するレコードRを、履歴情報テーブル310から抽出し、さらにステータスsaが「OK」となっているレコードRに絞り込む。この絞り込まれたレコードRを参照すれば、このユーザへナプキンNが提供された直近の時刻も、過去1カ月間のナプキンNの提供数も把握できるので、制御プログラム76aは、提供要求Cの妥当性を判定することができる。
【0146】
以下に、図16を用いて、最新の提供要求Cが、第1の判定基準を満たしているか否かを、制御プログラム76aが判定する場合の具体例を説明する。ここでは、第1の判定基準として使用される所定時間を2時間とする。
【0147】
図16の例では、レコードR115が、最新の提供要求Cである。レコードR115は、ユーザ情報ujが「B2346」であり、要求時の時刻tが「20240104142341」、すなわち2024年1月4日14時23分41秒であることを示している。
【0148】
図16において、ユーザ情報ujが「B2346」であり、かつステータスが「OK」となっているレコードは、レコードR107である。従って、レコードR115の要求元のユーザが、ディスペンサ10から直近にナプキンNの提供を受けた時刻は、レコードR107に記録されている時刻tである。
【0149】
レコードR107の時刻tは、「20240104093529」、すなわち2024年1月4日午前9時35分29秒である。
【0150】
レコードR115が示す時刻tは、レコードR107が示す時刻tの4時間48秒12秒後であり、所定時間である2時間以上経過している。従って、制御プログラム76aは、レコードR115の提供要求Cは、第1の判定基準を満たしていると判定する。
【0151】
なお、上記の具体的な説明により、第2の判定基準を満たしているか否かの判定も理解できると思われるので、第2の判定基準を満たしているか否かを判定する際の具体例を用いた説明は省略する。
【0152】
提供要求Cが妥当であると判定すると、制御プログラム76aは、収容部21Lのステッピングモータ64、又は収容部21Rのステッピングモータ64の何れかに駆動命令を出力する。
【0153】
通常であれば、制御プログラム76aは、右側の系統の排出口13Rと、左側の系統の排出口13Lとから交互にナプキンNを排出するために、右側の系統のステッピングモータ64と、左側の系統のステッピングモータ64とへ交互に駆動命令を出力する。すなわち、前回の提供要求Cに対して右側の収容部21Rのステッピングモータ64へ駆動命令が出力され、排出口13RからナプキンNが排出された場合、制御プログラム76aは、今回の提供要求Cに対しては、排出口13LからナプキンNを排出するために、左側の収容部21Lのステッピングモータ64へ駆動命令を出力する。
【0154】
しかしながら、制御プログラム76aは、後述するように、何れかの系統に排出詰まりなどの不具合が生じた場合には、不具合が解消されるまで、正常に動作している系統のステッピングモータ64のみへ駆動命令を出力する。これによって、ディスペンサ10は、一方の系統に不具合が生じた場合であっても、不具合の生じていない他方の系統からナプキンNを排出でき、サービスを継続できるという冗長性を備えている。
【0155】
例えば、左側の系統のステッピングモータ64へ駆動命令が出力された場合、制御プログラム76aは、左側のステッピングモータ64を駆動し、左側の駆動機構60のピニオン62L、62Rを順方向(図7における反時計回り方向)へ回転する。これにより、待機位置に配置されていたプッシュスライダ30が前方へ移動を開始する。プッシュスライダ30が待機位置から移動すると、リミットセンサ75Rの出力が暗から明となり、制御プログラム76aは、ナプキンN1の排出が開始されたことを認識する。
【0156】
制御プログラム76aは、ステッピングモータ64を駆動した後、リミットセンサ75Fの出力が暗になるまで、ピニオン62L、62Rの順方向への回転を続け、リミットセンサ75Fの出力が暗になった時点で、ステッピングモータ64を停止させる。制御プログラム76aは、リミットセンサ75Fの出力が明から暗になったことに基づいて、ナプキンN1の排出が完了されたことを認識する。
【0157】
この状態(図8に示す状態)で、ユーザは、排出口13Lから突出したナプキンN1の先端をつまんでナプキンN1を引抜くことでナプキンN1の提供を受ける。ナプキンN1が排出口13Lから引き抜かれると、ドア51が自重により閉じ位置に回動し、ドアセンサ55の出力が暗から明となる。制御プログラム76aは、ドアセンサ55の出力が暗から明になったことに基づいて、ナプキンN1が排出口13Lからユーザによって引き抜かれたことを認識する。
【0158】
この後、制御プログラム76aは、左側のステッピングモータ64を駆動し、左側の駆動機構60のピニオン62L、62Rを逆方向(図8における時計回り方向)へ回転する。制御プログラム76aは、ステッピングモータ64を駆動した後、リミットセンサ75Rの出力が暗になるまで、ピニオン62L、62Rの逆方向への回転を続け、リミットセンサ75Rの出力が暗になった時点で、ステッピングモータ64を停止させる。
【0159】
制御プログラム76aは、ドアセンサ55の出力が暗から明になったことに基づいて、ナプキンN1の排出が正常に終了したことを認識し、通信部74から、通信ネットワーク100を介して、管理サーバ300へ、ディスペンサ識別情報dおよびOK情報を送信する。
【0160】
管理サーバ300は、ディスペンサ識別情報dおよびOK情報を受信し、履歴情報テーブル310のうち、このディスペンサ識別情報dに対応する最新のレコードRの(すなわち、未記入の)ステータスsaに、「OK」と書き込む。
【0161】
ナプキンN1の排出が正しく行われた場合は、以上のように動作する。
【0162】
次に、ナプキンN1の排出が正しく行われなかった場合について説明する。
【0163】
例えば、左側のステッピングモータ64を駆動してピニオン62L、62Rを順方向に回転させた後、ドアセンサ55が明のままリミットセンサ75Fが暗になった場合、制御プログラム76aは、ナプキンN1の詰まり等によって排出異常が発生したと判定する。
【0164】
通常であれば、ステッピングモータ64を駆動して直ぐにナプキンN1の先端によってドア51が押されて開き位置に回動し、ドアセンサ55が暗になる。しかし、ステッピングモータ64を駆動した後、ドアセンサ55が明のままリミットセンサ75Fが暗になった場合、プッシュスライダ30が排出位置に移動したにも関わらずドア51が開き位置に回動していないことになる。
【0165】
このような場合、制御プログラム76aは、ナプキンN1の排出異常が発生したと判定し、ステッピングモータ64の駆動を停止させ、代わりに、他方の系統からナプキンN1を排出させるとともに、排出異常が発生した旨を、メンテナンス作業者へ通知する。これに応じて、メンテナンス作業者は、対象のディスペンサ10へ赴き、適切な復旧措置を行う。
【0166】
或いは、ステッピングモータ64を駆動した後、ドアセンサ55が明のままリミットセンサ75Fが暗になった場合、制御プログラム76aは、ステッピングモータ64を逆方向に駆動してピニオン62L、62Rを逆方向に回転させ、プッシュスライダ30を待機位置に戻す。そして、制御プログラム76aは、リミットセンサ75Rが暗になった後、再びピニオン62L、62Rを順方向に回転させてプッシュスライダ30を排出位置に向けて移動し、当該ナプキンN1の排出をリトライする。
【0167】
他方の系統からナプキンN1が正常に排出された場合、又はリトライによってナプキンN1が正常に排出された場合、制御プログラム76aは、通信部74を介して、管理サーバ300へ、ディスペンサ識別情報dおよびOK情報を送信し、これを受けて、管理サーバ300は、履歴情報テーブル310のうち、このディスペンサ識別情報dに対応する最新のレコードの(すなわち、未記入の)ステータスsaに、「OK」と書き込む。
【0168】
他方の系統からのナプキンN1の排出が正常になされなかった場合、又はリトライによってナプキンN1が正常に排出されなかった場合、つまり2つの系統の何れからもナプキンN1の排出が正常にできなかった場合、制御プログラム76aは、通信部74を介して、管理サーバ300へ、ディスペンサ識別情報dおよびNG情報を送信する。
【0169】
これを受けて、管理サーバ300は、履歴情報テーブル310のうち、このディスペンサ識別情報dに対応する最新のレコードの(すなわち、未記入の)ステータスsaに、「NG」と書き込む。
【0170】
次に収容部21L、21R内のナプキンNの在庫管理について説明する。
【0171】
収容部21L、21RからナプキンNが正常に排出されると、収容部21L、21Rに収容されているナプキンNの在庫数が減る。ディスペンサ10は、収容部21L、21R内のナプキンNの在庫数を把握するための在庫センサ27を備えている。在庫センサ27は、収容部21L、21Rのそれぞれに設けられている。
【0172】
在庫センサ27は、発光部27aと受光部27bを有する。発光部27aから出射した光は、錘部材40の反射板42の上面42aで反射されて受光部27bで受光される。在庫センサ27は、発光部27aから光を出射してから受光部27bで受光するまでの時間に基づく検出信号Mを出力する。
【0173】
例えば、収容部21LからナプキンNを1個排出して在庫数が1個減ると、ナプキンNの厚み分だけ錘部材40が下がる。この場合、発光部27aから出射された光が錘部材40の反射板42の上面42aで反射されて受光部27bで受光されるまでの光の光路長がナプキンNの厚みの略2倍長くなる。制御プログラム76aは、検出信号Mに基づいて光路長の変化分を算出し、ナプキンNが1個排出されたことを検出することができる。
【0174】
制御プログラム76aは、このようにして把握したナプキンNの在庫数を、収容部21L、21R毎にディスプレイ4から表示させることができる。また、ナプキンNの収容部21L、21R毎の在庫数を通信部74を介して管理サーバ300へ通知することもできる。
【0175】
これを受けて管理サーバ300は、例えば、在庫数が2、3個を下回った収容部21L、21Rを有するディスペンサ10がある場合、在庫補充作業者に対して、このディスペンサ10にナプキンNを補充するように要求することができる。また、制御プログラム76aが、通信部74を介して、在庫補充作業者に対して、このディスペンサ10にナプキンNを補充するように要求することもできる。
【0176】
これに応じて、在庫補充作業者が、このディスペンサ10に赴き、錠部15を開錠してフロントケース13を開き、収容部21L、21RにナプキンNを補充する。そして、補充を完了すると、フロントケース13を閉じて錠部15を施錠する。これによって、ナプキンNを希望するユーザに対して、引き続きナプキンNの提供サービスを実施することができる。
【0177】
なお、補充するナプキンNは、前述したように、ディスプレイ4から表示される広告に応じて広告スポンサーから得られた広告収入の一部で購入したものとすることができる。
【0178】
以上説明したように、本実施形態に係るディスペンサ10によれば、ユーザにナプキンNを無料で提供できるので、予定外に生理がきてしまった場合など、ナプキンNを持ち合わせていないユーザのために大いに役立つ。
【0179】
しかも、提供されるナプキンNは、提供前には筐体11内に収納されており、不特定多数の人によって触れられることはないので、ユーザは、提供されたナプキンNを、安心して使用することができる。
【0180】
なお、本実施形態に係るディスペンサ10は、ユーザからナプキンNの提供要求があった場合であっても、提供要求に応じて無制限にナプキンNを提供するのではなく、要求の妥当性を確認した場合にのみ提供する。従って、大量のナプキンNが一度に持ち去られるようなことはなく、常に在庫が十分あるように管理されるので、ナプキンNを、本当に使用を必要としているユーザに、確実に提供することが可能となる。
【0181】
さらには、本実施形態に係るディスペンサ10は、以下のように、ハードウェア設計の観点からも、様々な工夫がなされている。
【0182】
例えば、ディスペンサ10は、ナプキンNの排出のための動力源として、ステッピングモータ64を導入することにより、動作音の静寂化を実現するので、ユーザは、トイレの個室の外にいる人に気付かれることなくディスペンサ10を使用することができる。
【0183】
また、ディスペンサ10は、収容部21L、21Rの下にステッピングモータ64を配置し、収容部21L、21Rの上方に在庫センサ27を配置し、且つ収容部21L、21Rの後板26がプッシュスライダ30の後端30Rを受け入れる逃げ孔26aを有するため、ディスペンサ10の薄型化を実現することができ、ユーザは、ディスペンサ10が設置されたトイレの個室に入っても、圧迫感を感じることなく、トイレやディスペンサ10を利用することができる。
【0184】
また、ディスペンサ10は、ナプキンNを排出するための2つの排出口13L、13Rを有しており、一方の排出口からのナプキンNの取り出しが不能となった場合に、他方の排出口からナプキンNを排出することができ、ユーザがナプキンNを受け取ることが可能である確率は極めて高く、高い信頼性でナプキンNを提供することができる。
【0185】
また、ディスペンサ10は、プッシュスライダ30の後端30Rにある縦壁32の平らな押圧面32aによってナプキンN1の排出方向の後端を押すことによってナプキンN1を排出するため、収容部21L、21RにおけるナプキンNの集積姿勢が崩れているような場合であっても、ナプキンN1の後端を排出方向と直交する方向に揃えることができ、ナプキンN1の排出姿勢を安定させることができ、排出不能の原因となるナプキンN1の詰まりなどを抑制することができる。
【0186】
また、ディスペンサ10は、プッシュスライダ30をラック&ピニオン機構を用いて駆動する駆動機構60を備えているため、ナプキンNに排出ローラを接触させて排出する機構のようにナプキンNに摩擦力を作用させて排出する必要がなく、ナプキンNの外装材によらず安定した排出が可能となる。
【0187】
また、ディスペンサ10は、フロントケース13の排出口13L、13Rの後方にドアユニット50L、50Rを備え、ドアユニット50L、50Rが矩形枠状のケース52の後方の開口部54Rを開閉するドア51を備えているため、排出口13L、13Rを介してナプキンNを不正に取り出そうとしても、ドア51が見え辛く開け難い構造により、このような不正を抑制する効果が期待できる。
【0188】
また、ディスペンサ10は、排出口13L、13Rから排出したナプキンN1をユーザが引き抜いてドア51が自重により閉じたことによりプッシュスライダ30を排出位置から待機位置へ移動するようにしているため、ナプキンN1を引き抜いた後、不正に次のナプキンN2を取り出そうとして、ドア51を開けたままにすると、プッシュスライダ30が排出位置に停止したままの状態となり、プッシュスライダ30の縦壁32の上に乗った状態のナプキンN2を取り出すことができないようになっている。
【0189】
また、ディスペンサ10は、排出口13L、13Rを開閉するドア51を有するドアユニット50L、50Rの上方に、ドア51の開閉を検知するためのドアセンサ55を備えているため、ドアセンサ55の受光部55bが排出口13L、13Rの上方に位置する。このため、ディスペンサ10を設置したトイレのドアが開いた状態で、外光が排出口13L、13Rを介して筐体11内に入射した場合であっても、受光部55bに外光が入射してドア51が閉じ位置に配置された状態を誤検知してしまう不具合を防止することができる。
【0190】
仮に、外光がドアセンサ55の受光部55bに入射して、ドア51が開いているにも関わらず閉じ位置に配置されていることを誤検知してしまうと、排出口13L、13Rを介して排出したナプキンNがユーザによって引き抜かれたことを誤判断してプッシュスライダ30を待機位置に向けて後方へ移動してしまう。この場合、次のナプキンNが待機位置のプッシュスライダ30の上面31に乗った状態となり、開いたドア51を介して次のナプキンNにアクセスが可能となり、不正にナプキンNを取り出すことができてしまう。よって、本実施形態のようにドアセンサ55を排出口13L、13Rの上方に配置することが不正防止の観点から有効となる。
【0191】
さらに、ディスペンサ10は、ドアセンサ55の受光部55bに外光を入射させないための構造を有する。つまり、ドアセンサ55は、ドアユニット50L、50Rのケース52の外側に取り付けられており、ケース52が排出口13L、13Rの外側を囲う枠状に構成されているため、ドアセンサ55に入射する可能性がある外光はケース52によって遮られる。また、ドアセンサ55は、ケース52の上方に離間して水平に配置した保持プレート58の下面58aに固定しているため、筐体11内に入射して乱反射した外光があっても保持プレート58によって遮ることができる。さらに、ドアセンサ55は、発光部55aと受光部55bを対向させた状態で保持した枠体55cを有するため、枠体55cによって受光部55bに入射する外光を遮ることができる。
【0192】
よって、本実施形態のディスペンサ10によると、ナプキンNを無制限に取り出すことを防止でき、使用を希望しているユーザに確実にナプキンNを提供することができる。
【0193】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
複数個の扁平な衛生用品を上下に積み重ねて収容する収容部と、
複数個の前記衛生用品をその重ね方向の下端のものから順に前記収容部から送り出す送出し機構と、
略水平な反射面を有し、前記収容部に収容した前記重ね方向の上端の前記衛生用品の上に乗せる錘部材と、
前記反射面に光を照射する発光部及びその反射光を受光する受光部を有し、前記発光部が光を出射してから前記受光部が反射光を受光するまでの時間に基づいて、前記収容部に収容されている前記衛生用品の残量を検出する残量検出部と、
を有する衛生用品ディスペンサ。
[2]
前記錘部材は、前記反射面と平行な前記送出し機構による前記衛生用品の送出し方向に沿って略水平に延びた平らな第1下面と、前記送出し方向と直交し且つ前記反射面と平行な幅方向に沿って略水平に延びた平らな第2下面を有し、前記収容部に収容した前記重ね方向の上端の前記衛生用品の上面に前記第1下面及び前記第2下面を接触させた状態で、上端の前記衛生用品の上に乗せる、
[1]に記載の衛生用品ディスペンサ。
[3]
前記収容部は、前記送出し機構のプッシュスライダを前記送出し方向に沿って移動可能に備えた底面と、前記底面の周縁から前記底面と直交する上方に立設した側面を有し、
前記錘部材の前記第1下面及び前記第2下面の少なくとも一方は、前記錘部材を上端の前記衛生用品の上に乗せた状態で、前記収容部の前記側面に近接する外周縁を有する、
[2]に記載の衛生用品ディスペンサ。
[4]
前記錘部材は、全ての前記衛生用品を前記収容部から送り出した状態で、前記第1下面が前記プッシュスライダの移動経路から外れた位置で前記収容部の前記底面に面で接触し、前記第2下面が前記プッシュスライダの移動経路の上方に離間し、前記プッシュスライダに非接触状態となる、
[3]に記載の衛生用品ディスペンサ。
[5]
前記錘部材は、その重さを変えるため、少なくとも1つの錘を取り付けるための少なくとも1つの取付凹部を有する、
[1]に記載の衛生用品ディスペンサ。
【符号の説明】
【0194】
1…壁、 4…ディスプレイ、 6…人感センサ、 7…センサユニット、 8…ユーザ情報読取部、 10…ディスペンサ、 11…筐体、 12…リヤケース、 12a…開口部、 121…後壁、 13…フロントケース、 13L、13R…排出口、 131…前壁、 14…ヒンジ、 15…錠部、 16…ワイヤー、 18L、18R…横リブ、 21、21L、21R…収容部、 22L、22R…仕切板、 22a…内面、 23L、23R…係止片、 23a…内面、 24…底板、 24a…内面、 26…後板、 26a…逃げ孔、 26b…内面、 27…在庫センサ、 27a…発光部、 27b…受光部、 30…プッシュスライダ、 30R…後端、 31…上面、 32…縦壁、 32a…押圧面、 33…下面、 34L、34R…ラック、 35…スライド突起、 37L、37R、38…スリット、 39…プレート、 40…錘部材、 42…反射板、 42a…上面、 44…梁部分、 44a…上面、 44b…下面、 45L、45R…凹部、 46L、46R…嵌合部分、 461…底板部、 462…側板部、 463…取付部、 47…凹部、 48…凹部、 50L、50R…ドアユニット、 51…ドア、 52…ケース、 52a…挿通孔、 53…回動軸、 54R、54F…開口部、 55…ドアセンサ、 55a…発光部、 55b…受光部、 55c…枠体、 56…突起、 57…支柱、 58…保持プレート、 58a…下面、 60…駆動機構、 62L、62R…ピニオン、 64…ステッピングモータ、 70…CPU、 75R、75F…リミットセンサ、 76…メモリ、 76a…制御プログラム、 100…通信ネットワーク、 300…管理サーバ、 N、N1、N2・・・Nn…ナプキン。
【要約】
ディスペンサ(10)は、収容部(21)と、送出し機構(30、60)と、錘部材(40)と、残量検出部(27)と、を有する。収容部(21)は、複数個の扁平な衛生用品(N)を上下に積み重ねて収容する。送出し機構(30、60)は、複数個の衛生用品(N)をその重ね方向の下端のものから順に送り出す。錘部材(40)は、略水平な反射面(42a)を有し、収容部(21)に収容した重ね方向の上端の衛生用品(N)の上に乗せる。残量検出部(27)は、反射面(42a)に光を照射する発光部(27a)及びその反射光を受光する受光部(27b)を有し、発光部(27a)が光を出射してから受光部(27b)が反射光を受光するまでの時間に基づいて、収容部(21)に収容されている衛生用品(N)の個数を検出する。
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