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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】転倒危険度判定装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240820BHJP
   G06Q 50/22 20240101ALI20240820BHJP
【FI】
G16H20/00
G06Q50/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024527173
(86)(22)【出願日】2024-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2024005637
【審査請求日】2024-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521233507
【氏名又は名称】株式会社レクア
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】藤縄 清志
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/037619(WO,A1)
【文献】米国特許第10943407(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実を生成し、利用者に装着されるヘッドマウントディスプレイと、接続可能な転倒危険度判定装置であって、
前記転倒危険度判定装置は、
仮想物体を生成し、移動させる仮想物体生成制御部と、
前記利用者の転倒危険度を判定する転倒危険度判定部と
を有し、
前記ヘッドマウントディスプレイは、
前記利用者の移動量を取得する移動量取得部と、
前記仮想物体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
を有し、
前記仮想物体生成制御部は、前記仮想物体を生成し、前記利用者へ放出し、前記仮想物体の放出時刻を前記転倒危険度判定部に送信し、
前記移動量取得部は、取得した前記移動量と、前記移動量の取得時刻である移動量取得時刻とを前記転倒危険度判定部に送信し、
前記位置情報取得部は、取得した前記位置情報と、前記位置情報の取得時刻である位置情報取得時刻とを前記転倒危険度判定部に送信し、
前記転倒危険度判定部は、
前記放出時刻に対応する前記移動量と、前記仮想物体が前記利用者の重心から肩方向に伸びる基準線と一致する前記位置情報に対応する前記位置情報取得時刻である通過時刻を抽出し、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量とを抽出し、
抽出した前記放出時刻に対応する前記移動量と、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量との差分に基づいて、前記転倒危険度を判定する
ことを特徴とする転倒危険度判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転倒危険度判定装置において、
前記利用者が静止している場合の前記移動量は、前記利用者の前記肩方向の移動距離又は前記利用者の回転角度である
ことを特徴とする転倒危険度判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の転倒危険度判定装置において、
前記利用者が歩行している場合の前記移動量は、前記利用者の歩行速度の変位量である
ことを特徴とする転倒危険度判定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の転倒危険度判定装置において、
前記移動量に応じて転倒危険度が記憶された判定テーブルを有するデータベース部を有し、
前記転倒危険度判定部は、前記移動量と前記判定テーブルとを照合して、前記転倒危険度を判定する
ことを特徴とする転倒危険度判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実を生成し、利用者に装着されるヘッドマウントディスプレイと、接続可能な転倒危険度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、様々な用途に使用され、医療における診断、治療、リハビリテーションにも用いられている。特許文献1に示されるシステムは、拡張現実を用いて、特定の画像を表示して、高次脳機能障害に対するリハビリテーションが可能システムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許7036327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したシステムでは、医師及び施術者が患者のリハビリテーションの状況を把握することはできるが、患者の病状の進捗状況等を検査することは考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、簡便に利用者が転倒する危険性を判定できる転倒危険度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る転倒危険度判定装置は、拡張現実を生成し、利用者に装着されるヘッドマウントディスプレイと、接続可能な転倒危険度判定装置であって、前記転倒危険度判定装置は、仮想物体を生成し、移動させる仮想物体生成制御部と、前記利用者の転倒危険度を判定する転倒危険度判定部とを有し、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記利用者の移動量を取得する移動量取得部と、前記仮想物体の位置情報を取得する位置情報取得部と、を有し、前記仮想物体生成制御部は、前記仮想物体を生成し、前記利用者へ放出し、前記仮想物体の放出時刻を前記転倒危険度判定部に送信し、前記移動量取得部は、取得した前記移動量と、前記移動量の取得時刻である移動量取得時刻とを前記転倒危険度判定部に送信し、前記位置情報取得部は、取得した前記位置情報と、前記位置情報の取得時刻である位置情報取得時刻とを前記転倒危険度判定部に送信し、前記転倒危険度判定部は、前記放出時刻に対応する前記移動量と、前記仮想物体が前記利用者の重心から肩方向に伸びる基準線と一致する前記位置情報に対応する前記位置情報取得時刻である通過時刻を抽出し、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量とを抽出し、抽出した前記放出時刻に対応する前記移動量と、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量との差分に基づいて、前記転倒危険度を判定することを特徴とする。
【0007】
前記転倒危険度判定装置において、前記利用者が静止している場合の前記移動量は、前記利用者の前記肩方向の移動距離又は前記利用者の回転角度であることを特徴とする。
【0008】
前記転倒危険度判定装置において、前記利用者が歩行している場合の前記移動量は、前記利用者の歩行速度の変位量であることを特徴とする。
【0009】
前記転倒危険度判定装置において、前記移動量に応じて転倒危険度が記憶された判定テーブルを有するデータベース部を有し、前記転倒危険度判定部は、前記移動量と前記判定テーブルとを照合して、前記転倒危険度を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転倒危険度判定装置によれば、仮想現実を利用して、仮想物体を回避する際の利用者の移動量に基づいて、簡便に利用者が転倒する危険性を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る転倒危険度判定システムの全体概略図の説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る転倒危険度判定システムの説明図である。
図3図3Aは、位置情報時刻テーブルの説明図であり、図3Bは、移動量時刻テーブルの説明図である。
図4図4Aは、移動距離判定テーブルの説明図であり、図4Aは、回転角度判定テーブルの説明図であり、図4Cは、歩行速度判定テーブルの説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る転倒危険度判定システムの処理手順の説明図である。
図6図6Aは、仮想物体の放出前の表示部、図6Bは、仮想物体の放出後の表示部の説明図である。
図7】利用者が移動し、仮想物体を回避する場合であり、図7Aは、仮想物体の放出時、図7Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。
図8】利用者が回転し、仮想物体を回避する場合であり、図8Aは、仮想物体の放出時、図8Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。
図9】利用者が歩行しながら、仮想物体を回避する場合であり、図9Aは、仮想物体の放出時、図9Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る転倒危険度判定システム100の全体概略図の説明図である。図2は、本発明の実施形態に係る転倒危険度判定システム100の説明図である。図3Aは、位置情報時刻テーブル16の説明図であり、図3Bは、移動量時刻テーブル18の説明図である。図4Aは、移動距離判定テーブル22の説明図であり、図4Aは、回転角度判定テーブル24の説明図であり、図4Cは、歩行速度判定テーブル26の説明図である。
【0013】
<転倒危険度判定システム100の構成の説明>
転倒危険度判定システム100は、転倒危険度判定装置10とヘッドマウントディスプレイ40とを備える。ヘッドマウントディスプレイ40は、拡張現実(AR:Augmented Reality)を生成する機能を有し、転倒危険度判定装置10と接続可能である。ヘッドマウントディスプレイ40と転倒危険度判定装置10との接続は、有線接続、無線接続のいずれでも可能である。
【0014】
転倒危険度判定装置10は、仮想物体生成制御部12、転倒危険度判定部14、データベース部20及び判定通信部28を備え、これらがバス30を介して相互に接続される。仮想物体生成制御部12は、仮想物体70を生成し、移動させる機能を有する手段である。ここで、仮想物体70とは、コンピュータグラフィクスによって生成される物体であり、拡張現実において、ヘッドマウントディスプレイ40のHMD通信部46に表示される。
【0015】
転倒危険度判定部14は、利用者60の転倒危険度を判定する手段である。ここで、転倒危険度とは、利用者60が日常生活における転倒のしやすさを複数段階で表したものである。例えば、転倒危険度を3段階で表すと、転倒危険度は、転倒危険度1、転倒危険度2、転倒危険度3となり、転倒危険度の数字が大きい方が、日常生活において転倒しやすさが高いことを示す。また、転倒危険度判定部14は、位置情報時刻テーブル16及び移動量時刻テーブル18を備える(図3A、3B)。位置情報時刻テーブル16は、後述する位置情報取得部44で取得される位置情報Lと、前記位置情報Lの位置情報取得時刻TLとを示す。ここで、位置情報Lは、仮想物体70の位置情報をいう。また、位置情報取得時刻TLは、仮想物体70の位置情報を取得した時刻をいう。位置情報時刻テーブル16では、例えば、位置情報L1に対して、位置情報取得時刻TL1が、位置情報LGに対して、位置情報取得時刻TLGが記憶されている。また、移動量時刻テーブル18は、後述する移動量取得部42で取得される移動量Dと、前記移動量Dの移動量取得時刻TDとを示す。ここで、移動量Dは、ヘッドマウントディスプレイ40の移動量をいう。また、移動量取得時刻TDは、ヘッドマウントディスプレイ40の移動量を取得した時刻をいう。移動量時刻テーブル18では、例えば、移動量D1に対して、移動量取得時刻TD1が、移動量DGに対して、移動量取得時刻TLGが記憶されている。
【0016】
データベース部20は、移動距離判定テーブル22、回転角度判定テーブル24及び歩行速度判定テーブル26を備える。移動距離判定テーブル22、回転角度判定テーブル24及び歩行速度判定テーブル26は、移動量に応じた転倒危険度が記憶された判定テーブルであって、具体的には、利用者60に仮想物体70が近づいて来た場合に、仮想物体70を回避するために生じた利用者60の移動量と、転倒危険度との関係を示す。移動距離判定テーブル22は、利用者60の肩方向の移動距離aと転倒危険度との関係を示す(図4A)。移動距離判定テーブル22では、移動量は、移動距離aとなる。具体的には、移動距離aが0cm以上20cm未満の場合は転倒危険度1を示し、移動距離aが20cm以上40cm未満の場合は転倒危険度2を示し、移動距離aが40cm以上の場合は転倒危険度3を示す。
【0017】
回転角度判定テーブル24は、利用者60の回転角度bと転倒危険度との関係を示す(図4B)。データベース部20では、移動量は、回転角度bとなる。具体的には、回転角度bが0度以上30度未満の場合は転倒危険度1を示し、回転角度bが30度以上60度未満の場合は転倒危険度2を示し、回転角度bが60度以上90度未満の場合は転倒危険度3を示す。
【0018】
歩行速度判定テーブル26は、利用者60の歩行速度の変位量cと転倒危険度との関係を示す(図4C)。ここで、変位量cとは、利用者60の歩行速度が、減速した場合、減速前と減速後の歩行速度の差分となる。具体的には、変位量cが0m/s以上0.3m/s未満の場合は転倒危険度1を示し、変位量cが0.3m/s以上0.6m/s未満の場合は転倒危険度2を示し、変位量cが60度以上90度未満の場合は転倒危険度3を示す。
【0019】
判定通信部28は、ヘッドマウントディスプレイ40と通信をするための手段である。
【0020】
ヘッドマウントディスプレイ40は、移動量取得部42、位置情報取得部44、HMD通信部46、撮影部48、ヘッドトラッキング部50、アイトラッキング部52及び表示部54を備え、これらがバス56を介して相互に接続される。
【0021】
移動量取得部42は、ヘッドマウントディスプレイ40を装着している利用者60の移動量を取得する手段である。例えば、加速度計、ジャイロスコープ及び磁力計を含むIMU(Inertial Measurement Units)で構成される。
【0022】
位置情報取得部44は、仮想物体70の位置情報を取得する手段である。例えば、赤外線カメラ等を含む深度センサから構成される。
【0023】
HMD通信部46は、転倒危険度判定システム100と通信をするための手段である。撮影部48は、利用者60が視認するための手段である。例えば、カメラで構成される。ヘッドトラッキング部50は、利用者60が装着した転倒危険度判定装置10の方向を検出する手段である。ヘッドトラッキング部50としては、可視光カメラを含む。アイトラッキング部52は、利用者60の視認方向を検出する手段である。アイトラッキング部52としては、赤外線カメラを含む。表示部54は、利用者60が視認する現実の対象物と、仮想物体が重畳表示される手段である。
【0024】
<転倒危険度判定システム100の動作の説明>
次に、転倒危険度判定システム100の動作について、図5図9を用いて説明する。図5は、本発明の実施形態に係る転倒危険度判定装置10の処理手順の説明図である。図6は、の説明図であり、図6Aは、仮想物体の放出前の表示部、図6Bは、仮想物体の放出後の表示部の説明図である。図7は、利用者が移動し、仮想物体を回避する場合であり、図7Aは、仮想物体の放出時、図7Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。図8は、利用者が回転し、仮想物体を回避する場合であり、図8Aは、仮想物体の放出時、図8Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。図9は、利用者が歩行しながら、仮想物体を回避する場合であり、図9Aは、仮想物体の放出時、図9Bは、利用者が仮想物体を回避する際の説明図である。
【0025】
以下、仮想物体70が利用者60に対して放出され、利用者60が左右の一方に移動し、仮想物体70の衝突を回避する場合について、説明する。
【0026】
まず、仮想物体生成制御部12で仮想物体70が生成され、判定通信部28を介して、ヘッドマウントディスプレイ40に送信される(ステップS1)。なお、この状態では、ヘッドマウントディスプレイ40には、利用者60が目視できる対象物72が撮影部48を介して、表示部54に表示されている(図6A)。また、利用者60の頭部の角度等に応じてヘッドトラッキング部50により、利用者60の視線に応じてアイトラッキング部52により、表示部54に表示される表示内容が制御される。
【0027】
ヘッドマウントディスプレイ40では、HMD通信部46を介して、仮想物体70が受信され、図6Bに示されるように表示部54に表示される(ステップS2)。
【0028】
仮想物体生成制御部12は、仮想物体70を生成し、仮想物体70を利用者60に向けて放出し、また、仮想物体生成制御部12は、仮想物体70の放出時刻TS(TDS)を転倒危険度判定部14に送信する(ステップS3)。
【0029】
移動量取得部42は、ヘッドマウントディスプレイ40の移動量Dを取得し、取得した前記移動量Dと、前記移動量Dの取得時刻である移動量取得時刻TDを転倒危険度判定部14に送信する(ステップS4)。なお、この場合は、移動量Dは移動距離となる。
【0030】
転倒危険度判定部14は、前記移動量取得時刻TDと前記移動量Dとを受信し、移動量時刻テーブル18に記憶する(ステップS5)。
【0031】
位置情報取得部44は、仮想物体70の位置情報Lを取得し、取得した前記位置情報Lと、前記位置情報の取得時刻である位置情報取得時刻TLを転倒危険度判定部14に送信する(ステップS6)。
【0032】
転倒危険度判定部14は、前記位置情報取得時刻TLと前記位置情報Lとを受信し、位置情報時刻テーブル16に記憶する(ステップS7)。
【0033】
転倒危険度判定部14は、放出時刻TSを受信し、移動量時刻テーブル18と照合して、受信した放出時刻TSに対応するヘッドマウントディスプレイ40の移動量Dを抽出する(ステップS8)。ここでは、転倒危険度判定部14では、移動量取得時刻TDから放出時刻TDSが取得され、放出時刻TDSに対応する移動量Dとして、移動量DSが抽出されたとする。
【0034】
転倒危険度判定部14は、基準線74と一致する位置情報に対応する位置情報取得時刻である通過時刻を抽出する(ステップS9)。ここで、基準線74とは、図7A図7Bに示されるように、仮想物体70が利用者60の重心Gから肩方向に伸びる仮想線であって、利用者60が仮想物体70を回避し、仮想物体70が利用者60を通過する通過時刻を取得するための仮想線である。また、転倒危険度判定部14では、位置情報時刻テーブル16と照合して、位置情報Lから仮想物体70が基準線74を通過した地点の位置情報LGが取得され、位置情報LGに対応する位置情報取得時刻TLとして通過時刻である位置情報取得時刻TLG(通過時刻TLG)が抽出される。また、転倒危険度判定部14では、移動量時刻テーブル18から抽出した通過時刻TLGに対応する移動量Dとして、移動量DGが抽出される。
【0035】
転倒危険度判定部14は、抽出した放出時刻TDSに対応する移動量DSと、抽出した通過時刻TLGに対応する移動量DGとの差分dに基づいて、転倒危険度を判定する(ステップS10)。ここでは、利用者60が左右の一方に移動し、仮想物体70の衝突を回避する場合であるので、移動距離判定テーブル22から、転倒危険度を判定する。例えば、差分d=30cm、すなわち、移動距離a=30cmの場合には、転倒危険度2となる。
【0036】
次に、仮想物体70が利用者60に対して放出され、利用者60が回転し、仮想物体70の衝突を回避する場合について、説明する。この場合も、基本的には、上述した利用者60が左右の一方に移動し、仮想物体70の衝突を回避する場合のステップS1からステップS10と同様である。この場合は、ステップS4において、移動量Dが回転角度bになる。回転角度bは、図8Aに示される利用者60が仮想物体70を回避する前の姿勢におけるヘッドマウントディスプレイ40の長手方向に延在する直線と、図8Bに示される利用者60が仮想物体70を回避した直後の姿勢におけるヘッドマウントディスプレイ40の長手方向に延在する直線とが交差する角度である。ステップS10において、転倒危険度判定部14は、回転角度について、抽出した放出時刻TDSに対応する移動量DSと、抽出した通過時刻TLGに対応する移動量DGとの差分dに基づいて、転倒危険度を判定する。転倒危険度判定部14は、回転角度判定テーブル24から、転倒危険度を判定する。例えば、差分d=45度、すなわち、回転角度b=45度の場合には、転倒危険度2となる。
【0037】
さらに、仮想物体70が利用者60に対して放出され、利用者が歩行しながらの状態で、仮想物体を回避した場合について、説明する。この場合も、基本的には、上述した利用者60が左右の一方に移動し、仮想物体70の衝突を回避する場合のステップS1からステップS10と同様である。この場合は、ステップS4において、移動量Dが歩行速度の変位量になる。ステップS6において、仮想物体70が利用者60に対して放出された際の歩行速度がVA(図9A)、利用者60が仮想物体70を回避する際の歩行速度がVBとする(図9B)。転倒危険度判定部14は、歩行速度について、抽出した放出時刻TDSに対応する移動量DSと、抽出した通過時刻TLGに対応する移動量DGとの差分d=VB-VAに基づいて、転倒危険度を判定する。転倒危険度判定部14は、歩行速度判定テーブル26から、転倒危険度を判定する。例えば、差分d=が0.5m/s、すなわち、変位量c=0.5m/sの場合には、転倒危険度2となる。
【0038】
以上説明したように、転倒危険度判定装置は、拡張現実を生成し、利用者60に装着されるヘッドマウントディスプレイ40と、接続可能な転倒危険度判定装置であって、転倒危険度判定装置は、仮想物体70を生成し、移動させる仮想物体生成制御部12と、前記利用者60の転倒危険度を判定する転倒危険度判定部14とを有し、前記ヘッドマウントディスプレイ40は、前記利用者60の移動量を取得する移動量取得部42と、前記仮想物体70の位置情報を取得する位置情報取得部44と、を有し、前記仮想物体生成制御部12は、前記仮想物体70を生成し、前記利用者60へ放出し、前記仮想物体70の放出時刻を前記転倒危険度判定部14に送信し、前記移動量取得部42は、取得した前記移動量と、前記移動量の取得時刻である移動量取得時刻とを前記転倒危険度判定部14に送信し、前記位置情報取得部44は、取得した前記位置情報と、前記位置情報の取得時刻である位置情報取得時刻とを前記転倒危険度判定部14に送信し、前記転倒危険度判定部14は、前記放出時刻に対応する前記移動量と、前記仮想物体70が前記利用者60の重心から肩方向に伸びる基準線74と一致する前記位置情報に対応する前記位置情報取得時刻である通過時刻を抽出し、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量とを抽出し、抽出した前記放出時刻に対応する前記移動量と、抽出した前記通過時刻に対応する前記移動量との差分に基づいて、前記転倒危険度を判定する。
【0039】
転倒危険度判定装置10によれば、仮想現実を利用して、仮想物体70を回避する際の利用者60の移動量に基づいて、簡便に利用者が転倒する危険性を判定できる。
【0040】
転倒危険度判定装置において、前記利用者60が静止している場合の前記移動量は、前記利用者60の前記肩方向の移動距離又は前記利用者60の回転角度である。
【0041】
転倒危険度判定装置において、前記利用者60が歩行している場合の前記移動量は、前記利用者60の歩行速度の変位量である。
【0042】
転倒危険度判定装置において、前記移動量に応じて転倒危険度が記憶された判定テーブルを有する前記データベース部20を有し、前記転倒危険度判定部14は、前記移動量と前記判定テーブルとを照合して、前記転倒危険度を判定する。
【0043】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、移動量として、移動距離又は回転角度の一方により、転倒危険度を判定したが、転倒危険度を判定できればこれに限定されるものではない。移動距離及び回転角度の両移動量を取得し、前記移動距離に基づく転倒危険度と、前記回転角度に基づく転倒危険度を取得し、転倒危険度が大きい方を利用者60の判定危険度としても良い。
【0045】
また、上述した実施形態では、移動量として、変位量である移動速度の差分により、転倒危険度を判定したが、転倒危険度を判定できればこれに限定されるものではない。移動速度の差分の他に、移動距離及び回転角度の両移動量を取得し、前記移動距離に基づく転倒危険度と、前記回転角度に基づく転倒危険度、変位量に基づく転倒危険度を取得し、最も、転倒危険度が大きい方を利用者60の判定危険度としても良い。
【符号の説明】
【0046】
10…転倒危険度判定装置
12…仮想物体生成制御部
14…転倒危険度判定部
16…位置情報時刻テーブル
18…移動量時刻テーブル
20…データベース部
22…移動距離判定テーブル
24…回転角度判定テーブル
26…歩行速度判定テーブル
28…判定通信部
30、56…バス
40…ヘッドマウントディスプレイ
42…移動量取得部
44…位置情報取得部
46…HMD通信部
48…撮影部
50…ヘッドトラッキング部
52…アイトラッキング部
54…表示部
60…利用者
70…仮想物体
72…対象物
74…基準線
100…転倒危険度判定システム
【要約】
【課題】簡便に利用者が転倒する危険性を判定できる転倒危険度判定装置を提供する。
【解決手段】
転倒危険度判定装置は、拡張現実を生成し、利用者60に装着されるヘッドマウントディスプレイ40と、接続可能な転倒危険度判定装置であって、転倒危険度判定装置は、仮想物体70を生成し、移動させる仮想物体生成制御部12と、前記利用者60の転倒危険度を判定する転倒危険度判定部14とを有し、前記ヘッドマウントディスプレイ40は、前記利用者60の移動量を取得する移動量取得部42と、前記仮想物体70の位置情報を取得する位置情報取得部44と、を有し、抽出した放出時刻に対応する前記移動量と、抽出した通過時刻に対応する前記移動量との差分に基づいて、前記転倒危険度を判定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9