(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】情報提示システム、情報提示方法、コンピュータプログラム、及び認証システム
(51)【国際特許分類】
G06V 10/10 20220101AFI20240820BHJP
【FI】
G06V10/10
(21)【出願番号】P 2021562253
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047433
(87)【国際公開番号】W WO2021111548
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】舟山 知里
(72)【発明者】
【氏名】赤司 竜一
【合議体】
【審判長】高橋 宣博
【審判官】木方 庸輔
【審判官】千葉 輝久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105824421(CN,A)
【文献】国際公開第2018/003861(WO,A1)
【文献】特開2017-156468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、
前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、
前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示し、前記生体部分が前記撮像領域を通過する際に撮像するように、互いに異なる撮像領域をそれぞれ有する複数の撮像手段のうち、前記設定手段に設定された前記撮像領域に応じて選択された撮像手段を制御する提示手段と
を備えることを特徴とする情報提示システム。
【請求項2】
前記提示手段は、前記対象者が通過可能な位置に前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする請求項1に記載の情報提示システム。
【請求項3】
前記提示手段は、霧ディスプレイへの投影により前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする請求項2に記載の情報提示システム。
【請求項4】
前記提示手段は、前記撮像手段のピント位置の近傍に前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項5】
前記特定手段は、前記対象者の画像を用いて前記生体部分の位置を特定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項6】
前記特定手段は、前記対象者の画像から前記対象者の顔を含む顔領域を検出して、前記生体部分の位置を特定することを特徴とする請求項5に記載の情報提示システム。
【請求項7】
前記特定手段は、前記生体部分の位置として、虹彩認証に用いる目の位置を特定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項8】
移動している対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、
前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、
前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示し、前記生体部分が前記撮像領域を通過する際に撮像するように、互いに異なる撮像領域をそれぞれ有する複数の撮像手段のうち、前
記設定された前記撮像領域に応じて選択された撮像手段を制御する
ことを特徴とする情報提示方法。
【請求項9】
移動している対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、
前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、
前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示し、前記生体部分が前記撮像領域を通過する際に撮像するように、互いに異なる撮像領域をそれぞれ有する複数の撮像手段のうち、前
記設定された前記撮像領域に応じて選択された撮像手段を制御する
ようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
移動している対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、
前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、
前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する提示手段と、
互いに異なる撮像領域をそれぞれ有する複数の撮像手段のうち、前記設定手段に設定された前記撮像領域に応じて選択された、前記生体部分が前記撮像領域を通過する際に前記撮像領域を撮像して前記生体部分の画像を取得する撮像手段と、
前記生体部分の画像に基づいて、前記対象者の認証を行う認証手段と
を備えることを特徴とする認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証に関する情報を提示する情報提示システム、情報提示方法、コンピュータプログラム、及び認証システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、生体認証の対象者を認証処理が正常に実行できる位置に誘導するものが知られている。例えば特許文献1では、利用者を認識有効エリアに誘導するガイダンスを出力する技術が開示されている。特許文献2では、被写体を合焦範囲に誘導するための表示を行う技術が開示されている。特許文献3では、LEDを用いて認証者を誘導する技術が開示されている。
【0003】
その他の関連する技術として、例えば特許文献4では、フォグスクリーンに映像を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-259817号公報
【文献】特開2007-209646号公報
【文献】国際公開第2009/016846号
【文献】国際公開第2007/132500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動いている被写体を撮像して認証する場合、被写体が撮像範囲に来てからピントを合わせていては間に合わないため、予め撮影したい領域にピントを合わせておき、その領域を被写体が通過する際に画像を撮像する手法が用いられることがある。しかしながら、被写体が撮像する領域を認識できない場合、撮像領域に被写体を収めることは容易ではなく、認証を正常に行えないおそれがある。上述した各引用文献は、撮像領域に関する情報を正確に伝達するという点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、生体認証に関する情報を対象者に適切に提示することが可能な情報提示システム、情報提示方法、及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報提示システムの一の態様は、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する提示手段とを備える。
【0008】
本発明の情報提示方法の一の態様は、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する。
【0009】
本発明のコンピュータプログラムの一の態様は、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示するようにコンピュータを動作させる。
【0010】
本発明の認証システムの一の態様は、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する提示手段と、前記撮像領域を撮像して前記生体部分の画像を取得する撮像手段と、前記生体部分の画像に基づいて、前記対象者の認証を行う認証手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
上述した情報提示システム、情報提示方法、コンピュータプログラム、及び認証システムのそれぞれの一の態様によれば、生体認証に関する情報を対象者に適切に提示することが可能である。これにより、例えば生体認証を正常に実施することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る情報提示装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る情報提示システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る認証システムの動作例を示すイメージ図である。
【
図6】撮像領域の提示例として目のマークを示すイメージ図である。
【
図7】撮像領域表示と対象者との重なりを示すイメージ図である。
【
図8】撮像領域の提示例として長方形の枠を示すイメージ図である。
【
図9】撮像領域の提示例として楕円形の枠を示すイメージ図である。
【
図10】撮像領域の提示例として顔の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。
【
図11】撮像領域の提示例として上半身の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。
【
図12】撮像領域の提示例として全身の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。
【
図13】撮像領域の提示例として領域の横幅に対応する範囲を示すイメージ図である。
【
図14】撮像領域の提示例として領域の縦幅に対応する範囲を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、情報提示システム、情報提示方法、コンピュータプログラム、及び認証システムの実施形態について説明する。
【0014】
<情報提示システム>
本実施形態に係る情報提示システムの構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0015】
(機能的構成)
まず、
図1を参照しながら、本実施形態に係る情報提示システムの機能的構成について説明する。
図1は、実施形態に係る情報提示装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、情報提示装置10は、生体認証に関する情報を対象者に提示するための装置として構成されている。情報提示装置10は、その機能を実現するための処理ブロックとして、位置特定部101と、領域設定部102と、情報出力部103とを備えている。
【0017】
位置特定部101は、対象者の情報(具体的には、対象者の画像等)に基づいて、生体認証に用いる生体部分の位置を特定可能に構成されている。位置特定部101は、例えば対象者の全身が撮像された画像から、認証に用いる生体部分の位置(例えば、高さや横位置等)を特定する。例えば、後述する認証システム1で虹彩認証が行われる場合、位置特定部101は対象者の目の位置を特定すればよい。なお、生体部分の位置を特定するための具体的な手法については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0018】
領域設定部102は、位置特定部101で特定された生体部分の位置に基づいて、生体認証に用いる画像の撮像領域(言い換えれば、撮像ポイント)を設定可能に構成されている。即ち、領域設定部102は、後述する撮像装置40で対象者の生体部分を適切に撮像できるように、特定された生体部分の位置に応じた撮像領域を設定する。領域設定部102は、例えば、特定された生体部分の位置が比較的高い位置である場合には、通常よりも高い位置に撮像領域を設定する一方で、特定された生体部分の位置が比較的低い位置である場合には、通常よりも低い位置に撮像領域を設定する。
【0019】
情報出力部103は、領域設定部102で設定された撮像領域に関する情報を出力可能に構成されている。撮像領域に関する情報は、少なくとも撮像領域の位置に関する情報を含んでいる。その他、撮像領域に関する情報は、対象者に対して伝えるべき各種情報(例えば、生体認証に際しての指示内容等)を含んでいていてもよい。情報出力部103は、撮像領域に関する情報を、後述する表示装置30及び撮像装置40に出力する。
【0020】
(ハードウェア構成)
次に、
図2を参照しながら、本実施形態に係る情報提示システム10のハードウェア構成について説明する。
図2は、実施形態に係る情報提示システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る情報提示システム10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。情報提示システム10は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。CPU11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0022】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、情報提示システム10の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、生体認証に関する情報を提示するための機能ブロックが実現される。
【0023】
RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0024】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0025】
記憶装置14は、情報提示システム10が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0026】
入力装置15は、情報提示システム10のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0027】
出力装置16は、情報提示システム10に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、情報提示システム10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。
【0028】
<認証システム>
次に、上述した情報提示システム10を含んで構成される認証システムについて、
図3から
図14を参照して説明する。
【0029】
(システム構成)
まず、
図3を参照しながら、本実施形態に係る認証システムの全体構成について説明する。
図3は、実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【0030】
図1において、本実施形態に係る認証システム1は、対象者の生体部分の画像を用いた認証処理(所謂、生体認証)を実行するシステムとして構成されている。認証システム1は、すでに説明した情報提示システム10(
図1参照)と、検出装置20と、表示装置30と、撮像装置40と、認証装置50とを備えている。
【0031】
検出装置20は、例えばカメラを含んで構成されており、生体認証を行う対象者に関する情報を検出可能に構成されている。また、検出装置20は、例えばカメラを含んで構成されており、生体認証に用いる生体部分を撮像できる位置に配置されている。或いは、検出装置20は、対象者の生体部分の位置を特定できるものであれば、カメラ以外の各種センサとして構成されていてもよい。検出装置20で検出された情報は、情報提示システム10の位置特定部101に出力される構成となっている。
【0032】
表示装置30は、情報出力部103から出力された撮像領域に関する情報を表示することで、対象者に撮像領域の位置を提示可能に構成されている。また、本実施形態に係る表示装置30は特に、対象者に重なる位置に撮像領域に関する情報を表示可能に構成されている。なお、表示装置30は、対象者が通過可能な媒体に情報を表示できることが好ましい。表示装置30は、例えば投影装置と、投影装置からの光が投影可能な霧ディスプレイを発生させる霧発生装置とを含んで構成されており、霧ディスプレイ上に撮像領域に関する情報を投影する。表示装置30による具体的な表示例については、後に詳しく説明する。
【0033】
撮像装置40は、対象者(特に、認証に用いる生体部分)を撮像して、生体認証に用いる画像を取得可能に構成されている。撮像装置40は、例えば対象者の虹彩を撮像する虹彩カメラとして構成されている。また、本実施形態に係る撮像装置40は特に、領域設定部102の設定内容に応じて撮像領域が可変とされている。例えば、撮像装置40は、撮像領域が互いに異なる複数のカメラを備えて構成されており、領域設定部102の設定内容に応じて撮像に用いるカメラを選択する。撮像装置40は、情報出力部103から出力される撮像領域に関する情報に基づいて、撮像領域を変更する。撮像装置40で撮像された画像は、認証装置50に出力される構成となっている。
【0034】
認証装置50は、撮像装置40で撮像された画像に基づいて、対象者の生体認証を実行する。認証装置50は、例えば対象者の虹彩の画像を用いた虹彩認証を実行可能に構成されている。ただし、認証装置50が実行する認証処理は、対象者の生体の一部を用いるものであればよく、その種類が特に限定されるものではない。なお、認証装置50が実行する認証処理の具体的な処理内容については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0035】
(動作の流れ)
次に、
図4を参照しながら、本実施形態に係る認証システム1の動作の流れについて説明する。
図4は、本実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。以下では、認証システム1が、対象者の画像から目の位置を検出して、虹彩認証を実行する例を挙げて説明する。
【0036】
図4に示すように、本実施形態に係る認証システム1の動作時には、まず検出装置20が、認証処理を受けようとしている対象者の画像を取得する(ステップS101)。続いて、位置特定部101は、検出装置20で取得された画像から、対象者の顔領域を検出可能であるか否かを判定する(ステップS102)。なお、ここでの「顔領域の検出」は、対象者の目の位置を特定するために実行されるものである。顔領域の検出方法については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略するものとする。
【0037】
顔領域を検出できないと判定された場合(ステップS102:NO)、位置特定部101は顔領域の検出をリトライするか否か判定する(ステップS201)。そして、リトライすると判定した場合(ステップS201:YES)、再びステップS101から処理を実行する。一方で、リトライしないと判定した場合(ステップS201:NO)、情報出力部103が、係員(例えば、認証システム1が設けられる設備のスタッフ等)への案内に関する情報を出力する(ステップS202)。これにより、表示装置30が、対象者を係員の元へ誘導するような画像を投影する(ステップS203)。この場合、認証システム1による生体認証は実行されず、係員による認証作業等が別途実施されることになる。
【0038】
他方、顔領域を検出できると判定された場合(ステップS102:YES)、位置特定部101は、対象者の画像から顔領域を検出し、その顔領域に含まれる目の位置を特定する(ステップS103)。目の位置は、例えば予め記憶させておいた顔領域と目の位置との関係を用いて特定できる。続いて、領域設定部102が、特定された目の位置に応じて撮像領域を設定する(ステップS104)。その後、情報出力部103が、撮像領域に関する情報を表示装置30及び撮像装置40にそれぞれ出力する(ステップS105)。
【0039】
撮像領域に関する情報を受け取った表示装置30は、対象者に対して撮像装置40の撮像領域に関する情報を提示する(ステップS106)。例えば表示装置30は、虹彩画像を撮像する撮像領域の具体的な位置を示す情報を表示する。これにより、対象者は、撮像装置40の撮像領域がどこにあるのか(言い換えれば、どこで認証用の画像が撮像されるのか)を知ることができる。これにより、撮像領域に向けて対象者を誘導することができる。
【0040】
その後、撮像装置40は、設定された撮像領域に対応するカメラで対象者の虹彩画像を撮像する(ステップS107)。撮像装置40は、例えば表示装置30による撮像領域に関する表示が開始されてから所定時間の間、虹彩画像の撮像を行う。或いは、撮像装置40は、各種センサ等で対象者が所定の位置に到達したことを検出した場合に、虹彩画像を撮像するようにしてもよい。虹彩画像が撮像されると、その画像を用いて認証装置50が認証処理(即ち、虹彩認証)を実行する(ステップS108)。
【0041】
(具体的な動作例)
次に、
図5から
図7を参照しながら、本実施形態に係る認証システム1の動作例について、具体的に説明する。
図5は、実施形態に係る認証システムの動作例を示すイメージ図である。
図6は、撮像領域の提示例として目のマークを示すイメージ図である。
図7は、撮像領域表示と対象者との重なりを示すイメージ図である。
【0042】
図5に示すように、ここでの表示装置30は、投影装置31と、霧発生装置32とを備えて構成されている。投影装置31は、霧発生装置32で発生された霧ディスプレイ33に適宜画像を表示させることが可能である。なお、霧発生装置32は、認証処理の対象者500の移動経路上(例えば、施設の入場ゲート付近等)に霧ディスプレイ33を発生可能に配置されている。霧ディスプレイ33は、対象者500が通過可能である。なお、霧発生装置32には、検出装置20が設けられており、霧ディスプレイ33に近づく対象者500の画像を撮像可能となっている。また、霧ディスプレイ33を通過した先には撮像装置40が設けられており、霧ディスプレイ33を通過した直後の対象者500の画像(ここでは、虹彩画像)を撮像可能となっている。撮像装置40は、撮像領域の高さが異なる3つのカメラを備えている。検出装置20、投影装置31、撮像装置40の各々は、情報提示システム10と有線又は無線で通信可能とされている。
【0043】
図5に示す認証システム1の動作時には、まず検出装置20が、霧ディスプレイ33に接近する対象者500の画像(例えば、対象者500の顔を含む画像)を撮像する。この画像は、情報提示システム10に送信される。
【0044】
続いて、情報提示システム10は、対象者500の画像から顔領域を検出し、対象者500の目の位置を特定する。情報提示システム10は、例えば対象者500の目の位置を、「高い」、「普通」、「低い」の三段階で判定する。そして、情報提示装置10は、特定された目の位置に応じて撮像領域を設定する。具体的には、目の位置が「高い」と判定された場合には、最も高い位置を撮像領域とするカメラが選択され、そのカメラで対象者500の虹彩画像を撮像するように設定される。目の位置が「普通」と判定された場合には、二番目に高い位置を撮像領域とするカメラが選択され、そのカメラで対象者500の虹彩画像を撮像するように設定される。目の位置が「低い」と判定された場合には、最も低い位置を撮像領域とするカメラが選択され、そのカメラで対象者500の虹彩画像を撮像するように設定される。
【0045】
一方、投影装置31は、霧ディスプレイ33における設定された撮像領域に対応する部分に、撮像領域に関する情報を投影する。即ち、投影装置31は、選択されたカメラの撮像領域に対応する位置に、撮像領域に関する情報を投影する。具体的には、最も高い位置を撮像領域とするカメラが選択された場合には、霧ディスプレイの比較的高い第1の位置に撮像領域に関する情報が投影される。二番目に高い位置を撮像領域とするカメラが選択された場合には、霧ディスプレイの比較的中央付近の第2の位置に撮像領域に関する情報が投影される。最も低い位置を撮像領域とするカメラが選択された場合には、霧ディスプレイの比較的低い第3の位置に撮像領域に関する情報が投影される。これにより対象者500は、撮像領域に関する表示の位置(ここでは、高さ)によって、撮像領域が具体的にどの部分であるのかを把握することができる。
【0046】
なお、上記は第1~第3の位置の3段階の位置に撮像領域を投影可能としているが、投影される位置は適宜設定されてもよい。すなわち、カメラで撮像可能な位置であれば、対象者500の体型、身長、または目の位置に応じて撮像領域を表示する位置を決定してもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、3台のカメラから1台のカメラを選択することで撮像領域を変化させているが、その他の方法で撮像領域を変化させてもよい。例えば、カメラの撮像可能領域から一部の領域だけを抜き出して、その領域だけで撮像するような処理(所謂、ROI:Region Of Interest)を実行してもよい。この場合、撮像領域の位置を1ピクセル単位で上下左右に変更することも可能である。ROIで一部の領域のみを撮像することで、高精細な画像を取得しつつ、処理負荷を低減することができる。よって、虹彩認証に必要な情報量を担保しつつ、リアルタイムな認証処理を実現することが可能である。
【0048】
図6に示すように、撮像領域に関する情報は、文字や画像を含んで表示される。
図6に示す表示例では、目のマークが表示されると共に、目のマークの位置に目を通すように指示が表示されている。このような表示を見た対象者500は、仮に自分の目の位置が撮像装置40の撮像領域からずれていた場合、自ら移動して、自分の目の位置と目のマークの位置とを合わせようとする。このように、撮像領域に関する情報を対象者500に重なる位置に表示すれば、対象者500を適切な位置(即ち、正常に虹彩画像が撮像できる位置)に誘導することができる。
【0049】
図7に示すように、対象者500が誘導された結果、対象者500の目の位置は、撮像装置40の撮像領域に収まる。よって、対象者500が霧ディスプレイ33を通過した直後に撮像装置40による撮像を行うことで、認証処理に適した虹彩画像を取得することができる。なお、撮像領域に関する情報は、撮像装置40のピント位置の近傍に表示される(例えば、撮像装置40と霧ディスプレイ33との間隔が予め調整されている)。好ましくは、撮像装置40のピント位置は、対象者500が霧ディスプレイ33を通過した直後の位置となるように撮像装置40や霧発生装置32は配置される。このため、上述したように対象者500が移動しながら画像を撮像する場合であっても、適切な虹彩画像を取得することができる。
【0050】
なお、撮像領域に関する情報の提示例は、
図6及び
図7に示すような目のマークに限られない。以下では、
図8から
図14を参照しながら、撮像領域に関する情報の提示例のバリエーションについて説明する。
【0051】
図8は、撮像領域の提示例として長方形の枠を示すイメージ図である。このように、目のマークではなく長方形の枠を示した場合であっても、対象者500は、どこに目を通せばよいのかを把握することができる。
【0052】
図9は、撮像領域の提示例として楕円形の枠を示すイメージ図である。このように、楕円形の枠を示した場合であっても、
図8の例と同様、対象者500は、どこに目を通せばよいのかを把握することができる。
【0053】
図10は、撮像領域の提示例として顔の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。このように、顔の輪郭に対応する枠を表示するようにすれば、対象者500は、どこに顔を通せばよいか把握できる。この場合、対象者500が顔を枠内に通すように移動する結果、対象者500の目が撮像領域を通過することになる。なお、枠の表示位置は、顔領域と目の位置との関係に基づいて設定されればよい。
【0054】
図11は、撮像領域の提示例として上半身の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。このように、上半身の輪郭に対応する枠を表示するようにすれば、対象者500は、どこに上半身を通せばよいか把握できる。この場合、対象者500が上半身を枠内に通すように移動する結果、対象者500の目が撮像領域を通過することになる。なお、枠の表示位置は、上半身領域と目の位置との関係に基づいて設定されればよい。
【0055】
図12は、撮像領域の提示例として全身の輪郭に対応する枠を示すイメージ図である。このように、全身の輪郭に対応する枠を表示するようにすれば、対象者500は、どこに自分の体を通せばよいか把握できる。この場合、対象者500が自分の体を枠内に通すように移動する結果、対象者500の目が撮像領域を通過することになる。なお、枠の表示位置は、全身領域と目の位置との関係に基づいて設定されればよい。
【0056】
図10から
図12に示すような輪郭を表示する場合、予め用意されたテンプレートから選択した輪郭を利用してもよいし、対象者500の画像から推定された輪郭を利用してもよい。
【0057】
図13は、撮像領域の提示例として領域の横幅に対応する範囲を示すイメージ図である。このように表示すれば、目の位置の調整が横方向だけでよい場合に、対象者500による目の位置の調整をスムーズに行える。具体的には、対象者500は横方向の位置を意識するだけでよい(言い換えれば、縦方向の位置は意識せずともよい)ため、調整に要する負担が軽減される。
【0058】
図14は、撮像領域の提示例として領域の縦幅に対応する範囲を示すイメージ図である。
このように表示すれば、目の位置の調整が縦方向だけでよい場合に、対象者500による目の位置の調整をスムーズに行える。具体的には、対象者500は縦方向の位置を意識するだけでよい(言い換えれば、横方向の位置は意識せずともよい)ため、調整に要する負担が軽減される。
【0059】
(技術的効果)
次に、本実施形態に係る認証システム1によって得られる技術的効果について説明する。
【0060】
図1から
図14で説明したように、本実施形態に係る認証システム1では、情報提示システム10によって、対象者500と重なる位置に撮像領域に関する情報が提示される。より具体的には、生体認証に用いるために撮像すべき生体部分の位置と、撮像領域に関する情報とが重なるように表示が行われる。これにより、対象者500を適切な位置へと誘導し、生体認証に用いる生体部分の画像を適切に取得することができる。このような技術的効果は、例えばウォークスルー認証のような、対象者500が移動する状態で行う認証処理(例えば、対象者500の動きに応じてピントを合わせていては間に合わないような認証処理)において顕著に発揮される。具体的には、対象者自身が撮像領域の位置を把握し、自ら適切な位置に移動するため、システム側で撮像領域を調整せずとも、認証処理に適した画像を取得することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、表示装置30として霧発生装置32を用いる例を挙げて説明したが、対象者500と重なる位置に表示を行えるものであれば、霧発生装置32以外の装置を採用することもできる。
【0062】
<変形例1>
上述した実施形態では、霧ディスプレイ33に撮像領域を投影しているが、撮像領域を投影する代わりに、霧発生装置32が発生させる霧ディスプレイ33の幅を調整してもよい。この場合、霧発生装置32が撮像領域に関する情報を情報提示システム10から受け取る。霧発生装置32は、受け取った撮像領域に関する情報に基づき、霧ディスプレイ33の幅を調整する。ここで、調整後の霧ディスプレイ33の幅は、撮像領域の幅に合わせた幅でもよいし、対象者500の体の幅に合わせた幅でもよい。対象者500は、幅が調整された霧ディスプレイ33を視認することで、撮像領域の幅を直感的に把握することができる。或いは、霧ディスプレイ33の幅が撮像領域の幅に対応していることを、対象者に表示又は音声で知らせるようにしてもよい。このようにすれば、対象者500は、目領域が、幅が調整された霧ディスプレイ33を通過するよう、自身の位置を調整して霧ディスプレイ33を通過する。
【0063】
なお、霧発生装置32が撮像領域に関する情報を受け取らない場合でも、霧ディスプレイ33の幅を調整することができる。例えば、霧発生装置32を制御する制御部が撮像領域に関する情報を情報提示システム10から受け取り、制御部が撮像領域に関する情報に応じて霧発生装置32を制御することで、霧ディスプレイ33の幅を調整してもよい。
【0064】
<変形例2>
認証システム1は、認証が成功した場合に対象者500が通過するゲートを含んでいてもよい。ゲートは認証が成功するまでは対象者500が通過できないよう閉じた状態である。認証が成功すると、ゲートは対象者500が通過できるよう開状態となる。また、ゲートは常に開状態であり、認証が失敗した場合に閉じるような構成でもよい。
【0065】
また、対象者500の目領域の撮影が完了してから、当該対象者500がゲートを通過するまでの間、他の対象者の認証ができないことを示す情報(例えば、通り抜けできないこと示したり、認証処理が行えないことを示したりするマークや文章)を霧ディスプレイ33に投影してもよい。
<変形例3>
上述した実施形態に加え、認証システム1は、共連れ検知や忘れ物検知を行うためのカメラやセンサを備えていてもよい。この場合、情報提示システム10は、検知結果に基づき、霧ディスプレイ33に、共連れであることや忘れ物があることを示す画像や文章を投影する。
【0066】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0067】
(付記1)
付記1に記載の情報提示システムは、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する提示手段とを備えることを特徴とする情報提示システムである。
【0068】
(付記2)
付記2に記載の情報提示システムは、前記提示手段は、前記対象者が通過可能な位置に前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする付記1に記載の情報提示システムである。
【0069】
(付記3)
付記3に記載の情報提示システムは、前記提示手段は、霧ディスプレイへの投影により前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする付記2に記載の情報提示システムである。
【0070】
(付記4)
付記4に記載の情報提示システムは、前記提示手段は、前記撮像領域を撮像する撮像手段のピント位置の近傍に前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の情報提示システムである。
【0071】
(付記5)
付記5に記載の情報提示システムは、前記特定手段は、前記対象者の画像を用いて前記生体部分の位置を特定することを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の情報提示システムである。
【0072】
(付記6)
付記6に記載の情報提示システムは、前記特定手段は、前記対象者の画像から前記対象者の顔を含む顔領域を検出して、前記生体部分の位置を特定することを特徴とする付記5に記載の情報提示システムである。
【0073】
(付記7)
付記7に記載の情報提示システムは、前記特定手段は、前記生体部分の位置として、虹彩認証に用いる目の位置を特定することを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の情報提示システムである。
【0074】
(付記8)
付記8に記載の情報提示方法は、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示することを特徴とする情報提示方法である。
【0075】
(付記9)
付記9に記載のコンピュータプログラムは、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定し、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定し、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0076】
(付記10)
付記10に記載の認証システムは、対象者の情報から認証に用いる生体部分の位置を特定する特定手段と、前記生体部分を撮像する撮像領域を、特定された前記生体部分の位置に応じて設定する設定手段と、前記生体部分と重なる位置に、前記撮像領域を示す情報を提示する提示手段と、前記撮像領域を撮像して前記生体部分の画像を取得する撮像手段と、前記生体部分の画像に基づいて、前記対象者の認証を行う認証手段とを備えることを特徴とする認証システムである。
【0077】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報提示システム、情報提示方法、コンピュータプログラム、及び認証システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 認証システム
10 情報提示システム
20 検出装置
30 表示装置
31 投影装置
32 霧発生装置
33 霧ディスプレイ
40 撮像装置
50 認証装置
101 位置特定部
102 領域設定部
103 情報出力部
500 対象者