(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240820BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240820BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20240820BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
G06F3/0354 453
B60R11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020210090
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】三谷 卓寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】外川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】園田 祥
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/132495(WO,A1)
【文献】特開2020-140639(JP,A)
【文献】特開2017-224160(JP,A)
【文献】特開2017-073101(JP,A)
【文献】特開2019-200587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
G06F 3/03
G06F 3/041- 3/047
G06F 3/033- 3/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面における操作体の接触位置を検出するタッチセンサと、
前記操作面を振動させる振動素子と、
前記操作体が前記操作面に接触した状態で前記操作面に沿って移動した際の前記操作体の移動加速度に応じて、前記振動素子による前記操作面の振動の大きさを変更するように前記振動素子を制御する制御部と、を備え
、
前記制御部は、
前記タッチセンサにより検出された前記接触位置の単位時間当たりの変化を用いて、前記操作体の前記移動加速度を算出し、
算出した前記移動加速度が大きいほど、前記振動素子による前記操作面の振動の大きさが小さくなるように、駆動電圧を前記振動素子に印加する
入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記振動素子に印加する駆動電圧が前記移動加速度の増加に対して一定の減少率で減少する第1の関係を用いて、算出した前記移動加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を前記振動素子に印加する
請求項
1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記振動素子に印加する駆動電圧が前記移動加速度の増加に対して、前記移動加速度が増加するほど小さくなる減少率で減少する第2の関係を用いて、算出した前記移動加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を前記振動素子に印加する
請求項
1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記入力装置は、さらに、前記操作体により前記タッチセンサに対して入力された内容を表示する表示部を備える
請求項1~
3のいずれか1項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操作面を振動素子により振動させる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイと、当該ディスプレイに表示されたGUI(Graphical User Interface)に対して入力を行うためのタッチパッドとを備えた入力装置が知られている。この種の入力装置では、ユーザが操作指をタッチパッドのタッチセンサの操作面に接触させながら操作面に沿って移動させる操作(いわゆる、なぞり操作)を行うのに応じて、例えばディスプレイに表示されたGUI上でポインタが移動する。
【0003】
特許文献1には、タッチセンサの操作面をアクチュエータにより振動させる入力装置が開示されている。タッチセンサの操作面を振動させることにより、操作面と操作指との間には、スクイーズ膜という空気の膜が形成される。これにより、操作面と操作指との間における摩擦力が低減され、操作指の滑りが良くなる。
【0004】
また、特許文献1に開示された入力装置では、操作指のなぞり操作における移動速度が閾値よりも小さい場合に、ユーザがポインタをGUIのアイコン領域に止めようとしていると判定され、タッチセンサの操作面の振動が停止される。これにより、操作面と操作指との間における摩擦力が低い状態から、操作面と操作指との間における摩擦力が高い状態へと変化する。その結果、ユーザは、操作面上で操作指を止めやすくなるので、ポインタをGUIのアイコン領域に止めやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、上述した入力装置では、ディスプレイとタッチパッドとが物理的に分離しているため、ユーザにとって、タッチセンサの操作面上で操作指をどれだけ移動させれば、ディスプレイに表示されたGUI上でポインタがどれだけ移動するかが直感的に分かり難い。そのため、ユーザは、ポインタがGUIのアイコン領域に近付いた際に、操作指の移動速度をゆっくりと落としながら、小刻みに操作指の移動速度を上下させる動作(いわゆる、ためらい動作)を行う傾向がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された入力装置では、ためらい動作における操作指の移動速度の変化に対して、操作面と操作指との間における摩擦力をリニアに制御することができないため、操作性が低下するという課題が生じる。
【0008】
そこで、本開示は、操作性を向上させることができる入力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る入力装置は、操作面における操作体の接触位置を検出するタッチセンサと、前記操作面を振動させる振動素子と、前記操作体が前記操作面に接触した状態で前記操作面に沿って移動した際の前記操作体の移動加速度に応じて、前記振動素子による前記操作面の振動の大きさを変更するように前記振動素子を制御する制御部と、を備える。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様に係る入力装置によれば、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る入力装置が搭載された車両の車室内の一例を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る入力装置のタッチパッドを示す正面図である。
【
図3】実施の形態に係る入力装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る入力装置におけるなぞり操作の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る入力装置の制御部によるなぞり加速度の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図6】なぞり加速度と、振動素子に印加する駆動電圧との第1の関係の一例を示すグラフである。
【
図7】なぞり加速度と、振動素子に印加する駆動電圧との第2の関係の一例を示すグラフである。
【
図8】実施の形態に係る入力装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9】比較例に係る入力装置におけるタッチセンサの操作面の振動の制御方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態に係る入力装置におけるタッチセンサの操作面の振動の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一態様に係る入力装置は、操作面における操作体の接触位置を検出するタッチセンサと、前記操作面を振動させる振動素子と、前記操作体が前記操作面に接触した状態で前記操作面に沿って移動した際の前記操作体の移動加速度に応じて、前記振動素子による前記操作面の振動の大きさを変更するように前記振動素子を制御する制御部と、を備える。
【0014】
本態様によれば、制御部は、操作体が操作面に接触した状態で当該操作面に沿って移動した際に、操作体の移動加速度に応じて、振動素子による操作面の振動の大きさを変更するように振動素子を制御する。これにより、操作体の移動速度の変化に対して、操作体と操作面との間における摩擦力をリニアに制御することができる。その結果、操作性を向上させることができ、操作時間を短縮することができる。
【0015】
例えば、前記制御部は、前記タッチセンサの検出結果に基づいて、前記操作体の前記移動加速度を算出するように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、制御部は、タッチセンサの検出結果を利用して、操作体の移動加速度を容易に算出することができる。
【0017】
例えば、前記制御部は、前記タッチセンサにより検出された前記接触位置の単位時間当たりの変化を用いて、前記操作体の前記移動加速度を算出し、算出した前記移動加速度が大きいほど、前記振動素子による前記操作面の振動の大きさが小さくなるように、駆動電圧を前記振動素子に印加するように構成してもよい。
【0018】
本態様によれば、制御部は、操作体の移動加速度が大きいほど、振動素子による操作面の振動の大きさが小さくなるように、小さい駆動電圧を振動素子に印加する。これにより、操作体の移動加速度が大きいほど、操作体と操作面との間の摩擦力が大きくなるので、操作体が滑り難くなる。一方、操作体の移動加速度が小さいほど、操作体と操作面との間の摩擦力が小さくなるので、操作体が滑りやすくなる。その結果、操作性を向上させることができ、操作時間を短縮することができる。
【0019】
例えば、前記制御部は、前記振動素子に印加する駆動電圧が前記移動加速度の増加に対して一定の減少率で減少する第1の関係を用いて、算出した前記移動加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を前記振動素子に印加するように構成してもよい。
【0020】
本態様によれば、制御部は、第1の関係を用いることにより、算出した移動加速度に対応する駆動電圧を容易に決定することができる。
【0021】
例えば、前記制御部は、前記振動素子に印加する駆動電圧が前記移動加速度の増加に対して、前記移動加速度が増加するほど小さくなる減少率で減少する第2の関係を用いて、算出した前記移動加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を前記振動素子に印加するように構成してもよい。
【0022】
本態様によれば、制御部は、第2の関係を用いることにより、算出した移動加速度に対応する駆動電圧を容易に決定することができる。
【0023】
例えば、前記入力装置は、さらに、前記操作体により前記タッチセンサに対して入力された内容を表示する表示部を備えるように構成してもよい。
【0024】
本態様によれば、入力装置のタッチセンサをタッチパッドとして適用することができる。これにより、操作体によるなぞり操作においてためらい動作が生じた場合であっても、ためらい動作における操作体の移動速度の変化に対して、操作体と操作面との間における摩擦力をリニアに制御することができる。その結果、操作性を向上させることができ、操作時間を短縮することができる。
【0025】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0026】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0028】
(実施の形態)
[1.入力装置の概要]
まず、
図1及び
図2を参照しながら、実施の形態に係る入力装置2の概要について説明する。
図1は、実施の形態に係る入力装置2が搭載された車両4の車室内の一例を示す図である。
図2は、実施の形態に係る入力装置2のタッチパッド8を示す正面図である。
【0029】
図1に示すように、実施の形態に係る入力装置2は、例えば自動車等の車両4の車室内に搭載されている。入力装置2は、車両4に搭載されているカーナビゲーション機器、オーディオ機器又は空調機器等の各種車載機器を操作するための装置である。入力装置2は、表示部6と、タッチパッド8とを備えている。
【0030】
表示部6は、例えばカーナビゲーション用の地図、各種車載機器のメニュー画面又は検索画面等を操作するためのGUI10を表示するディスプレイである。表示部6は、例えば車両4のインストルメントパネル12に配置されており、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成されている。なお、説明の都合上、
図1では、GUI10の図示を省略してある。
【0031】
タッチパッド8は、表示部6に表示されているGUI10に対して入力を行うための入力インタフェースである。タッチパッド8は、例えば車両4のセンタコンソール14に配置されている。ユーザは、タッチパッド8を用いてGUI10に対して入力を行うことにより、各種車載機器を操作することができる。
図2に示すように、タッチパッド8は、タッチセンサ16と、感圧センサ18と、振動素子20とを有している。
【0032】
タッチセンサ16の表面側には、操作体としてのユーザの操作指22(後述する
図4の(b)参照)が接触する操作面24が形成されている。タッチセンサ16は、操作面24における操作指22の接触位置を検出する静電容量式のタッチセンサである。タッチセンサ16は、例えば、操作指22を操作面24に接触させた状態で当該操作面24に沿って移動させる操作(以下、「なぞり操作」という)等を検出する。なお、本実施の形態では、操作指22を操作面24に接触させるようにしたが、これに限定されず、例えば操作体としてのタッチペン等を操作面24に接触させてもよい。
【0033】
感圧センサ18は、タッチセンサ16の裏面側に重なるように配置されており、タッチセンサ16の操作面24への押し込み入力を検出する。なお、感圧センサ18により検出された押し込み入力は、例えば「決定」を示す入力として受け付けられる。
【0034】
振動素子20は、タッチセンサ16の裏面側に配置されている。振動素子20は、例えば駆動電圧が印加されることにより駆動するアクチュエータである。振動素子20は、駆動することにより振動し、振動素子20の振動は、タッチセンサ16の操作面24に伝達される。これにより、振動素子20は、タッチセンサ16の操作面24を所定の周波数(例えば、100Hz~200Hz)で振動させ、操作面24に接触した操作指22に対して触覚を提示する。なお、振動素子20によるタッチセンサ16の操作面24の振動方向は、例えば操作面24に対して垂直方向であるが、これに限定されず、任意の方向に振動させてもよい。また、振動素子20は、超音波帯域で振動することにより、操作面24に接触した操作指22に対して触覚を提示する構成であってもよい。
【0035】
振動素子20によりタッチセンサ16の操作面24が振動している状態では、なぞり操作における操作指22と操作面24との間の摩擦力は、操作面24が振動していない状態と比べて小さくなる。これにより、振動素子20によりタッチセンサ16の操作面24が振動している状態では、操作面24が振動していない状態と比べて、操作指22は操作面24上を滑りやすくなる。
【0036】
また、振動素子20によるタッチセンサ16の操作面24の振動の大きさ(振幅)が調整されることにより、なぞり操作における操作指22と操作面24との間の摩擦力が調整される。具体的には、振動素子20によるタッチセンサ16の操作面24の振動の大きさを大きくするほど、なぞり操作における操作指22と操作面24との間の摩擦力は小さくなり、操作指22は操作面24上をより滑りやすくなる。
【0037】
[2.入力装置の機能構成]
次に、
図3~
図7を参照しながら、実施の形態に係る入力装置2の機能構成について説明する。
図3は、実施の形態に係る入力装置2の機能構成を示すブロック図である。
図4は、実施の形態に係る入力装置2におけるなぞり操作の一例を示す図である。
図5は、実施の形態に係る入力装置2の制御部26によるなぞり加速度の算出方法の一例を説明するための図である。
図6は、なぞり加速度と、振動素子20に印加する駆動電圧との第1の関係の一例を示すグラフである。
図7は、なぞり加速度と、振動素子20に印加する駆動電圧との第2の関係の一例を示すグラフである。
【0038】
図3に示すように、入力装置2は、機能構成として、表示部6と、タッチパッド8と、制御部26とを備えている。
【0039】
タッチパッド8のタッチセンサ16は、操作面24における操作指22の接触位置を示す検出信号を制御部26に出力する。また、タッチパッド8の感圧センサ18は、タッチセンサ16の操作面24への押し込み入力を検出したことを示す検出信号を、制御部26に出力する。
【0040】
制御部26は、各種車載機器を操作するためのGUI10を表示部6に表示させる。例えば、制御部26は、
図4の(a)に示すように、カーナビゲーション機器において目的地を入力するための検索画面等として用いられる、キーボード配列のGUI10を表示部6に表示させる。
図4の(a)に示す例では、GUI10のキーボード配列は、アルファベットを入力するためのQWERTY配列である。GUI10は、文字(アルファベット)の入力を受け付けるための複数の文字入力キー28等を含んでいる。
【0041】
また、制御部26は、タッチパッド8のタッチセンサ16及び感圧センサ18からの各検出信号に基づいて、表示部6に表示されたGUI10を変化させる。具体的には、制御部26は、操作指22がタッチセンサ16の操作面24に接触した際には、
図4の(a)に示すようにポインタ30をGUI10に表示させる。また、制御部26は、タッチセンサ16が操作指22のなぞり操作を検出した際には、なぞり操作における操作指22の移動方向及び移動量に応じて、GUI10上でポインタ30を移動させる。
【0042】
例えば、制御部26は、
図4の(b)に示すように、タッチセンサ16がなぞり操作における操作面24上の右下方向への操作指22の移動を検出した際には、
図4の(a)に示すように、操作指22の移動方向と連動させて、ポインタ30をGUI10上の右下方向に移動させる。
図4の(a)に示す例では、ポインタ30は、文字「t」に対応する文字入力キー28aの位置から、文字「j」に対応する文字入力キー28bの位置まで移動される。なお、ポインタ30が文字入力キー28b上に重なっている状態で、ユーザが操作指22を操作面24に向けて押し込むことにより、文字「j」の入力が決定される。
【0043】
また、制御部26は、タッチセンサ16からの検出信号に基づいて、なぞり操作における操作指22の移動加速度(以下、「なぞり加速度」という)を算出する。以下、
図5を参照しながら、制御部26によるなぞり加速度の算出方法の一例について説明する。
【0044】
制御部26は、タッチセンサ16からの検出信号に基づいて、操作面24における操作指22の接触位置の座標を算出する。
図5に示す例では、操作指22がなぞり操作により接触位置Aから接触位置Bを経て接触位置Cまで移動した際には、制御部26は、接触位置Aの座標(x
1,y
1)、接触位置Bの座標(x
2,y
2)、及び、接触位置Cの座標(x
3,y
3)をそれぞれ算出する。なお、制御部26により算出される接触位置の座標は、例えば操作面24の中心を原点とし、操作面24の横方向(
図2において左右方向)をX軸、操作面24の縦方向(
図2において上下方向)をY軸とするXY座標系における座標である。また、タッチセンサ16が接触位置A、接触位置B及び接触位置Cを検出した各時刻はそれぞれ、t
1,t
2,t
3(t
1<t
2<t
3)であるとする。
【0045】
制御部26は、操作面24における操作指22の接触位置の単位時間当たりの変化量に基づいて、なぞり操作における操作指22の移動速度(以下、「なぞり速度」という)を算出する。
図5に示す例では、制御部26は、操作指22が接触位置Aから接触位置Bまで移動した場合のなぞり速度v
1を、1フレーム(t
2-t
1)当たりの、接触位置Aの座標(x
1,y
1)と接触位置Bの座標(x
2,y
2)との間の変位量に基づいて算出する。また、制御部26は、操作指22が接触位置Bから接触位置Cまで移動した場合のなぞり速度v
2を、1フレーム(t
3-t
2)当たりの、接触位置Bの座標(x
2,y
2)と接触位置Cの座標(x
3,y
3)との間の変位量に基づいて算出する。
【0046】
最後に、制御部26は、算出したなぞり速度v1,v2の単位時間当たりの変化量(v2-v1)に基づいて、なぞり加速度aを算出する。なお、算出したなぞり加速度aが正の場合は、操作指22が操作面24上を加速しながら移動していることを意味する。また、算出したなぞり加速度aが負の場合は、操作指22が操作面24上を減速しながら移動していることを意味する。また、算出したなぞり加速度aが0(零)の場合は、操作指22が操作面24上を等速度で移動していることを意味する。
【0047】
また、制御部26は、算出した移動加速度に応じて、振動素子20によるタッチセンサ16の操作面24の振動の大きさを変更するように振動素子20を制御する。すなわち、制御部26は、算出した移動加速度が大きいほど、振動素子20による操作面24の振動の大きさが小さくなるように、より小さい駆動電圧を振動素子20に印加する。また、制御部26は、算出した移動加速度が小さいほど、振動素子20による操作面24の振動の大きさが大きくなるように、より大きい駆動電圧を振動素子20に印加する。
【0048】
具体的には、制御部26は、
図6に示すような第1の関係を用いて、算出したなぞり加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を振動素子20に印加する。第1の関係は、振動素子20に印加する駆動電圧がなぞり加速度の増加に対して一定の減少率で減少するような、なぞり加速度と駆動電圧との対応関係である。第1の関係を示すデータは、入力装置2のメモリ(図示せず)に予め記憶されている。
図6に示すように、制御部26は、例えば算出したなぞり加速度が「-a
1」(a
1>0)である場合には、第1の関係を参照することにより、なぞり加速度「-a
1」に対応する駆動電圧として「80%」を決定する。また、制御部26は、例えば算出したなぞり加速度が「0」である場合には、第1の関係を参照することにより、なぞり加速度「0」に対応する駆動電圧として「60%」を決定する。なお、振動素子20に印加される駆動電圧が0%から100%まで増大するのに従って、振動素子20の振動は徐々に大きくなる。
【0049】
このような構成に代えて、制御部26は、
図7に示すような第2の関係を用いて、算出したなぞり加速度に対応する駆動電圧を決定し、決定した駆動電圧を振動素子20に印加してもよい。第2の関係は、振動素子20に印加する駆動電圧がなぞり加速度の増加に対して、なぞり加速度が増加するほど小さくなる減少率で減少するような、なぞり加速度と駆動電圧との対応関係である。第2の関係を示すデータは、入力装置2のメモリに予め記憶されている。
図7に示すように、制御部26は、例えば算出したなぞり加速度が「-a1」である場合には、第2の関係を参照することにより、なぞり加速度「-a1」に対応する駆動電圧として「40%」を決定する。また、制御部26は、例えば算出したなぞり加速度が「0」である場合には、第1の関係を参照することにより、なぞり加速度「0」に対応する駆動電圧として「20%」を決定する。
【0050】
なお、制御部26は、例えば、所定のプログラムを実行するプロセッサと、当該所定のプログラムを記憶したメモリとで構成されてもよいし、専用回路で構成されてもよい。あるいは、制御部26は、例えば、車両4に搭載されたECU(Electronic Control Unit)で構成されてもよい。
【0051】
[3.入力装置の動作]
次に、
図8を参照しながら、実施の形態に係る入力装置2の動作について説明する。
図8は、実施の形態に係る入力装置2の動作の流れを示すフローチャートである。
【0052】
図8に示すように、まず、タッチパッド8のタッチセンサ16は、操作指22が操作面24に接触したか否かを判定する(S101)。操作指22が操作面24に接触していない場合には(S101でNO)、処理を終了する。
【0053】
操作指22が操作面24に接触した場合には(S101でYES)、タッチセンサ16は、操作面24における操作指22の接触位置を示す検出信号を制御部26に出力する。制御部26は、タッチセンサ16からの検出信号に基づいて、操作面24における操作指22の接触位置の座標を算出する(S102)。
【0054】
制御部26は、操作面24における操作指22の接触位置の単位時間当たりの変化量に基づいて、操作指22のなぞり速度vを算出する(S103)。制御部26は、算出したなぞり速度の単位時間当たりの変化量に基づいて、なぞり加速度aを算出する(S104)。
【0055】
制御部26は、ステップS103で算出したなぞり速度vが閾値v0よりも大きいか否かを判定する(S105)。算出したなぞり速度vが閾値v0以下である場合には(S105でNO)、制御部26は、ユーザがまだなぞり操作を開始していないと判断して、振動素子20の駆動を停止し(S106)、処理を終了する。
【0056】
一方、算出したなぞり速度vが閾値v
0よりも大きい場合には(S105でYES)、制御部26は、ユーザがなぞり操作を開始したと判断し、
図6に示す第1の関係(又は
図7に示す第2の関係)を参照することにより、ステップS104で算出したなぞり加速度aに対応する駆動電圧を決定する(S107)。制御部26は、決定した駆動電圧を振動素子20に印加することにより、振動素子20を駆動し(S108)、処理を終了する。
【0057】
振動素子20が駆動することにより、タッチセンサ16の操作面24が振動する。これにより、なぞり操作における操作指22と操作面24との間の摩擦力は、操作面24が振動していない状態と比べて小さくなる。その結果、振動素子20によりタッチセンサ16の操作面24が振動している状態では、操作面24が振動していない状態と比べて、操作指22は操作面24上を滑りやすくなる。
【0058】
[4.効果]
ここで、
図9を参照しながら、比較例に係る入力装置におけるタッチセンサの操作面の振動の制御方法について説明する。
図9は、比較例に係る入力装置におけるタッチセンサの操作面の振動の制御方法を説明するための図である。
【0059】
一般に、入力装置では、
図9に示すように、ユーザがなぞり操作を行った際には、操作指のなぞり速度は、急激に増加した後に、時刻t
0で減少に転じ、その後なだらかに減少していくことが知られている。
【0060】
図9に示すように、比較例に係る入力装置では、なぞり速度が閾値v
pよりも小さい低速域にある場合には、タッチセンサの操作面の振動の大きさが最も大きくなるように振動素子を制御する。これにより、操作指と操作面との間の摩擦力は、最も小さくなる。
【0061】
また、比較例に係る入力装置では、なぞり速度が閾値vp以上且つ閾値vq(vp<vq)以下の中速域にある場合には、タッチセンサの操作面の振動の大きさが中程度となるように振動素子を制御する。これにより、操作指と操作面との間の摩擦力は、中程度となる。
【0062】
また、比較例に係る入力装置では、なぞり速度が閾値vqよりも大きい高速域にある場合には、タッチセンサの操作面の振動の大きさが最も小さくなるように振動素子を制御する。これにより、操作指と操作面との間の摩擦力は、最も大きくなる。
【0063】
一般に、入力装置では、表示部とタッチパッドとが物理的に分離しているため、ユーザにとって、タッチパッドの操作面上で操作指をどれだけ移動させれば、表示部に表示されたGUI上でポインタがどれだけ移動するかが直感的に分かり難い。そのため、ユーザは、ポインタがGUIのアイコン領域に近付いた際に、操作指の移動速度をゆっくりと落としながら、小刻みに操作指の移動速度を上下させる動作(以下、「ためらい動作」という)を行う傾向がある。
【0064】
しかしながら、比較例に係る入力装置では、ためらい動作における操作指の移動速度の変化に対して、操作指と操作面との間における摩擦力をリニアに制御することができない。例えば、
図9に示すように、なぞり速度が中速域又は低速域にある場合には、操作指のためらい動作が発生したタイミングであっても、操作指と操作面との間の摩擦力は変化しない。その結果、操作性が低下して、操作時間が長くなるという課題が生じる。
【0065】
これに対して、実施の形態に係る入力装置2では、制御部26は、操作指22の移動加速度が大きいほど、振動素子20による操作面24の振動の大きさが小さくなるように、小さい駆動電圧を振動素子20に印加する。
【0066】
図10は、実施の形態に係る入力装置2におけるタッチセンサ16の操作面24の振動の制御方法を説明するための図である。
図10の(a)に示すように、実施の形態に係る入力装置2では、タッチセンサ16の操作面24の振動を制御しない場合には、比較例に係る入力装置と同様に、操作指22のなぞり速度は、急激に増加した後に、時刻t
0で減少に転じ、その後なだらかに減少していく。
【0067】
操作指22のなぞり速度が増加している、すなわち、操作指22が操作面24上を加速しながら移動している場合には、制御部26は、タッチセンサ16の操作面24の振動の大きさが比較的小さくなるように振動素子20を制御する。これにより、操作指22と操作面24との間の摩擦力は、比較的大きくなる。
【0068】
一方、操作指22のなぞり速度が減少している、すなわち、操作指22が操作面24上を減速しながら移動している場合には、制御部26は、タッチセンサ16の操作面24の振動の大きさが比較的大きくなるように振動素子20を制御する。これにより、操作指22と操作面24との間の摩擦力は、比較的小さくなる。
【0069】
これにより、実施の形態に係る入力装置2では、ためらい動作における操作指22の移動速度の変化に対して、操作指22と操作面24との間における摩擦力をリニアに制御することができる。その結果、なぞり速度の時間変化は、
図10の(b)に示す実線のグラフのようになるので、操作性を向上させることができ、操作時間を短縮することができる。
【0070】
(他の変形例)
以上、一つ又は複数の態様に係る入力装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を上記実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0071】
上記実施の形態では、入力装置2は表示部6とタッチパッド8とを備えるようにしたが、これに限定されず、入力装置2は、表示部6とタッチセンサ16とが一体化されたタッチパネルであってもよい。
【0072】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態に係る入力装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0074】
上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしても良い。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0075】
本開示は、上記に示す方法であるとしても良い。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしても良い。また、本開示は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしても良い。また、前記プログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記プログラム又は前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、タッチセンサの操作面を振動素子により振動させる入力装置等として適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
2 入力装置
4 車両
6 表示部
8 タッチパッド
10 GUI
12 インストルメントパネル
14 センタコンソール
16 タッチセンサ
18 感圧センサ
20 振動素子
22 操作指
24 操作面
26 制御部
28,28a,28b 文字入力キー
30 ポインタ