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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】溶接状態検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240820BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240820BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20240820BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20240820BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01R31/00
H01M10/48 P
H01M50/516
G01R31/50
G01R27/02 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022522697
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021001653
(87)【国際公開番号】W WO2021177613
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0026135
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス・テク・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・ク
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1887148(KR,B1)
【文献】特開昭56-094255(JP,A)
【文献】特開2011-100661(JP,A)
【文献】特開2004-111898(JP,A)
【文献】特開2006-200946(JP,A)
【文献】特開2019-020135(JP,A)
【文献】特開2013-246084(JP,A)
【文献】特開2015-225040(JP,A)
【文献】実開昭51-125974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
H01M 10/48
H01M 50/516
G01R 31/50
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池において電気的連結または機械的締結のための溶接部での溶接状態を検査する装置であって、
前記溶接部上に一対の抵抗測定プローブが接触して前記溶接部の抵抗値を導出するためのデータを得る測定部と、
前記測定部と通信し、前記測定部から得たデータが送出されて前記溶接部での抵抗値を決定し、決定された抵抗値を臨界抵抗値と比較して弱溶接の可否を判別する制御部とを含み、
前記測定部は、前記抵抗測定プローブが前記溶接部の一端および他端に接触するのを可能とするように構成され、
前記制御部は、前記測定部が標本集団に対して得たデータを統計的方式で処理して前記臨界抵抗値を設定する臨界抵抗値設定プログラムを含み、
1つの前記抵抗測定プローブが電流プローブおよび電圧プローブを含
前記測定部は、ナノオーム乃至マイクロオーム単位で抵抗を測定し、
前記標本集団の個体数は、少なくとも100,000以上である、溶接状態検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記決定された抵抗値が前記臨界抵抗値を超える場合に弱溶接として判断する、請求項1に記載の溶接状態検査装置。
【請求項3】
前記測定部は、
被検体が安置される平板状のクレードルと、
前記クレードルから所定の離隔距離を有する上部に位置し、前記抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた上部プレートと、
前記クレードルから所定の離隔距離を有する下部に位置し、前記抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた下部プレートと、
前記クレードル、前記上部プレート及び前記下部プレートを結合する結合部と、
前記溶接部上に接触して抵抗値を決定するためのデータを得る一対の抵抗測定プローブとを含む、請求項1又は2に記載の溶接状態検査装置。
【請求項4】
前記上部プレートおよび前記下部プレート上には、前記抵抗測定プローブを正位置に挿入されるように上部ガイド部材及び下部ガイド部材がそれぞれ結合されている、請求項3に記載の溶接状態検査装置。
【請求項5】
前記上部ガイド部材および前記下部ガイド部材は、それぞれ前記抵抗測定プローブの挿入が可能な貫通ホールを備えており、
前記上部ガイド部材の前記貫通ホールと前記上部プレートの前記貫通ホールは一直線上に位置して、前記抵抗測定プローブが前記上部ガイド部材の前記貫通ホール及び前記上部プレートの前記貫通ホールを同時に貫通して前記溶接部の上面に接近するのを可能とするように構成され、
前記下部ガイド部材の前記貫通ホールと前記下部プレートの前記貫通ホールは一直線上に位置し、前記抵抗測定プローブが前記下部ガイド部材の前記貫通ホール及び前記下部プレートの前記貫通ホールを貫通して前記溶接部の下面に接近するのを可能とするように構成された、請求項4に記載の溶接状態検査装置。
【請求項6】
前記結合部は、結合棒および結合ねじを含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の溶接状態検査装置。
【請求項7】
前記クレードル、前記上部プレート及び前記下部プレートはそれぞれ、4つの角部に結合ホールが形成されており、
前記結合棒が、前記上部プレート、前記クレードル及び前記下部プレートにそれぞれ形成された前記結合ホールを順次に貫通して挿入されることにより、前記上部プレート、前記クレードル及び前記下部プレートが結合するのを可能とするように構成された、請求項6に記載の溶接状態検査装置。
【請求項8】
前記クレードルと前記上部プレートとの間の離隔距離および前記クレードルと前記下部プレートとの間の離隔距離を調節するための圧縮ばねをさらに含み、
前記結合棒が前記圧縮ばねの中空部の内部に挿入するのを可能とするように構成された、請求項6又は7に記載の溶接状態検査装置。
【請求項9】
前記標本集団に対して得たデータから決定された抵抗値が正規分布曲線をなす、請求項1に記載の溶接状態検査装置。
【請求項10】
前記測定部に電源を印加する電源をさらに含み、
前記電源は直流電源であり、
前記制御部によって制御される、請求項1から9のいずれか一項に記載の溶接状態検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年03月02日付の韓国特許出願第10-2020-0026135号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池において、電気的連結または機械的締結のための溶接部での溶接状態を検査する装置に関するものであって、より詳細には、電極タブと電極タブの溶接部または電極リードの溶接部の弱溶接の可否を検査する装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、二次電池は、充電が不可能な一次電池とは異なって、充放電が可能な電池を意味しており、携帯電話、ノートパソコン、カムコーダなどの電子機器または電気自動車などに広く使用されている。特に、リチウム二次電池は、ニッケル-カドミウム電池またはニッケル-水素電池よりも大きな容量を有し、単位重量当たりのエネルギー密度が高いため、その活用程度が急速に増加する傾向にある。
【0004】
一方、リチウム二次電池は、正極/分離膜/負極構造の電極組立体がどのような構造からなっているのかによって分類されることもある。代表的に、長いシート型の正極と負極を分離膜が介在された状態で巻き取った構造のゼリーロール電極組立体、所定のサイズの単位で切り取った多数の正極と負極を分離膜を介した状態で順次に積層したスタック型電極組立体、所定の単位の正極と負極を分離膜を介在した状態で積層したバイセル又はフルセルを巻き取った構造のスタック/折り畳み型電極組立体などが挙げられる。
【0005】
最近には、スタック型またはスタック/折り畳み型電極組立体をアルミニウムラミネートシートのパウチ型電池ケースに内蔵した構造のパウチ型電池が、低い製造費、小さな重量、容易な形態の変形などを理由に多くの関心を集めており、またそれの使用量が徐々に増加している。
【0006】
このようなリチウム二次電池は、主にリチウム系酸化物と炭素材をそれぞれ正極活物質と負極活物質として用いる。リチウム二次電池は、このような正極活物質と負極活物質がそれぞれ塗布された正極板と負極板がセパレータを間に置いて配置された電極組立体と、電極組立体を電解液と共に密封収容する外装材とを備える。
【0007】
このとき、電極組立体には、複数個の正極板から延長されている複数個の正極タブと、複数個の負極板から延長されている複数個の負極タブとが形成されており、このような複数個の正極タブ及び複数個の負極タブはそれぞれ正極リード及び負極リードと溶接結合される。ここで、複数個の正極タブと複数個の負極タブが電極タブを構成し、正極リードと負極リードが電極リードを構成することになる。
【0008】
このように電極タブ及び電極リードを溶接するとき、電極タブと電極タブとの間、電極タブと電極リードとの間の溶接を弱く行う場合には溶接不良が発生するので、このような弱溶接による溶接不良の可否を検査するプロセスが必要である。
【0009】
溶接部の弱溶接不良を検査するための方法として、従来には被溶接物に対して溶接部を中心に反対方向に引っ張って引張強度を測定する方式を用いた。しかしながら、このような方式は引張強度を測定する過程で電極タブや電極リードが損傷されるので、全数調査が不可能という限界があった。
【0010】
したがって、溶接部の弱溶接の可否を検査することにおいて、全数調査が可能でありながらも検出力に優れた検査装置に対する技術開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、溶接部の弱溶接不良を検出するにおいて、全数調査が可能でありながらも不良検出力に優れた検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するための本発明の溶接状態検査装置は、リチウム二次電池で電気的連結または機械的締結のための溶接部での溶接状態を検査する装置であって、溶接部上に抵抗測定プローブが接触して溶接部の抵抗値を導出するためのデータを得る測定部と、上記測定部と通信し、測定部から得たデータが送出されて溶接部での抵抗値を決定し、決定された抵抗値を臨界抵抗値と比較して弱溶接の可否を判別する制御部とを含む。また、上記測定部は、抵抗測定プローブが溶接部の一端および他端に接触するのを可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
一具体例において、上記制御部は、決定された抵抗値が臨界抵抗値を超える場合、弱溶接として判断するものである。
【0014】
一具体例において、上記測定部は、被検査体が安置される平板状のクレードルと、上記クレードルから所定の離隔距離を有する上部に位置し、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた上部プレートと、上記クレードルから所定の離隔距離を有する下部に位置し、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた下部プレートと、上記クレードル、上部プレートおよび下部プレートを結合する結合部と、溶接部上に接触して抵抗値を決定するためのデータを得る一対の抵抗測定プローブとを含む。
【0015】
一具体例において、1つの抵抗測定プローブは、電流プローブおよび抵抗プローブを含む。
【0016】
一具体例において、上記上部プレートおよび下部プレート上には、抵抗測定プローブが正位置に挿入されるようにするための上部ガイド部材および下部ガイド部材がそれぞれ結合されている。
【0017】
一具体例において、上記上部ガイド部材及び上記下部ガイド部材はそれぞれ、抵抗測定プローブの挿入が可能な貫通ホールを備えており、上記上部ガイド部材の貫通ホールと上記上部プレートの貫通ホールは一直線上に位置して、抵抗測定プローブがこれらを同時に貫通して溶接部の上面に接近するのを可能とするように構成され、上記下部ガイド部材の貫通ホールと上記下部プレートの貫通ホールは一直線上に位置して、抵抗測定プローブがこれらを貫通して溶接部の下面に接近するのを可能とするように構成される。
【0018】
一具体例において、上記結合部は、結合棒および欠陥ねじを含む。
【0019】
一具体例において、上記クレードル、上部プレート及び下部プレートはそれぞれ、4つの角部に結合ホールが形成されており、上記結合棒が、上部プレート、クレードル及び下部プレート上にそれぞれ形成された結合ホールを順次に貫通して挿入されることにより、上部プレート、クレードルおよび下部プレートが結合するのを可能とするように構成される。
【0020】
一具体例において、上記クレードルと上記上部プレートとの間の離隔距離および上記クレードルと上記下部プレートとの間の離隔距離を調節するための圧縮ばねをさらに含み、上記結合棒が上記圧縮ばねの中空部の内部に挿入するのを可能とするように構成される。
【0021】
一具体例において、上記制御部は、上記測定部が標本集団に対して得たデータを統計的方式で処理して臨界抵抗値を設定する臨界抵抗値設定プログラムを含む。
【0022】
一具体例において、上記標本集団に対して得たデータから決定された抵抗値は正規分布曲線をなす。
【0023】
一具体例において、本発明の検査装置は、上記測定部から得たデータ、上記制御部によって決定された溶接部の抵抗値を表示する出力部をさらに含む。
【0024】
一具体例において、本発明の検査装置は、上記測定部に電源を印加する電源をさらに含み、上記電源は直流電源であり、上記制御部によって制御される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の溶接状態検査装置は、標本集団に対して抵抗を測定し、測定された抵抗値の正規分布曲線から臨界抵抗値を設定し、標本集団及び検査対象溶接部に対する抵抗測定時、分解能がナノオーム乃至マイクロオームのレベルの微細抵抗測定が可能であり、弱溶接不良の検出力が非常に優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の溶接状態検査装置を構成する測定部の模式図である。
図2図1の測定部を構成するクレードルの平面図である。
図3図1の測定部を構成する上部プレートの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る上部プレートと上部ガイド部材との結合図である。
図5図1の正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る抵抗測定プローブの模式図である。
図7】溶接強度と抵抗との相関関係を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る抵抗測定方法を示した模式図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る抵抗測定方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は彼自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0028】
したがって、本明細書に記載された実施例と図面に図示された構成は、本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替し得る多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0029】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0030】
本発明の溶接状態検査装置は、リチウム二次電池において電気的連結又は機械的締結のための溶接部での溶接状態を検査する装置であって、溶接部上に抵抗測定プローブが接触して溶接部の抵抗値を導出するためのデータを得る測定部と、上記測定部と通信し、測定部から得たデータの送出を受けて溶接部での抵抗値を決定し、決定された抵抗値を臨界抵抗値と比較して弱溶接の可否を判別する制御部とを含み、上記測定部は溶接部の一端および他端に抵抗測定プローブが接触するのを可能とするように構成されたことを特徴とする。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定プローブの模式図であって、図6を参照すると、本発明の抵抗測定プローブ150、150'は、一対で構成されており、一対の電流プローブおよび一対の電圧プローブを含む。すなわち、一つの抵抗測定プローブ150は電流プローブ151および電圧プローブ152を含んでおり、他の一つの抵抗測定プローブ150'も電流プローブ151'および電圧プローブ152'を含んでおり、これにより、4線式測定方式で溶接部の抵抗測定が可能である。上記電流プローブは測定対象である溶接部に電流を印加し、上記電圧プローブは電圧を測定する。これにより、溶接部の抵抗値を決定することができる。
【0032】
本発明は、一対の抵抗測定プローブを溶接部に接触させて抵抗値決定のためのデータを得る。これにより、4線式測定方式で溶接部の抵抗測定が可能である。4線式抵抗測定方式は、2線式抵抗測定方式に比べて接触抵抗の影響を受けないので、より精密に微細抵抗を測定できる。そして、ナノオーム単位でも抵抗を測定することができるので、好ましい。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接状態検査装置を構成する測定部100の模式図である。図1を参照すると、本発明の測定部100は、被検体が安置される平板状のクレードル110と、上記クレードルから所定の離隔距離を有する上部に位置し、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた上部プレート120と、上記クレードルから所定の離隔距離を有する下部に位置し、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えた下部プレート130と、上記クレードル、上部プレートおよび下部プレートを結合するための結合部140と、溶接部上に接触して抵抗値を決定するためのデータを得る一対の抵抗測定プローブ150、150'とを含む。
【0034】
上記クレードル110は、検査対象である溶接部を含む被検体が安置される長方形の平板状部材であって、中央部に被検体が安置される。図2は、本発明の一実施形態に係るクレードル110の平面図であって、図2を参照すると、本発明のクレードル110は、後述する結合棒の挿入が可能な複数の結合ホール111を備えており、これらの結合ホールはクレードルの4個の角部に形成されている。また、抵抗測定プローブが溶接部の上面(top)及び下面(back)に接触し得るように、被検体の溶接部に対応される部位に、クレードルの厚さの方向に長方形の貫通口112が形成されており、上記貫通口112領域内に溶接部が位置することになる。
【0035】
上記上部プレート120は、上記クレードル110から垂直上部方向に所定の離隔距離を有する地点に位置する。上記上部プレートは、クレードルと同様に平板状であり、電流プローブおよび電圧プローブを含む抵抗測定プローブを挿入し得るように複数の貫通ホールを備えている。図3は、一実施形態に係る上部プレート120の平面図であって、図3を参照すると、本発明の上部プレート120は長方形の平板状部材であり、4個の角部にはそれぞれ結合ホール121が形成されており、これらの結合ホールには後述する結合棒(図示せず)が挿入される。上部プレート120は、また、抵抗測定プローブを挿入され得る貫通ホール122を備えている。複数個の貫通ホールは溶接部の一端および他端に対応される部位に形成されており、これにより、抵抗測定プローブは溶接部の一端および他端に接近可能となる。そして、上部プレートに挿入される抵抗測定プローブは、溶接部の上面(top)に接近し得る。
【0036】
上記下部プレート130は、上記クレードル110から垂直下部方向に所定の離隔距離を有する地点に位置する。上記下部プレートは長方形の平板状部材であって、上記上部プレートと同様に抵抗測定プローブを挿入し得る複数の貫通ホールを備えている。下部プレートの4個の角部にはそれぞれ結合ホールが形成されており、これらの結合ホールには後述する結合棒が挿入される。下部プレートも上部プレートと同様に、抵抗測定プローブが挿入され得る複数個の貫通ホールが具備されており、これらの貫通ホールは溶接部の一端および他端に対応される部位に形成されていてもよい。これにより、抵抗測定プローブが溶接部の一端および他端に接近可能となる。そして、下部プレートに挿入される抵抗測定プローブは、溶接部の下面(back)に接近し得る。
【0037】
上記のように、上部プレートおよび下部プレートはそれぞれ、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数個の貫通ホールを含むことによって、溶接部の検査位置によって抵抗測定プローブの挿入位置を好適に調節し得るという利点がある。
【0038】
図1を参照すると、上記上部プレート120及び下部プレート130上には、上部ガイド部材160及び下部ガイド部材(図示せず)がそれぞれ結合されている。上記上部ガイド部材160および下部ガイド部材(図示せず)は、抵抗測定プローブが正位置に挿入されるようにする機能をする。
【0039】
以下、上部ガイド部材について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る上部プレートと上部ガイド部材の結合図である。図4を参照して説明すると、上記上部ガイド部材160は、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホール161を備えている。図4に図示された実施形態によると、上記貫通ホールの個数は2つであり、それぞれの貫通ホールに抵抗測定プローブ150が挿入され得る。上記貫通ホールは、溶接部の一端及び他端に対応される部位に形成されており、溶接部の一端及び他端に抵抗測定プローブを何れも挿入することができ、溶接部の一端及び他端のうちの1か所のみに抵抗測定プローブを挿入することもできる。
【0040】
一方、上部プレート120にも複数の貫通ホール122が形成されている。抵抗測定プローブ150は、上記上部ガイド部材160の貫通ホール161及び上記上部プレート120の貫通ホール122を順次に貫通して、上記クレードル110上にある被検体の溶接部の上面に接近できるように構成される。このとき、抵抗測定プローブが上部ガイド部材の貫通ホール161および上部プレートの貫通ホール122を何れも貫通するようにするために、これらの貫通ホールは図4のように抵抗測定プローブの挿入方向に一直線上に置かれることになる。これにより、上記上部ガイド部材160は、抵抗測定プローブが上部プレートの厚さの方向に挿入されることにおいて、傾けない状態で挿入できるようになり、抵抗測定プローブを固定する機能も有する。
【0041】
図4には図示されていないが、下部プレートにも下部ガイド部材が結合されており、上記下部ガイド部材は上部ガイド部材と同様に、抵抗測定プローブの挿入が可能な複数の貫通ホールを備えている。また、上記貫通ホールの個数は2つであってもよく、それぞれの貫通ホールに抵抗測定プローブを挿入され得る。下部プレートには上部プレートと同様に貫通ホールが形成されており、抵抗測定プローブは、上記下ガイド部材の貫通ホール及び上記下部プレートの貫通ホールを順次に貫通して、上記クレードル上にある被検体の溶接部の下面に、接近できるように構成される。このとき、抵抗測定プローブが下部ガイド部材の貫通ホール及び下部プレートの貫通ホールを何れも貫通するようにするために、下部ガイド部材の貫通ホール及びそれに対応する下部プレートの貫通ホールは、抵抗測定プローブの挿入方向に一直線上に置かれることになる。このような下部ガイド部材は、上部ガイド部材と同様に抵抗測定プローブが傾けないように挿入されるようにすると同時に抵抗測定プローブを固定する機能をする。
【0042】
本発明の測定部を構成するクレードル、上部プレート及び下部プレートは、結合部によって結合される構造である。上述のように、上記クレードル、上部プレートおよび下部プレートはそれぞれ、4つの角部に結合ホールを備えており、上記結合部は結合棒および結合ねじを含む。
【0043】
図1及び図5を参照して説明すると、本発明の結合部140は、上記結合棒141が上部プレート120、クレードル110及び下部プレート130に形成された各結合ホールを順次に貫通して挿入されることによって、上部プレート、クレードルおよび下部プレートが結合できるように構成されている。
【0044】
そして、本発明の測定部100は、上記クレードル110と上記上部プレート120との間の離隔距離および上記クレードル110と上記下部プレート130との間の離隔距離を調節するための圧縮ばね170をさらに含み、上記圧縮ばね170は、その中空部の内部への上記結合棒141の挿入を可能とするように構成されている。上記圧縮ばね170の弾性によって、上部プレート120及び下部プレート130はそれぞれ、結合棒141に沿って上下方向に移動可能であり、上部プレート120及び/又は下部プレート130をクレードル110の方向に荷重を加えることによって、それらを所望の地点に位置させた後に、結合ねじ142を用いて上部プレートと下部プレートを所望の地点に固定させることができる。そして、上記圧縮ばね170は、1つの結合棒141に対応して上部プレートから下部プレートに至る距離の長さを有し得るが、1つの結合棒141が2つの圧縮ばねを貫通することもできる。このような場合、一つの圧縮ばねは上部プレート120からクレードル110の間に対応する長さを有し、別の圧縮ばねは下部プレート130からクレードル110の間に対応する長さを有することになるのである。
【0045】
一具体例において、本発明の溶接状態検査装置は、上記測定部から得たデータと、上記制御部によって決定された溶接部の抵抗値とを表示する出力部をさらに含む。上記出力部を通じて検査を行う者は検査対象の溶接部の抵抗値を確認し得る。
【0046】
一具体例において、本発明の溶接状態検査装置は、上記測定部に電源を印加する電源をさらに備える。上記電源は直流電源であることが好ましい。直流方式は交流方式に比べて高精密度抵抗測定が可能という利点があるからである。上記制御部によって測定部に印加される電流の大きさ、電流印加時間、電流印加地点などが制御される。
【0047】
本発明の制御部について詳細に説明する。
【0048】
本発明の制御部は、上記測定部と通信し、測定部から得たデータの送出を受けて溶接部での抵抗値を決定し、決定された抵抗値を臨界抵抗値と比較して弱溶接の可否を判別する。
【0049】
本発明の検査装置は、上記制御部が、上記測定部が標本集団に対して得たデータを統計的方式で処理して臨界抵抗値を設定する臨界抵抗値設定プログラムを含むことを特徴とする。
【0050】
本発明の発明者らは、溶接強度が弱い溶接部の電気抵抗を測定したとき、正常的な溶接強度を有する溶接部の電気抵抗値よりも大きいという事実を見出し、本発明に至っることになった。図7を参照すると、溶接強度が22kgf以上で正常な溶接部の抵抗値は、溶接強度が22kgf未満で弱溶接である溶接部の抵抗値より小さいことがわかる。従来にも溶接部の抵抗を測定し、測定された抵抗値と臨界値抵抗値を比較して溶接不良を判断する技術は存在していたが、上記従来の技術は臨界抵抗値を導出することにおいて、溶接部の引張強度と抵抗の相関関係を利用するため、溶接部の引張強度を測定する別途のプロセスが必要であった。
【0051】
しかし、本発明の検査装置は、臨界抵抗値を導出することにおいて、溶接部の引張強度と抵抗の相関関係に依存するものではなく、統計的方式を導入し、溶接部の抵抗値を決定するためのデータを得ることにおいて、分解能を高めてナノオーム乃至マイクロオームの単位までに微細抵抗を測定して、精密に抵抗を測定したことに特徴がある。
【0052】
一般的に、大量の標本集団に対して得たデータから、抵抗値は正規分布曲線を成すことになる。正規分布曲線において偏差の大きい個体は、統計的確率上に不良と推定しても構わないので、所定の偏差を臨界抵抗値として定めることであり、このような方式は標本集団に対する資料が信頼性があることを前提とするものであるため、臨界抵抗値を設定する過程で標本集団に対してナノオーム乃至マイクロオーム単位までに精密に抵抗を測定し得る本発明の測定部を用い、検査対象に対して抵抗を測定するときにもナノオーム乃至マイクロオーム単位で精密に抵抗を測定し得る本発明の測定部を用いることである。このように本発明の検査装置を構成する制御部は、上記測定部が標本集団に対して得たデータを統計的方式で処理して臨界抵抗値を設定する臨界抵抗値設定プログラムを含んでいるため、従来の技術とは異なって臨界抵抗値を設定するために、溶接部の引張強度を別途に測定する必要はない。
【0053】
本発明の検査装置を用いた溶接不良検査方法について詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る溶接不良検査方法は、標本集団の溶接部の抵抗を測定して弱溶接の判断基準となる臨界抵抗値を導出する臨界抵抗設定ステップS100、検査対象の溶接部の抵抗値を測定する抵抗測定ステップS200、上記抵抗測定ステップにおいて測定された抵抗値が上記臨界抵抗値を超える場合、弱溶接として判断するステップS300を含み、上記臨界抵抗設定ステップS100および上記抵抗測定ステップS200は上述した測定部を用いる。
【0054】
まず、上記臨界抵抗設定ステップS100について説明する。
【0055】
臨界抵抗設定ステップS100は、標本集団の溶接部の抵抗値を決定し、それを貯蔵するデータ構築ステップS110、上記データ構築ステップS110によって蓄積されたデータを統計的方式で処理して臨界抵抗値を導出する臨界抵抗値導出ステップS120を含む。
【0056】
上記データ構築ステップS110は、本発明の検査装置を構成する測定部を用いて標本集団をなす大量の個体に対して、溶接部の抵抗を決定するためのデータを取得し、取得されたデータに基づいて抵抗値を決定するプロセスを含む。本発明の測定部を構成する一対の抵抗測定プローブを溶接部に接触するが、一つの抵抗測定プローブ内には、電流プローブおよび電圧プローブを含んでおり、一対の抵抗測定プローブは一対の電流プローブ及び電圧プローブを含むことになる。これにより、4線式抵抗測定が可能となる。4線式抵抗測定方式は、2線式抵抗測定方式と比較して、接触抵抗が小さいので、より精密にデータを獲得し得るという利点がある。
【0057】
上記データ構築ステップS110における標本集団の個体数は、少なくとも100,000以上であり、好ましくは200,000であり、できれば標本集団の個体数が多いことが信頼性の側面において好ましい。
【0058】
上記臨界抵抗値導出ステップS120は、上記データ構築ステップS110によって蓄積されたデータを統計的方式で処理して臨界抵抗値を導出するものである。本発明の検査装置を構成する制御部は、データを統計的方式で処理して臨界抵抗値を設定するプログラムを含む。一具体例において、上記プログラムは、標本集団の個体が有する個別の抵抗値の正規分布曲線を得て、上記正規分布曲線の+6δ値を臨界抵抗値として設定することであり得る。
【0059】
標本集団が正規分布曲線を示す場合、大多数の個体は平均値(u)に近い値を有することになり、平均値(u)との偏差の大きい個体は少ない。したがって、確率的に見れば、平均値との偏差が大きい個体は不良として推定し得るのである。具体的に、1δ(標準偏差)の偏差を有する個体が現れる確率は約32%、2δの偏差を有する個体が現れる確率は約5%、3δの偏差を有する個体が現れる確率は約0.3%、4δの偏差を有する個体が現れる確率は約0.01%、5δの偏差を有する個体が現れる確率は約0.001%、6δの偏差を有する個体が現れる確率は約0.0000001%であることが知られている。したがって、平均値に6δの値を足した値を臨界抵抗値に設定し、これより大きい抵抗値を有することは弱溶接による不良として推定しても、その信頼度が非常に高いものである。
【0060】
以下、上記抵抗測定ステップS200に対して詳細に説明する。上記抵抗測定ステップS200は、本発明の検査装置を構成する測定部によって検査対象である溶接部の抵抗値を決定するためのデータを得るものである。
【0061】
本発明の測定部は、2つの抵抗測定プローブを含み、上記2つの抵抗測定プローブを溶接部に接触して抵抗値を導出するためのデータを得る。図8は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定プローブを用いてデータを得るプロセスを示した模式図である。図8を参照すると、溶接部30の一端31に、一つの抵抗測定プローブ150を接触させ、溶接部30の他端32に残りの一つの抵抗測定プローブ150'を接触させて、溶接部30全体の抵抗を測定する。そして、図8の実施形態では、2つの抵抗測定プローブ150、150 'が溶接部の上面に位置している。図8に図示したように、溶接部30は、電極タブ20部の溶接部33と電極リード10部の溶接部34とに区分され得る。そして、2つの抵抗測定プローブの何れもを電極タブ部の溶接部33に接触させることができる。これとは異なり、二つの抵抗測定プローブのいずれも電極リード部の溶接部34に接触させることもできる。
【0062】
図9は、本発明の他の実施形態に係る抵抗測定プローブを用いてデータを得る過程を示した模式図である。図9を参照すると、1つの抵抗測定プローブ150は電極タブ部の溶接部33に、残りの1つの抵抗測定プローブ150'は電極リード部の溶接部34に、接触させて抵抗測定を行うことができる。上記多様な実施形態のうち、二つの抵抗測定プローブの何れもを電極タブ部の溶接部33に接触する形態で抵抗を測定することが弱溶接を検出する検出力の面において最も好ましい。
【0063】
本発明の溶接状態検査装置および溶接不良検査方法は、二次電池の溶接部に広く適用され得る。そして、多様な溶接方法による溶接部に適用され得る。すなわち、電極タブと電極タブとの間の溶接部、電極タブと電極リードとの間の溶接部、電池パックにおける電極リードとバスバーの溶接部等で、本発明の溶接不良検査方法が適用され得る。そして、超音波溶接による溶接部、レーザ溶接による溶接部などのいずれにも適用され得る。
【0064】
本発明に係る溶接状態検査装置は、臨界抵抗設定ステップにおいて標本集団に対して抵抗を測定し、測定された抵抗値の正規分布曲線から臨界抵抗値を設定し、標本集団及び検査対象溶接部に対する抵抗測定時、分解能がナノオーム乃至マイクロオームレベルの微細抵抗測定器を用いて、精密に抵抗を測定するため、弱溶接不良の検出力が非常に優れた効果がある。
【符号の説明】
【0065】
10 電極リード
20 電極タブ
30 溶接部
31 一端
32 他端
33 溶接部
34 溶接部
100 測定部
110 クレードル
111 結合ホール
112 貫通口
120 上部プレート
121 結合ホール
122 貫通ホール
130 下部プレート
140 結合部
141 結合棒
150 抵抗測定プローブ
150’ 抵抗測定プローブ
151 電流プローブ
151’ 電流プローブ
152 電圧プローブ
152’ 電圧プローブ
160 上部ガイド部材
161 貫通ホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】